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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1211995
審判番号 不服2006-10830  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-25 
確定日 2010-02-18 
事件の表示 特願2003-20819「テンプレートファイル作成装置,編集装置,作成プログラム及び編集プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月3日出願公開,特開2003-281461〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成14年3月25日に出願した特願2002-82831号の一部を平成15年1月29日に新たな特許出願としたものであって,平成17年10月28日付けの拒絶理由通知に対して,同年12月27日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたが,平成18年4月18日付けで拒絶の査定がなされ,この拒絶の査定を不服として,同年5月25日に審判請求がなされるとともに同年6月22日付けで手続補正がなされ,当審による平成20年12月9日付けの審尋に対して,平成21年2月10日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成18年6月22日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年6月22日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
平成18年6月22日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1は,
「【請求項1】 再生出力可能な少なくとも1種類のメディアデータと該メディアデータの再生出力タイミング及び再生出力態様をそれぞれ規定するシーケンスデータとで成る既成のマルチメディアデータを,記憶装置からの読み込みまたは通信装置による読み込みによって取得し,該取得したマルチメディアデータを記憶部に記憶させるマルチメディアデータ取得手段と,
前記マルチメディアデータ取得手段により取得され前記記憶部に記憶されたマルチメディアデータの事後的な編集の可否及び許可される編集態様をそれぞれ規定する編集操作設定データであって,前記再生出力タイミングが規定されたメディアデータのうち,可変対象のメディアデータを規定すると共に,該可変対象のメディアデータの再生出力タイミング及び再生出力態様の少なくとも一方の変更を許容するものを作成する設定データ作成手段と,
前記取得されたマルチメディアデータと前記設定データ作成手段により作成された編集操作設定データとを対応付けてマルチメディアテンプレートファイルを生成するテンプレートファイル生成手段とを有し,
前記設定データ作成手段は,入力受け付け部によって,可変対象とするメディアデータを規定する指示と,該可変対象とするメディアデータの再生出力タイミング及び再生出力態様の少なくとも一方の変更の許容を規定する指示とを受け付け,該受け付けた指示に基づいて,前記編集操作設定データを作成することを特徴とするテンプレートファイル作成装置。」
となった。(アンダーラインは,補正された部分を示すものとして,手続補正書に表示されたものを援用したものである。)

本件補正前と本件補正後の特許請求の範囲の各請求項の記載からみて,請求人主張(平成18年6月22日付け手続補正書(方式)6頁46行?7頁1行,7頁38行?8頁10行)のように,本件補正後の請求項1は本件補正前の請求項2を補正したものと認められ,本件補正前の請求項2を本件補正後の請求項1にする本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の限縮を目的とするものに該当すると認められる。

そこで,本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-350664号公報(以下「引用例1」という。)には,以下(a)?(k)の記載がある。
(a)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,情報カプセル管理方法…に係り,特に,コンテンツシステム上で,画像,音声,テキストを含むマルチメディアオブジェクト(マルチメディア情報,以下,単にコンテンツと記す)と,コンテンツの使用(表示や使用期限等)を制御する利用制御情報をカプセル化オブジェクト(カプセル内に内包したメソッドを介してのみカプセル内のデータにアクセス可能なオブジェクト)内に格納して,使用,流通させる情報カプセル管理方法…に関する。」
(b)「【0025】従来は,カプセル内のコンテンツを編集するためには,一旦カプセルを開けて,カプセル内のコンテンツを生の状態で,編集プログラム(エディタ)に渡す必要がある。」
(c)「【0027】本発明は,上記の点に鑑みなされたもので,ファイル内システムによって,カプセル内データの安全な編集の実現を容易にし,カプセル内データへの高速なアクセスの提供や,カプセル内データを分かりやすく整理して見せることが可能な情報カプセル管理方法…を提供することを目的とする。」
(d)「【0041】情報カプセル生成システムにおいて,コンピュータ1は,キーボード20,マウス30,ディスプレイ40及びハードディク50等の入出力装置が接続される。コンピュータ1は,OS180とカプセル100を有する。
【0042】カプセル100は,コンテンツ110,利用制御情報120,格納位置情報130,格納位置管理メソッド140,利用制御メソッド150,編集メソッド160,及び表示再生メソッド170を内包する。」
(e)「【0046】図5は,本発明の利用制御情報の例を示す。同図(A),(B)に示すように,利用制御情報130は,当該コンテンツ110の使用期限,使用回数制限,使用者範囲,編集範囲から構成される。」
(f)「【0054】上記のように,編集メソッド160は,カプセル100内のメモリ101に書き込まれたコンテンツ110を,利用制御情報120の利用条件に応じて編集(追加,削除,更新)等を行う。」
(g)「【0056】(1) 絵葉書提供者が空の絵葉書カプセルを生成:当該処理では,カプセルのテンプレートを作成する。
【0057】(2) 絵葉書提供者が,写真家が撮った写真画像データ(コンテンツa)をカプセル化して販売用絵葉書カプセルを作成:図7は,本発明の第1の実施例の情報カプセル生成処理のフローチャートである。
【0058】まず,カプセルを起動し(ステップ201),編集メソッド160を利用して,取り込みたいコンテンツとしてコンテンツaを指定し,メモリ101上に読み込む(ステップ202)。同時に,編集メソッド160を利用して,コンテンツaの利用条件a(利用制御情報a)として,例えば,
・『画像上の特定位置への利用者のオリジナル画像データのスーパーインポーズを送信されるまで許可』;
・『所定のテキストエリアへの利用者のテキスト書き込みを送信されるまで許可』;
・『カプセル自身による第三者への複製の送信を1回許可』
・『送信後は全ての編集行為は不許可』;
等を設定する(ステップ203?205)。この方法として,上記の利用条件を外部から読み込んでもよいし,当該編集メソッド160において作成してもよい。
【0059】このようにして取り込んだコンテンツa及び作成(または,読み込んだ)利用条件aを当該編集メソッド160に含まれる暗号化機能によって暗号化し(ステップ207,209),格納位置管理メソッド140を利用してそれぞれの格納位置を記録しつつ,カプセル100内のメモリ101に書き込む(ステップ207,208,211)。」
(h)「【0064】まず,利用者Aは,絵葉書提供者から渡されたカプセルを起動し(ステップ301),取り込みたいオリジナル画像データ(コンテンツb)を指定し,メモリ101上に読み込む(ステップ302,320)。このとき,利用制御メソッド150が自動的に呼び出され,この操作が利用制御情報aで許可されるものかどうかをチェックする(ステップ307)。このとき,許可されない操作(例えば,2つ目のオリジナル画像データを取り込もうとするなど)の場合,操作は実施されない。」
(i)「【0065】このとき,取り込んだオリジナルの画像データについて,利用制御を行いたい場合は,上記の(2)における場合と同様にコンテンツbの利用条件(利用制御情報b)を設定することができる(ステップ322,323)。」
(j)「【0066】次に,編集メソッド160を利用して,先に取り込んだコンテンツaのどの部分にコンテンツbをスーパーインポーズするかを指定する。このとき,利用制御メソッド150が自動的に呼び出され,この操作が利用制御情報aで許可されるものかどうかをチェックする(ステップ307)。許可されない操作(例えば,許可された範囲外にスーパーインポーズしようとするなど)の場合,操作は実施されない。操作が許可されたら,編集を行うために,編集メソッド160(または,表示再生メソッド170)に含まれる復号機能を利用して,コンテンツaの暗号が解除される(ステップ311)。
【0067】次に,編集メソッド160を利用して,テキストエリアにメッセージ(コンテンツc)を書き込む(ステップ314)。このとき,利用制御メソッド150が自動的に呼び出され,この操作が利用制御情報aで許可されてるものかどうかをチェックする(ステップ308)。許可されない場合,この操作は実施されない。
【0068】このとき,書き込んだメッセージについて,利用制御を行いたい場合は,上記の(2)における場合と同様に,コンテンツcの利用条件(利用制御情報c)を設定することができる。
【0069】最後に,こうして状態を変更した絵葉書カプセル(の複製)を,編集メソッド160に含まれる送信機能を利用して利用者Bに送信する。送信時,手元に残される絵葉書カプセル及び送信される絵葉書カプセルの複製の利用制御情報が更新され(ステップ318),一切の編集操作が禁止される。」
(k)「【0096】【発明の効果】上述のように,本発明によれば,情報カプセルに編集機能を内包することにより,カプセル内の生なコンテンツへのアクセスは,編集操作も含めて全カプセル内に内包されたメソッドを介して行われることになる。」

上記(g)の「取り込みたいコンテンツとしてコンテンツaを指定し,」取り込むのに,記憶装置から読み込んで取り込むことは自明のことであり,また,上記(g)の「利用条件」を「当該編集メソッド160において作成」するのに,絵葉書提供者の指示を受けることも当然のことである。
さらに,マルチメディア情報に動画を含めることが例示するまでもなく周知のことであるから,上記(a)の「画像」に静止画と動画があることも自明のことである。

したがって,上記(a)?(k)の記載及び図面の記載から,引用例1には,
「編集メソッド160により,記憶装置から読み込んで取り込んだマルチメディア情報であるコンテンツをメモリ101に書き込み,
提供者の指示を受けて,編集メソッド160により,『画像上の特定位置への利用者のオリジナル画像データのスーパーインポーズを送信されるまで許可』,『所定のテキストエリアへの利用者のテキスト書き込みを送信されるまで許可』,『送信後は全ての編集行為は不許可』等のコンテンツの利用条件を作成し,
作成した利用条件をコンテンツと対応付けてメモリ101に書き込み,コンテンツと利用条件とを少なくとも内包するカプセルを生成するカプセル生成システム。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められ,さらに,上記(a)の記載から,
引用発明の「マルチメディア情報であるコンテンツ」として静止画,動画,音声,テキストを含むマルチメディア情報があること
も記載されていると認められる。

原査定に引用された特開平8-115338号公報(以下「引用例2」という。)には,以下(p)?(u)の記載がある。
(p)「【0002】【従来の技術】マルチメディア文書は,文字,図形,静止画などの静的なメディアデータだけでなく,音声,動画などの動的なメディアデータも含めた文書として構成された文書である。このため,通常の場合,マルチメディア文書の編集では,各々のマルチメディアデータに対し,表示位置,および表示するタイミングを指定する編集操作が行われる。」
(q)「【0005】第1の時刻指定による同期指示方法は,…例えば,図1に,第1の同期指示方法によるユーザインタフェースの一例が示されている。ユーザインタフェースの表示画面においては,表示時間幅に応じたX軸方向の幅をもつ矩形をX軸の左手から右手方向に進行する時間軸上に配置する。このユーザインタフェースはタイムラインインタフェースと呼ばれる。このユーザインタフェースによれば,マルチメディアデータの時間構造が直観的に把握できる利点がある。」
(r)「【0019】本発明は,このような様々な問題点を解決するためになされたものであり,本発明の目的は,第1の時刻指定の同期指示方法および第2の関係指定の同期指示方法の両者の利点を採り入れ,その編集の操作性が良好であり,文書構造が把握しやすい編集インタフェースを備えたマルチメディア文書編集装置を提供することにある。」
(s)「【0037】第1の実施例のマルチメディア文書編集装置において,マルチメディアデータの空間的構造の構造情報の編集は,操作者が,空間構造編集部3のユーザインタフェース操作により,同一領域に表示されるマルチメディアデータの集合(トラック構造要素)に対して座標情報を指定することより編集を行う。指定された座標情報に基づき,空間情報編集部3は,マルチメディア文書構造保持部2に保持された文書構造の中の空間的構造の構造情報を更新する。」
(t)「【0038】また,マルチメディアデータの時間構造の構造情報は,時間構造編集部4によって,編集インタフェース画面上に仮想時間を基準とした2次元空間に表示される。時間構造の構造情報の編集は,操作者が,時間構造編集部4による編集インタフェース画面上の編集操作により,マルチメディアデータ群を,シーケンシャル構造要素,パラレル構造要素,トラック構造要素に対して,逐次リンク,同期リンクなどのリンク構造要素により関係づけることにより編集を実行する。この編集操作に基づき,時間構造編集部4が,マルチメディア文書構造保持部2に保持された文書構造の中の時間構造を更新する。また,時間構造編集部4は,更新された情報に基づきインタフェース上に2次元で表示された時間構造の構造情報を更新する。」
(u)「【0088】【発明の効果】以上に説明したように,本発明のマルチメディア文書編集装置によれば,複数のマルチメディアデータ要素を蓄積し,蓄積されたマルチメディアデータの各要素の再生の際の時間および表示位置に関する構造情報を含むマルチメディア文書を編集することにより,マルチメディアデータ群の表示位置(空間的構造)と,表示開始および表示終了(時間的構造)を容易に編集できる。この場合の編集操作は,編集インタフェース画面による画面操作によって,容易にその編集操作が行える。」
上記(p)?(u)の記載及び図面の記載から,引用例2には,
マルチメディア文書の各々のメディアデータの表示位置及び表示タイミングの情報をマルチメディア文書に含ませ,マルチメディア文書の各々のメディアデータに対し表示位置及び表示タイミングの情報を処理して表示位置及び表示タイミングの編集を行うこと
が記載されていると認められる。

3 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると,
(イ)引用発明の「マルチメディア情報であるコンテンツ」は,本願補正発明の「再生出力可能な少なくとも1種類のメディアデータと該メディアデータの再生出力タイミング及び再生出力態様をそれぞれ規定するシーケンスデータとで成る既成のマルチメディアデータ」と「再生出力可能な少なくとも1種類のメディアデータを含むマルチメディアデータ」として共通し,
(ロ)引用発明の「編集メソッド160」の「記憶装置から読み込んで取り込んだマルチメディア情報であるコンテンツをメモリ101に書き込」む部分は,本願補正発明の「マルチメディアデータ取得手段」と「マルチメディアデータ取得手段」として共通し,
(ハ)引用発明の「『画像上の特定位置への利用者のオリジナル画像データのスーパーインポーズを送信されるまで許可』,『所定のテキストエリアへの利用者のテキスト書き込みを送信されるまで許可』,『送信後は全ての編集行為は不許可』等のコンテンツの利用条件」は,本願補正発明の「マルチメディアデータの事後的な編集の可否及び許可される編集態様をそれぞれ規定する編集操作設定データであって,前記再生出力タイミングが規定されたメディアデータのうち,可変対象のメディアデータを規定すると共に,該可変対象のメディアデータの再生出力タイミング及び再生出力態様の少なくとも一方の変更を許容するもの」と「マルチメディアデータの許可される事後的な編集態様を規定する編集操作設定データ」として共通し,
(ニ)引用発明の「編集メソッド160」の「提供者の指示を受けて」「『画像上の特定位置への利用者のオリジナル画像データのスーパーインポーズを送信されるまで許可』,『所定のテキストエリアへの利用者のテキスト書き込みを送信されるまで許可』,『送信後は全ての編集行為は不許可』等のコンテンツの利用条件を作成」する部分は,本願補正発明の「設定データ作成手段」と「設定データ作成手段」として共通し,
(ホ)引用発明が「作成した利用条件をコンテンツと対応付けてメモリ101に書き込み,コンテンツと利用条件とを少なくとも内包するカプセルを生成する」のにそのための手段を有することは明らかであり,該手段は,本願補正発明の「テンプレートファイル生成手段」と「情報生成手段」として共通し,
(ヘ)引用発明の「カプセル生成システム」は,その機能からみて,本願発明の「テンプレートファイル作成装置」と「情報作成装置」として共通している。
したがって,両者は,
「再生出力可能な少なくとも1種類のメディアデータを含むマルチメディアデータを,記憶装置から読み込みによって取得し,該取得したマルチメディアデータを記憶部に記憶させるマルチメディアデータ取得手段と,
前記マルチメディア取得手段により取得され前記記憶部に記憶されたマルチメディアデータの許可される事後的な編集態様を規定する編集操作設定データを作成する設定データ作成手段と,
前記取得されたマルチメディアデータと前記設定データ作成手段により作成された編集操作設定データとを対応付けて情報を生成する情報生成手段とを有し,
前記設定データ作成手段は,入力受け付け部によって,指示を受け付け,該受け付けた指示に基づいて,前記編集操作設定データを作成することを特徴とする情報作成装置。」
である点で一致し,以下の点で相違している。
[相違点1]
本願補正発明は,取得するマルチメディアデータが既成のものであり通信装置による読み込みによっても取得するものであるのに対して,引用発明は,そうではない点。
[相違点2]
本願補正発明は,作成する編集操作設定データが,マルチメディアデータの事後的な編集の可否及び許可される編集態様をそれぞれ規定するものであるのに対して,引用発明は,作成する編集操作設定データが,許可される事後的な編集態様を規定するものであるが,マルチメディアデータの事後的な編集の可否及び許可される編集態様をそれぞれ規定するものではない点。
[相違点3]
本願補正発明は,情報を生成する情報生成手段がマルチメディアテンプレートファイルを生成するテンプレートファイル生成手段であり,テンプレートファイル作成装置であるのに対して,引用発明は,そうであるのか不明である点。
[相違点4]
本願補正発明は,取得するマルチメディアデータが,メディアデータとメデイアデータの再生出力タイミング及び再生出力態様をそれぞれ規定するシーケンスデータとで成り,作成する編集操作設定データが,再生出力タイミングが規定されたメディアデータのうち,可変対象のメディアデータを規定すると共に,該可変対象のメディアデータの再生出力タイミング及び再生出力態様の少なくとも一方の変更を許容するものであり,入力受け付け部によって受け付ける指示が,可変対象とするメディアデータを規定する指示と,該可変対象とするメディアデータの再生出力タイミング及び再生出力態様の少なくとも一方の変更の許容を規定する指示であるのに対して,引用発明は,そうではない点。

4 判断
[相違点1]について検討する。
情報処理に必要なデータを取得するのに,既に作成済みのデータを取得することと必要なデータを通信装置により読み込んで取得することの何れもが例示するまでもなく周知のことであるから,引用発明において,取得するマルチメディアデータを既成のものとし通信装置による読み込みによっても取得するようにして,本願補正発明のようにすることは,当業者が格別に思考することなくなし得たことである。
[相違点2]について検討する。
引用発明の「画像上の特定位置への利用者のオリジナル画像データのスーパーインポーズを送信されるまで許可」,「所定のテキストエリアへの利用者のテキスト書き込みを送信されるまで許可」の編集操作設定データ(利用条件)は,マルチメディアデータの許可される事後的な編集態様を規定しているが,前提としてマルチメディアデータの事後的な編集が特定の編集態様において許可されていることも意味しているといえ,前提となる記述と該記述を前提とした記述とにより事柄を記述することが例示するまでもなく周知のことであるから,引用発明において,編集操作設定データをマルチメディアデータの事後的な編集の可否及び許可される編集態様をそれぞれ規定するものとして,本願補正発明のようにすることは,当業者が格別に思考することなくなし得たことである。
[相違点3]について検討する。
引用発明の情報生成手段が生成する情報もマルチメディアデータと編集操作設定データとを対応付けたものであって事後的な編集に供される情報であり,また,情報をファイルとして管理することが慣用手段であるから,引用発明において,情報を生成する情報生成手段を,マルチメディアテンプレートファイルを生成するテンプレートファイル生成手段として,本願補正発明のようにすることは,当業者が格別に思考することなくなし得たことである。
[相違点4]について検討する。
引用例2に,「マルチメディア文書の各々のメディアデータの表示位置及び表示タイミングの情報をマルチメディア文書に含ませ,マルチメディア文書の各々のメディアデータに対し表示位置及び表示タイミングの情報を処理して表示位置及び表示タイミングを指定する編集を行うこと」が記載されており,引用発明は,コンテンツ(マルチメディアデータ)と利用条件(編集操作設定データ)とを内包するカプセルを生成するものではあるが,引用例1には,引用発明の「マルチメディア情報であるコンテンツ」として静止画,動画,音声,テキストを含むマルチメディア情報があることも記載されており,時系列上に配置されるメディアデータであっても編集メソッド等のメソッドをコンテンツに応じたものとすれば編集可能であることが自明のことであるから,引用発明において,取得するコンテンツ(マルチメディアデータ)をメディアデータとメディアデータの再生出力タイミング及び再生出力態様をそれぞれ規定するシーケンスデータとで成るマルチメディアデータとすることは,当業者が容易に推考し得たことである。
その際に,引用発明の「画像上の特定位置への利用者のオリジナル画像データのスーパーインポーズを送信されるまで許可」,「所定のテキストエリアへの利用者のテキスト書き込みを送信されるまで許可」の編集操作設定データ(利用条件)は,マルチメディアデータの許可される事後的な編集態様を規定しているが,「画像上の特定位置」,「所定のテキストエリア」を特定しており,また,取得するマルチメディアデータをメディアデータとメディアデータの再生出力タイミング及び再生出力態様をそれぞれ規定するシーケンスデータとで成るマルチメディアデータとした場合に編集操作設定データを再生出力タイミング及び再生出力態様の少なくとも一方の変更を許容するものとすることは当然のことであるから,作成する編集操作設定データを,再生出力タイミングが規定されたメディアデータのうち,可変対象のメディアデータを規定すると共に,該可変対象のメディアデータの再生出力タイミング及び再生出力態様の少なくとも一方の変更を許容するものとし,入力受け付け部によって受け付ける指示を,可変対象とするメディアデータを規定する指示と,該可変対象とするメディアデータの再生出力タイミング及び再生出力態様の少なくとも一方の変更の許容を規定する指示として,本願補正発明のようにすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

そして,本願補正発明の作用効果も,引用例1,2に記載された発明及び周知の事項の作用効果から,当業者が容易に予測し得たことである。
したがって,本願補正発明は,引用例1,2に記載された発明及び周知の事項から,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 むすび
以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成18年6月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成17年12月27日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項2に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項2】 再生出力可能な少なくとも1種類のメディアデータと該メディアデータの再生出力タイミング及び再生出力態様をそれぞれ規定するシーケンスデータとで成るマルチメディアデータを取得するマルチメディアデータ取得手段と,
前記マルチメディアデータ取得手段により取得されたマルチメディアデータの編集の可否及び許可される編集態様をそれぞれ規定する編集操作設定データであって,前記再生出力タイミングが規定されたメディアデータのうち,可変対象のメディアデータを規定すると共に,該可変対象のメディアデータの再生出力タイミング及び再生出力態様の少なくとも一方の変更を許容するものを作成する設定データ作成手段と,
前記取得されたマルチメディアデータと前記設定データ作成手段により作成された編集操作設定データとを対応付けてマルチメディアテンプレートファイルを生成するテンプレートファイル生成手段とを有することを特徴とするテンプレートファイル作成装置。」

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1,2及び該引用例1,2に記載された事項は,上記第2の2に記載したとおりである。

3 対比・判断
上記第2で検討した本願補正発明は,本願発明の「再生出力可能な少なくとも1種類のメディアデータと該メディアデータの再生出力タイミング及び再生出力態様をそれぞれ規定するシーケンスデータとで成るマルチメディアデータを取得するマルチメディアデータ取得手段」を「再生出力可能な少なくとも1種類のメディアデータと該メディアデータの再生出力タイミング及び再生出力態様をそれぞれ規定するシーケンスデータとで成る既成のマルチメディアデータを,記憶装置からの読み込みまたは通信装置による読み込みによって取得し,該取得したマルチメディアデータを記憶部に記憶させるマルチメディアデータ取得手段」と限定し,「前記マルチメディアデータ取得手段により取得されたマルチメディアデータの編集の可否及び許可される編集態様」を「前記マルチメディアデータ取得手段により取得され前記記憶部に記憶されたマルチメディアデータの事後的な編集の可否及び許可される編集態様」と限定し,「設定データ作成手段」について「前記設定データ作成手段は,入力受け付け部によって,可変対象とするメディアデータを規定する指示と,該可変対象とするメディアデータの再生出力タイミング及び再生出力態様の少なくとも一方の変更の許容を規定する指示とを受け付け,該受け付けた指示に基づいて,前記編集操作設定データを作成する」と限定したものである。
そうすると,本願発明の構成を全て含み,さらに構成を限定した本願補正発明が,上記第2の4に記載したとおり,引用例1,2に記載された発明及び周知の事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用例1,2に記載された発明及び周知の事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
したがって,本願発明は,引用例1,2に記載された発明及び周知の事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-14 
結審通知日 2009-12-15 
審決日 2010-01-04 
出願番号 特願2003-20819(P2003-20819)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
P 1 8・ 575- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 須田 勝巳  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 小山 満
山本 穂積
発明の名称 テンプレートファイル作成装置、編集装置、作成プログラム及び編集プログラム  
代理人 二宮 浩康  
代理人 別役 重尚  
代理人 池田 浩  
代理人 後藤 夏紀  
代理人 村松 聡  

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