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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61F
管理番号 1210711
審判番号 不服2008-3982  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-20 
確定日 2010-01-18 
事件の表示 特願2002-234882「吸収性物品」拒絶査定不服審判事件〔平成16年3月11日出願公開、特開2004-73322〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 本願発明
本願は、平成14年8月12日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成20年3月21日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認めるところ、請求項1は次のとおり記載されている。
「【請求項1】透液性のトップシートと、不透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に介在する吸収体とを有し、前記吸収体が備えられた範囲が吸収領域となっている吸収性物品において、
前記吸収体の吸収コアは、前記吸収領域の前後方向における中央部分の密度が最も高く、前記中央部分より前側に位置する前側部分および前記中央部分より後側に位置する後側部分にいくに従って密度が低くなっており、前記吸収領域には、間隔をあけて左側に配置された左エンボス加工部と右側に配置された右エンボス加工部とが形成され、前記左エンボス加工部と前記右エンボス加工部は前記吸収領域の前後方向へ真っ直ぐに延び、且つ平行に配置されるとともに、左エンボス加工部と右エンボス加工部とを連結する連結エンボス加工部が形成され、前記吸収性物品は生理用ナプキンであり、中央部分は、吸収領域の前端から40mmの位置より後側であって、且つ吸収領域の後端から20mmの位置より前側の領域を最大範囲とすることを特徴とする吸収性物品。」
(以下、請求項1に係る発明を、「本願発明」という。)

2 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭50-126704号(実開昭52-39697号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、次の記載がある。
a「本考案は新規な生理用ナプキンに関する。さらに詳しくは、…長さ方向の両端から経血が漏れることのない生理用ナプキンに関する。」(明細書1頁最下行ないし2頁4行)
b「本考案の生理用ナプキンは、第1図および第2図に示されるように、吸収材として新規な圧縮体1を用いて該圧縮体1の底面および側面を適宜の防水材2で被覆し、これを適宜の被覆材3で巻装することくした構造を有し」(同3頁8ないし12行)
c「被覆材3は経血を透過させることができ」(同3頁下から2行)
d「圧縮体1は第3図(a)、(b)および(c)に示されるように、混合破砕片6と綿状パルプ7とからなり、かつ両者の積層割合が長さ方向の両端部付近において重量比で100:0?60:40、および中央部付近において40:60?0:100となるように積層したものを…圧縮してえられるものである。…混合破砕片6は、…吸水性のパルプ類…などの破砕片と、非吸水性の防水紙…などの破砕片とを、重量比で通常10:1?1:2の割合で混合したものである。混合破砕片6と綿状パルプ7の積層の仕方については……第3図(c)に示されるように綿状パルプ7が等脚台形になるように積層する仕方などが好適に採用されうる。」(同4頁17行ないし6頁2行)
e「かかる圧縮体1は…混合破砕片6と綿状パルプ7との積層割合が長さ方向の両端部付近と中央部付近とで異なつており、中央部付近の綿状パルプ量が両端部付近に比べてはるかに多いために、中央部付近の経血吸収速度が両端部付近の経血吸収速度よりもはるかに速く、それによつてたとえ両端部付近に近い部分で経血を受けたとしても経血の大部分は中央部に向つて吸収される。かくして両端からの経血漏れが解消される」(同6頁3ないし12行)
f「かかる顕著な効果は……圧縮体の中央部付近から両端部付近にかけて経血吸収速度勾配を与えたから…」(同6頁下から2行ないし7頁3行)
g「経血の大部分は中央部付近に向かつてすみやかに吸収されてゆく」(同9頁9ないし11行)
以上の記載及び第1図ないし第3図によれば、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる。
「経血を透過させる被覆材と、防水材と、被覆材と防水材との間に吸収材としての圧縮体とを有し、圧縮体を構成する混合破砕片と綿状パルプとの積層割合が中央部付近と両端部付近とで異なり、圧縮体の中央部付近の経血吸収速度が両端部付近の経血吸収速度より速く、中央部付近から両端部付近にかけて経血吸収速度勾配を有し、経血が中央部付近に向ってすみやかに吸収され、長さ方向両端からの経血の漏れを防ぐ、生理用ナプキン。」

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-95846号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の記載がある。
「【0014】<第1の実施の形態:図1?図6>図1の上側が前である。実施の形態の生理用ナプキンは、使用面側から体液を受け入れて内部に保持する吸収要素10と…ギャザーフラップ20と…漏れ防止シート30とを備える。」
「【0016】吸収要素10は、使用面側に位置し体液を透過させる…表面シート11と、透過した体液を受け入れて内部に保持する綿状粉砕パルプおよび必要によりさらにその上下面もしくは全面を包む吸収紙を有する吸収体12とを有している。…吸収体12は、ほぼ長手方向中央部にわたって、かつ幅方向中央部に使用面側に高い中高部を有している。…」
「【0019】…吸収要素10の少なくとも長手方向中間における、両側縁より内側位置において長手方向に沿って起立助長用としても機能するフィットエンボス51,51が、中高部の両側部に、使用面側から形成されている。このフィットエンボス51,51は、ナプキンの側外方に円弧中心を有する円弧またはほぼ円弧状曲線としてある。さらに、フィットエンボス51,51前後を繋いで方向に円弧またはほぼ円弧状曲線による繋ぎエンボス52,52が形成されている。これらのエンボス51,51,52,52で閉じられた領域では吸収体12が中高とされている。したがって、エンボス51,51,52,52領域内おいて吸収体12の中高部に集中的に吸収を図る構成とされている。」
以上の記載及び図1ないし図6によれば、引用例2には、次の発明が記載されていると認められる。
「吸収要素の両側縁の長手方向に沿ってフィットエンボスが形成され、フィットエンボスは長手方向へ湾曲して延び、フィットエンボスの前後を繋いで繋ぎエンボスが形成された生理用ナプキン。」

3 対比・検討
本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「経血を透過させる被覆材」、「防水材」、「吸収材」、「圧縮体」及び「生理用ナプキン」は、それぞれ本願発明の「透液性のトップシート」、「不透液性のバックシート」、「吸収体」、「吸収コア」及び「吸収性物品」に相当し、また、引用例1記載の発明において、吸収材としての圧縮体が備えられた範囲が吸収領域となっていることは、当業者にとって明らかである。
本願明細書段落【0016】の「吸収体5の吸収コア5aは中高部8の前後方向の中央部分17において最も密度が高く、前端部および後端部へいくに従って低くなっている。…前側部分19と後側部分21における吸収コア5aの密度は中央部分17から離れるに従って徐々に低くなる密度勾配を有している。従って、中高部8の中央部分17における吸収力が最も高くなっており、中央部分17から前後両端部へいくに従って吸収力が徐々に低くなっている。」との記載を参照すると、本願発明における「吸収体の吸収コアは、前記吸収領域の前後方向における中央部分の密度が最も高く、前記中央部分より前側に位置する前側部分および前記中央部分より後側に位置する後側部分にいくに従って密度が低くなっており」との事項は、吸収領域の前後方向における中央部分の吸収力が最も大きく、中央部分から前後両端部へいくに従って吸収力が小さくなっていることを意味していると解される。本願発明は、それによって、中央部分からはずれた部位で吸収された経血等も、中央部分に対応する部位にある吸収体へ向かって流れることになり、経血等の液体を前側部分または後側部分において吸収しても、液体は中央部分へ集まろうとするので、前端部または後端部からの漏れを防止することができる(段落【0006】、【0040】参照)というものである。
一方、引用例1記載の発明も、両端部付近に近い部分で経血を受けたとしても経血の大部分は中央部に向って吸収され、両端からの経血漏れが防止される(上記記載e参照)というものであり、「圧縮体の中央部付近の吸収速度が両端部付近の経血吸収速度より速く、中央部付近から両端部付近にかけて経血吸収速度勾配を有し」は、「圧縮体の中央部付近の吸収力が両端部付近の吸収力より大きく、中央部付近から両端部付近にかけて吸収力の勾配を有し」と言い換えることができ、「中央部付近」及び「両端部付近」は、それぞれ本願発明の「中央部分」及び「前側部分」と「後側部分」に相当する。
そうすると、両者は、
「透液性のトップシートと、不透液性のバックシートと、トップシートとバックシートとの間に介在する吸収体とを有し、吸収体が備えられた範囲が吸収領域となっている吸収性物品において、
吸収領域の前後方向における中央部分の吸収力が最も大きく、中央部分から前後両端部へいくに従って吸収力が小さくなっており、吸収性物品は生理用ナプキンである、吸収性物品。」
である点で一致し、次の点で相違する。
《相違点1》
本願発明では、吸収コアの中央部分の密度を最も高く、前側部分および後側部分にいくに従って密度を低くすることにより、中央部分の吸収力を最も大きく、中央部分から前後両端部へいくに従って吸収力を小さくしているのに対し、引用例1記載の発明では、吸収コアの混合破砕片と綿状パルプとの積層割合を中央部分、前側部分、後側部分で異ならせることにより、吸収力を異ならせている点。
《相違点2》
本願発明では、吸収領域には、間隔をあけて左側に配置された左エンボス加工部と右側に配置された右エンボス加工部とが形成され、左エンボス加工部と右エンボス加工部は前記吸収領域の前後方向へ真っ直ぐに延び、且つ平行に配置されるとともに、左エンボス加工部と右エンボス加工部とを連結する連結エンボス加工部が形成されているのに対して、引用例1記載の発明では、エンボス加工部について特定されていない点。
《相違点3》
本願発明では、中央部分は、吸収領域の前端から40mmの位置より後側であって、且つ吸収領域の後端から20mmの位置より前側の領域を最大範囲とするのに対して、引用例1記載の発明では、中央部分の最大範囲について特定されていない点。

4 相違点の検討
そこで、上記相違点について検討する。
《相違点1について》
既述したように、本願発明では、吸収領域の前後方向における中央部分の吸収力を最も大きくするために、吸収体の吸収コアの中央部分の密度を最も高くし、中央部分から前後両端部へいくに従って吸収力を小さくするために、中央部分より前側に位置する前側部分および中央部分より後側に位置する後側部分にいくに従って吸収体の吸収コアの密度を低くしたものである。
しかし、吸収材の密度を高めて吸収力を大きくすることは、吸収性物品の技術分野において本願の出願前に周知の技術(例えば、特公昭45-36998号公報)であるから、引用例1記載の発明において、吸収領域の中央部分の吸収力を最も大きく、中央部分から前側部分及び後側部分へいくに従って吸収力を小さくする手段として、混合破砕片と綿状パルプとの積層割合を中央部分、前側部分、後側部分で異ならせることに代えて、吸収材の密度を高めて吸収力を大きくするという上記周知の技術を採用して、相違点1にかかる本願発明の事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

《相違点2について》
既述した引用例2記載の発明の「吸収要素」、「フィットエンボス」、「長手方向」及び「繋ぎエンボス」は、それぞれ本願発明の「吸収領域」、「左エンボス加工部」と「右エンボス加工部」、「前後方向」、「連結エンボス加工部」に相当するから、引用例2には、「吸収領域には、間隔をあけて左側に配置された左エンボス加工部と右側に配置された右エンボス加工部とが形成され、左右エンボス加工部は前後方向へ湾曲して延び、左エンボス加工部と右エンボス加工部とを連結する連結エンボス加工部が形成されている生理用ナプキン」の発明が記載されているといえる。
ここで、引用例2に記載の左エンボス加工部と右エンボス加工部は、吸収領域の前後方向へ真っ直ぐに延び、且つ平行に配置されているものではないが、生理用ナプキンにおいて、前後方向に真っ直ぐ平行に延びる左右エンボス加工部を設けることは、本願の出願前に周知の技術(例えば、特開平9-70413号公報や特開平10-272152号公報)であり、左右エンボス加工部を前後方向へ湾曲して設けるか、前後方向に真っ直ぐ平行に設けるかは、当業者が設計上適宜選択し得る事項にすぎない。
そうすると、引用例1記載の発明に引用例2記載の発明を適用し、その際に、左右エンボス加工部を前後方向に真っ直ぐ平行に設けて、相違点2にかかる本願発明の事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

《相違点3について》
本願明細書段落【0037】の記載によると、本願発明は、生理用ナプキンを最も前側又は最も後側にずらして装着した場合の平均的な成人女性の排血口の位置を基に、中央部分の最大範囲を、吸収領域の前端から40mmの位置より後側であって、且つ吸収領域の後端から20mmの位置より前側の領域と特定することにより、生理用ナプキンを最も前側又は最も後側にずらして装着した場合のいずれをもカバーできるようにしたというものである。
しかし、中央部分の最大範囲を上記のように特定しても、必ずしも本願発明が上記の効果を奏するということはできないし、また、最も前側又は最も後側にずらして装着した場合の吸収領域の前端及び後端からの排血口の位置は、装着者の体形により異なるものであるから、「前端から40mm」及び「後端から20mm」の数値限定に臨界的意義も認められない。
そして、引用例1記載の発明も、既述したように、生理用ナプキンの両端部付近に近い部分で経血を受けたとしても、経血の大部分は中央部に向つて吸収され、両端からの経血漏れが防止されるようにしたものであって、本願発明と同様に、前側又は後側にずらして生理用ナプキンを装着した場合でも、経血の大部分は中央部に向つて吸収され、前端部または後端部からの漏れが防止されるようにしたものであるから、引用例1記載の発明において、前側又は後側にずらして生理用ナプキンを装着した場合でも、吸収領域の前端部または後端部から経血が漏れないように、排血口の位置を考慮して中央部分の範囲を設定し、相違点3にかかる本願発明の事項とすることは、当業者であれば、格別の困難性を伴うことなく容易になし得たことである。

しかも、本願発明が奏する効果も、引用例1及び引用例2記載の発明並びに周知の技術から当業者が予測できたものであり、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用例1及び引用例2記載の発明並びに周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、審判請求人は、平成21年8月3日付けの回答書において、請求項1の補正案を提示し、補正の機会を求めている。その補正案は次のとおりである。
「【請求項1】透液性のトップシートと、不透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に介在する吸収体とを有し、前記吸収体が備えられた範囲が吸収領域となっている吸収性物品において、
前記吸収体の吸収コアは、前記吸収領域の前後方向における中央部分の密度が最も高く、前記中央部分より前側に位置する前側部分および前記中央部分より後側に位置する後側部分にいくに従って密度が低くなっており、前記吸収領域には、間隔をあけて左側に配置された左エンボス加工部と右側に配置された右エンボス加工部とが形成され、前記左エンボス加工部と前記右エンボス加工部は前記吸収領域の前後方向へ真っ直ぐに延び、且つ平行に配置されるとともに、左エンボス加工部と右エンボス加工部とを連結する連結エンボス加工部が形成され、前記吸収性物品は生理用ナプキンであり、中央部分は、吸収領域の前端から40mmの位置より後側であって、且つ吸収領域の後端から20mmの位置より前側の領域を最大範囲とし、前記中央部分以外の前後側部分と、前後方向中央部分との密度比は、1:2.0以上とし、KES圧縮試験機による圧縮エネルギー値は、前記中央部分は0.25?0.40gf・cm/cm^(2)とし、前記中央部分以外の前後側部分は0.55gf・cm/cm^(2)以上とすることを特徴とする吸収性物品。」
上記補正案は、本願発明に、(ア)前記中央部分以外の前後側部分と、前後方向中央部分との密度比は、1:2.0以上とし、(イ)KES圧縮試験機による圧縮エネルギー値は、前記中央部分は0.25?0.40gf・cm/cm^(2)とし、前記中央部分以外の前後側部分は0.55gf・cm/cm^(2)以上とする、との事項を付加したものである。
しかし、付加した事項(ア)については、前後側部分と、前後方向中央部分との密度比の数値限定に臨界的意義は認められず、該密度比の数値限定は、当業者が必要に応じ適宜決定し得る設計的事項である。また、付加した事項(イ)については、圧縮エネルギー値の数値限定に臨界的意義は認められず、該圧縮エネルギー値の限定も、当業者が必要に応じ適宜なし得る設計的事項である。
したがって、補正をしたとしても容易想到性の判断は変わらないので、補正の必要を認めない。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-20 
結審通知日 2009-11-24 
審決日 2009-12-07 
出願番号 特願2002-234882(P2002-234882)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 直  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 鳥居 稔
豊島 ひろみ
発明の名称 吸収性物品  
代理人 和泉 久志  
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