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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1211760
審判番号 不服2007-25948  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-20 
確定日 2010-02-08 
事件の表示 特願2003-304689「通信制御装置、通信システム及び通信制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月24日出願公開、特開2005- 79647〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は,平成15年8月28日の出願であって,平成19年8月17日付けで補正の却下の決定とともに拒絶査定がなされ,これに対し,平成19年9月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,平成19年10月16日付けで手続補正がなされ,平成21年8月5日付けで審尋がなされ,平成21年10月6日に回答書が提出されたものである。

第2 平成19年10月16日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年10月16日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1) 補正の内容
上記手続補正(以下,「本件補正」という。)は,補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「屋外通信制御装置からのアクセスが可能でない場合には,周期的に前記屋外通信制御装置にアクセスして,前記屋外通信制御装置が保持する,携帯端末から送信された遠隔制御命令を取得して実行する第1の命令取得実行手段と,
前記屋外通信制御装置からのアクセスが可能な場合には,前記屋外通信制御装置からの命令実行依頼を受信する命令実行依頼受信手段と,
前記命令実行依頼が受信されると,前記命令実行依頼を行った前記屋外通信制御装置が保持する,前記携帯端末から送信された遠隔制御命令を取得して実行する第2の命令取得実行手段と,を備えることを特徴とする通信制御装置。」という発明を,
「屋外通信制御装置から直接操作要求を発行するためのアクセスが可能でない場合には,周期的に前記屋外通信制御装置にアクセスして,前記屋外通信制御装置が保持する,携帯端末から送信された遠隔制御命令を取得して実行する第1の命令取得実行手段と,
前記屋外通信制御装置から直接操作要求を発行するためのアクセスが可能な場合には,前記屋外通信制御装置からの命令実行依頼を受信する命令実行依頼受信手段と,
前記命令実行依頼が受信されると,前記命令実行依頼を行った前記屋外通信制御装置が保持する,前記携帯端末から送信された遠隔制御命令を取得して実行する第2の命令取得実行手段と,を備えることを特徴とする通信制御装置。」という発明に補正することを含むものである。

(2) 補正の適否
上記補正は,補正前の請求項1の「屋外通信制御装置からのアクセスが可能でない場合」を「屋外通信制御装置から直接操作要求を発行するためのアクセスが可能でない場合」とし,「前記屋外通信制御装置からのアクセスが可能な場合」を「前記屋外通信制御装置から直接操作要求を発行するためのアクセスが可能な場合」とするものである。
しかし,補正事項である「直接操作要求を発行するためのアクセス」については,当初明細書等に何ら示されていないし(屋外通信装置は,「直接操作要求を発行」又は「操作要求を発行」していないし,「直接操作要求を発行するためのアクセス」又は「操作要求を発行するためのアクセス」も行っていない。),また,他にその補正事項に関しての根拠となる記載も当初明細書等にはない。
したがって,上記補正事項は,当初明細書等に記載されたものでなく,当初明細書等の記載から自明な事項であるともいえないから,本件補正は,当初明細書等の記載事項の範囲内においてしたものでない。
この点について,請求人は,審尋に対する回答の中で,操作要求は明細書中の「遠隔制御要求」に相当する旨の主張をしているが,本願の発明の詳細な説明の段落【0039】及び【0042】によれば,遠隔制御要求は,携帯端末が屋外通信制御装置に対して発行しており,開示の根拠ということはできない。

(3) むすび
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するので,特許法第159条第1項の規定により読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
平成19年10月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成19年1月19日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「屋外通信制御装置からのアクセスが可能でない場合には,周期的に前記屋外通信制御装置にアクセスして,前記屋外通信制御装置が保持する,携帯端末から送信された遠隔制御命令を取得して実行する第1の命令取得実行手段と,
前記屋外通信制御装置からのアクセスが可能な場合には,前記屋外通信制御装置からの命令実行依頼を受信する命令実行依頼受信手段と,
前記命令実行依頼が受信されると,前記命令実行依頼を行った前記屋外通信制御装置が保持する,前記携帯端末から送信された遠隔制御命令を取得して実行する第2の命令取得実行手段と,を備えることを特徴とする通信制御装置。」

(1)引用例
原審の拒絶理由に引用された特開2001-344183号公報(以下,「引用例」という。)には,「遠隔制御システム,遠隔制御装置,遠隔制御方法および遠隔制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」として,図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【請求項8】 被制御機器を制御するための制御情報を含む制御情報メールであって,携帯端末から送信された制御情報メールを外部ネットワークを介して受信するとともにメールを送信するメール送受信手段と,
制御情報に基づいて被制御機器を制御する制御手段と,
を備えたことを特徴とする遠隔制御装置。
【請求項9】 前記携帯端末は,少なくとも前記制御情報の一部を構成する制御文字を含む制御情報メールを前記外部ネットワークを介して前記メール送受信手段宛に送信し,前記制御手段は,受信した前記制御情報メールに含まれる前記制御文字を変換テーブルに基づいて前記制御情報に変換し,該制御情報に基づいて,前記被制御機器を制御することを特徴とする請求項8に記載の遠隔制御装置。
【請求項10】 前記携帯端末は,少なくとも前記制御情報に対応する番号を含む制御情報メールを前記外部ネットワークを介して前記メール送受信手段宛に送信し,前記制御手段は,受信した前記制御情報メールに含まれる前記番号を変換テーブルに基づいて前記制御情報に変換し,該制御情報に基づいて,前記被制御機器を制御することを特徴とする請求項8に記載の遠隔制御装置。」(2頁2欄4?24行)
ロ.「【0052】図1に戻り,移動通信網300は,携帯端末100に関する伝送交換を行うためのネットワークであり,公衆網700に接続されている。この移動通信網300は,移動通信事業者400側に設置された移動通信網接続用サーバ410およびファイアウオール420を介してインターネット500に接続されている。移動通信網接続用サーバ410は,移動通信網300とインターネット500との間で各種データをやりとりするためのサーバである。ファイアウオール420は,インターネット500からの不正アクセスを制限し,高いセキュリティを維持するためのものである。
【0053】移動通信事業者側メールサーバ440は,LAN430を介して移動通信網接続用サーバ410およびファイアウオール420に接続されており,携帯端末100宛の電子メールをメールスプール450に格納させる機能や,携帯端末100から送信された電子メールを他のメールサーバへ転送する機能を備えている。この移動通信事業者側メールサーバ440は,SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)やPOP3(Post Office Protocol version 3)に従って動作する。
【0054】プロバイダ側メールサーバ610は,プロバイダ600側に設けられ,LAN630を介してインターネット500に接続されている。このプロバイダ側メールサーバ610は,例えば,パーソナルコンピュータ820宛の電子メールをメールスプール620に格納させる機能や,パーソナルコンピュータ820から送信された電子メールを他のメールサーバへ転送する機能を備えている。このプロバイダ側メールサーバ610も,移動通信事業者側メールサーバ440と同様にして,SMTPやPOP3に従って動作する。公衆網700は,インターネット500および移動通信網300に接続されている。
【0055】ユーザ宅800において,通信装置810は,パーソナルコンピュータ820(電話機830)と公衆網700との間に介挿されており,ターミナルアダプタである。この通信装置810は,パーソナルコンピュータ820によるデータ通信と,電話機830による音声通信を実現するための装置である。パーソナルコンピュータ820は,携帯端末100からの電子メールを用いた遠隔制御により,RS232Cケーブル850を介して空気調和機840を制御する。この実施の形態1では,パーソナルコンピュータ820は,ダイアルアップ接続により,インターネット500に接続される。空気調和機840は,ユーザ宅800内に設けられており,冷房機能,暖房機能や除湿機能を備えている。」(6頁10欄47行?7頁11欄41行)

ハ.「【0073】これにより,ステップSA18では,プロバイダ側メールサーバ610は,パーソナルコンピュータ820宛の制御情報メールML_(2) (図5(b)参照)をメールスプール620から読み出した後,これをパーソナルコンピュータ820宛に転送する。この制御情報メールML_(2) を受信すると,ステップSA19では,通信装置810は,パーソナルコンピュータ820へ制御情報メールML_(2) を転送する。これにより,パーソナルコンピュータ820の制御部822は,制御情報メールML_(2) を解析し,制御情報(運転:入,モード:暖房,設定温度:25℃,風量:強)を認識する。
【0074】ステップSA20では,パーソナルコンピュータ820の制御部822は,通信部826およびRS232Cケーブル850を介して,空気調和機840へ制御情報(運転:入,モード:暖房,設定温度:25℃,風量:強)を送信する。これにより,空気調和機840の制御部841は,上記制御情報に基づいて,各部を制御することにより,モードを冷房から暖房へ,設定温度を26℃から25℃へ,風量を弱から強へ設定変更する。
【0075】この設定変更が完了すると,ステップSA21では,空気調和機840の制御部841は,設定完了情報(運転:入,モード:暖房,設定温度:25℃,風量:強)を通信部842,RS232Cケーブル850を介して,パーソナルコンピュータ820へ通知する。
【0076】これらの設定完了情報を受信すると,パーソナルコンピュータ820の制御部822は,メール自動作成機能により,設定完了情報に基づいて図5(c)に示した設定完了メールML_(3) を自動作成する。この設定完了メールML_(3) のヘッダには,送信者としてaaaaaa(当該ユーザ),宛先としてbbb@ccc(携帯端末100),件名として「設定完了」が記述されている。また,設定完了メールML_(3) の本文には,上述した設定完了情報(運転:入,・・・,風量:強)が記述されている。
【0077】ステップSA22では,パーソナルコンピュータ820は,携帯端末100宛の設定完了メールML_(3) を送信する。この設定完了メールML_(3) を受信すると,ステップSA23では,通信装置810は,設定完了メールML_(3) を公衆網700を介してインターネット500へ送信する。この設定完了メールML_(3) は,ファイアウオール420およびLAN430を介して,移動通信事業者側メールサーバ440に受信された後,メールスプール450に一時的に格納される。
【0078】ステップSA24では,移動通信事業者側メールサーバ440は,設定完了メールML_(3) の宛先を確認し,これを携帯端末100宛に転送する。これにより,メールスプール450に一時的に格納されていた設定完了メールML_(3) は,LAN430,移動通信事業者側メールサーバ440,移動通信網300および無線基地局200を介して,携帯端末100に受信される。携帯端末100のLCD108(図2参照)には,図5(c)に示した設定完了メールML_(3) (画面G3 :図4(c)参照)が表示される。外出先のユーザは,上記設定完了メールML_(3) を確認することにより,設定変更が完了したことを認識する。」(9頁15欄24行?16欄30行)

ニ.「【0111】(実施の形態2)さて,前述した実施の形態1では,携帯端末100から電子メールを送信後,ユーザ宅宛に電話を掛けることをトリガとして,パーソナルコンピュータ820がプロバイダ側メールサーバ610へアクセスし電子メールを受信する例について説明したが,プロバイダ600で提供している電子メールの着信自動通知をトリガとして電子メールを受信するようにしてもよい。以下では,この場合を実施の形態2として説明する。
【0112】この実施の形態2では,図1に示したプロバイダ側メールサーバ610は,パーソナルコンピュータ820宛の電子メールを受信した場合に,パーソナルコンピュータ820へ自動的に着信通知を出す着信自動通知機能を備えている。
【0113】つぎに,上述した実施の形態2の動作について図11に示したシーケンス図を参照しつつ説明する。以下では,図1に示した携帯端末100を用いて,外出先から空気調和機840を遠隔制御する場合について説明する。図1において,外出先のユーザは,携帯端末100のテンキー群102等(図2参照)を用いて,パーソナルコンピュータ820宛の電子メールとして,実施の形態1で説明したモニタコマンドメール(図示略)を作成する。
【0114】この状態で,図11に示したステップSB1では,外出先のユーザは,携帯端末100を操作することにより,上述したモニタコマンドメールをパーソナルコンピュータ820宛に送信する。これにより,モニタコマンドメールは,無線基地局200,移動通信網300および移動通信網接続用サーバ410,ファイアウオール420,インターネット500,LAN630を介して,プロバイダ側メールサーバ610へ送信され,プロバイダ側メールサーバ610によりメールスプール620に一時的に格納される。
【0115】これにより,ステップSB2では,プロバイダ側メールサーバ610は,通信装置810へモニタコマンドメールが着信した旨を表す着信通知を出す。この着信通知を受け取ると,ステップSB3では,通信装置810は,パーソナルコンピュータ820へ上記着信通知を転送する。
【0116】ステップSB4では,パーソナルコンピュータ820の制御部822は,ダイアルアップ接続により,プロバイダ600へ電話を掛け,メール転送要求を通信装置810へ出す。ステップSB5では,通信装置810は,プロバイダ側メールサーバ610へメール転送要求を出す。以後,ステップSB6?ステップSB12では,図7に示したステップSA6?ステップSA12と同様の動作が行われる。
【0117】そして,モニタ情報メールML_(1) (図5(a)参照)が携帯端末100に受信されると,携帯端末100のLCD108(図2参照)には,図5(a)に示したモニタ情報メールML_(1) が表示される。外出先のユーザは,上記モニタ情報メールML_(1) を確認することにより,現在の空気調和機840の運転状態,設定を把握する。
【0118】ここで,空気調和機840の設定状態を変更する場合,外出先のユーザは,実施の形態1の場合と同様にして,携帯端末100を操作することにより,図5(a)に示したモニタ情報メールML_(1) を編集して,図5(b)に示した制御情報メールML2 を作成する。ステップSB13では,外出先のユーザは,携帯端末100のメール返信機能により,上記制御情報メールML_(2) をパーソナルコンピュータ820宛に送信する。
【0119】これにより,制御情報メールML_(2) は,無線基地局200,移動通信網300および移動通信網接続用サーバ410,ファイアウオール420,インターネット500,LAN630を介して,プロバイダ側メールサーバ610へ送信され,プロバイダ側メールサーバ610によりメールスプール620に一時的に格納される。
【0120】これにより,ステップSB14では,プロバイダ側メールサーバ610は,通信装置810へ制御情報メールML_(2) が着信した旨を表す着信通知を出す。この着信通知を受け取ると,ステップSB15では,通信装置810は,パーソナルコンピュータ820へ上記着信通知を転送する。
【0121】ステップSB16では,パーソナルコンピュータ820の制御部822は,ダイアルアップ接続により,プロバイダ600へ電話を掛け,メール転送要求を通信装置810へ出す。ステップSB17では,通信装置810は,プロバイダ側メールサーバ610へメール転送要求を出す。以後,ステップSB18?ステップSB24では,図7に示したステップSA18?ステップSA24と同様の動作が行われる。
【0122】以上説明したように,実施の形態2によれば,プロバイダ側メールサーバ610の着信自動通知機能を利用することにより,電子メールを送信後,ユーザが電話を掛ける必要がなくなるため,ユーザの利便性が向上する。」(12頁22欄7行?13頁23欄44行)
ホ.「【0123】(実施の形態3)さて,前述した実施の形態1では,携帯端末100から電子メールを送信後,ユーザ宅宛に電話を掛けることをトリガとして,パーソナルコンピュータ820がプロバイダ側メールサーバ610へアクセスし電子メールを受信する例について説明したが,パーソナルコンピュータ820の自動発信機能により,所定時間間隔毎にプロバイダ側メールサーバ610にアクセスし,電子メールを受信するようにしてもよい。
【0124】以下では,この場合を実施の形態3として説明する。この実施の形態3では,図1に示したパーソナルコンピュータ820(制御部822)は,所定時間間隔毎にプロバイダ側メールサーバ610に対してダイアルアップ接続し,メール受信を確認する自動発信機能を備えている。
【0125】つぎに,上述した実施の形態3の動作について図12に示したシーケンス図を参照しつつ説明する。以下では,図1に示した携帯端末100を用いて,外出先から空気調和機840を遠隔制御する場合について説明する。図1において,外出先のユーザは,携帯端末100のテンキー群102等(図2参照)を用いて,パーソナルコンピュータ820宛の電子メールとして,実施の形態1で説明したモニタコマンドメール(図示略)を作成する。
【0126】この状態で,図12に示したステップSC1では,外出先のユーザは,携帯端末100を操作することにより,上述したモニタコマンドメールをパーソナルコンピュータ820宛に送信する。これにより,モニタコマンドメールは,無線基地局200,移動通信網300および移動通信網接続用サーバ410,ファイアウオール420,インターネット500,LAN630を介して,プロバイダ側メールサーバ610へ送信され,プロバイダ側メールサーバ610によりメールスプール620に一時的に格納される。
【0127】ここで,ステップSC2では,パーソナルコンピュータ820は,所定時間間隔をおいて,ダイアルアップ接続により,プロバイダ側メールサーバ610に対して自動発信する。ステップSC3では,通信装置810は,プロバイダ側メールサーバ610に対して自動発信する。この場合,プロバイダ側メールサーバ610のメールスプール620には,モニタコマンドメールが格納されているため,ステップSC4では,プロバイダ側メールサーバ610は,通信装置810へ上記モニタコマンドメールを転送する。ステップSC5では,通信装置810は,モニタコマンドメールをパーソナルコンピュータ820へ転送する。以後,ステップSC6?ステップSC10では,図7に示したステップSA8?ステップSA12と同様の動作が行われる。
【0128】そして,ステップSC11では,外出先のユーザは,携帯端末100のメール返信機能により,制御情報メールML_(2) (図5(b)参照)をパーソナルコンピュータ820宛に送信する。これにより,制御情報メールML_(2) は,無線基地局200,移動通信網300および移動通信網接続用サーバ410,ファイアウオール420,インターネット500,LAN630を介して,プロバイダ側メールサーバ610へ送信され,プロバイダ側メールサーバ610によりメールスプール620に一時的に格納される。
【0129】ここで,ステップSC12では,パーソナルコンピュータ820は,所定時間間隔をおいて,ダイアルアップ接続により,プロバイダ側メールサーバ610に対して自動発信する。ステップSC13では,通信装置810は,プロバイダ側メールサーバ610に対して自動発信する。この場合,プロバイダ側メールサーバ610のメールスプール620には,制御情報メールML_(2) が格納されているため,ステップSC14では,プロバイダ側メールサーバ610は,通信装置810へ上記制御情報メールML_(2) を転送する。ステップSC15では,通信装置810は,制御情報メールML_(2) をパーソナルコンピュータ820へ転送する。以後,ステップSC16?ステップSC20では,図7に示したステップSA20?ステップSA24と同様の動作が行われる。
【0130】以上説明したように,実施の形態3によれば,パーソナルコンピュータ820の自動発信機能を利用することにより,電子メールを送信後,ユーザが電話を掛ける必要がなくなるため,ユーザの利便性が向上する。」(13頁23欄45行?14頁25欄22行)

したがって,上記イ.ロ.ハ.ニ.の摘記事項,及びこの分野の技術常識を考慮すれば,引用例には,以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が,さらに,上記イ.ロ.ハ.ホ.の摘記事項,及びこの分野の技術常識を考慮すれば,引用例には,以下の発明(以下,「引用発明2」という。)も開示されている。

(引用発明1)
「プロバイダ(600)からのアクセスが可能な場合には,前記プロバイダ(600)からの着信自動通知を受信する通信装置(810)と,
前記着信自動通知が受信されると,前記着信自動通知を行った前記プロバイダ(600)が格納する,携帯端末(100)から送信された遠隔制御の制御情報メールを取得して実行するパーソナルコンピュータ(820)と,を備える遠隔制御装置。」

(引用発明2)
「プロバイダ(600)からのアクセスが可能でない場合には,所定時間間隔毎に前記プロバイダ(600)にアクセスして,前記プロバイダ(600)が格納する,携帯端末(100)から送信された遠隔制御の制御情報メールを取得して実行するパーソナルコンピュータ(820)と,
を備える遠隔制御装置。」

(2)対比
本願発明と引用発明1を対比する。
引用発明1の「プロバイダ」は,屋外に設置され,通信制御装置を当然に備えているから,本願発明の「屋外通信制御装置」に相当する。
引用発明1の「着信自動通知」は,遠隔制御の制御情報メールが着信した旨を表す着信通知であり,制御情報メールに基づく命令実行を促すものであるから,本願発明の「命令実行依頼」に相当する。
引用発明1の「通信装置」は,プロバイダからの着信自動通知を受信する手段であるから,本願発明の「命令実行依頼受信手段」に相当する。
引用発明1の「遠隔制御の制御情報メール」は,非制御機器の設定状態を変更する遠隔制御の制御情報メールであるから,本願発明の「第2の遠隔制御命令」と一致する。
引用発明1の「パーソナルコンピュータ」は,遠隔制御の制御情報メールを取得して実行する手段であるから,本願発明の「第2の命令取得実行手段」に相当する。
引用発明1の「格納」は,それによって当然保持がなされる。
引用発明1の「遠隔制御装置」は,通信を行っているから,本願発明の「通信制御装置」に相当する。
したがって,両者は,以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「屋外通信制御装置からのアクセスが可能な場合には,前記屋外通信制御装置からの命令実行依頼を受信する命令実行依頼受信手段と,
前記命令実行依頼が受信されると,前記命令実行依頼を行った前記屋外通信制御装置が保持する,携帯端末から送信された遠隔制御命令を取得して実行する第2の命令取得実行手段と,を備えることを特徴とする通信制御装置。」

(相違点)
通信制御装置が,本願発明は「屋外通信制御装置からのアクセスが可能でない場合には,周期的に前記屋外通信制御装置にアクセスして,前記屋外通信制御装置が保持する,携帯端末から送信された遠隔制御命令を取得して実行する第1の命令取得実行手段と」を備えるのに対し,引用発明1は当該構成を備えていない。

(3)判断
相違点について検討する。
引用発明2の「所定時間間隔毎」は周期的と同義であり,引用発明2の「プロバイダ」は本願発明の「屋外通信制御装置」相当し,引用発明2の「遠隔制御の制御情報メール」は本願発明の「第1の遠隔制御命令」に相当し,引用発明2の「パーソナルコンピュータ」は本願発明の「第1の命令取得実行手段」に相当し,引用発明2の「格納」本願発明の「保持」に相当し,「遠隔制御装置」は本願発明の「通信制御装置」にそれぞれ相当する。したがって,引用発明2は「屋外通信制御装置からのアクセスが可能でない場合には,周期的に前記屋外通信制御装置にアクセスして,前記屋外通信制御装置が保持する,携帯端末から送信された遠隔制御命令を取得して実行する第1の命令取得実行手段と,を備えることを特徴とする通信制御装置。」であるといえる。
してみると,本願発明は,引用発明1に引用発明2を付加適用した程度のものにすぎず,格別な適用阻害事由もないから,当業者が容易に想到し得ることである。

そして,本願発明の作用効果も,引用発明1及び引用発明2から当業者が予測できる範囲のものである。

(4)むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明1及び引用発明2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-27 
結審通知日 2009-12-01 
審決日 2009-12-21 
出願番号 特願2003-304689(P2003-304689)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
P 1 8・ 561- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 羽岡 さやか  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 萩原 義則
松元 伸次
発明の名称 通信制御装置、通信システム及び通信制御方法  
代理人 堀口 浩  

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