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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1210464
審判番号 不服2008-24259  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-22 
確定日 2010-01-14 
事件の表示 特願2002-125990「中間転写体及び転写部材、中間転写体及び転写部材の製造方法、並びに中間転写体及び転写部材を用いた画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月 6日出願公開、特開2003-316174〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1.手続の経緯
本願は、平成14年4月26日の出願であって、平成20年8月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月22日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで特許請求の範囲に係る手続補正がなされたものである。
さらに、審査官により作成された前置報告書について審尋がなされたところ、審判請求人から平成21年7月17日付けで回答書が提出されたものである。


第2.平成20年9月22日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年9月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「 第1の画像担持体上に形成された画像を中間転写体上に転写した後、第2の画像担持体上に更に転写する画像形成装置に使用される中間転写体であって、
該中間転写体が、体積抵抗率の異なる少なくとも2種類の樹脂を2軸押出機で混練して成形用原料を得て、該成形用原料を環状ダイスから押出成形してチューブ状フィルムを成形して、該チューブ状フィルムを切断することによって得られた中間転写体であり、
該体積抵抗率の異なる少なくとも2種類の樹脂のうち最も体積抵抗率の高い樹脂と最も体積抵抗率の低い樹脂とが該中間転写体において海島構造を形成しており、かつ、該最も体積抵抗率の低い樹脂が該海島構造の島部分を構成しており、
該島部分が、下記式(1)及び(2):
MA/MB>5 (1)
0.1μm≦MB≦10.0μm (2)
MA:該押出成形による樹脂の流れ方向(MD方向)に該中間転写体 をカットしたときの断面において観察される島部分の各々の最 大長さの平均値
MB:該押出成形による樹脂の流れ方向に対して直角の方向(TD方 向)に該中間転写体をカットしたときの断面において観察され る島部分の各々の円相当径の平均値
に示す関係を満たしていることを特徴とする中間転写体。」
から
「 第1の画像担持体上に形成された画像を中間転写体上に転写した後、第2の画像担持体上に更に転写する画像形成装置に使用される中間転写体であって、
該中間転写体が、体積抵抗率の異なる少なくとも2種類の樹脂を2軸押出機で混練して成形用原料を得て、該成形用原料を環状ダイスから押出成形してチューブ状フィルムを成形して、該チューブ状フィルムを切断することによって得られた中間転写体であり、
該体積抵抗率の異なる少なくとも2種類の樹脂のうち最も体積抵抗率の高い樹脂と最も体積抵抗率の低い樹脂とが該中間転写体において海島構造を形成しており、かつ、該最も体積抵抗率の低い樹脂が該海島構造の島部分を構成しており、
該島部分が、下記式(1)及び(2):
MA/MB>5 (1)
0.1μm≦MB≦10.0μm (2)
MA:該押出成形による樹脂の流れ方向(MD方向)に該中間転写体をカットしたときの断面において観察される島部分の各々の最大長さの平均値
MB:該押出成形による樹脂の流れ方向に対して直角の方向(TD方向)に該中間転写体をカットしたときの断面において観察される島部分の各々の円相当径の平均値
に示す関係を満たしていることを特徴とする中間転写体(但し、MAが10μm以下である場合を除く)。」
に補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「海島構造の島部分」に関して、「MAが10μm以下である場合を除く」点を限定したものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.独立特許要件について
(1)刊行物に記載された発明
(刊行物1について)
原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-6152号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。(下線は当審にて付与した。)

(1-a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特に抵抗値が非電圧依存性に優れている電子写真装置用成形部材に関する。該部材は、例えば無端円筒状フィルムとか繊維状ブラシの形状で提供される。
【0002】
【従来の技術】電子写真装置、例えば複写機によって原画像を複写する場合、感光ドラム全面に帯電せしめる必要がある。帯電手段としては、例えば、コロナ放電を利用したコロナ帯電器、また帯電用部材、例えば帯電用ロールとか、帯電用ブラシ等を直接感光体に接触させ、所定の電圧を印加し、電荷注入を行う接触帯電器等が知られている。後者の接触帯電器の帯電用部材としては、ナイロン樹脂、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂に適量のカーボンブラックを混合したものを原料として、無端円筒状フィルム、繊維状等に成形加工され使用されている。
【0003】従来トナーを転写する中間転写体においては、半導電性のシームレスベルトが使用されているが、これらのシームレスベルトも高分子化合物(樹脂、ゴム等)に電子伝導性の導電剤を均一に錬り込んで、均一分散されたものが実使用されている。その他、除電部材、現像部材等としても前述と同様に使用されている。」

(1-b)「【0009】
【課題を解決するための手段】前記本発明の目的は、次の手段によって容易に達成される。即ちイオン導電性ポリマーを含む熱可塑性樹脂の成形によりなる体積抵抗値あるいは表面抵抗値が10^(6)?10^(14)Ω・cmの成形部材からなる電子写真装置用成形部材の提供によってなされる。以下に前記構成をより詳細に説明する。
【0010】本発明において、イオン導電性ポリマーとは電流の流れがイオンの移動によって発生し、かつその物質が高分子化合物からなる物である。従って、この電流が電子によって運ばれる物質、つまりπ電子によって運ばれる機能を持つ物質は本発明から除外される。ここでπ電子を持つ物質は、例えば共役二重結合を持つ物質、具体的にはカーボンブラックとか、ポリアセチレン等に見られる。イオン導電性ポリマーを用いることによって、熱可塑性樹脂との相溶性に優れ、かつ電圧依存性および時間依存性をきわめて小さくすることが可能となる。
【0011】イオン導電性ポリマーとしては、例えばカルボキシル基に4級アンモニウム塩基を結合する(メタ)アクリレートとの各種(例えばスチレン)共重合体、4級アンモニウム塩基と結合するマレイミドとメタアクリレートとの共重合体等の4級アンモニウム塩基を結合するポリマー、ポリスルホン酸ナトリウム等に見られるスルホン酸のアルカリ金属塩を結合するポリマー、分子鎖中に少なくともアルキルオキシドの親水性ユニットを結合するポリマー、例えばポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール系-ポリアミド共重合体、ポリエチレンオキド-エピクロルヒドリン共重合体、ポリエーテルアミドイミド、ポリエーテルを主セグメントとするブロック型のポリマー等を挙げることができる。これらのポリマーの選択はマトリックスとなる熱可塑性樹脂との相溶性、耐熱性等との関係を十分チェックして行う必要があるが、多くの場合前記のアルキルオキシドの親水性ユニットを結合するより高分子量のポリマーを好ましいイオン導電性ポリマーとして選ぶことができる。
【0012】熱可塑性樹脂は、押出成形により繊維状、シート(フィルム)状、円筒状フイルム等の電子写真装置用部材として容易に成形できるものであれば特に制限はない。例えば熱可塑性ポリイミド、脂肪族ポリアミド、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー、ポリカーボネイト、ABS樹脂、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、そして、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリスチレン系、の熱可塑性エラストマー等を列挙できる。この他により機能性の高い各種樹脂も使用可能であるがあまり溶融温度の高いものは望ましくない。
【0013】前記、熱可塑性樹脂にどのようなイオン導電性ポリマーを選択し、混合するかは前述の相溶性とか耐熱性とかを考慮して決められるが、一例を挙げると次のような組合せがある。好ましいイオン導電性ポリマーとして挙げられる中でポリエーテルを主セグメントとするブロック型ポリマーで例えば、三洋化成工業(株)製のペレスタット6321(商品名)があるが、これはポリオレフィン系の熱可塑性エラストマー、ポリアミド(脂肪族)、フッ素系ポリマー、ポリオレフィン、ABS樹脂等の各樹脂との組み合わせが有効である。
【0014】熱可塑性樹脂とイオン導電性ポリマーとの混合比は、成形部材としての電気特性、体積抵抗値10^(6)?10^(14)Ω・cm好ましくは、10^(7)?10^(12)Ω・cmが、表面抵抗値としても同様に10^(6)?10^(14)Ω/□好ましくは、10^(7)?10^(12)Ω/□が発現されるように適宣選定すればよい。しかし、各抵抗値の他に該樹脂自身の持つ機能的特性の低下の懸念も考慮することが望ましいので、その点も考慮し、可能な限り、少さい混合比にすることが望ましい。かかる点から、イオン導電性ポリマーは一般には約5?50重量%(対熱可塑性樹脂)、好ましくは10?45重量%の範囲内から選ばれる。尚、両者の混合手段には、特に制限はないが押出成形前に両者が十分均一に混合されていることが望ましいので、両者共粉末状又はペレット状で混合し、これらを2軸混練押出機によって混練しつつペレット化するのがよい。また、この混合の際に他の添加剤、例えば各種滑剤、核剤等の少量の添加は許される。」

(1-c)「【0028】
【実施例1】ポリビニリデンフロライド(以下PVDF)粉体にイオン導電性ポリマーとして、三洋化成工業(株)製のペレスタット6321チップを40重量%混合し、これを二軸押出機(バレル温度190?250℃)で混練しつつペレット化した。得られたペレットを十分に乾燥後、次に一軸押出機に環状ダイスをセットして、チューブ状(ベルト状)に単層で押出成形を行った。この際の該押出機のバレル温度は190?230℃、環状ダイスの温度は240℃であった。
【0029】得られたチューブの内径は10mm、膜厚は150±15μmであり、体積抵抗値は10^(10)Ω・cmで、全面一定であった。
【0030】次に該チューブをサイズ20×20cmにカットし、その両面に銀ペーストにより10mmφの円形電極を設けた。この電極を介して10?100Vの範囲で種々に電圧を変えて印加し、電流を測定して、前記する数1の式により体積抵抗値を求めた。各印加電圧に対する体積抵抗値の変化を図1の線グラフにまとめた。同図1で横軸は印加電圧(V)、縦軸は体積抵抗値(Ω・cm)であり、同図1に示す線グラフ1でその変化を示している。」

(1-d)「【0047】
【実施例4】実施例1と同様にベルト内径190mm、厚さ150±20μmのフィルムを成形した。得られたベルト内径は190mm、厚さ150±20μmであり、体積抵抗値10^(10)Ω・cmで表面抵抗値10^(11)Ω/□であった。このフィルムを180℃で縦横各々3%延伸して内径195.7mm、厚さ141±10μmのシームレスベルトを得た。このベルトの全面の抵抗値が1桁以内のバラツキであり安定であった。また、周長差も200μm以内であった。該ベルトの表面抵抗値を10V、100V、500Vで測定した結果を図2の線グラフ6に示す。また、10Vを印加したときの経時的な変化を図3の線グラフ11に示す。尚、図2は印可電圧と表面抵抗値との関係を示す線グラフであり、図3は印可時間と表面抵抗値との関係を示す線グラフである。」

(1-e)「【0054】上記実施例4?6、比較例3、4のシームレスベルトをカラー複写機の中間転写体として使用した結果をまとめ、表2に示す。表2から明らかな様に、電圧依存性、トナークリーニング性、色抜け、色ムラ、長期間使用時の抵抗変化はイオン導電層を持ったベルトにあっては、それを持たないものに比べ良好な結果を示している。
【0055】
【表2】



(1-f)「【0056】
【発明の効果】本発明は前記のとおり構成されているので、次のような効果を奏する。
【0057】前記提供による成形部材として、例えば感光ドラムの帯電用部材として使用すると、仮に該ドラムの感光(光導電層)面にピンホールがあってもそこを中心にトナーが乗らずに、帯状、筋状または薄い色ムラとなって複写されるような問題は発生しない。
【0058】前記提供による成形部材において、例えば電子写真装置内の中間転写体として使用すると、印加する電圧によって、転写効率が悪化し、それによる転写ムラが起こり、得られた画像に画像ムラが発生することはない。また、時間依存性がないので、経時的に安定した画像を得ることができた。」


上記の事項をまとめると、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。(以下、「刊行物1発明」という。)

「カラー複写機の中間転写体として使用されるシームレスベルトであって、
ポリビニリデンフロライド粉体にイオン導電性ポリマーを混合し、これを二軸押出機で混練して得られたペレットを十分に乾燥後、次に一軸押出機に環状ダイスをセットして、チューブ状に押出成形を行い、該チューブをカットして得られた、シームレスベルト。」

(刊行物2について)
また、原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-279709号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は、原文どおり。)

(2-a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電子写真装置において使用される、感光体導電性基板等に好適に使用できるシームレスベルトに関するものである。」

(2-b)「【0005】
【発明の実施の形態】
構成成分
本発明は熱可塑性樹脂及び該熱可塑性樹脂と相溶性を有するポリエステル樹脂及び導電性カーボンブラックによって構成される樹脂組成物を特定の成形法により成形するものである。
熱可塑性樹脂
本発明で使用する熱可塑性樹脂は公知のものを使用することができるが、好ましくは引張強さが6kg/mm^(2 )以上、好ましくは7?9kg/mm^(2) 、引張伸びが1?150%、好ましくは1?100%のものである。この引張伸びは、他成分、特にカーボンブラックの配合及び成形時の延伸状態により変化し、必ずしも本発明の製品基板の数値を示すものではない。
【0006】具体的にはポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリスチレンやスチレン・無水マレイン酸共重合体等のスチレン系樹脂、ポリプロピレンやポリ(4-メチルペンテン-1)等のポリオレフィン樹脂、ポリ弗化ビニリデン等の弗素樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、パラヒドロキシ安息香酸とPETとの共重合体等の液晶ポリエステル樹脂などがある。これらは成形後、架橋などの後処理によって本発明の機械的特性を満足するものであってもよい。特に好ましい熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート(特に芳香族ポリカーボネート)、ポリメチルメタクリレート、及びポリ弗化ビニリデンである。
【0007】熱可塑性重合体
本発明で上記熱可塑性樹脂に配合される熱可塑性重合体は、前記熱可塑性樹脂と完全には相溶しないが層剥離を起こさない程度の相溶性をもつものが使用される。相溶性の目安としては分子構造がよく似ているもの、あるいは分子構造の中に同様の構造ユニットを持つものがある。また溶解性パラメーターの値が比較的近似しているものを選択してもよい。
【0008】具体的には、例えばポリカーボネートに対しては、PETやPBT等のポリアルキレンテレフタレート、ポリエステルエラストマーのように主鎖にエステル結合を持つもの、ポリメチルメタクリレートやエチレン・エチルアクリレート共重合体(エチルアクリレート含有量20%以上)等の側鎖にエステル結合を持つもの等がある。また相溶化剤を少量使用して、相溶性を向上させ、層剥離を防止してもよい。前記熱可塑性樹脂に配合された上記熱可塑性重合体は完全には相溶せず、網目状構造又は海島構造等の分散状態を示す。
【0009】マトリクスと分散相を形成する分散状態において、海島構造の場合はマトリクス中の分散相の粒径は特に限定されないが、層剥離の観点から、10μm以下が好ましく、とりわけ、5μm以下が好ましい。しかし、導電性の観点からは、網目状構造がさらに好ましい。なお、当該分散状態は二種類の重合体だけで形成される必要はなく、カーボンブラックが添加された状態において、形成されればよい。配合されたカーボンブラックは、マトリクスに比べ分散相を形成する重合体との親和性がより高く、当該分散状態はカーボンブラック粒子による導電経路の形成に大きく関与しており、本発明において二種類の重合体の相溶性は重要である。
【0010】導電性カーボンブラック
本発明で使用するカーボンブラックは、N_(2 )吸着によるBET式比表面積が500m^(2 )/g以上、特に600m^(2) /g以上のものが少量の添加量で組成物に必要な導電性を付与できるので好ましい。とりわけ、ファーネスブラックのXCF(Extra ConductiveFurnace)、SCF(Super Conductive Furnace)、CF(Conductive Furnace)及びSAF(Super Abrasion Furnace)は中でも好ましい。XCFとしてはケッチェンブラックインターナショナル社の「ケッチェンブラックEC」、Cabot社の「バルカンXC-72」等があり、SCFとしてはCabot社の「バルカンSC」、「バルカンP」やDegussa社の「コーラックスL」等があり、CFとしてはCabot社の「バルカンC」、Coloumbian社の「コンダクテックスSC」等があり、また、SAFとしては旭カーボン社の「旭#90」、三菱化成工業社の「ダイヤブラックA」やCabot社の「バルカン9」等がある。これらは併用してもよい。またアセチレンブラック等の他のカーボンブラックを半量を超えない範囲で、かつ、配合後のN_(2 )吸着によるBET式比表面積が500m^(2 )/g以上ならば使用することができる。」

(2-c)「【0016】電子写真感光体の調製
感光層は、現在知られている負帯電用の電子写真感光層が適用可能である。本発明の実施例においては、電子写真感光体は機能分離型を用いたが、本発明はこれらの感光層によって限定されるものではなく、感光層の有無に拘らず、シームレスなベルト状の導電性基板として有効な任意の利用をも包含するものである。また、導電性を調整することにより、トナー転写ベルト等の半導電性ベルトへの適用も可能である。」

(2-d)「【0021】実施例1
メルトフローレートが4.6g/10分(280℃、2.16kg)のポリカーボネート94重量%と、メルトフローレートが4.32g/10分(230℃、2.16kg)のポリブチレンテレフタレート6重量%からなる樹脂組成物(この組成物において層分離は見られない)100重量部に対し、比表面積800m^(2) /gのケッチェンブラック11重量部を二軸押出機を用いて混練造粒した。
【0022】得られたペレットをチューブ状に成形するには、特願昭63-55445号明細書に記載されている装置を用いた。すなわち、押出機に装着した環状ダイには同一軸線上に支持管棒が固定され、この支持管棒に冷却マンドレルが同心状に固設されており、支持棒には押出チューブの内圧を制御する気体連続供給・排出管及び冷却マンドレル内の熱媒体循環パイプが付設されている。また、環状ダイと冷却マンドレルとの間には押出チューブを外部より冷風により冷却する冷却リングが同心に配設されている。
【0023】環状ダイより280℃で下方に押出されたチューブ状導電性樹脂フィルムは、外周辺を冷却リングから吹き出す冷気により冷却されると共に、その内側に供給圧力と供給量とを制御したエアーを連続的に供給・排除することにより内圧を一定に保たれて冷却マンドレルに接触して冷却固化し、冷却マンドレルの下方にチューブの内外に配設されたニップロールによってチューブ状態を維持したままで連続して引取られ、シームレスベルトに成形された。得られたシームレスベルトの導電性能を測定した。また、得られたシームレスベルト上に感光層を成膜し、電子写真特性を評価した。また、得られた感光体の画像出力評価を行なった結果、鮮明な画像が得られた。」

上記摘記事項において「熱可塑性重合体」は、カーボンブラックとの親和性がより高いのであるから、「カーボンブラックと親和した熱可塑性重合体」は、「低抵抗樹脂」であり、「カーボンブラックとの親和性がより低い熱可塑性樹脂」は、「高抵抗樹脂」であるといえる。

したがって、上記の事項を総合すると、刊行物には、以下の事項が開示されていると認められる。(以下、「刊行物2記載事項」という。)

「転写ベルト等に用いられる半導電性のシームレスベルトにおいて、該ベルトは少なくとも2種類の樹脂を混合・成形して製造されるものであって、該2種類の樹脂は、高抵抗樹脂と低抵抗樹脂であり、両樹脂は完全には相溶せず、低抵抗樹脂が島部分となる海島構造等の分散状態となり、海島構造での分散相の粒径は特に限定されないが、層剥離の観点から、10μm以下が好ましいこと。」

(刊行物3について)
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-187395号公報(以下、「刊行物3」という。)には、次の事項が記載されている。

(3-a)「【0066】図3に、本発明に係わる成型装置の一例を示す。本装置は、基本的には押し出し機、環状ダイス、及び必要に応じ気体吹き込み装置より成るが、もちろんこれに限ったものではない。
【0067】図3は、2層構成ベルト成型用に押し出し機100、及び110と2基具備しているが、少なくとも本発明においては1基以上有していれば良い。次に、単層の中間転写体の製造方法について述べる。
【0068】まず、成型用樹脂、導電剤、添加剤等を所望の処方に基づき、予め予備混合後、混練分散をせしめた成型用原料を、押し出し機100に具備したホッパー120に投入する。押し出し機100は、成型用原料が後工程でのベルト成型が可能となる溶融粘度となり、また原料相互が均一分散するように、設定温度、及び押し出し機のスクリュー構成は、選択される。成型用原料は、押し出し機100中で溶融混練され溶融体となり、環状ダイス140に入る。環状ダイス140は、気体導入路150が配設されており、気体導入路150より空気が環状ダイス140に吹き込まれることにより、環状ダイス140を通過した溶融体は、径方向に拡大膨張する。また、気体導入路150に空気を吹き込まずに成型しても良い。
【0069】膨張した成型体は、冷却リング160により冷却されつつ上方向に引き上げられる。この時、寸法安定ガイド170の間を通過することより、最終的な形状寸法180が決定される。更に、これを所望の幅に切断することにより、本発明の中間転写ベルト190を得ることができる。
【0070】本発明における押し出し成型比とは、環状ダイス140の口径に対する環状ダイスを通過し口径が拡大膨張した成型後の形状寸法180が得られた時の口径の比を表すものである。
【0071】すなわち、(押し出し成型比)=(成型後の口径)/(環状ダイスの口径)である。
【0072】前述の説明は、単層ベルトに関してであったが、2層の場合は図3に示されるように、更に押し出し機110を配置し、押し出し機100の混練溶融体と同時に2層用の環状ダイス140へ、押し出し機110の混練溶融体を送り込み、2層同時に拡大膨張させ2層ベルトを得ることができる。
【0073】もちろん3層以上の時は、層数に応じ相応に押し出し機を準備すれば良い。図4?6に2層及び3層構成の中間転写ベルトを例示する。このように本発明は、単層のみならず、多層構成の中間転写ベルトを一段工程で、かつ短時間に寸法精度良く、成型することが可能である。この短時間成型が可能ということは、大量生産及び低コスト生産が可能であることを十分示唆するものである。
【0074】なお、環状ダイスのダイギヤップより、成型されたベルトの肉厚を薄くすることが好ましい。これは、例えば150μmのダイギヤップで150μmのフィルムを作ろうとした場合、ダイギヤップを50μm動かした時、フィルムはそのまま50μm変化するが、実際にダイギヤップを1μm単位で調整するのは困難であり、その結果、膜厚が不均一なフィルムができ易くなる。しかし、例えば1.5mmのダイギヤップで150μmのものを作る場合は、ダイギヤップ50μmのずれでも最終的なフィルムの膜厚の振れは1/10になるので、実際の膜厚振れは5μmとなり、その結果、最終的に精度高くフィルムが作れるのである。よって環状ダイスのダイギヤップより、成型されたベルトの肉厚を薄くすることが望ましい。
【0075】また、環状ダイスのダイギヤップより成型されたベルトの肉厚を薄くする方法としては、環状ダイスの先端から押し出し機の押し出しによって吐出されたチューブ状溶融物の吐出速度より、フィルムの引き取り速度を速くする方法がある。例えば、ダイスの先端からフィルムの引き取り無しで押し出されたチューブ状の溶融物の押し出し速度が1m/minで、ダイスの口径と成型されるフィルムの口径が同一で引き取り速度を10m/minとした時は、フィルムの肉厚が環状ダイスのダイギヤップの1/10となり、環状ダイスのダイギヤップより、成型されたベルトの肉厚を薄くすることができる。
【0076】更に、環状ダイスのダイギヤップより、成型されたベルトの肉厚を薄くする方法としては、押し出し成型比を1より大きくする方法がある。すなわち、ダイスの径よりフィルム径を大きくすることにより、引き取り速度が押し出し速度と同一であっても、径が大きくなった分フィルム肉厚が薄くなるのである。この時の成型比の最大値は、4.0以下が望ましい。これ以上大きいと、膨張したフィルムの安定性が悪くなる場合があり、この時の膜厚が不安定になることがあるからである。
【0077】また、押し出し成型比を1以下としても引き取り速度を速くすることで、環状ダイスのダイギヤップより、成型されたベルトの肉厚を薄くすることができるが、この場合、主に成型時の樹脂の分子量が低い等の条件の時に有効である。
【0078】すなわち、溶融時の粘度が低い場合に成型比を1より大きくすると、フィルムに穴が空いてしまったりすることがあり、この場合には成型比を1以下にすることで、環状ダイスのダイギヤップより成型されたベルトの肉厚を薄くすることが可能となるのである。この時の成型比の最小値は、0.5以上が望ましい。0.5未満の場合は、フィルム引き取り時にフィルム引き取り速度を大幅に速くする必要があり、成型が不安定になるので、好ましくない。
【0079】また、押し出し成型比を1より大きくする場合の方法としては、環状ダイスの先端から押し出し機の押し出しによって吐出されたチューブ状溶融物に大気圧以上の気体を吹き込むことにより、そのチューブを膨張させながら連続的に成型させる成型方法がある。この場合、大気圧以上の気体がチューブに吹き込まれることで、チューブが膨張し押し出し成型比を1より大きくすることができる。この時吹き込まれる気体は、空気、窒素、二酸化炭素、アルゴン等選択することができるが、これに限らない。」

(3-b)「【0086】(実施例1)
MFA樹脂(MFR=3) 100部
導電性カーボンブラック 14部
上記の配合を2軸の押し出し混練機で混練せしめ、所望の電気抵抗になるようにカーボン等の添加剤を十分にバインダー中に均一分散させ、成型用原料(1)を得た。更に、これを1?2mmの粒径の混練物とした。
【0087】次に、図3に示される一軸押し出し機100のホッパー120へ前記混練物を投入し、設定温度を360?380℃の範囲に調節して押し出すことにより、溶融体とした。溶融体は引き続いて、ダイス直径100mm、ダイギヤップの幅1200μmの円筒状単層用押し出しダイス140に導かれた。この時に、ダイス先端から吐出された溶融体の吐出速度は、1m/minであった。更に、そこで気体導入路150より空気を吹き込み拡大膨張させ、引き取り速度5m/minで引き取りながら成型を行いつつ、230mmごとにチューブ状フィルムを長手方向に直交する方向に連続的に切断することによりベルトとした。
【0088】この時の押し出し成型比は、1.6であった。この結果、最終的な形状寸法として、直径160mm、厚み150μm、ベルト巾230mmとなり、中間転写ベルト190を得た。これを中間転写ベルト(1)とする。
【0089】また、前記電気抵抗測定装置を用い、100V印加して、上記中間転写ベルト(1)を図7に示されるように周方向に4箇所、各位置での軸方向に2箇所、計8箇所で測定を行った結果、中間転写ベルト(1)の体積抵抗測定値の平均値は9.0×10^(8)Ωであり、表面抵抗測定値の平均値は6.0×10^(9)Ωであった。ベルトの体積抵抗及び表面抵抗のバラツキを測定したが、8箇所の抵抗測定値は10倍以内に収まっていた。同様の位置での肉厚測定のバラツキは、ダイギヤップより成型されたベルトの肉厚のほうが薄いため、膜厚のコントロールが容易であったので、150μm±10μmの範囲であった。
【0090】中間転写ベルト(1)の目視観察によると表面にはブツ、フィッシュアイ等の異物、成型不良は見られなかった。この中間転写ベルト(1)を図1に示されるフルカラー電子写真装置に装着し、80g/m^(2)紙にフルカラー画像をプリントし、以下のように転写効率を定義して、転写効率の測定を行った。
【0091】一次転写効率(感光ドラムから中間転写ベルトヘの転写効率)=(中間転写ベルト上の画像濃度)/(感光ドラム上の転写残画像濃度+中間転写ベルト上の画像濃度)
【0092】二次転写効率(中間転写ベルトから紙への転写効率)=(紙上の画像濃度)/(紙上の画像濃度+中間転写ベルト上の転写残画像濃度)
【0093】本実施例では、感光ドラム1として、最外層にPTFEの微粉末を含有する有機感光ドラム(OPC感光ドラム)を用いた。そのため、高い一次転写効率が得られた。また、MFAの表面が平滑で、離型性が高かったので、二次転写効率も高いものとなった。それらの値は、一次転写効率、二次転写効率、それぞれ96%、95%であった。
【0094】なお、中間転写ベルトのクリーニング方式は、クリーニング用帯電部材7に1×10^(8)Ωの抵抗を持つ弾性ローラを用いた一次転写同時クリーニング方式とし、フルカラー画像10万枚の連続プリントを行った。初期よりベルトの抵抗不均一に起因する画像濃度ムラもなく、10万枚繰り返し使用後も表面にトナーのフィルミングもなく、ヒビ割れ、削れ及び摩耗が生ずることなく、初期と同様の表面性のままであった。」

(3-c)図3として、




(2)対比
本願補正発明と刊行物1発明とを比較する。
まず、刊行物1発明における
「カラー複写機の中間転写体として使用されるシームレスベルト」、
「ポリビニリデンフロライド粉体にイオン導電性ポリマーを混合し、これを二軸押出機で混練して得られたペレット」、
「ペレットを十分に乾燥後、次に一軸押出機に環状ダイスをセットして、チューブ状に押出成形を行い、該チューブをカットして得られた」、
「ポリビニリデンフロライド粉体」、
「イオン導電性ポリマー」は、
それぞれ、本願補正発明における
「第1の画像担持体上に形成された画像を中間転写体上に転写した後、第2の画像担持体上に更に転写する画像形成装置に使用される中間転写体」、
「体積抵抗率の異なる少なくとも2種類の樹脂を2軸押出機で混練して(得られた成形用原料)」、
「該成形用原料を環状ダイスから押出成形してチューブ状フィルムを成形して、該チューブ状フィルムを切断することによって得られた」、
「最も体積抵抗率の高い樹脂」、
「最も体積抵抗率の低い樹脂」に相当する。
そして、刊行物1発明において、2種類の樹脂である、「ポリビニリデンフロライド粉体」と「イオン導電性ポリマー」とが海島構造を構成するかは、特定されていないものの、これら2種類の樹脂が混練によって通常、海島構造を構成することは、刊行物2記載事項などから明らかな事項である。

したがって、本願補正発明と刊行物1発明とは、
「第1の画像担持体上に形成された画像を中間転写体上に転写した後、第2の画像担持体上に更に転写する画像形成装置に使用される中間転写体であって、
該中間転写体が、体積抵抗率の異なる少なくとも2種類の樹脂を2軸押出機で混練して成形用原料を得て、該成形用原料を環状ダイスから押出成形してチューブ状フィルムを成形して、該チューブ状フィルムを切断することによって得られた中間転写体であり、
該体積抵抗率の異なる少なくとも2種類の樹脂のうち最も体積抵抗率の高い樹脂と最も体積抵抗率の低い樹脂とが該中間転写体において海島構造を形成しており、かつ、該最も体積抵抗率の低い樹脂が該海島構造の島部分を構成する、中間転写体。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]:海島構造の島部分に関して、
本願補正発明においては、
「該島部分が、下記式(1)及び(2):
MA/MB>5 (1)
0.1μm≦MB≦10.0μm (2)
MA:該押出成形による樹脂の流れ方向(MD方向)に該中間転写体をカットしたときの断面において観察される島部分の各々の最大長さの平均値
MB:該押出成形による樹脂の流れ方向に対して直角の方向(TD方向)に該中間転写体をカットしたときの断面において観察される島部分の各々の円相当径の平均値
(但し、MAが10μm以下である場合を除く)」
との関係を満たすのに対して、
刊行物1発明においては、そのような特定がない点。


(3)判断
上記相違点について検討する。
(相違点について)
刊行物2には、
「転写ベルト等に用いられる半導電性のシームレスベルトにおいて、該ベルトは少なくとも2種類の樹脂を混合・成形して製造されるものであって、該2種類の樹脂は、高抵抗樹脂と低抵抗樹脂であり、両樹脂は完全には相溶せず、低抵抗樹脂が島部分となる海島構造等の分散状態となり、海島構造での分散相の粒径は特に限定されないが、層剥離の観点から、10μm以下が好ましいこと。」が記載されており、
該刊行物2記載事項は、海島構造の分散状態における分散相の粒径に着目したものであるが、請求人も主張するとおり、刊行物1及び刊行物2には、「島部分」のMAおよびMBに関する記載はない。
しかしながら、刊行物1に記載のものにおいても、例えば、「ベルトの全面の抵抗値が1桁以内のバラツキであり安定であった」(摘記事項(1-d))とあるとおり、本願補正発明と同様に、表面抵抗のバラツキが少なく、画像欠陥が発生せず、高電圧下でもリークの発生がないものであるから、刊行物1発明においても、本願補正発明と同様に、低抵抗樹脂の分散が好ましい状態にあるものと推測できる。
また、押出成形によって、樹脂は、MD方向に延伸され、海島構造の島部分も当然延伸されるのであるから、混練装置によって分散された状態と比較して、「MA」が大きくなることは、自明の事項である。
ところで、本願の明細書に記載の実施例1?8及び比較例1?3について検討すると、「MA/MB>5」を満たさないものは、「5」に近い値である「4.25」を示す比較例1のみであるから、通常の混練条件・成形条件を選択すれば、ほとんどの場合において、「MA/MB>5」を満たすものと考えられる。
また、「MAが10μm以下」である、実施例5と、比較例1については、混練条件である、2軸押出混練機の「スクリュー回転数」が「400rpm」と高回転で、「島部分」が過度に粉砕されることによると推察され、「MBが10μm以上」である、比較例2、3については、「スクリュー回転数」が「80rpm」と低回転であることによると考えられる。
さらに、刊行物3に示されるように、本願の実施例における成形条件は公知のものであって、特別な成形処理を行うものではない。
してみると、「スクリュー回転数」が高回転でも、低回転でもない範囲、例えば、「120rpm」ないし「200rpm」を選択すれば、式(1)(2)及び「MAが10μm以下である場合を除く」を全て満たす蓋然性が高いと判断できる。
そして、本願の明細書に記載の実施例を検討しても、「MA/MB>5」との数値限定には格別の臨界的意義は見出せない。
加えて、刊行物2においても分散相の粒径に着目しているように、分散相の粒径を測定する程度のことは当業者の通常の創作活動の一環であり、かつ、MD方向とTD方向とで物性や粒子の配置などが異なることも周知の事項であるから、MD方向及びTD方向の断面における粒径を観察することも、当業者が適宜為し得ることである。
したがって、刊行物1発明において、「島部分」のMAおよびMBを測定するとともに、式(1)(2)などの、適宜の数値範囲を設定することは、当業者が容易に為し得たことである。

(本願補正発明が奏する効果について)
そして、上記相違点によって、本願補正発明が奏する「転写時に画像欠陥が発生せず、更には、高電圧を印加した場合でも、リークの発生がなく、また長時間画像出力してもベルト裂けが発生しない、高品質で低コストの中間転写体又は転写部材を得ることができる。」との効果も、刊行物1?3に記載された事項から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

(請求人の主張について)
請求人は、請求の理由において、
『引用文献1には、「島部分」のMAおよびMBに関する記載は全くありません。 ・・・引用文献2にも、「島部分」のMA/MBに関する記載はありません。 ・・・
たしかに、審査官殿のご認定のとおり、引用文献2に記載された10μmなる数値は、層剥離に関して臨界的な意義が把握される性質のものではなく、単なる程度を示すものにすぎないかもしれません。
しかしながら、このたびの「当業者」は、引用文献2の[0009]の上記教示が臨界的意義の存在しない単なる程度を示すものにすぎなかったとしても、それでもなお、あえてそれにきっちり従ったうえで、引用文献1に記載のベルトのイオン導電性ポリマーからなる分散層の粒径を10μm以下にしようと考える者なのであります。そのような「当業者」である以上は、MBのみならずMAもきっちり10μm以下にしようと考えるのが自然であって、MBの設定の際には引用文献2の[0009]の上記教示にきっちり従って「10μm以下」としたのに、MAの設定の段になると途端に「10μmは単なる程度を示すものにすぎない」として引用文献2の[0009]の上記教示を軽んじ、これに従わないというのは、考え方に一貫性がなく、きわめて不自然であります。この不自然さは、上記臨界的意義の存否には何ら左右されるものではありません。
すなわち、審査官殿の引用文献2の[0009]の記載に対する解釈は、MAの場合とMBの場合との間で一貫性がなく、きわめて不自然なものであり、そのような解釈を前提にして本願発明が引用文献1?4から容易であるとした審査官殿の上記ご認定は、不当なものであるといわざるをえません。』と主張し、
また、回答書においても、
『また、審査官殿は、上記のとおり、
「引用文献2に記載される事項は…10μmは単なる程度を示すものであって…引用文献1記載の発明に対し引用文献2記載の技術的事項を適用するにあたり、10μmより少しでも大きい径が当然に排除されるとはいうことはできない。」
と認定されております。
しかしながら、このたび想定されている当業者は、引用文献2の[0009]の上記教示に従ったうえで、引用文献1に記載のベルトのイオン導電性ポリマーからなる分散層の粒径を10μm以下にしようと考える者なのでありますから、MBのみならずMAも10μm以下にしようと考える方が自然であって、MBの設定の際には引用文献2の[0009]の上記教示に従って10μm以下としたのに、MAの設定の際には引用文献2の[0009]の上記教示に従わないというのは、考え方に一貫性がなく、不自然であります。
仮に、引用文献2の[0009]の上記教示がただちにMA>10μmとすることの阻害要因になるとまではいえないとしても、引用文献2の[0009]の上記教示に反してまでMA>10μmにするとすれば、MA>10μmにする試みをしたであろうという推測が成り立つのみでは十分ではなく、MA>10μmにしたはずであるという示唆等が存在することが必要であると考えられるところ(※)、そのような示唆等は、引用文献1および2ならびに周知例3および4のいずれにも存在しません(※ 平成20年(行ケ)第10096号の「…当該発明が容易想到であると判断するためには,先行技術の内容の検討に当たっても,当該発明の特徴点に到達できる試みをしたであろうという推測が成り立つのみでは十分ではなく,当該発明の特徴点に到達するためにしたはずであるという示唆等が存在することが必要であるというべきであるのは当然である…」との判示より。)。
また、本願発明の効果に関して、審査官殿は、周知例5の[0035]?[0038]の記載を引用され、当業者に予測できない格別の効果であるとはいえないと認定されております。
しかしながら、周知例5の[0035]?[0038]に記載の「…樹脂本来の様々な物性を低下させることなく…」の「様々な物性」が具体的にどのような物性を指すのかが不明である以上、抵抗均一性が高く、耐久性も高い中間転写体/転写部材を提供することができるという本願発明の効果が周知例5の[0035]?[0038]の記載によって容易に予測することができるとはいえないものと思料いたします。
そもそも、中間転写体/転写部材に関する記載がない周知例5の1件のみでは、周知例5に記載されている上記事項が当業界(中間転写体/転写部材に係る技術分野)における周知事項になっているとまでは到底いえないものと思料いたします。 』と主張している。

まず、「MBのみならずMAもきっちり10μm以下にしようと考えるのが自然」との主張につき検討する。
本願の請求項1の記載から明らかなとおり、「MA」は、MD方向の断面において観察される島部分の各々の「最大長さの平均値」であり、また、「MB」は、TD方向の断面において観察される島部分の各々の「円相当径の平均値」であるから、MD方向の断面において観察される島部分の各々の「円相当径の平均値」は、「MA」と「MB」の間の値になるものと推測できる。
一方、刊行物2の記載において、「10μm以下」である、海島構造の「分散相の粒径」は、「最大長さ」であるか、「円相当径」であるか不明であるものの、MD方向、TD方向の限定もないのであるから、「特定方向に限定されない粒径」であることは明らかである。
そして、前述のとおり、押出成形によって、樹脂は、MD方向に延伸され、海島構造の島部分も延伸されて、混練装置によって分散された状態と比較して、「MA」が大きくなることは、自明の事項であるから、「特定方向に限定されない粒径」が「10μm以下」であっても、「MA」が必ずしも「10μm以下」にはならないことは当然のことといえる。
さらに、刊行物2の記載において、「分散相の粒径は特に限定されないが、層剥離の観点から、10μm以下が好まし・・」とあるとおり、「成形後の粒径」も制御すべきとは何ら記載も示唆もされていないのであるから、一旦分散された後に一軸押出によって成形される際に、「MBのみならずMAもきっちり10μm以下にしようと考える」ことは、むしろ不自然というべきである。

つぎに、効果に関しては、刊行物1に記載のものにおいても、本願補正発明に係る中間転写ベルトと同様に、体積抵抗率、表面抵抗率のバラツキが所定範囲内(全面1桁以下のバラツキ)であり、かつ、500Vを印加してもリークは発生しておらず、画像欠陥もないのであるから、本願補正発明が格別の効果を奏するとはいえない。

以上のとおり、請求人の上記主張は採用できない。

(4)まとめ
以上のように、本願補正発明は、刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.補正却下の決定についてのむすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
平成20年9月22日付けの手続補正は上記のとおり却下され、平成20年7月31日付けの手続補正は、原審において補正却下の決定がなされているので、本願の請求項1?18に係る発明は、平成19年9月25日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定されるものであり、特に、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「 第1の画像担持体上に形成された画像を中間転写体上に転写した後、第2の画像担持体上に更に転写する画像形成装置に使用される中間転写体であって、
該中間転写体が、体積抵抗率の異なる少なくとも2種類の樹脂を2軸押出機で混練して成形用原料を得て、該成形用原料を環状ダイスから押出成形してチューブ状フィルムを成形して、該チューブ状フィルムを切断することによって得られた中間転写体であり、
該体積抵抗率の異なる少なくとも2種類の樹脂のうち最も体積抵抗率の高い樹脂と最も体積抵抗率の低い樹脂とが該中間転写体において海島構造を形成しており、かつ、該最も体積抵抗率の低い樹脂が該海島構造の島部分を構成しており、
該島部分が、下記式(1)及び(2):
MA/MB>5 (1)
0.1μm≦MB≦10.0μm (2)
MA:該押出成形による樹脂の流れ方向(MD方向)に該中間転写体 をカットしたときの断面において観察される島部分の各々の最 大長さの平均値
MB:該押出成形による樹脂の流れ方向に対して直角の方向(TD方 向)に該中間転写体をカットしたときの断面において観察され る島部分の各々の円相当径の平均値
に示す関係を満たしていることを特徴とする中間転写体。」

2.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用された刊行物1?3、及び、その記載事項は、前記第2.2.(1-a)?(3-c)で示したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記第2.2.で検討した本願補正発明から、「海島構造の島部分」に関して、「MAが10μm以下である場合を除く」点を削除したものである。

そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2.2.に記載したとおり、刊行物1に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
なお、請求人は、当審からの審尋への回答書において、補正の用意がある旨記載しているが、仮に補正されたとしても、進歩性を有するものとも認められないので、特許法が補正の時期的制限を設けていることの趣旨に鑑みて、補正の機会を設けることとはしない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-29 
結審通知日 2009-11-10 
審決日 2009-11-27 
出願番号 特願2002-125990(P2002-125990)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G03G)
P 1 8・ 121- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 一  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 大森 伸一
柏崎 康司
発明の名称 中間転写体及び転写部材、中間転写体及び転写部材の製造方法、並びに中間転写体及び転写部材を用いた画像形成装置  
代理人 内尾 裕一  
代理人 西山 恵三  

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