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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C08L |
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管理番号 | 1211056 |
審判番号 | 不服2007-11443 |
総通号数 | 123 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-03-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-04-19 |
確定日 | 2010-02-04 |
事件の表示 | 平成10年特許願第 77791号「スタッドレスタイヤ用ゴム組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月12日出願公開、特開平11-279332〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年3月25日の出願であって、平成18年11月2日付けで拒絶理由が通知され、平成19年1月4日付けで意見書が提出されたが、同年3月12日付けで拒絶査定がなされ、同年4月19日に拒絶査定不服の審判が請求され、同年5月18日付けで審判請求書の手続補正書(方式)が提出されたものである。 2.本願発明について 本願の請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明3」という。)は、本件出願の願書に最初に添付した明細書(以下、「本願明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりの以下のものであると認められる。 「【請求項1】ジエン系ゴム100重量部に対し、硬質ゴム状弾性体の糸屑状凝集塊を1?20重量部配合してなるスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。 【請求項2】前記硬質ゴム状弾性体が室温のJIS A硬度で70以上であり、その糸屑状凝集塊の嵩比重が0.3?0.8である請求項1に記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。 【請求項3】前記ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が-55℃以下である請求項1または2に記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。」 3.原査定の拒絶の理由の概要 原査定において拒絶の理由とされた、平成18年11月2日付の拒絶理由通知書に記載した理由1の概要は、以下のとおりである。 「1.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 ・請求項1?3 備考 本願請求項1等に記載の『糸屑状凝集塊』とは、如何なる形状・形態を表現するものか把握することができない。」 そして、拒絶査定の備考には、以下のとおり記載されている。 「(I)理由1について 出願人は、平成19年1月4日付け意見書にて、『本願請求項1及び2に記載の『糸屑状凝集塊』については、本願明細書の段落[0007]中に、『硬質ゴム状弾性体を旋盤などで連続的に切削することにより発生する糸屑状の凝集塊』と記載され、また同段落[0010]中に、『硬質ゴム状弾性体を旋盤などで連続的に切削することにより得られる糸屑状の切削片がカールして凝集塊状になったものであって、その嵩比重が(JIS K 6220により測定)0.3?0.8にあるもの』と明確に定義されています。そして、これを図示すれば、以下の図1に示したような形状・形態となる凝集塊であり・・・【図1】 』と主張する。 しかしながら、当該『糸屑状凝集塊』は、その文言から塊状であると解されるものであり、本願発明の詳細な説明【0010】中にも『前記の凝集塊の嵩比重が0.3未満のものでは、・・・糸屑状凝集塊がほぐされ適度な大きさの凝集塊が形成されない・・・』と記載されているので、上記出願人が提示する図1のような塊状でないものを請求項1、2に記載の『糸屑状凝集塊』と解すことはできず、また、解するものとすると、当該『糸屑状凝集塊』が如何なる形状・形態のものまでその範疇に含むものか把握できない。」 4.当審の判断 本願発明1は、上記2.のとおり、「硬質ゴム状弾性体の糸屑状凝集塊を1?20重量部配合してなる」ことを発明を特定するために必要な事項として備えるものである。 ところで、「糸屑状凝集塊」は、その文言上、糸屑状物が凝集してできる塊と、凝集塊そのものが糸屑状である塊と、二とおりに解することができるが、「糸屑」が「糸のくず。」〔株式会社三省堂 大辞林第二版より引用〕の意味を有し、特定の形状を表す用語であるとはいえないことから、いずれの場合においても、「糸屑状凝集塊」が、どのような形状・形態を有する凝集塊を包含するのかが明らかであるとはいえない。 そこで、「糸屑状凝集塊」に関して、本願明細書を参酌すると、「硬質ゴム状弾性体を旋盤などで連続的に切削することにより発生する糸屑状の凝集塊」(段落【0007】)及び「室温でのJIS A硬度が70以上の硬質ゴム状弾性体、例えば、ウレタンゴムやアクリルニトリル-ブタジエンゴム(NBR)等の硬質ゴム状弾性体を旋盤などで連続的に切削することにより得られる糸屑状の切削片がカールして凝集塊状になったもの」(段落【0010】)と記載されている。 しかしながら、本願明細書【0010】に記載されている「カール」が、「巻いていること。丸まること。」〔岩波書店 広辞苑第六版より引用〕の意味を有することから、切削片が巻いた形状を有しているものと解することができるが、切削片が巻いた形状自体も多種多様に存在していることから、上記「カール」の記載により、糸屑状の切削片の形状・形態が明らかになるとはいえない。 さらに、一般的にプラスチック、金属等の部材を旋盤などにより切削するに際し、切削される材料の種類、切り込み深さ、切削幅、切削速度等の切削条件により、切り屑の形状や大きさが異なることは明らかであるところ、本願明細書には、当該切削条件について何ら記載がなく、また、上記部材を旋盤などにより切削するに際し、得られる切削片が自然と凝集塊を形成するとは考えられないところ、本願明細書には、糸屑状の切削片がどのようにして凝集塊を形成しているのかについて何ら記載がない。 よって、本願明細書の記載からは「糸屑状凝集塊」がどのような形状・形態を有する凝集塊を包含するのかが、明らかであるとはいえない。 なお、本願明細書には、糸屑状凝集塊として実施例で用いられているウレタン糸屑状凝集塊に関して、「JIS A硬度90のウレタンロールを回転させてバイトの送り量、切り込み深さを調整して細い糸状の切削クズを連続的に作製した。(嵩比重:0.5)」(段落【0013】)と記載されているが、当該記載において、JIS A硬度90のウレタンロールとして具体的に何を用い、具体的にどのような装置を用い、どのような切削条件で切削クズを得ているのか、そして得られた切削クズがどのようにして凝集塊を形成しているのかについての記載がないことから、当該記載により「糸屑状凝集塊」の形状・形態が特定できるものとはいえない。 したがって、かかる「糸屑状凝集塊」との規定を発明を特定する事項として含む請求項1の記載では、本願発明1に係るスタッドレスタイヤ用ゴム組成物を特定することができず、発明の範囲が明確でない。 5.請求人の主張について 請求人は、審判請求書において、概略、以下のとおり主張している。 「本願請求項1及び2に記載の『糸屑状凝集塊』については、本願当初明細書の段落[0007]中に、『硬質ゴム状弾性体を旋盤などで連続的に切削することにより発生する糸屑状の凝集塊』と記載され、また同段落[0010]中に、『硬質ゴム状弾性体を旋盤などで連続的に切削することにより得られる糸屑状の切削片がカールして凝集塊状になったものであって、その嵩比重が(JIS K 6220により測定)0.3?0.8にあるもの』と明確に定義されています。そして、これを図示すれば、以下の図1に示したような形状・形態となる凝集塊であり、かかる形態的な構造の特徴によって、当該『硬質ゴム状弾性体の糸屑状凝集塊』は、例えば、同材質からなる『粉体物』や『片状物』に比して、より柔軟且つ弾性的に作用します。 ・・・(略)・・・ なお、先の平成19年1月4日に提出した拒絶理由に対する意見書に添付した図1は、前記『糸屑状凝集塊』を形成する糸屑状物の1本を抜き出して示したもので、その全体を示す図ではなかったので、今回改めて当該糸屑状凝集塊の全体を示す図を提出致しました。 【図1】 」 しかしながら、本願明細書【0007】及び【0010】の記載については、上記4.で検討したように、「糸屑状凝集塊」の形状・形態を明確にするものではなく、本願明細書の記載から「糸屑状凝集塊」の形状・形態が、審判請求書の請求の理由の図1に示した凝集塊の形状・形態であることが明らかであるとは認めることができない。さらに、当該図1には、「その平均径は約1mmである。」と特記されているが、本願明細書には、糸屑状凝集塊の平均径については何ら記載がない。 よって、本願明細書等を参酌しても、出願人の主張を裏付ける根拠がないことから、当該主張は採用し得ない。 6.まとめ 上記のとおりであるから、本願特許請求の範囲の請求項1の記載では、特許を受けようとする発明が明確でない。また、請求項1を直接または間接的に引用する請求項2および3の記載においても、これと同様の理由で、特許を受けようとする発明が明確でない。 したがって、本願明細書の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確でないから、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしておらず、上記1.の拒絶理由は、依然として妥当なものである。 7.むすび 以上のとおりであるから、本願は、原査定の拒絶の理由により拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-11-27 |
結審通知日 | 2009-12-01 |
審決日 | 2009-12-15 |
出願番号 | 特願平10-77791 |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(C08L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮本 純 |
特許庁審判長 |
松浦 新司 |
特許庁審判官 |
小野寺 務 ▲吉▼澤 英一 |
発明の名称 | スタッドレスタイヤ用ゴム組成物 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 竹内 浩二 |
代理人 | 西山 雅也 |