ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B |
---|---|
管理番号 | 1211046 |
審判番号 | 不服2007-2595 |
総通号数 | 123 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-03-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-01-19 |
確定日 | 2010-02-04 |
事件の表示 | 特願2003-312887「光ディスク駆動装置および方法、記録媒体、並びにプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月31日出願公開、特開2005- 85307〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成15年9月4日の出願であって、平成18年9月26日付けで通知した拒絶理由に対して同年11月27日付けで手続補正がなされたが、同年12月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年1月19日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年2月19日付けで特許請求の範囲及び明細書について手続補正がなされたものである。 第2 平成19年2月19日付けの手続補正についての補正却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 平成19年2月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 1.本件補正 〔理 由〕 本件補正は、特許請求の範囲についてするもので、特許請求の範囲については、補正前請求項1を削除し、補正前請求項1に補正前の請求項4を取り込むとともに、「光ディスクの種類に対応して、トラバース信号」とあったところを、「前記光ディスクの種類に対応して、前記光ディスクから生成されるトラバース信号」と、トラバース信号に限定を加えることで請求項1とするものであって、特許請求の範囲を減縮しようとするものであると認められる。 また、補正前請求項1を引用する補正前請求項2、3及び6は、本件補正の請求項1を引用して請求項2、3及び5とするものであり、補正前請求項4を引用する補正前請求項5は、本件補正の請求項1を引用して請求項4とするものである。 さらに、補正前請求項6を引用する、補正前請求項7及び8は、本件補正の請求項1を引用して請求項6及び7とするものであり、補正前請求項9、10及び11は、補正前請求項9、10及び11に補正前の請求項4を取り込むとともにトラバース信号の限定を加えることで請求項8、9及び10とするものであって、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 よって、本件補正の請求項1ないし10は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かを、請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について以下に検討する。 本願補正発明は、次に記載するとおりのものである。 「【請求項1】 光ディスクとピックアップとのラジアルチルト角度を第1の範囲において所定の角度に設定する設定手段と、 前記光ディスクが少なくとも1回転以上回転する期間において、前記光ディスクから生成される所定の振幅を有する信号を検出する検出手段と、 検出された前記信号のうち、所定の値以上の振幅値を含む第2の範囲の前記信号に対応する前記ラジアルチルト角度を特定する特定手段と、 特定された前記ラジアルチルト角度に基づいて、前記光ディスクに対する前記ピックアップの姿勢を制御する制御手段と、 前記光ディスクの種類に対応して、前記光ディスクから生成されるトラバース信号および前記光ディスクから生成される再生信号のいずれか一方を選択する選択手段と を有し、 前記検出手段は、前記トラバース信号が選択された場合、前記第1の範囲の前記ラジアルチルト角度のそれぞれに対する、前記トラバース信号を検出し、前記再生信号が選択された場合、前記第1の範囲の前記ラジアルチルト角度のそれぞれに対する、前記再生信号を検出し、 前記特定手段は、前記トラバース信号が選択された場合、検出された前記トラバース信号の内の、最も大きい値を含む前記第2の範囲の前記トラバース信号に対応する前記ラジアルチルト角度を特定し、前記再生信号が選択された場合、検出された前記再生信号の内の、最も大きい値を含む第3の範囲の前記再生信号に対応する前記ラジアルチルト角度を特定する ことを特徴とする光ディスク駆動装置。」 2.引用例及びその記載 (1)引用例1 原査定の拒絶の理由に引用された特開平09-007207号公報(以下、「引用例1」という)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。 (a)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、ディスク駆動装置および傾き調整方法に関し、特に、ディスクに対して情報を記録または再生するヘッドとディスクとの傾きを常に正しい状態に調整することが可能な、ディスク駆動装置および傾き調整方法に関する。」 (b)「【0012】 【発明が解決しようとする課題】従来の装置においては、このように、工場出荷時に調整用ディスクを用いて光ヘッド3の傾きを調整し、以後、その傾きを固定するようにしているため、光ディスク1の個々のばらつきに対応して、光ヘッド3を適正な角度に調整することができない課題があった。」 (c)「【0018】請求項7に記載の傾き調整方法においては、ヘッドのディスクに対する相対的傾きが変化されたとき、ヘッドによりディスクから再生された信号が検出され、その検出結果に対応して、ヘッドのディスクに対する相対的傾きが調整される。」 (d)「【0019】 【実施例】図1は、本発明のディスク駆動装置を応用した光ディスク再生装置の構成例を表しており、図15における場合と対応する部分には、同一の符号を付してある。この実施例においては、トラッキングエラー信号振幅最大サーチ回路31が設けられている。このトラッキングエラー信号振幅最大サーチ回路31は、レベル検出回路41を有し、このレベル検出回路41は、光ヘッド3が出力するトラッキングエラー信号のレベルを検出し、検出結果を制御回路42に出力するようになされている。制御回路42は、レベル検出回路41の出力から、光ヘッド3と光ディスク1の最適な相対的角度位置を検出するようになされている。 【0020】光ヘッド3の光ディスク1に対する相対的角度を変化させると、トラッキングエラー信号は図2に示すように変化する。すなわち、最適な角度位置(最適点)に光ヘッド3の光ディスク1に対する相対的角度が調整されたとき(スキューセンサ4の出力が、光ヘッド3の傾きが最適となった状態に対応する値となるように、角度調整がなされたとき)、トラッキングエラー信号の振幅は最大となり、最適点からずれると、トラッキングエラー信号の振幅は小さくなる。制御回路42は、この原理に従って、最適点を求めるのである。」 (e)「【0025】スピンドルモータ2を所定の時間回転したとき、あるいは、スピンドルモータ2が所定の回転速度に達したとき、制御回路17はスイッチ8をCLV回路6側に切り替える。」 (f)「【0029】ところで、この時、トラッキングサーボはまだ開始されていない。その結果、光ヘッド3は、光ディスク1の複数のトラックを周期的に横切る状態となる。すなわち、光ディスク1とスピンドルモータ2の回転中心は、偏心によりずれているため、トラッキングサーボをかけないと、光ヘッド3の情報再生点(レーザ光による光スポット)は複数のトラックを周期的に横切ることになる。その結果、光ヘッド3は、例えば図3に示すようなトラッキングエラー信号を出力する。同図に示すように、トラッキングエラー信号が周期的に変化している。 【0030】トラッキングエラー信号振幅最大サーチ回路31のレベル検出回路41は、このトラッキングエラー信号のピークホールド値とボトムホールド値とを検出し、両者の差をトラッキングエラー信号の振幅として検出する。そして、この振幅検出信号は、制御回路42に供給される。このトラッキングエラー信号の振幅は、図2に示したように、光ヘッド3の光ディスク1に対する相対的角度(スキューセンサ4の出力)に対応して変化する。制御回路42は、トラッキングエラー信号の最大の振幅が得られるスキューエラー信号の最適点を、いわゆる山登り法により検出する。 【0033】すなわち、制御回路42は、オフセット発生回路43にオフセット信号S0を発生させる。スキューサーボ回路11は、加算器32によりこのオフセット信号S0が加算されたスキューエラー信号に対応してスキューモータ14を制御し、光ヘッド3の傾きを調節する。 【0034】レベル検出回路41は、この時、光ヘッド3が出力するトラッキングエラー信号の振幅を検出し、制御回路42に出力する。制御回路42は、この時検出されたトラッキングエラー信号の振幅値をRn(いまの場合、Rn=R0)に設定する。 【0035】次にステップS2に進み、Sn+にS0とαを加算した値を設定する。すなわち次式を演算する。Sn+=S0+α 【0036】そして、オフセット発生回路43に、このオフセット信号Sn+(=S1)を発生させる。すなわち、ステップS1で発生していたオフセット信号Snよりαだけ大きいオフセット値をオフセット発生回路43に発生させる。スキューサーボ回路11は、このオフセット値が加算されたスキューエラー信号に対応してスキューモータ14を制御するので、光ヘッド3は、このオフセット値αの分だけ光ヘッド3の角度をさらに変化させる。」 (g)「【0072】図8は、本発明のディスク駆動装置を応用した光ディスク再生装置の他の実施例を表している。この実施例においては、図1のトラッキングエラー信号振幅最大サーチ回路31に代えて、RF信号振幅最大サーチ回路51が設けられている。そして、光ヘッド3が出力するRF信号が、RF信号振幅最大サーチ回路51に入力されている。 【0073】RF信号振幅最大サーチ回路51は、図1に示したトラッキングエラー信号振幅最大サーチ回路31と同様に、レベル検出回路、制御回路およびオフセット発生回路により構成されている。 【0074】その他の構成は、図1における場合と同様である。 【0075】すなわち、図8の実施例においては、再生動作の開始が指令されたとき、制御回路17は、図1の実施例における場合と同様に、光ヘッド3を光ディスク1の最内周トラック位置に移送した後、スピンドルモータ2を駆動し、光ディスク1を回転させる。その後、さらにスキューサーボ回路11、フォーカスサーボ回路9およびトラッキングサーボ回路10が、いずれも動作状態とされる。すなわち、スキューサーボ、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボがかかった状態となる。 【0076】この状態において、スキューエラー信号とRF信号の振幅の関係をグラフに示すと、図2、図4および図6に示すようになる。すなわち、光ヘッド3の光ディスク1に対する相対的角度を最適な角度に設定したとき、RF信号の振幅は最大となる。従って、RF信号振幅最大サーチ回路51において、トラッキングエラー信号の振幅の最大値を求めた場合と同様に、RF信号の振幅の最大値を求めることで、最適点をサーチし、設定することができる。その処理は、図1の実施例における場合と同様であるので、その説明は省略する。」 上記引用例記載事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用例1には、結局、次の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。 「光ヘッドの光ディスクに対する相対的角度を、オフセット信号により調節する、トラッキングエラー信号振幅最大サーチ回路内の制御回路、若しくはRF信号振幅最大サーチ回路の制御回路と、 前記光ディスクが回転する期間において、光ディスクから検出される、トラッキングエラー信号の、ピークホールド値とボトムホールド値とを検出し、両者の差を振幅として検出するレベル検出回路、若しくは、同様にしてRF信号のレベルを検出するレベル検出回路と、 光ヘッドの光ディスクに対する相対的角度を順次変化させて、山登り制御を行い、前記検出された振幅のうち、最大の振幅が得られる光ヘッドの光ディスクに対する相対的角度を最適点として検出する前記制御回路、若しくはRF信号において、同様にして光ヘッドの光ディスクに対する相対的角度を検出する前記制御回路と、 光ヘッドの光ディスクに対する最適な相対的角度に基づいて、光ヘッドを適正な角度に調整するスキューサーボと、 トラックを周期的に横切るトラッキングエラー信号の場合に、ヘッドを傾けるためのオフセット信号を変化させ、その間のトラッキングエラー信号を検出する前記レベル検出回路、若しくはRF信号の場合において、同様にその間のRF信号を検出する前記レベル検出回路と を有し、 前記制御回路は、トラックを周期的に横切るトラッキングエラー信号を用いる場合に、検出された前記トラッキングエラー信号の内の、最大値のトラッキングエラー信号に対応する光ヘッドの光ディスクに対する最適な相対的角度を特定し、RF信号の場合においても、同様に光ヘッドの光ディスクに対する最適な相対的角度を特定する、 ディスク駆動装置。」 (2)引用例2 同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-162836号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。 (h)「【請求項1】レーザービームを集束して光ディスクに照射する対物レンズと、該光ディスクの種類または記録データの有無を判別する光ディスク判別手段と、該光ディスク判別手段の判別結果に応じた複数の異なるチルト検出手段と、該対物レンズを傾けるレンズチルト手段と、該チルト検出手段によって得られる傾き検出結果に基づいて該レンズチルト手段を駆動するチルト制御手段とを備え、該光ディスク判別手段によって得られた光ディスク判別結果によって該複数の異なるチルト検出手段から一つのチルト検出手段を選択することを特徴とする光ディスク装置。 【請求項3】請求項1又は2に記載の光ディスク装置において、該複数の異なるチルト検出手段の一つは、トラックずれ検出信号またはウォブル信号の振幅を検出するトラッキング信号振幅検出手段を有し、該トラッキング信号振幅検出手段によって得られた振幅検出信号をもとに該対物レンズと該光ディスクの相対的な傾きを演算することを特徴とする光ディスク装置。 【請求項4】請求項1又は2に記載の光ディスク装置において、該複数の異なるチルト検出手段の一つは、光ディスクに記録されている情報の再生信号の振幅を検出する再生信号振幅検出手段を有し、該再生信号振幅検出手段によって得られた振幅検出信号をもとに該対物レンズと該光ディスクの相対的な傾きを演算することを特徴とする光ディスク装置。」 (i)「【0008】また、上述したような多種類の光ディスクのそれぞれに対応して専用のディスクチルト低減技術と、それを用いた専用の光ディスク装置が同時に開発されている。しかし、これら複数のチルト低減技術を用いた光ディスク装置を用意したり、チルト低減技術別の光ディスク装置を用意したりすることは、多額な費用がかかる。また、チルト低減技術別の光ディスク装置を用いると、コンピュータに接続するための外部装置の数が増えることになるので、ノートブックタイプのパーソナルコンピュータ等には不向きである。よって、多種類の光ディスクに対応したディスクチルト低減技術と、それを用いた光ディスク装置が必要である。しかし、上記の従来のディスクチルト低減技術は、それぞれが個々の光ディスクに対応した技術であって、多種類の光ディスクに対応したものではない。よって、多種類の光ディスクに対応したディスクチルト低減技術の工夫がなされていない、という問題があった。 【0009】本発明の目的は、上記問題点を解決し、レーザービームを微小な光スポットに集束して情報の記録媒体である光ディスクに照射し、光学的に情報を記録し、または光学的に情報を再生する光ディスク装置において、各種の光ディスクの傾きに対して最適な傾き補正を行うことができるチルト低減技術を提供することにある。」 3.対比 本願補正発明を、引用発明と対比する。 引用発明における「ディスク駆動装置」は、光ディスクを駆動するものであるから、本願補正発明の「光ディスク駆動装置」に相当する。 引用発明における「光ヘッドの光ディスクに対する相対的角度」は、相対的角度を、光ディスクの半径方向のずれ量を表すトラッキングエラー信号を用いて検出することから、「光ディスクとピックアップのラジアルチルト角度」に相当し、また、引用発明の「オフセット信号」は、光ヘッドの傾きを調整するものであるから、引用発明における「光ヘッドの光ディスクに対する相対的角度を、オフセット信号により調節する、トラッキングエラー信号振幅最大サーチ回路内の制御回路、若しくはRF信号振幅最大サーチ回路の制御回路」は、本願補正発明における「光ディスクとピックアップとのラジアルチルト角度を所定の角度に設定する設定手段」に相当する。 引用発明における「ピークホールド値とボトムホールド値とを検出し、両者の差を振幅として検出する」ことは、本願補正発明における「所定の振幅を有する信号を検出する」ことに相当するから、引用発明における「前記光ディスクが回転する期間において、光ディスクから検出される、トラッキングエラー信号の、ピークホールド値とボトムホールド値とを検出し、両者の差を振幅として検出するレベル検出回路、若しくは、同様にしてRF信号のレベルを検出するレベル検出回路」は、本願補正発明における「前記光ディスクが回転する期間において、前記光ディスクから生成される所定の振幅を有する信号を検出する検出手段」に相当する。 引用発明における「前記検出された振幅のうち、最大の振幅」は、本願補正発明における「検出された前記信号のうち、所定の値以上の振幅」に相当するから、引用発明における「光ヘッドの光ディスクに対する相対的角度を順次変化させて、山登り制御を行い、前記検出された振幅のうち、最大の振幅が得られる光ヘッドの光ディスクに対する相対的角度を最適点として検出する前記制御回路、若しくはRF信号において、同様にして光ヘッドの光ディスクに対する相対的角度を検出する前記制御回路」は、本願補正発明における「検出された前記信号のうち、所定の値以上の振幅の前記信号に対応する前記ラジアルチルト角度を特定する特定手段」に相当する。 引用発明における「スキューサーボ」はヘッドの傾き方向のサーボを意味するから、光ヘッドを適正な角度に調整するものであって、引用発明における「光ヘッドの光ディスクに対する最適な相対的角度に基づいて、光ヘッドを適正な角度に調整するスキューサーボ」は、本願補正発明における「特定された前記ラジアルチルト角度に基づいて、前記光ディスクに対する前記ピックアップの姿勢を制御する制御手段」に相当する。 引用発明における「トラックを周期的に横切るトラッキングエラー信号」及び「RF信号」は、それぞれ、本願補正発明における「前記光ディスクから生成されるトラバース信号」及び「前記光ディスクから生成される再生信号」に相当するから、引用発明における「トラックを周期的に横切るトラッキングエラー信号の場合に、ヘッドを傾けるためのオフセット信号を変化させ、その間のトラッキングエラー信号を検出する前記レベル検出回路、若しくはRF信号の場合において同様にその間のRF信号を検出する前記レベル検出回路」は、本願補正発明における「前記検出手段は、前記(光ディスクから生成される)トラバース信号」の「場合」には、「前記ラジアルチルト角度のそれぞれに対する、前記トラバース信号を検出し、前記(光ディスクから生成される)再生信号」の「場合」には、「前記ラジアルチルト角度のそれぞれに対する、前記再生信号を検出」することに相当する。 引用発明における「トラックを周期的に横切るトラッキングエラー信号を用いる場合に、検出された前記トラッキングエラー信号の内の、最大値のトラッキングエラー信号に対応する光ヘッドの光ディスクに対する最適な相対的角度傾きを特定し、RF信号の場合においても同様に光ヘッドの光ディスクに対する最適な相対的角度傾きを特定する」ことは、本願補正発明における、「前記特定手段は、前記トラバース信号」の「場合、検出された前記トラバース信号の内の、最も大きい値」「の前記トラバース信号に対応する前記ラジアルチルト角度を特定し、前記再生信号」の「場合、検出された前記再生信号の内の、最も大きい値」「の前記再生信号に対応する前記ラジアルチルト角度を特定する」ことに相当する。 すると、本願補正発明と引用発明とは、次の<一致点>及び<相違点>を有する。 <一致点> 光ディスクとピックアップとのラジアルチルト角度を所定の角度に設定する設定手段と、 前記光ディスクが回転する期間において、前記光ディスクから生成される所定の振幅を有する信号を検出する検出手段と、 検出された前記信号のうち、所定の値以上の振幅の前記信号に対応する前記ラジアルチルト角度を特定する特定手段と、 特定された前記ラジアルチルト角度に基づいて、前記光ディスクに対する前記ピックアップの姿勢を制御する制御手段と を有し、 前記検出手段は、トラバース信号の場合には、前記ラジアルチルト角度のそれぞれに対する、前記トラバース信号を検出し、再生信号の場合には、前記ラジアルチルト角度のそれぞれに対する、前記再生信号を検出し、 前記特定手段は、前記トラバース信号の場合には、検出された前記トラバース信号の内の、最も大きい値の前記トラバース信号に対応する前記ラジアルチルト角度を特定し、前記再生信号の場合には、検出された前記再生信号の内の、最も大きい値の前記再生信号に対応する前記ラジアルチルト角度を特定する ことを特徴とする光ディスク駆動装置。 <相違点> (相違点1) 本願補正発明では、「前記光ディスクが少なくとも1回転以上回転する期間において、前記光ディスクから生成される所定の振幅を有する信号を検出する」のに対し、引用発明では、光ディスクの回転期間について特定されていない点。 (相違点2) 本願補正発明では、「光ディスクとピックアップとのラジアルチルト角度を第1の範囲において所定の角度に設定」し、また、「前記第1の範囲の前記ラジアルチルト角度のそれぞれに対する、前記トラバース信号を検出」、若しくは「前記第1の範囲の前記ラジアルチルト角度のそれぞれに対する、再生信号を検出」するのに対し、引用発明では、ラジアルチルト角度を所定の角度に設定する範囲、及び、トラバース信号若しくは再生信号を検出するラジアルチルト角度の範囲について特定されていない点。 (相違点3) 本願補正発明では、「前記光ディスクの種類に対応して、前記光ディスクから生成されるトラバース信号および前記光ディスクから生成される再生信号のいずれか一方を選択する選択手段」を備え、また、本願補正発明では、「前記トラバース信号が選択された場合」と「前記再生信号が選択された場合」の動作を有するのに対し、引用発明では、これらの特定事項がない点。 (相違点4) 本願補正発明では、「最も大きい値を含む前記第2の範囲の前記トラバース信号に対応する前記ラジアルチルト角度を特定」若しくは「最も大きい値を含む第3の範囲の前記再生信号に対応する前記ラジアルチルト角度を特定」するのに対し、引用発明では、最も大きい値を含む前記第2の範囲若しくは第3の範囲に対してラジアルチルト角を特定することについて特定されていない点。 4.判断 1)相違点1について 引用発明は、スピンドルモータ2を、線速度一定(CLV)にして回転させ、光ヘッドが複数のトラックを周期的に横切っている状態で、トラッキングエラー信号のピークホールド値とボトムホールド値とを検出し、両者の差をトラッキング信号の振幅として検出しているから(引用例1の【0025】、【0029】【0030】段落の記載及び図3に基づく。)、引用発明も光ディスクを回転させながら、トラッキングエラー信号の振幅を検出するものである。そして、トラッキングエラー信号のピークホールド値、ボトムホールド値を得るためには所定の回転量を必要とすることは明らかであり、また、引用例1の図3によれば、トラッキングエラー信号のピークホールド値、ボトムホールド値とともに、1回転周期以上の期間の波形図が示されていることから、引用発明においても、トラッキングエラー信号のピークホールド値、ボトムホールド値を得るために、光ディスクの回転期間を「少なくとも1回転以上」とすることは、当業者が適宜採用し得る事項である。 2)相違点2について 引用発明は、トラッキングエラー信号の最大の振幅を得るために、光ヘッドの傾きを変化させて山登り制御を行うものであり、また、一般に、山登り制御は、最大値を含むものと見込まれる所定の範囲内で最大値の探索を行うものであるから、本願補正発明のように、光ディスクとピックアップとのラジアルチルト角度を第1の範囲において所定の角度に設定すること、及びトラバース信号若しくは再生信号の検出を、前記第1の範囲の前記ラジアルチルト角度のそれぞれに対して行うことは、当業者が普通に採用し得る事項である。 3)相違点3について 引用例2には、各種の光ディスクの傾きに対して、光ディスクからの信号を検出して光ディスクに照射する対物レンズを最適な傾きとするよう、光ディスクの種類を判別する点、及び、光ディスクの種類に応じて、トラックずれ検出信号を用いたトラッキング信号振幅検出手段を用いてレンズチルトを検出、若しくは、光ディスクに記録されている情報の再生信号の振幅を検出する再生信号振幅検出手段を用いてレンズチルトを検出する点が記載されている。(引用例2の【請求項1】【請求項3】【請求項4】の記載に基づく。) そして、引用発明においても、多種類の光ディスクに対応させようとすること、及び、各種の光ディスクの傾きに対して、光ヘッドを最適な傾きとするようにすることは、当業者が、適宜採用し得るものであるから、引用発明に、引用例2記載の発明を適用して、本願補正発明のように、光ディスクの種類に対応して、前記光ディスクから生成されるトラバース信号および前記光ディスクから生成される再生信号のいずれか一方を選択する選択手段を備え、また、前記トラバース信号が選択された場合と前記再生信号が選択された場合の動作を行うようにすることは、当業者が容易に想到し得る事項である。 4)相違点4について 引用発明においては、光ヘッドの傾きを断続的に変化させて山登り制御を用い、トラッキングエラー信号の最大の振幅を得ている。そして、一般の山登り制御において、断続的に信号を測定する場合には、必ずしも、測定点が正確に最大値に合致することはないことを勘案すれば、最大値から所定の割合の範囲内にあるものは、これを最大値(ほぼ最大値)として用いることは、当業者が、どの程度の理想的な最大値を要求するかに応じて適宜決定する事項である。よって、引用発明の山登り制御においても、最も大きい値から所定の割合にある値の範囲内、すなわち、最も大きい値を含む第2の範囲内のトラバース信号に対応するラジアルチルト角を特定すること、若しくは、最も大きい値を含む第3の範囲の前記再生信号に対応する前記ラジアルチルト角度を特定することは、当業者が適宜なし得る事項である。 そして、上記各相違点により本願補正発明が奏する作用効果についても、各引用発明及び周知例から当業者が当然予測しうるものであるから、上記各相違点は格別なものではなく、本願補正発明は、各引用発明に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.本件補正についての結び 以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成19年2月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年11月27日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 【請求項1】 光ディスクとピックアップとのラジアルチルト角度を第1の範囲において所定の角度に設定する設定手段と、 前記光ディスクが少なくとも1回転以上回転する期間において、前記光ディスクから生成される所定の振幅を有する信号を検出する検出手段と、 検出された前記信号のうち、所定の値以上の振幅値を含む第2の範囲の前記信号に対応する前記ラジアルチルト角度を特定する特定手段と、 特定された前記ラジアルチルト角度に基づいて、前記光ディスクに対する前記ピックアップの姿勢を制御する制御手段と を有することを特徴とする光ディスク駆動装置。 2.引用例 原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2 2.」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明から、 「前記光ディスクの種類に対応して、前記光ディスクから生成されるトラバース信号および前記光ディスクから生成される再生信号のいずれか一方を選択する選択手段と を有し、 前記検出手段は、前記トラバース信号が選択された場合、前記第1の範囲の前記ラジアルチルト角度のそれぞれに対する、前記トラバース信号を検出し、前記再生信号が選択された場合、前記第1の範囲の前記ラジアルチルト角度のそれぞれに対する、前記再生信号を検出し、 前記特定手段は、前記トラバース信号が選択された場合、検出された前記トラバース信号の内の、最も大きい値を含む前記第2の範囲の前記トラバース信号に対応する前記ラジアルチルト角度を特定し、前記再生信号が選択された場合、検出された前記再生信号の内の、最も大きい値を含む第3の範囲の前記再生信号に対応する前記ラジアルチルト角度を特定する」との限定を削除したものに相当する。 そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、更に他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2 〔理 由〕 4.判断」に示したとおり、各引用例に記載された発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、各引用例に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-11-16 |
結審通知日 | 2009-11-17 |
審決日 | 2009-12-14 |
出願番号 | 特願2003-312887(P2003-312887) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山澤 宏 |
特許庁審判長 |
酒井 伸芳 |
特許庁審判官 |
小松 正 山田 洋一 |
発明の名称 | 光ディスク駆動装置および方法、記録媒体、並びにプログラム |
代理人 | 稲本 義雄 |