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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1210524
審判番号 不服2007-17844  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-27 
確定日 2010-01-20 
事件の表示 特願2002-183165「画像処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月22日出願公開、特開2002-335369〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
出願日 :平成14年 6月24日
拒絶査定日 :平成19年 5月24日
審判請求日 :平成19年 6月27日
拒絶理由通知(最初):平成21年 3月24日
意見書及び手続補正書:平成21年 5月29日
拒絶理由通知(最初):平成21年 7月22日
意見書及び手続補正書:平成21年 9月25日

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は,平成21年9月25日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものであるが,請求項1及び2の「画像データを出力するのためのレイアウト」との記載は「画像データを出力するためのレイアウト」の明らかな誤記であるから,請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものと認められる。

移動通信端末から近接無線通信方式で伝送される複数のフォーマットであらわされる画像データを,通信方式,データフォーマットを特定する情報を解析したのち前記特定した情報に従って連続して受信する受信手段と,
前記受信手段より複数連続して受信した複数のフォーマットであらわされる画像データの各々に対し,第1段階としてラインの追加,ライン色指定,ライン幅指定,所定のマークの追加のうちの少なくとも1つを含むコンテンツ編集入力を受け付ける段階と,第2段階として前記複数連続して受信した画像データを出力するためのレイアウトを予め複数用意された分割レイアウトオプションから選択させる段階とを含む編集処理を行なう編集処理手段と,
前記編集処理手段により編集された複数の画像データと前記選択された分割レイアウトオプションとに基づいて加工を行って印刷データを作成し,前記印刷データをプリンタに受け渡すことにより印刷するための印刷手段と,
を備えることを特徴とする画像印刷処理装置。

第3 引用文献
審判合議体において平成21年7月22日付けで通知した拒絶理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である登録実用新案第3085190号公報(以下,「引用文献5」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている(記載箇所は段落番号等で表示)。

ア 「 【0056】
図2に示すように,上記コンピュータ装置7は,画像の合成を行う画像合成手段30と,カメラ6による撮影や画像の合成等の制御を行う撮影・合成制御部31とを備えている。上記撮影・合成制御部31は,コイン検出部17からの検出信号を受信することにより,撮影や画像合成等の制御を開始するようになっている。」

イ 「 【0086】
このとき,まず,メタリック色以外の普通色のペン入力が指示され,使用者2は,タッチペン12の先端をディスプレイ8表面のペン入力部35に接触させて所望の文字や図形等の画像を入力する(S6)。例えば,図6に示すように,ディスプレイ8に表示されたペンのアイコン25Aをタップしてから,静止画像の上にタッチペン12の先端で好みの文字等を入力することにより,手書きの文字等が上記静止画像に合成され,ディスプレイ8に表示される。そして,入力された普通色の文字等の画像データC1は,第1画層メモリ21に格納され,第1画層23に表示される(図3参照)。」

ウ 「 【0088】
一方,使用者2は,タッチペンによるメタリック色のペン入力を行い(S8),メタリック色の手書きの文字等が上記静止画像に合成され,ディスプレイ8に表示される。
【0089】
このメタリック色のペン入力は,例えば,金色のペンのアイコン25Bや銀色のペンのアイコン25Cをタップしてからディスプレイ8の表面に手書きで文字等を描くことにより行われる。また,星マークのアイコン26やハートマークのアイコン27をタップして星マークやハートマーク等のスタンプ画像を静止画像の任意の位置に配置することもできる。そして,入力されたメタリック色の文字等の画像データC2は,第2画層メモリ22に格納され,第2画層24に表示される(図3参照)。」

エ 「 【0116】
この画像プリント装置は,写真画像等の第1画像の画像信号に係る画像データを入力する画像データ入力部と,上記写真画像等の第1画像に合成される手書き画像等の第2画像を入力する2つのタッチペン12と,写真画像や手書き画像等の画像を表示する2つのディスプレイ8と,上記写真画像および手書き画像等を印刷媒体15に印刷する2つのプリンタ9とを備えている。そして,上記プリンタ9として,上述した第1および第2記録ヘッド43,45を備えたプリンタ装置が用いられている。」

オ 「 【0118】
また,上記画像データ入力部として,デジタルカメラ,ビデオカメラ,携帯電話,PDA,パソコン,スキャナ等の端末装置を接続して上記端末装置に格納されている画像データを入力するインターフェース端子70を備えている。上記インターフェース端子70としては,例えば,USB,RS-232C,パラレル,IEEE1394,SCSI等の各種の規格を適用することができる。また,赤外線通信(IrDA)やBluetooth等の無線インターフェースを適用することも可能である。」

カ 「 【0120】
上記画像プリント装置は,図2に示すものと同様に画像合成手段,制御部,印刷制御部等を有するコンピュータ装置7を備えている。上記コンピュータ装置7は画像編集手段を備え,画像データ入力手段に入力された写真画像等の画像データの加工や編集を行ないうるようになっている。上記加工や編集としては,例えば,画像サイズや解像度の変更,明るさ・コントラスト・レベルの補正,トリミング,拡大,縮小,変形,削除等があげられる。これらの加工や編集は,画像全体に行なうこともできるし,画像のある領域を選択して行なうこともできる。
【0121】
加工や編集の作業は,例えば,つぎのようにして行なうことができる。,まず,コンピュータ装置7に読み取られた複数の画像データをディスプレイ8に一覧表示し,編集対象となる画像をタッチペン12で選択する。選択された画像は2つのディスプレイ8のうち少なくとも1つに表示され,タッチペン12の操作により加工や編集が行なわれる。加工された画像の画像データは,記録媒体72に上書き保存することもできるし,コンピュータ装置7の格納部に格納することもできる。
【0122】
上記画像プリント装置は,加工・編集前の元画像や加工・編集後の画像に対してタッチペン12により手書き画像やスタンプ画像を入力し,画像合成を行なうようになっている。合成画像はディスプレイ8に表示され,コンピュータ装置7にあらかじめ格納されているフレーム画像や背景画像等と合成することもできる。合成画像の画像データは,記録媒体72に上書き保存することもできるし,コンピュータ装置7の格納部に格納することもできる。
【0123】
上記画像プリント装置では,元画像,編集画像,合成画像等の中から,タッチペン12により印刷対象となる画像を選択してプリント出力できるようになっている。印刷対象画像は1枚または2枚以上選択可能で,印刷レイアウトや印刷部数の設定を行ないうるようになっている。」

前掲アないしカの記載及び図面によると,引用文献5には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

写真画像等の第1画像の画像信号に係る画像データを入力する画像データ入力部と,画像の合成を行う画像合成手段を備えたコンピュータ装置とを備え,
前記画像データ入力部はデジタルカメラ,携帯電話,PDA等の端末装置を接続して当該端末装置に格納されている画像データを入力するインターフェース端子を備え,
前記インターフェース端子は赤外線通信(IrDA)やBluetooth等の無線インターフェースを適用することが可能なものであり,
前記コンピュータ装置に入力された複数の画像データを一覧表示し,編集対象となる画像をタッチペンで選択し,加工・編集を行い,
前記加工・編集前の元画像や編集後の画像に対して,タッチペンにより手書き画像や星マークやハートマーク等のスタンプ画像を入力し,画像合成を行い,
印刷対象となる合成画像を選択してプリンタにてプリント出力できるようになっており,
前記印刷対象となる画像は1枚または2枚以上選択可能で,印刷レイアウトや印刷部数の設定を行ないうるようになっている画像プリント装置。

同じく,審判合議体により平成21年7月22日付けで通知された拒絶理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-77782号公報(以下,「引用文献6」という。)には次の事項が図面と共に開示されている(記載箇所は段落番号等で表示)。

キ 「【0050】プリンタ36は,画像シールを作成する部分であり,CCDカメラ15により撮影され,後述の落書き処理などが施された後の画像(プリントすべきとして確定した画像,以下,プリント画像と称する)をシール紙などに印刷し,出力する。プリンタ36は,利用者が選択したプリント画像を,指定された分割単位(後述する図12参照)で剥がせるようなシールシート上に印刷する。なお,利用者は,1枚のシールシート上に,数種類のプリント画像を選択して印刷させることができる。」

ク 「【0056】次に,図3および図4のフローチャートを参照して,画像印刷装置1の印刷処理について説明する。
(中略)
【0062】ステップS4において,表示プロセッサ37は,CPU31からの指示に基づいて操作パネル13に取り込み画像を表示する。操作パネル13-1には,例えば,図7(A)に示すように,CCDカメラ15が撮影している取り込み画面が表示される。既に撮影した撮影画像のうち,利用者が後述するキープボタンを操作してキープ画像を選択している場合,操作パネル13-2には,図7(B)に示すように,キープ画像が表示される。なお,利用者は,1枚のシールシートに最大4種類の撮影画像をプリントできるので,最大4種類の画像をキープすることができる。
(中略)
【0065】ステップS6において,表示プロセッサ37は,撮影前のカウントダウン画面を表示する。操作パネル13-1には,例えば,図8(A)のようなカウントダウン画面が表示される。表示プロセッサ37-1は,CPU31からの指示に基づいて,画面左側に表示されているカウントダウンインジゲータ71の1番上の表示から点灯を開始する。CCDカメラ15は,カウントダウンインジゲータ71の1番下の表示が点灯されたとき,撮影を実行する。操作パネル13-2にも,カウントダウンインジゲータ71が表示されており,表示プロセッサ37-2は,表示プロセッサ37-1の処理と同様に点灯させる。また,カウントダウンインジゲータ71の点灯に合わせて,音声出力装置40は,スピーカ11から音声ガイダンスによるカウントダウンを出力する。
(中略)
【0072】ステップS10において,CPU31は,明るさ調整画面(図10(A))でキープボタン104が操作されたか否かを判定する。CPU31は,キープボタン104が操作されたと判定した場合,ステップS11において,キープすることが選択された撮影画像をキープ画像に追加する。
【0073】ステップS12において,CPU31は,表示プロセッサ37に問い合わせ,残り撮影可能枚数が0か否か(4種類のキープ画像が選択されたか否か)を判定する。CPU31は,残り撮影可能枚数が0でない(まだ撮影可能である)と判定した場合,処理はステップS4に戻り,それ以降の処理が繰り返し実行される。
(中略)
【0076】ステップS13において,CPU31は,撮影終了ボタン111が操作されたと判定した場合,ステップS14の処理に進む。また,CPU31は,ステップS12の処理で,残り撮影可能枚数が0と判定すると,利用者に対して撮影終了ボタンしか操作できなくするので,この場合も処理はステップS14に進む。
(中略)
【0077】ステップS14において,表示プロセッサ37は,CPU31からの指示に基づいて,操作パネル13に落書き画面を表示する。落書き画面は,例えば,図11(A)および図11(B)に示すように表示される。図11の例では,操作パネル13-1と操作パネル13-2で,異なった落書き対象のキープ画像が選択されている。利用者は,落書き対象のキープ画像を,操作パネル13の右側のキープ画像一覧ウインドウ121に表示されているキープ画像の中から,所定のキープ画像をタッチペン14で選択することで,変更することができる。
【0078】操作パネル13の左側には,様々な落書き処理のツールを表示させるとき操作される落書きメニューボタン123,実行した処理を再び繰り返すとき操作されるくりかえしボタン124,落書きを消去するとき操作される消しゴムボタン125,後に詳述する落書き可能範囲を選択するとき操作されるクロマキボタン126,および落書き処理を終了してプリントを開始するとき操作されるプリントボタン127が表示されている。また,画面上方には,落書きする文字や図形の色を選択するとき操作される色パレットボタン128,落書きする線の太さを設定するとき操作されるライン選択ボタン129が表示されている。また,落書き処理には,制限時間が設定されており,CPU31は,制限時間が経過したと認識した場合,強制的に次の画面を表示する。制限時間は,残り時間表示ウインドウ122に表示されている。
【0079】なお,落書き処理には,操作パネル13-1と13-2の一方から入力された落書き処理が他方の処理に反映される反映処理や,落書き可能範囲を制限する処理があるが,その処理については後述する。
【0080】ステップS14の落書き処理において,CPU31は,プリントボタン127が操作されたか,または,制限時間が経過したと判定した場合,処理はステップS15に進む。
【0081】ステップS15において,表示プロセッサ37は,CPU31からの指示に基づいて,操作パネル13に分割数選択画面を表示する。操作パネル13-1および操作パネル13-2には,例えば,図12(A)および図12(B)に示すように,「7×4」,「上半分2×2と下半分3×4の組み合わせ」,「4×2」,「2×2」の分割数選択画面が表示される。利用者は,好みの分割数(プリントサイズ)のシートをタッチペン14で選択することができる。CPU31は,タッチパネル38からの通知に基づいてプリンタ36にプリントするシート(写真シートまたはシールシート)を指示する。
【0082】ステップS16において,表示プロセッサ37は,CPU31からの指示に基づいて,プリントしたシールが横から排出されることを案内する案内画面を,操作パネル13-1および操作パネル13-2に,例えば,図13(A)および図13(B)に示すように表示させる。その後,処理はステップS1に戻る。」

前掲キ及びクの記載及び図面によると,引用文献6には,以下の技術事項が記載されていると認められる。

画像印刷装置において,
撮影を実行し,残り撮影可能枚数が0か否か(4種類のキープ画像が選択されたか否か)を判定し,残り撮影可能枚数が0でない場合,前記撮影を繰り返し行い,残り撮影可能枚数が0と判定すると,落書き画面を表示し,
利用者は,落書き対象のキープ画像を,複数種類のキープ画像の中からタッチペンで選択することができ,
操作パネルには,落書きする文字や図形の色を選択するとき操作される色パレットボタン,落書きする線の太さを設定するとき操作されるライン選択ボタンが表示されており,
落書き処理においてプリントボタンが操作されると,分割数選択画面を表示し,表示された「7×4」,「上半分2×2と下半分3×4の組み合わせ」,「4×2」,「2×2」の中から好みの分割数のシートを選択し,1枚のシールシート上に複数種類の撮影画像をプリントすること。

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「デジタルカメラ,携帯電話,PDA等の端末装置」は,本願発明の「移動通信端末」に相当する。
引用発明の「赤外線通信(IrDA)」や「Bluetooth」は,本願発明の「近接無線通信方式」及び「通信方式」に相当する。
引用発明における入力は,赤外線通信(IrDA)やBluetooth等の通信方式を用いて行われるものであるから,引用発明の「入力」は本願発明の「受信」に相当するとともに,引用発明の「画像データ入力部」は,本願発明の「受信手段」に相当する。
また,通常,データの送受信を行う際,実際に送受したいデータ本体の送受信前に,通信方式の設定,接続手順を行う必要があり,当該手順において互いに送受される情報を解析してこれら設定,接続を行うことは技術常識といえるから,引用発明の「画像データ入力部」と本願発明の「受信手段」とは,移動通信端末から近接無線通信方式で伝送される画像データを,通信方式を特定する情報を解析したのち前記特定した情報に従って受信する受信手段である点で共通するものといえる。

引用発明における手書き画像の入力は,タッチペンによりラインを描くことにより生成されるものであることは自明であるから,引用発明における「手書き画像」を入力することは,本願発明の「ラインの追加」のための「コンテンツ編集入力」に相当するものといえ,引用発明の装置には,当該入力を「受け付ける」機能を備えていることは明らかである。
引用発明において,タッチペンにより星マークやハートマーク等の「スタンプ画像」を入力することは,本願発明の「所定のマークの追加」のための「コンテンツ編集入力」に相当するものといえ,引用発明の装置には,当該入力を「受け付ける」機能を備えていることは明らかである。
引用発明は,合成画像をプリント出力するものであって,その際に印刷レイアウトの設定を行ないうるものであるから,引用発明と本願発明とは,受信した画像データを出力するためのレイアウトを設定する点で共通するものといえる。
引用発明は,まず,加工・編集前の原画像や編集後の画像に対して,タッチペンにより手書き画像やスタンプ画像を入力し,画像合成を行い,その後に,印刷対象となる合成画像を選択し,印刷レイアウトの設定を行うものであるから,前者の処理を「第1の段階」,後者の処理を「第2の段階」と呼ぶことができるものであって,これら2つの処理をまとめて「編集処理」と呼ぶことは,単なる呼称の問題である。
引用発明は,データ入力部から読み取られた複数の画像データを一覧表示し,編集対象となる画像を選択した上で,上記手書き画像やスタンプ画像を入力するものであるから,上記手書き画像やスタンプ画像の入力は,データ入力部から受信された複数の画像データ「各々」に対して行われるものといえる。
よって,引用発明と本願発明とは,受信手段より複数受信した画像データの各々に対し,第1段階としてラインの追加,所定のマークの追加のためのコンテンツ編集入力を受け付ける段階と,第2段階として前記受信した画像データを出力するためのレイアウトを設定させる段階とを含む編集処理を行なう点で共通するものであり,当該編集処理を行う編集処理手段に相当する構成は,引用発明においても当然備えているものいえる。

引用発明の「合成画像」は,加工・編集前の元画像や編集後の画像に対して,入力された手書き画像やスタンプ画像を画像合成したものであるから,本願発明の「編集された画像データ」に相当する。
引用発明は,印刷対象となる合成画像を選択して,印刷レイアウトの設定を行ない,プリンタにてプリント出力するものであり,プリント出力の際は,上記印刷レイアウトの設定が反映されるのが当然であるから,引用発明は,画像データを前記印刷レイアウト設定に基づいて加工を行い,作成されたデータをプリンタに受け渡して印刷しているのは,自明のことといえる。
よって,引用発明と本願発明とは,編集処理手段により編集された画像データと前記選択されたレイアウトに基づいて加工を行って印刷データを作成し,前記印刷データをプリンタに受け渡すことにより印刷する機能を有する点で共通するものであり,当該処理を行う印刷手段に相当する構成は,引用発明においても当然備えているものといえる。

引用発明の「画像プリント装置」は,本願発明の「画像印刷処理装置」に相当する。

以上を踏まえると,両者の一致点,相違点は以下のとおりである。

【一致点】
移動通信端末から近接無線通信方式で伝送される画像データを,通信方式を特定する情報を解析したのち前記特定した情報に従って受信手段と,
前記受信手段より複数受信した画像データの各々に対し,第1段階としてラインの追加,所定のマークの追加を含むコンテンツ編集入力を受け付ける段階と,第2段階として前記受信した画像データを出力するためのレイアウトを設定する段階とを含む編集処理を行なう編集処理手段と,
前記編集処理手段により編集された画像データと前記設定されたレイアウトとに基づいて加工を行って印刷データを作成し,前記印刷データをプリンタに受け渡すことにより印刷するための印刷手段と,
を備える画像印刷処理装置。

【相違点】
(1)画像データとして,本願発明は「複数のフォーマットであらわされる」ものであって,「データフォーマットを特定する情報」によってそのフォーマットを特定するものであるのに対し,引用発明では画像データのフォーマットやこれを特定する情報については明らかでない点。

(2)複数の画像データの受信を,本願発明は「連続して」行うものであるのに対し,引用発明は不明である点。

(3)レイアウトの設定に際して,本願発明は「複数」の画像データを出力するためのレイアウトを「予め複数用意された分割レイアウトオプションから選択させる」ものであって,「複数」の画像データと「選択された分割レイアウトオプション」とに基づいて加工するのに対し,引用発明はそのようなものではない点。

(4)コンテンツ編集入力として,本願発明は,ラインの追加,「ライン色指定」,「ライン幅指定」,所定のマークの追加のうちの「少なくとも1つを含む」入力を受け付けるものであるのに対し,引用発明は,手書き画像や星マークやハートマーク等のスタンプ画像を入力する点。

第5 当審の判断
上記相違点(1)について検討する。
一般に,携帯電話やPDA等の端末装置においては,GIFやJPEG,PNG等の複数のフォーマットで表された画像データを扱えるように構成されており,画像のフォーマットはファイルに格納されたメタデータなどを解析して特定されることは技術常識であるから,引用発明において,携帯電話やPDA等の端末装置から入力される画像データを複数のフォーマットで表されるものとし,そのフォーマットをファイルのメタデータなどを解析して特定することは,当業者が容易に想到し得たことである。

上記相違点(2)について検討する。
引用発明において,複数の画像データを入力する際,複数のデータを連続して入力するよう構成することに,困難な点はない。

上記相違点(3)について検討する。
引用文献6に記載された技術事項は,前記第3で認定したとおりである。
引用発明におけるレイアウト設定及びプリント出力処理に対して,引用文献6記載の技術を適用し,印刷レイアウトを1枚のシールシート上に複数種類の撮影画像がプリントされるようなものとし,分割数選択画面に表示された「7×4」,「上半分2×2と下半分3×4の組み合わせ」,「4×2」,「2×2」(本願発明の「予め複数用意された分割レイアウトオプション」に相当)の中から,好みの分割数のシートを選択し,該選択されたシートに基づいて,1枚のシールシート上に複数種類の撮影画像がプリントされるよう加工することは,当業者が容易になし得たことである。

上記相違点(4)について検討する。
引用文献6に記載された技術事項は,前記第3で認定したとおりである。
引用発明において,手書き文字画像やスタンプ画像を入力する他,引用文献6に記載されているような手書きする文字や図形の色を選択したり(本願発明の「ライン色指定」に相当),線の太さを設定したり(本願発明の「ライン幅指定」に相当)する機能を追加し,その中から,少なくとも1つの入力を受け付けるよう構成することは,当業者が容易になし得たことである。

そして,これら相違点を総合的に考慮してみても当業者が推考し難い格別のものであるとすることはできず,本願発明の奏する効果を検討してみても,引用発明及び引用文献6に記載された技術事項及び周知技術それ自体の効果であって各相違点の組合せによって新たな効果を奏するものではない。

第6 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用文献5に記載された発明及び引用文献6に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって,原査定を取り消す,本願は特許をすべきものであるとする審判請求の趣旨は認められないから,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-17 
結審通知日 2009-11-24 
審決日 2009-12-07 
出願番号 特願2002-183165(P2002-183165)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千葉 輝久  
特許庁審判長 加藤 恵一
特許庁審判官 廣川 浩
吉村 博之
発明の名称 画像処理装置  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 大塚 文昭  
代理人 須田 洋之  
代理人 中村 佳正  
代理人 西島 孝喜  

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