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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1211061
審判番号 不服2007-17386  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-21 
確定日 2010-02-04 
事件の表示 特願2000-242791「パチンコ遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月19日出願公開、特開2002- 52172〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年8月10日の出願であって、平成19年5月14日付けで拒絶査定がされ、これに対し平成19年6月21日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、当審において、平成21年8月24日付で拒絶の理由が通知され、これに対し平成21年10月26日付けで手続補正がされた。

2.本願発明
本願の請求項1に記載された発明は、平成21年10月26日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「3列の図柄群を変動させて各列毎に図柄を表示する図柄表示手段と、遊技盤に発射された遊技球が始動入賞口に入賞するか又は始動保留球数の記憶値に基づく各図柄群の変動制御を指示する信号を送信する主制御部と、前記主制御部が送信した信号に基づき前記図柄表示手段を制御する図柄制御部を備え、前記図柄制御部は、各列の図柄群の変動制御を指示する信号の入力により3列の図柄群の変動を開始させるとともに、各列1つずつの図柄からなる3つの図柄による図柄組み合わせを表示させるパチンコ遊技機において、
前記図柄は、大当たり遊技終了後に遊技者にとって有利となる高確率遊技状態又は時間短縮遊技状態を付与する特定図柄と前記遊技状態を付与しない非特定図柄とからなり、前記図柄表示手段は、前記図柄群毎に3つの図柄の表示領域を前記図柄の変動方向に沿って配置した9つの表示領域から構成されており、最初に変動が停止する図柄群と次に変動が停止する図柄群は、前記図柄表示手段において前記図柄を変動する際の図柄配列が逆配列に定められており、
前記図柄制御部は、前記主制御部の変動制御に係る指示により、前記各図柄群の変動態様として通常変動パターンが指示されている場合、前記各図柄群を始動させた後に各図柄群の変動を予め定めた順番にしたがって停止させ、前記変動を停止させるに際しては図柄群について3つの表示領域のうちの中央に配置された表示領域に1つの図柄を表示させる一方で他の2つの表示領域はリーチ及び大当たりの図柄パターンを形成しないブランクとするか、又は図柄群について前記中央に配置された表示領域を前記変動方向に挟んで配置される2つの表示領域に各1つの図柄を表示させる一方で他の1つの表示領域は前記ブランクとするよう前記図柄表示手段を制御し、前記通常変動パターンにおいては最初に変動が停止する図柄群と次に変動が停止する図柄群となる左右2列の中央に配置された表示領域に同一図柄を表示させることによりリーチの図柄パターンを1つ形成し、最後に変動が停止する図柄群となる中列の中央に配置された表示領域に左右2列と同一図柄を表示させることにより大当たりの図柄パターンを形成するか、又は前記左右2列の中央に配置された表示領域を挟んで配置される2つの表示領域に同一図柄を表示させることによりリーチの図柄パターンを2つ形成し、前記中列の中央に配置された表示領域に前記リーチの図柄パターンを形成する左右2列と同一図柄を表示させることにより大当たりの図柄パターンを形成し、
前記各図柄群の変動態様として前記通常変動パターンとは異なる特別変動パターンが指示されている場合には、前記各図柄群を始動させた後、最初に変動が停止する図柄群の変動を停止させる直前に該図柄群に対応する表示領域において、前記3つの表示領域のうちの中央に配置された表示領域に図柄を表示させるときには前記中央に配置された表示領域を前記変動方向に挟んで配置され、かつ前記通常変動パターンにおいて前記ブランクとされる2つの表示領域にも各1つの図柄を表示させて図柄の表示数を変更し、前記中央に配置された表示領域を前記変動方向に挟んで配置される2つの表示領域に図柄を表示させるときには前記通常変動パターンにおいて前記ブランクとされる前記中央に配置された1つの表示領域にも1つの図柄を表示させて図柄の表示数を変更し、次に変動が停止する図柄群の変動を停止させる直前に該図柄群に対応する表示領域において、前記3つの表示領域のうちの中央に配置された表示領域に図柄を表示させるときには前記中央に配置された表示領域を前記変動方向に挟んで配置され、かつ前記通常変動パターンにおいて前記ブランクとされる2つの表示領域にも各1つの図柄を表示させて図柄の表示数を変更し、前記中央に配置された表示領域を前記変動方向に挟んで配置される2つの表示領域に図柄を表示させるときには前記通常変動パターンにおいて前記ブランクとされる前記中央に配置された1つの表示領域にも1つの図柄を表示させて図柄の表示数を変更し、前記図柄の表示数を変更させることにより、前記最初に変動が停止する図柄群の図柄と前記次に変動が停止する図柄群の図柄からなる図柄パターンを増加させてリーチの図柄パターンを3つ形成し、最後に変動を停止させる図柄群については前記通常変動パターンと同じ変動態様で変動させて、前記最後に変動が停止する図柄群となる中列の中央に配置された表示領域に前記リーチの図柄パターンを形成する左右2列と同一図柄を表示させることにより大当たりの図柄パターンを形成するよう前記図柄表示手段を制御し、
前記各図柄群には、予め定めた図柄配列にしたがって図柄を変動させるとともに、前記図柄の変動が停止した際には前記ブランクを挟んで連続する図柄を表示させ、前記特別変動パターンが指示されている場合、前記通常変動パターンにおいて前記ブランクとされる表示領域に当該表示領域以外の表示領域に表示させる図柄とは前記図柄配列において連続しない図柄を表示させるパチンコ遊技機。」(以下、「本願発明」という。)

3.引用文献

当審の拒絶の理由で引用された特開平10-118269号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

・記載事項1
「【請求項1】 複数種類の図柄からなる少なくとも1つの図柄列を表示するための図柄表示器と、
遊技者の操作に応じて変化する遊技状況を検出する遊技状況検出手段と、
前記遊技状況検出手段による遊技状況が第1の条件を満たすと、前記図柄表示器を制御して図柄列の図柄を変動表示させる表示制御手段と、
前記表示制御手段による図柄列が予め定められた特別図柄で停止されることに基づいて、遊技者に有利な特別遊技状態を発生させる特別遊技状態発生手段とを具備した遊技機において、
前記特別遊技状態発生手段による特別遊技状態の発生前に前記遊技状況検出手段による遊技状況が第2の条件を満たすと、前記表示制御手段による図柄列での少なくとも一部の図柄を別の図柄に変更するための図柄変更手段を設けたことを特徴とする遊技機。」(【特許請求の範囲】)
・記載事項2
「遊技盤2の略中央部分には、始動入賞領域として作動ゲート23が設けられている。遊技盤2において、作動ゲート23の上方には普通図柄表示装置24が組込まれている。同装置24は、複数種類の画像情報を表示するための図柄表示器25を備えている。これらの画像情報の中には、複数の図柄列、より詳しくは、図柄表示器25の画面46の左側部分に表示される左図柄列26と、右側部分に表示される右図柄列28と、左右両図柄列26,28の間に表示される中図柄列27とに関する画像情報が含まれている。」(段落【0022】)
・記載事項3
「左・中・右の各図柄列26,27,28は、図2(a),(b),(c)に示すように、それぞれ10個の当り図柄29よりなる当り図柄群と、10個の外れ図柄30よりなる外れ図柄群とによって構成されている。各図柄列26乃至28における当り図柄29及び外れ図柄30は交互に配置されている。各当り図柄29は後述する特別図柄の候補となるものであり、風船の絵と、その表面に付された「0」乃至「9」の数字とから構成されている。また、外れ図柄30はいずれも風車の絵によって構成されている。そして、図柄表示器25には、各図柄列26,27,28の一部の図柄(3つ程度の図柄)が表示される。」(段落【0023】)
・記載事項4
「遊技球20が作動ゲート23を通過すると、図柄表示器25に表示される左図柄列26の図柄は、その通過後から図2(a)に示す順で変化(変動)させられる。この図柄の変動は作動ゲート通過からT1秒経過後に停止させられる。また、遊技球20が作動ゲート23を通過すると、図柄表示器25に表示される右図柄列28の図柄は、その通過後から図2(c)に示す順で変動させられる。この図柄の変動は、作動ゲート通過からT2秒(>T1)経過後に停止させられる。さらに、遊技球20が作動ゲート23を通過すると、図柄表示器25に表示される中図柄列27の図柄は、その通過後から図2(b)に示す順で変動させられる。この図柄の変動は、作動ゲート通過からT3秒(>T2)経過後に停止させられる。このように3つの図柄列26乃至28は、左図柄列26、右図柄列28、中図柄列27の順に変動を停止させられる。」(段落【0024】)
・記載事項5
「全ての図柄列26,27,28の変動が停止させられたとき、図柄表示器25に表示されている図柄の組合わせが、予め定められた大当り図柄の組合わせ(特定表示結果、以下単に「大当り図柄の組合わせ」という)となる場合がある。ここでの大当り図柄の組合わせとは、当りラインL1,L2,L3,L4,L5上において、各図柄列26,27,28の当り図柄29が同じ図柄で並んでいるときの組合わせである。大当り図柄の組合わせには、図3において※※※で示すように、同じ当り図柄29が図柄表示器25の上段に並ぶ場合(図3(a))、中段に並ぶ場合(図3(b))、下段に並ぶ場合(図3(c))、右下がりに並ぶ場合(図3(d))、及び左下がりに並ぶ場合(図3(e))の5種類がある。なお、大当り図柄の組合わせを構成する図柄は特別図柄に相当する。」(段落【0025】)
・記載事項6
「なお、前述した3種類の図柄列26乃至28において、最後に変動を停止する中図柄列27は、遊技者に有利な大当り遊技状態を確定するための特別遊技確定図柄列に相当する。また、中図柄列27の前に変動を停止する右図柄列28は、大当り遊技状態に先立ち発生するリーチ遊技状態を確定するためのリーチ遊技確定図柄列に相当する。リーチ遊技状態では、中図柄列27を除く左右両図柄列26,28の当り図柄29,29が前記当りラインL1乃至L5上において同じ図柄で停止する。」(段落【0027】)
・記載事項7
「前記スイッチ31乃至34の検出結果に基づき図柄表示器25、特定入賞口用ソレノイド17、停留装置19及び大入賞口用ソレノイド22を駆動制御するために、パチンコ機1には制御装置35が設けられている。図4に示すように、制御装置35は中央処理装置(CPU)36、読出し専用メモリ(ROM)37、ランダムアクセスメモリ(RAM)38、入力ポート39及び出力ポート40を備えており、これらは互いにバス41によって接続されている。ROM37は制御プログラム、画像情報データ、初期データ等を予め記憶している。CPU36は前記制御プログラム等にしたがって各種演算処理を実行する。」(段落【0029】)
・記載事項8
「図5乃至図7のフローチャートはCPU36によって実行されるメインルーチンを示し、パチンコ機1への電源投入後、繰返し実行される。このルーチンの各処理はカウンタC、フラグF及び乱数カウンタに基づいて実行される。」(段落【0031】)
・記載事項9
「次に、CPU36はステップ110において、図柄変動が開始されてからT1秒が経過したか否かを判定する。この判定条件が満たされていないとステップ110の処理を繰返し、満たされているとステップ115において、左図柄列26での図柄変動を停止させるための信号を図柄表示器25に出力する。この信号に応じて、例えば図8に示すように、図柄表示器25の左側部上段には「8」の付された当り図柄29が表示され、中段には外れ図柄30が表示され、下段には「7」の付された当り図柄29が表示される。なお、このときには中図柄列27及び右図柄列28での図柄は変動し続ける。」(段落【0034】)
・記載事項10
「CPU36は図5のステップ120において、図柄変動が開始されてからT2秒(>T1秒)が経過したか否かを判定する。この判定条件が満たされていないとステップ120の処理を繰返し、満たされているとステップ125において、右図柄列28での図柄変動を停止させるための信号を図柄表示器25に出力する。この信号に応じて、例えば図8に示すように、図柄表示器25の右側部上段には「6」の付された当り図柄29が表示され、中段には外れ図柄30が表示され、下段には「7」の付された当り図柄29が表示される。この下段に表示された当り図柄29は、左図柄列26の下段に表示された当り図柄29と同じである。なお、このときには中図柄列27での図柄は変動し続ける。」(段落【0035】)
・記載事項11
「具体的には、前記ステップ101で獲得した乱数が、予め定められた図柄変更乱数であるか否かを判定する。図柄変更乱数は、「0」乃至「300」のうちの1つ以上の数字である。ステップ131の判定条件が満たされていると、ステップ135において、中図柄列27中の当り図柄群のうち、リーチ遊技状態と同じ図柄の前後の当り図柄29,29を、その図柄と同じ当り図柄29,29に変更するための信号を図柄表示器25に出力し、ステップ140へ移行する。」(段落【0036】)
・記載事項12
「例えば、図8では、左図柄列26における下段の図柄と右図柄列28における下段の図柄とが、同じ当り図柄29(「7」の付された当り図柄)であることから、前記ステップ130ではリーチ遊技状態であると判定される。リーチ遊技状態では、中図柄列27がリーチ遊技状態での図柄と同じ図柄で停止さえすれば、大当り図柄の組合わせとなることから、この最後の図柄列がリーチ遊技状態での図柄と同じ図柄で停止することが遊技者によって期待される。」(段落【0037】)
・記載事項13
「(第二実施形態)次に、第1乃至第3の発明を具体化した第二実施形態を図10及び図11にしたがって説明する。第二実施形態は、CPU36によるメインルーチンの内容の一部(ステップ135)が第一実施形態と異なっている。その相違点について以下に説明する。なお、メインルーチン以外の、パチンコ機1や制御装置35の構成は第一実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。」(段落【0056】)
・記載事項14
「CPU36は、図10におけるステップ130,131の判定条件がともに満たされているとステップ135Aへ移行する。ステップ135Aにおいて、中図柄列27中の全ての外れ図柄30を、リーチ遊技状態と同じ図柄に変更するための信号を図柄表示器25に出力する。例えば、前述した図8に示すように、左図柄列26における下段の図柄と右図柄列28における下段の図柄とが、いずれも「7」の付された当り図柄29であるリーチ遊技状態の場合には、図11において一点鎖線で囲まれた全ての外れ図柄30が「7」の付された当り図柄29に変更される。」(段落【0057】)
・記載事項15
「(第八実施形態)次に、第1及び第5乃至第7の発明を具体化した第八実施形態を図22にしたがって説明する。第八実施形態は第二実施形態と同様、CPU36によるメインルーチンの内容の一部が上記第一実施形態と異なっている。それ以外の箇所は第一実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。」(段落【0087】)
・記載事項16
「遊技者によって遊技が開始されると、CPU36はステップ100において、遊技状況が第1の条件を満たしているかどうかを判定する。詳しくは、遊技球20が作動ゲート23を通過したか否かを判定し、この判定条件が満たされていると、ステップ101においてそのときの乱数カウンタのカウント値を獲得(記憶)する。ステップ105において、全図柄列26乃至28での図柄変動を開始させる。ステップ110において、図柄変動が開始されてからT1秒が経過したか否かを判定し、この判定条件が満たされているとステップ115において、左図柄列26での図柄変動を停止させる。ここまでは、第一実施形態と同じである。(段落【0088】)
・記載事項17
「次に、CPU36はステップ116,117において第2の条件が満たされているか否かを判定する。具体的には、ステップ116において、変動停止後に表示されている図柄が当り図柄29であるか否かを判定する。ステップ117において、前記ステップ101で獲得した乱数が予め定められた図柄変更乱数であるか否かを判定する。ステップ116,117の判定条件がともに満たされていると、ステップ118において、右図柄列28を変更するための信号を図柄表示器25に出力する。この変更の態様としては、例えば以下に示す(a)乃至(f)が挙げられる。・・・(b)第二実施形態と同様に、少なくとも一部の外れ図柄30を、左図柄列26の停止図柄と同じ図柄に変更する。」(段落【0089】)
・記載事項18
「CPU36はステップ118の処理を実行すると、ステップ120へ移行する。」(段落【0090】)
・記載事項19
「ステップ120では、CPU36は図柄変動が開始されてからT2秒(>T1秒)が経過したか否かを判定し、この判定条件が満たされているとステップ125において、右図柄列28での図柄変動を停止させる。」(段落【0091】)
・記載事項20
「したがって、第八実施形態は前記第一実施形態と同様の作用及び効果を奏するほか、次に示す特徴を有する。リーチ遊技状態を構成する左図柄列26及び右図柄列28のうち、左図柄列26の図柄変動がリーチ遊技状態成立前に停止させられると、図柄表示器25において、その次に図柄変動が停止させられる予定の右図柄列28の表示箇所には、通常時の図柄列とは異なる図柄列が変動表示される。したがって、図柄の変更を気付いた遊技者に、通常時とは異なる図柄が停止する可能性があること、すなわちリーチ遊技状態になり、ゆくゆくは大当り遊技状態が発生するかもしれないという期待を抱かせることができる。」(段落【0093】)
・記載事項21
「(14)前記各実施形態では、第三種の遊技機において3回権利が発生するタイプのパチンコ機について説明したが、本発明はそれ以外のタイプのパチンコ機にも具体化できる。例えば、第三種で権利が1回、2回、4回以上発生するタイプや、第一種、第二種のパチンコ機にも具体化できる。」(段落【0109】)
・記載事項22
図2には、各図柄列において当り図柄29と外れ図柄30が交互に配列されると共に、当り図柄の番号(0?9)が左図柄列26と右図柄列28では逆に配列されることが、図示されている。

以上を含む全記載及び図示に基づき、「第八実施形態」(上記記載事項15参照)及び「第一種のパチンコ機」(上記記載事項21参照)として整理すると、引用文献には次の発明が記載されていると認められる。
「左・中・右の各図柄列26,27,28を変動表示する図柄表示器25と、遊技球20が作動ゲート23を通過すると図柄表示器25を制御して全図柄列26,27,28を変動表示させると共に、特定入賞口用ソレノイド17、停留装置19及び大入賞口用ソレノイド22を駆動制御するための制御装置35を備え、図柄表示器25には各図柄列26,27,28の一部の図柄(3つ程度の図柄)が表示される第一種のパチンコ遊技機において、
左・中・右の各図柄列26,27,28は、それぞれ10個の当り図柄29よりなる当り図柄群と、10個の外れ図柄30よりなる外れ図柄群とによって構成されると共に、当り図柄29及び外れ図柄30は交互に配置されており、各当り図柄29は大当り図柄の組合わせを構成する特別図柄の候補となるものであり、
図柄表示器25の左側部、右側部、中央部のそれぞれの上段、中段、下段に図柄が表示され、最初に図柄変動が停止する左図柄列26と次に図柄変動が停止する右図柄列28は、図柄表示器25において図柄を変動する際の当り図柄29の順が逆に配列されており、
全ての図柄列26,27,28の変動が停止させられたとき、図柄表示器25に表示されている図柄の組合わせが、当り図柄29が同じ図柄で並んでいるときに大当り図柄の組合わせとなり、大当り図柄の組合わせには、同じ当り図柄29が図柄表示器25の上段に並ぶ場合(L1)、中段に並ぶ場合(L2)、下段に並ぶ場合(L3)、右下がりに並ぶ場合(L4)、及び左下がりに並ぶ場合(L5)の5種類があり、
左図柄列26での図柄変動の停止後、第2の条件が満たされている場合に、右図柄列28の少なくとも一部の外れ図柄30を左図柄列26の停止図柄と同じ図柄に変更した後、右図柄28の変動を停止させることにより、リーチ遊技状態になり、ゆくゆくは大当り遊技状態が発生するかもしれないという期待を抱かせる第一種のパチンコ遊技機」(以下、「引用発明」という。)

4.対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「左・中・右の」は本願発明の「3列の」に相当し,以下同様に、
「図柄列26,27,28」は「図柄群」に、
「変動表示する」は「各列毎に図柄を表示する」に、
「図柄表示器25」は「図柄表示手段」に、
「制御装置35」は「図柄制御部」に、
「全図柄列26,27,28を変動表示させる」は「3列の図柄群の変動を開始させるとともに、各列1つずつの図柄からなる3つの図柄による図柄の組み合わせを表示させる」に、
「当り図柄」は「図柄」に、
「外れ図柄」は「ブランク」に、それぞれ相当する。

そして、引用発明について、以下のことがいえる。

(1)図柄は、「左側部、右側部、中央部」に表示される図柄列(左、右、中)毎に「上段、中段、下段」の場所において図柄が表示されるということであるから、図柄表記器25は図柄列毎に3つの図柄の表示領域を図柄の変動方向に沿って配置した9つの表示領域から構成されているものである。
また、左図柄列26と右図柄列28は、それぞれ、本願発明の「最初に変動が停止する図柄群」と「次に変動が停止する図柄群」に相当するものである。
そうすると、引用発明は、本願発明の「前記図柄表示手段は、前記図柄群毎に3つの図柄の表示領域を前記図柄の変動方向に沿って配置した9つの表示領域から構成されており、最初に変動が停止する図柄群と次に変動が停止する図柄群は、前記図柄表示手段において前記図柄を変動する際の図柄配列が逆配列に定められており、」に相当する構成を実質的に具備するものである。

(2)「図柄表記器25は図柄列毎に3つの図柄の表示領域を図柄の変動方向に沿って配置した9つの表示領域から構成されていること」、「当り図柄29及び外れ図柄30は交互に配置されていること」及び「左図柄列26と右図柄列28が図柄の順が逆に配列されていること」を考慮するとともに、図柄の変更が行われない場合(第2の条件が満たされない場合)について以下に検討する。なお、図柄変更が行われずに変動が行われることは、パチンコ遊技機において通常のことであるから、「通常変動パターンの場合」ということができる。
各図柄列26,27,28の変動を開始させた後、最初に停止する左図柄列26において、当り図柄29は図柄表示器25の中段に停止する場合と上段及び下段に停止する場合の2通りの態様がある。
まず、当り図柄29が図柄表示器25の中段に停止する場合には、左図柄列26において当り図柄29の変動方向の前後には外れ図柄30が配置されているから、当り図柄29を挟んで上段及び下段には外れ図柄が停止することになる。そして、引用文献の図3(b)に図示されているように、その際のリーチのパターンは既に停止している左図柄列26の当り図柄29と同じ図柄が次に停止する右図柄列28において中段に停止することであり、大当りの図柄パターンは既に停止している左右図柄列26、28の当り図柄29と同じ図柄が最後に停止する中図柄列27において中段に停止することである。
一方、当り図柄29が図柄表示器25の上段及び下段に停止する場合には、2つの当り図柄29に挟まれた中段には外れ図柄が停止することになる。引用文献の図3(d)、(e)に図示されているように、その際のリーチのパターンは既に停止している左図柄列26の上段及び下段の当り図柄29と同じ図柄が次に停止する右図柄列28において下段及び上段に停止する(2つのリーチパターンが形成される)ことであり、大当りの図柄パターンは既に停止している左右図柄列26、28の2つの当り図柄29のうちの1つと同じ図柄が最後に停止する中図柄列27において中段に停止することである。
そして、上記の変動態様は、制御装置35が図柄表示器25を制御して表示させていることは自明である。
そうすると、引用発明は、本願発明の「前記図柄制御部は、前記各図柄群の変動態様として通常変動パターンの場合、前記各図柄群を始動させた後に各図柄群の変動を予め定めた順番にしたがって停止させ、前記変動を停止させるに際しては図柄群について3つの表示領域のうちの中央に配置された表示領域に1つの図柄を表示させる一方で他の2つの表示領域はリーチ及び大当たりの図柄パターンを形成しないブランクとするか、又は図柄群について前記中央に配置された表示領域を前記変動方向に挟んで配置される2つの表示領域に各1つの図柄を表示させる一方で他の1つの表示領域は前記ブランクとするよう前記図柄表示手段を制御し、前記通常変動パターンにおいては最初に変動が停止する図柄群と次に変動が停止する図柄群となる左右2列の中央に配置された表示領域に同一図柄を表示させることによりリーチの図柄パターンを1つ形成し、最後に変動が停止する図柄群となる中列の中央に配置された表示領域に左右2列と同一図柄を表示させることにより大当たりの図柄パターンを形成するか、又は前記左右2列の中央に配置された表示領域を挟んで配置される2つの表示領域に同一図柄を表示させることによりリーチの図柄パターンを2つ形成し、前記中列の中央に配置された表示領域に前記リーチの図柄パターンを形成する左右2列と同一図柄を表示させることにより大当たりの図柄パターンを形成し、」及び「前記各図柄群には、予め定めた図柄配列にしたがって図柄を変動させるとともに、前記図柄の変動が停止した際には前記ブランクを挟んで連続する図柄を表示させ、」に相当する構成を実質的に具備している。

(3)「第2の条件が満たされている場合に、右図柄列28の少なくとも一部の外れ図柄30を左図柄列26の停止図柄と同じ図柄に変更した後、右図柄28の変動を停止させる」ということは、上記(2)で示したような「通常変動パターン」と異なる特別変動パターンということができる。また、最初に変動が停止する左図柄列26、中図柄列27の変動態様、及び外れ図柄を当り図柄に変更する点を除く右図柄列28の変動態様は、第2の条件が満たされない場合(「通常変動パターン」)と同じ態様であるから、図柄の変更が「直前に」か否かはさておき、引用発明と本願発明とは「各図柄群を始動させた後、最初に変動が停止する図柄群の変動を停止させ、次に変動が停止する図柄列の変動を停止させる前に通常変動パターンにおいてブランクとされる図柄列の位置に図柄を配置させて変動を停止させ、最後に変動が停止する図柄群の変動を停止させる」という点においては共通している。

そうすると、本願発明と引用発明は、
「3列の図柄群を変動させて各列毎に図柄を表示する図柄表示手段と、前記図柄表示手段を制御する図柄制御部を備え、前記図柄制御部は、3列の図柄群の変動を開始させるとともに、各列1つずつの図柄からなる3つの図柄による図柄の組み合わせを表示させるパチンコ遊技機において、
前記図柄表示手段は、前記図柄群毎に3つの図柄の表示領域を前記図柄の変動方向に沿って配置した9つの表示領域から構成されており、最初に変動が停止する図柄群と次に変動が停止する図柄群は、前記図柄表示手段において前記図柄を変動する際の図柄配列が逆配列に定められており、
前記図柄制御部は、前記各図柄群の変動態様として通常変動パターンの場合、前記各図柄群を始動させた後に各図柄群の変動を予め定めた順番にしたがって停止させ、前記変動を停止させるに際しては図柄群について3つの表示領域のうちの中央に配置された表示領域に1つの図柄を表示させる一方で他の2つの表示領域はリーチ及び大当たりの図柄パターンを形成しないブランクとするか、又は図柄群について前記中央に配置された表示領域を前記変動方向に挟んで配置される2つの表示領域に各1つの図柄を表示させる一方で他の1つの表示領域は前記ブランクとするよう前記図柄表示手段を制御し、前記通常変動パターンにおいては最初に変動が停止する図柄群と次に変動が停止する図柄群となる左右2列の中央に配置された表示領域に同一図柄を表示させることによりリーチの図柄パターンを1つ形成し、最後に変動が停止する図柄群となる中列の中央に配置された表示領域に左右2列と同一図柄を表示させることにより大当たりの図柄パターンを形成するか、又は前記左右2列の中央に配置された表示領域を挟んで配置される2つの表示領域に同一図柄を表示させることによりリーチの図柄パターンを2つ形成し、前記中列の中央に配置された表示領域に前記リーチの図柄パターンを形成する左右2列と同一図柄を表示させることにより大当たりの図柄パターンを形成し、
前記各図柄群の変動態様として前記通常変動パターンとは異なる特別変動パターンの場合には、前記各図柄群を始動させた後、最初に変動が停止する図柄群の変動を停止させ、次に変動が停止する図柄列の変動を停止させる前に通常変動パターンにおいてブランクとされる図柄列の位置に図柄を配置させて変動を停止させ、最後に変動が停止する図柄群の変動を停止させるよう前記図柄表示手段を制御し、
前記各図柄群には、予め定めた図柄配列にしたがって図柄を変動させるとともに、前記図柄の変動が停止した際には前記ブランクを挟んで連続する図柄を表示させるパチンコ遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明は、「遊技盤に発射された遊技球が始動入賞口に入賞するか又は始動保留球数の記憶値に基づく各図柄群の変動制御を指示する信号を送信する主制御部」を有し、図柄制御部は主制御部が送信した信号に基づき図柄表示手段を制御するのに対し、引用発明は、遊技球20が作動ゲート23を通過すると図柄表示器25を制御して全図柄列26,27,28を変動表示させると共に、特定入賞口用ソレノイド17、停留装置19及び大入賞口用ソレノイド22を駆動制御するための制御装置35を備えた点。
<相違点2>
図柄制御部は、本願発明では、「各列の図柄群の変動制御を指示する信号の入力により3列の図柄群の変動を開始させる」ものであり、また、「主制御部の変動制御に係る指示により」(通常変動パターンと特別変動パターンの変動表示において)図柄表示手段を制御するものであるのに対し、引用発明ではそのような構成となっていない点。
<相違点3>
図柄は、本願発明では、「大当たり遊技終了後に遊技者にとって有利となる高確率遊技状態又は時間短縮遊技状態を付与する特定図柄と前記遊技状態を付与しない非特定図柄とからなる」のに対し、引用発明ではそのようになっているか不明である点。
<相違点4>
特別変動パターンである場合に、各図柄群を始動させた後、本願発明では、「最初に変動が停止する図柄群の変動を停止させる直前に該図柄群に対応する表示領域において、前記3つの表示領域のうちの中央に配置された表示領域に図柄を表示させるときには前記中央に配置された表示領域を前記変動方向に挟んで配置され、かつ前記通常変動パターンにおいて前記ブランクとされる2つの表示領域にも各1つの図柄を表示させて図柄の表示数を変更し、前記中央に配置された表示領域を前記変動方向に挟んで配置される2つの表示領域に図柄を表示させるときには前記通常変動パターンにおいて前記ブランクとされる前記中央に配置された1つの表示領域にも1つの図柄を表示させて図柄の表示数を変更し、次に変動が停止する図柄群の変動を停止させる直前に該図柄群に対応する表示領域において、前記3つの表示領域のうちの中央に配置された表示領域に図柄を表示させるときには前記中央に配置された表示領域を前記変動方向に挟んで配置され、かつ前記通常変動パターンにおいて前記ブランクとされる2つの表示領域にも各1つの図柄を表示させて図柄の表示数を変更し、前記中央に配置された表示領域を前記変動方向に挟んで配置される2つの表示領域に図柄を表示させるときには前記通常変動パターンにおいて前記ブランクとされる前記中央に配置された1つの表示領域にも1つの図柄を表示させて図柄の表示数を変更し、前記図柄の表示数を変更させることにより、前記最初に変動が停止する図柄群の図柄と前記次に変動が停止する図柄群の図柄からなる図柄パターンを増加させてリーチの図柄パターンを3つ形成し、最後に変動を停止させる図柄群については前記通常変動パターンと同じ変動態様で変動させて、前記最後に変動が停止する図柄群となる中列の中央に配置された表示領域に前記リーチの図柄パターンを形成する左右2列と同一図柄を表示させることにより大当たりの図柄パターンを形成するよう前記図柄表示手段を制御」するものであり、特別変動パターンの場合に、「前記通常変動パターンにおいて前記ブランクとされる表示領域に当該表示領域以外の表示領域に表示させる図柄とは前記図柄配列において連続しない図柄を表示させる」のに対し、引用発明ではそのような構成となっていない点。

5.判断
(1)相違点1、2について
相違点1と相違点2は関連しているので、あわせて検討する。
引用発明においては、「特定入賞口用ソレノイド17、停留装置19及び大入賞口用ソレノイド22を駆動制御」していること、制御装置35を構成するCPU36がメインルーチンを実行していること(記載事項7,8参照)から、制御装置35は、パチンコ遊技機のメインの制御を行うと共に図柄表示器25の制御を行っているものである。そうすると、制御に関して、引用発明は1つの制御部(制御装置35)で行っているものであるのに対し、本願発明は主制御部と図柄制御部という少なくとも2つの制御部で行っている点で相違しているということができる。そして、主制御部と図柄制御部に制御を分けて実行することになるため、メインの制御を行う主制御部から図柄制御部に信号を送信したり、「指示」を行う必要が生じるものである。
そうすると、相違点1、2に挙げた構成の相違は、次に検討する点を除き、制御を1つの制御部で行うか、主制御部と図柄制御部という少なくとも2つの制御部で行うかによって生じる相違に他ならない。
ところで、パチンコ遊技機においては、メインの制御を行う主制御部とは別に図柄表示手段を制御する図柄制御部を設け、主制御部から図柄制御部に信号の送信、「指示」を行わせることは、例を挙げるまでもなく周知の技術手段に過ぎないから、制御を主制御部と図柄制御部で行うことは単なる設計事項といわざるを得ない。

次に、「遊技盤に発射された遊技球が始動入賞口に入賞するか又は始動保留球数の記憶値に基づく」について検討する。パチンコ遊技機において、図柄変動開始の契機となるのは、遊技盤に発射された遊技球が始動入賞口に入賞すること、又は始動チェッカー(引用発明では作動ゲート23)を通過することとされていることは常識であるから、いずれを採用するかは単なる設計事項にすぎない。更に、遊技球が入賞又は通過した時に図柄が変動している場合には、それを入賞記憶(始動保留球数の記憶値)として記憶し、図柄変動が終了する毎に古い方の入賞記憶に基づいて図柄変動を行わせることは慣用手段であるから、これを採用することも単なる設計事項に過ぎない。

以上により、引用発明において相違点1、2に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば想到容易である。

(2)相違点3について
引用発明は、第一種のパチンコ遊技機に関するものであるが、遊技状態と図柄との関係は不明である。しかし、第一種のパチンコ遊技機において、特定図柄で大当たりとなった場合には大当たり遊技終了後に遊技者にとって有利となる高確率遊技状態又は時間短縮遊技状態とし、特定図柄以外の非特定図柄で大当たりとなった場合にはそのような遊技状態とはしない機能を具備させることは良く行われていることであり、そのようなパチンコ機は周知である。
そうすると、第一種のパチンコ遊技機である引用発明において、上記機能を採用することは単なる設計事項といわざるを得ない。

(3)相違点4について
(3)-1 図柄表示手段の左列上段と右列下段が同じ図柄、左列中段と右列中段が同じ図柄、左列下段と右列上段が同じ図柄となった場合に、3つの図柄で3つのリーチラインが形成されるという「トリプルリーチ」は、周知例1?5に示されるように従来周知である。また、「トリプルリーチ」が、1つのリーチラインである「シングルリーチ」等に比較して、大当りになるかもしれないとの遊技者の期待感を高めることに有効であることも広く知られたことであり、実際に一部のパチンコ遊技機の変動表示に採用されている(周知例5参照)ものである。そして、当業者にとって、興趣が増すようにパチンコ遊技機を設計することは当然のことであるから、「トリプルリーチ」を変動表示において採用する動機は常に存在しているというべきである。
(周知例1)特開平9-262348号公報
(周知例2)特開平7-328200号公報
(周知例3)特開平7-96071号公報
(周知例4)特開平2-299679号公報
(周知例5)パチンコ攻略マガジン2000 1.9号,株式会社双葉社,平成12年1月9日発行,7頁(「星空系リーチ」を参照)

(3)-2 引用発明において、右図柄列28において外れ図柄30を当り図柄29に変更すること、「トリプルリーチ」を採用する動機は常に存在することを考慮すると、左図柄列26における外れ図柄30を当り図柄29に変更し、図柄表示器25の左図柄列26における上段、中段、下段に当り図柄29を表示させ、右図柄列28の変動停止時に「トリプルリーチ」を形成し得る状態にすることは当業者であれば想到容易である。
より具体的にいうと、最初に停止する左図柄列26において、通常変動パターンであれば当り図柄29は図柄表示器25の中段に停止する場合と上段及び下段に停止する場合の2通りの態様がある。
まず、左図柄列26において当り図柄29が図柄表示器25の中段に停止する場合には、左図柄列26において当り図柄29の変動方向の前後には外れ図柄30が配置されているから、通常変動パターンであれば当り図柄29を挟んで上段及び下段には外れ図柄30が停止するが、当該外れ図柄30を当り図柄29に変更して図柄の表示数を変更し、将来トリプルリーチとなり得るようにし、そして、既に中段に停止している左図柄列26の当り図柄29と同じ図柄が次に停止する右図柄列28において中段に停止するようにし、その上段及び下段に停止する外れ図柄30を左図柄列の下段及び上段の当り図柄29と同じ図柄に変更して図柄の表示数を変更し、引用文献の図3(b)、(d)、(e)に図示されるようなリーチの図柄パターンを3つ形成しトリプルリーチとすることは、上記したように想到容易である。更に、その時の大当りの図柄パターンは既に停止している左右図柄列26、28の当り図柄29と同じ図柄のひとつが最後に停止する中図柄列27において中段に停止することにより形成されることになる。
一方、左図柄列26において当り図柄29が図柄表示器25の上段及び下段に停止する場合には、通常変動パターンであれば2つの当り図柄29に挟まれた中段には外れ図柄30が停止するが、当該外れ図柄30を当り図柄29に変更して図柄の表示数を変更し、将来トリプルリーチとなり得るようにし、そして、既に上段及び下段に停止している左図柄列26の当り図柄29と同じ図柄が次に停止する右図柄列28において下段及び上段に停止するようにし、その中段に停止する外れ図柄30を左図柄列の中段の当り図柄29と同じ図柄に変更して図柄の表示数を変更し、引用文献の図3(b)、(d)、(e)に図示されているようなリーチの図柄パターンを3つ形成しトリプルリーチとすることは、上記したように想到容易である。更に、その時の大当りの図柄パターンは既に停止している左右図柄列26、28の当り図柄29と同じ図柄のひとつが最後に停止する中図柄列27において中段に停止することにより形成されることになる。

(3)-3 本願発明では図柄群の変動を停止させる直前にブランクとされる表示領域に図柄を表示させるものであるのに対し、引用発明では左図柄列26での図柄変動の停止後「その次に図柄変動が停止させられる予定の右図柄列28の表示箇所には、通常時の図柄列とは異なる図柄列が変動表示される。」(上記記載事項20参照)との記載からみて外れ図柄を当り図柄に変更するのは「停止させる直前」ということができない。
この点について検討すると、引用発明は、遊技者に「リーチ遊技状態」や「大当り遊技状態」が発生するかもしれないという期待を抱かせるものであり、その期待をどのタイミングで遊技者に抱かせるかは、当業者が適宜設計できることに過ぎず、引用文献1の実施例では右図柄列28の停止直前でない変動表示中に変更しているが、このタイミングで行うことは必須ではない。とすれば、引用発明において、上記(3)-2で検討した右図柄列28の外れ図柄を当り図柄に変更する時期を右図柄列28の停止直前に行うこととすることは当業者にとって想到容易である。
また、図柄表示手段に3つの当り図柄が常時表示されるとは限らないパチンコ遊技機において、最初に停止する図柄群の停止時に3つの当り図柄を表示してトリプルリーチとなる可能性のある状態とし、「リーチ遊技状態」や「大当り遊技状態」が発生するかもしれないという遊技者の期待感を高めることは、上記周知例3、4に示されるように従来周知の技術手段と認められる。更に、特開平10-244048号公報(周知例6、特に図8参照)にあるように、最初の図柄列の停止時にリーチを報知するような変動を行うことも周知である。とすれば、期待感をどのタイミングで遊技者に抱かせるかは当業者が適宜設計できることに過ぎないことも踏まえると、引用発明において、上記(3)-2で検討した左図柄列26の外れ図柄を当り図柄に変更する時期を左図柄列26の停止直前に行うこととすることは、当業者にとって想到容易といわざるを得ない。

(3)-4 本願発明では、特別変動パターンの場合に、「前記通常変動パターンにおいて前記ブランクとされる表示領域に当該表示領域以外の表示領域に表示させる図柄とは前記図柄配列において連続しない図柄を表示させる」のに対し、引用発明ではそのような構成となっていない点について検討する。
リーチの図柄パターンを3つ形成するためには、変動の停止時に表示される左列の上段と右列の下段、左列の中段と右列の中段、左列の下段と右列の上段に表示される図柄を同じものとすればよく、左列における上段、中段、下段に表示される図柄、右列における下段、中段、上段に表示される図柄が連続するものであるか否かには依存しないものである。これは、上記周知例4(第5図)において連続しない図柄列となっていることからも裏付けられている。なお、上段と下段に連続する図柄が表示され、中段の外れ図柄を当り図柄に変更する場合に「連続しない図柄」を表示させることが最も簡易な表示方法である(逆に「連続する図柄」を表示させるためには上段、下段の図柄を変更する等の構成が必要になる)ことは明らかである。
そうすると、引用発明において、上記(3)-2で検討した外れ図柄を当り図柄に変更する際に、当り図柄として「連続しない図柄」を表示させることは単なる設計事項といわざるを得ない。

(3)-5 以上の通りであるから、引用発明において相違点4に係る本願発明の構成とすることは当業者にとって想到容易である。

(4)そして、本願発明の効果は、引用発明、上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明、上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6. むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-30 
結審通知日 2009-12-01 
審決日 2009-12-14 
出願番号 特願2000-242791(P2000-242791)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西田 光宏一宮 誠山崎 仁之  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 池谷 香次郎
川島 陵司
発明の名称 パチンコ遊技機  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 博宣  

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