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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M |
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管理番号 | 1211681 |
審判番号 | 不服2007-29792 |
総通号数 | 124 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-04-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-11-01 |
確定日 | 2010-02-12 |
事件の表示 | 特願2002-186848「携帯電話端末」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月29日出願公開、特開2004- 32442〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成14年6月26日の出願であって、平成19年9月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成19年11月1日に審判請求がなされるとともに、平成19年11月28日付けで手続補正がなされたものであって、 当審における前置審査において、平成20年1月22日付けで最後の拒絶理由の通知がなされ、これに対し平成20年3月26日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされたものである。 なお、平成21年7月31日付けで当審より審尋がなされ、これに対し平成21年10月5日に回答書が提出された。 第2.補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年3月26日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本願発明と補正後の発明 上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成19年11月28日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、 「撮像手段を備えた携帯端末において、 カメラモードを選択する選択手段と、着信報知用スピーカとを有し、 前記選択手段によってカメラモードを選択したことが検出された場合、前記着信報知用スピーカから所定の報知音を出力する制御手段を備えたことを特徴とする携帯端末。」 という発明(以下、「本願発明」という。)を、 「撮像手段を備えた携帯電話端末において、 カメラモードを選択する選択手段と、 受話スピーカと、 該受話スピーカに比べて出力レベルが大きく、着信を受けたときに当該着信をユーザに報知する着信報知用スピーカとを有し、 前記選択手段によってカメラモードを選択したことが検出された場合、前記着信をユーザに報知する着信報知用スピーカから所定の報知音を出力する制御手段を備えたことを特徴とする携帯電話端末。」 という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。 2.補正の適否 (1)新規事項の有無、補正の目的要件 上記補正は、本願発明を願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、 「携帯端末」に「電話」を付加して「携帯電話端末」と限定し、 「携帯端末」の構成に「受話スピーカ」を付加して限定し、 「着信報知用スピーカ」を「該受話スピーカに比べて出力レベルが大きく、着信を受けたときに当該着信をユーザに報知する着信報知用スピーカ」、「着信をユーザに報知する着信報知用スピーカ」と限定することにより、 特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び平成18年法律第55号改正法の附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。 (2)独立特許要件 上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。 [補正後の発明] 上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。 [引用発明および周知技術] A.原審および前置審査の拒絶理由に引用された、特開2001-186381号公報(以下、「引用例」という。)には、「電子機器」として図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【請求項3】 選択可能な複数の処理モードを備えた電子機器において、 前記複数の処理モードの中から所望の処理モードを設定するモード設定手段と、 音を発する発音手段と、 を備え、 前記発音手段は、前記モード設定手段によって前記処理モードが新たな処理モードに設定された時に、設定された新たな処理モードに応じた音を発することを特徴とする電子機器。 【請求項4】 前記電子機器は、少なくとも撮影モード及び再生モードを有するカメラであることを特徴とする請求項1、2又は3の電子機器。 【請求項5】 前記電子機器は、少なくとも録音モード及び再生モードを有する録音再生装置であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1の電子機器。」(2頁1欄) ロ.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、電子機器に係り、特に複数の処理モードと発音手段を備えた電子機器に関する。 【0002】 【従来の技術】従来から、簡単なスイッチ操作でベル音の設定を変更することができる電話器が特開平6-205084号の公報に示されている。 【0003】また、従来から起動時に起動音を発する電子カメラが知られている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の特開平6-205084号の公報に示されている電話器は、予め着信音の設定を変更して、複数台設置してある電話器のどれが着信中であるかを判別するためのものである。 【0005】また、従来の電子カメラの起動音も電子カメラの電源が投入されて起動したことを通知するためのものであるため、電子カメラの起動音から動作モードを識別することはできなかった。したがって利用者は、起動後に表示を見て起動したモードを確認するか、設定してあるモードをスイッチの情報から読み取るといった確認作業が必要であった。 【0006】本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、電子機器の起動時において起動するモード毎に異なる音を発するようにして、利用者が容易に処理モードを認識することが可能な電子機器を提供することを目的としている。」(2頁1?2欄) ハ.「【0011】 【発明の実施の形態】以下添付図面に従って、本発明に係る電子機器の好ましい実施の形態について詳説する。 【0012】図1は、電子機器である電子カメラを正面から見た外観図である。 【0013】同図によれば、選択可能な複数の処理モードを有する電子カメラ10には、撮影を行う光学系12と、被写体に光を照射する発光部14と、撮影を指示するレリーズボタン16と、記録する音を入力する集音手段18と、撮影時に利用者が電子カメラ10の保持を容易にするためのグリップ20とが備えられている。 【0014】図2は、電子カメラを背面から見た外観図である。 【0015】同図によれば電子カメラ10の背面には、電子カメラ10における撮影や再生等の処理モードを切り換えて設定するモード設定手段22と、被写体を撮影した画像を表示する表示手段24と、電子カメラ10の各種設定を行う十字キー、確定スイッチ等を含む設定手段26と、音声又は警告音を発する発音手段28とが設けられている。 【0016】図3は、電子カメラを上面から見た外観図である。 【0017】同図によれば、電子カメラ10の上面には電子カメラ10における処理の起動と停止とを指示する電源スイッチ30と、レリーズボタン16とが設けられている。 【0018】図4は、電子カメラ10のブロック図である。 【0019】同図によれば、電子カメラ10には、光学系12によって結像した被写体像を光電変換して電気信号に変換するCCD等の撮像素子32と、・・・(中略)・・・電子カメラ10全体を統括制御するとともに画像データの変換転送処理を行う制御手段44と、・・・(中略)・・・発音手段28から出力するためのデジタル音声データを音声信号に変換するD/A変換器48とがBUSラインを介して接続されている。 【0020】D/A変換器48で変換された音声信号は、スピーカーアンプ50にて発音手段28に印加するのに適した電力に増幅される。」(2頁2欄?3頁3欄) ニ.「【0025】電子カメラ10の利用者は、電子カメラ10の電源スイッチ30を「ON」側に一旦操作して電子カメラ10の処理機能を起動する。このとき電子カメラ10の電源スイッチ30は制御手段44に対して電源スイッチ30が投入されたことを通知する。すると制御手段44は起動のプログラムに従って起動処理を開始する。 【0026】モード設定手段22の設定モードが「撮影」のモードである場合には、制御手段44はD/A変換器48に対して撮影モードで起動されたことを意味する音声データを出力し、表示手段24にも撮影モードであることを示す表示を指示するとともに、各処理モジュールに対して撮影の準備を開始する指令を出力する。例えば光学系12に対してはレンズシャッターを開けて沈胴状態から撮影状態に繰り出し、図示しない発光制御手段に対してはフラッシュ発光用電力源の充電回路を起動してメインコンデンサへの充電を開始し、ドライバ54や撮像素子32、画像処理手段36に対して電力の供給を開始するとともに撮像信号処理を開始する。 【0027】この状態では撮影待機状態となり、撮像素子32上に結像して得た画像信号は画像処理手段36に送出され、増幅やノイズの低減処理が実施されて該画像データは一時期内部メモリ38に記憶される。制御手段44は、前記内部メモリ38に記憶されている画像データを逐次表示手段24に転送し、スルー画像を表示している。 【0028】D/A変換器48は、撮影モードを示すデジタル音声データを時間軸上の音声信号に変換してスピーカーアンプ50に出力する。すると発音手段28からは撮影モードであることを示す音(F minor9 、Eb major7、Bb major7、Ab minor )が出力される。このときに出力される音は、音声メッセージであってもよいし、一定周波数の音であってもよいし、トレモロ、ビブラートがかかっていてもよいし、他の和音の組み合わせを時系列で変化させて現在の処理モードを識別できるように出力してもよい。」(3頁4欄?4頁5欄) ホ.「【0033】電子カメラ10が他の機器と画像データの受け渡しを行う際には、前記記録手段42を挿抜可能な記憶媒体としておき、電子カメラ10にて画像データを該記録媒体に記録したのちに電子カメラ10から抜き取り、他の機器に装着して画像データを読み出す。また、電子カメラ10が通信手段を備えている場合には通信モードに設定して他の機器と接続し、画像データの送受信を行ってもよい。他の機器に対して無線通信手段にて画像データを送信する場合には、電子カメラ10が他の機器と通信を確立した後、電子カメラ10の設定手段26に設けられている送信ボタンを押すと、制御手段44は指定された画像データを順次記録手段42から読み出して所定のデータ形式に変換したのちに、図示しない通信手段を介して他の機器に送信する処理を実行する。 【0034】また、電子カメラ10の起動が指示された時に、モード設定手段22の設定モードが「再生」のモードである場合には、制御手段44はD/A変換器48に対して再生モードで起動されたことを意味する音声データを出力し、表示手段24にも再生モードであることを示す表示を指示するとともに各処理モジュールに対して再生の準備を開始する指令を出力する。例えば表示手段24に対しては表示手段24のLCD制御回路に電源を供給してLCDのバックライトを点灯するとともに表示回路を起動して表示を開始する。なお、D/A変換器48はデジタル音声データを時間軸上の音声信号に変換してスピーカーアンプ50に出力する。すると発音手段28からは再生モードであることを示す音(例えば、Eb minor7、B minor、F minor、Gb )が出力される。 【0035】なお、上記の説明では電子カメラ10の電源スイッチ30が操作されて電子カメラ10の処理が開始された場合に、撮影モードと再生モードとにおいて異なった音を発する例で説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、セットアップモード、通信モード、処理の終了等の各モードにおいてそれぞれ異なった音を発するように構成してもよい。 【0036】また、モードに対応した音を発するタイミングは、電子カメラ10の処理が開始された時に限らず、処理モードの設定が切り換えられた時点で各処理モードに対応した音を発音手段28から発して、利用者に現在の処理モードを音で通知してもよい。更に、電子カメラ10が撮影の条件に応じて自動で撮影のプログラムを変更する際や、発光部14からフラッシュ光を発光するなどのように撮影のモードを自動で変更した際にも、各処理モードに対応した音を発音手段から発して利用者に通知してもよい。」(4頁5?6欄) ヘ.「【0037】また、上記の説明では選択可能な複数の処理モードを有する電子機器の例として電子カメラを用いた例で説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、録音再生装置、携帯電話、プリンター、パソコン、電子手帳、PDA、電子辞書、電卓、等の電子機器に適用しても本発明の目的を達成することが可能である。 【0038】特に、撮影、再生を切り替えるデジタルカメラにおいて夜等の暗い場所で操作する場合、利用者は、撮影、撮正モードを容易に認識することができる。」(4頁6欄) 上記引用例の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、 まず、上記引用例記載の「電子機器」は、上記ハ.【0013】、【0019】、図1、図4等にあるように、例えば、「撮影を行う光学系12」および「光学系12によって結像した被写体像を光電変換して電気信号に変換するCCD等の撮像素子32」を備えた「電子カメラ10」であって、これら「光学系12」および「撮像素子32」は、全体として『撮像手段』ということができるのは技術常識である。 また、上記ハ.【0015】、図2には、「電子カメラ10の背面には、電子カメラ10における撮影や再生等の処理モードを切り換えて設定するモード設定手段22」が設けられているともあり、 さらに、上記ハ.【0019】末尾、【0020】、図4には、「デジタル音声データ」を「音声信号」として出力する「発音手段28」が記載されている。 そして、上記ニ.ホ.には、「モード設定手段22の設定モードが「撮影」のモードである場合」(上記ニ.【0026】)、「モード設定手段22の設定モードが「再生」のモードである場合」(上記ホ.【0034】)における「制御手段44」の動作について記載があり、これらの場合に「制御手段44」は『前記発音手段28から撮影又は再生のモードであることを示す音を出力する』ことが記載されている。 したがって、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。 (引用発明) 「撮像手段を備えた電子カメラにおいて、 撮影又は再生のモードを設定するモード設定手段22と、 発音手段28とを有し、 前記モード設定手段22によって撮影又は再生のモードを選択したことが検出された場合、前記発音手段28から撮影又は再生のモードであることを示す音を出力する制御手段44を備えたことを特徴とする電子カメラ。」 B.例えば、特開2002-58003号公報(以下、「周知例1」という。)には、「携帯通信装置」として図面とともに以下の記載がある。 ト.「【請求項1】 撮像手段と、 上記撮像手段で撮像された画像データを送信することができる通信手段と、 報知手段と、 固定的又は可変的な周期で、上記撮像手段による撮像動作の実行を制御するとともに、上記報知手段で、上記撮像手段での撮像動作の実行タイミングの報知が行われるように制御する制御手段と、 を備えたことを特徴とする携帯通信装置。」(2頁1欄) チ.「【0022】図3に携帯電話装置の内部構成を示す。制御部11は、CPU11a及び外部インターフェース11b等を含むマイクロコンピュータからなり、携帯電話装置1の動作、即ち音声通話動作やパケット通信動作、テレビ電話機能としての画像の取込、送信、受信、表示出力、さらには各種情報の記憶、管理、ユーザー操作、表示動作等についての全体的な制御を行う部位とされる。」(4頁6欄) リ.「【0026】ベースバンド処理部15は、受信時にはRF部14でベースバンド信号まで復調された信号についての所定の信号処理を行う。音声通話時においてベースバンド処理部15でデコードされた信号は、音声部16に供給され通話スピーカ部5から出力される。またマイク部6から入力された信号は音声部16の処理を介してベースバンド処理部15に供給されて所定の信号処理が施され、さらにRF部14で上記処理されて送信される。データ配信サービス等にかかるコンテンツ等のデータ通信時においては、受信されたデータはベースバンド処理部15を介して制御部11に供給され、メモリ部12に記憶されたり、表示部4にデータ内容が表示される。またテキストデータ、画像データなどの何らかのデータ送信を行う場合は、例えばメモリ部12等に記憶されたデータが制御部11によってベースバンド処理部15に供給され、RF部14の送信系で処理され、アンテナ2から送信出力される。 【0027】リンガ音源部17は、制御部11の制御に基づいて電子音、電子音メロディ、又はメッセージ音声としての信号を発生させる部位であり、その音声信号をリンガスピーカ部18から出力させる。制御部11は、携帯電話としての着信があった場合に、リンガ音源部17からリンガ音(着信音)としての音声信号を出力させ、ユーザーに着信を通知する。」(4頁6欄?5頁7欄) ヌ.「【0030】表示部4は図1で説明したように例えば液晶パネルなどで形成され、制御部11の制御に基づいて各種の情報をユーザーに提示する。 表示部4では、例えば発呼する電話番号、電話番号が登録された相手側ユーザー名、電波状況、動作モード、各種アイコン、入力情報、その他、携帯電話装置1としてユーザーに提示すべき所要の内容の表示動作を行うが、特に本例ではテレビ電話機能を有することから、通話中に、通信相手側から送信されてきた画像データの表示も行われるように構成されている。」(5頁7欄) ル.「【0033】また、この携帯電話装置1がテレビ電話機能を実行するときは、カメラ3によって被写体の撮像を行う。例えばCCD撮像素子を配したカメラ3によって撮像された画像データは、画像入力回路20によって取り込まれ、画像エンコーダ21によって例えばMPEG方式の圧縮エンコードが行われる。圧縮エンコードされた画像データは1フレーム単位でデータを格納するバッファメモリ22に取り込まれる。そして制御部11の制御によってバッファメモリ22から画像データが読み出されていき、ベースバンド処理部15,RF部14出の処理を介して、通信相手側に送信される。」(5頁8欄) C.さらに、例えば、特開2000-253111号公報(以下、「周知例2」という。)には、「無線携帯端末」として図面とともに以下の記載がある。 ヲ.「【請求項1】 無線送受信手段と画像表示手段とを有する無線携帯端末において、 画像撮像手段と、 前記画像撮像手段により撮像された画像を記憶する画像記憶手段と、 着呼時に前記無線送受信手段により受信される情報から相手先情報を取得する相手先情報取得手段と、 前記相手先情報取得手段により取得された相手先情報に対応する画像を前記画像記憶手段から読み出して前記画像表示手段に表示させる着信表示制御手段とを具備することを特徴とする無線携帯端末。」(2頁1欄) ワ.「【0024】図1は、この発明の実施形態に係る無線携帯端末の構成を示す図である。図1に示すように、この無線携帯端末は、アンテナ1、送受信切換部2、送信部3、変調部4、符号部5、マイクロフォン6、受信部7、復調部8、復号部9、スピーカ10、制御部11、サウンダ12、キー入力部13、表示部14、メモリ15、画像処理部16、カメラ17および画像メモリ18を具備して構成される。そして、この無線携帯端末と図4に示した従来の無線携帯端末との違いは、この無線携帯端末が、画像処理部16、カメラ17および画像メモリ18を新たに具備した点にある。 【0025】この無線携帯端末は、前述したCLI機能を備えるとともに、テレビTV電話機としての利用が可能であり、復調部8で復調された画像(含む音声)信号が画像処理部16で復号される。この場合の画像処理は、MPEG-4方式を適用するのが好ましい。画像処理部16で復号された画像は、制御部11を介して表示部14(この場合はカラーLCD)に表示される。 【0026】一方、カメラ17で撮影された画像は、画像処理部16で符号化され変調部4に入力されて送信される。そして、音声信号も画像処理部16で復号されてスピーカ8から出力され、また、マイク5から入力された音声は画像処理部16で符号化されて画像と一緒に変調部4に供給される。」(4頁6欄) カ.「【0027】次に、着信時に画像を表示するための準備について説明する。 【0028】ここでは、携行容易な無線携帯端末であるがゆえに行なえる方法について説明する。具体的には、画像として画像メモリ18に記憶したい相手の顔などを直接カメラ17で撮影する方法であり、この画像をキー入力部13の操作で画像メモリ18に記憶する。これを記憶したい相手毎に行ない、電話番号や氏名、後述する背景指定および効果指定などと対応づける。これにより、たとえば従来の有線回線により接続されるテレビ電話機のCLI機能とは異なり、相手が画像処理機能を持たない一般の携帯電話を持っている場合でも、その撮影した画像による着信時表示を可能とする。 【0029】次に、着呼時の表示に係わる動作原理を図2のフローチャートを参照しながら説明する。 【0030】着呼があると(ステップS1)、復調部8の出力を制御部11が読み取り、発呼側の電話番号が含まれているかどうかを確認する(ステップS2)。発呼側の電話番号が含まれていない場合(ステップS2のNo)、制御部11は、着信音をサウンダ12に出力させる(ステップS3)。一方、電話番号が含まれていれば(ステップS2のYes)、メモリ15に予め記憶された電話番号との一致を確認し(ステップS4)、一致するものがなければ(ステップS4のNo)、着信音をサウンダ12に出力させるとともに、受信した電話番号を表示部14に表示させる(ステップS5)。また、一致するものがあれば(ステップS4のYes)、制御部11は、これに対応する画像が画像メモリ18に記憶されているかを確認し(ステップS6)、なければ(ステップS6のNo)、着信音をサウンダ12に出力させるとともに、メモリ15に記憶された氏名を表示部14に表示 させる(ステップS7)。 【0031】対応する画像があった場合(ステップS6のYes)、制御部11は、後述する背景の指定があるかを確認する(ステップS8)。なければ(ステップS8のNo)、着信音をサウンダ12に出力させるとともに、対応する画像を表示部14に表示させる(ステップS9)。なお、この画像は必ずしも一つの電話番号と一対一で対応づけられるものではなく、一つの画像を複数の電話番号と一対多で対応づけることも許可する。これにより、たとえば複数の電話番号をもつ同一発信者については常に同じ画像を表示させたり、家族の画像を用いてその家族全員の携帯電話の番号に一つの画像を使うことが可能となる。この場合、必要なメモリが少なくて済む。」(4頁6欄?5頁7欄) 上記周知例1ないし周知例2によれば、これら周知例には、 「撮像手段」を備えた「携帯電話端末」(上記ト.「携帯通信装置」、上記チ.「携帯電話装置1」、上記ヲ.「無線携帯端末」)であって、 「受話スピーカ」(上記リ.周知例1図3の「通話スピーカ部5」、上記ワ.周知例2図1の「スピーカ10」)と、 「着信報知用スピーカ」(上記リ.【0027】、周知例1図3の「リンガスピーカ部18」、上記ワ.周知例2図1の「サウンダ12」)とを有し、 「前記着信をユーザに報知する着信報知用スピーカから所定の報知音を出力する制御手段」(上記リ.【0027】、周知例1図3の「制御部11」、上記ワ.周知例2図1の「制御部11」)を備えたものが記載されている。 したがって、以下の技術は周知技術である。 (周知技術) 「撮像手段を備えた携帯電話端末において、 受話スピーカと、 着信を受けたときに当該着信をユーザに報知する着信報知用スピーカとを有し、 前記着信をユーザに報知する着信報知用スピーカから所定の報知音を出力する制御手段を備えたことを特徴とする携帯電話端末。」 [対比] 補正後の発明と引用発明を対比する。 まず、引用発明の「電子カメラ」と補正後の発明の「携帯電話端末」は、共に「電子技術」を用いた「機器」であるから、「電子機器」の点で一致する。 また、引用発明の「モード設定手段22」における「設定」とは、モードを『選択』すると言えることであるから、引用発明の「設定」「モード設定手段22」は、補正後の発明の「選択」「選択手段」にそれぞれ相当する。 また、引用発明の「発音手段28」は、引用例の「スピーカーアンプ50」により駆動されるものであるから、補正後の発明の「スピーカ」に相当する。 そして、引用発明の「撮影又は再生のモードであることを示す音」は、モードをユーザに報知する音であるから、補正後の発明の「所定の報知音」と一致する。 したがって、両者は以下の点で一致ないし相違する。 (一致点) 「撮像手段を備えた電子機器において、 モードを選択する選択手段と、 スピーカとを有し、 前記選択手段によってモードを選択したことが検出された場合、前記スピーカから所定の報知音を出力する制御手段を備えたことを特徴とする電子機器。」 (相違点) a)「電子機器」が、補正後の発明は「携帯電話端末」であるのに対し、引用発明は「電子カメラ」である点。 b)選択される「モード」に関し、補正後の発明は「カメラモード」を選択しているのに対し、引用発明は「撮影又は再生モード」を選択している点。 c)「スピーカ」に関し、補正後の発明は「受話スピーカと、該受話スピーカに比べて出力レベルが大きく、着信を受けたときに当該着信をユーザに報知する着信報知用スピーカ」とを有しているのに対し、引用発明は「発音手段28」である点。 d)「所定の報知音」の出力制御に関し、補正後の発明は「前記着信をユーザに報知する着信報知用スピーカ」から出力するよう制御されるのに対し、引用発明はそのように構成されていない点。 [判断] まず、相違点a)の「電子機器」について検討する。 前記[引用発明および周知技術]において、周知技術として認定したように、 「撮像手段を備えた携帯電話端末において、受話スピーカと、着信を受けたときに当該着信をユーザに報知する着信報知用スピーカとを有し、前記着信をユーザに報知する着信報知用スピーカから所定の報知音を出力する制御手段を備えたことを特徴とする携帯電話端末。」は、本願出願前周知のものである。(その他にも、必要とあれば例えば、特開2002-33799号公報図3等を参照されたい。) 上記周知技術を引用発明に適用することを妨げる理由はなく、引用発明の「電子カメラ」を「携帯電話端末」とすることは当業者が適宜になし得ることであって、相違点a)は格別のものではない。 つぎに、相違点c)の「スピーカ」(「受話スピーカ」、「着信報知用スピーカ」)について検討する。 上記相違点a)の検討で述べたように、引用発明に周知技術を適用して「携帯電話端末」となした場合に、周知技術の「スピーカ」は「受話スピーカ」と「着信報知用スピーカ」からなるものであるから、引用発明の「発音手段」もこれら2つの「スピーカ」を有するものとなり、相違点c)の2つの「スピーカ」についての相違部分は一致する。 そして、携帯電話端末において「受話音量」「着信音量」等の「スピーカ」の出力レベルは、必要に応じて調節される周知の適宜な設計的事項であって(必要とあれば、例えば、特開平7-231276号公報【0002】、特開平8-237153号公報【0002】、特開昭63-54025号公報2頁右上欄、特開平10-256976号公報【0002】等参照)、ある程度離れた距離に報知を行う必要のある「着信報知用スピーカ」を、基本的に耳を近付けて使用する「受話スピーカに比べて出力レベルを大きく」するのも格別のことではない。 したがって、「スピーカ」を、「受話スピーカと、該受話スピーカに比べて出力レベルが大きく、着信を受けたときに当該着信をユーザに報知する着信報知用スピーカ」とした相違点c)も格別のことではない。。 相違点d)の「所定の報知音」の出力制御について検討する。 上記相違点a)、c)の検討で述べたように、引用発明に周知技術を適用して「携帯電話端末」となした場合に、 2つある「スピーカ」(「受話スピーカ」と、「着信報知用スピーカ」)のどちらから「所定の報知音」の出力制御を行うかは、当業者であれば適宜に選択可能なことに過ぎないが、「報知音」の出力を行うのであるから、同様の報知音である着信報知を行う「前記着信をユーザに報知する着信報知用スピーカ」から出力することは、当業者であれば格別の困難性がなく自然に行うことである。 したがって、相違点d)も格別のことではない。 最後に、相違点b)の「モード」(「カメラモード」と「撮影又は再生モード」)について検討する。 一般に「電子機器」が「選択可能な複数の処理モード」を備えることは、引用例の上記イ.にもあるように周知のことであって、どのモードにおいて報知音を出力するかも、当業者であれば必要に応じ適宜に選択可能なことであるが、 特にカメラ撮影を行う場合(カメラモード)において報知を行う必要性があることも、通常のカメラ撮影においても広く知られたことである。 一方、前記周知技術のような「撮像手段を備えた携帯電話端末」において、モードとして「カメラモード」、「通信モード」等があることは、これも周知の技術常識(必要とあれば例えば、特開2000-217015号公報【0008】、特開2000-156812号公報【0008】、特開2001-197457号公報図3?5、特開2001-16313号公報【0004】等参照)であるから、引用発明に前記周知技術を適用した場合、報知音の出力を行うモードとして、引用発明の「撮影又は再生モード」に代えて「カメラモード」を選択することになるのも、これも当然のことである。 したがって、相違点b)の構成を採用することは当業者が容易に想到し得ることである。 そして、補正後の発明が奏する効果も引用発明および周知技術から容易に予測出来る範囲内のものである。 また、当審の審尋に対する回答書を参酌しても、上記認定を覆すに足りるものは見あたらない。 よって、補正後の発明は、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.結語 以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正法の附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する同法第126条第5項の規定に適合していない。 したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成20年3月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。 2.引用発明および周知技術 引用発明および周知技術は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の[引用発明および周知技術]で認定したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は上記補正後の発明から本件補正に係る限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成に補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-11-30 |
結審通知日 | 2009-12-01 |
審決日 | 2009-12-21 |
出願番号 | 特願2002-186848(P2002-186848) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
WZ
(H04M)
P 1 8・ 121- WZ (H04M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西脇 博志 |
特許庁審判長 |
石井 研一 |
特許庁審判官 |
松元 伸次 萩原 義則 |
発明の名称 | 携帯電話端末 |