• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1210410
審判番号 不服2007-7097  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-08 
確定日 2010-01-14 
事件の表示 特願2000-390257「複合契約変更システムおよびその方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月 5日出願公開、特開2002-189853〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯

本願は、平成12年12月22日に出願された特許出願であって、平成14年 2月25日付けで手続補正書が提出され、平成16年10月 6日付けで拒絶理由通知が通知され、これに対して同年12月16日付けで手続補正書が提出され、平成18年 1月26日付けで拒絶理由通知が通知され、これに対して同年 4月10日付けで手続補正書が提出されたが、平成19年 1月26日付けで拒絶査定され、これに対して同年 3月 8日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明について

(1)本願の請求項1に係る発明

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成18年 4月10日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「 1つの生命保険契約においてその生命保険契約者が変更を請求する契約内容として、主契約の保険金額、保険期間および保険料払込期間、ならびに特約の特約金額および特約期間のうち少なくとも2つを入力する契約変更入力手段と、
前記契約変更入力手段により入力された契約内容を表示する表示手段と、
前記生命保険の既契約内容として、主契約の保険金額、保険期間および保険料払込期間、ならびに特約の特約金額および特約期間を記憶する契約記憶手段と、
前記契約変更入力手段により入力された契約内容を前記契約記憶手段に記憶された既契約内容と比較して複数の契約変更内容を特定する変更要素分析手段と、
前記変更要素分析手段により特定された複数の契約変更内容に基づいて、解約返戻金、責任準備金、保険料、または保険金額を計算する計算手段と、
前記計算手段による計算結果に基づいて保全設計書を出力する保全設計書出力手段とを備え、
前記変更要素分析手段は、
前記契約変更入力手段により入力された特約の特約金額が「0」か否かを判定することにより、前記生命保険の特約の解約か否かを判定する特約解約解析手段と、
前記契約変更入力手段により入力された主契約の保険金額、保険期間または保険料払込期間を前記契約記憶手段に記憶された主契約の保険金額、保険期間または保険料払込期間と比較することにより、前記生命保険の主契約の変更内容を判定する主契約解析手段と、
前記契約変更入力手段により入力された特約の特約金額または特約期間を前記契約記憶手段に記憶された特約の特約金額または特約期間と比較することにより、前記生命保険の特約の変更内容を判定する特約解析手段とを含む、複合契約変更システム。」

(2)引用文献の記載事項及び引用文献発明

(引用文献1の記載事項)

原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-148844号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

(1a)「【0075】(実施の形態1)図1は、実施の形態1にかかる保険業務処理システムの概略構成を示すブロック図であり、特に新規加入の処理の流れに注目したものである。図1において、保険業務処理システムは、保険業務を営む保険会社と、保険に加入する契約者と、保険会社の提供する保険内容を契約者に提示して契約者と保険会社との保険申込みにおける仲介をなす者(代理店のように契約を行う者であり、以下、代理店等と称する)と、においておこなわれる各処理を示すとともに、保険会社、代理店等および契約者との各間の処理のながれを示している。なお、以下の説明において、契約の成立した顧客を特に契約者と称する。
【0076】最初に、自動車保険の新規加入の業務処理について説明する。まず、代理店等に所属する営業担当者は、自動車保険の新規加入を希望する顧客のもとに、携帯型端末装置20およびプリンタ21を持ち込む。携帯型端末装置20は、上述した保険料率表/車体価格表等のデータと、このデータから種々の条件入力に合致する保険料/車体価格等を取得して提示することを可能としたプログラム(以下、保険情報処理プログラムと称する)と、を格納しており、例えば、表示装置および入力装置を搭載した携帯可能なノート型パーソナルコンピュータである。」

(1b)「【0098】以上の説明は、保険の新規加入についての処理を示すものであったが、つぎに、自動車保険の継続契約の処理について説明する。図3は、実施の形態1にかかる保険業務処理システムの概略構成を示すブロック図であり、特に継続契約の処理の流れに注目したものである。上述した自動車保険の新規加入の処理においてホストコンピュータ10にアップロードされた契約データは、ホストコンピュータ10において管理され、特に、契約満期の迫った契約データの提示が可能となっている。その際、ホストコンピュータ10は、契約満期の迫った契約データに含まれる代理店等の情報を同時に提示し、その契約データをFD(フロッピーディスク)等の記録媒体13にダウンロードする。そして、記録媒体13は、その契約データが示す代理店等に向けて発送される。
【0099】記録媒体13を受け取った代理店等は、記録媒体13に格納された契約データを携帯型端末装置20において読み出し、携帯型端末装置20に内蔵された記憶装置に格納する。つづいて、携帯型端末装置20の表示画面上に、従来の継続契約申込書と同様な書式(記入のための枠線や項目名の表示を含めて、以下、継続契約申込書フォーマットと称する)を表示させ、さらに、その継続契約申込書フォーマット上に、記録媒体13から読み込んだ契約データに基づく記入事項(契約者情報、車両情報等)を該当する個所に表示させる。これら契約データの読み出し処理および継続契約申込書フォーマットの表示処理もまた、上述した保険情報処理プログラムの実行によるものである。
【0100】そして、営業担当者は、携帯型端末装置20の表示装置上に表示された継続契約申込書フォーマットを契約者に提示し、継続して契約する保険の内容の確認を求める。なお、継続契約申込書フォーマットにおいて、新たに必要とする入力事項(保険ランクの選択、特約の追加等)がある場合は、契約者の了承を得て、その入力をおこない、継続契約申込書フォーマットを完成させる。
【0101】この場合、保険情報処理プログラムは、契約内容の変更にともなって、ふたたび新規加入時においておこなった保険料等の計算をおこない、計算結果に応じた契約内容を継続契約申込書フォーマット上に表示する。なお、この最終的な継続契約の内容は、継続契約データとして携帯型端末装置20に記憶される。
【0102】営業担当者は、契約者から、この継続契約申込書フォーマットに表示された内容の了承を得ると、保険情報処理プログラムに対して印刷出力を指示する。完成した継続契約申込書フォーマットの印刷は、新規加入時における保険申込書の印刷と同様にプリンタ21においておこなわれ、継続契約データ(契約者情報、車両情報等の契約情報を含む契約内容)を含んだ継続契約申込書40を得ることができる。この場合も、保険申込書30と同様に、同内容のものが2枚印刷される。
【0103】営業担当者は、プリンタ21によって印刷された継続契約申込書40の一方を、契約者から捺印を受けて回収し(継続保険申込書41)、他方を契約者側において保管するための契約者控42として契約者に渡す。さらに、営業担当者は、あらかじめ用意していた重要事項説明書43(保険約款等)を契約者に渡す。この段階で、契約者は、当保険会社への保険の継続加入を果たしたことになる。
【0104】つづいて、営業担当者は、代理店等の店舗において、携帯型端末装置20から上記した契約データを読み出し、プリンタ21によって再び継続契約申込書フォーマットで表された継続契約申込書を印刷する。この継続契約申込書は、代理店控44として代理店等において保管される。さらに、図2(b)に示したように継続契約データのみからなるOCR原票45が印刷される。そして、代理店等は、このOCR原票45と契約者先において回収した継続契約申込書41とを保険会社に郵送する。
【0105】保険会社は、代理店等から郵送された継続契約申込書41を保管し、OCR原票45を、OCR入力をおこなう部門に渡す。OCR原稿45は、上述したように、オペレータによって、イメージスキャナ12に入力され、端末装置11上に継続契約データとしてあらためて取り込まれて、文字認識の正誤の確認と修正がおこなわれる。
【0106】なお、OCR原稿45に印刷された内容の大部分は、すでに新規加入時において作成されたOCR原票35から取り込まれた情報と同一であるので、正しく文字認識がおこなわれたOCR原稿45の継続契約データは、すでにホストコンピュータ10に記録された契約データと比較され、変更または追加された情報のみが更新データとして、ホストコンピュータ10にアップロードされる。そして、ホストコンピュータ10において、上記更新データが、継続契約内容に沿った正常なデータとして認識されると、その更新データの示す継続契約申込書の契約者に対して保険証券49が発行される。
【0107】以上に説明した新規加入時および継続契約時以外に、車両変更、保険金額の変更の申し入れ、または、住所・氏名等の変更等の異動手続きが生じた場合も、継続契約申込書の作成と同様な処理の流れとなる。この場合、継続契約申込書に代えて、変更届出書が作成される。さらに、保険情報処理プログラムは、営業担当者による必要な入力事項の入力を受け付け、異動内容が住所の変更等である場合は、新たな保険料の計算を必要としないが、車両変更や担保年齢の変更の場合、あるいは保険金額を変更する場合にあっては、保険料の再計算が必要となる。
【0108】以上に説明したように、実施の形態1によれば、保険の新規加入時、継続契約時、または異動手続き時において、顧客(または契約者)先に、携帯型端末装置20とプリンタ21とを持ち込み、携帯型端末装置20上で実行される保険情報処理プログラムによって、顧客(または契約者)から与えられる情報を元に契約内容を迅速に顧客(または契約者)に提示できるとともに、その提示された内容を印刷することにより、保険申込書、継続契約申込書、または変更届出書の作成を可能としているので、従来のように印刷所に大量に印刷を依頼する場合と比較して、各申込書または届出書の作成に無駄がなく、紙資源の有効活用とともに、各申込書または届出書の作成コストの大幅な低減を図ることができる。」

(1c)「【0160】なお、実施の形態1?3において、主に自動車保険の契約について説明したが、本発明にかかる保険業務処理システム、保険申込書作成装置および保険申込書作成方法は、火災保険、車両保険等の損害保険、生命保険、簡易保険、各種共済等の保険事業を営む保険会社が提供する商品について、広く適用することができる。」

上記摘記事項(1a)及び上記摘記事項(1b)によれば、引用文献1には、以下の構成が記載されているといえる。

(ア)上記摘記事項(1a)の「【0075】(実施の形態1)図1は、実施の形態1にかかる保険業務処理システムの概略構成を示すブロック図であり、特に新規加入の処理の流れに注目したものである。・・・(中略)・・・【0076】・・・(中略)・・・携帯型端末装置20は、上述した保険料率表/車体価格表等のデータと、このデータから種々の条件入力に合致する保険料/車体価格等を取得して提示することを可能としたプログラム(以下、保険情報処理プログラムと称する)と、を格納しており、例えば、表示装置および入力装置を搭載した携帯可能なノート型パーソナルコンピュータである。」及び引用文献1の【図1】によれば、当該「保険業務処理システム」は、当該「携帯端末装置」の「入力装置」を備えるものと解することができる。

そして、上記摘記事項(1b)の「【0098】以上の説明は、保険の新規加入についての処理を示すものであったが、つぎに、自動車保険の継続契約の処理について説明する。・・・(中略)・・・【0100】そして、営業担当者は、携帯型端末装置20の表示装置上に表示された継続契約申込書フォーマットを契約者に提示し、継続して契約する保険の内容の確認を求める。なお、継続契約申込書フォーマットにおいて、新たに必要とする入力事項(保険ランクの選択、特約の追加等)がある場合は、契約者の了承を得て、その入力をおこない、継続契約申込書フォーマットを完成させる。」によれば、上記「入力装置」は、当該「自動車保険の継続契約」において当該「契約者」が「継続契約」時に契約内容である「契約する保険の内容」の変更を請求する当該「入力事項」として、当該「保険ランクの選択、特約の追加等」を入力するものと解することができる。

したがって、上記摘記事項(1a)及び上記摘記事項(1b)によれば、引用文献1には、「上記保険業務処理システムが、自動車保険の継続契約においてその自動車保険契約者が継続契約時に契約内容の変更を請求する入力事項として、保険ランクの選択、特約の追加等を入力する入力装置を備える」ことが記載されているといえる。

(イ)上記摘記事項(1a)の「【0075】(実施の形態1)図1は、実施の形態1にかかる保険業務処理システムの概略構成を示すブロック図であり、特に新規加入の処理の流れに注目したものである。・・・(中略)・・・【0076】・・・(中略)・・・携帯型端末装置20は、上述した保険料率表/車体価格表等のデータと、このデータから種々の条件入力に合致する保険料/車体価格等を取得して提示することを可能としたプログラム(以下、保険情報処理プログラムと称する)と、を格納しており、例えば、表示装置および入力装置を搭載した携帯可能なノート型パーソナルコンピュータである。」及び引用文献1の【図1】によれば、当該「保険業務処理システム」は、当該「携帯端末装置」の「表示装置」を備えるものと解することができる。

そして、上記摘記事項(1b)の「【0100】そして、営業担当者は、携帯型端末装置20の表示装置上に表示された継続契約申込書フォーマットを契約者に提示し、継続して契約する保険の内容の確認を求める。なお、継続契約申込書フォーマットにおいて、新たに必要とする入力事項(保険ランクの選択、特約の追加等)がある場合は、契約者の了承を得て、その入力をおこない、継続契約申込書フォーマットを完成させる。」によれば、上記「表示装置」は、上記「入力装置」により入力された当該「入力事項」を表示するものと解することができる。

したがって、上記摘記事項(1a)及び上記摘記事項(1b)によれば、引用文献1には、「上記保険業務処理システムが、前記入力装置により入力された入力事項を表示する表示装置を備える」ことが記載されているといえる。

(ウ)上記摘記事項(1b)の「【0098】以上の説明は、保険の新規加入についての処理を示すものであったが、つぎに、自動車保険の継続契約の処理について説明する。図3は、実施の形態1にかかる保険業務処理システムの概略構成を示すブロック図であり、特に継続契約の処理の流れに注目したものである。上述した自動車保険の新規加入の処理においてホストコンピュータ10にアップロードされた契約データは、ホストコンピュータ10において管理され、特に、契約満期の迫った契約データの提示が可能となっている。・・・(中略)・・・」によれば、上記「保険業務処理システム」は、当該「ホストコンピュータ」を備えるものと解することができる。

そして、上記摘記事項(1b)の【0106】なお、OCR原稿45に印刷された内容の大部分は、すでに新規加入時において作成されたOCR原票35から取り込まれた情報と同一であるので、正しく文字認識がおこなわれたOCR原稿45の継続契約データは、すでにホストコンピュータ10に記録された契約データと比較され、変更または追加された情報のみが更新データとして、ホストコンピュータ10にアップロードされる。・・・(中略)・・・」によれば、上記「ホストコンピュータ」は、上記「自動車保険」の当該「契約データ」を「記録」するものと解することができる。

したがって、上記摘記事項(1b)によれば、引用文献1には、「上記保険業務処理システムが、前記自動車保険の契約データを記録するホストコンピュータを備える」ことが記載されているといえる。

(エ)上記摘記事項(1b)の【0106】なお、OCR原稿45に印刷された内容の大部分は、すでに新規加入時において作成されたOCR原票35から取り込まれた情報と同一であるので、正しく文字認識がおこなわれたOCR原稿45の継続契約データは、すでにホストコンピュータ10に記録された契約データと比較され、変更または追加された情報のみが更新データとして、ホストコンピュータ10にアップロードされる。・・・(中略)・・・」によれば、上記「保険業務処理システム」は、上記「入力装置」により入力された上記「入力事項」を上記「ホストコンピュータ」に「記録」された上記「契約データ」と比較して当該「更新データ」として特定する手段を備えるものと解することができる。

したがって、上記摘記事項(1b)によれば、引用文献1には、「上記保険業務処理システムが、前記入力装置により入力された入力事項を前記ホストコンピュータに記録された契約データと比較して更新データを特定する手段を備える」ことが記載されているといえる。

(オ)上記摘記事項(1a)の「【0076】最初に、自動車保険の新規加入の業務処理について説明する。まず、代理店等に所属する営業担当者は、自動車保険の新規加入を希望する顧客のもとに、携帯型端末装置20およびプリンタ21を持ち込む。携帯型端末装置20は、上述した保険料率表/車体価格表等のデータと、このデータから種々の条件入力に合致する保険料/車体価格等を取得して提示することを可能としたプログラム(以下、保険情報処理プログラムと称する)と、を格納しており、例えば、表示装置および入力装置を搭載した携帯可能なノート型パーソナルコンピュータである」によれば、上記「保険業務処理システム」は、上記「携帯型端末装置」の当該「保険情報処理プログラム」を備えるものと解することができる。

そして、上記摘記事項(1b)の「【0100】そして、営業担当者は、携帯型端末装置20の表示装置上に表示された継続契約申込書フォーマットを契約者に提示し、継続して契約する保険の内容の確認を求める。なお、継続契約申込書フォーマットにおいて、新たに必要とする入力事項(保険ランクの選択、特約の追加等)がある場合は、契約者の了承を得て、その入力をおこない、継続契約申込書フォーマットを完成させる。【0101】この場合、保険情報処理プログラムは、契約内容の変更にともなって、ふたたび新規加入時においておこなった保険料等の計算をおこない、計算結果に応じた契約内容を継続契約申込書フォーマット上に表示する。なお、この最終的な継続契約の内容は、継続契約データとして携帯型端末装置20に記憶される。」によれば、上記「保険情報処理プログラム」は、「保険ランク」、「特約」等の複数の「契約内容の変更にともなって」、当該「保険料等」を「計算」するものと解することができる。

したがって、上記摘記事項(1a)及び上記摘記事項(1b)によれば、引用文献1には、「上記保険業務処理システムが、保険ランク、特約等の複数の契約内容の変更にともなって、保険料等を計算する保険情報処理プログラムを備える」ことが記載されているといえる。

(カ)上記(1b)「【0098】以上の説明は、保険の新規加入についての処理を示すものであったが、つぎに、自動車保険の継続契約の処理について説明する。図3は、実施の形態1にかかる保険業務処理システムの概略構成を示すブロック図であり、特に継続契約の処理の流れに注目したものである。・・・(中略)・・・」及び引用文献1の【図3】の記載の「プリンタ」によれば、上記「保険業務処理システム」は、当該「プリンタ」を備えるものと解することができる。

そして、上記摘記事項(1b)の「【0101】この場合、保険情報処理プログラムは、契約内容の変更にともなって、ふたたび新規加入時においておこなった保険料等の計算をおこない、計算結果に応じた契約内容を継続契約申込書フォーマット上に表示する。なお、この最終的な継続契約の内容は、継続契約データとして携帯型端末装置20に記憶される。【0102】営業担当者は、契約者から、この継続契約申込書フォーマットに表示された内容の了承を得ると、保険情報処理プログラムに対して印刷出力を指示する。完成した継続契約申込書フォーマットの印刷は、新規加入時における保険申込書の印刷と同様にプリンタ21においておこなわれ、継続契約データ(契約者情報、車両情報等の契約情報を含む契約内容)を含んだ継続契約申込書40を得ることができる。この場合も、保険申込書30と同様に、同内容のものが2枚印刷される。」によれば、上記「プリンタ」は、当該「保険情報処理プログラム」による当該「計算結果」に基づいて当該「継続契約データ」を当該「印刷出力」するものと解することができる。

したがって、上記摘記事項(1b)及び引用文献の【図3】によれば、引用文献1には、「上記保険業務処理システムが、前記保険情報処理プログラムによる計算結果に基づいて継続契約データを印刷出力するプリンタを備える」ことが記載されているといえる。

(引用文献1発明)

したがって、上記(ア)乃至上記(カ)を考慮して、上記摘記事項(1a)及び上記摘記事項(1b)の記載を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用文献1発明」という。)が記載されているといえる。

「 自動車保険の継続契約においてその自動車保険契約者が継続契約時に契約内容の変更を請求する入力事項として、保険ランクの選択、特約の追加等を入力する入力装置と、
前記入力装置により入力された入力事項を表示する表示装置と、
前記自動車保険の契約データを記録するホストコンピュータと、
前記入力装置により入力された入力事項を前記ホストコンピュータに記録された契約データと比較して更新データを特定する手段と、
保険ランク、特約等の複数の契約内容の変更にともなって、保険料等を計算する保険情報処理プログラムと、
前記保険情報処理プログラムによる計算結果に基づいて継続契約データを印刷出力するプリンタとを備える保険業務処理システム。」

(引用文献1発明以外の実施形態の記載事項)

また、上記摘記事項(1a)、上記摘記事項(1b)及び上記摘記事項(1c)によれば、引用文献1には、引用文献1発明以外の実施形態について、以下のことが記載されているといえる。

(キ)上記摘記事項(1b)の「【0107】以上に説明した新規加入時および継続契約時以外に、車両変更、保険金額の変更の申し入れ、または、住所・氏名等の変更等の異動手続きが生じた場合も、継続契約申込書の作成と同様な処理の流れとなる。この場合、継続契約申込書に代えて、変更届出書が作成される。さらに、保険情報処理プログラムは、営業担当者による必要な入力事項の入力を受け付け、異動内容が住所の変更等である場合は、新たな保険料の計算を必要としないが、車両変更や担保年齢の変更の場合、あるいは保険金額を変更する場合にあっては、保険料の再計算が必要となる。」によれば、上記「保険業務処理システム」は、「継続契約」時だけでなく、当該「継続契約時以外」においても、「保険金額」などの「契約内容の変更」に利用されるものとと解することができる。

したがって、上記摘記事項(1b)によれば、引用文献1には、「継続契約時以外における、保険金額などの契約内容の変更に、保険業務処理システムを利用すること」が記載されているといえる。

(ク)上記摘記事項(1c)の「【0160】なお、実施の形態1?3において、主に自動車保険の契約について説明したが、本発明にかかる保険業務処理システム、保険申込書作成装置および保険申込書作成方法は、火災保険、車両保険等の損害保険、生命保険、簡易保険、各種共済等の保険事業を営む保険会社が提供する商品について、広く適用することができる。」によれば、上記「保険業務処理システム」は、当該「生命保険」の契約に適用されるものと解することができる。

したがって、上記摘記事項(1c)によれば、引用文献1には、「生命保険の契約に、上記保険業務処理システムを適用すること」が記載されているといえる。

(引用文献1発明以外の実施形態A)

上記(キ)を考慮して、上記摘記事項(1a)、上記摘記事項(1b)及び上記摘記事項(1c)の記載を総合すると、引用文献1には、次の実施形態(以下、「実施形態A」という。)が記載されているといえる。

「継続契約時以外における、保険金額などの契約内容の変更に、上記保険業務処理システムを利用すること。」

(引用文献1発明以外の実施形態B)

また、上記(ク)を考慮して、上記摘記事項(1a)、上記摘記事項(1b)及び上記摘記事項(1c)の記載を総合すると、引用文献1には、次の実施形態(以下、「実施形態B」という。)が記載されているといえる。

「生命保険の契約に、上記保険業務処理システムを適用すること。」

(3)本願発明と引用文献1発明との対比

本願発明と引用文献1発明とを対比すると、

引用文献1発明の「前記入力装置により入力された入力事項を表示する表示装置」は、当該「入力事項」が保険の契約内容を変更する情報であるから、本願発明の「前記契約変更入力手段により入力された契約内容を表示する表示手段」に相当する。

また、引用文献1発明の「前記入力装置により入力された入力事項を前記ホストコンピュータに記録された契約データと比較して更新データを特定する手段」は、当該「入力事項」が「保険ランクの選択、特約の追加等」の複数の内容を変更する情報であるから、本願発明の「前記契約変更入力手段により入力された契約内容を前記契約記憶手段に記憶された既契約内容と比較して複数の契約変更内容を特定する変更要素分析手段」に相当する。

また、引用文献1発明の「保険業務処理システム」は、特約が追加された複合契約を変更するものであるから、本願発明の「複合契約変更システム」に相当する。

そして、引用文献1発明の「自動車保険の継続契約においてその自動車保険契約者が継続契約時に契約内容の変更を請求する入力事項として、保険ランクの選択、特約の追加等を入力する入力装置」と本願発明の「1つの生命保険契約においてその生命保険契約者が変更を請求する契約内容として、主契約の保険金額、保険期間および保険料払込期間、ならびに特約の特約金額および特約期間のうち少なくとも2つを入力する契約変更入力手段」とは、後記の点で相違するものの、当該「保険ランクの選択、特約の追加等」は少なくとも2つの契約変更内容であるから、共に「保険契約においてその保険契約者が変更を請求する契約内容として、少なくとも2つの契約変更内容を入力する契約変更入力手段」という点で共通する。

また、引用文献1発明の「前記自動車保険の契約データを記録するホストコンピュータ」と、本願発明の「前記生命保険の既契約内容として、主契約の保険金額、保険期間および保険料払込期間、ならびに特約の特約金額および特約期間を記憶する契約記憶手段」とは、後記の点で相違するもの、当該「契約データ」が契約済みのデータであるから、共に「前記保険の既契約内容を記憶する契約記憶手段」という点で共通する。

また、引用文献1発明の「保険ランク、特約等の複数の契約内容の変更にともなって、保険料等を計算する保険情報処理プログラム」と、本願発明の「前記変更要素分析手段により特定された複数の契約変更内容に基づいて、解約返戻金、責任準備金、保険料、または保険金額を計算する計算手段」とは、後記の点で相違するものの、共に、「複数の契約変更内容に基づいて、解約返戻金、責任準備金、保険料、または保険金額を計算する計算手段」という点で共通する。

また、引用文献1発明の「前記保険情報処理プログラムによる計算結果に基づいて継続契約データを印刷出力するプリンタ」と、本願発明の「前記計算手段による計算結果に基づいて保全設計書を出力する保全設計書出力手段」とは、後記の点で相違するものの、共に、「前記計算手段による計算結果に基づいて契約変更内容を反映した設計書を出力する設計書出力手段」という点で共通する。

したがって、両者は、

(一致点)

「保険契約においてその保険契約者が変更を請求する契約内容として、少なくとも2つの契約変更内容を入力する契約変更入力手段と、
前記契約変更入力手段により入力された契約内容を表示する表示手段と、
前記保険の既契約内容を記憶する契約記憶手段と、
前記契約変更入力手段により入力された契約内容を前記契約記憶手段に記憶された既契約内容と比較して複数の契約変更内容を特定する変更要素分析手段と、
複数の契約変更内容に基づいて、解約返戻金、責任準備金、保険料、または保険金額を計算する計算手段と、
前記計算手段による計算結果に基づいて契約変更内容を反映した設計書を出力する設計書出力手段とを備えた複合契約変更システム。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)

本願発明では、保険契約が「生命保険契約」であって、

保険契約者が「生命保険契約者」であり、
契約変更内容が「主契約の保険金額、保険期間および保険料払込期間、ならびに特約の特約金額および特約期間」であり、
契約記憶手段が「前記生命保険の既契約内容として、主契約の保険金額、保険期間および保険料払込期間、ならびに特約の特約金額および特約期間」を記憶し、
変更要素分析手段が『前記契約変更入力手段により入力された特約の特約金額が「0」か否かを判定することにより、前記生命保険の特約の解約か否かを判定する特約解約解析手段と、前記契約変更入力手段により入力された主契約の保険金額、保険期間または保険料払込期間を前記契約記憶手段に記憶された主契約の保険金額、保険期間または保険料払込期間と比較することにより、前記生命保険の主契約の変更内容を判定する主契約解析手段と、前記契約変更入力手段により入力された特約の特約金額または特約期間を前記契約記憶手段に記憶された特約の特約金額または特約期間と比較することにより、前記生命保険の特約の変更内容を判定する特約解析手段とを含む』するのに対し、

引用文献1発明では、保険契約が「自動車保険契約」であって、

保険契約者が「自動車保険契約者」であり、
契約変更内容が「保険ランクの、特約の追加等」であり、
契約記憶手段が「自動車保険の既契約内容」を記憶し、
変更要素分析手段が上記構成を備えていない点。

(相違点2)

本願発明は、「1つの」保険契約において「変更」を行う処理を備え、その保険契約の「保全設計書を出力する保全設計書出力手段」を備えるのに対し、

引用文献1発明は、保険契約において「継続契約時に契約内容の変更」を行う処理を備え、その保険契約の「継続契約データを出力する設計書出力手段」を備える点。

(相違点3)

本願発明では、計算手段が「前記変更要素分析手段により特定された複数の契約変更内容に基づいて」計算を行うのに対し、

引用文献1発明では、保険情報処理プログラムが、複数の契約内容の変更にともなって計算を行う点。

(4)相違点についての判断

(相違点1について)

引用文献1には上記実施形態B、すなわち、「生命保険の契約に、上記保険業務処理システムを適用すること」も開示されているから、引用文献1発明において、保険契約を、「自動車保険契約」に代えて、「生命保険契約」とすることは、当該実施形態Bに基づき当業者であれば適宜になし得るものであり、引用文献1発明において、処理の対象を「生命保険契約」とするのであれば、そのため、契約者を「その生命保険契約者」とすることは、当業者であれば当然なし得るものであり、また、契約変更内容が「主契約の保険金額、保険期間および保険料払込期間、ならびに特約の特約金額および特約期間」であり、契約記憶手段が「前記生命保険の既契約内容として、主契約の保険金額、保険期間および保険料払込期間、ならびに特約の特約金額および特約期間」を記憶し、変更要素分析手段が「前記生命保険の特約の解約か否かを判定する特約解約解析手段と、前記契約変更入力手段により入力された主契約の保険金額、保険期間または保険料払込期間を前記契約記憶手段に記憶された主契約の保険金額、保険期間または保険料払込期間と比較することにより、前記生命保険の主契約の変更内容を判定する主契約解析手段と、前記契約変更入力手段により入力された特約の特約金額または特約期間を前記契約記憶手段に記憶された特約の特約金額または特約期間と比較することにより、前記生命保険の特約の変更内容を判定する特約解析手段とを含む」ことは、生命保険契約の契約内容に応じて当業者であれば適宜になし得る設計事項にすぎない。

そして、契約者が請求する特約金額を「0」とすることは、当該契約者が当該特約金額を請求しないことと同義であって、コンピュータ・システムを用いた発明において、ものの数量を表現する変数の値が「0」であることを、当該ものがないことと対応させて要件定義することは慣用技術であるから、引用文献1発明において、変更要素分析手段が「前記生命保険の特約の解約か否かを判定する特約解約解析手段」を含むのであれば、その具体化手段として、前記契約変更入力手段により入力された特約の特約金額が「0」か否かを判定することは、慣用技術に基づき当業者であれば適宜になし得る設計事項にすぎない。

したがって、相違点1に係る本願発明の構成は、引用文献1発明、引用文献1に記載された実施形態B及び慣用技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

(相違点2について)

引用文献1には上記実施形態A、すなわち、「継続契約時以外における、保険金額などの契約内容の変更に、上記保険業務処理システムを利用すること」も開示されており、当該「契約内容の変更」は、当該「継続契約時以外における」ものであることから、1つの保険契約を対象とする変更であるものと解することができる。

してみると、引用文献1発明において、保険契約において「継続契約時に契約内容の変更」を行う処理に代えて、「1つの」保険契約において「変更」を行う処理を採用することは、実施形態Aに基づき当業者であれば適宜になし得るものである。

そして、引用文献1発明において、「1つの」保険契約において「変更」を行う処理を行うのであれば、その保険契約の「保全設計書を出力する保全設計書出力手段」を採用することは、当業者であれば当然なし得るものである。

したがって、相違点2に係る本願発明の構成は、引用文献1発明及び引用文献1に記載された実施形態Aに基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

(相違点3について)

引用文献1発明において、複数の契約変更内容に基づいて保険料等の計算を行う際に、契約内容がどのように変更されたかを特定することは当然であるから、契約変更内容を特定するために、「変更要素分析手段」を援用し、計算手段が「前記変更要素分析手段により特定された複数の契約変更内容に基づいて」計算を行うことは、当業者であれば適宜なし得る設計事項にすぎない。

したがって、相違点3に係る本願発明の構成は、引用文献1発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

(5)結論

そして、本願発明の作用効果も、引用文献1発明、引用文献1に記載された実施形態A及びB並びに慣用技術から当業者が予測できる範囲のものである。

よって、本願発明は、引用文献1発明、引用文献1に記載された実施形態A及びB並びに慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3.むすび

上記のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1発明、引用文献1に記載された実施形態A及びB並びに慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-06 
結審通知日 2009-11-10 
審決日 2009-12-01 
出願番号 特願2000-390257(P2000-390257)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小山 和俊  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 田代 吉成
山本 穂積
発明の名称 複合契約変更システムおよびその方法  
代理人 上羽 秀敏  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ