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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E06B
管理番号 1211688
審判番号 不服2007-33643  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-13 
確定日 2010-02-12 
事件の表示 特願2005-169279「建築用部材」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月21日出願公開、特開2006-342581〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成17年6月9日に特許出願されたもので,平成19年11月7日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年12月13日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,平成20年1月11日付けで手続補正がなされたものである。
その後,当審において,平成21年8月3日付けで拒絶理由が通知され,それに対して,同年10月1日に手続補正がなされたものである。

【2】本願発明
本願の請求項1に係る発明は,平成21年10月1日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも、表面から側面にかけて熱可塑性樹脂化粧シートを有する実加工を施した樹脂基材と嵌合部を有する金属基材に一体化し、前記金属基材(6)の表面と、前記樹脂基材上の熱可塑性樹脂化粧シート(5)表面が同一面に表出しており、且つ、
前記樹脂基材が熱可塑性樹脂単体、または熱可塑性樹脂と木質形充填材の混合物からなる
ことを特徴とする建築用部材。」(以下,「本願発明」という。)

【3】引用刊行物
1.刊行物1
当審の拒絶理由に引用され,本願の出願前に頒布された,実願平3-38580号(実開平5-42598号)のCD-ROM(以下,「刊行物1」という。)には,図面とともに次のことが記載されている。
(1a)「なお、本考案の門柱においては、第2図に示す実施例の如きであっても良いものである。すなわち、この実施例の門柱は、断面略正方形の筒体からなるアルミニウム製の金属製柱体3の隣合う両側面1、1の両端に、略上下全長に亙って対向する断面略L字状の嵌合部2を設け、かつ一方の側面1の中央付近に略上下全長に亙って断面略T字状の嵌合部2を設け、三対の対向する嵌合部2、2間の上方より化粧板4を嵌挿してなるものである。また、化粧板4としては、アクリル形樹脂からなるものであり、両側端面に断面略U字状の嵌合用の溝部9を有し、かつ側端面の表面側の凸片10により嵌合部2を覆い隠すことができるものである。」(段落【0011】)
(1b)「【考案の効果】
上述の如く、本考案の門柱においては、金属製柱体3の表面に容易に任意の化粧板4を取り付けることができるため、様々な材料の門扉6に対応し、意匠性に優れた外観イメージを提供することができるものである。」(段落【0013】)

上記記載事項(1a),(1b)及び図面の記載からみて,刊行物1には,以下の発明が記載されているものと認められる。
「両側端面に断面略U字状の嵌合用の溝部9を有するアクリル系の樹脂からなる化粧板4を嵌合部2を有するアルミニウム製の金属製柱体3に取付けて,前記金属製柱体3の表面に化粧板4の表面を表出させてなる門柱。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

2.刊行物2
当審の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された,実公昭50-21793号公報(以下,「刊行物2」という。)には,図面とともに次のことが記載されている。
(2a)「以下、この考案の一実施例を第1図及び第2図に従い説明する。図中1はアルミニウムなどからなる断面コ字形の杆状素体2を四角枠状に連結して組み立てた金属製サッシ本体で、この本体1の室内側となる面la全体を硬質塩化ビニール発泡体などの発泡性硬質プラスチツク3にて被覆してある。上記本体1に対する発泡性硬質プラスチツク3の取付構造を説明する。上記本体1を構成する素体2の一側壁2aの外側面にそれぞれの長さ方向全体に亙り且つ幅方向に互いに間隔を存して一対の蟻溝よりなる嵌合部4,4が設けてある。
また発泡性硬質プラスチツク3の内側面には、上記本体の嵌合部4,4と対応する断面を有しこれら嵌合部4,4に着脱可能に嵌合する突起よりなる嵌合部5,5が一体的に突設してある。そして、上記素体2の嵌合部4,4内に、その端部側から発泡性硬質プラスチツク3の嵌合部5,5をスライドさせながら嵌合することによつて、発泡性硬質プラスチツク3が、本体1に着脱可能に取り付けてある。以上の如くして、この考案のサッシ全体が構成してある。」(2欄16?36行)。

上記記載事項(2a)及び図面の記載から見て,刊行物2には,以下の技術が記載されているものと認められる。
「金属製のサッシ本体の面を,発泡性硬質プラスチック3にて被覆するに際して,発泡性硬質プラスチック3の内側面に、上記サッシ本体の嵌合部4,4と対応する断面を有しこれら嵌合部4,4に着脱可能に嵌合する突起よりなる嵌合部5,5を一体的に突設させ,サッシ本体の嵌合部4,4内に発泡性硬質プラスチック3の嵌合部5,5を嵌合することによって,発泡性硬質プラスチック3をサッシ本体に着脱自在に取り付ける技術」(以下,「刊行物2記載の技術」という。)

3.刊行物3
当審の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された,特開2003-20869号公報(以下,「刊行物3」という。」)には,図面とともに次のことが記載されている。
(3a)「額縁本体11と嵌合装飾材16とは、例えば接着剤、釘又は鋲止め、熱融着等によって、分離不能に固着されていても良い。しかし、これらを例えばそれらの構成材料自体の弾性力若しくは発条又はゴム等の弾性力の利用や、繋合構造、実矧ぎ又はだぼ継ぎ、螺子止め等の適宜の手段によって、着脱可能に嵌着した構造としておくと、化粧額縁10の框組建具への装着後であっても、表面意匠の異なる嵌合装飾材16を複数種類用意しておくことによって、他の室内内装や調度品等との意匠的な調和を図るコーディネートや、引越し又は気分転換のための模様替え等にも、容易に対応することができる利点がある。」(段落【0018】)
(3b)「本発明において、額縁本体11や嵌合装飾材16の材質は特に限定されるものではなく、従来より係る額縁の材料として使用されている任意の材質を用いることが可能である。一般的には、天然木材又は木質繊維材(軟質繊維板、中密度繊維板等)等の木質基材や、熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)等が使用される。熱可塑性樹脂には必要に応じて、発泡、着色、有機系又は無機系の充填材の充填などを施したものを使用することもできる。」(段落【0019】)
(3c)「・・・熱可塑性樹脂の場合には、製造しようとする額縁本体11や嵌合装飾材16の断面形状に相当する内面形状の吐出口を有する押出金型を使用して、加熱溶融状態の熱可塑性樹脂を所定の断面形状に押出して冷却固化させる、異型押出成形法によるのが一般的である。・・・」(段落【0020】)
(3d)「なお、本発明の化粧額縁10の用途には、例えば鋸や鉋、錐、鑿等による切削性、釘打ち性や螺子止め性等、従来最も一般的な建築材料である木材と同等の加工性が求められる場合が多い。係る性能をポリプロピレン系樹脂等の熱可塑性樹脂に付与するためには、該樹脂に木質系充填剤を添加することが最も望ましい。木質系充填剤を添加すると、成形体の切断面が木質様の外観を呈することにより、切断面が露出した状態で使用されても外観上の違和感が少ないことや、樹脂単体と比較して熱伝導率が低下することから、木材に近似した暖かみのある触感が得られること等の利点もある。」(段落【0028】)
(3e)「そこで、額縁本体11の化粧面14及び/又は嵌合装飾材16の表面には、化粧シート17、18の積層等の手段により、互いに異なる意匠を人工的に付与しておくことが望ましい。こうすることによって、額縁本体11の化粧面14の意匠と、嵌合装飾材16の表面の意匠との組合せによる意匠表現の幅が拡がると共に、所望の意匠の製品を安定した意匠品質で大量生産することも容易となる。
上記化粧シート17、18の構成材料や層構成等には特に制限はなく、…例えばポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、共重合ポリエステル樹脂、非晶質ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂からなる着色又は無着色のシートに、公知の方法で絵柄を施してなる、熱可塑性樹脂系の化粧シート等を使用することができる。」(段落【0032】?【0033】)

以上記載事項(3a)?(3e)及び図面の記載から見て,刊行物3には,以下の技術が記載されているものと認められる。
「熱可塑性樹脂や熱可塑性樹脂と木質系充填剤との混合物からなる嵌合装飾材16の表面に熱可塑性樹脂系の化粧シート18を積層して化粧材を形成する技術。」(以下,「刊行物3記載の技術」という。)

【4】対比・判断
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると,刊行物1記載の発明の「嵌合部2を有するアルミニウム製の金属製柱体3」及び「門柱」が本願発明の「嵌合部を有する金属基材」及び「建築用部材」にそれぞれ相当している。
そして,刊行物1記載の発明の「両側端面に断面略U字状の嵌合用の溝部9を有するアクリル系の樹脂からなる化粧板4」と,本願発明1の「表面から側面にかけて熱可塑性樹脂化粧シートを有する実加工を施した樹脂基材」とは、「(嵌合部を有する金属基材に対する)取付加工を施した樹脂製の装飾材」である点で共通している。
したがって,両者は,以下の点で一致している。
「嵌合部を有する金属基材に対する取付加工を施した樹脂製の装飾材と嵌合部を有する金属基材を一体化し,該樹脂製の装飾材の表面を表出させた建築用部材。」

そして,以下の点で相違している。
(相違点1)
「金属基材に対する取付加工を施した樹脂製の装飾材」が,本願発明は,少なくとも,表面から側面にかけて熱可塑性化粧シートを有する,実加工を施した,熱可塑性樹脂単体,または熱可塑性樹脂と木質形充填材の混合物からなる樹脂基材,であるのに対して,刊行物1記載の発明は,嵌合用の溝部9を有するアクリル系の樹脂からなる化粧板4,であって,表面若しくは側面に熱可塑性化粧シートを有するものではない点。
(相違点2)
本願発明は,「金属基材の表面と,装飾材(樹脂基材上の熱可塑性樹脂化粧シート)の表面が同一面に表出して」いるのに対して,刊行物1記載の発明は,金属基材の表面と装飾材の表面とが同一面に表出するものではない点。

上記各相違点について検討する。
(相違点1について)
本願発明は,建築用部材の化粧部材を簡単に交換できるようにするために化粧部材に実加工を施して,嵌合部を有する金属基材に対して一体化できるようにしたものであるが,例えば,刊行物2,3記載の技術として開示されているように,基材に対して装飾部材を交換可能とするために,装飾部材に実加工を施して,基材の嵌合部に嵌合させることにより装飾部材を基材に取り付けることは,公知の技術である。
そして,上記公知の技術を,刊行物1記載の発明の,金属基材の嵌合部と樹脂製の装飾材の取付加工の技術として採用することは,当業者が容易になし得たことである。
また,刊行物1記載の発明の化粧板が熱可塑性樹脂の一種であるアクリル系の樹脂からなるように,化粧材を熱可塑性樹脂で形成することは周知であり(刊行物3には,装飾部材を熱可塑性樹脂と木質形充填材の混合物から形成することが開示されている。),さらに,化粧材として,熱可塑性樹脂からなる基材(嵌合装飾材16)の表面に熱可塑性樹脂化粧シート(化粧シート18)を積層してなる装飾材も,刊行物3記載の技術として開示されているように,公知の技術である。
そして,上記公知の技術を,刊行物1記載の発明の「樹脂製の装飾材」に採用することは,当業者が容易になし得たことである。
(相違点2について)
金属製部材の表面と装飾材の表面とをどのように表出させるかは,当業者が適宜設定できる設計事項であって,例えば,刊行物1の【図3】に記載の実施例においては,円柱の外表面ではあるが,金属製部材の表面と装飾材の表面とを連続して表出させることが記載されている。
してみると,刊行物1記載の発明において,門柱のある1面において,金属製部材の表面と化粧板の表面とがともに表出するように,化粧板を取り付けることは,当業者が必要に応じて適宜なし得たことである。

請求人は,平成21年10月1日付け意見書において,上記相違点のほかに,本願発明は,樹脂基材が表面から側面にかけて熱可塑性樹脂化粧シートにより実加工されている点で刊行物1乃至3に記載されたものと相違する旨の主張をしているが,本願発明が,「樹脂基材が表面から側面にかけて熱可塑性樹脂化粧シートにより実加工されている」構成を備えるものとは認められず,上記主張は,請求項1の記載に基づくものではないから,上記請求人の主張は採用できない。
なお,実加工の箇所に至るまで化粧シートを設けることは,例えば,特開2003-35029号公報,特開2003-49530号公報及び実願昭55-13679号(実開昭56-116543号)のマイクロフィルムに記載されているように周知の技術である。

さらに,本願発明の効果が,刊行物1記載の発明及び刊行物2,3記載の技術に比べて格別の効果を奏するとも認められない。

したがって,本願発明は,刊行物1記載の発明及び刊行物2,3記載の技術に基づいて当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

【5】むすび
以上のとおり,本願発明は,特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-30 
結審通知日 2009-12-01 
審決日 2009-12-21 
出願番号 特願2005-169279(P2005-169279)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E06B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 綾子  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 山本 忠博
宮崎 恭
発明の名称 建築用部材  

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