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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08B
管理番号 1211078
審判番号 不服2007-30876  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-15 
確定日 2010-02-04 
事件の表示 特願2006-334962「音声伝送システム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月 9日出願公開、特開2007-200287〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は,平成18年12月12日(優先権主張平成17年12月27日)に出願された特許出願であって,平成19年10月9日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成19年11月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであり,その請求項1に係る発明は,出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下,「本願発明」という。)
「少なくとも音声を入力する音声入力手段を具備した1乃至複数の音声入力端末装置と,少なくとも音声を出力する音声出力手段を具備した1乃至複数の音声出力端末装置と,音声入力端末装置並びに音声出力端末装置と信号線を介して接続される主装置とを備え,主装置を介して音声入力端末装置から音声出力端末装置へ音声信号を時分割多重伝送する音声伝送システムであって,
屋内に設置され火災や不審者の侵入などの異常を検知する1乃至複数の検知装置を備え,
該検知装置は,前記異常を検知する検知手段と,超音波を媒体とするワイヤレス信号を送信するワイヤレス信号送信手段と,検知手段で異常が検知されたときに異常検知を知らせるためのワイヤレス信号を前記ワイヤレス信号送信手段に送信させる通知手段とを具備し,
前記音声出力端末装置は,前記ワイヤレス信号を受信するワイヤレス信号受信手段と,ワイヤレス信号受信手段でワイヤレス信号を受信したときに音声出力手段から警報音を出力させる制御手段とを具備することを特徴とする音声伝送システム。」

2.引用発明
原審の拒絶の理由において提示された特開平9-18598号公報(以下,「引用例」という。)には,図面の記載とともに下記の記載がある。

イ.「【請求項1】各住戸に設置したインターホン付住宅情報盤と,共同玄関に設置したロビーインターホンと,管理室に設置したインターホン付警報監視盤とを信号線を介して接続して構成された集合住宅用インターホンシステムにおいて,
上記住宅情報盤のインターホン,ロビーインターホン,警報監視盤のインターホンのそれぞれには,制御信号及び通話信号を時間的に分割し,フレーム構成のタイムスロットに割り当てて,時分割多重信号として送受信するための伝送回路を備えるとともに,
上記警報監視盤には,上記信号線に接続されたコントローラを備えており,
このコントローラは,上記いずれかのインターホンから通話相手を指定した通話要求信号を受けたときには,上記信号線にタイムスロット設定信号を送出して,相互に通話相手となるインターホンが互いに送話,受話するために使用する時分割多重信号のタイムスロットを,同一に対応させることを特徴とする集合住宅用インターホンシステム。
【請求項2】請求項1に記載の集合住宅用インターホンシステムにおいて,
上記警報監視盤のコントローラは,
上記住宅情報盤のインターホン,あるいは,ロビーインターホンから警報監視盤のインターホンを通話相手に指定した通話要求信号を受けたとき,または,警報監視盤のインターホンが通話相手を指定して通話を開始するときには,
上記警報監視盤のインターホンの通話相手となるインターホンに対してのみ,上記信号線を介してタイムスロット設定信号を送出することを特徴とする集合住宅用インターホンシステム。」(2頁1欄2?32行)
ロ.「【0012】
【実施例】以下に,本発明の一実施例について図面を参照しつつ説明する。図1には,本発明に係る集合住宅用インターホンシステムの基本構成の一例をブロック図で示している。以下に示すような集合住宅では一般に,適所にセンサ等を設置して,火災検知や防犯を目的とした異常監視を行っているが,ここでは,本発明の要部であるインターホン機能のみを示す。
【0013】各住戸に設置した住宅情報盤のインターホン1と,共同玄関に設置したロビーインターホン3と,管理室に設置した警報監視盤のインターホン2とは信号線Lを介して接続されている。各住戸に設置した住宅情報盤のインターホン1とロビーインターホン3は,同様の構成になっており,CPU等で構成され,各回路を制御する信号処理回路11と,制御信号及び通話信号を時分割多重信号として送受信するための伝送回路12と,送信する時分割多重信号に対するタイムスロットの割当を行う信号割当回路13と,受信した時分割多重信号からのタイムスロットの選択を行う信号選択回路14と,通話信号(音声信号)をA/D,D/A変換する変復調回路15と,2線4線変換回路16と,マイクとスピーカを有したハンドセット17と,キー入力回路18と,表示回路19等を備えている。なお,ここでは音声の入出力にハンドセット17を用いているが,ロビーインターホン3では一般に,内蔵したマイク,スピーカを備えて,ハンズフリー通話を実現している。
【0014】一方,警報監視盤のインターホン2も同様の構成になっているが,上記信号処理回路11の代わりにコントローラ21を備えている。このコントローラ21は,信号処理回路11の機能を充足するとともに,本発明システム全体を制御して,時分割多重信号による各インターホン1,2,3での通話を実現させる。次に,本発明に係る集合住宅用インターホンシステムの基本動作を説明する。
【0015】住宅情報盤のインターホン1,ロビーインターホン3,警報監視盤のインターホン2のいずれかが,ハンドセット17を取り上げ,キー入力回路18によって通話相手先を指定すると,信号処理回路11(コントローラ21)が通話要求信号を伝送回路12を介して信号線Lに送出する。すると,警報監視盤のコントローラ21は,この通話要求信号を解読して通話相手先のインターホン1,2,3に通話指令信号を送出するとともに,呼出側と被呼側の双方のインターホン1,2,3に対しては,送受している時分割多重信号で使用していないタイムスロットを検索して,使用を許可するタイムスロットを指定したタイムスロット設定信号を送出する。
【0016】このタイムスロット設定信号を受けたインターホン1,2,3では,信号処理回路11(コントローラ21)が,信号割当回路13と信号選択回路14に対して,以後に送受する時分割多重信号のタイムスロットが通話相手と対応するように設定する。つまり,呼出側の信号割当回路13と被呼側の信号選択回路14,呼出側の信号選択回路14と被呼側の信号割当回路13で,同じタイムスロットに対して,時間的に分割した信号を割当,選択するようにする。
【0017】このような設定が行われると,ハンドセット17から音声を入力したときには,その通話信号をディジタル信号に変換し,信号処理回路11(コントローラ21)がその信号を時分割して,信号割当回路13が上記設定に基づいたタイムスロットに割り当てて,時分割多重信号として伝送回路12から送信する。これとは逆に,ハンドセット17から音声を出力するときには,伝送回路12によって受信した時分割多重信号から,信号選択回路14が上記設定に基づいてタイムスロットを選択して,信号処理回路11(コントローラ21)によって復元して音声として出力する。
【0018】なお,警報監視盤のインターホン2が呼出側または被呼側となるとき,詳しくは,住宅情報盤のインターホン1あるいはロビーインターホン3から呼出を受けたとき,または,警報監視盤のインターホン2が他のインターホン1,3を呼出するときには,警報監視盤のコントローラ21は,警報監視盤のインターホン2の通話相手となる他のインターホン1,3にのみ,信号線Lを介してタイムスロット設定信号を送出することもできる。」(3頁3欄31行?4頁5欄6行)
ハ.「【0019】図2は,本発明のインターホンシステムにおいて送受する時分割多重信号の構成の一例を示した図である。この図には,1のフレームが7のタイムスロットで構成されている例を示しており,タイムスロット1が制御信号に,タイムスロット2?7が通話信号に使用されている。この例では,3組のインターホン1,2,3による通話を同時に行うことができ,コントローラ21が3組のインターホン1,2,3のそれぞれに対して,タイムスロット2と5,タイムスロット3と6,タイムスロット4と7を使用するように指定したタイムスロット設定信号を送出して,通話ができるようにしている。例えば,タイムスロット2と5を使用した通話においては,呼出側は時分割した通話信号(送話信号)を各フレームのタイムスロット2に割り当てて,被呼側に送信しており,被呼側は時分割した通話信号(送話信号)を各フレームのタイムスロット5に割り当てて,呼出側に送信している。なお,この図に示したフレーム長,タイムスロットの数(多重数),フレーム内のタイムスロットの位置,1組の通話で使用するタイムスロットの組合せ等は,このような例に限定されることはない,そのため,多くのタイムスロットを使用すれば,同一の信号線Lを使用して複数組のインターホン同士での通話が同時に出来る。」(4頁5欄7?29行)

ニ.「【0020】次に,住戸同士の通話の一例として,住戸(101号)から呼出を行って住戸(201号)との間で相互通話を行う場合の手順を説明する。先ず,住戸(101号)から住戸(201号)を呼び出すには,住戸(101号)のハンドセット17を持ち上げ,キー操作によって相手先を示す「201」を入力する。このようにして,住宅情報盤のインターホン1より通話要求信号が信号線Lに送出されると,警報監視盤2のコントローラ21は,住戸(101号)から住戸(201号)に対して,呼出のあったことを判別する。
【0021】すると,コントローラ21はRAM(不図示)等を参照して,住戸(201号)と他のインターホン1,2,3が通話中でないかどうかを判断し,通話中でなければ,呼出しを受けた住戸(201号)に対して通話指令信号を送出し,表示回路19によって住戸呼出灯(不図示)を点灯させるとともに,呼出音を鳴動させる。
【0022】これとともに,コントローラ21は,未使用のタイムスロットを検索し,タイムスロット設定信号を信号線Lに送出して,相互に通話相手となる双方のインターホン1で使用できる時分割多重信号のタイムスロットを設定する。ここで,未使用のタイムスロットがない場合には,相手先が通話中であるのと同様の処理を行えばよい。
【0023】呼出音に対して,住戸(201号)のインターホン1のハンドセット17を取り上げると,回線が接続されて通話が可能な状態となる。通話が終了して,ハンドセット17が通話前の状態に戻されると,住戸(101号)と住戸(201号)のインターホン1に対する信号線Lの接続が切断される。以上に説明した時分割多重信号には,例えば,時分割時間圧縮多重信号(以下,TCM信号)を使用することができる。」(4頁5欄30行?6欄11行)

ホ.「【0025】
【発明の効果】以上の説明から理解できるように,本発明の請求項1に記載の集合住宅用インターホンシステムによれば,警報監視盤のコントローラが通話する双方のインターホンに対して,送受信する時分割多重信号のタイムスロットうち使用ができるものを,対応させるように変更設定するので,容易に複数組のインターホンによる双方向通話,及び同時通話が行える。このため,1本の配線でこのインターホンシステムを構築できるので,施工が容易となり,コストの低減が図れる。」(4頁6欄25?34行)

したがって,上記イ.乃至ホ.の摘記事項,及びこの分野の技術常識を考慮すれば,引用例には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が開示されている。

(引用発明)
「少なくとも音声を入力するマイクを具備した1のロビーインターホン3と,少なくとも音声を出力するスピーカを具備した1乃至複数の住宅情報盤のインターホン1と,ロビーインターホン3並びに住宅情報盤のインターホン1と信号線Lを介して接続される警報監視盤のインターホン2とを備え,警報監視盤のインターホン2を介してロビーインターホン3から住宅情報盤のインターホン1へ音声信号を時分割多重伝送する集合住宅用インターホンシステムであって,
前記住宅情報盤のインターホン1は,通話指令信号を受信したときにスピーカから呼出音を出力する,
集合住宅用インターホンシステム。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ロビーインターホン3」は音声を送話したり受話したりしている端末であるから,本願発明の「音声入力端末装置」に相当である。
引用発明の「住宅情報盤のインターホン1」は音声を送話したり受話したりしている端末であるから,本願発明の「音声出力端末装置」に相当である。
引用発明の「警報監視盤のインターホン2」はインターホン全体を制御しているから,本願発明の「主装置」に相当である。
引用発明の「集合住宅用インターホンシステム」は音声の伝送を制御しているシステムであるから,本願発明の「音声伝送システム」に相当である。
引用発明の「マイク」は音声入力手段であり,同「スピーカ」は音声出力手段である。 引用発明において,「通話指令信号を受信したときにスピーカから呼出音を出力する」ためには,当然,そのための制御手段が具備されている。
したがって,本願発明と引用発明とは以下の点で一致ないし相違する。

[一致点]
「少なくとも音声を入力する音声入力手段を具備した1乃至複数の音声入力端末装置と,少なくとも音声を出力する音声出力手段を具備した1乃至複数の音声出力端末装置と,音声入力端末装置並びに音声出力端末装置と信号線を介して接続される主装置とを備え,主装置を介して音声入力端末装置から音声出力端末装置へ音声信号を時分割多重伝送する音声伝送システムであって,
前記音声出力端末装置は,音声出力手段から音を出力させる制御手段を具備した音声伝送システム。」

[相違点]
a)音声伝送システムが,本願発明では「屋内に設置され火災や不審者の侵入などの異常を検知する1乃至複数の検知装置」を備え,「該検知装置は,前記異常を検知する検知手段と,超音波を媒体とするワイヤレス信号を送信するワイヤレス信号送信手段と,検知手段で異常が検知されたときに異常検知を知らせるためのワイヤレス信号を前記ワイヤレス信号送信手段に送信させる通知手段と」を具備しているのに対し,引用発明ではそのような構成を具備していない点。
b)音声出力端末装置が,本願発明では「前記ワイヤレス信号を受信するワイヤレス信号受信手段」を具備しているのに対し,引用発明ではそのような構成を具備していない点。
c)音声出力手段から音を出力させる制御手段が,本願発明は「ワイヤレス信号受信手段でワイヤレス信号を受信したときに警報音を出力させる」のに対し,引用発明は「通話指令信号を受信したときに呼出音を出力させる」点。

4.判断
相違点a)について検討する。
例えば,原審の拒絶の理由において提示された特開平4-81998号公報,特開平6-52480号公報,特開2005-176092号公報に示されているように,「屋内に設置され火災や不審者の侵入などの異常を検知する1乃至複数の検知装置を備え,該検知装置は,異常を検知する検知手段と,検知手段で異常が検知されたときに異常検知を知らせるためのワイヤレス信号を送信するワイヤレス信号送信手段とを具備する集合住宅用インターホンシステム」は周知であり,また,例えば,特開平2-90296号公報,特開平2-89498号公報に示されているように,住宅用監視通話システムにおいて,ワイヤレス信号として,電波を媒体とする電波信号,超音波を媒体とする超音波信号,光を媒体とする光信号等の何れかを用いるのは,技術常識といえるから,相違点a)に係る本願発明の構成を引用発明に付加採用する程度のことは,当業者が容易に想到し得ることである。

相違点b)c)について検討する。
例えば,原審の拒絶の理由において提示された特開平4-81998号公報,特開平6-52480号公報)に示されているように,住宅情報盤のインターホンが「ワイヤレス信号を受信するワイヤレス信号受信手段と,ワイヤレス信号受信手段でワイヤレス信号を受信したときに音声出力手段から警報音を出力させる制御手段とを具備する」集合住宅用インターホンシステムは,周知であるから,相違点b)c)に係る本願発明の構成を引用発明においても採用する程度のことは,周知技術の単なる転用の域を出ない。

また,本願発明の構成によってもたらされる効果も,引用発明および周知技術から当業者が予測できる範囲内のものである。

5.むすび
したがって,本願発明は,引用発明および周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-17 
結審通知日 2009-11-24 
審決日 2009-12-11 
出願番号 特願2006-334962(P2006-334962)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 勝広  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 萩原 義則
高野 洋
発明の名称 音声伝送システム  
代理人 森 厚夫  
代理人 西川 惠清  

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