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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1211762
審判番号 不服2007-29410  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-30 
確定日 2010-02-08 
事件の表示 平成 8年特許願第240583号「センサおよびセンサの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 5月16日出願公開、特開平 9-129898〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1.手続の経緯
本願は、平成8年9月11日(パリ条約による優先権主張1995年10月11日、ドイツ連邦共和国)の出願であって、平成18年12月18日付けで拒絶理由が通知され、平成19年6月22日に手続補正書が提出され、同年7月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月30日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日に手続補正書が提出され、その後当審において平成21年4月2日付けで審尋がなされ、同年6月17日に回答書が提出されたものである。


第2.平成19年10月30日に提出された手続補正書でした補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成19年10月30日に提出された手続補正書でした補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1?11を、補正後の特許請求の範囲の請求項1?10と補正するものであって、補正後の請求項1?10は以下のとおりである。

「【請求項1】 シリコン基板(10)と、ポリシリコン層(6)とを有するセンサであって、
前記ポリシリコン層(6)から可動素子が形成されており、該可動素子はアンカー領域(22)によりシリコン基板(10)に固定されている形式のセンサにおいて、
前記シリコン基板(10)と前記ポリシリコン層(6)との間に導電層(3)が設けられており、
該導電層は絶縁層(2)によって前記ポリシリコン層(6)の一部と結合されており、かつ前記絶縁層(2)によって前記ポリシリコン層(6)の前記一部に対して絶縁されており、
前記導電層(3)と前記シリコン基板(10)との間に第1の絶縁層(1)が設けられており、
前記導電層(3)と前記ポリシリコン層(6)との間の前記絶縁層は第2の絶縁層(2)として構成されており、
前記導電層(3)から導体路が形成され、
該導体路は前記可動素子と電気的に接触接続しており、
該可動素子は粘性質量(32)を有し、該粘性質量には可動電極(33)が懸架されており、
前記粘性質量(32)と前記可動電極(33)は加速度によって前記シリコン基板に対して平行に摺動し、
固定電極は第1の群(34)と第2の群(35)に分割されており、
該第1の群(34)と前記第2の群(35)は、前記シリコン基板に対して水平方向に配置されており、
前記可動電極(33)は、前記第1の群(34)に所属する固定電極と前記第2の群(35)に所属する固定電極との間に配置されている、ことを特徴とするセンサ。
【請求項2】 前記導電層(3)はポリシリコンからなる、請求項1記載のセンサ。
【請求項3】 前記可動素子はフレーム(21)により取り囲まれており、
前記導電層(3)から形成された前記導体路は接触領域(20)と接続されており、
該接触領域はフレームの外に配置されている、請求項1または2記載のセンサ。
【請求項4】 カバー(13)が前記フレーム(21)と結合されており、これにより前記可動素子は中空空間に封鎖され、
該中空空間は前記カバー(13)、前記フレーム(21)および前記基板(10)によって形成される、請求項3記載のセンサ。
【請求項5】 前記固定電極は前記導電層(3)から形成された前記導体路に接続されており、
前記固定電極(34、35)は接続構造体(25)に接続されており、
該接続構造体はポリシリコン層(6)から形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のセンサ。
【請求項6】 前記可動電極(33)と前記第1の群(34)の固定電極との間の間隔は、当該可動電極(33)と前記第2の群(35)の固定電極との間の間隔が拡大するときに縮小し、
2つの群の固定電極(34、35)は、前記導電層(3)から形成された前記導体路およびシリコン層(6)から形成された前記接続構造体(25)によって接続領域(20)に接続されており、
固定電極の前記第1の群(34)および前記第2の群(35)に対して発生する寄生抵抗と寄生容量は両群間でほぼ等しい大きさである、請求項5記載のセンサ。
【請求項7】 シリコン基板(10)に導電層(3)、第2の絶縁層(2)およびポロシリコン層(6)を被着し、
導電層(3)および第2の絶縁層(2)をポリシリコン層(6)のデポジットの前に形成し、
溝(9)をポリシリコン層(6)に設け、
前記溝はポリシリコン層(6)の上側から第2の絶縁層(2)まで達するようにし、
溝(9)を通ってエッチング媒体が第2の絶縁層(2)に導入されるようにする、ことを特徴とするセンサの製造方法。
【請求項8】 前記導電層(3)のデポジットの前に、第1の絶縁層(1)を基板(10)に形成する、請求項7記載の方法。
【請求項9】 前記第1の絶縁層(1)および前記第2の絶縁層(2)は酸化シリコンからなる、請求項8記載の方法。
【請求項10】 前記ポリシリコン層(6)はエピタキシャル炉でデポジットされる、請求項7から9までのいずれか1項記載の方法。」

2.補正事項の整理
本件補正による補正事項を整理すると、以下のとおりである。

・補正事項1
補正前の請求項1を、補正後の請求項1の、「シリコン基板(10)と、ポリシリコン層(6)とを有するセンサであって、 前記ポリシリコン層(6)から可動素子が形成されており、該可動素子はアンカー領域(22)によりシリコン基板(10)に固定されている形式のセンサにおいて、 前記シリコン基板(10)と前記ポリシリコン層(6)との間に導電層(3)が設けられており、 該導電層は絶縁層(2)によって前記ポリシリコン層(6)の一部と結合されており、かつ前記絶縁層(2)によって前記ポリシリコン層(6)の前記一部に対して絶縁されており、 前記導電層(3)と前記シリコン基板(10)との間に第1の絶縁層(1)が設けられており、 前記導電層(3)と前記ポリシリコン層(6)との間の前記絶縁層は第2の絶縁層(2)として構成されており、 前記導電層(3)から導体路が形成され、 該導体路は前記可動素子と電気的に接触接続しており、 該可動素子は粘性質量(32)を有し、該粘性質量には可動電極(33)が懸架されており、 前記粘性質量(32)と前記可動電極(33)は加速度によって前記シリコン基板に対して平行に摺動し、 固定電極は第1の群(34)と第2の群(35)に分割されており、 該第1の群(34)と前記第2の群(35)は、前記シリコン基板に対して水平方向に配置されており、 前記可動電極(33)は、前記第1の群(34)に所属する固定電極と前記第2の群(35)に所属する固定電極との間に配置されている、ことを特徴とするセンサ。」と補正すること。
・補正事項2
補正前の請求項2を、補正後の請求項2の、「前記導電層(3)はポリシリコンからなる、請求項1記載のセンサ。」と補正すること。
・補正事項3
補正前の請求項3を削除すること。
・補正事項4
補正前の請求項4を補正後の請求項3に繰上げ、「前記可動素子はフレーム(21)により取り囲まれており、 前記導電層(3)から形成された前記導体路は接触領域(20)と接続されており、 該接触領域はフレームの外に配置されている、請求項1または2記載のセンサ。」と補正すること。
・補正事項5
補正前の請求項5を補正後の請求項4に繰上げ、「カバー(13)が前記フレーム(21)と結合されており、これにより前記可動素子は中空空間に封鎖され、 該中空空間は前記カバー(13)、前記フレーム(21)および前記基板(10)によって形成される、請求項3記載のセンサ。」と補正すること。
・補正事項6
補正前の請求項6を補正後の請求項5に繰上げ、「前記固定電極は前記導電層(3)から形成された前記導体路に接続されており、 前記固定電極(34、35)は接続構造体(25)に接続されており、 該接続構造体はポリシリコン層(6)から形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のセンサ。」と補正すること。
・補正事項7
補正前の請求項7を補正後の請求項6に繰上げ、「前記可動電極(33)と前記第1の群(34)の固定電極との間の間隔は、当該可動電極(33)と前記第2の群(35)の固定電極との間の間隔が拡大するときに縮小し、 2つの群の固定電極(34、35)は、前記導電層(3)から形成された前記導体路およびシリコン層(6)から形成された前記接続構造体(25)によって接続領域(20)に接続されており、 固定電極の前記第1の群(34)および前記第2の群(35)に対して発生する寄生抵抗と寄生容量は両群間でほぼ等しい大きさである、請求項5記載のセンサ。」と補正すること。
・補正事項8
補正前の請求項8を補正後の請求項7に繰上げること。
・補正事項9
補正前の請求項9を補正後の請求項8に繰上げ、「前記導電層(3)のデポジットの前に、第1の絶縁層(1)を基板(10)に形成する、請求項7記載の方法。」と補正すること。
・補正事項10
補正前の請求項10を補正後の請求項9に繰上げ、「前記第1の絶縁層(1)および前記第2の絶縁層(2)は酸化シリコンからなる、請求項8記載の方法。」と補正すること。
・補正事項11
補正前の請求項11を補正後の請求項10に繰上げ、「前記ポリシリコン層(6)はエピタキシャル炉でデポジットされる、請求項7から9までのいずれか1項記載の方法。」と補正すること。

3.補正の目的の適否についての検討(1)
補正事項1?11のうち、補正事項1について検討する。

3-1.補正事項1の区分
補正事項1は、以下の補正事項1-1?補正事項1-4に区分できる。

・補正事項1-1
補正前の請求項1の「シリコン基板(10)とポリシリコン層(6)との間に導電層(3)が設けられており、」を、補正後の請求項1の「前記シリコン基板(10)と前記ポリシリコン層(6)との間に導電層(3)が設けられており、」と補正すること。
・補正事項1-2
補正前の請求項1の「該導電層は絶縁層(2)によってポリシリコン層(6)と部分的に結合されており、かつ該絶縁層(2)によってポリシリコン層(6)に対して部分的に絶縁されている、」を、補正後の請求項1の「該導電層は絶縁層(2)によって前記ポリシリコン層(6)の一部と結合されており、かつ前記絶縁層(2)によって前記ポリシリコン層(6)の前記一部に対して絶縁されており、」と補正すること。
・補正事項1-3
補正前の請求項1の「こと」を、補正後の請求項1の「前記導電層(3)と前記シリコン基板(10)との間に第1の絶縁層(1)が設けられており、 前記導電層(3)と前記ポリシリコン層(6)との間の前記絶縁層は第2の絶縁層(2)として構成されており、 前記導電層(3)から導体路が形成され、 該導体路は前記可動素子と電気的に接触接続しており、 該可動素子は粘性質量(32)を有し、該粘性質量には可動電極(33)が懸架されており、 前記粘性質量(32)と前記可動電極(33)は加速度によって前記シリコン基板に対して平行に摺動し、 固定電極は第1の群(34)と第2の群(35)に分割されており、 該第1の群(34)と前記第2の群(35)は、前記シリコン基板に対して水平方向に配置されており、 前記可動電極(33)は、前記第1の群(34)に所属する固定電極と前記第2の群(35)に所属する固定電極との間に配置されている、こと」と補正すること。

3-2.補正事項1-3についての検討
補正事項1-3は、少なくとも、「前記導電層(3)と前記シリコン基板(10)との間に第1の絶縁層(1)が設けられており」との事項及び「固定電極は第1の群(34)と第2の群(35)に分割されており、 該第1の群(34)と前記第2の群(35)は、前記シリコン基板に対して水平方向に配置されており、 前記可動電極(33)は、前記第1の群(34)に所属する固定電極と前記第2の群(35)に所属する固定電極との間に配置されている」との事項を追加する補正を含むものであるが、ここで導入されている「第1の絶縁層(1)」、「固定電極」、「第1の群(34)」及び「第2の群(35)」はいずれも、補正前の請求項1に対応する発明特定事項が存在しない。
よって、補正事項1-3は、補正前の請求項1に係る発明のいずれの発明特定事項を限定したものでもない事項を含むから、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(以下、単に「特許法第17条の2第4項」という。)第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない。
また、補正事項1-3が、特許法第17条の2第4項のその余の号に掲げる、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しないことは、明らかである。
したがって、補正事項1-3は、特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。

3-3.補正事項1についての検討のまとめ
上記「3-2.」で検討したとおり、補正事項1-3は、特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しないから、補正事項1-3を含む補正事項1もまた、特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。

したがって、補正事項1を含む本件補正は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。

4.補正の目的の適否についての検討(2)
上記「2.」及び「3.」では、補正後の請求項1を、補正前の請求項1に対応するものとして検討したが、補正後の請求項1が、補正前の他の請求項に対応するものとした場合について、本件補正の目的の適否をそれぞれ検討する。

4-1.補正前の請求項3に対応するとした場合
補正後の請求項1が、補正前の請求項3に対応するとした場合は、少なくとも、「固定電極は第1の群(34)と第2の群(35)に分割されており、 該第1の群(34)と前記第2の群(35)は、前記シリコン基板に対して水平方向に配置されており、 前記可動電極(33)は、前記第1の群(34)に所属する固定電極と前記第2の群(35)に所属する固定電極との間に配置されている」との事項を追加する補正を含むものとなるが、ここで導入されている「固定電極」、「第1の群(34)」及び「第2の群(35)」はいずれも、補正前の請求項3に対応する発明特定事項がないから、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない。また上記補正が、特許法第17条の2第4項のその余の号に掲げる、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しないことは、明らかである。
したがって、補正後の請求項1が補正前の請求項3に対応するものとした場合でも、本件補正は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。

4-2.補正前の請求項6に対応するとした場合
補正後の請求項1が、補正前の請求項6に対応するとした場合は、少なくとも、補正前の請求項6の「固定電極は導電層(3)から形成された導体路に接続されており、 固定電極(34、35)は接続構造体(25)に接続されており、 該接続構造体はポリシリコン層(6)から形成されている」との事項を削除する補正を含むものとなり、この点において特許請求の範囲が拡張されているから、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない。また上記補正が、特許法第17条の2第4項のその余の号に掲げる、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しないことは、明らかである。
したがって、補正後の請求項1が補正前の請求項6に対応するものとした場合でも、本件補正は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。

4-3.補正前のその他の請求項に対応するとした場合
補正後の請求項1が、補正前の請求項2、4?5、7?11のいずれかに対応するとした場合に、本件補正が特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていないことは、明らかである。

5.補正の却下の決定のむすび
以上検討したとおり、補正後の請求項1を補正前のいずれの請求項に対応づけたとしても、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たさないものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
平成19年10月30日に提出された手続補正書でした補正は、上記「第2.」のとおり却下されたので、本願の請求項1?11に係る発明は、平成19年6月22日に提出された手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1?11に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その内の請求項8に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「シリコン基板(10)に導電層(3)、第2の絶縁層(2)およびポリシリコン層(6)を被着し、
導電層(3)および第2の絶縁層(2)をポリシリコン層(6)のデポジットの前に形成し、
溝(9)をポリシリコン層(6)に設け、
前記溝はポリシリコン層(6)の上側から第2の絶縁層(2)まで達するようにし、
溝(9)を通ってエッチング媒体が第2の絶縁層(2)に導入されるようにする、ことを特徴とするセンサの製造方法。」

なお、「ポロシリコン層(6)」が「ポリシリコン層(6)」の誤記であることは明らかであるから、そのように読み替えた上で本願発明を上記のとおり認定した。


第4.引用刊行物に記載された発明

引用例1:特開平4-278464号公報
原審の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平4-278464号公報(以下「引用例1」という。)には、図1?3とともに、「半導体加速度センサ」(発明の名称)に関して、以下の記載がある(下線は当合議体で付加)。

「【0013】
【実施例】図1に、本発明の第1の実施例である半導体加速度センサの平面図を示す。可動電極9は、支持部5を中心に梁65で支えられた「田」の字形をした電極で、その四隅に下部電極21a?21dが対向している。
【0014】この半導体加速度センサの構造を、図2の製造工程図に基づき、その製造過程を参照しながら、更に詳細に説明する。
【0015】先ず、図2(a)に示すように、基板となるシリコン基板1を用意する。この基板は、単純に支持基板として機能するので、抵抗値の高い基板もしくはSOIウエハー、プロセスが許せばガラス基板のような絶縁基板を用いる。ここでは、シリコン基板を用いた場合について述べる。次に、表面に厚さ1ミクロン程度の酸化膜2を堆積する。その上に下部電極21となるアルミニウム3を堆積し電極形状にパターニングする。その上に可動電極9とのショートを防ぐために酸化膜4を薄く堆積して保護する。次に、図2(b)に示すように、可動電極9の支持部分となる領域5の酸化膜4を取り除く。次に、図2(c)に示すように犠牲層となる金7を数千オングストロームから数ミクロンの厚みに堆積する。 次に、図2(d)に示すように、支持部の金を取り除くために支持部分5のみエッチングを行う。その上に、図2(e)に示すように、可動電極9となる金属などの導電性の材料(例えばTi)8を厚さ数千オングストロームから数ミクロン堆積し、所定の平面形状にエッチング加工する。最後に図2(f)に示すように、犠牲層である金7をエッチングにより取り除いて導電性材料8と酸化膜4の間に空間を作り可動電極9を得る。なお、図2(f)は、図1のA-A′断面を示している。
【0016】図3は可動電極9を取り除いた平面図であり、下部電極21a?21dは外部との電気的なやり取りをするためのアルミパッド23と配線22で接続されている。センサが対称ならば共振モードの腹の位置も対称であるから下部電極21a,21b,21c,21dも同様に対称に配置される。通常3次までのモードを考慮すると、1次がセンサおもりの垂直運動、2次,3次が横揺れとなるため、電極は図1,図3に示したように最低で4つ設ければ良い。尚、24は可動電極9に対して電気を供給するためのコンタクト電極である。」
「【0021】また図2の犠牲層7として、金ではなくレジストを用いてもよいが、レジストを用いると可動電極を作製する際に金属を堆積するために基板加熱を施したり、堆積した金属のクリーニングなどの処理が困難になる。」

ここで、段落【0015】の記載より、「その上に下部電極21となるアルミニウム3を」「電極形状にパターニングする」工程及び「支持部の金を取り除くために支持部分5のみエッチングを行う」工程は、「可動電極9となる金属などの導電性の材料(例えばTi)8を厚さ数千オングストロームから数ミクロン堆積」する工程よりも前に行われている。
また、段落【0013】の「図1に、本発明の第1の実施例である半導体加速度センサの平面図を示す。可動電極9は、支持部5を中心に梁65で支えられた「田」の字形をした電極で」との記載及び段落【0015】の「その上に、図2(e)に示すように、可動電極9となる金属などの導電性の材料(例えばTi)8を厚さ数千オングストロームから数ミクロン堆積し、所定の平面形状にエッチング加工する。」との記載より、「可動電極9となる金属などの導電性の材料(例えばTi)8」を「エッチング加工」する「所定の平面形状」とは「「田」の字形」であるから、上記「エッチング加工」により溝を設けていることは明らかである。
さらに、段落【0015】の「最後に図2(f)に示すように、犠牲層である金7をエッチングにより取り除いて導電性材料8と酸化膜4の間に空間を作り可動電極9を得る。」との記載も併せると、「犠牲層である金7」が「エッチングにより取り除」かれるためには、エッチング媒体が「犠牲層である金7」に導入される必要があることは明らかであり、そのためには、「可動電極9となる金属などの導電性の材料(例えばTi)8」の「エッチング加工」により設けられた溝が、エッチング媒体を通すための溝として、「可動電極9となる金属などの導電性の材料(例えばTi)8」を上側から貫通して「犠牲層である金7」に達している必要があることも明らかである。

よって、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「シリコン基板1に、下部電極21となるアルミニウム3、犠牲層となる金7、可動電極9となる金属などの導電性の材料(例えばTi)8を堆積し、
下部電極21となるアルミニウム3のパターニング及び金7の支持部分5のエッチングを、可動電極9となる金属などの導電性の材料(例えばTi)8の堆積の前に行い、
可動電極9となる金属などの導電性の材料(例えばTi)8を「田」の字形にエッチング加工して溝を設け、
前記溝は可動電極9となる金属などの導電性の材料(例えばTi)8を上側から貫通して犠牲層である金7に達するようにし、
前記溝を通ってエッチング媒体が犠牲層である金7に導入される
ことを特徴とする半導体加速度センサの製造方法。」

引用例2:特表平7-507903号公報
原審の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特表平7-507903号公報(以下「引用例2」という。)には、図1?2、図9?23とともに、「集積回路および自立マイクロ構造を含むモノリシック・チップの製造方法」(発明の名称)に関して、以下の記載がある(下線は当合議体で付加)。

「図1Aおよび図1Bは、本発明の方法により製造することができる例示的なマイクロ構造の懸架部分10の平面図および側面図をそれぞれ示す。図面に示されるように、懸架された中心ビーム12は、これから横断方向に延長する複数の懸架アーム14を有する。ビーム12は、支持ビーム16、18から対向端部で支持されている。支持ビーム16、18は、アンカー20、22、24、26によってシリコン基板上方で支持される。
図1Aおよび図1Bは、マイクロ構造の懸架部分のみを示している。しかし、実際の商業的に使用可能なデバイスにおいては、このマイクロ構造は固定された構成要素をも含む。例えば、図2Aは、例示的な加速度計のセンサ部分の平面図を示す。判るように、マイクロ構造のアーム14は、固定アーム28、29に隣接してこれと平行に配置される。アーム28、29の各々もまた、アンカーからその一端部で基板の上方に懸架される。それにも拘わらず、これらアームは、アーム28、29の懸架部分が比較的短いため、加速度作用力下では大きく運動することがない故に、一般に固定されると考えられる。アーム14を含む懸架部分は、電気的に第1のノードを含む。固定アーム28は第2のノードに電気的に一体に接続され、固定アーム29は第3のノードに電気的に一体に接続される。固定アーム28は、第1のコンデンサの第1の電極を形成し、固定アーム29は、第2のコンデンサの第1の電極を形成している。可動アーム14は、第1および第2の両コンデンサの第2の電極を形成する。
デバイスが加速度を受けると、支持ビーム16、18は加速度の作用力下で撓んで可動アーム14を固定アーム28、29に対して運動させる。従って、加速度の作用力下では、可動アームと隣接する固定アームとの間の距離が変化して、各可動アームと隣接する固定アームとの間にキャパシタンスの変化を生じる結果となる。キャパシタンスの変化は、加速度作用力の直接的な表示である。センサは、可動アームと固定アームとの間の電圧差を受取る分解回路に電気的に接続される。」
(第5頁右下欄2?27行)

「プロセス38:LTOデポジション
このプロセスにおいては、2000オングストロームの厚い低温酸化物層がチップ上に被着される。・・・
プロセス39:焼き締め
・・・
プロセス40:LPCVD窒化物のデポジション
1200オングストロームの厚い窒化物層が、焼き締められた低温酸化物上に被着される。この層は、プロセス41においてこの窒化物層上に被着される別の低温酸化物層のエッチングに関するエッチング・ストップとして働くことになる。この窒化物層もまた、タスク19において述べた窒化物間のシーリングを許容することになる。
図10は、プロセス40の完了後のチップを示している。同図に示されるように、低温酸化物層56が、窒化物層58の前に被着されている。
タスク10:スペーサ酸化物の形成
・・・
スペーサ酸化物は2つの機能を供する。第一に、ポリシリコン・マイクロ構造は被着されスペーサ酸化物上に形成され、次いでスペーサ酸化物がマイクロ構造の下側からエッチング除去されて懸架された状態のままである。スペーサ酸化物は、この方法の実質的に最後まで除去されない。従って、スペーサ酸化物の第2の機能は、製造の諸条件およびプロセスに曝される時に他の理由で損傷されるおそれがある懸架構造のマイクロ構造を堅固に支持することである。
スペーサ酸化物の形成は、プロセス41乃至43を含んでいる。
プロセス41:スペーサ酸化物のデポジション
このプロセスにおいて、マイクロ構造を支持することになるスペーサの低温酸化物(LTO)は、化学気相成長法によって被着される。この層は、約16,000オングストロームまで成長させられる。
プロセス42:焼き締め
・・・
プロセス43:バンプ・マスク
・・・
図11は、プロセス43の完了後のチップを示している。同図に示されるように、厚いスペーサ酸化物層60が、チップ全体に被着され、ディボット61の如き小さなディボットがその上面に形成されている。
タスク11:アンカーの形成
・・・
タスク12:ポリシリコンのマイクロ構造形成
プロセス46乃至49は、懸架されたマイクロ構造の形成に関するものである。しかし、先に述べたように、マイクロ構造は、当該製造方法の実質的な終了までは懸架されず、スペーサLTOによって支持されることになる。
プロセス46:センサ・ポリシリコンのデポジション
このプロセスにおいては、20,000オングストロームの厚さのポリシリコン層が、低圧化学気相成長法においてスペーサ酸化物上に被着される。これは、マイクロ構造が形成されることになるポリシリコン層である。部分的にアモルファス膜を生成するため低いデポジション温度が用いられる。
プロセス47:センサ・ポリシリコン・インブラント
このプロセスにおいては、マイクロ構造ポリシリコンがリンをイオン・インブラントすることにより導電性を更に大きくされる。
プロセス48:ポリシリコンのランプド・アニール
ポリシリコンが被着されると、それは実質的にアモルファスである。ポリシリコンを所要の引張り応力に形成するために、これをアニールする。・・・
図13は、ステップ48の完了後のチップを示している。同図に示されるように、20,000オングストロームの厚いポリシリコン層62がチップ上に被着される。図13に示されるように、アンカー64がアンカー・ウエル59に形成される。
プロセス49:マイクロ構造マスク
このプロセスにおいては、フォトレジスト・マスクが形成されて回路領域から全てのポリシリコンを除去して、モート領域に所要のマイクロ構造形状を形成する。次いで、ポリシリコンが乾式エッチングされる。図14は、プロセス49の完了後のチップを示している。
タスク13:スペーサ酸化物を回路領域から除去
このタスクは、プロセス50のみを含む。
プロセス50:MOBEマスク
このプロセスにおいては、フォトレジスト層が被着されて、スペーサ酸化物層60をエツチングするためマスクされる。用語「MOBE」とは、この特定のマスクに対する任意の表現である。用語「MOBE」は、[モートおよびビーム」の短縮であり、このマスクがマイクロ構造(または、ビーム)を覆うように形成されるがスペーサ酸化物層60を回路領域から除去するように形成される。このマスクは、プロセス36において用いられるモート・マスクとは異なる。フォトレジストがパターン化された後、チップが緩衝酸化エッチング浴中で被着され、この浴中でスペーサ酸化物が下側の窒化物層58まで選択的にエッチング除去される。LPCVD窒化物層58は、酸化物のエッチングのためのエッチング・ストップとして働く。
図15は、ステップ50の完了後の中でを示す。」
(第9頁右上欄11行?第10頁右上欄27行)

「図22は、プロセス66の完了後のチップを示している。・・・
タスク20:マイクロ構造の解放
この最終タスクはスペーサ酸化物層が除去される唯一つのプロセス67を含み、これによりマイクロ構造を図1A、図1Bおよび図2Aに示される如きその最終的な懸架状態に解放する。
プロセス67:マイクロ構造解放マスク
このプロセスにおいては、スペーサ酸化物が露呈される部分、即ち、マイクロ構造形状を形成するためポリシリコンが除去された部分に隣接するモート領域における少数の穴を持つ回路領域とモート領域の大部分とを完全に覆うため、フォトレジスト・マスクが形成される。フォトレジストにおける穴は、これらが重なったマイクロ構造の縁部に直接隣接するように配置される。
次いで、酸化物層がフォトレジスト・マスクの下方で露光される場所でエッチングされるように、チップが緩衝エッチング酸化物浴中に配置される。酸化物がフォトレジストにおける穴の寸法を僅かに越えてエッチングされかつマイクロ構造の縁部の下方に数ミクロンだけ延長するように、チップが長い期間浴中に残される。
次に、フォトレジストが除去され、別のフォトレジスト層がチップ上に被着される。このフォトレジスト層は、酸化物層に形成された穴を充填すると共に、エッチングされたポリシリコンのマイクロ構造の各部間の孔隙を充填する。次に、フォトレジストは、フォトレジストの大半を現像するためマスクなしで露光される。しかし、穴の縁部に充填されマイクロ構造の縁部下方に延長するフォトレジストの各部は、これら縁部がポリシリコンのマイクロ構造により遮光される故に現像されない。必要ならば、ポリシリコンのマイクロ構造の非接触部分間、例えば可動アーム14間の間隙におけるポリシリコン層62にあるフォトレジスト・ブリッジを残すようにもマスクを用いることができる。
次に、残るスペーサ酸化物60が緩衝酸化物エッチ液中で除去される。この浴はまた、マイクロ構造を覆うモート領域に先に残された酸化物層66、70を除去する。緩衝酸化物浴は、ポリシリコンまたはフォトレジストに影響を及ぼすことがない。従って、スペーサ酸化物が除去された後も、マイクロ構造の非接触部分間、ならびにマイクロ構造の下方に形成されたフォトレジスト・ペデスタル間の間隙におけるフォトレジスト・ブリッジはまだ残る。マイクロ構造の下方の穴の縁部に形成されたフォトレジスト・ペデスタルがマイクロ構造を垂直に支持して、このマイクロ構造が曲げられて下側の基板と接触することを阻止する。マイクロ構造の非接触部分間の間隙に残ったフォトレジスト・ブリッジは、このような部分が側方に曲げられて相互に接触することを阻止する側方支持部を提供する。・・・
フォトレジスト・ペデスタルおよびブリッジは、液体の表面張力の問題を生じない長期の酸素プラズマ剥離プロセスにおいて除去される。」
(第11頁右下欄28行?第12頁右上欄21行)


第5.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「シリコン基板1」及び「下部電極21となるアルミニウム3」は、それぞれ、本願発明の「シリコン基板(10)」及び「導電層(3)」に相当する。また、引用発明の「犠牲層となる金7」及び「可動電極9となる金属などの導電性の材料(例えばTi)8」は、それぞれ、本願発明の「第2の絶縁層(2)」及び「ポリシリコン層(6)」に対応するとともに、それぞれ、(後に)「エッチング媒体が」「導入される」「層」及び(後に)「溝」が「設け」られる「層」である点で共通する。よって、本願発明の「シリコン基板(10)に導電層(3)、第2の絶縁層(2)およびポリシリコン層(6)を被着」する工程と、引用発明の「シリコン基板1に、下部電極21となるアルミニウム3、犠牲層となる金7、可動電極9となる金属などの導電性の材料(例えばTi)8を堆積」する工程とは、「シリコン基板に導電層、エッチング媒体が導入される層および溝が設けられる層を被着」する工程である点で共通する。
(イ)引用発明の「下部電極21となるアルミニウム3のパターニング及び金7の支持部分5のエッチング」において、「パターニング」及び「エッチング」は、それぞれ、「アルミニウム3」及び「金7」を所望の形状に形成していることになるから、本願発明の「導電層(3)および第2の絶縁層(2)をポリシリコン層(6)のデポジットの前に形成」する工程と、引用発明の「下部電極21となるアルミニウム3のパターニング及び金7の支持部分5のエッチングを、可動電極9となる金属などの導電性の材料(例えばTi)8の堆積の前に行」う工程とは、「導電層およびエッチング媒体が導入される層を溝が設けられる層のデポジットの前に形成」する工程である点で共通する。
(ウ)本願発明の「溝(9)をポリシリコン層(6)に設け、 前記溝はポリシリコン層(6)の上側から第2の絶縁層(2)まで達するように」する工程と、引用発明の「可動電極9となる金属などの導電性の材料(例えばTi)8を「田」の字形にエッチング加工して溝を設け、 前記溝は可動電極9となる金属などの導電性の材料(例えばTi)8を上側から貫通して犠牲層である金7に達するように」する工程とは、「溝を、溝が設けられる層に設け、前記溝は、溝が設けられる層の上側からエッチング媒体が導入される層まで達するように」する工程である点で共通する。
(エ)本願発明の「溝(9)を通ってエッチング媒体が第2の絶縁層(2)に導入されるようにする」工程と、引用発明の「前記溝を通ってエッチング媒体が犠牲層である金7に導入される」工程とは、「溝を通ってエッチング媒体が、エッチング媒体が導入される層に導入されるようにする」工程である点で共通する。
(オ)引用発明における「半導体加速度センサ」は、本願発明における「センサ」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「シリコン基板に導電層、エッチング媒体が導入される層および溝が設けられる層を被着し、
導電層およびエッチング媒体が導入される層を溝が設けられる層のデポジットの前に形成し、
溝を、溝が設けられる層に設け、
前記溝は、溝が設けられる層の上側からエッチング媒体が導入される層まで達するようにし、
溝を通ってエッチング媒体が、エッチング媒体が導入される層に導入されるようにする、ことを特徴とするセンサの製造方法。」

(相違点)
本願発明は、「エッチング媒体が導入される層」が「第2の絶縁層(2)」であり、「溝が設けられる層」が「ポリシリコン層(6)」であるのに対して、引用発明は、「エッチング媒体が導入される層」が「犠牲層となる金7」であり、「溝が設けられる層」が「可動電極9となる金属などの導電性の材料(例えばTi)8」である点。


第6.当審の判断
以下において、相違点について検討する。

(ア)引用例1の段落【0015】に「最後に図2(f)に示すように、犠牲層である金7をエッチングにより取り除いて導電性材料8と酸化膜4の間に空間を作り可動電極9を得る。」と記載されているように、引用発明において、「エッチング媒体が導入される層」である「犠牲層となる金7」は、エッチングにより取り除かれる層であるから、「犠牲層」の材料として金に限られるものではなく、当業者が目的に応じて適宜最適な材料を選択できることは明らかである。実際、引用例1の段落【0021】には、「また図2の犠牲層7として、金ではなくレジストを用いてもよいが」と記載され、犠牲層7に用いる他の材料の例としてレジストが挙げられていることを参酌すれば、引用発明において、「犠牲層7」の材料として、「金」に換えて「レジスト」をはじめとする絶縁材料を用いることは、当業者が適宜なし得たことである。

(イ)引用発明において、「溝が設けられる層」である「可動電極9となる金属などの導電性の材料(例えばTi)8」は、最終的には「可動電極9」となる層であるから、可動電極として機能する「導電性の材料」であれば、「可動電極」の材料としてTiに限られるものではなく、当業者が目的に応じて適宜最適な材料を選択できることは明らかである。
また、引用例2には、「第一に、ポリシリコン・マイクロ構造は被着されスペーサ酸化物上に形成され、次いでスペーサ酸化物がマイクロ構造の下側からエッチング除去されて懸架された状態のままである。スペーサ酸化物は、この方法の実質的に最後まで除去されない。従って、スペーサ酸化物の第2の機能は、製造の諸条件およびプロセスに曝される時に他の理由で損傷されるおそれがある懸架構造のマイクロ構造を堅固に支持することである。」(第9頁左下欄13?18行)との記載及び「このプロセスにおいては、20,000オングストロームの厚さのポリシリコン層が、低圧化学気相成長法においてスペーサ酸化物上に被着される。これは、マイクロ構造が形成されることになるポリシリコン層である。」(第10頁左下欄17?19行)との記載があり、懸架構造のマイクロ構造の材料としてポリシリコンを用いることが記載されている。
そして、引用発明における「可動電極9」となる層も懸架構造であること、及び、半導体素子の技術分野において、ポリシリコンは最も頻繁に用いられる基本的な材料の1つであることを参酌すれば、引用発明において、「可動電極9」の材料として、「金属などの導電性の材料(例えばTi)」に換えて「ポリシリコン」を用いることは、当業者が適宜なし得たことである。

(ウ)よって、上記(ア)及び(イ)で検討したとおり、引用発明において、「エッチング媒体が導入される層」の材料として絶縁物を採用するとともに、「溝が設けられる層」の材料としてポリシリコンを採用することにより、本願発明のごとくなすことは、当業者が容易になし得た範囲内のことである。

したがって、本願の請求項8に係る発明は、引用例1?2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。


第7.仮に本件補正を適法とした場合
上記「第2.」で検討したとおり、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるが、仮に、本件補正を適法とした場合について、一応検討する。

本件補正が適法である場合、本願の請求項1?10に係る発明は、平成19年10月30日に提出された手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1?10に記載された事項により特定されるものであるが、その内、請求項7に係る発明は、補正前の請求項8を単に繰り上げただけであるから、実質的には補正されていない。

そして、補正前の請求項8に係る発明は、上記「第3.」?「第6.」で検討したとおり、引用例1?2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、補正後の請求項7に係る発明も同様の理由により、引用例1?2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、仮に本件補正を適法としても、結論は同じである。


第8.むすび
以上検討したとおり、本願の請求項8に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項についての検討を行うまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-07 
結審通知日 2009-09-11 
審決日 2009-09-25 
出願番号 特願平8-240583
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 572- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼橋 英樹  
特許庁審判長 北島 健次
特許庁審判官 小野田 誠
安田 雅彦
発明の名称 センサおよびセンサの製造方法  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 二宮 浩康  
代理人 杉本 博司  

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