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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A01D
管理番号 1211184
審判番号 不服2007-27962  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-11 
確定日 2010-02-03 
事件の表示 特願2003-335872「リール型の草刈り機アセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月 2日出願公開、特開2004-242667〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続きの経緯
本願は、平成15年9月26日(パリ条約による優先権主張、2003年2月11日、(US)米国)の出願であって、平成19年7月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月11日に審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。その後、前置報告書の内容について、審判請求人の意見を求めるために平成20年12月22日付けで審尋がなされ、平成21年4月1日付けで当該審尋に対する回答書が提出された。さらに、平成21年4月22日付けで当審による拒絶理由の通知がなされ、それに対して同年8月13日付けで意見書が提出された。

【2】本願発明
1.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年10月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
フレームと、
複数の刃を有するリールとを含み、前記リールは前記フレームに回転可能な態様で結合され、さらに、
駆動する態様で前記リールに結合された電気モータを含み、第1の駆動電流は始動モード中に前記電気モータに印加され、第2の駆動電流は前記始動モード後に前記電気モータに印加され、前記第2の駆動電流は前記第1の駆動電流よりも小さく、さらに、
前記電気モータのための駆動回路を含み、前記駆動回路は、
電流を制限するサブ回路を含み、前記電流を制限するサブ回路は、前記電気モータに前記第1の駆動電流を印加し、前記第1の駆動電流は前記リールを回転開始させるための第1のトルクおよび前記モータに対する制御された過負荷に相当し、さらに
タイミング回路を含み、前記タイミング回路は前記電気モータに前記第2の駆動電流を印加し、前記タイミング回路は前記リールを回転開始させるために予め定められた時間遅延を導入し、前記時間遅延中に、前記電流を制限するサブ回路からの前記第1の駆動電流のみが前記電気モータに印加され、前記第2の駆動電流は、前記予め定められた時間遅延の後に前記タイミング回路を介して前記電気モータに印加され、前記第1のトルクよりも小さい第2のトルクに相当する、リール型の草刈り機アセンブリ。」

2.刊行物に記載された発明
(1)刊行物1
原査定の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である上記刊行物1には、図面とともに、以下の記載がある。
イ.「電源回路1の出力端の電圧Vと、基準電圧発生回路6の出力電圧VRとが、それぞれ比較器7の反転入力端子と非反転入力端子とに入力され、該比較器7の出力は、電源回路1の出力電流制御端子5に入力されている。上記電源回路1は、この出力電流制御端子5への入力信号により主力電流Iをモータ4の回転維持に必要なモータ負荷電流より多少大きい定常電流IOとモータ4の起動に必要な起動電流IMSより多少大きい電流IS(以下、大電流という)とに切換えるための制御回路を有している。本実施例では、出力電流Iは出力電流制御端子5がロー状態で定常電流IOに切換えられ、ハイ状態で大電流ISに切換えられる。上記構成において、電源回路1に交流入力Vが供給され、かつ、電源スイッチ3がオンされてモータ4が交流駆動される場合に、電池2が未充電状態で該電池2の電圧が基準電圧VR以下であると、比較器7の出力はハイレベル、すなわち、出力電流制御端子5がハイレベルになる。これにより電源回路1から、第2図に示すよう大電流ISが出力され、モータ4が起動する。このとき前記大電流ISの一部は電池2に流入し、電池2への充電が開始される。その後、充電とともに電池2の電圧は次第に上昇し、t1時点で基準電圧VRを超えると、比較器7の出力はローレベルすなわち、出力電流制御端子5がローレベルに変化する。これにより電源回路1の出力電流Iは定常電流IOに切換えられ、モータ4は安定した駆動を行うこととなる。」(公報第2頁左下欄第12行?第3頁左上欄第1行)

上記記載事項イ.において、時間t1は、モータ4の回転起動のための大電流ISが印加される時間であり、当該時間t1は電池2の電圧と基準電圧VRを比較器7が比較することによって決定されることから、比較器7によって導入されていることになる。また、電池2の電圧上昇の速度は、電源電圧Vと電池の内部抵抗等を含む充電回路の時定数とによって一義的に決まるものであり、これらの値は、想定の範囲内での変動があるとしても、通常、一定のものと考えられるから、比較器7によって導入される前記時間t1は、回路の設計時点で予め定められた時間となる。(すなわち、設計者は回路の設計時点で、時間t1の長さが適度な値となるように設定している。)したがって上記記載事項イ.及び図面からみて、刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認められる。

「モータを含み、大電流ISはモータの起動中にモータに印加され、定常電流IOは起動後にモータに印加され、定常電流IOは大電流ISよりも小さく、さらに、モータを駆動する電源回路を含み、電源回路は比較器と出力電流制御端子を含み、出力電流制御端子は、モータに大電流ISを印加し、さらに、出力電流制御端子は、モータに定常電流IOを印加し、比較器はモータを回転起動するための時間t1を導入し、時間t1中には電源回路からモータに大電流ISのみが印加され、時間t1後には電源回路からモータに定常電流IOが印加されモータを起動するために必要なモータ負荷トルクよりもモータの回転維持に必要なモータ負荷トルクが小さい装置」(以下「刊行物1記載の発明」という。)

3.対比・判断
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「モータ」、「大電流IS」、「モータの起動中」、「定常電流IO」、「電源回路」、「出力電流制御端子」及び「時間t1」が、それぞれ本願発明の「電気モータ」、「第1の駆動電流」、「始動モード中」、「第2の駆動電流」、「駆動回路」、「電流を制限するサブ回路」及び「時間遅延」に相当する。また、上記のとおり、比較器が予め定められた時間t1を導入していることから刊行物1記載の発明の「比較器」は本願発明の「タイミング回路」に相当する。
したがって、両者は、
「電気モータを含み、第1の駆動電流は始動モード中に前記電気モータに印加され、第2の駆動電流は前記始動モード後に前記電気モータに印加され、前記第2の駆動電流は前記第1の駆動電流よりも小さく、さらに、
前記電気モータのための駆動回路を含み、前記駆動回路は、
電流を制限するサブ回路を含み、前記電流を制限するサブ回路は、前記電気モータに前記第1の駆動電流を印加し、さらに
タイミング回路を含み、前記タイミング回路は前記電気モータに前記第2の駆動電流を印加し、前記タイミング回路は電気モータを回転開始させるために予め定められた時間遅延を導入し、前記時間遅延中に、前記電流を制限するサブ回路からの前記第1の駆動電流のみが前記電気モータに印加され、前記第2の駆動電流は、前記予め定められた時間遅延の後に前記タイミング回路を介して前記電気モータに印加され、前記第1のトルクよりも小さい第2のトルクに相当する装置」
である点で一致しており、以下の点で相違している。
(相違点1)
本願発明の装置は、「フレームと、複数の刃を有するリールとを含み、前記リールは前記フレームに回転可能な態様で結合され、さらに、駆動する態様で前記リールに結合された電気モータを含むリール型の草刈り機アセンブリ」であるのに対して、刊行物1記載の発明の装置は、そうではない点。
(相違点2)
本願発明では、「第1の駆動電流はモータを回転開始させるための第1のトルクおよび前記モータに対する制御された過負荷に相当し」ているのに対して、刊行物1記載の発明では、その点が不明な点。

相違点について検討する。
(相違点1について)
「フレームと、複数の刃を有するリールとを含み、前記リールは前記フレームに回転可能な態様で結合され、さらに、駆動する態様で前記リールに結合された電気モータを含むリール型の草刈り機アセンブリ」は、従来周知のもの(必要なら、拒絶査定の理由に引用された引用文献、特開2000-60259号公報参照)であって、刊行物1記載の発明を周知の草刈り機アセンブリに用いる点に格別の困難性はない。
そうすると、相違点1に係る事項は格別のものではない。

(相違点2について)
一般に、モータやエンジン等の駆動源の始動時に、定常運転時に比べて大きな駆動トルク(高負荷運転)が必要なことは、刊行物1に見られるとおり、よく知られた事実であり、始動時に定格性能を越えた過負荷運転を許容することも、ごく普通に行われている慣用技術(必要なら、特開2002-48036号公報、【0006】?【0010】、【0030】参照)である。
したがって、刊行物1記載の発明において、定格性能が定常電流IO程度のモータを採用することによって「第1の駆動電流はモータを回転開始させるための第1のトルクおよび前記モータに対する制御された過負荷に相当」するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明の効果も刊行物1記載の発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

したがって、本願発明は、刊行物1記載の発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

なお、請求人は上記意見書において「引例1の電源は、電池電圧がしきい値よりも低いときのみに、過負荷電流を流します。そうでなければ、(たとえば、電池電圧がしきい値電圧以上であれば)電源は通常動作し、過負荷状態に入ることはありません。したがって、引例1は補助引例と組み合わせて過負荷状態を提供することから遠ざける教示をします。
もしも、引例1と補助引例とが組み合わせられたとしても、その組合せは請求項1に係る発明を示唆しません。たとえば、補助引例は「モータジェネレータ」を過負荷とすることのみを開示しています。それは、フレームに回転可能な態様で結合されたリールを駆動するものではありません。したがって、引例の組合せは、請求項1に示される「駆動する態様でリールに結合された」「制御されたモータの過負荷」を開示も示唆もしていません。」と主張している。
しかしながら、刊行物1(請求人のいう引例1)記載の発明が過負荷状体に入るかどうかは、上記(相違点2)で指摘しているとおり不明である(この点は、請求人が提出した、上記回答書で主張しているとおりである。)が、過負荷運転を許容すること自体は、上記(相違点2について)で述べたとおり慣用技術であって、刊行物1記載の発明が大電流ISによるモータの起動中に過負荷運転をすることができない特段の事情は見あたらない。また、刊行物1記載の発明が、フレームに回転可能な態様で結合されたリールを駆動するものでないことも(相違点1)で指摘したとおりであって、(相違点1について)で述べたとおり、その点は格別の相違点ではない。したがって、請求人の上記主張には理由がない。

【3】むすび
以上のとおり、本願発明は特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-01 
結審通知日 2009-09-08 
審決日 2009-09-24 
出願番号 特願2003-335872(P2003-335872)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 郡山 順  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 山口 由木
山本 忠博
発明の名称 リール型の草刈り機アセンブリ  
代理人 野田 久登  
代理人 深見 久郎  
代理人 仲村 義平  
代理人 森田 俊雄  
代理人 堀井 豊  
代理人 酒井 將行  

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