• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1211670
審判番号 不服2007-23655  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-29 
確定日 2010-02-12 
事件の表示 特願2005-329162「遠隔保守のための管理装置、および遠隔保守システム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月 8日出願公開、特開2006-146915〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成9年6月24日に出願した特願平9-167233号の一部を平成17年11月24日に新たな特許出願としたものであって、本願の手続の経緯は以下のとおりである。

特許願 平成17年11月14日
出願審査請求書 平成17年11月14日
拒絶理由通知書 平成19年 4月19日
(平成19年 4月24日発送)
意見書 平成19年 6月25日
手続補正書 平成19年 6月25日
拒絶査定 平成19年 7月24日
(平成19年 7月31日発送)
審判請求書 平成19年 8月29日
手続補正書 平成19年 8月29日
審尋 平成20年 7月 6日
(平成21年 7月 7日発送)
回答書 平成21年 8月31日
補正の却下の決定 平成21年 9月25日
(平成21年10月13日送達)
拒絶理由通知書(最後) 平成21年 9月25日
(平成21年 9月29日発送)
意見書 平成21年11月18日
手続補正書 平成21年11月18日




第2 平成21年11月18日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔結論〕

平成21年11月18日付けの手続補正を却下する。

〔理由〕

1.補正内容

平成21年11月18日付けの手続補正(以下、「本件第3補正」という。)は、特許請求の範囲の補正を含むものであって、
本件第3補正前の特許請求の範囲の請求項1乃至9(平成19年6月25日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1乃至9)、すなわち、

「 【請求項1】
産業用機器を保守するための管理装置であって、
該産業用機器を識別する情報と、該産業用機器で発生し得るトラブルの症状の情報と、該症状に対する対処法の情報とが関連付けて登録されたデータベースを有し、
該産業用機器の稼動状態を監視する監視装置とインターネットを介して通信し、
該監視装置から受信した該産業用機器のトラブルの症状の情報が該データベースに登録されているか否かを判断し、
該監視装置から受信した該症状の情報が該データベースに登録されていると判断された場合には、該監視装置から受信した該症状の情報に対応した対処法の情報が該データベースに登録されているか否かを判断し、
該監視装置から受信した該症状の情報が該データベースに登録されていないと判断された場合および該監視装置から受信した該症状の情報に対応した対処法の情報が該データベースに登録されていないと判断された場合には、前記管理装置にLANを介して接続された、該データベースにアクセス可能なコンピュータに該監視装置から受信した該症状の情報を送信し、
該コンピュータの操作により入力された情報に基づき、該監視装置から受信した該症状の情報に対応した対処法の情報を該データベースに登録する、
ことを特徴とする管理装置。
【請求項2】
該監視装置から受信した該症状の情報に対応した対処法の情報が該データベースに登録されていると判断された場合には、該対処法の情報を該監視装置に送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
該監視装置から受信した該症状の情報が該データベースに登録されていないと判断された場合、該監視装置から受信した該症状の情報を該データベースに登録する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の管理装置。
【請求項4】
該コンピュータのブラウザソフトを介して入力された情報に基づいて該データベースを更新する、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の管理装置。
【請求項5】
該産業用機器のユーザのコンピュータを登録することにより、該登録されたコンピュータを介した該データベースへのアクセスを許可する、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の管理装置。
【請求項6】
該アクセスのための該産業用機器との通信は、暗号・復号アルゴリズムにしたがって行う、ことを特徴とする請求項5に記載の管理装置。
【請求項7】
該産業用機器は、半導体製造装置である、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の管理装置。
【請求項8】
産業用機器を保守するための請求項1乃至7のいずれかに記載の管理装置と、
該産業用機器にLANを介して接続され、該産業用機器のトラブルの症状の情報を取得し、インターネットを介して該症状の情報を前記管理装置に通知し、該通知に応答して前記管理装置からインターネットを介して送られた応答情報を受信する監視装置と、
を有することを特徴とする遠隔保守システム。
【請求項9】
前記管理装置は、前記監視装置を介して該産業用機器のソフトウェアを修正する、ことを特徴とする請求項8に記載の遠隔保守システム。」

を、本件第3補正後の特許請求の範囲の請求項1乃至8、すなわち、

「 【請求項1】
産業用機器を保守するための管理装置であって、
該産業用機器を識別する情報と、該産業用機器で発生し得るトラブルの症状の情報と、該症状に対する対処法の情報とが関連付けて登録されたデータベースであって、コンピュータからブラウザソフトを用い且つLANを介してアクセス可能なデータベースを有し、
該産業用機器の稼動状態を監視する監視装置とインターネットを介して通信し、
該監視装置から受信した該産業用機器のトラブルの症状の情報が該データベースに登録されているか否かを判断し、
該監視装置から受信した該症状の情報が該データベースに登録されていると判断された場合には、該監視装置から受信した該症状の情報に対応した対処法の情報が該データベースに登録されているか否かを判断し、
該監視装置から受信した該症状の情報に対応した対処法の情報が該データベースに登録されていると判断された場合には、該対処法の情報を該監視装置に送信し、
該対処法の情報を該監視装置に送信したか否かに関する情報の報告を、該コンピュータのディスプレイに表示させ且つ保守担当者のメールアドレス宛に電子メールを送信して行ない、
該コンピュータの操作により入力された情報に基づき、該監視装置から受信した該症状の情報に対応した対処法の情報を該データベースに登録する、
ことを特徴とする管理装置。
【請求項2】
該監視装置から受信した該症状の情報が該データベースに登録されていないと判断された場合、該監視装置から受信した該症状の情報を該データベースに登録する、ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
該コンピュータの該ブラウザソフトを介して入力された情報に基づいて該データベースを更新する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の管理装置。
【請求項4】
該産業用機器のユーザのコンピュータを登録することにより、該登録されたコンピュータを介した該データベースへのアクセスを許可する、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の管理装置。
【請求項5】
該アクセスのための該産業用機器との通信は、暗号・復号アルゴリズムにしたがって行う、ことを特徴とする請求項4に記載の管理装置。
【請求項6】
該産業用機器は、半導体製造装置である、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の管理装置。
【請求項7】
産業用機器を保守するための請求項1乃至6のいずれかに記載の管理装置と、
該産業用機器にLANを介して接続され、該産業用機器のトラブルの症状の情報を取得し、インターネットを介して該症状の情報を前記管理装置に通知し、該通知に応答して前記管理装置からインターネットを介して送られた応答情報を受信する監視装置と、
を有することを特徴とする保守システム。
【請求項8】
前記管理装置は、前記監視装置を介して該産業用機器のソフトウェアを修正する、ことを特徴とする請求項7に記載の保守システム。」

に変更する補正を含むものである。


つまり、本件第3補正は、

(1)
本件第3補正前の特許請求の範囲の請求項1を削除し、本件第3補正前の特許請求の範囲の請求項2乃至9を、ぞれぞれ1ずつ繰り上げる補正、

(2)
・本件第3補正前の特許請求の範囲の請求項2が引用する請求項1の「データベース」を「コンピュータからブラウザソフトを用い且つLANを介してアクセス可能なデータベース」と限定する補正、

・本件第3補正前の特許請求の範囲の請求項2が引用する請求項1から
「該監視装置から受信した該症状の情報が該データベースに登録されていないと判断された場合および該監視装置から受信した該症状の情報に対応した対処法の情報が該データベースに登録されていないと判断された場合には、前記管理装置にLANを介して接続された、該データベースにアクセス可能なコンピュータに該監視装置から受信した該症状の情報を送信し、」
という記載を削除する補正(以下、「本件第3補正事項1」という。)、

・本件第3補正前の特許請求の範囲の請求項2の
「該監視装置から受信した該症状の情報に対応した対処法の情報が該データベースに登録されていると判断された場合には、該対処法の情報を該監視装置に送信」するという記載の直後に、
「該対処法の情報を該監視装置に送信したか否かに関する情報の報告を、該コンピュータのディスプレイに表示させ且つ保守担当者のメールアドレス宛に電子メールを送信して行ない」という記載を追加する補正(以下、「本件第3補正事項2」という。)、

を行って、本件第3補正後の特許請求の範囲の請求項1とする補正、

(3)
本件第3補正前の特許請求の範囲の請求項8乃至9の「遠隔保守システム」という記載を、本件第3補正後の特許請求の範囲の請求項7乃至8の「保守システム」と変更する補正(以下、「本件第3補正事項3」という。)、

を含むものである。



2.本件第3補正に対する判断

(1)本件第3補正事項1について

本件第3補正事項1が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(以下、単に「特許法第17条の2第4項」という。)第1号に規定された「請求項の削除」に該当しないことは明らかである。

また、本件第3補正事項1は、
「該監視装置から受信した該症状の情報が該データベースに登録されていないと判断された場合および該監視装置から受信した該症状の情報に対応した対処法の情報が該データベースに登録されていないと判断された場合には、前記管理装置にLANを介して接続された、該データベースにアクセス可能なコンピュータに該監視装置から受信した該症状の情報を送信し、」
という限定を解除する補正なのであるから、
特許法第17条の2第4項第2号に規定された「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」に該当しない。

更に、本件第3補正事項1が、
・特許法第17条の2第4項第3号に規定された「誤記の訂正」、
・特許法第17条の2第4項第4号に規定された「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)、
に該当しないことは明らかである。

つまり、本件第3補正事項1は、特許法第17条の2第4項各号のいずれの事項を目的とするものでもなく、同条同項の規定に違反する。


〔参考〕平成19年(行ケ)第10159号 (http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080326111316.pdf )
「第5 当裁判所の判断
1 取消事由1(本件補正についての判断の誤り)について
原告は,特許請求の範囲における新規事項の追加状態を解消する補正は,記載不備状態を解消するためのもので,第三者に不測の不利益を与えることもないから,特許請求の範囲の不明りょうな記載を明りょうな記載にする補正として取り扱うべきであり,本件補正は「明りょうでない記載の釈明」を目的とした補正に該当し,補正の要件を満たすものであると主張する。」
・・・(中略)・・・
(3)さらに,原告は,新規事項の追加状態を解消する補正は,記載不備状態を解消するためのものであり,第三者に不測の不利益を与えることもないから,特許請求の範囲の不明りょうな記載を明りょうな記載に補正するものとして取り扱うべきであると主張する。
しかし,特許法17条の2第4項4号は,「明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」と規定しているから,「明りょうでない記載の釈明」を目的とする補正は,法律上,審査官が拒絶理由中で特許請求の範囲が明りょうでない旨を指摘した事項について,その記載を明りょうにする補正を行う場合に限られており,原告の主張する「新規事項の追加状態を解消する」目的の補正が特許法17条の2第4項4号に該当する余地はない。
・・・(中略)・・・
(5)以上のとおり,本件補正は,特許法17条の2第4項各号のいずれにも当たらないから,同項の規定に違反するものとして却下されるべきであるとした審決の判断に誤りはない。」(下線は、当審にて付加)


(2)本件第3補正事項2について

本件第3補正事項2が、特許法第17条の2第4項第1号に規定された「請求項の削除」に該当しないことは明らかである。

また、本件第3補正事項2は、
「該監視装置から受信した該症状の情報に対応した対処法の情報が該データベースに登録されていると判断された場合には、該対処法の情報を該監視装置に送信」するという処理の後処理として、
「該対処法の情報を該監視装置に送信したか否かに関する情報の報告を、該コンピュータのディスプレイに表示させ且つ保守担当者のメールアドレス宛に電子メールを送信して行ない」という処理を追加するものであるから、
特許法第17条の2第4項第2号に規定された「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」に該当しない。

更に、本件第3補正事項2が、
・特許法第17条の2第4項第3号に規定された「誤記の訂正」、
・特許法第17条の2第4項第4号に規定された「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)、
に該当しないことは明らかである。

つまり、本件第3補正事項2は、特許法第17条の2第4項各号のいずれの事項を目的とするものでもなく、同条同項の規定に違反する。


(3)本件第3補正事項3について

本件第3補正事項3が、特許法第17条の2第4項第1号に規定された「請求項の削除」に該当しないことは明らかである。

また、本件第3補正後の特許請求の範囲の請求項7乃至8が直接的又は間接的に引用する請求項1の記載全体を参酌すると、請求項7乃至8の「保守システム」が「遠隔保守」に関するものであることは自明であることを鑑みれば、
本件第3補正前の特許請求の範囲の請求項8乃至9の「遠隔保守システム」から「遠隔」という限定を解除して、本件第3補正後の特許請求の範囲の請求項7乃至8の「保守システム」とすることは、
特許請求の範囲の『拡張』には該当しないものの、特許請求の範囲の『減縮』にも該当しないのであるから、
本件第3補正事項3は、特許法第17条の2第4項第2号に規定された「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」に該当しない。

更に、「遠隔保守システム」という記載に誤記や明瞭でない記載は存在しないことは明らかであるから、本件第3補正事項3は、
・特許法第17条の2第4項第3号に規定された「誤記の訂正」、
・特許法第17条の2第4項第4号に規定された「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)、
に該当しない。

つまり、本件第3補正事項3は、特許法第17条の2第4項各号のいずれの事項を目的とするものでもなく、同条同項の規定に違反する。



3.むすび

したがって、本件第3補正事項1、本件第3補正事項2、及び本件第3補正事項3を含む本件第3補正は、特許法第17条の2第4項各号の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。




第3 平成19年6月25日付けの手続補正

本件第3補正は上記のとおり却下され、平成19年8月29日付けの手続補正は既に却下されているので、次に、平成19年6月25日付けの手続補正(以下、「本件第1補正」という。)が、平成21年9月25日付けの拒絶理由通知書にて通知した拒絶の理由、即ち、特許法第17条の2第3項に違反するか否かについて検討する。


1.補正内容

本件第1補正は、特許請求の範囲の補正を含むものであって、特許請求の範囲の請求項1を、

「 【請求項1】
産業用機器を保守するための管理装置であって、
該産業用機器を識別する情報と、該産業用機器で発生し得るトラブルの症状の情報と、該症状に対する対処法の情報とが関連付けて登録されたデータベースを有し、
該産業用機器の稼動状態を監視する監視装置とインターネットを介して通信し、
該監視装置から受信した該産業用機器のトラブルの症状の情報が該データベースに登録されているか否かを判断し、
該監視装置から受信した該症状の情報が該データベースに登録されていると判断された場合には、該監視装置から受信した該症状の情報に対応した対処法の情報が該データベースに登録されているか否かを判断し、
該監視装置から受信した該症状の情報が該データベースに登録されていないと判断された場合および該監視装置から受信した該症状の情報に対応した対処法の情報が該データベースに登録されていないと判断された場合には、前記管理装置にLANを介して接続された、該データベースにアクセス可能なコンピュータに該監視装置から受信した該症状の情報を送信し、
該コンピュータの操作により入力された情報に基づき、該監視装置から受信した該症状の情報に対応した対処法の情報を該データベースに登録する、
ことを特徴とする管理装置。」

に変更する補正を含むものである。

つまり、本件第1補正は、
本件補正前の特許請求の請求項1の一部を
「該監視装置から受信した該症状の情報が該データベースに登録されていないと判断された場合および該監視装置から受信した該症状の情報に対応した対処法の情報が該データベースに登録されていないと判断された場合には、前記管理装置にLANを介して接続された、該データベースにアクセス可能なコンピュータに該監視装置から受信した該症状の情報を送信し、
該コンピュータの操作により入力された情報に基づき、該監視装置から受信した該症状の情報に対応した対処法の情報を該データベースに登録する」
と変更する補正(以下、「本件第1補正事項」という)を含むものである。


なお、審判請求人は、本件第1補正事項に関して、平成19年6月25日付けの意見書において、
「2.補正
本書と同日提出の手続補正書により本願の特許請求の範囲を補正いたしました。補正の根拠は、以下のとおりです。
(1)請求項1
・・・(中略)・・・
「該監視装置から受信した該症状の情報が該データベースに登録されていないと判断された場合および該監視装置から受信した該症状の情報に対応した対処法の情報が該データベースに登録されていないと判断された場合には、前記管理装置にLANを介して接続された、該データベースにアクセス可能なコンピュータに該監視装置から受信した該症状の情報を送信し」については、当初明細書における段落0027乃至0030、および図3(ステップS304、S306およびS308)において例示されています。
「該コンピュータの操作により入力された情報に基づき、該監視装置から受信した該症状の情報に対応した対処法の情報を該データベースに登録する」については、当初明細書における段落0036乃至0038、および図4(ステップS408)において例示されています。」
と主張している。



2.本件第1補正について

(1)
本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「本願当初明細書等」という。)には、「監視装置から受信した症状の情報を送信」に関しては、

「同一の症状がDBに登録済?」(ステップS304)及び「対処法がDBに登録済?」(ステップS306)における分岐結果に関係なく、「担当者に報告」(ステップS308)にたどり着くこと(【図3】を参照)、

及び、

「【0025】
先ず、ホストコンピュータ108は、トラブルの報告(ステータス情報の通知)があるか否かを監視し(ステップS302)、報告があった場合には、その報告に係るステータス情報を取得する(ステップS303)。そして、ホストコンピュータ108は、このステータス情報に基づいて、各工場の産業用機器の保守を管理するためのトラブルデータベース(DB)を参照し、当該報告に係る産業用機器に関して、同一の症状が過去に発生したことがあるか否か、すなわち、同一の症状がトラブルデータベース(後述の501)に登録されているか否かを調査する(ステップS304)。
【0026】
その結果、登録されている場合(ステップS304において“yes”)には、更に、その症状に対する対処法がトラブルデータベースに登録されているか否かを判断(ステップS306)し、登録されている場合には、その登録された対処法に関する応答情報(例えば、対処法を示すコード情報やメッセージ、対処用のプログラムやデータ等)を、トラブルの報告に係る工場のホストコンピュータ107にインターネット105を介して通知する(ステップS307)。
【0027】
応答情報の通知を受けた工場側のホストコンピュータ107は、その応答情報に基づいて、可能な場合には、自動で該当する産業用機器を正常な状態に復帰させ、それが不可能な場合には、例えば、ディスプレイ等に当該産業用機器のオペレータに対するメッセージを出力する。
【0028】
次いで、ホストコンピュータ108は、ベンダ101側の担当者に対して、トラブル発生の事実、トラブルの内容(ステータス情報)、対処法(応答情報)の通知の有無、現在の状態その他の関連する情報を報告する。この報告は、例えば、コンピュータ110のディスプレイに表示すると共に、ベンダ担当者のメールアドレス宛に、ホストコンピュータ108から自動的に報告の電子メールを送信して行なう。
【0029】
ここで、ステップS304において、当該トラブルに係る症状と同一の症状がトラブルデータベースに登録されていないと判断した場合には、当該症状をトラブルデータベースに新規に登録した後にステップS308を実行する。
【0030】
オペレータへの報告(ステップS308)が終ると、ホストコンピュータ108は、トラブルデータベースを更新する(ステップS309)。この更新により、例えば、対処法(応答情報)の送信の有無や、トラブルの報告を受けた時間等がトラブルデータベースに登録される。」

が記載されているのみである。

したがって、本願当初明細書等には、
「該監視装置から受信した該症状の情報が該データベースに登録されていないと判断された場合および該監視装置から受信した該症状の情報に対応した対処法の情報が該データベースに登録されていないと判断されたか否かに関わらず、・・・(中略)・・・情報を送信」することは開示されているが、
本件第1補正事項のような、
「該監視装置から受信した該症状の情報が該データベースに登録されていないと判断された場合および該監視装置から受信した該症状の情報に対応した対処法の情報が該データベースに登録されていないと判断された場合には、・・・(中略)・・・情報を送信」することは開示されていない。


(2)
本願当初明細書等には、

「【0028】
次いで、ホストコンピュータ108は、ベンダ101側の担当者に対して、トラブル発生の事実、トラブルの内容(ステータス情報)、対処法(応答情報)の通知の有無、現在の状態その他の関連する情報を報告する。この報告は、例えば、コンピュータ110のディスプレイに表示すると共に、ベンダ担当者のメールアドレス宛に、ホストコンピュータ108から自動的に報告の電子メールを送信して行なう。
【0029】
・・・(中略)・・・
【0030】
オペレータへの報告(ステップS308)が終ると、ホストコンピュータ108は、トラブルデータベースを更新する(ステップS309)。この更新により、例えば、対処法(応答情報)の送信の有無や、トラブルの報告を受けた時間等がトラブルデータベースに登録される。
【0031】
図4は、ステップS308で報告を受けた保守部門の担当者が取り得る措置の流れの一例を示す図である。・・・」

が記載されていることから、情報が送信されるコンピュータの条件が、ベンダ側の「オペレータ」のコンピュータであること、又はベンダ側の「保守部門の担当者」のコンピュータであることは開示されているが、
報告が送信されるコンピュータの条件が「該管理装置にLANを介して接続された、該データベースにアクセス可能なコンピュータ」であることとは開示されていない。

したがって、本願当初明細書等には、本件第1補正事項のような、
「前記管理装置にLANを介して接続された、該データベースにアクセス可能なコンピュータに該監視装置から受信した該症状の情報を送信」することは開示されていない。


なお、審判請求人は、平成21年11月18日付け意見書において、
「なお、拒絶理由通知書における
『情報が送信されるコンピュータの条件が、ベンダ側の「オペレータ」のコンピュータであること、又はベンダ側の「保守部門の担当者」のコンピュータであることは開示されているが、
報告が送信されるコンピュータの条件が「該管理装置にLANを介して接続された、該データベースにアクセス可能なコンピュータ」であることとは開示されていない。』
との御認定は、誤りです。なぜならば、ベンダ側の「オペレータ」のコンピュータ又はベンダ側の「保守部門の担当者」のコンピュータは、段落0017において「コンピュータ110」として例示されており、当該コンピュータ110がLAN109を介してホストコンピュータ108(管理装置、当初明細書における段落0015参照)に接続されていることは、当初明細書における段落0037に例示され、また、当該コンピュータ110を用いてトラブルデータベースにアクセスできることは、当初明細書における段落0039・0040に例示されています。したがって、「該対処法の情報を該監視装置に送信したか否かに関する情報の報告を、該コンピュータのディスプレイに表示させ且つ保守担当者のメールアドレス宛に電子メールを送信して行ない、」におけるコンピュータが「コンピュータからブラウザソフトを用い且つLANを介してアクセス可能なデータベース」におけるコンピュータであることは、当初明細書に開示されています。」
と主張している。

しかしながら、本願当初明細書等の段落【0039】乃至【0040】に記載されている事項は、
ホストコンピュータ108に接続されたコンピュータ110のブラウザを用いて、監視装置から収集された報告に基づいて作成されたデータ等が格納されているトラブルデータベースにアクセスすることに関するものであって、
報告が送信されるコンピュータの条件に関するものではないので、審判請求人の主張は採用しない。


(3)
本願当初明細書等には、

「【0020】
各産業用機器106は、ホストコンピュータ107からの要求に応じて、トラブルの発生の有無をホストコンピュータ107に通知し(ステップS203に対応)、更にそのトラブルの内容を特定して、その特定した内容を示すステータス情報(例えば、トラブルの内容を示すエラーコード)をホストコンピュータ107に通知する機能を有する(ステップS204に対応)。
【0021】
ステップS205において、ホストコンピュータ107がベンダ101側に通知するステータス情報には、例えば、トラブルが発生した産業用機器の機種、シリアルナンバー、エラーコード、トラブルの発生した時間等が含まれる。このエラーコードとトラブルの内容との対応関係は、例えば、インターネット105を介してベンダ101側のホストコンピュータ108から随時更新することができる。」

及び、

「【0025】
先ず、ホストコンピュータ108は、トラブルの報告(ステータス情報の通知)があるか否かを監視し(ステップS302)、報告があった場合には、その報告に係るステータス情報を取得する(ステップS303)。そして、ホストコンピュータ108は、このステータス情報に基づいて、各工場の産業用機器の保守を管理するためのトラブルデータベース(DB)を参照し、当該報告に係る産業用機器に関して、同一の症状が過去に発生したことがあるか否か、すなわち、同一の症状がトラブルデータベース(後述の501)に登録されているか否かを調査する(ステップS304)。
【0026】
・・・(中略)・・・
【0028】
次いで、ホストコンピュータ108は、ベンダ101側の担当者に対して、トラブル発生の事実、トラブルの内容(ステータス情報)、対処法(応答情報)の通知の有無、現在の状態その他の関連する情報を報告する。この報告は、例えば、コンピュータ110のディスプレイに表示すると共に、ベンダ担当者のメールアドレス宛に、ホストコンピュータ108から自動的に報告の電子メールを送信して行なう。」

が記載されていることから、「該監視装置から受信した症状の情報」(すなわち、「トラブルの発生の有無」及び「トラブルの内容(ステータス情報)」)はホストコンピュータが「受信」する情報である。
一方、ホストコンピュータが「送信」する情報については、「該監視装置から受信した症状の情報」に対する「報告」(すなわち、「トラブル発生の事実、トラブルの内容(ステータス情報)、対処法(応答情報)の通知の有無、現在の状態その他の関連する情報」)が記載されているのみである。

したがって、本願当初明細書等には、本件第1補正事項のような、
「該監視装置から受信した該症状の情報を送信」することは開示されていない。


(4)
したがって、本件第1補正事項は、本願当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入したものであるから、特許法第17条の2第3項の規定に違反する。



3.むすび

以上のとおり、本件第1補正事項を含む本件第1補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-02 
結審通知日 2009-12-08 
審決日 2009-12-21 
出願番号 特願2005-329162(P2005-329162)
審決分類 P 1 8・ 55- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山下 達也  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 和田 財太
小曳 満昭
発明の名称 遠隔保守のための管理装置、および遠隔保守システム  
代理人 内尾 裕一  
代理人 西山 恵三  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ