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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60G
管理番号 1211882
審判番号 不服2008-26197  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-10 
確定日 2010-02-12 
事件の表示 特願2004-263537号「サスペンション装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月23日出願公開、特開2006- 76469号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は、平成16年 9月10日の特許出願であって、平成20年 9月 8日付けで拒絶査定がなされ、この査定を不服として、同年10月10日付けで本件審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正(前置補正)がなされた。
一方、当審においても平成21年 9月 9日付けで拒絶理由を通知し、これに対して、応答期間内である同年11月 6日付けで手続補正がなされるとともに意見書が提出されたところである。
そして、この出願の請求項1?4に係る発明は、上記平成21年11月 6日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
車両の車輪に対応して、車輪側部材と車体側部材との間に設けられた懸架シリンダと、
その懸架シリンダに液通路を介して接続され、液通路の液圧が第1設定圧以上になった場合に、作動液の流入を許容する第1アキュムレータと、
前記液通路を前記懸架シリンダ側の第1部分と前記第1アキュムレータ側の第2部分とに分ける分割点に、その第2部分より短い接続通路を介して接続され、その液通路の液圧が、前記第1設定圧より高い第2設定圧以上になった場合に、作動液の流入を許容する第2アキュムレータと
を含むとともに、前記分割点に接続された接続通路の長さの、前記液通路の前記分割点から前記第1アキュムレータ側の第2部分の長さに対する比率が、1/2?1/50のうちの値とされたことを特徴とするサスペンション装置。」

2.引用例とその記載事項
平成21年 9月 9日付け拒絶理由で引用した本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭63-21924号(実開平1-126443号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、「油空圧サスペンション装置」に関し、図面とともに以下の事項(ア)?(オ)が記載または示されている。

(ア)「又、上記実施例はサブアキュムレータ17をシリンダ室1a内に設けたが、第3図に示すようにサブアキュムレータ19を配管11とストラットシリンダ1との接続部近傍の配管上に取り付けてもよい。尚、上記実施例と同一のものには同一符号を付してそれらの構造説明は省略する。
上記サブアキュムレータ19はアキュムレータ7と同様、ダイヤフラム9’を介して上下二室に区画され、又、アキュムレータ7よりも小型に形成されている。そして、下室19aは連通管21により配管11と連通してシリンダ室1aからのオイルOが充填され、又、上室19b内には上記上室7bと同様、エアAが気密性を以って充填されている。而して、周波数の高い振動がストラットシリンダ1に作用してオイルOが下室19aに流入すると、上記サブアキュムレータ17と同様、上室19bの容積の減少に伴うエアAの反発力によって高周波の振動を一次的に緩衝するようになっている。
従って、上記サブアキュムレータ19を装備した油空圧サスペンション装置によっても、アキュムレ-タ7の作用によって低周波の振動が良好に緩衝されると共に、周波数の高い振動が上室19b内のエアAの反発力によって一次的に高周波の振動を緩衝し、次いで本来のアキュムレータ7が機能するので、第1図に示す実施例同様、所期の目的を達成することが可能である。」(第8ページ最下行?第10ページ第6行)

(イ)「このように、本考案は、アクスルハウジングを懸架するストラットシリンダと、配管を介して上記ストラットシリンダのシリンダ室と連通するアキュムレータと、当該アキュムレータと上記ストラットシリンダとの連通路に装着された減衰バルブを備えた油空圧サスペンション装置に於て、上記ストラットシリンダと配管との接続部近傍、例えばシリンダ室内や接続部近傍の配管上にサブアキュムレータを設けたので、大きな段差通過時の如く周波数の高い振動がストラットシリンダに作用した場合、サブアキュムレータが収縮,膨張して上記振動を一次的に緩衝する。」(第11ページ第2行?第13行)

(ウ)「以下、本考案の実施例を図面に基づき説明する。
尚、考案部分を除く構成については第4図のものと同様の構成とされているため、ここではそれらについての説明は省略し、専ら考案部分について説明する。又、上記従来例と同一要素は同一符号を以って表示する。
第1図は請求項2記載の考案の一実施例を示し、本実施例は、内部にエアAが密封された金属ベローズで構成され、アキュムレータ7によるばね定数に比しばね定数の大きいサブアキュムレータ17をシリンダ室1a内の上部に取り付けたもので、段差の小さな凸部に乗り上げた場合のように比較的周波数の低い振動がストラットシリンダ1に作用した場合には、第4図に示す従来例と同様、ピストン1bの矢印X方向の移動量が少なくシリンダ室1aから下室7aに流入するオイル量が少ないため、当該オイルOに対する管内抵抗が弱くシリンダ室1a内の油圧がアキュムレータ7の作用により良好に変化して適切なばね反力が得られるようになっている。尚、この時、サブアキュムレータ17はアキュムレータ7に比しばね定数が高いため、緩衝機能を奏することはない。
そして、段差の大きな凸部に乗り上げた場合の如く周波数の高い振動がストラットシリンダ1に作用した場合、上述したように当該ストラットシリンダ1から排出されたオイルOは配管11の管内抵抗によってアキュムレータ7内に流入し難くなるが、ピストン1bが矢印X方向に大きく移動することによって上記サブアキュムレータ17が同方向に縮退してその容積が減少し、これに伴う当該サブアキュムレータ17内のエアAの反発力によって高周波の振動を一次的に緩衝し、次いでメインのアキュムレータ17が機能して斯かる振動を二次的に緩衝するようになっている。」(第5ページ第16行?第7ページ第11行)

(エ)「従来、油空圧を利用したサスペンション装置として、例えば第4図に示すものが知られている。
図に於て、符号1はフレーム3とサスペンションリンク5間に架設されたストラットシリンダ、7はダイヤフラム9を介して上下二室に区画されたアキュムレータで、ストラットシリンダ1のシリンダ室1aとアキュムレータ7の下室7aは配管11を介して連通している。そして、当該シリンダ室1aと下室7aにはオイルOが充填され、又、アキュムレータ7の上室7b内にはエアAが気密性を以って充填された構造となっている。その他、図中、符号13は上記サスペンションリンク5にアクスルハウジング(図示せず)を介して取り付くタイヤ、又、15はアキュムレータ7と配管11との接続部に装着された減衰バルブで、当該減衰バルブ15によって車両の振動を収めるようになっている。」(第2ページ第5行?第3ページ第2行)

(オ)第3図には、「配管11をストラットシリンダ側の第1部分とアキュムレータ7側の第2部分とに分ける分割点に、その第2部分より短い連通管21を介して接続されたサブアキュムレータ19」が示されている。

上記(ア)?(オ)の記載によれば、引用例1の第3図に示した実施例には、
「車両のタイヤ13に対応して、サスペンションリンク5とフレーム3との間に設けられたストラットシリンダ1と、そのストラットシリンダ1に配管11を介して接続され、オイルOの流入を許容するアキュムレータ7と、
前記配管11をストラットシリンダ1側の第1部分と前記アキュムレータ7側の第2部分とに分ける分割点に、その第2部分より短い連通管21を介して接続されたオイルOの流入を許容するサブアキュムレータ19とを含む車両用の油空圧サスペンション装置」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

また、同じく拒絶理由で引用した本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭58-73328号(実開昭59-177842号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)には、「圧縮性流体圧式緩衝装置」に関し、図面と共に以下の事項(カ)?(ケ)が記載されている

(カ)「本考案は、自動車等の車輛のサスペンションに係り、更に詳細には圧縮性流体の流体圧による弾性を利用したサスペンション用緩衝装置に係る。」

(キ)「第1図乃至第3図はハイドロニューマティックサスペンション装置として構成された本考案による圧縮性流体圧式緩衝装置の一つの実施例を、それぞれ静止状態、中間圧縮状態、最圧縮状態にて示す縦断面図である。これらの図に於て、1は図には示されていない車体に固定されたシリンダを示しており、該シリンダは軸線2に沿って往復動可能にピストン3を受入れている。ピストン3はシリンダ1に嵌合するピストン本体4と一端にてピストン本体4に直結されたピストンロッド5とよりなっており、ピストン本体4はシリンダ1と協働してシリンダ室6を郭定している。ピストンロッド5の他端は図には示されていないがゴムブッシュを介してコントロールアームの如きサスペンションアームに連結されるようになっている。
シリンダ1の端壁8には球形の主加圧タンク9の導管部10が溶接によって固定されている。主加圧タンク9の内部にはダイヤフラム11がその周縁部にて固定されており、該ダイヤフラムにより主加圧タンク9の内部が気体室12と液体室13とに分離されている。気体室12は圧縮空気にて充填されている。液体室13は導管部10及び端壁8に設けられた孔14によりシリンダ室6と連通接続されており、液体室13及びシリンダ室6はオイルにて充填されている。
導管部10には導管15の一端が溶接によって固定されており、導管15の他端には球形の補助加圧タンク16が溶接によって固定されている。補助加圧タンク16の内部にはダイヤフラム17がその周縁部にて固定されており、該ダイヤフラムにより補助加圧タンク16の内部が気体室18と液体室19とに分離されている。気体室18は圧縮空気にて充填されており、第1図に示されている如き静止状態に於ける気体室18内の圧縮空気の圧力Pbは気体室12内の圧縮空気の圧力Paよりも高く設定されている。液体室19は導管15及び導管部10によりシリンダ室6及び液体室13に連通接続されている。」(第7ページ第4行?第9ページ第1行)

(ク)「かくして構成されたハイドロニューマティックサスペンション装置に於ては、サスペンションアームのバウンドによりピストン3が図にて上方へ駆動されると、シリンダ室6内のオイルは液体室13(及び液体室19)へ圧送され、気体室12(及び気体室18)内の圧縮空気が加圧される。この場合サスペンションのバウンド量が比較的小さい領域、即ち第1図に示された静止状態から第2図に示された中間圧縮状態までの領域に於ては、シリンダ室6内のオイルは液体室13内へのみ圧送され、これにより気体室12内の圧縮空気がPa≦Pbの範囲に於て加圧され、またこの領域に於ては気体室18内の圧縮空気はその体積が全く変化しないのでばね作用を発揮しない。」(第9ページ第2行?第15行)

(ケ)「これに対してサスペンションのバウンド量の比較的大きい領域、即ち第2図に示された状態より第3図に示された状態までの領域に於ては、シリンダ室6内のオイルは液体室19内へも圧送されるようになり、これにより気体室18内の圧縮空気もばね作用を発揮するようになり、従ってこの領域に於てはばね作用を発揮する圧縮空気の体積は気体室12内の圧縮空気の体積と気体室18内の圧縮空気の合計となる。」(第9ページ第16行?第10ページ第4行)

上記(カ)?(ケ)の記載によれば、上記引用例2には、
「導管部10の液圧がある設定圧Pa以上のときに気体室12が縮小される主加圧タンク9と、導管15の液圧が上記設定圧Paよりも高い設定圧Pb以上になった場合にオイルの流入を許容する補助加圧タンク16を有する車輛用のハイドロニューマチックサスペンション装置」が記載されているものと認められる。

3.発明の対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「タイヤ13」、「サスペンションリンク5」、「フレーム3」、「ストラットシリンダ1」、「配管11」、「オイルO」、「アキュムレータ7」、「連通管21」、「サブアキュムレータ19」、「車両用の油空圧サスペンション装置」は、それぞれ本願発明の「車輪」、「車輪側部材」、「車体側部材」、「懸架シリンダ」、「液通路」、「作動液」、「第1アキュムレータ」、「接続通路」、「第2アキュムレータ」、「サスペンション装置」に相当する。
そうすると、両者は、
「車両の車輪に対応して、車輪側部材と車体側部材との間に設けられた懸架シリンダと、その懸架シリンダに液通路を介して接続され、作動液の流入を許容する第1アキュムレータと、
前記液通路を懸架シリンダ側の第1部分と前記第1アキュムレータ側の第2部分とに分ける分割点に、その第2部分より短い接続通路を介して接続された作動液の流入を許容する第2アキュムレータとを含むサスペンション装置」
の点で一致し、以下の各点で相違するものと認められる。

<相違点1>
本願発明では、「液通路の液圧が第1設定値以上になった場合に、作動液の流入を許容する第1アキュムレータと、液通路の液圧が第1設定圧よりも高い第2設定圧以上になった場合に作動圧の流入を許容する第2アキュムレータ」であるのに対して、上記引用発明では、そのような言及がない点。

<相違点2>
液通路を懸架シリンダ側の第1部分と第1アキュムレータ側の第2部分とに分ける分割点に、その第2部分より短い接続通路を介して接続された第2アキュムレータにおいて、本願発明では、「分割点に接続された接続通路の長さの、液通路の前記分割点から第1アキュムレータ側の第2部分の長さに対する比率が、1/2?1/50の内の値とされた」のに対して、上記引用発明では、上記比率についての言及がない点。

4.相違点についての判断
上記相違点1について
上記引用例2に記載された事項の「主加圧タンク9」、「補助加圧タンク16」、「導管部10」、「導管15」、「オイル」、「ある設定圧Pa」、「ある設定圧Paよりも高い設定圧Pb」は、それぞれ本願発明の「第1アキュムレータ」、「第2アキュムレータ」、「液通路」、「接続通路」、「作動液」、「第1設定圧」、「第2設定圧」に相当する。
すると、上記引用例2には、「液通路の液圧が第1設定圧以上のときに気体室12が縮小される第1アキュムレータと、接続通路の液圧が上記第1設定圧よりも高い第2設定圧以上になった場合にオイルの流入を許容する第2アキュムレータを有する車輛用のハイドロニューマチックサスペンション装置」が記載されているものと認められる。
そして、通常、第1アキュムレータの気体室12を縮小させるための圧力が第1設定圧以上であれば、作動液の流入を許容するための液圧も第1設定圧又はそれ以下になるものと認められる。
そうすると、上記引用発明と上記引用例2に記載された事項は、いずれも、第1、第2のアキュムレータを有する車両用の油空圧サスペンション装置であって、第2のアキュムレータは、主に比較的大きなストロークの場合に緩衝機能を奏するものである点で共通していることから、上記引用発明の第1アキュムレータと第2アキュムレータにおいて、上記引用例2に記載された事項である第1アキュムレータと第2アキュムレータの気体ばね圧の関係を適用することにより、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

上記相違点2について
上記摘記事項(ア)によれば、「サブアキュムレータ19(第2アキュムレータ)を配管11(液通路)とストラットシリンダ1(懸架シリンダ)との接続部近傍に取り付けてもよい。」と記載されていることから、「分割点に接続された接続通路の長さの、液通路の前記分割点から第1アキュムレータ側の第2部分の長さに対する比率が、1/2?1/50の内の値とされた」程度とすることは、当業者にとって適宜採用可能な設計的事項に過ぎないものである。

なお、上記相違点を併せ備える本願発明の作用効果を検討しても、上記引用発明、上記引用例1及び引用例2に記載された事項から当業者が予測できるものであって、格別のものとは認められない。

5.審判請求人の主張(平成21年11月 6日付け意見書の内容)について
上記意見書において、審判請求人は、引用例1、引用例2のいずれにも本願発明の課題となる脈動に関する記載がない旨の主張をしている。
しかしながら、油圧回路において、脈動やキャビテーションを抑制することを課題として、アキュムレータに工夫を加えることは、出願前周知の技術にすぎない(必要があれば、特開平2-303919号公報、特開平5-106777号公報を参照のこと。)ことから、本願発明のように第2のアキュムレータの機能が無くなる場合(第2の設定圧よりも低い場合)を想定して、脈動やキャビテーションの抑制を課題とすることに格別の困難性はない。

6.むすび
したがって、本願発明(請求項1に係る発明)は、上記引用発明、引用例1及び引用例2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-03 
結審通知日 2009-12-08 
審決日 2009-12-24 
出願番号 特願2004-263537(P2004-263537)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B60G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上尾 敬彦  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 藤井 昇
金丸 治之
発明の名称 サスペンション装置  
代理人 佐藤 光俊  
代理人 神戸 典和  
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