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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1211878
審判番号 不服2008-24116  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-19 
確定日 2010-02-12 
事件の表示 特願2001-320633「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月22日出願公開、特開2003-117149〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年10月18日の出願であって、平成20年8月15日付け(8月26日発送)で拒絶査定され、これに対し、同年9月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

2.平成20年9月19日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年9月19日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成20年9月19日付けの手続補正書(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】
遊技者にとって有利な第1状態と遊技者にとって不利な第2状態とに変動可能な変動入賞装置と、連続する数字で構成される識別情報を3列に渡って変動表示可能な表示装置とを備え、前記3列の識別情報が全て同一数字で揃って確定表示された場合に、前記変動入賞装置を第1状態に変動させるようにした遊技機において、
前記3列の識別情報のうち2列の識別情報が同一数字で一旦停止したリーチ状態となった場合に、前記3列の識別情報のうち同一数字で一旦停止してリーチ状態を形成する前記2列のリーチ識別情報の数字が、前記3列の識別情報のうち前記リーチ識別情報以外の一旦停止している非リーチ識別情報の数字に接近するように、前記リーチ識別情報の数字を自体の数字に連続する数字に切り換える変動と、前記非リーチ識別情報の数字が、前記切り換わった後の前記リーチ識別情報の数字に接近するように、前記非リーチ識別情報の数字を自体の数字に連続する数字に切り換える変動とを、交互に行った後、前記リーチ状態になったときの前記リーチ識別情報の数字及び前記非リーチ識別情報の数字以外の数字をもって、前記3列の識別情報が全て同一数字に揃うように前記表示装置を制御する変動表示制御手段を備えることを特徴とする遊技機。」
に補正された。

本件補正は、補正前(平成20年5月21日付け手続補正による補正)の請求項1に、「3列の識別情報」という技術事項、「(リーチ識別情報の数字の非リーチ識別情報の数字への接近変動表示と非リーチ識別情報の数字のリーチ識別情報の数字への接近変動表示とを交互に行った後に)リーチ状態になったときのリーチ識別情報の数字及び非リーチ識別情報の数字以外の数字をもって、3列の識別情報が全て同一数字に揃うように表示装置を制御する」という技術事項を加えたものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。

(2)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された特開2001-231993号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0003】可変表示ゲームには、前述した表示装置を特別図柄表示装置として用いることにより行うもの(以下、特図ゲーム)と、表示装置を普通図柄表示装置として用いることにより行うもの(以下、普図ゲーム)とがある。特図ゲーム及び普図ゲームは、共に遊技球の入賞に伴って表示図柄の変動表示を所定時間行い、表示図柄の変動表示が停止した際の停止図柄態様が特定表示態様となっている場合を「当たり」とするゲームである。
【0004】特図ゲームにおいて「当たり」(以下、大当たり)となると、特別電動役物用ソレノイドを励磁することによって大入賞口またはアタッカと呼ばれる特別電動役物が開放状態とされ、遊技者に対して遊技球の入賞が極めて容易となる状態を一定時間継続的に提供する。ここで、特図ゲームにおいて大当たりとなり、特別電動役物が開放状態となることにより、遊技者に対して遊技球の入賞が極めて容易となる状態を特別遊技状態という。」

(イ)「【0009】特図ゲームにおける代表的な演出表示としては、例えば、リーチ演出表示がある。リーチ演出表示とは、最終停止図柄となる表示図柄以外の図柄が、所定時間継続して、大当たりとなる特定の停止図柄態様と一致している状態で停止、揺動、拡大縮小あるいは変形している状態(以下、これらの状態を停留という)、または、複数の表示図柄が同一図柄で同期して変動したり、表示図柄の位置が入れ替わっている状態のように、最終結果が表示される前段階において大当たり可能性が継続している状態(以下、これらの状態をリーチ状態という)において行われる演出表示のことを指す。
【0010】例えば、左図柄、中図柄、右図柄のように、横方向に3つ配置される表示図柄が、左図柄、右図柄、中図柄の順に停止し、これら表示図柄がすべて同一図柄で揃った場合に大当たりとなるものとする。このとき、最終停止図柄以外の左図柄及び右図柄が同一図柄で停留している場合、この状態をリーチ状態という。リーチ状態となると、例えば、中図柄の変動表示パターンを通常状態とは異なる変動表示パターンとすることで、遊技興趣を盛り上げるように構成されたものが一般的である。」

(ウ)「【0032】この実施の形態にかかるパチンコ遊技機1の特別図柄としては、「0」?「11」までの数字に対応する12個の表示図柄が用意されている。各数字の表示図柄は、特別図柄表示装置6a、6b、6cにおいて、順番に並んでおり、順にスクロール表示される。」

(エ)「【0035】特別図柄表示装置6の下方位置には、電動チューリップ型役物(普通電動役物)4を兼用する特別図柄始動口(スタートチャッカ)5と、大当たり発生時にソレノイド等を駆動することで開放動作を行う大入賞口(第1種特別電動役物)7とが順に配列されている。大入賞口7は、特別図柄始動口5への入賞タイミングに基づいて特図ゲームが行われた結果、大当たりとなった場合に、1回につき29.5秒間の大入賞口扉8の開放動作を行う。
【0036】この開放動作は、遊技球が大入賞口7内の特定領域9を通過することを条件として最大15回継続して行う。これによって、遊技者に対して特別遊技(ボーナスゲーム)による多くの賞球獲得の機会を与える。なお、大入賞口7内に、遊技球がおおむね10個入賞した場合は、開放時間が約29.5秒以内であっても大入賞口7の開放動作は停止する。」

(オ)「【0077】図5は、出力ソレノイド群を構成する各ソレノイドを示す図である。出力ソレノイド群400は、普通電動役物用ソレノイド401、大入賞口用ソレノイドA402、大入賞口用ソレノイドB403から構成されている。普通電動役物用ソレノイド401は、電動チューリップ型役物4の開閉動作を行うためのものであり、大入賞口用ソレノイドA402及び大入賞口用ソレノイドB403は、大入賞口7の開閉動作及び特定領域9を開閉するためのものである。」

(カ)「【0138】なお、以下の各変動パターンの説明において、最終的な停止結果として現れる図柄や、それまでの過程に表示される表示図柄及びその主たる変動態様は、前述したように、遊技制御部200が各乱数を取得した時点で、変動表示の開始時点では予め決まっている。各変動パターンでの表示図柄の変動は、上記した特別図柄プロセス処理において遊技制御部200から送られてくる変動コマンドに基づいて、表示制御部500が制御する。以下の説明に用いるフローチャートは、このような手順に従って表示制御部500が特別図柄表示装置6上への表示図柄の表示を制御する処理の一例を示したものである。」

(キ)「【0155】(4)リーチパターンC(反転リーチパターン)
図19、図20は、反転リーチパターンのときにおける特別図柄表示装置上の表示例を示す図である。このパターンでも変動表示の開始前は、図19(a)に示すように、特別図柄表示装置6上の特別図柄表示領域6a?6cのそれぞれに表示されている表示図柄が、「8」、「3」、「11」となっているものとする。この状態から、通常変動表示の場合と同様にして、図19(b)に示すように、特別図柄表示領域6a?6cに順次表示図柄をスクロール表示させる。
【0156】次に、特別図柄表示領域6aの表示図柄のスクロール表示速度を低減させ、図19(c)に示すように、図柄「7」で仮停止させる。さらに、特別図柄表示領域6cの表示図柄のスクロール表示速度を低減させ、図柄「7」で仮停止させる。すなわち、特別図柄表示領域6a、6cの表示図柄が、図柄「7」で一致したリーチ状態となる。
【0157】次に、特別図柄表示領域6bの表示図柄のスクロール表示速度を低減させ、図19(d)に示すように、図柄「10」で仮停止させる。しかし、特別図柄表示領域6a?6cの各表示図柄は、この状態で完全停止状態とならず、一定期間経過した後に、スクロール表示されていた方向と反対方向のコマ送り表示に切り替える。すなわち、図19(e)に示すように、一定期間だけ図柄「10」を上下揺れ表示させる停留をさせ、次の図柄に送る。図19(f)に示すように、一定期間だけ図柄「9」を上下揺れ表示させる停留をさせ、次の図柄に送る。さらに、図19(g)に示すように、一定期間だけ図柄「8」を上下揺れ表示させる停留をさせ、次の図柄に送る。こうして大当たりとなる図柄「7」が近づいてくるたびに、遊技者の期待感は徐々に高まってくる。
【0158】さらに、図柄「8」からコマ送りされると、図19(h)に示すように、特別図柄表示領域6bに表示される表示図柄を、図柄「7」で仮停止させる。そして、特別図柄表示領域6a?6cの各表示図柄をこの状態で一定期間停留させた後、図19(i)に示すように、各表示図柄の上下揺れを停止させた完全停止状態とする。こうして表示図柄が完全停止状態となることによって、特図ゲームの結果(この場合は、確率変動図柄「7」による大当たり)が遊技者に示される。
【0159】また、この変動パターンにおいて、最終表示態様を大当たりの表示態様の1段階前の態様とする場合は、図19(f)の状態からコマ送りされると、図20(1-a)に示すように、特別図柄表示領域6bに表示される表示図柄を「8」で仮停止させる。そして、特別図柄表示領域6a?6cの各表示図柄をこの状態で一定期間停留させた後、図20(1-b)に示すように、各表示図柄の上下揺れを停止させた完全停止状態とする。こうして表示図柄が完全停止状態となることによって、特図ゲームの結果(この場合は、ハズレ)が遊技者に示される。
【0160】また、この変動パターンにおいて、最終表示態様を大当たりの表示態様から1段階変動させた態様とする場合は、図19(g)の状態からコマ送りされると、図20(2-a)に示すように、一定期間だけ図柄「7」を上下揺れ表示させる停留をさせる。このとき、特別図柄表示装置6上の表示態様は、大当たりの表示態様となり、しかもこれで一定期間停留しているので、この間に遊技者の期待感はかなり高いものとなる。
【0161】しかし、表示図柄はさらにコマ送りされて、図20(2-b)に示すように、特別図柄表示領域6bに表示される表示図柄を「6」で仮停止させる。そして、特別図柄表示領域6a?6cの各表示図柄をこの状態で一定期間停留させた後、図20(2-c)に示すように、各表示図柄の上下揺れを停止させた完全停止状態とする。こうして表示図柄が完全停止状態となることによって、特図ゲームの結果(この場合は、ハズレ)が遊技者に示される。」

(ク)「【0169】(6)リーチパターンE(左右変動リーチパターン)
図22は、左右変動リーチパターンのときにおける特別図柄表示装置上の表示例を示す図である。このパターンでも変動表示の開始前は、図22(a)に示すように、特別図柄表示装置6上の特別図柄表示領域6a?6cのそれぞれに表示されている表示図柄が、「8」、「3」、「11」となっているものとする。この状態から、通常変動表示の場合と同様にして、図22(b)に示すように、特別図柄表示領域6a?6cに順次表示図柄をスクロール表示させる。
【0170】次に、特別図柄表示領域6aの表示図柄のスクロール表示速度を低減させ、図22(c)に示すように、図柄「7」で仮停止させる。さらに、特別図柄表示領域6cの表示図柄のスクロール表示速度を低減させ、図柄「7」で仮停止させる。すなわち、特別図柄表示領域6a、6cの表示図柄が、図柄「7」で一致したリーチ状態となる。
【0171】次に、特別図柄表示領域6bの表示図柄のスクロール表示速度を低減させ、図22(d)に示すように、図柄「5」で仮停止させる。しかし、特別図柄表示領域6a?6cの各表示図柄は、この状態で完全停止状態とならない。一定期間経過した後、今度は特別図柄表示領域6a、6cの各表示図柄を、スクロール表示されていた方向と反対方向のコマ送り表示をする。すなわち、図22(e)に示すように、一定期間だけ図柄「7」を上下揺れ表示させる停留をさせ、次の図柄に送る。図22(f)に示すように、一定期間だけ図柄「6」を上下揺れ表示させる停留をさせ、次の図柄に送る。こうして大当たりとなる図柄「5」が近づいてくるたびに、遊技者の期待感は徐々に高まってくる。
【0172】さらに、図柄「8」からコマ送りされると、図22(g)に示すように、特別図柄表示領域6a、6cに表示される表示図柄を、図柄「5」で仮停止させる。そして、特別図柄表示領域6a?6cの各表示図柄をこの状態で一定期間停留させた後、図22(h)に示すように、各表示図柄の上下揺れを停止させた完全停止状態とする。こうして表示図柄が完全停止状態となることによって、特図ゲームの結果(この場合は、確率変動図柄「5」による大当たり)が遊技者に示される。
【0173】また、この変動パターンにおいて、最終表示態様を大当たりの表示態様から1段階変動させた態様とする場合は、図22(g)の状態からコマ送りされると、図22(2-a)に示すように、特別図柄表示領域6a、6cに一定期間だけ図柄「5」を上下揺れ表示させる停留をさせる。このとき、特別図柄表示装置6上の表示態様は、大当たりの表示態様となり、しかもこれで一定期間停留しているので、この間に遊技者の期待感はかなり高いものとなる。
【0174】しかし、表示図柄はさらにコマ送りされて、図22(2-b)に示すように、特別図柄表示領域6a、6bに表示される表示図柄を「4」で仮停止させる。そして、特別図柄表示領域6a?6cの各表示図柄をこの状態で一定期間停留させた後、図22(2-c)に示すように、各表示図柄の上下揺れを停止させた完全停止状態とする。こうして表示図柄が完全停止状態となることによって、特図ゲームの結果(この場合は、ハズレ)が遊技者に示される。」

以上、(ア)-(ク)の記載、および図面を総合すると、引用例1には、
「開閉動作を行う大入賞口を備え、左、中、右の特別図柄が3列に横方向に配列される特別図柄表示装置において、「0」から「11」までの順番に並んでいる数字で構成される前記特別図柄が順にスクロール表示され、前記3列の特別図柄が全て同一で揃って停止表示された場合に、前記大入賞口を開放状態とする遊技機において、
前記3列の特別図柄のうち右列と左列の特別図柄が「7」で仮停止したリーチ状態となり、中列の特別図柄が「5」で仮停止した場合に、「7」で仮停止している前記右列と左列の特別図柄の数字が、「5」で仮停止している中列の特別図柄の数字に近づくように、前記右列と左列の特別図柄の数字を「7」、「6」、「5」と順に次の図柄に送る変動を行い、前記左、中、右の3列の特別図柄が全て同一数字に揃うリーチパターンEと、
前記3列の特別図柄のうち右列と左列の特別図柄が「7」で仮停止したリーチ状態となり、中列の特別図柄が「10」で仮停止した場合に、「10」で仮停止した前記中列の特別図柄の数字が、「7」で仮停止している前記右列と左列の特別図柄の数字に近づくように、前記中列の特別図柄の数字を「9」、「8」、「7」と順に次の図柄に送る変動を行い、前記左、中、右の3列の特別図柄が全て同一数字に揃うリーチパターンC、を特別図柄表示装置に表示するように制御する表示制御部を備えることを特徴とする遊技機。」
の発明が開示されていると認めることができる。
(以下、この発明を「引用発明1」という。)

(3)対比
引用発明の「開放状態」は本願補正発明の「遊技者にとって有利な第1の状態」に相当し、以下同様に
「大入賞口」は「変動入賞装置」に、「特別図柄」は「識別情報」に、「特別図柄表示装置」は「表示装置」に、「仮停止」は「一旦停止」に、「近づく」は「接近」に、「表示制御部」は「変動表示制御手段」にそれぞれ相当する。
そして、引用発明の「大入賞口」は、「開閉動作」を行っていることから、本願補正発明の「遊技者にとって有利な第1の状態と遊技者にとって不利な第2の状態」を有していることは自明である。
また、上記リーチパターンEにおいて、仮停止した中列の特別図柄の「5」と仮停止した右列と左列の特別図柄の「7」は、それぞれ本願補正発明の「(リーチ状態となったときの)非リーチ識別情報の数字」と「(リーチ状態となったときの)リーチ識別情報の数字」に相当し、同様に上記リーチパターンCにおいて、仮停止した中列の特別図柄の「10」と仮停止した右列と左列の特別図柄の「7」は、それぞれ本願補正発明の「(リーチ状態となったときの)非リーチ識別情報の数字」と「(リーチ状態となったときの)リーチ識別情報の数字」に相当する。
さらに、上記リーチパターンEにおいて、仮停止した右列と左列の特別図柄の「7」は、複数回の変動を経て仮停止した中列の特別図柄の「5」に接近し、最終的に「5」となり左、中、右の3列の特別図柄が全て同一数字に揃うから、リーチ状態となったときのリーチ識別情報の数字以外の数字をもって左、中、右の3列の特別図柄が全て同一数字に揃うと言え、同様に上記リーチパターンCにおいて、仮停止した中列の特別図柄の「10」は、複数回の変動を経て仮停止した右列と左列の特別図柄の「7」に接近し、最終的に「7」となり左、中、右の3列の特別図柄が全て同一数字に揃うから、リーチ状態となったときの非リーチ識別情報の数字以外の数字をもって左、中、右の3列の特別図柄が全て同一数字に揃うと言える。

以上のことから、両者は、
〈一致点〉
遊技者にとって有利な第1状態と遊技者にとって不利な第2状態とに変動可能な変動入賞装置と、連続する数字で構成される識別情報を3列に渡って変動表示可能な表示装置とを備え、前記3列の識別情報が全て同一数字で揃って確定表示された場合に、前記変動入賞装置を第1状態に変動させるようにした遊技機において、
前記3列の識別情報のうち2列の識別情報が同一数字で一旦停止したリーチ状態となった場合に、
前記3列の識別情報のうち同一数字で一旦停止してリーチ状態を形成する前記2列のリーチ識別情報の数字が、前記3列の識別情報のうち前記リーチ識別情報以外の一旦停止している非リーチ識別情報の数字に接近するように、前記リーチ識別情報の数字を自体の数字に連続する数字に複数回切り換えて変動することで、3列の識別情報が全て同一数字に揃うように前記表示装置を制御するか、
前記非リーチ識別情報の数字が、前記リーチ識別情報の数字に接近するように、前記非リーチ識別情報の数字を自体の数字に連続する数字に複数回切り換えて変動することで、3列の識別情報が全て同一数字に揃うように、前記表示装置を制御する変動表示制御手段を備える遊技機。
である点で一致し、以下の点で相違している。
〈相違点1〉
リーチ状態となったときのリーチ識別情報と非リーチ識別情報の変動に関して、本願補正発明はリーチ識別情報の数字の非リーチ識別情報の数字へ接近する変動と、非リーチ識別情報の数字のリーチ識別情報の数字へ接近する変動とが、交互に行われるの対し、引用発明1では、リーチ識別情報の数字の非リーチ識別情報の数字へ接近する変動と、非リーチ識別情報の数字のリーチ識別情報の数字へ接近する変動を、それぞれ異なるリーチパターンにおいて行っているが、交互には行っていない点。
〈相違点2〉
3列の識別情報が全て同一の数字に揃った場合の識別情報の数字に関して、本願補正発明ではリーチ状態となったときのリーチ識別情報の数字および非リーチ識別情報の数字とも、それぞれリーチ識別情報の数字以外および非リーチ識別情報の数字以外の数字で揃うように変動しているのに対し、引用発明1ではリーチ識別情報の数字はリーチ識別情報の数字以外の数字に、非リーチ識別情報の数字は非リーチ識別情報の数字以外の数字で揃うように変動しているものの、それぞれ別のリーチパターンにおける変動である点。

(4)判断
〈相違点1〉について
原査定の拒絶の理由において引用された特開2001-259157号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(ケ)「【0029】この選定カウンタc(大当たり)は適宜の確率に配分してあり、例えば、選定カウンタaが「奇数」で、選定カウンタc(大当たり)が「5」のときには、停止図柄(大当たり図柄)は「日、日、日」が選定されて図8(G)におけるパターン11が選定される。即ち、大当たり該当図柄で構成しないリーチ図柄「木、↓、木」から始まって、大当たり図柄「日、日、日」で終るパターンである。そして、この図柄表示は、図9(C)に示すように、先ず、全図柄を一斉に変動表示し(S151)(図9(C)(a))、第1図柄表示部L1(左)と第2図柄表示部L2(右)には「木」を停止してリーチ図柄を表示する(S152、S153)(図9(C)(b))。その後、リーチアクションとして、第3図柄表示部L3(中)を遊技者に見える速度で可変表示して、「祝」を停止表示する(S154、S155)(図9(C)(c))。
【0030】次に、リーチパターンによる回数の判断によって(S156)、第1図柄表示部L1(左)と第2図柄表示部L2(右)の再変動を行い(S158)(図9(C)(d)、「金」のリーチ図柄を表示する(S152、S153)(図9(C)(e))。そして、リーチアクションとして、第3図柄表示部L3(中)を遊技者に見える速度で可変表示して「祝」を停止表示する(S154、S155)(図9(C)(f))。以下、同様に、図9(C)(g)(h)に示すように、「土」のリーチ図柄を表示する(S152、S153)。このリーチが、大当たりとなるか否かのリーチである。即ち、最初のリーチ図柄「木、↓、木」から始まって、順次、リーチを繰り返して、大当たり該当図柄で構成の「土、↓、土」になったときが、本来の大当たりとなるリーチである。
【0031】そして、その後、リーチアクションとして、第3図柄表示部L3(中)を遊技者に見える速度で可変表示して「祝」を停止表示することによって、再変動が実施されるか、そのまま停止するか興味が沸く(S154、S155)(図9(C)(i))。この場合には、第3図柄表示部L3(中)の「祝」は再変動を意味し、第1図柄表示部L1(左)と第2図柄表示部L2(右)が変動を開始し、その後に、「日」のリーチ図柄を表示する(S152、S153)(図9(C)(k))。その後、リーチアクションとして、第3図柄表示部L3(中)を遊技者に見える速度で可変表示して「日」を停止表示して(S154、S155)(図9(C)(l))、特定図柄での大当たりとなる。尚、ステップ156は、前記した様に、選定されたパターンP1?P21によって選定される再変動回数の判断である。
【0032】以上のように、大当たり図柄は「土、土、土(非特定図柄)」か、「日、日、日(特定図柄)」であり、最初、大当たり該当図柄ではないリーチ図柄から、第3図柄表示部L3(中)に「祝」が表示される毎に、順次、大当たり該当図柄に近付くので、図柄変動に興味が沸く。」

引用例2において、「木、↓、木」また「木、祝、木」の「木」は、リーチ成立後大当たりが確定するまでの変動毎に「金」、「土」、「日」と順に変動している。
これは引用例2が識別情報として一週間の曜日を用いており、上記の変動順序は一週間の曜日の順序に基づくものであることは明らかであるから、引用例2における図柄が、本願補正発明の「連続する数字で構成される識別情報」に対応することは当業者にとって自明である。
また、「木」および「祝」は、本願補正発明のリーチ状態となったときのリーチ識別情報の数字および非リーチ識別情報の数字にそれぞれ対応する図柄であることも当業者にとって自明である。
そして、引用例2には、リーチ識別情報である「木」と非リーチ識別情報である「祝」とが交互に変動を繰り返すことによって、最終的に全て同一の識別情報の図柄に揃う表示態様が記載されている(以下、「引用発明2」という。)。
引用発明1は、リーチ識別情報と非リーチ識別情報とがそれぞれ異なるリーチパターンにおける変動であり、引用発明2はそれらを交互に変動させるものであるが、両者は最終的に大当たりとなる変動である点で共通し、引用発明1および2に記載の表示態様を組み合わせることは、遊技機の技術分野において当業者が通常行う程度のことであり、そうすることに格別の技術的困難性もない。
よって、引用発明2の表示態様を引用発明1に適用し、引用発明1における、リーチ識別情報の変動と非リーチ識別情報の変動とを交互に行うようにすることは、当業者が容易に想到し得る程度のことである。

〈相違点2〉について
引用発明1には、リーチ識別情報の数字が複数回の接近を伴う変動を経てリーチ識別情報の数字以外の数字で確定表示され、結果的に識別情報が全て同一の識別情報の数字に揃うリーチパターンと、非リーチ識別情報の数字が複数回の接近を伴う変動を経て非リーチ識別情報の数字以外の識別情報の数字で確定表示され、結果的に識別情報が全て同一の識別情報の数字に揃うリーチパターンとが記載されているのであるから、〈相違点1〉で検討したように、引用発明2に記載される表示態様を、引用発明1に適用すれば、同一の識別情報の数字に揃えるために、それぞれの識別情報の数字を互いに接近するように変動させるという〈相違点2〉にかかる本願補正発明の構成を同時に達成することは、当業者であれば容易に想到できることである。

以上のように、本願補正発明は、引用発明1および引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(5)本願補正発明についてのまとめ
本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明及び引用文献に記載された発明
平成20年9月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、請求項に係る発明は、平成20年5月21日付け手続補正により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものである。
そして、その請求項1により特定される発明は次のとおりである。
「【請求項1】
遊技者にとって有利な第1状態と遊技者にとって不利な第2状態とに変動可能な変動入賞装置と、連続数字で構成される識別情報を複数列に渡って変動表示可能な表示装置とを備え、前記複数列の識別情報が全て同一数字で揃って確定表示された場合に、前記変動入賞装置を第1状態に変動させるようにした遊技機において、
前記複数列の識別情報のうち少なくとも2列の識別情報が同一数字で一旦停止したリーチ状態となった場合に、前記複数列の識別情報のうち同一数字で一旦停止してリーチ状態を形成するリーチ識別情報を、自体の数字が前記複数列の識別情報のうち前記リーチ識別情報以外の非リーチ識別情報の数字に接近する変動と、前記非リーチ識別情報を、自体の数字が前記リーチ識別情報の数字に接近する変動とを、交互に行うように前記表示装置を制御する変動表示制御手段を備えることを特徴とする遊技機。」
(この発明を「本願発明」という。)

一方、原査定の拒絶の理由に引用された、特開2001-231993号公報(引用例1)および特開2001-259157号公報(引用例2)に記載された発明は、前記「2.(2)」、「2.(4)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は 前記「2.(1)」で検討した本願補正発明から「3列の識別情報」という技術事項、「(リーチ識別情報の数字の非リーチ識別情報の数字への接近変動表示と非リーチ識別情報の数字のリーチ識別情報の数字への接近変動表示とを交互に行った後に)リーチ状態になったときのリーチ識別情報の数字及び非リーチ識別情報の数字以外の数字をもって、3列の識別情報が全て同一数字に揃うように表示装置を制御する」という技術事項を除いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明1および引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1および引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-30 
結審通知日 2009-12-08 
審決日 2009-12-24 
出願番号 特願2001-320633(P2001-320633)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤田 真治  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 吉村 尚
池谷 香次郎
発明の名称 遊技機  
代理人 中馬 典嗣  
代理人 竹沢 荘一  

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