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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01M
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01M
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H01M
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H01M
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 H01M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01M
管理番号 1211869
審判番号 不服2008-18866  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-24 
確定日 2010-02-12 
事件の表示 特願2002- 23660「燃料電池発電システムおよびこれに用いる操作表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月15日出願公開、特開2003-229159〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件は、平成14年1月31日の出願であって、平成19年1月5日付けの拒絶理由通知書が送付され、同年3月16日付けで手続補正がされ、平成20年6月9日付けで拒絶査定がされたところ、この査定を不服として、同年7月24日に審判請求がされるとともに、同年8月22日付けで手続補正がされたものであり、当審において平成21年9月14日付けで前置審査報告書に基づく審尋をしたところ、同年11月10日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成20年8月22日付けの手続補正についての補正の却下の決定

【補正の却下の決定の結論】
平成20年8月22日付けの手続補正を却下する。

【決定の理由】

I.補正の内容

平成20年8月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の記載を、以下の(A)から(B)とする補正である。
(A)
「【請求項1】
燃料の供給を受けて発電する燃料電池と、
少なくとも前記燃料電池からの熱を用いて加温される水を貯湯する貯湯手段と、
前記燃料電池の運転を操作する操作部と、前記燃料電池からの出力電力と前記貯湯手段の貯湯状態とを表示する表示部とを有する操作表示手段と、
を備える燃料電池発電システム。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池発電システムであって、
前記燃料電池からの出力電力を検出する出力電力検出手段と、
前記貯湯手段の貯湯状態を検出する貯湯状態検出手段と、
を備え、
前記操作表示手段は、前記検出された燃料電池からの出力電力と前記検出された貯湯手段の貯湯状態とを入力して前記表示部に表示する手段である
燃料電池発電システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の燃料電池発電システムであって、
前記燃料電池からの出力電力を所望の電力に変換して他系統電源から負荷への電力供給ラインに供給可能な電力変換供給手段を備え、
前記操作表示手段は、前記負荷で使用されている使用電力を前記表示部に表示する手段である
燃料電池発電システム。
【請求項4】
請求項3記載の燃料電池発電システムであって、
前記負荷で使用されている使用電力を検出する使用電力検出手段を備え、
前記操作表示手段は、前記検出された使用電力を入力して前記表示部に表示する手段である
燃料電池発電システム。
【請求項5】
前記操作表示手段は、前記使用電力に代えて又は前記使用電力と共に前記他系統電源から負荷に供給されている供給電力を前記表示部に表示する手段である請求項3または4記載の燃料電池発電システム。
【請求項6】
前記操作表示手段は、前記貯湯状態として前記貯湯手段による貯湯完了状態に対するそのときの貯湯状態を前記表示部に表示する手段である請求項1ないし5いずれか記載の燃料電池発電システム。
【請求項7】
前記操作表示手段は、前記貯湯状態として前記貯湯手段に貯湯可能な最大貯湯量に対するそのときの貯湯量を前記表示部に表示する手段である請求項1ないし5いずれか記載の燃料電池発電システム。
【請求項8】
燃料の供給を受けて発電する燃料電池と、
該燃料電池からの直流電力を所望の電力に変換して他系統電源から負荷への電力供給ラインに供給可能な電力変換供給手段と、
前記燃料電池の運転を操作する操作部と、前記燃料電池からの出力電力と前記他系統電源から負荷に供給されている供給電力とを表示する表示部とを有する操作表示手段と、
を備える燃料電池発電システム。
【請求項9】
請求項8記載の燃料電池発電システムであって、
前記燃料電池からの出力電力を検出する出力電力検出手段と、
前記他系統電源から負荷に供給されている供給電力を検出する供給電力検出手段と、
を備え、
前記操作表示手段は、前記検出された燃料電池の出力電力と前記検出された他系統電源から負荷に供給されている供給電力とを入力して前記表示部に表示する手段である
燃料電池発電システム。
【請求項10】
前記操作表示手段は、前記供給電力に代えて又は前記供給電力と共に前記負荷で使用されている使用電力を前記表示部に表示する手段である請求項8または9記載の燃料電池発電システム。
【請求項11】
前記操作表示手段の表示部は、数値により表示する部である請求項1ないし10いずれか記載の燃料電池発電システム。
【請求項12】
前記操作表示手段の表示部は、段階的に変化可能な絵表示により表示する部である請求項1ないし11いずれか記載の燃料電池発電システム。
【請求項13】
前記操作表示手段の操作部は予め設定された複数の運転モードから選択入力することにより燃料電池の運転モードを設定する部であり、前記操作表示手段の表示部は前記設定された運転モードを表示する部である請求項1ないし12いずれか記載の燃料電池発電システム。
【請求項14】
前記操作表示手段は、システムの異常を表示する手段である請求項1ないし13いずれか記載の燃料電池発電システム。
【請求項15】
前記操作表示手段は、システムの点検を促す表示を行なう手段である請求項1ないし14いずれか記載の燃料電池発電システム。
【請求項16】
燃料の供給を受けて発電する燃料電池と少なくとも前記燃料電池からの熱を用いて加温される水を貯湯する貯湯手段とを備える燃料電池発電システムに用いられる操作表示装置であって、
前記燃料電池の運転を操作する操作部と、
前記燃料電池からの出力電力と前記貯湯手段の貯湯状態とを表示する表示部と、
を備える操作表示装置。
【請求項17】
前記表示部は、前記貯湯状態として前記貯湯手段による貯湯完了状態に対するそのときの貯湯状態を表示する部である請求項16記載の操作表示装置。
【請求項18】
前記表示部は、前記貯湯状態として前記貯湯手段に貯湯可能な最大貯湯量に対するそのときの貯湯量を表示する部である請求項16記載の操作表示装置。
【請求項19】
燃料の供給を受けて発電する燃料電池と該燃料電池からの直流電力を所望の電力に変換して他系統電源から負荷への電力供給ラインに供給可能な電力変換供給手段とを備える燃料電池発電システムに用いられる操作表示装置であって、
前記燃料電池の運転を操作する操作部と、
前記燃料電池からの出力電力と前記他系統電源から負荷に供給されている供給電力とを表示する表示部と、
を備える操作表示装置。
【請求項20】
前記表示部は、前記供給電力に代えて又は前記供給電力と共に前記負荷で使用されている使用電力を表示する部である請求項19記載の操作表示装置。」

(B)
「【請求項1】
燃料の供給を受けて発電する燃料電池と、
少なくとも前記燃料電池からの熱を用いて加温される水を貯湯する貯湯手段と、
前記燃料電池の運転を操作する操作部と、前記燃料電池からの出力電力と前記貯湯手段の貯湯状態とを表示すると共にシステムの異常の表示またはシステムの点検を促す表示を行なう表示部とを有する操作表示手段と、
を備える燃料電池発電システム。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池発電システムであって、
前記燃料電池からの出力電力を検出する出力電力検出手段と、
前記貯湯手段の貯湯状態を検出する貯湯状態検出手段と、
を備え、
前記操作表示手段は、前記検出された燃料電池からの出力電力と前記検出された貯湯手段の貯湯状態とを入力して前記表示部に表示する手段である
燃料電池発電システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の燃料電池発電システムであって、
前記燃料電池からの出力電力を所望の電力に変換して他系統電源から負荷への電力供給ラインに供給可能な電力変換供給手段を備え、
前記操作表示手段は、前記負荷で使用されている使用電力を前記表示部に表示する手段である
燃料電池発電システム。
【請求項4】
請求項3記載の燃料電池発電システムであって、
前記負荷で使用されている使用電力を検出する使用電力検出手段を備え、
前記操作表示手段は、前記検出された使用電力を入力して前記表示部に表示する手段である
燃料電池発電システム。
【請求項5】
前記操作表示手段は、前記使用電力に代えて又は前記使用電力と共に前記他系統電源から負荷に供給されている供給電力を前記表示部に表示する手段である請求項3または4記載の燃料電池発電システム。
【請求項6】
前記操作表示手段は、前記貯湯状態として前記貯湯手段による貯湯完了状態に対するそのときの貯湯状態を前記表示部に表示する手段である請求項1ないし5いずれか記載の燃料電池発電システム。
【請求項7】
前記操作表示手段は、前記貯湯状態として前記貯湯手段に貯湯可能な最大貯湯量に対するそのときの貯湯量を前記表示部に表示する手段である請求項1ないし5いずれか記載の燃料電池発電システム。
【請求項8】
燃料の供給を受けて発電する燃料電池と、
該燃料電池からの直流電力を所望の電力に変換して他系統電源から負荷への電力供給ラインに供給可能な電力変換供給手段と、
前記燃料電池の運転を操作する操作部と、前記燃料電池からの出力電力と前記他系統電源から負荷に供給されている供給電力とを表示すると共にシステムの異常の表示またはシステムの点検を促す表示を行なう表示部とを有する操作表示手段と、
を備える燃料電池発電システム。
【請求項9】
請求項8記載の燃料電池発電システムであって、
前記燃料電池からの出力電力を検出する出力電力検出手段と、
前記他系統電源から負荷に供給されている供給電力を検出する供給電力検出手段と、
を備え、
前記操作表示手段は、前記検出された燃料電池の出力電力と前記検出された他系統電源から負荷に供給されている供給電力とを入力して前記表示部に表示する手段である
燃料電池発電システム。
【請求項10】
前記操作表示手段は、前記供給電力に代えて又は前記供給電力と共に前記負荷で使用されている使用電力を前記表示部に表示する手段である請求項8または9記載の燃料電池発電システム。
【請求項11】
前記操作表示手段の表示部は、数値により表示する部である請求項1ないし10いずれか記載の燃料電池発電システム。
【請求項12】
前記操作表示手段の表示部は、段階的に変化可能な絵表示により表示する部である請求項1ないし11いずれか記載の燃料電池発電システム。
【請求項13】
前記操作表示手段の操作部は予め設定された複数の運転モードから選択入力することにより燃料電池の運転モードを設定する部であり、前記操作表示手段の表示部は前記設定された運転モードを表示する部である請求項1ないし12いずれか記載の燃料電池発電システム。
【請求項14】
燃料の供給を受けて発電する燃料電池と少なくとも前記燃料電池からの熱を用いて加温される水を貯湯する貯湯手段とを備える燃料電池発電システムに用いられる操作表示装置であって、
前記燃料電池の運転を操作する操作部と、
前記燃料電池からの出力電力と前記貯湯手段の貯湯状態とを表示すると共にシステムの異常の表示またはシステムの点検を促す表示を行なう表示部と、
を備える操作表示装置。
【請求項15】
前記表示部は、前記貯湯状態として前記貯湯手段による貯湯完了状態に対するそのときの貯湯状態を表示する部である請求項14記載の操作表示装置。
【請求項16】
前記表示部は、前記貯湯状態として前記貯湯手段に貯湯可能な最大貯湯量に対するそのときの貯湯量を表示する部である請求項14記載の操作表示装置。
【請求項17】
燃料の供給を受けて発電する燃料電池と該燃料電池からの直流電力を所望の電力に変換して他系統電源から負荷への電力供給ラインに供給可能な電力変換供給手段とを備える燃料電池発電システムに用いられる操作表示装置であって、
前記燃料電池の運転を操作する操作部と、
前記燃料電池からの出力電力と前記他系統電源から負荷に供給されている供給電力とを表示すると共にシステムの異常の表示またはシステムの点検を促す表示を行なう表示部と、
を備える操作表示装置。
【請求項18】
前記表示部は、前記供給電力に代えて又は前記供給電力と共に前記負荷で使用されている使用電力を表示する部である請求項17記載の操作表示装置。」

II.補正の内容についての検討
(1)請求項6,15について
補正後の請求項6,15においては、燃料電池発電システムの操作表示手段、あるいは操作表示装置において、「前記貯湯状態として前記貯湯手段による貯湯完了状態に対するそのときの貯湯状態を前記表示部に表示する」ものであることが記載されている。
しかしながら、本件の出願当初の明細書または図面(以下、「当初明細書等」と略す。)を見るに、「貯湯完了状態」とはいかなる状態なのか何ら記載されておらず、また、当該技術分野において自明のことでもないから、当該補正は、本件の当初明細書等に記載された範囲内においてしたものであるとは云えない。
なお、審判請求人はこの点について、平成19年3月16日付けの意見書において、図2,3,4の「貯湯」の部分の記載を補正の根拠としてあげているが、図2,3,4の記載及び本件の当初明細書等の記載を参酌しても、最大貯湯量とその割合であろうことを読み取ることができる(この点は、平成19年3月16日付けの補正における請求項7,18に、また平成20年8月22日付けの補正における請求項7,16に記載されている)にすぎない。

(2)請求項14,17について
補正後の請求項14,17はそれぞれ、補正前の請求項16,19に対応するものと認められ、それぞれの対応する補正前の請求項に、操作表示装置の表示部が「システムの異常の表示またはシステムの点検を促す表示を行なう」との記載事項を付加するものである。
しかしながら、補正前の請求項16,19及びその従属項の何れにおいても、「システムの異常」あるいは「システムの点検」に関する記載はない。
してみれば、当該補正は、新たな発明特定事項を付加するものであって、補正前の発明特定事項をさらに限定したものであるということはできない。
また、課題について検討するに、「システムの運転状態や使用している電力などのシステムに関する情報を表示する」ことを目的としている(段落【0004】)ことに加え、当該補正によって、「システムの異常や点検の必要性を表示する」との新たな目的を追加するものであるともいえる。
したがって、当該補正は、いわゆる「限定的減縮」にあたるとは云えない。
なお、審判請求人はこの点について、平成21年11月10日付け回答書において、「発明特定事項の直列的付加」であるから補正は適法である旨主張しているが、審判請求人の主張は、「特許請求の範囲の減縮」に該当すると主張するにとどまるものである。
さらに、当該補正が、請求項の削除、誤記の訂正、不明りょうな記載の釈明のいずれかを目的とするものでもないことは明らかである。

III.まとめ
したがって、本件補正は、上記「II.(1)」の点で、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、上記「II.(2)」の検討のとおり、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

I.本件発明
本件の平成20年8月22日付けの手続補正は、上記のとおり、却下されることとなった。
したがって、本件の請求項1-20に係る発明は、平成19年3月16日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1-20に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる。
そして、その請求項1,14,15に係る発明(以下それぞれ、「本件発明1」、「本件発明14」、「本件発明15」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
燃料の供給を受けて発電する燃料電池と、
少なくとも前記燃料電池からの熱を用いて加温される水を貯湯する貯湯手段と、
前記燃料電池の運転を操作する操作部と、前記燃料電池からの出力電力と前記貯湯手段の貯湯状態とを表示する表示部とを有する操作表示手段と、
を備える燃料電池発電システム。
【請求項14】
前記操作表示手段は、システムの異常を表示する手段である請求項1ないし13いずれか記載の燃料電池発電システム。
【請求項15】
前記操作表示手段は、システムの点検を促す表示を行なう手段である請求項1ないし14いずれか記載の燃料電池発電システム。」

II.原査定の理由の概要
原審の拒絶査定の理由は、概略以下のとおりである。
「本件発明1-20は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1-3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特開2001-135321号公報
刊行物2:特開2001-325982号公報
刊行物3:特開2001-023668号公報」

III.刊行物の記載事項
1.刊行物1
原審において引用した刊行物1には、以下の記載がある。

[1a]
「【請求項1】 燃料電池と、燃料電池の廃熱を蓄熱する熱水蓄熱槽と、燃料電池の出力電力により運転される冷却用熱交換装置と、該熱交換装置から供給される冷却熱媒により氷蓄熱を行う氷蓄熱槽とを少なくとも備えていることを特徴とする燃料電池コージェネレーションシステム。」

[1b]
「【請求項5】 冷却用熱交換装置の廃熱を蓄熱する温水蓄熱槽を備え、該温水蓄熱槽により予熱された水道水を熱水蓄熱槽により加熱して給湯するよう構成したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料電池コージェネレーションシステム。」

[1c]
「【0025】
本発明のコジェネシステムは、更に、システムの構成要素全体を一括監視する監視システムを融合したものとすることができる。例えば、燃料電池、各蓄熱槽、各配管、電力系統等の所望箇所に温度センサ、電力センサ、流量センサなどの所望のセンサを配置し、これらセンサの検出信号を監視装置に一括して入力し、コジェネシステムの稼働状況をディスプレイ表示するとともに、システムの運転モードの変更などを行うための操作手段を設けた一括監視操作システムとして構成することができる。」

[1d]
「【0026】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1は本発明の第1実施例に係るコジェネシステムの全体ブロック図である。
・・・(略)・・・
【0034】
保温ショーケース8やシンク9には、給湯配管25が配設されており、水道管26から供給される水道水を所定温度に加熱して給湯し得るように構成されている。この給湯配管25の中途部は、上記タンク19内に配設されており、温水蓄熱槽5並びに熱水蓄熱槽2にそれぞれ充填された温水熱媒と熱水熱媒との間で熱交換することにより、給湯配管25内を流れる水を所定温度に加熱し得るようになっている。即ち、給湯配管25の上流側は温水蓄熱槽5内に配設され、その下流側がタンク19の遮蔽壁を貫通して熱水蓄熱槽2内に配設されている。したがって、水道水は、まず温水蓄熱槽5内を流れるときに30℃?40℃程度にまで予熱され、その後熱水蓄熱槽2内を流れることによって70℃程度にまで加熱される。かかる構成によれば、給湯タンクを設けなくとも、必要時に効率的に水道水を加熱して給湯することが可能となる。なお、給湯配管25は、熱水蓄熱槽2内で分岐され、住宅の床暖房設備13やバスユニット14にも供給されている。」

2.刊行物2
原審において引用した刊行物2には、以下の記載がある。

[2a]
「【請求項1】 燃料電池を備える燃料電池装置と貯湯槽を備える給湯装置とのコンバインシステムであって、
前記燃料電池からの排ガスの流路をなす排ガス流と前記貯湯槽からの水の流路をなす水流路とを熱交換可能に備え、前記燃料電池からの排ガス中に含まれる水を凝縮可能な熱交換手段と、
該熱交換手段による凝縮により得られた水を前記燃料電池装置の運転に必要な水として貯蔵する凝縮水貯蔵手段と
を備える燃料電池装置と給湯装置のコンバインシステム。」

[2b]
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池装置と給湯装置のコンバインシステムに関し、詳しくは、燃料電池を備える燃料電池装置と貯湯槽を備える給湯装置とのコンバインシステムに関する。」

3.刊行物3
原審において引用した刊行物3には、以下の記載がある。

[3a]
「【請求項1】 水素含有ガス及び酸素含有ガスが供給されて、水素含有ガス中の水素と酸素含有ガス中の酸素とを電気化学反応させて発電する燃料電池発電部が設けられ、
被加熱水が前記燃料電池発電部の排熱を回収して、貯湯槽に貯留されるように構成された燃料電池発電装置であって、
前記被加熱水を冷却水として前記燃料電池発電部に通流させて、前記被加熱水が前記燃料電池発電部の排熱を回収するように構成されている燃料電池発電装置。」

[3b]
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素含有ガス及び酸素含有ガスが供給されて、水素含有ガス中の水素と酸素含有ガス中の酸素とを電気化学反応させて発電する燃料電池発電部が設けられ、
被加熱水が前記燃料電池発電部の排熱を回収して、貯湯槽に貯留されるように構成された燃料電池発電装置に関する。」

IV.当審の判断
1.刊行物1に記載された発明
刊行物1の[1a]には、「燃料電池と、燃料電池の廃熱を蓄熱する熱水蓄熱槽と・・・を・・・備えている・・・燃料電池コージェネレーションシステム」が記載されており、この熱水蓄熱槽に関し、[1b]には、「水道水を熱水蓄熱槽により加熱して給湯する」ことが記載されている。
そして、当該燃料電池コージェネレーションシステムに関し、[1c]には、「本発明のコジェネシステムは、更に、システムの構成要素全体を一括監視する監視システムを融合したもの・・・例えば、燃料電池、各蓄熱槽、各配管、電力系統等の所望箇所に温度センサ、電力センサ、流量センサなどの所望のセンサを配置し、これらセンサの検出信号を監視装置に一括して入力し、コジェネシステムの稼働状況をディスプレイ表示するとともに、システムの運転モードの変更などを行うための操作手段を設けた一括監視操作システムとして構成する」ことが記載されている。
そこで、上記の記載事項を本件発明1の記載ぶりに則して整理して記載すると、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているといえる。

『燃料電池と、
燃料電池の廃熱を蓄熱し、蓄熱した熱で給湯用の水道水を加熱する熱水蓄熱槽と、
前記燃料電池の運転モードの変更などを行う操作手段と、
燃料電池、各蓄熱槽、各配管、電力系統等の所望箇所に温度センサ、電力センサ、流量センサなどを配置し、これらセンサの検出信号を監視装置に一括して入力し、稼働状況をディスプレイ表示する一括監視操作システムと、
を備える燃料電池システム』

2.本件発明1について
本件発明1(前者)と刊行物1発明(後者)と対比すると、後者の『運転モードの変更などを行う操作手段』、『燃料電池、各蓄熱槽、各配管、電力系統等の所望箇所に温度センサ、電力センサ、流量センサなどを配置し、これらセンサの検出信号を監視装置に一括して入力し、稼働状況をディスプレイ表示する』、『一括監視操作システム』は、それぞれ、前者の「運転を操作する操作部」、「燃料電池からの出力電力を表示する表示部」、「操作表示手段」に相当すると認められる。また、後者の、熱水蓄熱槽を利用して『給湯用の水道水を加熱する』ことは、前者の、「前記燃料電池からの熱を用いて加温される水」を得ることに相当する。さらに、後者の『燃料電池』が「燃料の供給を受けて発電する」ものであることは、当該技術分野において自明のことである。
してみると両者は、

「燃料の供給を受けて発電する燃料電池と、
少なくとも前記燃料電池からの熱を用いて加温される水と、
前記燃料電池の運転を操作する操作部と、前記燃料電池からの出力電力を表示する表示部とを有する操作表示手段と、
を備える燃料電池発電システム。」

との点で一致するものの、次の点で相違している。

相違点:本件発明1においては、加温される水の「貯湯手段」を有し、表示部において、「貯湯手段の貯湯状態を表示する」のに対し、刊行物1発明においては、「貯湯手段」の有無及び表示部において「貯湯手段の状態を表示する」か否かが不明である点。

上記相違点について検討する。

刊行物1の摘示[1d]には、実施例に関し、「かかる構成によれば、給湯タンクを設けなくとも、必要時に効率的に水道水を加熱して給湯することが可能となる。」と、給湯タンクを設ける必要が必ずしもない例が記載されている。しかしながら、当該記載(実施例)は、給湯タンクを設けなくても給湯が可能であることを示すものの、給湯タンクを設けることを阻害するものではない。そして、刊行物2,3の摘示[2a],[2b],[3a],[3b]にあるように、燃料電池の廃熱(排熱)を用いて加熱された温水を貯め置く「貯湯槽」を設け給湯に供するシステムは、本件出願前において周知である。
してみれば、刊行物1発明において、給湯に供するために、燃料電池からの熱を用いて加温される水を貯湯する「貯湯手段」を設けることは、当業者にとって何ら困難なことではない。そして、刊行物1発明は、「燃料電池、各蓄熱槽、各配管、電力系統等の所望箇所に温度センサ、電力センサ、流量センサなどを配置し、これらセンサの検出信号を監視装置に一括して入力し、稼働状況をディスプレイ表示する」ものであるのだから、「貯湯手段」を設けた際、「貯湯手段」の「貯湯状態」を検知しディスプレイ表示できるようにすることは、自ずとなし得ることにすぎない。

3.本件発明14,15について
なお、上記「第2」において、平成20年8月22日付けの手続補正を却下したが、当該補正後の請求項1に係る発明は、本件発明14,15にあたるため、念のため検討を進めておく。
本件発明14,15はそれぞれ、本件発明1を引用しつつ、操作表示手段が、「システムの異常を表示する」こと、あるいは、「システムの点検を促す表示を行なう」ことを特定するものであるが、刊行物1発明は、『一括監視操作システム』であって、「監視」とは、通常、異常や点検の必要性の有無を「見張る」ことを含むものと認められる。
してみれば、当該発明特定事項は、刊行物1発明との対比において、新たな相違点とはなり得ない。

VI.まとめ
以上のとおり、本件発明1,14,15は、刊行物1?3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の発明について検討するまでもなく、本件は原査定の理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-04 
結審通知日 2009-12-08 
審決日 2009-12-21 
出願番号 特願2002-23660(P2002-23660)
審決分類 P 1 8・ 573- Z (H01M)
P 1 8・ 574- Z (H01M)
P 1 8・ 571- Z (H01M)
P 1 8・ 572- Z (H01M)
P 1 8・ 121- Z (H01M)
P 1 8・ 561- Z (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前田 仁志服部 智  
特許庁審判長 吉水 純子
特許庁審判官 大橋 賢一
植前 充司
発明の名称 燃料電池発電システムおよびこれに用いる操作表示装置  
代理人 特許業務法人アイテック国際特許事務所  
代理人 特許業務法人アイテック国際特許事務所  

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