• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1210599
審判番号 不服2007-512  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-10 
確定日 2010-01-21 
事件の表示 特願2004-237115「画像処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月 2日出願公開、特開2006- 56014〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成16年8月17日の出願であって、平成18年11月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年1月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで明細書に係る手続補正がなされた後、同年3月5日付けで審査官により作成された前置報告書について、平成21年2月17日付けで審尋がなされたところ、審判請求人から同年4月16日付けで回答書が提出されたものである。
さらに、当審において平成21年9月2日付けで拒絶理由通知がなされ、それに対して、同年11月6日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

本願の発明は、平成21年11月6日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「 印刷指示装置と、当該印刷指示装置とネットワークを介して通信可能な画像形成装置とを有する画像処理システムであって、
前記画像形成装置は、
印字対象物収容部にセットされた印字対象物に備えられたICタグに記憶されている、当該印字対象物の使用が許可された部門の情報を含む印字対象物管理情報を読み取る読み取り手段と、
前記読み取り手段により読み取られた印字対象物管理情報を、前記印字対象物を収容する印字対象物収容部に関連付けて記憶する記憶手段と、
前記印字対象物管理情報の要求を、ネットワークを介して印刷指示装置から受信する受信手段と、
前記要求を受信した場合、前記記憶手段に記憶されている前記印字対象物管理情報を要求元である前記印刷指示装置に返信する返信手段とを有し、
前記印刷指示装置は、
前記画像形成装置の記憶手段に記憶されている前記印字対象物管理情報を、前記画像形成装置に要求する要求手段と、
前記要求手段により要求された印字対象物管理情報を、前記画像形成装置からネットワークを介して受信する受信手段と、
前記印字対象物管理情報に基いて、印刷指示を行うユーザの所属部門が使用可能な印字対象物がセットされている画像形成装置および印字対象物収容部を表示して、当該画像形成装置および印字対象物収容部のユーザによる選択を受け付ける選択手段とを有することを特徴とする画像処理システム。」


2.引用された刊行物記載の発明
(刊行物1について)
これに対して、当審からの平成21年9月2日付けの拒絶理由に引用された特開2002-120475号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は、当審にて付与した。)

(1-a)「【請求項1】 可視的な記録が可能な紙製品であって、
その一部に、近接無線交信を行う無線交信素子が取り付けられ、かつ、前記無線交信素子が取り付けられた部分およびその近傍のいずれかに、表記が行える領域を可視的に示す表示を有することを特徴とする紙製品。」

(1-b)「【請求項31】 書類を管理するシステムであって、
印刷するためのコンテンツを受け取って、用紙上に印刷すると共に、用紙に付されている識別子を読み取って、印刷したコンテンツを特定する情報と印刷した用紙の識別子とを関連付けるコンテンツ印刷用紙関連付け情報を生成する少なくとも1の印刷装置と、
前記コンテンツが印刷された用紙を含む書類についての承認を表記するとともに、承認対象の用紙の識別子と、承認時点を示す情報と、承認者を示す情報とを含む承認データを生成する1以上の承認装置と、
前記印刷装置において生成されたコンテンツ印刷用紙関連付け情報と、前記承認装置で生成された承認データとを取得して、用紙の識別子をキーとして、コンテンツおよび承認を管理する書類管理データを蓄積する少なくとも1の書類データ管理装置とを有し、
前記印刷装置および前記承認装置は、無線交信を行って送られる情報を受信して、該情報を取得する読取装置をそれぞれ有し、
前記用紙には、識別子を予め記憶している無線交信素子が、その一部に取り付けられ、前記無線交信素子は、前記無線送信に応じて、前記識別子を送信することを特徴とする書類管理システム。」

(1-c)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、書類を管理する技術に係り、特に、用紙を個別に識別して、当該用紙に関わる書類管理行う技術に関する。
【0002】
【従来の技術】企業等では、その活動に伴って多種多様の書類が作成され、それに基づいて、各種決定がなされ、各種業務が実行され、最終的に、その書類が保存される。従って、書類の発生、閲覧、記録等が、各種業務のフローを決定付けているともいえる。そのため、業務の円滑な運営のためには、書類を管理することが必要である。従って、書類管理が事務の管理において重要な要素となっている。
【0003】ところで、書類の管理にあったては、書類を識別することがまず必要である。そのため、従来は、書類の適当な場所に、識別のための符号を付したり、インデックスを付したりすることが行われている。さらに、符号を機械読み取りできるように、バーコードが用いられている。
【0004】すなわち、書類、物品などの個体認識を行うために、書類、物品に、番号やバーコードを印刷し、これらを専用の読み取り機により読み取って識別する視覚的な個別認識技術が存在する。この技術により、書類、物品等の来歴管理、現状の所在位置を管理することが行われている。この方法は、物に、番号やバーコードを印刷するだけで運用できるため、安価であり、占有容積が小さい(薄い)利点がある。」

(1-d)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】ID素子の読み取りは、読み取り距離が数cmから数mと大きく、複数素子の読み取りが可能である。すなわち、特定空間の中にある複数のIDを一度の読み取り作業で読みとることができる。そのため、例えば、部品の在庫管理等に用いることに適している。
【0008】ところで、書類の管理では、書類が非常に大量に存在し、しかも、蓄積されることが多いことに留意する必要がある。すなわち、管理に際しては、できるだけ手間を掛けずに書類管理のための場所や状態が精度よく収集ができることが望まれる。さらに、個別識別情報が既読のものかをその場で確認できることを可能とすること要求される。
【0009】ところが、従来、書類を用紙レベルで識別して、それに基づいて管理するという考え方は存在していない。
【0010】本発明の目的は、書類の管理を用紙それ自身に付した識別子を用いて、書類を用紙レベルで識別して管理する技術を提供することにある。」

(1-e)「【0021】図3に示すように、枠1100内に、複数行に区分された事項記入欄1110と、事項記入欄の各行対応に配置されたチェック欄1120と、枠下方に配置された署名欄1140とが設けられる。また、枠1100の上部外側には、承認欄1130が配置されている。そして、用紙1000には、それぞれ、特定の目的のために、次のようなRFID100がそれぞれは位置される。
(1)用紙識別用RFID100a
(2)承認印用RFID100b
(3)チェック用RFID100c
(4)サイン用RFID100d
【0022】用紙識別用RFID100aは、書類を用紙一枚単位で管理することを考慮して、用紙自体を識別するために設けられている。図3に示す用紙の場合、用紙識別用RFID100aが取り付けられ部分に枠表示を行っていない。その点については、図2に示す用紙とは異なる。これにより、RFID100aを用紙識別専用として、チェック欄などに利用されないようにすることができる。なお、他のRFID100b?100dが存在する部分についても、枠および欄の各表示を行わない白紙状態とすることが可能である。これは、例えば、印刷装置400で、枠および欄を含む様式自体を、印刷する場合に適している。
【0023】通常は、書類のフォーマットは確定しているので、RFID100の配置と共に欄が印刷されているものを用いる。また、例えば、書類によって、承認印欄やチェック欄が増減したりする場合がある。この場合を想定して、用紙にRFID100を網羅的に配置しておく。また、枠および欄を設けない用紙としておく。そして、印刷時に必要な枠および欄を印刷する。これにより、用紙のバリエーションを集約することができる。
【0024】RFID100の用紙への取り付けは、本実施形態では、用紙を生産する段階で、RFID100を漉き込むことにより行う。もちろん、これに限られない。例えば、用紙にRFIDを貼付するようにしてもよい。ただし、印刷、コピー等の処理を用紙に施すことを考慮すると、摩擦、引っかかりを小さくするため、漉き込みが好ましい。」

(1-f)「【0050】コンテンツ生成装置300は、書類を作成するためのデータの入力、編集、管理するコンピュータ、ワープロ等の書類データ編集装置が用いられる。コンテンツ生成装置300は、生成された、文字、画像等のコンテンツと、当該コンテンツを特定する情報、例えば、文書名、ファイル名等の識別子とを、それ自身が有する記憶装置に格納すると共に、印刷装置400に送る。なお、コンテンツ生成装置300において、用紙上に一定の様式を形成して文書データと共に印刷装置に送ることもできる。この場合、予め対象とする用紙におけるRFIDの分布情報を、コンテンツ生成装置300が取得していることが好ましい。そのようにすることで、様式において、RFIDの識別番号を的確に利用することが可能となる。
【0051】印刷装置400は、前記コンテンツ生成装置300から送られるコンテンツを、それを特定する情報と共に受け取って、用紙上に印刷する。また、印刷装置400は、用紙1000に付されているRFID100から識別子を読み取って、印刷したコンテンツを特定する情報と印刷した用紙の識別子とを関連付けるコンテンツ印刷用紙関連付け情報を生成する。このため、印刷装置400は、図10に示すように、給紙部410と、印刷機構420、排紙部430とを有する。給紙部410から排紙部430までの間における用紙の通路のいずれかに配置される読取装置200と、印刷すべきデータ、読み取ったデータ等を、LAN900を介して書類データ管理装置600と送受信する通信制御部(図示せず)とを有する。本実施形態では、読取装置200を給紙部410に設置している。
【0052】読取装置200は、前述したように、用紙に取り付けられているRFID100と交信して当該RFID100を読み取る。この読取装置200は、例えば、用紙の特定方向に移動して、用紙をその幅方向(搬送方向と直交する方向)にスキャンしつつ、問いかけを無線送信する。そのスキャンライン上にRFID100が存在していて、応答が受信できたばあいには、その受信した信号から当該RFID100の識別子を抽出する。なお、読取装置200は、これを複数個一列に配列して、前述したスキャンに代える構成としてもよい。
【0053】取得したデータは、当該印刷装置のコードと共に、図示しない通信制御装置から、書類データ管理装置600に向けて出力される。これにより、特定の用紙が特定の印刷装置において印刷が行われたことを示す情報が書類データ管理装置に送られる。なお、この際、読み取った、日付および時刻を示す情報を併せて送るようにしてもよい。」

(1-g)「【0055】図12に、そのような機能を有する印刷装置400の一例を示す。ここでは、図10に示した印刷装置との相違点について説明する。すなわち、図12に示す印刷装置400は、RFID100を格納する素子格納部440と、この素子格納部からRFID100を取り出して、用紙1000に取り付ける素子取り付け機構450とを有する。RFID100は、半導体チップその物を用いることができる。その場合には、素子取り付け機構450を、接着材等を用いてチップを用紙上に貼付する方式とすることができる。また、RFID100を台紙に固定して格納し、この状態で取り出して、素子取り付け機構450により用紙に取り付けるようにしてもよい。この場合には、接着材を台紙に塗布して台紙と共に用紙に貼り付けるようにしてもよい。そして、用紙にRFID100を取り付けた後、読取装置200により交信して、取り付けたRFIDの識別子を取得して、用紙に関する他のデータと共に、書類データ管理装置に送る。なお、RFID100を取り付ける位置は、予め押印位置や記入位置を決めておき、書類データ編集装置にてその位置を指定できるようにしておくことができる。」

(1-h)「【0058】図11に示すように、読取装置200は、情報を保存するメモリ部210と、問いかけを無線送信すると共に、無線で送られる情報を受信して、該情報を取り出す質問部220と、電源回路230と、カレンダ機能付き時計290とを有する。メモリ部210は、読み書き可能な型のものが用いられる。本実施形態では、RFID100から取得した情報を一旦格納するために用いられる。この際、時計290から日付および時刻情報を取得して、識別子と時刻とを合わせて蓄積する。後に、メモリに格納された情報は、外部に出力される。情報の出力は、図示していないインタフェースを介して行われる。例えば、前述した印刷装置400の場合には、通信制御装置からLAN900を経由して、当該装置を特定する情報と共に、書類データ管理装置600に送られる。なお、これを併せて送る。また、メモリ部210を着脱可能な可搬型メモリとすることで、メモリ自体を取り外して、情報を外部に出力することも可能である。」

(1-i)図1として、





(1-j)図3として、





したがって、上記の事項を総合すると、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。(以下、「刊行物1発明」という。)

「印刷するための文字、画像等の情報を含むコンテンツを生成するコンテンツ生成装置300と、用紙1000に印刷を行う印刷装置400と、用紙1000に設けられているRFID100aを読み取る読取装置200と、書類データを管理するための書類データ管理装置600と、これらを接続するLAN900とを有する書類管理システムであって、
前記コンテンツ生成装置300は、コンテンツを特定する情報としての、文書名、ファイル名等の識別子とを、印刷装置400に送り、
前記印刷装置400は、用紙1000自体を識別するための用紙識別用RFID100aを読み取る読取装置200、前記書類データ管理装置600と送受信する通信制御部等を備え、該用紙識別用RFID100aから識別子を読み取って、印刷したコンテンツを特定する情報と印刷した用紙の識別子とを関連付けるコンテンツ印刷用紙関連付け情報を生成し、該コンテンツ印刷用紙関連付け情報を前記書類データ管理装置600に送信する、
書類管理システム。」


(刊行物2について)
また、当審からの平成21年9月2日付けの拒絶理由に引用された特開平11-187165号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は、当審にて付与した。)

(2-a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ネットワークに分散する2つ以上のプリンタまたは複合機のプリント機能を有機的に結合し、単体装置での機能を超えたジョブ処理を実現するネットワーク複写機能を有した画像処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ネットワークに分散するスキャナ(入力装置)やプリンタ(出力装置)をネットワーク複写装置として使用する複写装置が提案されていた。例えば、既に出願人は特開平7-149472号公報に示すように、ネットワーク上に配置された複数の出力装置を管理可能な分散複写システムにおいて、1台の出力装置におけるソーターのビン数を超える部数のジョブを実行する場合、ソーターを持つ複数の複写機に分散出力する方法を提案した。」

(2-b)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来技術では、例えば、次のような欠点があった。
(1)管理機能としてソーターのみであり、例えば、ソーターのビン数では問題なく出力できるが、1部あたりの出力枚数がソーターの1ビンに収容できる枚数を超えてしまった場合に対して、何ら対処する方法、手段を考慮していないため、1ビンに収容できる枚数を出力すると、ユーザによって出力が取り出されるまでジョブが中断してしまう。
【0004】(2)ソーターのみならず他の機能、たとえば、白黒、白黒・単色・フルカラーの混在文書、異なる用紙サイズからなるミックス原稿へ対応していないため、ユーザがマニュアルで指示しなければならない。
【0005】このように、従来技術では、いずれの場合においても、ユーザに何らかの作業を要求することになり、ネットワーク上に配置された複数の出力装置を有効に利用することができないという問題があった。
【0006】この発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、ネットワークに分散するプリンタまたは複合機のプリント機能を有機的に結合することにより、個々の装置では実現できなかった機能を提供することができる画像処理装置を提供することを目的としている。」

したがって、刊行物2には、以下の事項が開示されていると認められる。

「ネットワークに分散する2つ以上のプリンタまたは複合機のプリント機能を有機的に結合し、個々の装置では実現できなかった機能を提供することができるシステム。」


(刊行物3について)
同じく、当審からの平成21年9月2日付けの拒絶理由に引用された特開2000-296653号公報(以下、「刊行物3」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は、当審にて付与した。)

(3-a)「【請求項1】 ICチップを備え、該ICチップに記録媒体の情報を記録したことを特徴とする記録媒体。
【請求項2】 印刷する前に、プリンタへ入力された記録媒体の情報と、前記ICチップ部に記録されている情報を照合することを特徴とする記録方法。」

(3-b)「【0002】
【従来の技術】一般に、この種の画像記録装置(特にインクジェットプリンタ)では、白色紙等の紙、透明なトランスペアレンシー等の種々の記録媒体に対して記録が行われている。
【0003】記録媒体として紙を用いる場合には、その紙種により吸収できるインク許容量が異なるため、インク吸収率の高い専用紙に吸収され得るインク量と同量のインクを普通紙に対して吐出すると、吸収できずに普通紙上にインクが溢れ、溢れたインクが画像記録装置に付着して汚れてしまう。さらには次に記録される用紙に画像記録装置に付着したインクが転写され、正しくセットされた記録媒体までだめにするという問題が生じる。このため、紙種に応じてインク吐出量等の制御を変える必要から、当該制御前には紙の種類を判別し、制御側で設定している紙種と、画像記録装置にセットされている紙種が一致していない場合は、制御側に情報を伝達すると同時に制御データを受け付けないようにして、間違った記録媒体に記録することを未然に防止することが好ましい。
【0004】また、実際に画像記録装置にセットされている記録媒体のサイズが、制御側で想定している用紙サイズよりも小さい場合は、記録装置内の記録媒体からはみ出た部分にインクが付着し汚れ、前述したような転写の問題が発生するため、用紙サイズの情報も制御側に伝達することが望ましい。」

(3-c)「【0008】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明の課題とするところは、紙種類・サイズを判別することができる記録媒体を提供することにある。」

(3-d)「【0019】
【発明の効果】記録媒体1に用紙種類・用紙サイズ等の情報を入力済みのICチップを設け、印刷前にプリンタに送られる記録媒体の情報とICチップ内の情報を照合させることにより、記録媒体への適切な印刷が可能になる。」

上記の事項から、刊行物3には、以下の事項が開示されていると認められる。

「記録媒体に用紙種類・用紙サイズ等の情報を入力済みのICチップを設け、印刷前にプリンタに送られる記録媒体の情報とICチップ内の情報を照合すること。」


3.対比
本願発明と刊行物1発明と対比すると、
まず、刊行物1発明における
「印刷するための文字、画像等の情報を含むコンテンツ」、
「用紙1000」、
「印刷するための文字、画像等の情報を含むコンテンツを生成するコンテンツ生成装置300」、
「用紙1000に印刷を行う印刷装置400」、
「書類に設けられているRFID100を読み取る読取装置200」、
「(コンテンツを特定する情報としての、)文書名、ファイル名等の識別子」及び「印刷したコンテンツを特定する情報と印刷した用紙の識別子とを関連付けるコンテンツ印刷用紙関連付け情報」、
「LAN900」、
「RFID100」は、それぞれ、
本願発明における
「印字(がなされる内容)」、
「印字対象物」、
「印刷指示装置」、
「当該印刷指示装置とネットワークを介して通信可能な画像形成装置」、
「読み取り手段」、
「印字対象物管理情報」、
「ネットワーク」、
「ICタグ」に相当する。
そして、刊行物1発明における「用紙1000に印刷を行う印刷装置400」が、「印字対象物」がセットされる「印字対象物収容部」に相当する部材を備えることは、自明の事項である。
また、「ネットワーク」(LAN900)に接続された機器が互いに情報やコマンドの送受信を行うことも自明の事項であり、刊行物1発明の「画像形成装置」は「送受信する通信制御部」も備えていることから、
刊行物1発明の「画像形成装置」(印刷装置400)において、「前記印字対象物管理情報の要求を、ネットワークを介して印刷指示装置から受信する受信手段と、前記要求を受信した場合、前記記憶手段に記憶されている前記印字対象物管理情報を要求元である前記印刷指示装置に返信する返信手段と」に相当する手段を有すること、及び、
刊行物1発明の「印刷指示装置」(コンテンツ生成装置300)において、「前記画像形成装置の記憶手段に記憶されている前記印字対象物管理情報を、前記画像形成装置に要求する要求手段と、前記要求手段により要求された印字対象物管理情報を、前記画像形成装置からネットワークを介して受信する受信手段と」に相当する手段を有することは、当業者にとって明らかな事項といえる。
さらに、刊行物1発明における「書類データを管理するための書類データ管理装置600」は、「印字対象物管理情報」(印刷したコンテンツを特定する情報と印刷した用紙の識別子とを関連付けるコンテンツ印刷用紙関連付け情報)に基づいて管理を行うものであるから、「前記読み取り手段により読み取られた印字対象物管理情報を、印刷したコンテンツを特定する情報に関連付けて記憶する記憶手段」を備えているといえる。
そうすると、刊行物1発明における「前記読み取り手段により読み取られた印字対象物管理情報を、印刷したコンテンツを特定する情報に関連付けて記憶する記憶手段」と、本願発明における「前記読み取り手段により読み取られた印字対象物管理情報を、前記印字対象物を収容する印字対象物収容部に関連付けて記憶する記憶手段」とは、「前記読み取り手段により読み取られた印字対象物管理情報を、他の情報と関連付けて記憶する記憶手段」で共通する。

したがって、両者は、
「 印刷指示装置と、当該印刷指示装置とネットワークを介して通信可能な画像形成装置とを有する画像処理システムであって、
前記画像形成装置は、
印字対象物収容部にセットされた印字対象物に備えられたICタグに記憶されている、印字対象物管理情報を読み取る読み取り手段と、
前記印字対象物管理情報の要求を、ネットワークを介して印刷指示装置から受信する受信手段と、
前記要求を受信した場合、前記記憶手段に記憶されている前記印字対象物管理情報を要求元である前記印刷指示装置に返信する返信手段とを有し、
前記印刷指示装置は、
前記画像形成装置の記憶手段に記憶されている前記印字対象物管理情報を、前記画像形成装置に要求する要求手段と、
前記要求手段により要求された印字対象物管理情報を、前記画像形成装置からネットワークを介して受信する受信手段とを有し、
さらに、該画像処理システムは、前記読み取り手段により読み取られた印字対象物管理情報を、他の情報と関連付けて記憶する記憶手段を備える、
画像処理システム。」
の点で一致し、下記の点で相違する。

相違点1:「ICタグに記憶されている印字対象物管理情報」及び「前記読み取り手段により読み取られた印字対象物管理情報を、他の情報と関連付けて記憶する記憶手段」に関して、
本願発明においては、「当該印字対象物の使用が許可された部門の情報を含」み、「読み取り手段により読み取られた印字対象物管理情報を、前記印字対象物を収容する印字対象物収容部に関連付け」られる「印字対象物管理情報」であって、「画像形成装置」が「前記読み取り手段により読み取られた印字対象物管理情報を、前記印字対象物を収容する印字対象物収容部に関連付けて記憶する記憶手段」を備えるのに対して、
刊行物1発明においては、「印字対象物管理情報」は、「文書名、ファイル名等の識別子」又は「印刷したコンテンツを特定する情報と印刷した用紙の識別子とを関連付けるコンテンツ印刷用紙関連付け情報」であって、「書類データを管理するための書類データ管理装置600」が「前記読み取り手段により読み取られた印字対象物管理情報を、印刷したコンテンツを特定する情報に関連付けて記憶する記憶手段」を備える点。

相違点2:「印刷指示装置」に関して、
本願発明は、「前記印字対象物管理情報に基いて、印刷指示を行うユーザの所属部門が使用可能な印字対象物がセットされている画像形成装置および印字対象物収容部を表示して、当該画像形成装置および印字対象物収容部のユーザによる選択を受け付ける選択手段」を有するのに対して、
刊行物1発明には、そのような特定がない点。


4.当審の判断
(相違点1について)
まず、相違点1について検討する。
刊行物1発明における「ICタグに記憶されている印字対象物管理情報」は、「文書名、ファイル名等の識別子」又は「印刷したコンテンツを特定する情報と印刷した用紙の識別子とを関連付けるコンテンツ印刷用紙関連付け情報」であって、刊行物1の記載を参照すると、用紙識別用RFID100aは、用紙一枚単位で管理するためのものである。(上記摘記事項(1-e)、段落【0022】)
刊行物3には、「記録媒体に用紙種類・用紙サイズ等の情報を入力済みのICチップを設け、印刷前にプリンタに送られる記録媒体の情報とICチップ内の情報を照合すること。」が開示されているように、記録媒体に備えられたICタグに用紙種類・サイズ等の情報を記憶させることは周知の技術的事項である。
加えて、ICタグが、部品の在庫管理等に用いることに適していることも従来周知の事項である。(上記摘記事項(1-d)、段落【0007】)
さらに、部門別の枚数管理に関しては、例えば、従来、コピー枚数カウンタやコピーカード等を用いて、所属部署別に複写枚数を管理していたように、部門毎に印刷枚数を管理することは、周知の課題である。
したがって、ICタグの用紙識別情報として、用紙種類・サイズ等の情報に加えて、用紙を割り当てた部署の情報を記憶させるとともに、用紙を割り当てた部署の情報に基づいて、用紙の在庫管理を行う程度のことは、当業者が適宜為し得たことである。
そして、刊行物2には、「ネットワークに分散する2つ以上のプリンタまたは複合機のプリント機能を有機的に結合し、個々の装置では実現できなかった機能を提供することができるシステム。」が記載されているように、このようなネットワーク上のプリンタを統合・管理する、従来周知のシステムにおいては、通常、プリンタのトレイ(印字対象物収容部)毎に、用紙のサイズが設定され、各トレイ(印字対象物収容部)を指定して、印刷出力が行われるのであるから、「印字対象物管理情報」を、「印字対象物を収容する印字対象物収容部に関連付け」ることは、当業者が適宜為し得る設計的事項といえる。
また、「印字対象物管理情報」に基づいて「印字対象物」を管理する際に、該「印字対象物管理情報」をどこに記憶させておくかは、当業者が適宜決定できる事項であって、印刷枚数という情報を記憶・管理するのであれば、印刷する装置で管理することは当然の選択ともいえるから、「画像形成装置」が「記憶手段」を備えているか、それとも、「書類データ管理装置」が「記憶手段」を備えているかは、設計上の微差に過ぎない。
してみると、「印字対象物管理情報」を「印字対象物の使用が許可された部門の情報を含む」ものとし、「画像形成装置」が、「前記読み取り手段により読み取られた印字対象物管理情報を、前記印字対象物を収容する印字対象物収容部に関連付けて記憶する記憶手段」を有する構成とした点は、当業者が容易に為し得たことというべきである。

(相違点2について)
次に、相違点2について検討する。
前述のとおり、ネットワーク上のプリンタを統合・管理するシステムにおいては、通常、プリンタのトレイ(印字対象物収容部)毎に、用紙のサイズが設定され、各トレイ(印字対象物収容部)を指定して、印刷出力が行われるのであるから、このようなシステムに接続された印刷指示装置において、各画像形成装置と、その画像形成装置が備える印字対象物収容部を表示して、当該画像形成装置および印字対象物収容部のユーザによる選択を可能とすることは、当然の構成といえる。
したがって、「印刷指示装置」が、「前記印字対象物管理情報に基いて、印刷指示を行うユーザの所属部門が使用可能な印字対象物がセットされている画像形成装置および印字対象物収容部を表示して、当該画像形成装置および印字対象物収容部のユーザによる選択を受け付ける選択手段」を有することは、当業者が適宜採用できる設計的事項である。

(本願発明が奏する効果について)
そして、本願発明が奏する、「画像形成装置にセットされた記録材ごとに、使用が許可された部門を予め把握することが可能となる。」、「画像形成装置で使用される記録材を部門ごとに正確に管理することができ、ひいては資源の有効管理および地球環境の保全が図られる。」といった効果も、刊行物1?3に記載された事項及び周知の事項から予測できるものであって、格別のものではない。

(まとめ)
以上のとおりであるから、上記相違点に係る構成の変更は、刊行物1?3に記載された発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に為し得たことである。

5.請求人の主張
請求人は、平成21年11月6日付け意見書において、
(1)『刊行物1の段落〔0053〕に記載されているように、その用紙識別・管理の内容としても、「特定の用紙が特定の印刷装置において印刷されたことを示す情報が管理装置に送られて、識別・管理されるもの」にすぎません。
一方、本願発明は、用紙に印刷される前の印字対象物(記録材)の管理技術であって、その管理のため、ICタグに記憶されている印字対象物管理情報に、印字対象物の使用が許可された部門の情報を含ませたものです。・・・・・
刊行物1に記載の発明と本願発明とでは、「記録材に印刷された後の印刷物の管理技術であるか(刊行物1)、印刷される前の記録材の管理技術であるか(本願発明)という、適用場面および管理内容についての質的・根本的な相違が存在します。それゆえ、刊行物1には、印字対象物の使用が許可された部門の情報を採用する余地がなく、このような「印字対象物の使用が許可された部門の情報を含む根拠」がありません。』、
(2)『刊行物1の識別子と印刷のコンテンツとを対応付けて記憶すること(刊行物1の段落〔0051〕)と、本願のように印字対象物管理情報を印字対象物収納部に関連付けて記憶することとは、全く目的の異なるもの』、
(3)『発明の効果の面からみても、上記したように本願発明は「画像形成装置内のどの印字対象物収容部に印字対象物がセットされているかにかかわらず、画像形成装置にセットされた印字対象物ごとに、使用が許可された部門を予め把握することが可能となる。これにより、画像形成装置で使用される印字対象物を部門ごとに正確に管理することができ、ひいては資源の有効管理および地球環境の保全が図られる。」(段落〔0022〕)という特有の効果を有する発明である』と、主張している。

(主張(1)について)
まず、「記録材に印刷された後の印刷物の管理技術であるか、印刷される前の記録材の管理技術であるか」との相違について検討する。
刊行物1には、「用紙識別用RFID100aは、書類を用紙一枚単位で管理することを考慮して、用紙自体を識別するために設けられている。」(上記摘記事項(1-e)、段落【0022】)との記載があり、また、刊行物3には、「記録媒体に用紙種類・用紙サイズ等の情報を入力済みのICチップを設け、印刷前にプリンタに送られる記録媒体の情報とICチップ内の情報を照合すること。」との事項が記載されているように、「印字対象物に備えられたICタグ」において、用紙一枚単位で管理したり、「用紙種類・用紙サイズ等の情報」を記憶させて、印刷前に該情報を照合することは、本願出願前に公知の技術である。
そして、印刷前に「用紙種類・用紙サイズ等の情報」を照合するということは、すなわち、「印刷される前の記録材の管理技術」ということができ、また、用紙一枚単位で管理する場合において、「印刷された後の印刷物の管理技術」と「印刷される前の記録材の管理技術」とに切り分けることに何ら合理性は見出せない。

(主張(2)について)
つぎに、「識別子と印刷のコンテンツとを対応付けて記憶することと、印字対象物管理情報を印字対象物収納部に関連付けて記憶すること」との相違については、上記4.で検討したとおり、本願発明と刊行物1発明とは、「読み取り手段により読み取られた印字対象物管理情報を、他の情報と関連付けて記憶する」点で共通する。
そして、上記(相違点2について)のとおり、部門別に用紙枚数を管理すること、及び、ICタグの用紙識別情報として、用紙種類・サイズ等の情報を用いることは、周知の事項であり、かつ、ネットワーク上のプリンタを統合・管理する、従来周知のシステムにおいては、用紙のサイズが設定された印字対象物収容部を指定して、印刷出力が行われるのであるから、「印字対象物管理情報を印字対象物収納部に関連付けて記憶」させることに格別の技術的困難性は見出せない。

(主張(3)について)
そして、「画像形成装置にセットされた印字対象物ごとに、使用が許可された部門を予め把握することが可能となる」との効果については、前述のとおり、従来、コピー枚数カウンタやコピーカード等を用いて、所属部署別に複写枚数を管理していたように、部門毎に印刷枚数を管理することは周知の事項であるから、該効果が格別のものとはいえない。

以上のとおりであるから、請求人の上記主張は採用できない。


6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1?3に記載された発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-20 
結審通知日 2009-11-24 
審決日 2009-12-07 
出願番号 特願2004-237115(P2004-237115)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 名取 乾治  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 大森 伸一
木村 史郎
発明の名称 画像処理システム  
代理人 奈良 泰男  
代理人 宇谷 勝幸  
代理人 長谷川 俊弘  
代理人 藤田 健  
代理人 八田 幹雄  
代理人 都祭 正則  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ