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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1210654
審判番号 不服2009-14513  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-11 
確定日 2010-01-21 
事件の表示 特願2007-272591「携帯型無線電話装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月 1日出願公開、特開2008-104191〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成5年3月30日に出願した特願平5-72367号の一部を平成7年11月28日に新たな特許出願とした特願平7-309277号の一部を平成10年6月26日に新たな特許出願とした特願平10-180965号の一部を平成15年5月15日に新たな特許出願とした特願2003-137722号の一部を平成17年10月13日に新たな特許出願とした特願2005-298908号の一部を平成19年4月2日に新たな特許出願とした特願2007-96712号の一部を平成19年6月20日に新たな特許出願とした特願2007-162705号の一部を平成19年10月19日に新たな特許出願としたものであって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年8月11日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

(本願発明)
「公衆通信回線に無線によって接続される無線通信手段と、
画像を表示するディスプレイと、
上記画像を利用して操作の入力を行う操作の入力処理と、
スイッチと、
上記無線通信手段が上記公衆通信回線からの受信を待機している場合に、上記公衆通信回線と上記無線通信手段とを経由して受信を行う受信処理と、
GPSから位置座標データを入力する位置座標データ入力処理と、
上記操作の入力処理への操作に基づいて、上記無線通信手段を利用して所定の通話先に公衆通信回線を接続させて電話通話を可能にする電話発信処理と、
上記受信処理が受信を行った場合に、該受信によって送信されてきたデータからGPS自動応答呼出を抽出する処理と、
上記GPS自動応答呼出が抽出された場合に、上記電話通話を可能にすることなく、上記位置座標データ入力処理から位置座標データを入力し、該入力した位置座標データを、上記無線通信手段が接続されている先方に返送するGPS自動応答処理と、
を備え、
上記ディスプレイによる画像の表示と、該ディスプレイに表示された画像を利用する操作の入力処理とは、上記スイッチがオン信号を出力したときからオフ信号を出力するときまで、繰り返し実行され、
上記電話発信処理は、上記スイッチがオン信号を出力したときからオフ信号を出力するときまでで、しかも上記操作の入力処理の入力内容に基づいて、実行され、
上記GPS自動応答呼出を抽出する処理と、上記GPS自動応答処理とは、上記スイッチの状態に関わりなく実行され、
上記GPS自動応答呼出が抽出された場合に起動される上記GPS自動応答処理は、上記位置座標データ入力処理を起動して、位置座標データを入力し、その位置座標データを返送することを特徴とする携帯型無線電話装置。」

2.引用発明および周知技術
(1)原審の拒絶理由に引用された特開平4-339284号公報(以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポータブルトランシーバ,携帯用電話装置等の各種無線通信装置に適用して好適な移動式無線通信装置に関する。」(2頁1欄、段落1)
ロ.「【0006】
【作用】このようにしたことで、遭難時などの非常時に自動的に現在位置を伝送することができる」(2頁1欄、段落6)
ハ.「【0020】次に、本発明の第3の実施例を図3を参照して説明する。
【0021】本例においても、音声の通話が可能なトランシーバに座標位置情報の送出手段を設けたもので、GPS用アンテナ2からの受信信号に基づいてGPS処理部1での演算処理で算出した現在の座標位置情報を、表示部3及び中央制御装置(CPU)13に供給する。この中央制御装置13は、マイクロコンピュータで構成されて、トランシーバの送受信動作の制御を行うもので、中央制御装置13にエンコーダ4が接続してある。そして、GPS処理部1で算出した現在の座標位置情報を、中央制御装置13を介してエンコーダ4に供給し、このエンコーダ4でマイク8から供給される音声信号とこの座標位置情報とを、所定の態様でエンコードする。即ち、エンコーダ4で時分割或いは周波数多重で音声信号とこの座標位置情報とを混合するエンコードを行い、このエンコードされた送信信号を、送信部6に供給する。
この送信部6では、供給される送信信号を、このシステムで決められた伝送方式に基づいた変調方法で伝送用に変調し、所定のチャンネル(周波数)の伝送信号として送信アンテナ7から無線送信させる。この場合、送信部6で設定される送信チャンネルも、中央制御装置13で制御される。
【0022】ここで、GPS処理部1で算出した座標位置情報の送信は、所定のスイッチ(図示せず)の操作で行われる場合と、後述する座標位置情報信号の伝送を指示する信号を受信したときに行われる場合と、このトランシーバの電源を投入したときに行われる場合などがある。
【0023】また、中央制御装置13からエンコーダ4には、相手側に座標位置情報信号の伝送を指示する信号を供給することができるようにしてあり、この伝送を指示する信号がエンコーダ4に供給されるとき、上述した座標位置情報信号と同様にエンコードして送信信号とされる。
【0024】そしてこの通信装置は、受信アンテナ9と、この受信アンテナ9に接続された受信部10とを備え、中央制御装置13の制御に基づいて受信部10で受信したチャンネルの信号を、デコーダ12に供給する。
このデコーダ12は、受信信号に含まれる音声信号と座標位置情報信号とをデコードして分離する回路で、エンコーダ4でのエンコードに対応したデコードを行うものである。そして、デコーダ12で分離された音声信号を、スピーカ11に供給して出力させる。また、デコーダ12で分離された座標位置情報信号を、中央制御装置13を介してGPS処理部1に供給し、このGPS処理部1に接続された表示部3に座標位置を表示させる。
【0025】また、受信部10で受信した信号として、座標位置情報信号の伝送を指示する信号が含まれるときには、この伝送を指示する信号がデコーダ12から中央制御装置13に供給され、中央制御装置13の指令でGPS処理部1から現在の座標位置情報信号が出力される。そして、この座標位置情報信号が上述した処理により送信部6に接続された送信アンテナ7から送信される。
【0026】このように構成したことで、例えばこのトランシーバを2台用意して、この2台で音声の送受信を交互に行うとき、それぞれのトランシーバから座標位置情報信号を送信させることで、相手側の現在の座標位置が表示部3に表示され、相手の位置の確認が簡単にできる。また、一方のトランシーバから他方のトランシーバに、座標位置情報信号の伝送を指示する信号を伝送することで、他方のトランシーバから自動的に現在の座標位置情報が返送され、他方のトランシーバの現在の座標位置を、一方のトランシーバの操作だけで確認することができる。
【0027】なお、上述各実施例においては、市民バンド(CB)を使用したトランシーバとして構成したが、他の比較的小型の通信装置にも適用できる。例えば、自動車に搭載されるいわゆる自動車電話装置に適用することもできる。この自動車電話装置に例えば図3に示す第3の実施例の通信装置を適用することで、自動車電話装置が搭載された自動車の現在の走行位置が、他の電話装置を使用して確認することができる。この場合の具体的な使用例としては、例えば自動車が盗まれたときに、この盗難車の位置を直ちに知ることができ、便利である。
【0028】また、市民バンド用トランシーバ,自動車電話装置の他にも、携帯用電話装置,船舶用電話装置,船舶用無線通信装置など、各種小型通信装置に適用できる。さらにまた、本発明は上述実施例に限らず、その他種々の構成が取り得ることは勿論である。」(3頁3欄?4頁5欄、段落20?28)

上記引用例の記載及び添付図面ならびにこの分野の技術常識を勘案すると、上記「トランシーバ」や「携帯用電話装置」等の「各種小型通信装置」はいわゆる「携帯型無線電話装置」であり、前記「携帯型無線電話装置」が「携帯用電話装置」の場合、上記「受信部10」及び「送信部6」は「公衆通信回線に無線によって接続される無線通信手段」である。また前記「携帯用電話装置」が「上記無線通信手段が上記公衆通信回線からの受信を待機している場合に、上記公衆通信回線と上記無線通信手段とを経由して受信を行う受信処理」手段及び「入力操作に基づいて、上記無線通信手段を利用して所定の通話先に公衆通信回線を接続させて電話通話を可能にする電話発信処理」手段を備えることは技術常識である。
また上記「表示部」はいわゆる「ディスプレイ」であり、上記「所定のスイッチ」は「座標位置情報の送信」を行うための操作入力手段である。また上記「中央制御装置(CPU)13」は「GPS処理部1での演算処理で算出した現在の座標位置情報」の供給を受けるのであるから、当該CPUは「GPSから位置座標データを入力する位置座標データ入力処理」手段を構成している。
また上記「受信部10で受信した信号として、座標位置情報信号の伝送を指示する信号が含まれるときには」という構成は「上記受信部が受信を行った場合に、該受信によって送信されてきたデータからGPS自動応答呼出を抽出する処理」を行い、「該GPS自動応答呼出が抽出された場合に」という意味であり、上記「受信部10で受信した信号として、座標位置情報信号の伝送を指示する信号が含まれるときには、この伝送を指示する信号がデコーダ12から中央制御装置13に供給され、中央制御装置13の指令でGPS処理部1から現在の座標位置情報信号が出力される」という構成は「GPS自動応答呼出が抽出された場合に起動される上記GPS自動応答処理は、上記位置座標データ入力処理を起動して、位置座標データを入力し、その位置座標データを返送する」構成のことである。

したがって、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(引用発明)
「公衆通信回線に無線によって接続される無線通信手段と、
ディスプレイと、
操作入力手段と、
上記無線通信手段が上記公衆通信回線からの受信を待機している場合に、上記公衆通信回線と上記無線通信手段とを経由して受信を行う受信処理手段と、
GPSから位置座標データを入力する位置座標データ入力処理と、
上記操作入力手段の操作に基づいて、上記無線通信手段を利用して所定の通話先に公衆通信回線を接続させて電話通話を可能にする電話発信処理手段と、
上記受信処理手段が受信を行った場合に、該受信によって送信されてきたデータからGPS自動応答呼出を抽出する処理と、
上記GPS自動応答呼出が抽出された場合に、上記位置座標データ入力処理から位置座標データを入力し、該入力した位置座標データを、上記無線通信手段が接続されている先方に返送するGPS自動応答処理と、
を備え、
上記GPS自動応答呼出が抽出された場合に起動される上記GPS自動応答処理は、上記位置座標データ入力処理を起動して、位置座標データを入力し、その位置座標データを返送する携帯型無線電話装置。」

(2)例えば特開平3-235116号公報(以下、「周知例1」という。)、特開平4-340681号公報(以下、「周知例2」という。)又は特開平4-259156号公報(以下、「周知例3」という。)には図面とともに以下の事項が記載されているには図面とともに以下の事項が記載されている。
(周知例1)
イ.「データの通信手段を有する情報処理装置において、各種の情報を表示する表示画面を開閉自在にした第1の表示手段と、
上記第1の表示手段と独立してデータ通信の状態を表示する第2の表示手段と、
上記表示画面の開閉状態に応じて上記第1表示手段の表示制御を行うとともに、上記第2表示手段の表示制御は上記表示画面の開閉状態と無関係に行う制御手段を有することを特徴とする情報処理装置。」(1頁左下欄、特許請求の範囲)
ロ.「また右のヒンジM39にはデイスプレイの開閉を検知するマイクロスイツチM44が配置され、ヒンジの部材M45に取り付けたアクチユエータM46がマイクロスイツチM44をデイスプレイの回転位置に応じてON、OFFし開閉状態を検知する。」(3頁右上欄18行目?左下欄3行目)
ハ.「E35は640×400ドツト、冷陰極管によるバツクライト付きのブルーモードの液晶デイスプレイであり、本装置の様々な表示(メインメニユー、アプリケーシヨン、時計、月日、キーボードのステータス、道具箱)を行なう。この液晶デイスプレイE35はタツチパネルE6と重ねて置かれており、使用者はこの表示を見てタツチパネルE6を触ることにより、本装置の制御ソフトであるマネージヤに様々な指示を与える。」(13頁右上欄8?17行目)
ニ.「第28図から第53図は本発明の実施例のCPUE1の制御動作を示した図である。
第28図は本実施例のおけるソフトウエア構造である。S1-3のOS(オペレーテイングシステム)は、FAXの送受信をバツクグラウンドで行えるようにマルチタスクOSである。S1-2のマネージヤと呼ばれる管理プログラムが、S1-3のOSとS1-1のアプリケーシヨンの間に介在し、ユーザとアプリケーシヨンとのインターフエースを取り持っている。その中で特に、タツチパネルへのタツチ、キーボード入力、タイマなどの各種イベントを一括して管理し、発注したイベントを待っているアプリケーシヨンに制御を渡す、いわゆるイベント駆動型システムを制御する機能を持つ。」(15頁右上欄11行目?左下欄5行目)
ホ.「また、デイスプレイ自体が蓋の役目をしているので、デイスプレイを閉められると画面を消し、開けるとつける制御をする。」(公報16頁左上欄19?右上欄2行目)
ヘ.「以上の様に本発明によれば、表示画面を開閉自在にした情報処理装置においても表示画面の開閉状態に拘らずデータ通信状態を常時認識可能にできる。」(公報23頁右上欄2?5行目)

(周知例2)
イ.「【0027】次に、携帯部Bは図3に示すように構成される。すなわち、携帯部インタフェイス(I/F)31は、携帯部B側の本体部Aとのインタフェイスで、たとえば、赤外線あるいは無線などによるワイヤレスインタフェイスである。制御部32(図1の制御部8に相当)は、携帯部Bのみで使用する際、あるいは、本体部Aと携帯部Bとを連結して使用する際に、携帯部Bの各部の動作をそれぞれ制御するもので、たとえば、マイクロプロセッサを主体として構成される。
【0028】位置入力部33(図1の位置入力部7に相当)は、携帯部Bを使用して、指定された位置座標情報を入力するもので、たとえば、透明タブレットなどによって構成され、ペン34(図1のペン6に相当)を使用して手書きでタブレットの上で図形および文字の入力を行なうことが可能であり、後述するディスプレイ部40上に載置される。なお、マウスの代わりにペン34をタブレット上に触れることにより、位置座標情報を入力することもできる(以下、ポインティングと称する)。
【0029】(・・・中略・・・)
【0030】ディスプレイ部40(図1の表示部5に相当)は、文字,図形,画像などを表示するもので、たとえば液晶ディスプレイなどからなり、その表示画面上に位置入力部33が載置される。通信部41は、携帯部Bと電話回線、あるいは、ファクシミリ回線などの通信回線を介して他の電話機、ファクシミリ装置、あるいは、個人複合化OA機器や端末装置などとの情報通信を行なう。(4頁5?6欄、段落27?30)
ロ.「【0068】電話機能の制御も、当然のことながら制御部14において行なわれる。制御部14では、時分割制御や電話機能専用の制御部を持つことにより、たとえば、ワープロなど別の機能を使用しているときでも、電話機能を使用することができるようになっている。電話機能の操作メニューは、「電話」メニューをタッチするか、または、送受話器71が取られた状態をフックスイッチで検知することにより、ディスプレイ部27の表示画面上にマルチウィンドウ表示で、たとえば、図15に示すように表示される。操作メニューをタッチすることにより、主な操作は実行される。」(7頁12欄、段落68)

(周知例3)
「【0015】上述したように、当該携帯電話機は、動作状態に応じて電力消費量を必要最小限に抑制しようとするものである。この実施例では、当該携帯電話機の動作状態をつぎの3つのモードにしている。第1のモードはアイドルモードであり、第2のモードはスタンバイモードであり、第3のモードはアクティブモードである。
【0016】アイドルモードは、着信があるかどうかを監視するモードであり、CPU22,入力インタフェース23およびRF受信部24の一部にB電源が供給されるようにセレクタ21が切り換えられる。セレクタ21のスイッチ21A?21Fは、すべてオープン状態に切り換えられる。3つのモードの中、消費電力の最も少ないモードである。なお、着信があるかどうかの判定のためには、このようにRF受信部24の一部のみにB電源を供給すればよい。この着信があるかどうかを判定するための電力消費量は通話中の電力消費量に比較して1/5?1/10程度になるので、一部にのみ電源を供給することにより、当該携帯電話機全体として消費電力を節約することができるからである。
【0017】スタンバイモードは、発信処理および着信処理が直ちに行えるモードであり、CPU22,入力インタフェース23,RF受信部24の残された一部,表示インタフェース26および音声インタフェース28にB電源が供給されるようにセレクタ21が切り換えられる。3つのモードの中、消費電力が2番目に少ないモードである。
【0018】アクティブモードは、通話可能な状態(通話状態)にあるモードであり、CPU22,入力インタフェース23,RF受信部24の全部,表示インタフェース26,RF送信部25,データ処理部27および音声インタフェース28等すべてのブロックにB電源が供給されている。3つのモードの中、最も消費電力の大きいモードである。
【0019】アイドルモード,スタンバイモードおよびアクティブモードにおける上述した電源供給のアルゴリズムを表1に示す。なお、さらに、細かく動作モードを分けることも可能である。
【0020】・・・(中略)・・・
【0021】これらの動作モードは、当該携帯電話機が、図1に示すように、送話部3が開かれた状態になっているかまたは閉じられた状態になっているか等により、予め定められたアルゴリズムに基づき決定される。」(3頁3欄33行目?4頁5欄28行目)

例えば上記周知例1のハ.又は同2に開示されているように「画像を表示するディスプレイと、上記画像を利用して操作の入力を行う操作の入力処理手段を備えた電話機能及びメニュー表示機能等を備えた装置」は周知である。
また、例えば上記周知例1又は3に開示されているように「折畳み型通信装置の開閉部の開閉状態を検出するスイッチのオンオフ状態により使用する機能を選択するとともに選択した機能に関連する部分にのみ電源を供給してアクティブ状態とすることにより省電力を計る」ことも周知である。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明の「画像を表示するディスプレイと、上記画像を利用して操作の入力を行う操作の入力処理」と引用発明の「ディスプレイと、操作入力手段」とはいずれも「ディスプレイと、操作入力手段」である点で一致している。
また、引用発明が本願発明でいう「スイッチ」を備えているか否かは不明である。
また、本願発明の「受信処理」と引用発明の「受信処理手段」の間に実質的な差異はない。
また、本願発明の「上記操作の入力処理への操作に基づいて、上記無線通信手段を利用して所定の通話先に公衆通信回線を接続させて電話通話を可能にする電話発信処理」と引用発明の「上記操作入力手段への操作に基づいて、上記無線通信手段を利用して所定の通話先に公衆通信回線を接続させて電話通話を可能にする電話発信処理手段」の間に実質的な差異はない。
また、本願発明の「上記GPS自動応答呼出が抽出された場合に、上記電話通話を可能にすることなく、上記位置座標データ入力処理から位置座標データを入力し、該入力した位置座標データを、上記無線通信手段が接続されている先方に返送するGPS自動応答処理」と引用発明の「上記GPS自動応答呼出が抽出された場合に、上記位置座標データ入力処理から位置座標データを入力し、該入力した位置座標データを、上記無線通信手段が接続されている先方に返送するGPS自動応答処理」はいずれも「上記GPS自動応答呼出が抽出された場合に、上記位置座標データ入力処理から位置座標データを入力し、該入力した位置座標データを、上記無線通信手段が接続されている先方に返送するGPS自動応答処理」であるという点で一致している。
また、本願発明でいう「スイッチ」に関連した構成である本願発明の「上記ディスプレイによる画像の表示と、該ディスプレイに表示された画像を利用する操作の入力処理とは、上記スイッチがオン信号を出力したときからオフ信号を出力するときまで、繰り返し実行され、上記電話発信処理は、上記スイッチがオン信号を出力したときからオフ信号を出力するときまでで、しかも上記操作の入力処理の入力内容に基づいて、実行され、上記GPS自動応答呼出を抽出する処理と、上記GPS自動応答処理とは、上記スイッチの状態に関わりなく実行され」という構成を引用発明が備えているか否かは不明である。

したがって、本願発明と引用発明は以下の点で一致ないし相違している。

<一致点>
「公衆通信回線に無線によって接続される無線通信手段と、
ディスプレイと、
操作入力手段と、
上記無線通信手段が上記公衆通信回線からの受信を待機している場合に、上記公衆通信回線と上記無線通信手段とを経由して受信を行う受信処理と、
GPSから位置座標データを入力する位置座標データ入力処理と、
上記操作の入力処理への操作に基づいて、上記無線通信手段を利用して所定の通話先に公衆通信回線を接続させて電話通話を可能にする電話発信処理と、
上記受信処理手段が受信を行った場合に、該受信によって送信されてきたデータからGPS自動応答呼出を抽出する処理と、
上記GPS自動応答呼出が抽出された場合に、上記位置座標データ入力処理から位置座標データを入力し、該入力した位置座標データを、上記無線通信手段が接続されている先方に返送するGPS自動応答処理と、
を備え、
上記GPS自動応答呼出が抽出された場合に起動される上記GPS自動応答処理は、上記位置座標データ入力処理を起動して、位置座標データを入力し、その位置座標データを返送する携帯型無線電話装置。」

<相違点>
(1)「ディスプレイと、操作入力手段」に関し、本願発明は「画像を表示するディスプレイと、上記画像を利用して操作の入力を行う操作の入力処理」であるのに対し、引用発明は単に「ディスプレイと、操作入力手段」である点。
(2)「上記GPS自動応答呼出が抽出された場合に、上記位置座標データ入力処理から位置座標データを入力し、該入力した位置座標データを、上記無線通信手段が接続されている先方に返送するGPS自動応答処理」に関し、本願発明は「上記GPS自動応答呼出が抽出された場合に、上記電話通話を可能にすることなく、上記位置座標データ入力処理から位置座標データを入力し、該入力した位置座標データを、上記無線通信手段が接続されている先方に返送するGPS自動応答処理」であるのに対し、引用発明は単に「上記GPS自動応答呼出が抽出された場合に、上記位置座標データ入力処理から位置座標データを入力し、該入力した位置座標データを、上記無線通信手段が接続されている先方に返送するGPS自動応答処理」である点。
(3)本願発明は「スイッチ」を備え、「上記ディスプレイによる画像の表示と、該ディスプレイに表示された画像を利用する操作の入力処理とは、上記スイッチがオン信号を出力したときからオフ信号を出力するときまで、繰り返し実行され、上記電話発信処理は、上記スイッチがオン信号を出力したときからオフ信号を出力するときまでで、しかも上記操作の入力処理の入力内容に基づいて、実行され、上記GPS自動応答呼出を抽出する処理と、上記GPS自動応答処理とは、上記スイッチの状態に関わりなく実行され」という構成を備えているのに対し、引用発明はその点の構成が不明である点。

4.当審の判断
(1)相違点(1)の「ディスプレイと、操作入力手段」について
例えば上記周知例1、2に開示されているように「画像を表示するディスプレイと、上記画像を利用して操作の入力を行う操作の入力処理手段を備えた電話機能及びメニュー表示機能等を備えた装置」は周知であり、当該周知技術を引用発明のディスプレイに適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、当該周知技術に基づいて引用発明の「ディスプレイと、操作入力手段」を本願発明のような「画像を表示するディスプレイと、上記画像を利用して操作の入力を行う操作の入力処理」とする程度のことは、当業者であれば、適宜成し得ることである。

(2)相違点(2)の「上記GPS自動応答呼出が抽出された場合に、上記位置座標データ入力処理から位置座標データを入力し、該入力した位置座標データを、上記無線通信手段が接続されている先方に返送するGPS自動応答処理」について
本願発明にかかる「GPS自動応答処理」は、本願明細書の段落130?135及び図37の記載によれば、「呼び出し内容がアナウンスであるか、FAXであるか、データであるかを判断」(段落131)し、「呼び出し内容がアナウンスで有れば、次にGPS電話アナウンス応答を行う(S2082)。一方、FAXで有れば、GPSFAX応答を行い(S2083)、データで有れば、GPSデータ応答を行う(S2084)。」(段落132)ものであるところ、上記「GPSFAX応答」又は「GPSデータ応答」はいわゆるデータ通信であり、音声通信である電話機能を利用しないものであることは当業者には明らかであるから、これらの応答に際しては「上記電話通話を可能にすることなく」実行する旨を明記して本願発明のような構成とする程度のことは当業者であれば適宜なし得ることである。

(3)相違点(3)について
例えば上記周知例1又は3に開示されているように「折畳み型通信装置の開閉部の開閉状態を検出するスイッチのオンオフ状態により使用する機能を選択するとともに選択した機能に関連する部分にのみ電源を供給してアクティブ状態とすることにより省電力を計る」ことは周知であり、また周知例1に開示されているように制御装置であるCPUは通常イベント駆動型で動作する(即ち、繰り返し実行される)ものであるから、開状態の検出でアクティブ化される画面を利用する操作ないしは処理である画像の表示処理や入力処理あるいは電話発信処理を、これらの周知技術に基づいて、開状態のときのみ実行可能とすることにより、本願発明のような「上記ディスプレイによる画像の表示と、該ディスプレイに表示された画像を利用する操作の入力処理とは、上記スイッチがオン信号を出力したときからオフ信号を出力するときまで、繰り返し実行され、上記電話発信処理は、上記スイッチがオン信号を出力したときからオフ信号を出力するときまでで、しかも上記操作の入力処理の入力内容に基づいて、実行され」という構成を引用発明に付加する程度のことは当業者であれば適宜なし得ることであり、また、前記「GPS自動応答処理」は受信待機中(即ち、折畳み型通信装置においては装置の閉状態時を含む)に行われることや上記引用例の「遭難時などの非常時に自動的に現在位置を伝送する」という記載を参照すれば、刻々と変化する位置情報を装置の状態に拘わらず取得するために、本願発明のような「上記GPS自動応答呼出を抽出する処理と、上記GPS自動応答処理とは、上記スイッチの状態に関わりなく実行され」という構成を付加する程度のことも当業者であれば適宜成し得ることである。

以上のとおり、本願発明は、引用発明および周知技術を単に寄せ集めたに過ぎないものであり、その効果も個々の構成に基づいて予想される範囲内のものであるから、当業者であれば、容易に発明できたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-27 
結審通知日 2009-11-10 
審決日 2009-12-04 
出願番号 特願2007-272591(P2007-272591)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 勝広  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 新川 圭二
小宮 慎司
発明の名称 携帯型無線電話装置  
代理人 名古屋国際特許業務法人  

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