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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1211849
審判番号 不服2006-11061  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-29 
確定日 2010-01-06 
事件の表示 特願2002-555820「ホルモン補充療法の方法とその投与形態」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月18日国際公開、WO02/55086、平成16年 8月26日国内公表、特表2004-525883〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成14年1月8日(パリ条約による優先権主張 2001年1月11日 (DE) ドイツ国)を国際出願日とする出願であって,拒絶理由通知に応答して平成17年5月31日付けで手続補正がなされたが,平成18年2月20日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成18年5月29日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,平成18年6月28日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成18年6月28日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成18年6月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の概略,補正後の発明
本件補正により,補正前の特許請求の範囲の請求項1?5に係る医薬組成物の発明が削除され,同請求項6?19に係るキットの発明が,補正後の特許請求の範囲の請求項1?9に係るキットの発明に補正された。
そのうち請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)は次のとおりのものである。 なお,(α)?(θ)の記号は,後記対比の都合上,当審が付したものである。

「【請求項1】
(α)経口投与のための日用量を含むホルモン補充療法のための投与形態を有する、ゲスターゲン(G)とともにエストロゲン(E)を含むキットであって、
(β)当該エストロゲン(E)日用量は、0.5?6 mgのエストラジオール(E2)、0.5?6 mgの吉草酸エストラジオール(EV)、0.5?6 mgのエストリオール、0.25?3 mgのエストロゲン抱合体、0.01?0.005 mgのエチニル・エストラジオール(EE)、0.05?0.8 mgのエストロゲン・スルファメート、又は0.025?0.05 mgのメストラノールであり、かつ、
(γ)当該ゲスターゲン(G)日用量は、0.5?3 mgの酢酸クロルマジノン(CMA)、1?3 mgの酢酸シプロテロン(CPA)、0.05?0.2 mgのデソゲストレル(DSG)、1?3 mgのジエノゲスト(DNG)、0.035?0.1 mgのゲストーデン(GSD)、0.025?0.5 mgのレボノルゲストレル(LNG)、0.25?3.0 mgのリネストレノール(LYN)、10?200 mgの酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)、0.175?1.5 mgのノルエチステロン(NET)、0.1?0.3 mgのノルゲスチメート(NGM)、0.015?0.75 mgのノルゲストレル(NG)、0.25?3 mgの酢酸ノルエチステロン(NETA)、100?300 mgのノルエチステロン・エナンサート(NETE)、又は1.5?4 mgのドロスピレノン(DRSP)であり、
(δ) 当該ホルモン補充療法において、
(ε)(a)閉経周辺期の間、摂取ダイアグラム{E[1-a] G[b-c] P[d-e]}に従う摂取休止期を伴う逐次療法が使用され、ここで、[1-a]が、エストロゲン(E)日用量による摂取フェーズを表し、[b-c]が、ゲスターゲン(G)日用量による摂取フェーズを表し、及び[d-e]が、日用量なしか、又はプラシーボ(P)若しくは上記摂取フェーズ中よりはるかに低いエストロゲン及びゲスターゲン含量をもつ日用量のいずれかを投与する摂取休止を表し、そしてa、b、c、d、及びeが、整数であり、ここで、a及びcはほぼ21に等しいが、bは1以上であり、最大でaより1大きく、かつ、c以下であり、dはa及びcより最大で1大きく、そしてeはd以上であり;
(ζ)(b)閉経周辺期の終りの前から閉経期にわたる過渡期の間、前記摂取フェーズは連続して延長され;そして
(η)(c)閉経期の間、摂取ダイアグラム{E[1-a] G[1-a]}に従って連続摂取が行われ、ここで、[1-a]が、エストロゲン(E)日用量による摂取フェーズを示し、[1-a]が、ゲスターゲン(G)日用量による摂取フェーズを示し、そしてaが、1以上の任意の整数である、
(θ)前記キット。」

これに対し,該本件補正発明のキットに対応すると認められる本件補正前の「キット」の発明を特定する特許請求の範囲の請求項6,及び該請求項6で引用される請求項1は,次のとおりである(平成17年5月31日付け手続補正書参照)。

「【請求項6】
複数の包装単位をもち、その少なくとも1つが、確定した閉経後において1回は連続的に投与されるべき少なくとも1セットのホルモンの日用量を有し、いずれの包装単位にも、少なくとも1種類のホルモンの成分、すなわち少なくとも1種類のエストロゲン(E)及び/又は少なくとも1種類のゲスターゲン(G)を含量する、請求項1?4のいずれか1項に記載のホルモン代償療法のための医薬組成物を含むキットであって、少なくとも1の包装単位が、連続的なホルモン投与に先行する、摂取サイクルを形成する少なくとも1の摂取フェーズ及び少なくとも1の摂取休止を有する摂取期間に投与されるべき少なくとも1セットの日用量を有し、上記少なくとも1の包装単位が、摂取フェーズの継続期間に対応した複数のホルモンの日用量、並びに場合により複数のプラシーボ、又は摂取フェーズで投与されるべきホルモンの日用量の場合よりもはるかに低いホルモン含量を有する摂取休止の継続期間に対応した日用量を網羅することを特徴とする上記キット。」
「【請求項1】
確定した閉経後に一回は、少なくとも1種類のホルモン成分、すなわち少なくとも1種類のエストロゲン(E)及び/又は少なくとも1種類のゲスターゲン(G)の日用量を毎日連続的に投与するホルモン代償療法のための、少なくとも1種類のホルモン成分、すなわち少なくとも1種類のエストロゲン(E)及び/又は少なくとも1種類のゲスターゲン(G)を含有する医薬組成物であって、ホルモンの日用量の連続的な投与に先行する少なくとも1の摂取期間に、日用量なしか、又はプラシーボ若しくは確定した閉経後のホルモンの日用量の連続的な投与中及び先行する摂取期間の摂取フェーズ中よりはるかに低いエストロゲン及び/又はゲスターゲン含量を有する日用量を投与する摂取休止(P)が提供されることを特徴とするホルモン代償療法のための上記医薬組成物。」

そして,該請求項1を該請求項6に組み込み書き直すと,本件補正前の特許請求の範囲の請求項6に係る発明(以下,「本願発明」という。)は次のとおりのものである。なお,(α’),(δ’),(ε’),(η’),(θ’),(α”),(δ”),(ε”),(η”)の記号は,後記対比の都合上,当審が付したものである。

「(α’)複数の包装単位をもち、
(η’)その少なくとも1つが、確定した閉経後において1回は連続的に投与されるべき少なくとも1セットのホルモンの日用量を有し、
(α”)いずれの包装単位にも、少なくとも1種類のホルモンの成分、すなわち少なくとも1種類のエストロゲン(E)及び/又は少なくとも1種類のゲスターゲン(G)を含量する、
(δ’)ホルモン代償療法のための医薬組成物を含むキットであって、
(ε’)少なくとも1の包装単位が、連続的なホルモン投与に先行する、摂取サイクルを形成する少なくとも1の摂取フェーズ及び少なくとも1の摂取休止を有する摂取期間に投与されるべき少なくとも1セットの日用量を有し、上記少なくとも1の包装単位が、摂取フェーズの継続期間に対応した複数のホルモンの日用量、並びに場合により複数のプラシーボ、又は摂取フェーズで投与されるべきホルモンの日用量の場合よりもはるかに低いホルモン含量を有する摂取休止の継続期間に対応した日用量を網羅し、
(δ”)該ホルモン代謝療法のための上記医薬組成物が、
(η”)確定した閉経後に一回は、少なくとも1種類のホルモン成分、すなわち少なくとも1種類のエストロゲン(E)及び/又は少なくとも1種類のゲスターゲン(G)の日用量を毎日連続的に投与するホルモン代償療法のための、少なくとも1種類のホルモン成分、すなわち少なくとも1種類のエストロゲン(E)及び/又は少なくとも1種類のゲスターゲン(G)を含有する医薬組成物であって、
(ε”)ホルモンの日用量の連続的な投与に先行する少なくとも1の摂取期間に、日用量なしか、又はプラシーボ若しくは確定した閉経後のホルモンの日用量の連続的な投与中及び先行する摂取期間の摂取フェーズ中よりはるかに低いエストロゲン及び/又はゲスターゲン含量を有する日用量を投与する摂取休止(P)が提供されることを特徴とするものである、
(θ’)ことを特徴とする上記キット。」

そこで,本件補正発明と本願発明を対比し,どのような補正がなされたか検討する。

(イ)本件補正により,本願発明の「(α’)複数の包装単位をもち」且つ「(α”)いずれの包装単位にも、少なくとも1種類のホルモンの成分、すなわち少なくとも1種類のエストロゲン(E)及び/又は少なくとも1種類のゲスターゲン(G)を含量する」を,本件補正発明の「(α)…ゲスターゲン(G)とともにエストロゲン(E)を含む」とすることで2種類のホルモン成分を併用する場合に限定し,且つそれらの種類及び経口投与のための日用量を「(β)当該エストロゲン(E)日用量は、…」と「(γ)当該ゲスターゲン(G)日用量は、…」に限定するものである。
(ロ)本件補正により,本願発明の「(ε’)少なくとも1の包装単位が、連続的なホルモン投与に先行する、摂取サイクルを形成する少なくとも1の摂取フェーズ及び少なくとも1の摂取休止を有する摂取期間に投与されるべき少なくとも1セットの日用量を有し、上記少なくとも1の包装単位が、摂取フェーズの継続期間に対応した複数のホルモンの日用量、並びに場合により複数のプラシーボ、又は摂取フェーズで投与されるべきホルモンの日用量の場合よりもはるかに低いホルモン含量を有する摂取休止の継続期間に対応した日用量を網羅し」及び「(ε”)ホルモンの日用量の連続的な投与に先行する少なくとも1の摂取期間に、日用量なしか、又はプラシーボ若しくは確定した閉経後のホルモンの日用量の連続的な投与中及び先行する摂取期間の摂取フェーズ中よりはるかに低いエストロゲン及び/又はゲスターゲン含量を有する日用量を投与する摂取休止(P)が提供されること」を,本件補正発明の「(ε)(a)閉経周辺期の間、摂取ダイアグラム{E[1-a] G[b-c] P[d-e]}に従う摂取休止期を伴う逐次療法が使用され、ここで、[1-a]が、エストロゲン(E)日用量による摂取フェーズを表し、[b-c]が、ゲスターゲン(G)日用量による摂取フェーズを表し、及び[d-e]が、日用量なしか、又はプラシーボ(P)若しくは上記摂取フェーズ中よりはるかに低いエストロゲン及びゲスターゲン含量をもつ日用量のいずれかを投与する摂取休止を表し、そしてa、b、c、d、及びeが、整数であり、ここで、a及びcはほぼ21に等しいが、bは1以上であり、最大でaより1大きく、かつ、c以下であり、dはa及びcより最大で1大きく、そしてeはd以上であり;」及び「(ζ)(b)閉経周辺期の終りの前から閉経期にわたる過渡期の間、前記摂取フェーズは連続して延長され」とのより具体化された投与方法に限定するものである。
(ハ)本件補正により,本願発明の「(η’)その少なくとも1つが、確定した閉経後において1回は連続的に投与されるべき少なくとも1セットのホルモンの日用量を有し」及び「(η”)確定した閉経後に一回は、少なくとも1種類のホルモン成分、すなわち少なくとも1種類のエストロゲン(E)及び/又は少なくとも1種類のゲスターゲン(G)の日用量を毎日連続的に投与するホルモン代償療法のための、少なくとも1種類のホルモン成分、すなわち少なくとも1種類のエストロゲン(E)及び/又は少なくとも1種類のゲスターゲン(G)を含有する医薬組成物であって」を,本件補正発明の「(η)(c)閉経期の間、摂取ダイアグラム{E[1-a] G[1-a]}に従って連続摂取が行われ、ここで、[1-a]が、エストロゲン(E)日用量による摂取フェーズを示し、[1-a]が、ゲスターゲン(G)日用量による摂取フェーズを示し、そしてaが、1以上の任意の整数である」という投与方法に限定するものである。
(ニ)なお,本件補正発明の「ホルモン補充療法」((α),(δ))と本願発明の「ホルモン代謝療法」((δ’),(δ”))は,同じ技術的内容を意味するものと認められる。

よって,上記補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされている同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで,本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされている同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である曽田雅之等,「ホルモン補充療法 治療 1)治療の実際」,医薬ジャーナル,1996,Vol.32,No.4, pp.45-49(pp.1005-1009)(以下,「引用例A」という。)には,以下の事項が記載されている。

(a-1)「近年,中高年女性のQOL(quality of life)の向上と言う観点から,ホルモン補充療法(HRT)への関心が高まっている。
…。HRTを施行する際には,その有益性と危険性とを評価した上で適切な投与法,及び投与期間を選択することが重要である。…」(第45頁(第1005頁)要約)
(a-2)「3.投与法(図1)
一般にHRTと言う場合は,エストロゲンにゲスタゲンを併用する場合を指し,…
現在,臨床的に手に入る代表的なものを,表1に示す。最もよく使用されているものは,結合型エストロゲンと酢酸メドロキシプロゲステロンの経口投与である。」(第46頁(第1006頁)左欄下から第5行?同頁右欄第5行)
(a-3)「

」(第46頁(第1006頁)図1)
(a-4)「

」(第46頁(第1006頁)表1)
(a-5)「2)エストロゲン・ゲスタゲン併用法
子宮内膜癌のリスクを軽減するため,ゲスタゲンを併用するHRTの投与法は,製剤,用量の組み合わせにより多くの方法が考えられるが,基本的には以下の方法に分けられる。
(1)逐次投与法(sequential)
結合型エストロゲン0.625mg/dayを21日間投与し,ゲスタゲン(MPA;酢酸メドロキシプロゲステロン5?10mg/day)を,その後半の10?12日間併用後,7日間休薬施行し28日間を1クールとし,これを繰り返す。通常,休薬期間に消退出血がみられる。

(3)連続同時投与法(continuous)
結合型エストロゲン0.625mgと酢酸メドロキシプロゲステロン2.5mgを,休薬期間をおかず持続的に投与する。治療開始当初は不正出血が認められるが,投与持続するうち,子宮内膜が萎縮し不正出血は点状出血的になり,1年以内に認められなくなると言われている。」(第47頁左欄第6?35行)
(a-6)「4.投与法の選択
閉経後間もない女性や,早期に閉経した女性については,周期的に出血のみられる逐次投与法あるいは,周期的投与法で良い。原則的には,エストロゲン製剤の投与は,連続的に投与することが理想であるが,投与量の絶対量を減少させるという意味から,休薬期間を設ける逐次投与法が用いられる。しかし,更年期症状が強い症例に対しては,休薬中に症状の再燃をみることもある。
また,出血を嫌がる女性や,閉経後期間を経た高齢女性に対しては,出血の少ない連続投与法が選択される。」(第47頁左欄下から第8行?同頁右欄第4行)

(3)対比
引用例Aには,エストロゲンとゲスタゲンを併用する経口投与によるホルモン補充療法(HRT)であって(摘記事項(a-1),(a-2)),閉経後間もない女性には逐次投与法が,また,閉経後期間を経た高齢女性に対しては連続投与法が選択されることが記載されている(摘記事項(a-6))。また,引用例Aには,逐次投与法はエストロゲンとして結合型エストロゲンを21日間投与し,ゲスタゲンとして酢酸メドロキシプロゲステロンを後半の10-12日間併用後,7日間休薬施行する28日間を1クールとして,これを繰り返す投与法であること,また,連続投与法(連続同時投与法)は結合型エストロゲンと酢酸メドロキシプロゲステロンを休薬期間をおかないで投与する方法であることも記載されている(摘記事項(a-3),(a-5))。更に,引用例Aの表1によれば,投与量について,結合型エストロゲンでは0.625mg/dayであり,酢酸メドロキシプロゲステロンでは2.5?10mg/dayであることとされている(摘記事項(a-4))。してみると,引用例Aには,次の発明が記載されているといえる。

「エストロゲンとゲスタゲンを併用する経口投与によるホルモン補充療法であって,
当該エストロゲンは投与量が0.625mg/dayである結合型エストロゲンであり,且つ当該ゲスタゲンは投与量が2.5?10mg/dayである酢酸メドロキシプロゲステロンであり,
閉経後間もない時期には,結合型エストロゲンを21日間投与し,酢酸メドロキシプロゲステロンを後半の10-21日間併用後,7日間休薬施行する28日間を1クールとして,これを繰り返す逐次投与法が,また,
閉経後期間を経た時期には,結合型エストロゲンと酢酸メドロキシプロゲステロンを休薬期間をおかないで投与する連続投与法が適用される,
前記ホルモン補充療法。」(以下,「引用発明」という。)

そこで,本件補正発明と引用発明を以下に対比する。

(i)ホルモン補充療法に用いるエストロゲン(E)について,引用発明の「結合型エストロゲン」は,本件補正発明の「エストロゲン抱合体」に相当する。また,その投与量について,前者の「0.625mg/day」は,後者の「0.25?3mg(日用量)」に包含されるから,両者は「日用量が0.625mg」で共通している。
(ii)ホルモン補充療法に用いるゲスタゲン(ゲスターゲン(G)))について,引用発明及び本件補正発明は共に酢酸メドロキシプロゲステロンで共通し,その投与量についても,前者の「2.5?10mg/day」は,後者の「10?200mg(日用量)」と「日用量が10mg」で共通する。
(iii)引用発明の「結合型エストロゲンを21日間投与し,酢酸メドロキシプロゲステロンを後半の10-21日間併用後,7日間休薬施行する28日間を1クールとして,これを繰り返す逐次投与法」とは,本件補正発明の摂取ダイアグラム{E[1-a] G[b-c] P[d-e]}の定義からすれば,{E[1-21] G[10-21] P[22-28]}と表記されるものであり,これは本件補正発明の摂取ダイアグラムに包含される。また,(i)及び(ii)で検討したとおり,引用発明と本件補正発明とは,エストロゲン及びゲスタゲンの種類・投与量の点で共通するものである。
よって,引用発明の「結合型エストロゲンを21日間投与し,酢酸メドロキシプロゲステロンを後半の10-21日間併用後,7日間休薬施行する28日間を1クールとして,これを繰り返す逐次投与法」は,本件補正発明の「摂取ダイアグラム{E[1-a] G[b-c] P[d-e]}に従う摂取休止期を伴う逐次療法が使用され、ここで、[1-a]が、エストロゲン(E)日用量による摂取フェーズを表し、[b-c]が、ゲスターゲン(G)日用量による摂取フェーズを表し、及び[d-e]が、日用量なしか、又はプラシーボ(P)若しくは上記摂取フェーズ中よりはるかに低いエストロゲン及びゲスターゲン含量をもつ日用量のいずれかを投与する摂取休止を表し、そしてa、b、c、d、及びeが、整数であり、ここで、a及びcはほぼ21に等しいが、bは1以上であり、最大でaより1大きく、かつ、c以下であり、dはa及びcより最大で1大きく、そしてeはd以上であり」という逐次療法のうち「摂取ダイアグラム{E[1-21] G[10-21] P[22-28]}」であり,[22-28]が日用量なしの摂取休止である場合に相当する。
(iv)引用発明の「結合型エストロゲンと酢酸メドロキシプロゲステロンを休薬期間をおかないで投与する連続投与法」は,1日以上連続して両ホルモン成分を投与することを意味するのである(摘記事項(a-3),(a-5))。また,(i)及び(ii)で検討したとおり,引用発明と本件補正発明とは,エストロゲン及びゲスタゲンの種類・投与量の点で共通するものである。よって,引用発明の「結合型エストロゲンと酢酸メドロキシプロゲステロンを休薬期間をおかないで投与する連続投与法」は,本件補正発明の「摂取ダイアグラム{E[1-a] G[1-a]}に従って連続摂取が行われ、ここで、[1-a]が、エストロゲン(E)日用量による摂取フェーズを示し、[1-a]が、ゲスターゲン(G)日用量による摂取フェーズを示し、そしてaが、1以上の任意の整数である」という連続摂取に相当することは明らかである。
(v)一般に,月経が永久的に停止することを閉経というが,閉経をその時点で診断することは困難であり,1年程度以上の無月経を確認するなど事後的に確認できるものであるから,引用発明における「閉経後間もない時期」とは,閉経を事後的に確認できるまでの期間であると解される。一方,本件補正発明の「閉経周辺期」,「閉経周辺期の終りの前から閉経期にわたる過渡期」も,閉経の時期の確定の困難性故に閉経が確認されるまでの期間と重複するものといえる。してみると,引用発明の「閉経後間もない時期」は,本件補正発明の「(a)閉経周辺期の間」及び「(b)閉経周辺期の終りの前から閉経期にわたる過渡期の間」に相当するものである。また,本件補正発明の「(c)閉経期の間」は,閉経が確認されるまでの期間の後の期間であることは明らかであるから,引用発明の「閉経後期間を経た時期」は,本件補正発明の「(c)閉経期の間」に相当する。

以上を踏まえると,両者は,
「エストロゲン(E)とゲスターゲン(G)を併用する経口投与によるホルモン補充療法であって,
当該エストロゲン(E)は日用量が0.625mgであるエストロゲン抱合体であり,
当該ゲスターゲンは日用量が10mgである酢酸メドロキシプロゲステロンであり,
当該ホルモン補充療法において,
(a)閉経周辺期の間及び(b)閉経周辺期の終りの前から閉経期にわたる過渡期の間,摂取ダイアグラム{E[1-21] G[10-21] P[22-28]}に従う摂取休止期を伴う逐次療法が使用され,ここで、[1-21]が、エストロゲン(E)日用量による摂取フェーズを表し,[10-21]が,ゲスターゲン(G)日用量による摂取フェーズを表し,及び[22-28]が,日用量なしの摂取休止を表す。);そして
(c)閉経期の間,摂取ダイアグラム{E[1-a] G[1-a]}に従って連続摂取が適用される,ここで,[1-a]が,エストロゲン(E)日用量による摂取フェーズを示し,[1-a]が,ゲスターゲン(G)日用量による摂取フェーズを示し,そしてaが,1以上の任意の整数である,
前記ホルモン補充療法。」で一致し,以下の点で相違する。

(相違点1)本件補正発明はホルモン補充療法のための投与形態を有するキットであるのに対し,引用発明はそのことについて特定していない点。

(相違点2)本件補正発明では「(b)閉経周辺期の終りの前から閉経期にわたる過渡期の間、前記摂取フェーズは連続して延長され」と特定しているのに対し,引用発明ではそのことについて特定していない点。

(4)相違点についての判断
(相違点1について)
医薬の技術分野において,治療に用いる薬剤をその種類や濃度ごとに用意された複数の容器を収納し,ひとまとまりのキットとして提供することは周知の事項であるから,引用発明における治療方法に用いるエストロゲン(E),ゲスターゲン(G)を日用量ごとに分けたキットの形態で提供することは当業者が容易に想到し得ることである。

(相違点2について)
引用例Aに,ホルモン補充療法を行う際には,その有益性と危険性を評価した上で適切な投与法及び投与期間を選択することが重要であると言及されているように(摘記事項(a-1)),当分野では投与効率の向上や副作用の軽減を図るべく投与法や投与期間を好適化することはよく行われることであって,引用発明において,閉経後間もない時期の逐次投与法から閉経後期間を経た時期の連続投与法に切りかえる期間である,いわゆる過渡期の際に,その中間的投与法の範囲内で種々の方法を試みることは当然に行われることである。
してみると,引用発明の「閉経後期間を経た時期」につながる「閉経後間もない時期」のうちの過渡期において,逐次投与法と連続投与法の中間的投与法として,逐次投与法の結合型エストロゲン(エストロゲン)の投与期間,同酢酸メドロキシプロゲステロン(ゲスタゲン)の投与期間をそれぞれ連続して延長された期間とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

そして,閉経期の月経の安定化,更年期病訴の減少といった本願補正発明の効果(本願明細書の【0016】?【0018】,【0047】,【0048】)について,本願明細書には実施例と称して本件補正発明の摂取ダイヤグラムの投与計画が記載されるにとどまるのであって,実際にそのような投与計画に則りホルモン療法を行った場合に閉経期の月経の安定化や更年期病訴の減少といった所望の効果が奏することについて客観的且つ合理的に理解するに足りる薬理データによる裏付けは何らなされていないのであるから,特定の摂取ダイヤグラムを選択したことによる本件補正発明の効果の顕著性について確認することができない。
よって,本件補正発明の効果が当業者にとって予測困難な格別顕著なものであるとは認められない。

したがって,本件補正発明は,引用例Aに記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり,特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明
平成18年6月28日付の手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?19に記載された発明は,平成17年5月31日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?19に記載された事項により特定されるものであって,そのうち請求項6に係る発明(「本願発明」)は,以下のとおりのものである。

「【請求項6】
複数の包装単位をもち、その少なくとも1つが、確定した閉経後において1回は連続的に投与されるべき少なくとも1セットのホルモンの日用量を有し、いずれの包装単位にも、少なくとも1種類のホルモンの成分、すなわち少なくとも1種類のエストロゲン(E)及び/又は少なくとも1種類のゲスターゲン(G)を含量する、請求項1?4のいずれか1項に記載のホルモン代償療法のための医薬組成物を含むキットであって、少なくとも1の包装単位が、連続的なホルモン投与に先行する、摂取サイクルを形成する少なくとも1の摂取フェーズ及び少なくとも1の摂取休止を有する摂取期間に投与されるべき少なくとも1セットの日用量を有し、上記少なくとも1の包装単位が、摂取フェーズの継続期間に対応した複数のホルモンの日用量、並びに場合により複数のプラシーボ、又は摂取フェーズで投与されるべきホルモンの日用量の場合よりもはるかに低いホルモン含量を有する摂取休止の継続期間に対応した日用量を網羅することを特徴とする上記キット。」
そして,引用される請求項1は次のとおりである。
「【請求項1】
確定した閉経後に一回は、少なくとも1種類のホルモン成分、すなわち少なくとも1種類のエストロゲン(E)及び/又は少なくとも1種類のゲスターゲン(G)の日用量を毎日連続的に投与するホルモン代償療法のための、少なくとも1種類のホルモン成分、すなわち少なくとも1種類のエストロゲン(E)及び/又は少なくとも1種類のゲスターゲン(G)を含有する医薬組成物であって、ホルモンの日用量の連続的な投与に先行する少なくとも1の摂取期間に、日用量なしか、又はプラシーボ若しくは確定した閉経後のホルモンの日用量の連続的な投与中及び先行する摂取期間の摂取フェーズ中よりはるかに低いエストロゲン及び/又はゲスターゲン含量を有する日用量を投与する摂取休止(P)が提供されることを特徴とするホルモン代償療法のための上記医薬組成物。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は,前記「2.(1)」で検討した本件補正発明の,(イ)2種類のホルモン成分を併用する旨の限定且つそれらの種類及び経口投与のための日用量の限定,(ロ)逐次療法の投与期間及び摂取ダイアグラムの限定,(ハ)連続摂取の摂取ダイアグラムの限定をそれぞれ省略するものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が,前記「2.(4)」に記載したとおり,引用例Aに記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用例Aに記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例Aに記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-06 
結審通知日 2009-08-11 
審決日 2009-08-24 
出願番号 特願2002-555820(P2002-555820)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川口 裕美子  
特許庁審判長 川上 美秀
特許庁審判官 星野 紹英
伊藤 幸司
発明の名称 ホルモン補充療法の方法とその投与形態  
代理人 古賀 哲次  
代理人 石田 敬  
代理人 青木 篤  
代理人 福本 積  
代理人 中村 和広  
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