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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47L
管理番号 1211858
審判番号 不服2008-13446  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-27 
確定日 2010-02-12 
事件の表示 特願2004- 9837「電気掃除機」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月28日出願公開、特開2005-198909〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成16年1月16日の出願であって、平成19年11月9日付けで拒絶の理由が通知され、平成20年1月11日に手続補正がなされ、同年4月23日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年5月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年6月26日に特許請求の範囲、明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ、平成21年8月7日付けで審尋がなされ、同年10月8日に回答書が提出されたものである。

第2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲及び明細書について補正をするものであって、請求項1について、補正前後の記載は、以下のとおりである。

(1)補正前
「ノズル体と、このノズル体に対してヒンジ部を介して回動自在に設けられ且つ内部に電動送風機が設けられた動力部と、把持体とからなる電池式の電動掃除機において、
前記ノズル体の内部には電池部と着脱自在な集塵部とを設け、前記動力部先端に棒状の把持体を一体的に設けると共に、前記動力部を前記ヒンジ部に対して隣接ないし近接して設けたことを特徴とする電気掃除機。」

(2)補正後
「ノズル体と、このノズル体に対してヒンジ部を介して回動自在に設けられ且つ内部に電動送風機が設けられた動力部と、把持体とからなる電池式の電動掃除機において、
前記ノズル体の内部には電池部と着脱自在な集塵部とを設け、前記動力部先端に棒状の把持体を一体的に設けると共に、前記動力部を前記ヒンジ部に対して隣接ないし近接して設けることにより、コンパクトで、ノズル体回りの重心を低く押さえたことを特徴とする電池式の電動掃除機。」

2.補正の適否
本件補正は、請求項1について、「コンパクトで、ノズル体回りの重心を低く押さえた」なる事項を付加するものである。
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か(いわゆる独立特許要件)について検討する。

(1)補正発明
補正発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、上記1.(2)のとおりのものと認める。

(2)刊行物1に記載された発明
これに対し、原審で引用され本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2002-355196号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア.段落0008
「【0008】
【発明の実施の形態】本発明の請求項1記載の発明は、塵埃を吸引するための吸引風を発する電動送風機を備えた掃除機本体と、塵埃を吸引する下方開口の吸込口を有する吸口体と、一端を前記電動送風機に連通させ他端を前記吸込口に連通させた連通管から構成されるとともに、前記吸口体に塵埃を集塵する集塵部を設けたもので、従来の吸口体、連通管を通じて本体部の集塵部にゴミを運ぶものと違い、集塵部までの吸引通路が短く、大きな吸引力の電動送風機を必要とせず、掃除機本体の電動送風機も小型化が図れ、全体をコンパクトにでき、小型、軽量にすることができる。」

イ.段落0019?0021
「【0019】図1?5において、掃除機本体20は、吸引力を発生する電動送風機21を内蔵し、電動送風機21にて生じた吸引力により塵埃を吸収する吸口体22を連通管23を介して設けている。前記連通管23には、掃除機本体20に着脱自在に係合する先端パイプ部24と吸口体22に着脱自在に係合する接続パイプ部25が設けられている。掃除機本体20には、前記先端パイプ部24との尾錠26が設けられ、前記接続パイプ部25には、吸口体22に接続される吸込継手27との尾錠28が設けられている。掃除機本体20には、把手29を設け、把手29の前方に電動送風機21と電源スイッチ30を設け、把手29の後部31には、電池32を収納できる電池収納部33を設けている。
【0020】吸口体22には、吸込継手27を挟んで幅方向の一方に集塵部34、他方に回転ブラシ35をベルト36を介して駆動させる電動機37を設けている。集塵部34は、吸口体22からの塵埃を集塵するもので、吸気口38を設けた略扇状に形成した集塵箱39と、排気口40を設けたパッキン体41とで構成され、パッキン体41は、フィルター42で覆われている。吸気口38は、回転ブラシ35の近傍で軸中心より上方の斜め円周方向に設けている。回転ブラシ35の下方には、吸込口43が設けられ、前記吸込口43から吸口体22に設けられた吸気口44を経て、集塵部34の吸気口38へと吸込み気流が流れていくようになっている。吸込継手27には、回動支軸45が形成され、吸口体22に回動自在に保持されている。この回動支軸45の一方には、吸引通路46が設けられており、他方には、回転ブラシ35を回転させるための電動機37への電源供給用の導電線47を通す開口48が設けられており、この導電線47は、この開口48を経て吸込継手27に設けられた吸引通路46内を通って、一旦吸込継手27に設けた接続部49の接続コネクター50に接続されている。・・・。
【0021】上記構成において、床面のごみは、含塵気流といっしょに回転ブラシ35で掻き上げられ、吸口体22に設けた吸込口43を通って集塵箱39に設けた吸気口38を経て、フィルター42でごみが濾過されてきれいな空気が吸込継手27に設けられた回動支軸45の吸引通路46内を通って、連通管23の吸引通路52内を経て掃除機本体20に内蔵された電動送風機21へと流れていく。吸口体22に塵埃を集塵する集塵部34を設けたため、従来の吸口体、連通管を通じて本体部の集塵部にゴミを運ぶものと違い、集塵部34までの吸引通路が短く、大きな吸引力の電動送風機を必要とせず、掃除機本体20の電動送風機21も小型化が図れ、全体をコンパクトにでき、小型、軽量にすることができる。」

ウ.図1、図3
接続パイプ部25先端に棒状の連通管23が一体的に設けられていること、接続パイプ部25が回動支軸45に対し隣接ないし近接して設けられていることが看取できる。

これら事項を、技術常識を考慮しながら補正発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認める。

「吸口体22と、この吸口体22に対して回動支軸45を介して回動自在に設けられた接続パイプ部25と、連通管23と、連通管23に係合し内部に電動送風機21が設けられた把手29とからなる電池式の電動掃除機において、
前記把手29の内部には電池収納部33を設け、前記吸口体22の内部には集塵部34を設け、前記接続パイプ部25先端に棒状の連通管23を一体的に設けると共に、前記接続パイプ部25を前記回動支軸45に対して隣接ないし近接して設けた電池式の電動掃除機。」

(3)刊行物2に記載された事項
同じく特開2002-165731号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア.段落0001
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、回転ブラシを用いた電気掃除機に関するものである。」

イ.段落0011?0013
「【0011】図において、1は電気掃除機の本体で、上ケース2と下ケース3により外観を構成している。また、本体1の前端部1aは2枚壁構造になっている。4は本体1の後方に接続された金属または樹脂からなる細長のパイプ、5は本体1に設けられ、本体1に対して上下または左右に回動する連結部で、パイプ4の一端が接続されている。また、パイプ4の他端にはハンドル6が設けられている。7は本体1を走行させるための車輪、8は駆動用の電源スイッチである。9は本体1の底面前方に回動可能に設けられ、起毛等の軟らかい刷子を有する前ブラシで、・・・。
【0012】10は前ブラシ9の後方に平行して回動可能に設けられ、塵埃を掻き出すための硬い刷子を有する後ブラシで、・・・。
【0013】14は本体1の後方に内蔵された電動送風機、15は本体1に形成された吸込口で、接触部13の上方に設けられている。また、吸込口15は前ブラシ9と後ブラシ10の接触部13の占める長手方向の長さとほぼ同じ幅で開口している。16は吸込口15と集塵室17とを連結する塵埃を含んだ空気の通路、18は電動送風機14と集塵室17とを仕切るように設けられた通気性のあるフィルター、19は本体1の側面に設けられた排気口、20は本体1の下面に設けられた蓋で、集塵室17に対して開閉可能に支持されている。21は回転駆動体11及び電動送風機14へ電力を送る電池、22は後ブラシ10と平行に、かつ後ブラシ10の後方に設けられたゴム等で形成された遮蔽片である。」

これら事項を、図面を参照しつつ、技術常識を考慮しながら整理すると、刊行物2には以下の事項(以下、「刊行物2事項」という。)が記載されていると認める。

「吸込口15を有する本体1と、この本体1に対して連結部5を介して回動自在に設けられたパイプ4と、パイプ4の他端に設けられたハンドル6とからなり、前記本体1の内部には電池21と集塵室17と電動送風機14が設けられた電池式の電気掃除機。」

(4)対比
補正発明と刊行物1発明とを対比する。
刊行物1発明の「吸口体22」は補正発明の「ノズル体」に相当し、同様に「回動支軸45」は「ヒンジ部」に、「電池収納部33」は「電池部」に、それぞれ相当する。
刊行物1発明の「接続パイプ部25」と、補正発明の「動力部」とは、「接続部」である限りにおいて一致する。
刊行物1発明の「連通管23と、連通管23に係合し内部に電動送風機21が設けられた把手29」と、補正発明の「把持体」とは、「把持部」である限りにおいて一致する。

したがって、補正発明と刊行物1発明とは、次の点で一致している。
「ノズル体と、このノズル体に対してヒンジ部を介して回動自在に設けられた接続部と、把持部とからなる電池式の電動掃除機において、
前記ノズル体の内部には集塵部を設け、前記接続部先端に棒状の把持部を一体的に設けると共に、前記接続部を前記ヒンジ部に対して隣接ないし近接して設けた電池式の電動掃除機。」

そして、補正発明と刊行物1発明とは、以下の点で相違している。
相違点1:電動送風機、電池部の配置が、補正発明はそれぞれ「動力部」の内部、「ノズル体」の内部であり、これにより「コンパクトで、ノズル体回りの重心を低く押さえた」ものであるが、刊行物1発明はともに「把手29」の内部である点。
相違点2:「集塵部」が、補正発明は、「着脱自在」であるが、刊行物1発明は、明らかでない点。

(5)相違点の検討
相違点1について検討する。
電動掃除機において、重量物を下部に配置し、全体の重心を低くすることで操作性を改善することは、原審で引用された特開2001-70204号公報の段落0011、特開号2001-61713公報の段落0004、0012にみられるごとく周知である。
刊行物1発明においても、操作性を改善するため、かかる周知技術を採用し、重量物を下部に配置することを試みることに困難性は認められない。
刊行物1発明では、重量物である電動送風機、電池部が、上方にある部材である「把手29」内にある。
そこで、これら電動送風機、電池部を、下方にある部材、すなわち「ノズル体」、把持体側の部材であってヒンジ部に隣接する部材である「接続パイプ部25」のいずれかの内部に配置することが自然であり、いずれに配置するかはそもそも設計的事項にすぎない。
しかも、電動送風機を、把持体側の部材であってヒンジ部に隣接する部材に配することは、特開2001-87172号公報の段落0007、0014、図1、特開平7-322972号公報の段落0013、図1にみられるごとく周知である。
かかる周知技術を踏まえ、刊行物1発明において、電動送風機を、把持体側の部材であってヒンジ部に隣接する部材である「接続パイプ部25」の内部に配置すると、「接続パイプ部25」は、補正発明でいう「動力部」とみることができる。
また、刊行物2事項は、刊行物1発明同様「電池式の電動掃除機」に関するものであり、刊行物2事項の「吸込口15を有する本体1」、「連結部5」、「電池21」は、それぞれ補正発明の「ノズル体」、「ヒンジ部」、「電池部」に相当するから、刊行物2事項は、「ノズル体内部に電池部を配した電池式の電動掃除機」である。
よって、刊行物2事項からも、電池部を「ノズル体」の内部に配することは設計的事項にすぎない。
したがって、電動送風機、電池部を、それぞれ「動力部」の内部、「ノズル体」の内部とすることは、設計的事項にすぎず、その結果として「コンパクトで、ノズル体回りの重心を低く押さえた」ものとなる。
請求人は、回答書において、「引用文献1?4に、電気掃除機本体をノズル体と動力部に分割し、ノズル体と動力部とを前記ヒンジ部で結合して、ノズル体に集塵機構と電源を、動力部に電動送風機を内蔵した構成とすることによって、ノズル体の小型化とノズル体まわりの重心を低く抑えるという技術思想も、その示唆も記載されていない」旨、主張している。
しかし、上記のとおり、この点は、設計的事項にすぎないから、請求人の主張は採用できない。

相違点2について検討する。
「集塵部」は、吸引された塵埃を貯留するもので、貯留された塵埃を廃棄することが当然必要であるから、廃棄の便を考慮し、「着脱自在」とすることに困難性は認められない。

また、これら相違点を総合勘案しても、格別の技術的意義が生じるとは認められない。

以上のことから、補正発明は、刊行物1発明、刊行物2事項、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159
条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年1月11日付けで補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、上記第2.1.(1)のとおりのものと認める。

2.刊行物等
これに対し、原審で引用された刊行物1、刊行物2、及びその記載内容は、上記第2.2.(2)、(3)に示したとおりである。

3.対比・検討
本願発明は、補正発明で付加された事項が削除されたものであり、補正発明のすべての事項を含むものである。
よって、本願発明も、上記第2.2.(4)、(5)と同様の理由により、刊行物1発明、刊行物2事項、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことから、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-25 
結審通知日 2009-11-30 
審決日 2009-12-21 
出願番号 特願2004-9837(P2004-9837)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A47L)
P 1 8・ 121- Z (A47L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長馬 望五十嵐 康弘中川 隆司  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 菅澤 洋二
今村 亘
発明の名称 電気掃除機  
代理人 牛木 護  

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