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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K |
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管理番号 | 1210432 |
審判番号 | 不服2007-25295 |
総通号数 | 123 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-03-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-09-13 |
確定日 | 2010-01-14 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第281003号「電極の接続方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 4月30日出願公開、特開平11-121891〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
[1]手続の経緯 本願は、平成9年10月15日の出願であって、平成19年4月6日付けで拒絶理由通知がなされ、同年6月8日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年8月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月13日付けで拒絶査定を不服とする審判請求がなされ、平成21年6月26日付けで当審における拒絶の理由が通知され、同年8月28日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 [2]本願発明 平成21年8月28日付けの手続補正は、特許請求の範囲の旧請求項1,2を削除するとともに、旧請求項3-5を繰り上げるものであって、請求項の削除を目的とするものに該当する。 よって、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】 接続電極を有する回路部材1と、接続電極を有する回路部材2とを異方導電フィルムにより接続して接続体を形成する接続方法において、 回路部材1または回路部材2もしくは回路部材1、2の両方の電極面にカップリング剤を塗布した後、異方導電フィルムにより接続を行い、 前記接続体は、前記回路部材1と前記回路部材2におけるそれぞれの接続電極間に50?400Vをかけ使用する用途に用いられることを特徴とする電極の接続方法。」 [3]引用刊行物の記載事項及び引用発明 平成21年6月26日付け拒絶理由通知に引用された、本願出願前に頒布された特開平4-11225号公報(以下、「引用例1」という。)、特開平5-89784号公報(以下、「引用例2」という。)には、それぞれ、以下の事項が記載されている。 ・引用例1 (a)「ガラス基板端部に引き出された透明電極に、フレキシブル基板上に搭載された駆動素子をそのフレキシブル基板上に形成された金属電極を介して接続する液晶表示素子の端子接続方法において、 ガラス基板端部にシランカップリング剤を塗布する工程と、接着剤に導電粒子を分散させた異方導電膜を前記塗布部分に付着する工程と、前記付着部分にフレキシブル基板端部を重ねて位置合わせする工程と、重ね合わせた部分を加熱しながら加圧する工程からなることを特徴とする液晶表示素子の端子接続方法。」(特許請求の範囲) (b)「第4図は、その圧着部分の断面図であり、ベースフィルム3の電極3bと透明電極2aとが異方導電膜9に含まれる導電粒子9aを介して電気的に接続される。そしてガラス基板2のガラス表面と異方導電膜9に含まれるエポキシ系接着剤とがシランカップリング剤9を介して接着されるので、接着剤とガラス表面との接着力がシランカップリング剤の作用によって増大する。」(第2頁右下欄第4-11行) ・ 引用例2 (c)「PDPの端子部と外部回路とを接続する方法として、図4に示すようにPDP端部に形成した、例えば銀端子5にFPC3を異方性導電膜6を介して熱圧着し、端子部を樹脂2で被覆する方法が提案されている。なお、7は後面基板、4はFPC上の金属導体、10は異方性導電膜中に存在するNi粒子である。… 上述したPDPは、FPC3を異方性導電膜6によって銀端子5に熱圧着し、しかる後に端子部を樹脂2によって保護しているが、…隣接銀端子の間隙が、異方性導電膜を構成する熱硬化型バインダによって十分充填されず空隙が存在していることが明らかとなった。すなわち、この空隙を経路とする銀端子のマイグレーションが隣接端子間の絶縁性低下の原因となっていることが明らかとなった。」(第2頁第1欄第26-47行) 上記記載事項(a)-(b)によれば、引用例1には、 「金属電極が形成されたフレキシブル基板と、透明電極が引き出されたガラス基板とを異方導電膜により接続する液晶表示素子の端子接続部を形成する接続方法において、ガラス基板端部表面にシランカップリング剤を塗布した後、異方導電膜により接続を行うことを特徴とする透明電極と金属電極の接続方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 [4]対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると、 引用発明における「金属電極が形成されたフレキシブル基板」、「透明電極が引き出されたガラス基板」、「異方導電膜」、「液晶表示素子の端子接続部」、「シランカップリング剤」は、それぞれ、本願発明における「接続電極を有する回路部材1」、「接続電極を有する回路部材2」、「異方導電フィルム」、「接続体」、「カップリング剤」に相当するから、 両者は、「接続電極を有する回路部材1と、接続電極を有する回路部材2とを異方導電フィルムにより接続して接続体を形成する接続方法において、回路部材2の電極面にカップリング剤を塗布した後、異方導電フィルムにより接続を行う電極の接続方法。」である点で一致し、 本願発明では、「前記接続体は、前記回路部材1と前記回路部材2におけるそれぞれの接続電極間に50?400Vをかけ使用する用途に用いられる」のに対して、引用例1では、それが明らかでない点で相違する。 そこで、上記相違点について検討すると、液晶表示素子を、所望に応じて5?100V程度の電圧を印加して使用することは通常行われていることであり(例えば、特開平3-73926号公報:「この液晶表示素子に、これを駆動するための駆動手段を付加して液晶表示装置とされる。この駆動のために電圧を印加する時には、液晶の配列が変化するような交流電圧を印加すればよい。具体的には、5?100Vで10?1000Hz程度の交流電圧を印加すればよい。」(第7頁左下欄第6-11行)、特開平1-285920号公報:「…液晶表示素子とした。…両端の電極に50Vの電圧を印加して透過率を測定した結果は70%であり、電圧印加の有無により、大きなコントラストを示した。」(第7頁右上欄第10-15行))、引用発明は、液晶の種類に特定されることなく、電極接続部分の接着強度を向上させることを目的としているものであるから、引用発明において、印加電圧を通常使用されている、5?100V程度とすることは当業者が適宜なしえたことと認める。 そして、本願発明のマイグレーション抑制による絶縁性向上という効果も、それが接続電極またはガラス基板と異方導電フィルムとの密着性向上に起因するものであること(本願明細書【0004】)からすれば、引用発明においても同様に有しているものといえるし、また、引用例1、2の上記記載事項から予想される範囲内のものにすぎない。 したがって、本願発明は、引用例1、2の記載事項及び周知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。 [5]むすび 以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そのため、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-11-10 |
結審通知日 | 2009-11-17 |
審決日 | 2009-12-02 |
出願番号 | 特願平9-281003 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H05K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 森林 克郎 |
特許庁審判長 |
藤原 敬士 |
特許庁審判官 |
川真田 秀男 鈴木 正紀 |
発明の名称 | 電極の接続方法 |
代理人 | 清水 義憲 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 赤堀 龍吾 |