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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1211094
審判番号 不服2008-7478  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-27 
確定日 2010-02-04 
事件の表示 特願2003-59997「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年9月30日出願公開、特開2004-267338〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成15年3月6日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成19年8月24日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対し、平成20年3月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月25日に手続補正がなされたものである。

第二.平成20年4月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年4月25日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により補正された補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という)は次のとおりである。
「 他の制御部から受けた各種の制御コマンドに基づいて、表示装置に一又はそれ以上のスプライトを描画して図柄演出動作を実現する図柄制御部と、前記図柄制御部を含むサブ制御部の演出動作を中心的に制御する主制御部と、を備える遊技機であって、
前記図柄制御部は、他の制御部から受けた制御コマンドに基づいて、各スプライトの表示位置や拡大縮小率などである表示態様を決定するCPUを有する第1回路と、
前記表示態様を特定する動作パラメータが前記第1回路によって書込まれる指示テーブルを内蔵し、前記指示テーブルに書込まれた動作パラメータに基づいて、フレームバッファに画像データを生成して、前記表示装置の描画動作を実現する第2回路とに区分されて構成され、
前記第1回路は、
他の制御部から制御コマンドを取得する際に起動されるコマンド受信処理と、
前記第2回路による前記表示装置の1フレーム分の描画動作が完了する一定時間毎に実行される更新指示処理とを備えており、
前記更新指示処理は、
演出内容を特定する所定の制御コマンドを受信して開始される一連の図柄演出について、前記他の制御部や前記主制御部の制御によることなく、自らその進行度合を計時する管理タイマ処理と、
前記一連の図柄演出の進行度合に応じて、前記表示装置に描画すべき次の画像を特定し、前記表示装置の画像を消去した表示OFF状態で、前記指示テーブルに必要な動作パラメータのデータ書換えを行った後、前記表示OFF状態を表示ON状態に戻し、その後に前記動作パラメータに基づく画像データを、前記第2回路自身で生成させる書換処理と、を有して構成され、
前記指示テーブルには、各スプライト毎に前記動作パラメータの書込み領域が設けられ、各書込み領域の前記動作パラメータによって、各スプライトの前記表示態様が特定されてフレームバッファの画像データが生成されるようになっていることを特徴とする遊技機。」
(下線部は補正によって変更又は追加された箇所。)

2.補正要件(目的)の検討
請求項1についての補正は、発明を特定するために必要な事項である「他の制御部」、「スプライトの表示態様」、「第2回路」、「管理タイマ処理」、「指示テーブルに必要なデータ」、「書換え処理」等の各発明特定事項に、それぞれ、「前記図柄制御部を含むサブ制御部の演出動作を中心的に制御する主制御部」、「表示位置や拡大縮小率」、「フレームバッファに画像データを生成」、「他の制御部や前記主制御部の制御によることなく、自ら」、「動作パラメータの」、「その後に前記動作パラメータに基づく画像データを、前記第2回路自身で生成させる」を新たに付加する補正であるから、前記各補正は、補正前の各発明特定事項について限定を付加するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当する。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に該当する。

3.補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討
(1)引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平10-127883号公報(以下「引用文献」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
【0011】【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態をパチンコ遊技機に適用した一実施例として図面を参照して説明する。・・・
【0013】ここで、特別図柄表示装置4は、識別情報表示部にカラーで特図の静止画および変動画を表示し、背景表示部に特図以外の背景画などを表示するようになっており、例えば液晶ディスプレイ(LCD)が使用される。・・・
【0016】B.制御系の構成
次に、遊技機における制御系の構成について説明する。図2は遊技機における制御系の全体構成を示すブロック図である。図2において、この制御系は大きく分けると、役物制御回路100と、表示制御回路200とによって構成される。役物制御回路100は、マイクロコンピュータを含む回路で、例えば遊技盤1の裏面に取付けられたボードユニットにより実現されている。また、表示制御回路200は、例えば遊技盤1に設けられた特別図柄表示装置4の裏面側に取付けられた回路基板により実現されている。
【0017】この役物制御回路100は、パチンコ遊技等に必要な役物制御を行うワンチップマイコンからなる役物用IC111と、水晶の発振周波数を分周して役物用IC111の基本クロックを得る分周回路113と、役物用IC111等に必要な電源を供給する電源回路114と、各種情報信号を受け入れるローパスフィルタ115と、ローパスフィルタ115からの信号をバス116を介して役物用IC111に出力するバッファゲート117と、役物用IC111からの信号をバス116を介して受ける出力ポート118と、出力ポート118を介して入力される制御信号をドライブして各種駆動信号を生成して各機器に出力するドライバ119と、遊技に必要な効果音を生成する(あるいは音声合成を行ってもよい)サウンドジェネレータ120と、サウンドジェネレータ120からの音声信号を増幅して遊技機の所定箇所に配設されたスピーカー121aに出力するアンプ121と、役物用IC111から出力される制御信号に基づいて表示制御回路200に対する表示制御信号を出力するインターフェース回路122とによって構成される。なお、役物用IC111は、演算処理を行うCPU131、役物制御の制御プログラム等を格納しているROM132およびワークエリアの設定や制御に必要なデータの一時記憶等を行うRAM133を内蔵している。
【0019】表示制御回路200は、役物用IC111からこの場合8ビットの表示用制御信号(リセット信号(1ビット)、ストローブ信号(1ビット)、コマンド信号(6ビット)を受けて特別図柄表示装置4の制御を行うもので、図3に示すように、画像表示制御用のCPU201と、ROM202と、RAM203と、DMA204と、VDP205と、フォントROM206と、γ補正回路207と、クロック回路208と、インターフェース部209とよりなる。CPU201は、インターフェース部209を介して通信割り込みによって役物用IC111から表示用制御信号を受けて、VDP205に画像生成を指令し、特別図柄表示装置4により後述するような画像表示制御を行うものである。VDP205は、スプライトRAM、パレットRAM、V-RAMを内蔵しており、CPU201から送られる画像生成指令を受けて、フォントROM206に登録されている図柄データ(例えば、特図の図柄データ)を読み出して所定の画像信号を生成し、この画像信号を画像のガンマ補正を行うγ補正回路207を介して特別図柄表示装置4に出力するとともに、水平同期信号(H_SYNC)および垂直同期信号(V_SYNC)を形成して特別図柄表示装置4に出力するものである。
【0053】(d)表示制御回路のメインルーチン
次に、表示制御回路200の表示用CPU201により行われるメイン制御処理(メインルーチン)を、図10のフローチャートにより説明する。まず、ステップS150で初期化処理を行う。これにより、RAMの初期化、I/Oレジスタの設定、システム内部レジスタの設定が行われる。次いで、ステップS152で画像作成フラグがあるか否かを判別する。画像作成フラグは、特別図柄表示装置4に対する1画面分の画像作成が終了した場合に、次回の画像作成を指令するためのものである(後述の割込処理のルーチンにおるけステップS188参照)。画像作成フラグがなければ、このステップS152に待機し、画像作成フラグが割込処理ルーチンでセットされると、次のステップS154に進む。
【0054】ステップS154では画像作成フラグをクリアし、続くステップS156でモード別分岐処理を行う。モード別分岐処理は、役物制御回路100から送られたコマンド信号の各データを読み取り、それぞれのモードデータおよびその他の各データに対応した表示を行うための処理である。例えば、この時点で入力されているコマンド信号のモードデータが「01」である場合には普段処理に関しての図柄やキャラクタ以外の背景画像等に関する処理を行い、モードデータが「02」である場合には変動処理に関しての図柄やキャラクタ以外の背景画像等に関する処理を行い、モードデータが「03」である場合には図柄停止処理に関しての図柄やキャラクタ以外の背景画像等に関する処理を行い、モードデータが「05」である場合にはリーチ停止処理に関しての図柄やキャラクタ以外の背景画像等に関する処理を行う等のように、役物制御回路100からの指令に対応した処理が行われる。したがって、例えばモードデータが「05」であれば、リーチ停止モードおよびサブモード(図5および図6)のデータにより、背景画像の表示および表示の変更制御(例えば、背景画像を春、夏、秋、冬の画像へと変更するような制御)が行われる。
【0055】次いで、ステップS158で画面表示クリア処理を行う。これにより、特別図柄表示装置4における前回の画面表示がクリアされる。次いで、ステップS160でスプライト処理を行う。これは、VDP205における画像処理で、例えばスプライトRAMへのデータの切り換えにより図柄やキャラクタの表示制御を行う。また、スプライトRAMを使用した画像処理を行ったり、あるいは各スプライトに対して色を設定するためにパレットRAMに色指定を行ったりして、キャラクタや各背景画像(例えば、春画像)等の1つのまとまった画像を単独で制御する。この場合、本実施例では特別図柄表示装置4を識別情報表示部と背景表示部とに分けて表示する制御を行い、リーチの種類によっては背景表示を春、夏、秋、冬というような背景で進行する段階的な状態にし、背景表示の進行状態が進むことに応じて大当りの可能性を高めるような画像制御を行う。また、大当り終了時のリーチ背景が春であれば確率変動、夏であれば普図時短とする画像制御を行う。ステップS160を経ると、ステップS152に戻って処理を繰り返す。
【0056】(e)表示制御回路の割込み制御ルーチン
次に、表示制御回路200の表示用CPU201により行われる割込み処理を、図11のフローチャートにより説明する。なお、この場合の割込みとしては、役物制御回路100からのリセット信号を割込み信号とする通信割込みと、V_BLANK割込みとがあり、割込みが発生した場合、割込み禁止処理、プログラムカウンタの値を退避するといったレジスタ退避処理を行うが、割り込みの基本的なことなので、フローチャートでは省略している。割込み処理では、まずステップS180で割込みがV_BLANK割込みであるか否かを判別する。V_BLANK割込みとは、表示制御回路200の表示用CPU201からVDP205に画像データを送るための送信タイミングを取るためのもので、VDP205から入力される割込み信号により行われる割込み(すなわち、画像信号割込み)である。
【0057】V_BLANK割込みでなければ、ステップS182に分岐して通信割込みか否かを判別する。通信割込みでなければ、ルーチンを終了して通常状態に復帰する。通信割込みであればステップS184に進んで役物制御回路100のデータ転送処理に対応する受信処理を行い、役物制御回路100からの各種コマンド信号を受信する。例えば、特別図柄表示装置4の画像表示に関する各種表示態様(例えば、リーチ、外れ、大当り等の表示態様)に関するデータを受信する。受信処理を経ると、今回の割込み処理を終了して通常状態に復帰する。一方、ステップS180でV_BLANK割込みである場合には、ステップS186に進んで画像データ転送処理を行う。これにより、表示用CPU201からVDP205に画像データが転送され、VDP205では転送された画像データに基づいてパチンコ遊技の画像が作成されて特別図柄表示装置4に表示される。次いで、ステップS188で画像作成フラグをセットし、次回の画像作成を指令する。ステップS188を経ると、今回の割込み処理を終了して通常状態に復帰する。

摘記した上記の記載や図面等によれば、引用文献には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「 役物制御回路100から表示用制御信号を受けて特別図柄表示装置4の制御を行う表示制御回路200と、各種駆動信号を生成して各機器に出力するドライバ119と、サウンドジェネレータ120と、サウンドジェネレータ120からの音声信号を増幅してスピーカー121aに出力するアンプ121と、表示制御回路200に対する表示制御信号を出力するインターフェース回路122等によって構成される役物制御回路100と、を備えるパチンコ遊技機であって、
前記表示制御回路200は、画像表示制御用のCPU201と、ROM202と、RAM203と、DMA204と、VDP205と、フォントROM206等よりなり、前記CPU201は、前記役物制御回路100から前記表示用制御信号を受けて前記VDP205に画像生成を指令し、
前記VDP205は、スプライトRAM、パレットRAM、V-RAMを内蔵しており、前記CPU201から送られる画像生成指令を受けて、前記フォントROM206に登録されている図柄データを読み出して所定の画像信号を生成し、この画像信号、水平同期信号および垂直同期信号を特別図柄表示装置4に出力するものであり、
前記表示用CPU201は、
前記役物制御回路100からのリセット信号により行われる通信割込みであれば前記役物制御回路100のデータ転送処理に対応する受信処理を行い、
前記VDP205から入力される割込み信号により行われるV_BLANK割込みである場合には、画像データ転送処理を行い、次いで、画像作成フラグをセットし、次回の画像作成を指令し、
画像作成フラグがセットされると、
前記役物制御回路100から送られた前記コマンド信号に対応した表示を行うための処理であるモード別分岐処理と、
前記特別図柄表示装置4における前回の画面表示がクリアされる画面表示クリア処理と、スプライト処理を行い、
該スプライト処理は前記VDP205における画像処理で、スプライトRAMへのデータの切り換えにより図柄やキャラクタの表示制御を行い、また、スプライトRAMを使用した画像処理を行ったり、あるいは各スプライトに対して色を設定するためにパレットRAMに色指定を行ったりして、キャラクタや各背景画像等の1つのまとまった画像を単独で制御するものであるパチンコ遊技機。」

(2)引用発明と本願補正発明との対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「役物制御回路100」は、本願補正発明の「他の制御部」又は「主制御部」に相当し、以下同様に、
「表示用制御信号」は「各種の制御コマンド」に、
「特別図柄表示装置4」は「表示装置」に、
「表示制御回路200」は「図柄制御部」に、
「パチンコ遊技機」は「遊技機」に、
「CPU201」は「CPU」に、各々相当する。
さらに、引用文献の記載等からみて、以下のことが言える。

a.引用発明のVDP205における画像処理としてスプライト処理が行われることから、引用発明は特別図柄表示装置4に一又はそれ以上のスプライトを描画して特別図柄の演出を行うものであることが明らかである。
そうしてみると、引用発明の「表示制御回路200」は本願補正発明の「他の制御部から受けた各種の制御コマンドに基づいて、表示装置に一又はそれ以上のスプライトを描画して図柄演出動作を実現する」に相当する機能を有しているということができる。

b.引用発明の「各種駆動信号」、「音声信号」及び「表示制御信号」は、引用文献の図2等によれば、普通図柄表示装置、装飾ランプ、LED等、スピーカー及び表示制御回路200を制御するものであるから、引用発明の「役物制御回路100」は、演出動作を中心的に制御するものであるということができる。
また、本願補正発明の「サブ制御部」と、引用発明の「各機器」、「スピーカー121a」及び「表示制御回路200」は、“被制御装置”である点で共通している。

c.引用発明の「CPU201」は、役物制御回路100から表示用制御信号を受けてVDP205に画像生成を指令しており、VDP205における画像処理は「スプライトRAMへのデータの切り換えにより図柄やキャラクタの表示制御を行い、また、スプライトRAMを使用した画像処理を行ったり、あるいは各スプライトに対して色を設定するためにパレットRAMに色指定を行ったり」するものであることからして、各スプライトの表示位置や拡大縮小率などの処理も当然行っているものと認められる。
そうしてみると、引用発明の「CPU201」は、本願補正発明の「他の制御部から受けた制御コマンドに基づいて、各スプライトの表示位置や拡大縮小率などである表示態様を決定するCPU」に相当するものということができる。

d.引用発明の「VDP205」は、CPU201から送られる画像生成指令を受けて動作するものであるから、本願補正発明の「第2回路」に相当するものである。
そして、引用発明の「CPU201」について上記c.で述べた事項を考え合わせると、引用発明は、本願補正発明の「第1回路と、」「第2回路とに区分されて構成され」るに相当する構成を有するものといえる。
また、引用発明の「画像生成指令」は、本願補正発明の「表示態様を特定する動作パラメータ」に相当するということができるとともに、「VDP205」が「CPU201から送られる画像生成指令」を一旦記憶することは当然であるから、引用発明の「VDP205」は、本願補正発明の「表示態様を特定する動作パラメータが前記第1回路によって書込まれる指示テーブルを内蔵し」に相当する構成を有しているものということができる。
さらに、引用発明の「VDP205」は、「画像生成指令を受けて、前記フォントROM206に登録されている図柄データを読み出して所定の画像信号を生成し、この画像信号、水平同期信号および垂直同期信号を特別図柄表示装置4に出力するもの」であるとともに、フレームバッファと同様に表示装置に表示する画像を記憶するV-RAMを内蔵しているから、本願補正発明の「指示テーブルに書込まれた動作パラメータに基づいて、フレームバッファに画像データを生成して、前記表示装置の描画動作を実現する」に相当する機能を有するものといえる。

e.引用発明の「役物制御回路100からのリセット信号により行われる通信割込みであれば前記役物制御回路100のデータ転送処理に対応する受信処理」において転送されるデータが、「表示用制御信号」(本願補正発明の「制御コマンド」に相当)に対応するものであることは明らかであるから、引用発明は、本願補正発明の「他の制御部から制御コマンドを取得する際に起動されるコマンド受信処理」に相当する機能を備えているものということができる。

f.引用発明の「VDP205から入力される割込み信号」が、VDP205における画像処理の終了後に発生することは明らかであるから、「V_BLANK割込み」は、VDP205における画像処理の終了毎、すなわち、本願補正発明の「前記第2回路による前記表示装置の1フレーム分の描画動作が完了する」毎に相当するタイミングで実行されるものといえる。
そして、引用発明において「画像作成フラグをセットし、次回の画像作成を指令」すると、画像更新のための処理が実行されるから、引用発明と本願補正発明は、“画像更新処理”を実行する点で共通する。
したがって、引用発明と本願補正発明は、“第2回路による表示装置の1フレーム分の描画動作が完了する毎に実行される画像更新処理”を備えている点で共通する。

g.引用発明の「コマンド信号」は、引用文献の段落【0057】に例示されるように「特別図柄表示装置4の画像表示に関する各種表示態様(例えば、リーチ、外れ、大当り等の表示態様)に関するデータ」であって、特別図柄表示装置4に表示される一連の図柄演出に関するデータを含んでおり、その「コマンド信号」に対応した表示を行うために「モード別分岐処理と、画面表示クリア処理と、スプライト処理」が行われ、「特別図柄表示装置4」での表示が開始されることは明らかであるから、本願補正発明と引用発明は、“演出内容を特定する所定の制御コマンドを受信して開始される一連の図柄演出について”の処理を有して構成される点で共通する。

h.引用発明の「画像作成フラグ」は、引用文献の段落【0053】に記載されるように「特別図柄表示装置4に対する1画面分の画像作成が終了した場合に、次回の画像作成を指令するためのものである」ので、引用発明は「次回の画像」として、特別図柄表示装置4において行われる一連の図柄演出を進行させるための次の状態の画像を特定することが明らかである。
また、引用発明の「特別図柄表示装置4における前回の画面表示がクリアされる画面表示クリア処理」は、本願補正発明の「次の画面を特定し、前記表示装置の画像を消去した表示OFF状態」とする処理に相当する。
さらに、引用発明の「スプライト処理」は、「VDP205」(本願補正発明の「第2回路」に相当)における画像処理であり、キャラクタや各背景画像等の1つのまとまった画像を単独で制御する処理であるとともに、引用文献の段落【0053】に記載されるように「VDP205では転送された画像データに基づいてパチンコ遊技の画像が作成されて特別図柄表示装置4に表示される」のであるから、引用発明のVDP205における画像処理において、特別図柄表示装置4への表示が可能な状態としていることも明らかである。
したがって、引用発明は、本願補正発明の「次の画面を特定し、前記表示装置の画像を消去した表示OFF状態で、前記指示テーブルに必要な動作パラメータのデータ書換えを行った後、前記表示OFF状態を表示ON状態に戻し、その後に前記動作パラメータに基づく画像データを、前記第2回路自身で生成させる書換処理」に相当する処理を有するものといえる。

i.引用発明の「スプライトRAM」は「データの切り換えにより図柄やキャラクタの表示制御を行」うものであり、同じく「パレットRAM」は「各スプライトに対して色を設定するため」のものであるから、これらは本願補正発明において、各スプライト毎に設けられている「動作パラメータの書込み領域」に相当するものということができる。
そして、上記d.で述べたように「VDP205」が、本願補正発明の「指示テーブルに書込まれた動作パラメータに基づいて、フレームバッファに画像データを生成して、前記表示装置の描画動作を実現する」に相当する機能を有していることを考え合わせると、引用発明は、本願補正発明の「前記指示テーブルには、各スプライト毎に前記動作パラメータの書込み領域が設けられ」に相当する構成及び「各書込み領域の前記動作パラメータによって、各スプライトの前記表示態様が特定されてフレームバッファの画像データが生成される」に相当する機能を有しているということができる。

以上を総合すると、両者は、
「 他の制御部から受けた各種の制御コマンドに基づいて、表示装置に一又はそれ以上のスプライトを描画して図柄演出動作を実現する図柄制御部と、前記図柄制御部を含む被制御装置の演出動作を中心的に制御する主制御部と、を備える遊技機であって、
前記図柄制御部は、他の制御部から受けた制御コマンドに基づいて、各スプライトの表示位置や拡大縮小率などである表示態様を決定するCPUを有する第1回路と、
前記表示態様を特定する動作パラメータが前記第1回路によって書込まれる指示テーブルを内蔵し、前記指示テーブルに書込まれた動作パラメータに基づいて、フレームバッファに画像データを生成して、前記表示装置の描画動作を実現する第2回路とに区分されて構成され、
前記第1回路は、
他の制御部から制御コマンドを取得する際に起動されるコマンド受信処理と、
前記第2回路による前記表示装置の1フレーム分の描画動作が完了する毎に実行される画像更新処理とを備えており、
前記画像更新処理は、
演出内容を特定する所定の制御コマンドを受信して開始される一連の図柄演出について、
前記一連の図柄演出の進行度合に応じて、前記表示装置に描画すべき次の画像を特定し、前記表示装置の画像を消去した表示OFF状態で、前記指示テーブルに必要な動作パラメータのデータ書換えを行った後、前記表示OFF状態を表示ON状態に戻し、その後に前記動作パラメータに基づく画像データを、前記第2回路自身で生成させる書換処理と、を有して構成され、
前記指示テーブルには、各スプライト毎に前記動作パラメータの書込み領域が設けられ、各書込み領域の前記動作パラメータによって、各スプライトの前記表示態様が特定されてフレームバッファの画像データが生成されるようになっている遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]“被制御装置”に関して、本願補正発明においては「サブ制御部」であるのに対し、引用発明においては「表示制御回路200」以外の「各機器」や「スピーカー121a」が、「役物制御回路100」に直接制御される装置である点。

[相違点2]“画像更新処理”の実行に関して、本願補正発明は「1フレーム分の描画動作が完了する一定時間毎」であるのに対し、引用発明は、1フレーム分の描画動作が完了したときに、次回の画像作成を指令するものの、該指令が一定時間毎に行われるか否か明らかでない点。

[相違点3]“演出内容を特定する所定の制御コマンドを受信して開始される一連の図柄演出について”の処理に関して、本願補正発明は「前記他の制御部や前記主制御部の制御によることなく、自らその進行度合を計時する管理タイマ処理」を有しているのに対し、引用発明は、該「管理タイマ処理」に相当する処理を有しているか否か明らかでない点。

(3)相違点の検討及び判断
[相違点1について]
主制御装置がドライバ等を用いて被制御装置を直接制御する代わりに、制御基板を介在させて被制御装置を制御することは、例を挙げるまでもなく、遊技機の分野において従来周知の技術(以下「周知技術1」という。)であるから、当該相違点は遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)にとって単なる設計的事項である。

[相違点2について]
引用発明の「特別図柄表示装置4」は、摘記した引用文献の段落【0013】の記載から、特図の変動画を表示し得るものであり、動画の再生に際して一定時間毎に画像更新処理を行うことは、例えば、特開2002-52226号公報(特に、段落【0074】)及び特開2000-217989号公報(特に、段落【0058】)に記載されるように、遊技機の分野において従来周知の技術(以下「周知技術2」という。)であるから、当該相違点は、当業者にとって単なる設計的事項である。

[相違点3について]
本願の出願当初の明細書には、段落【0059】に「演出時間を管理する管理タイマ」という記載がある程度であるから、「進行度合を計時する管理タイマ処理」が如何なる処理であるのか不明であるが、「進行度合」に関する唯一の記載である段落【0061】に「一連の図柄演出の進行度合に応じて、液晶ディスプレイDISPに描画すべき次の画像を特定し」との記載から、「進行度合」は画像の変更を意味すること、及び画像変更に関する記載である図9を説明する段落【0046】?【0048】の記載から、当該管理タイマ処理とは、制御コマンドに基づいて実行される図柄演出動作において、画像変更がなされるまでの演出時間を計時する処理と認められる。
その様な処理、すなわち、制御コマンドに基づいて図柄変更するまでの演出時間を、主制御部等の他の制御によることなく図柄制御部自ら計時することは、例えば、上記特開2002-52226号公報(特に、段落【0072】?【0083】)、特開2000-334116号公報(特に、段落【0145】?【0150】)及び特開2000-334143号公報(特に、段落【0066】)に記載されるように、遊技機の分野において従来周知の技術(以下「周知技術3」という。)である。
したがって、当該相違点は当業者にとって単なる設計的事項である。

(4)まとめ
以上のように相違点1?3は、いずれも当業者にとって単なる設計的事項であり、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術1?3に基いて当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術1?3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)補足
本願補正発明の「主制御部」については、「他の制御部」を限定する補正として、その付加を特許請求の範囲の減縮を目的とする補正と判断したが、これらの制御部が異なる制御部であるとすると、「主制御部」を付加する補正は不適法となる。
さらに、「他の制御部」と「主制御部」が異なる制御部であるとしても、図柄制御部が受ける制御コマンドを主制御部から直接受けずに、他の制御部を介して受けることも、例えば、特開2000-288211号公報(段落【0060】)に見られるように、遊技機の分野において従来知られている事項であるので、本審決の結論に影響はない。

4.むすび
したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第三.本願発明について
1.本願発明
平成20年4月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成19年8月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 他の制御部から受けた各種の制御コマンドに基づいて、表示装置に一又はそれ以上のスプライトを描画して図柄演出動作を実現する図柄制御部を備える遊技機であって、
前記図柄制御部は、他の制御部から受けた制御コマンドに基づいて各スプライトの表示態様を決定するCPUを有する第1回路と、
前記表示態様を特定する動作パラメータが前記第1回路によって書込まれる指示テーブルを内蔵し、前記指示テーブルに書込まれた動作パラメータに基づいて、前記表示装置の描画動作を実現する第2回路とに区分されて構成され、
前記第1回路は、
他の制御部から制御コマンドを取得する際に起動されるコマンド受信処理と、
前記第2回路による前記表示装置の1フレーム分の描画動作が完了する一定時間毎に実行される画面更新処理とを備えており、
前記画面更新処理は、
演出内容を特定する所定の制御コマンドを受信して開始される一連の図柄演出について、その進行度合を計時する管理タイマ処理と、
前記一連の図柄演出の進行度合に応じて、前記表示装置に描画すべき次の画像を特定し、前記表示装置の画像を消去した表示OFF状態で、前記指示テーブルに必要なデータ書換えを行った後、前記表示OFF状態を表示ON状態に戻す書換処理と、を有して構成され、
前記指示テーブルには、各スプライト毎に前記動作パラメータの書込み領域が設けられ、各書込み領域の前記動作パラメータによって、各スプライトの表示位置や拡大縮小率などである前記表示態様が特定されるようになっていることを特徴とする遊技機。」

2.特許法第29条第2項の検討
(1)引用文献記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。

(2)引用発明と本願発明との対比
本願発明は、前記「第二」で検討した本願補正発明から、「図柄制御部」、「スプライトの表示態様」、「第2回路」、「管理タイマ処理」、「指示テーブルに必要なデータ」、「書換え処理」の各限定事項である、「前記図柄制御部を含むサブ制御部の演出動作を中心的に制御する主制御部」、「表示位置や拡大縮小率」、「フレームバッファに画像データを生成」、「他の制御部や前記主制御部の制御によることなく、自ら」、「動作パラメータの」、「その後に前記動作パラメータに基づく画像データを、前記第2回路自身で生成させる」との構成を省いたものといえる。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.3.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術1?3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術1?3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1?3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第四.むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項(請求項2?6)について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-24 
結審通知日 2009-12-01 
審決日 2009-12-14 
出願番号 特願2003-59997(P2003-59997)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小河 俊弥  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 吉村 尚
深田 高義
発明の名称 遊技機  
代理人 野中 誠一  

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