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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1212023 |
審判番号 | 不服2007-9409 |
総通号数 | 124 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-04-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-04-04 |
確定日 | 2010-02-18 |
事件の表示 | 平成11年特許願第138761号「辞書検索方法、およびその検索方法を実施するためのプログラムが記録された記録媒体ならびに演算処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月30日出願公開、特開2000-331014〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年5月19日の出願であって、平成18年11月16日付けで拒絶理由通知がなされ、平成19年1月19日付けで手続補正がなされたが、同年2月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年4月27日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成19年4月27日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年4月27日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の目的の適否について 本件手続補正の目的が平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に適合するか否かを検討する。 本件手続補正は、特許請求の範囲の記載を、補正前の 「 【請求項1】 オペレーションシステムと、このオペレーションシステムの管理下で作動するアプリケーション用のプログラムと、前記アプリケーションに文字を入力するための文字入力システムと、所定数の情報がそれぞれ文字列をキーとして検索できるようにして格納された辞書ファイルとがメモリに組み込まれ、文字列の入力およびその入力文字列を別の文字列に変換する操作のための入力部と、前記アプリケーションの画面を表示するための表示部とが接続されている演算処理装置において、前記文字入力システムによるアプリケーションへの文字入力処理に連動して前記辞書ファイルを検索する方法であって、 前記入力部から入力された文字列に対する変換候補の文字列が前記表示部に表示されている状態下で、変換候補の選択を切り換える操作に応じて、前記文字入力システムからオペレーティングシステムに、複数の変換候補の文字列と識別表示すべき選択中の候補を知らせるパラメータとを含むメッセージが送出されたとき、このメッセージを読み取る第1のステップ、 前記第1のステップで読み取られたメッセージに基づき選択中の候補の文字列を特定する第2のステップ、 前記第2のステップで特定された文字列をキーワードとして前記辞書ファイルを検索する第3のステップ、 前記第3のステップの検索で抽出された情報を表示部に表示するために、その情報の内容を知らせるメッセージをオペレーションシステムに送出する第4のステップ、 の各ステップを、実行することを特徴とする辞書検索方法。 【請求項2】 オペレーションシステムと、このオペレーションシステムの管理下で作動するアプリケーション用のプログラムと、前記アプリケーションに文字を入力するための文字入力システムと、所定数の情報がそれぞれ文字列をキーに検索できるようにして格納された辞書ファイルとがメモリに組み込まれ、文字列の入力およびその入力文字列を別の文字列に変換する操作のための入力部と、前記アプリケーションの画面を表示するための表示部とが接続されている演算処理装置に、前記文字入力システムによるアプリケーションへの文字入力処理に連動して前記辞書ファイルを検索する処理を行わせるために、当該演算処理装置のメモリに組み込まれるプログラムが記録された記録媒体であって、 前記入力部から入力された文字列に対する変換候補の文字列が前記表示部に表示されている状態下で、変換候補の選択を切り換える操作に応じて、前記文字入力システムからオペレーティングシステムに、複数の変換候補の文字列と識別表示すべき選択中の候補を知らせるパラメータとを含むメッセージが送出されたとき、このメッセージを読み取る第1のステップ、 前記第1のステップで読み取られたメッセージに基づき選択中の候補の文字列を特定する第2のステップ、 前記第2のステップで特定された文字列をキーワードとして前記辞書ファイルを検索する第3のステップ、 前記第3のステップの検索で抽出された情報を表示部に表示するために、その情報の内容を知らせるメッセージをオペレーションシステムに送出する第4のステップ、 の各ステップを実行するためのプログラムが記録された、辞書検索用のプログラムが記録された記録媒体。 【請求項3】 前記第1?第4の各ステップを実行するためのプログラムとともに、検索対象となる辞書ファイルが記録されて成る請求項2に記載された辞書検索用のプログラムが記録された記録媒体。 【請求項4】 オペレーションシステムと、このオペレーションシステムの管理下で作動するアプリケーション用のプログラムと、前記アプリケーションに文字を入力するための文字入力システムと、所定数の情報がそれぞれ文字列をキーに検索できるようにして格納された辞書ファイルと、前記文字入力システムによるアプリケーションへの文字入力処理に連動して前記辞書ファイルを検索する辞書検索用のプログラムとがメモリに組み込まれ、文字列の入力およびその入力文字列を別の文字列に変換する操作のための入力部と、前記アプリケーションの画面を表示するための表示部とが接続されている演算処理装置であって、 前記辞書検索用のプログラムには、 前記入力部から入力された文字列に対する変換候補の文字列が前記表示部に表示されている状態下で、変換候補の選択を切り換える操作に応じて、前記文字入力システムからオペレーティングシステムに、複数の変換候補の文字列と識別表示すべき選択中の候補を知らせるパラメータとを含むメッセージが送出されたとき、このメッセージを読み取る第1のステップ、 前記第1のステップで読み取られたメッセージに基づき選択中の候補の文字列を特定する第2のステップ、 前記第2のステップで特定された文字列をキーワードとして前記辞書ファイルを検索する第3のステップ、 前記第3のステップの検索で抽出された情報を前記表示部に表示するために、その情報の内容を知らせるメッセージをオペレーションシステムに送出する第4のステップ、の各ステップを、実行するためのプログラムが含まれていることを、特徴とする演算処理装置。」 から、 「 【請求項1】 オペレーションシステムと、このオペレーションシステムの管理下で作動するアプリケーション用のプログラムと、前記アプリケーションに文字を入力するための文字入力システムと、所定数の情報がそれぞれ文字列をキーとして検索できるようにして格納された辞書ファイルとがメモリに組み込まれ、文字列の入力およびその入力文字列を別の文字列に変換する操作のための入力部と、前記アプリケーションの画面を表示するための表示部とが接続されている演算処理装置において、前記文字入力システムによるアプリケーションへの文字入力処理に連動して前記辞書ファイルを検索する方法であって、 前記入力部から入力された文字列に対する変換操作に応じて文字入力システムからオペレーティングシステムに第1候補の文字列を知らせる第1のメッセージが出力され、この第1のメッセージに応じて前記第1候補の文字列が表示部に未確定表示された状態下での再変換操作に応じて、前記文字入力システムからオペレーティングシステムに、複数の変換候補の文字列と識別表示すべき選択中の候補を知らせるパラメータとを含む第2のメッセージが送出されたとき、このメッセージを読み取る第1のステップ、 前記第2のメッセージに対するオペレーションシステムの処理によって複数の変換候補の文字列が前記表示部に表示され、その表示状態下で変換候補の選択を切り換える操作に応じて、前記文字入力システムからオペレーティングシステムに第2のメッセージと同様の複数の変換候補の文字列と新たに選択された候補を知らせるパラメータとを含む第3のメッセージが送出されたとき、このメッセージを読み取る第2のステップ、 前記第1のステップでのメッセージの読み取りまたは第2のステップでのメッセージの読み取りに応じて、読み取られたメッセージに基づき選択中の候補の文字列を特定する第3のステップ、 前記第3のステップで特定された文字列をキーワードとして前記辞書ファイルを検索することにより、前記選択中の候補の文字列に対応する情報を抽出する第4のステップ、 前記第4のステップで抽出された情報を表示部に表示するために、その情報の内容を知らせるメッセージをオペレーションシステムに送出する第5のステップ、 の各ステップを、実行することを特徴とする辞書検索方法。 【請求項2】 オペレーションシステムと、このオペレーションシステムの管理下で作動するアプリケーション用のプログラムと、前記アプリケーションに文字を入力するための文字入力システムと、所定数の情報がそれぞれ文字列をキーに検索できるようにして格納された辞書ファイルとがメモリに組み込まれ、文字列の入力およびその入力文字列を別の文字列に変換する操作のための入力部と、前記アプリケーションの画面を表示するための表示部とが接続されている演算処理装置に、前記文字入力システムによるアプリケーションへの文字入力処理に連動して前記辞書ファイルを検索する処理を行わせるために、当該演算処理装置のメモリに組み込まれるプログラムが記録された記録媒体であって、 前記入力部から入力された文字列に対する変換操作に応じて文字入力システムからオペレーティングシステムに第1候補の文字列を知らせる第1のメッセージが出力され、この第1のメッセージに応じて前記第1候補の文字列が表示部に未確定表示された状態下での再変換操作に応じて、前記文字入力システムからオペレーティングシステムに、複数の変換候補の文字列と識別表示すべき選択中の候補を知らせるパラメータとを含む第2のメッセージが送出されたとき、このメッセージを読み取る第1のステップ、 前記第2のメッセージに対するオペレーションシステムの処理によって複数の変換候補の文字列が前記表示部に表示され、その表示状態下で変換候補の選択を切り換える操作に応じて、前記文字入力システムからオペレーティングシステムに第2のメッセージと同様の複数の変換候補の文字列と新たに選択された候補を知らせるパラメータとを含む第3のメッセージが送出されたとき、このメッセージを読み取る第2のステップ、 前記第1のステップでのメッセージの読み取りまたは第2のステップでのメッセージの読み取りに応じて、読み取られたメッセージに基づき選択中の候補の文字列を特定する第3のステップ、 前記第3のステップで特定された文字列をキーワードとして前記辞書ファイルを検索することにより、前記選択中の候補の文字列に対応する情報を抽出する第4のステップ、 前記第4のステップで抽出された情報を表示部に表示するために、その情報の内容を知らせるメッセージをオペレーションシステムに送出する第5のステップ、 の各ステップを実行するためのプログラムが記録された、辞書検索用のプログラムが記録された記録媒体。 【請求項3】 前記第1?第5の各ステップを実行するためのプログラムとともに、検索対象となる辞書ファイルが記録されて成る請求項2に記載された辞書検索用のプログラムが記録された記録媒体。 【請求項4】 オペレーションシステムと、このオペレーションシステムの管理下で作動するアプリケーション用のプログラムと、前記アプリケーションに文字を入力するための文字入力システムと、所定数の情報がそれぞれ文字列をキーに検索できるようにして格納された辞書ファイルと、前記文字入力システムによるアプリケーションへの文字入力処理に連動して前記辞書ファイルを検索する辞書検索用のプログラムとがメモリに組み込まれ、文字列の入力およびその入力文字列を別の文字列に変換する操作のための入力部と、前記アプリケーションの画面を表示するための表示部とが接続されている演算処理装置であって、 前記辞書検索用のプログラムには、 前記入力部から入力された文字列に対する変換操作に応じて文字入力システムからオペレーティングシステムに第1候補の文字列を知らせる第1のメッセージが出力され、この第1のメッセージに応じて前記第1候補の文字列が表示部に未確定表示された状態下での再変換操作に応じて、前記文字入力システムからオペレーティングシステムに、複数の変換候補の文字列と識別表示すべき選択中の候補を知らせるパラメータとを含む第2のメッセージが送出されたとき、このメッセージを読み取る第1のステップ、 前記第2のメッセージに対するオペレーションシステムの処理によって複数の変換候補の文字列が前記表示部に表示され、その表示状態下で変換候補の選択を切り換える操作に応じて、前記文字入力システムからオペレーティングシステムに第2のメッセージと同様の複数の変換候補の文字列と新たに選択された候補を知らせるパラメータとを含む第3のメッセージが送出されたとき、このメッセージを読み取る第2のステップ、 前記第1のステップでのメッセージの読み取りおよび第2のステップでのメッセージの読み取りに応じて、読み取られたメッセージに基づき選択中の候補の文字列を特定する第3のステップ、 前記第3のステップで特定された文字列をキーワードとして前記辞書ファイルを検索することにより、前記選択中の候補の文字列に対応する情報を抽出する第4のステップ、 前記第4のステップで抽出された情報を表示部に表示するために、その情報の内容を知らせるメッセージをオペレーションシステムに送出する第5のステップ、 の各ステップを、実行するためのプログラムが含まれていることを、特徴とする演算処理装置。」 に補正しようとすることを含むものである。 (1-1)請求項1に係る補正について 請求項1に係る補正は、補正前の 「前記入力部から入力された文字列に対する変換候補の文字列が前記表示部に表示されている状態下で、変換候補の選択を切り換える操作に応じて、前記文字入力システムからオペレーティングシステムに、複数の変換候補の文字列と識別表示すべき選択中の候補を知らせるパラメータとを含むメッセージが送出されたとき、このメッセージを読み取る第1のステップ」(以下、「補正前第1ステップ」という。)を、 「前記入力部から入力された文字列に対する変換操作に応じて文字入力システムからオペレーティングシステムに第1候補の文字列を知らせる第1のメッセージが出力され、この第1のメッセージに応じて前記第1候補の文字列が表示部に未確定表示された状態下での再変換操作に応じて、前記文字入力システムからオペレーティングシステムに、複数の変換候補の文字列と識別表示すべき選択中の候補を知らせるパラメータとを含む第2のメッセージが送出されたとき、このメッセージを読み取る第1のステップ」(以下、「補正後第1ステップ」という。)、及び 「前記第2のメッセージに対するオペレーションシステムの処理によって複数の変換候補の文字列が前記表示部に表示され、その表示状態下で変換候補の選択を切り換える操作に応じて、前記文字入力システムからオペレーティングシステムに第2のメッセージと同様の複数の変換候補の文字列と新たに選択された候補を知らせるパラメータとを含む第3のメッセージが送出されたとき、このメッセージを読み取る第2のステップ」(以下、「補正後第2ステップ」という。) という二つのステップに補正しようとすることを含むものである。 上記補正後第2ステップにおいて、「前記第2のメッセージに対するオペレーションシステムの処理によって複数の変換候補の文字列が前記表示部に表示され」た状態では、どのような「複数の変換候補の文字列」が表示部に表示されているかというと、補正後第1ステップで入力部から入力された文字列に対する変換候補の文字列であると解されるから、上記補正後第2ステップにおける「前記第2のメッセージに対するオペレーションシステムの処理によって複数の変換候補の文字列が前記表示部に表示され、その表示状態下で」という発明特定事項は、「前記第2のメッセージに対するオペレーションシステムの処理によって」という補正前には存在しない新たな要素が加わっているものの、一応、補正前第1ステップにおける「前記入力部から入力された文字列に対する変換候補の文字列が前記表示部に表示されている状態下で」という発明特定事項の「変換候補の文字列」を「複数の変換候補の文字列」に限定することを含むものである。 そして、上記補正後第2ステップにおける「変換候補の選択を切り換える操作に応じて、前記文字入力システムからオペレーティングシステムに第2のメッセージと同様の複数の変換候補の文字列と新たに選択された候補を知らせるパラメータとを含む第3のメッセージが送出されたとき、このメッセージを読み取る」という発明特定事項は、「第2のメッセージと同様の」及び「新たに選択」という補正前には存在しない新たな要素が加わっているものの、一応、補正前第1ステップにおける「変換候補の選択を切り換える操作に応じて、前記文字入力システムからオペレーティングシステムに、複数の変換候補の文字列と識別表示すべき選択中の候補を知らせるパラメータとを含むメッセージが送出されたとき、このメッセージを読み取る」という発明特定事項に対応するものである。 しかしながら、補正後第1ステップにおける「前記入力部から入力された文字列に対する変換操作に応じて文字入力システムからオペレーティングシステムに第1候補の文字列を知らせる第1のメッセージが出力され」るという発明特定事項、「この第1のメッセージに応じて前記第1候補の文字列が表示部に未確定表示された状態下での再変換操作」を補正後第2ステップの「変換候補の選択を切り換える操作」とは別の操作として設けるという発明特定事項は、いずれも、補正前第1ステップの発明特定事項を限定したものではない。 よって、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定して特許請求の範囲の減縮をしたものではない。 (1-2)請求項2,4に係る補正について 請求項2,4に係る補正は、補正前第1ステップを補正後第1ステップ及び補正後第2ステップという二つのステップに補正することを含むものである点において、請求項1に係る補正と同様の補正をしようとすることを含むものである。 よって、請求項1に係る補正と同様に、補正後の請求項2,4に記載された発明は、補正前の請求項2,4に記載された発明を特定するために必要な事項を限定して特許請求の範囲の減縮をしたものではない。 (1-3)請求項3に係る補正について 請求項3は、補正前、補正後ともに、請求項2を引用するものであり、請求項2に係る補正と同様に、補正後の請求項3に記載された発明は、補正前の請求項3に記載された発明を特定するために必要な事項を限定して特許請求の範囲の減縮をしたものではない。 以上のとおり、上記請求項1乃至4に係る補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号にいうところの請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定することによる特許請求の範囲の減縮には該当しない。 また、上記請求項1乃至4に係る補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除、第3号の誤記の訂正、第4号の明りょうでない記載の釈明に該当するものでないことは明らかである。 したがって、本件手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。 (2)むすび 上記(1)で検討したとおり、本件手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.補正却下の決定を踏まえた検討 (1)本願発明 平成19年4月27日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成19年1月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「オペレーションシステムと、このオペレーションシステムの管理下で作動するアプリケーション用のプログラムと、前記アプリケーションに文字を入力するための文字入力システムと、所定数の情報がそれぞれ文字列をキーとして検索できるようにして格納された辞書ファイルとがメモリに組み込まれ、文字列の入力およびその入力文字列を別の文字列に変換する操作のための入力部と、前記アプリケーションの画面を表示するための表示部とが接続されている演算処理装置において、前記文字入力システムによるアプリケーションへの文字入力処理に連動して前記辞書ファイルを検索する方法であって、 前記入力部から入力された文字列に対する変換候補の文字列が前記表示部に表示されている状態下で、変換候補の選択を切り換える操作に応じて、前記文字入力システムからオペレーティングシステムに、複数の変換候補の文字列と識別表示すべき選択中の候補を知らせるパラメータとを含むメッセージが送出されたとき、このメッセージを読み取る第1のステップ、 前記第1のステップで読み取られたメッセージに基づき選択中の候補の文字列を特定する第2のステップ、 前記第2のステップで特定された文字列をキーワードとして前記辞書ファイルを検索する第3のステップ、 前記第3のステップの検索で抽出された情報を表示部に表示するために、その情報の内容を知らせるメッセージをオペレーションシステムに送出する第4のステップ、 の各ステップを、実行することを特徴とする辞書検索方法。」 (2)引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-260966号公報(以下、「引用例1」という。)、及び「渡辺哲也ほか,GUIに対応した視覚障害者用スクリーンリーダの設計,電子情報通信学会論文誌,日本,社団法人電子情報通信学会,1998年1月25日,第J81-D-II巻,第1号,第137-145頁」(以下、「引用例2」という。)には、それぞれ、次の事項が記載されている。 (引用例1) A.「【特許請求の範囲】 【請求項1】 入力された読み文字列に対してかな漢字変換を行なう文書作成装置において、 かな漢字変換を行なう際に参照されるもので、読み文字列と、この読み文字列に対する変換結果との対応関係が登録されているかな漢字変換辞書と、 入力された読み文字列をもとに、前記かな漢字変換辞書を参照してかな漢字変換を行ない、少なくとも1つの変換候補の文字列を取得するかな漢字変換手段と、 文字列と、この文字列に関する情報が対応付けられて登録されている電子辞書と、 前記かな漢字変換手段によって取得された変換候補の文字列を検索キーとして前記電子辞書を検索し、前記変換候補の文字列に関する情報を取得する電子辞書検索手段と、 前記かな漢字変換手段によって取得された変換候補の文字列を表示すると共に、表示された変換候補の文字列に対する所定の指示に応じて、前記電子辞書検索手段によって検索された、前記所定の指示があった変換候補の文字列に関する情報のみを表示するかな漢字変換出力手段とを具備したことを特徴とする文書作成装置。 ・・・(中略)・・・ 【請求項6】 入力された読み文字列をもとに、読み文字列と、この読み文字列に対する変換結果との対応関係が登録されているかな漢字変換辞書を参照してかな漢字変換を行ない、少なくとも1つの変換候補の文字列を取得し、 かな漢字変換によって取得された変換候補の文字列を検索キーとして、文字列と、この文字列に関する情報が対応付けられて登録されている電子辞書を検索し、前記変換候補の文字列に関する情報を取得し、 かな漢字変換によって取得された変換候補の文字列を表示すると共に、表示された変換候補の文字列に対する所定の指示に応じて、前記電子辞書から検索された、前記所定の指示があった変換候補の文字列に関する情報のみを表示することを特徴とする情報表示方法。」 B.「【0019】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本実施形態に係わる文書作成装置の構成を示すブロック図である。本実施形態における文書作成装置は、日本語ワードプロセッサ、あるいはパーソナルコンピュータにより構成され、かな漢字変換のアプリケーションソフトウェア(日本語入力システム)の起動により、入力された読みの文字列を漢字かな混じり文に変換した際に、電子辞書検索のアプリケーションソフトウェアと連動して、かな漢字変換で得られた漢字かな混じり文の文字列に関する情報を電子辞書から検索する辞書検索処理を行ない、その検索結果を日本語入力システム側に渡して表示を行なうものである。本装置は、例えばメモリ、磁気ディスク等の記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、このプログラムによって動作が制御される。 【0020】本実施形態における文書作成装置は、図1に示すように、かな漢字変換制御部10、かな漢字変換入力部12、かな漢字変換部14、かな漢字変換辞書16、かな漢字変換出力部18、電子辞書制御部20、電子辞書検索部22、電子辞書24、検索結果保持部26、及び電子辞書出力部28によって構成される。 【0021】かな漢字変換制御部10は、本装置全体の制御を司るもので、かな漢字変換入力部12から入力される入力指示に従ったプログラムの起動により各種処理の動作を制御する。かな漢字変換制御部10は、変換候補の文字列に関する情報の表示と消去を、検索結果表示フラグ10aを用いて行なう(詳細については後述する)。 【0022】かな漢字変換入力部12は、キーボードやマウス等のポインティングデバイスからの入力を制御するもので、かな漢字変換の対象とする文書作成のための読み文字列、表示画面中におけるポインティングの指示、ファンクションの実行指示等を入力してかな漢字変換制御部10に通知する。 【0023】かな漢字変換部14は、かな漢字変換制御部10の制御のもとで、かな漢字変換入力部12から入力された読み文字列をもとに、かな漢字変換辞書16を参照してかな漢字変換を行ない、少なくとも1つの変換候補の文字列(漢字かな混じり文)を取得して、かな漢字変換制御部10に通知する。 【0024】かな漢字変換辞書16は、かな漢字変換部14によるかな漢字変換を行なう際に参照されるもので、読み文字列と、この読み文字列に対する変換結果との対応関係が登録されている。 【0025】かな漢字変換出力部18は、かな漢字変換部14によって取得された変換候補の文字列をかな漢字変換制御部10を介して取得して表示すると共に、表示された変換候補の文字列に対する所定の指示に応じて、電子辞書検索部22によって検索された、所定の指示があった変換候補の文字列に関する情報のみを検索結果保持部26から取得して表示する。 【0026】電子辞書制御部20は、電子辞書の検索処理の制御を司るもので、入力指示に従ったプログラムの起動により各種処理を実行する。ここでは、かな漢字変換部14によるかな漢字変換で得られた変換候補の文字列を検索キーとして、該当する文字列に関する情報を電子辞書24から取得する電子辞書の検索処理を制御する。なお、一般的な電子辞書ビューワの機能として起動し、任意に指定される文字列に対して、電子辞書24に対する検索を実行して情報を取得する処理を実行することもできる。 【0027】電子辞書検索部22は、電子辞書制御部20の制御のもとで、かな漢字変換制御部10から渡されたかな漢字変換の変換候補の文字列を検索キーとして、電子辞書24から検索キーに関する情報を検索結果として読み出し、その情報を検索結果保持部26に格納する。 【0028】電子辞書24は、検索キーに対応する文字列(単語)と、この文字列に関する情報が対応付けられて登録されたもので、例えばCD-ROM、ICカード等の記録媒体に内蔵された辞書である。電子辞書24の種類としては、「国語辞書」をはじめ、「和英辞書」「英和辞書」「英英辞書」「用例辞書」「人名辞書」「類語辞書」「漢和辞書」等、さまざまなものがある。 【0029】検索結果保持部26は、電子辞書検索部22による電子辞書24に対する検索によって順次得られる結果(検索キーとする文字列に関する情報)を保持するバッファメモリである。 【0030】電子辞書出力部28は、一般的な電子辞書ビューワの機能として起動された際に、電子辞書ビューワ用のウィンドウを画面中に表示させて、電子辞書24から検索され検索結果保持部26に格納された情報を所定の領域に表示する。」 C.「【0056】次に、第3実施形態の文書作成装置における動作について説明する。第1実施形態では、作成中の文書における、かな漢字変換の未確定の文字列(変換文字列領域)に対してマウスカーソルを移動させて直接的に指示することで、電子辞書24についての検索実行を指示しているが、第3実施形態では、かな漢字変換によって得られる複数の変換候補の一覧表示中において指示された文字列に対して指示することで、電子辞書24についての検索実行を指示する。 【0057】例えば、図5(a1)に示すように、文書作成のために「あすのかいぎのしりょうをととのえる」の読み文字列がかな漢字変換入力部12から入力され、かな漢字変換の実行が指示されたものとする。 【0058】この結果、図5(a2)に示すように、読み文字列に対し「明日の会議の資料をととのえる」の変換結果が得られ、文字列「ととのえる」については未確定状態にあり、かつ複数の変換候補が得られたものとする。 【0059】ここで、未確定の文字列「ととのえる」に対して、他の変換候補の選択要求がかな漢字変換入力部12から入力されると、かな漢字変換制御部10は、かな漢字変換出力部18に対して、図5(b)に示すような、変換候補の一覧を表示させる。 【0060】図5(b)に示す変換候補の一覧では、複数の変換候補から、かな漢字変換入力部12によって入力された指示に応じたカーソルの移動によって選択候補が指定される。図5(b)では、変換候補「整(える)」が選択候補として指定された状態を示している。 【0061】以下、変換候補の一覧において選択候補として指定された文字列に対して、第1実施形態と同様に、マウスカーソルを移動させることで、指定された変換候補を検索文字列として電子辞書24の検索が実行される。 【0062】例えば、図5(c)に示すように、選択候補として指定された変換候補「整(える)」の位置にマウスカーソルが移動されると、変換文字列領域の近傍に「整える」についての電子辞書24から取得された意味情報が表示される。 【0063】また、第1実施形態と同様にして、マウスカーソルが選択候補として指定された変換候補の文字列「整」から離されると、図5(d)に示すように、意味情報の表示を消去する。 【0064】変換候補の一覧の他の変換候補の意味情報を表示させる場合には、カーソルの移動によって、例えば図6(a)に示すように所望する他の変換候補「調(える)」が選択候補として指定され、マウスカーソルが変換候補「調(える)」の位置に移動されることで、同様にして指定された変換候補「調(える)」の意味情報が表示される。 【0065】また、マウスカーソルが選択候補として指定された変換候補の文字列「調」から離されると、同様にして図6(b)に示すように、意味情報の表示を消去する。 【0066】なお、指定された選択候補の文字列、例えば変換候補「ととの(える)」をもとにした電子辞書24に対する検索で、意味情報が取得できなかった場合には、図6(c)に示すように、指定された文字列に対する意味情報が電子辞書24に登録されていないことを通知するメッセージを表示させる。 【0067】このようにして、第1実施形態において説明したように変換文字列領域に対するマウスカーソルによる指示だけでなく、変換候補の一覧中においてカーソルによって指定されている選択候補の文字列に対するマウスカーソルによる指示を行なっても、電子辞書24に対する検索が実行されて選択候補の文字列についての意味情報のみが、変換文字列領域の近傍に表示される。」 D.「【0068】次に、第4実施形態の文書作成装置における動作について説明する。第3実施形態では、選択候補の一覧において指定されている選択候補に対してマウスカーソルによる指定があった場合に、指定された文字列について電子辞書24の検索を行なうものとしているが、第4実施形態では、選択候補の一覧中において表示されている複数の変換候補中から任意に指定された文字列について電子辞書24に対する検索を実行する。 【0069】例えば、図7(a)に示すように、文書作成のために「あすのかいぎのしりょうをととのえる」の読み文字列がかな漢字変換入力部12から入力され、かな漢字変換の実行が指示されたものとする。 【0070】この結果、読み文字列に対し「明日の会議の資料を調える」の変換結果が得られ、文字列「調える」については未確定状態にあり、かつ複数の変換候補が得られたものとする。ここで、未確定の文字列「調える」に対して、他の変換候補の選択要求がかな漢字変換入力部12から入力されると、かな漢字変換制御部10は、かな漢字変換出力部18に対して変換候補の一覧を表示させる。 【0071】変換候補の一覧に対しては、例えば図7(a)に示すように、変換候補「調(える)」がマウスカーソルによって指定されると、指定された変換候補の文字列についての検索が実行され、その検索結果である意味情報が変換文字列領域の近傍に表示される。 【0072】さらに、変換候補の一覧中において、マウスカーソルの位置が他の変換候補、例えば図7(b)に示すように変換候補「整(える)」に変更されると、指定された変換候補の文字列についての検索が実行され、検索結果の意味情報が表示される。 【0073】すなわち、第4実施形態では、選択候補として指定されている文字列に限らず、変換候補の一覧中において表示されている文字列に対して、任意に指定することで電子辞書24に対する検索が実行され、対応する意味情報が取得されて表示される。 【0074】このようにして、変換候補の一覧中の文字列を任意に指定するだけで電子辞書24に対する検索が実行されるので、簡単な操作によって、各変換候補の文字列についての意味情報を取得することができる。」 上記A?Dの記載及び関連する図面を参照すると、次のことがいえる。 (あ)引用例1のものにおける「かな漢字変換のアプリケーションソフトウェア」は、引用例1に明示の記載はないものの「文字を入力するための文字入力システム」から入力された文字を漢字に変換する機能を有するものであるということができる。 (い)引用例1のものは、「かな漢字変換出力部」の出力内容及び「電子辞書出力部」の出力内容を表示する「表示部」を当然備えるものと解される。 (う)引用例1のものは、文字入力システムによるアプリケーションソフトウェアへの文字入力処理に連動して電子辞書を検索する動作をしているということができる。 (え)引用例1の上記Cの段落【0059】?【0060】の記載によれば、引用例1の図5(b)の「変換候補『整(える)』が選択候補として指定された状態」においては、「変換候補の一覧」が表示されており、「かな漢字変換入力部から入力された文字列に対する変換候補の文字列が表示部に表示されている状態」であるということができる。 そして、引用例1の上記Cの段落【0064】の「カーソルの移動によって、例えば図6(a)に示すように所望する他の変換候補『調(える)』が選択候補として指定され」ることは、「変換候補の一覧」が表示されている状態、すなわち「かな漢字変換入力部から入力された文字列に対する変換候補の文字列が表示部に表示されている状態」下で、「変換候補の選択を切り換える操作」であるということができる。 このことは、引用例1の上記Dの段落【0072】の動作でも同様である。 上記(あ)?(え)の事項を踏まえると、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例1記載の発明」という。) 「かな漢字変換のアプリケーションソフトウェアと、前記アプリケーションソフトウェアに文字を入力するための文字入力システムと、検索キーに対応する文字列(単語)とこの文字列に関する情報が対応付けられて登録された電子辞書とがメモリに組み込まれ、かな漢字変換の対象とする文書作成のための読み文字列、表示画面中におけるポインティングの指示、ファンクションの実行指示等を入力するかな漢字変換入力部と、前記アプリケーションソフトウェアの画面を表示するための表示部とが接続されている文書作成装置において、前記文字入力システムによるアプリケーションソフトウェアへの文字入力処理に連動して前記電子辞書を検索して得た情報を表示する方法であって、 前記かな漢字変換入力部から入力された文字列に対する変換候補の文字列が前記表示部に表示されている状態下で、変換候補の選択を切り換える操作を行う第1のステップ、 前記第1のステップで切り換えられた選択中の候補の文字列を特定する第2のステップ、 前記第2のステップで特定された文字列を検索文字列として前記電子辞書を検索する第3のステップ、 前記第3のステップの検索で抽出された情報を表示部に表示する第4のステップ、 の各ステップを、実行する情報表示方法。」 (引用例2) E.「4.1 スクリーンリーダの構成 Windows用スクリーンリーダ(Windows screen reader)はすべてソフトウェアで構成される(図4).ソフトウェアは,フック機能プログラム(Hooking program),読み上げ基本プログラム(Main reading program),音声合成ドライバ(Speech synthesis driver),視覚障害者用日本語入力システム(IME for b1ind persons)に分解できる. フック機能プログラムはWindowsが提供するフック関数を利用して,Windowsシステムから各種イベント情報を取得するものである.読み上げ基本プログラムは,フック機能プログラムが取得した情報を,ユーザにとって理解しやすいテキスト情報に置き換えて音声合成ドライバヘ送信する.音声合成ドライバは,受信したテキストに対して規則音声合成を行い,ウェーブデータとしてサウンドカードヘ送る. 視覚障害者用日本語入力システム(IME for blind persons)には,MS-DOS用に開発された音声出力付きフロントエンドプロセッサ(言語工学研究所,やまびこ)をWindowsへ移植したものを用いた.これは,仮名漢字変換中および変換後の文字列を,視覚障害者が音声で理解できる表現として音声合成ドライバヘ送る機能をもつ.」(第140頁左欄第1?23行) F.「5.1 スクリーンリーダの構成 ソフトウェアの構成要素は1次試作(図4)とほほ同じである(図13).変更点は,以下の3点である. (1)視覚障害者用日本語入力システムの省略 IMEに関連したメッセージをフックすることにより汎用のIMEを音声化できるようになった.このため,視覚障害者用日本語入力システムは不要となった.」(第142頁右欄第24?30行) G.「5.3 日本語入力システムの読み上げ 汎用の日本語入力システム「MS-IME95」,「MS-IME97」,「ATOK10」,「ATOK11」の仮名漢字変換中の内容を読み上げることができる.」(第143頁左欄第41?44行) 上記E?Gの記載を参照すると、引用例2には、次の技術が記載されているものと認められる。(以下、「引用例2記載の技術」という。) 「Windowsが提供するフック関数を利用して、IMEに関連したメッセージを取得し、他のプログラムに送ること。」 (3)対比 本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。 (ア)引用例1記載の発明における「かな漢字変換のアプリケーションソフトウェア」は、本願発明における「アプリケーション用のプログラム」に相当する。 (イ)引用例1記載の発明における「検索キーに対応する文字列(単語)とこの文字列に関する情報が対応付けられて登録された電子辞書」には、当然、1個の文字列(単語)だけでなく、任意の所定数の文字列(単語)が登録されるものであると解される。 よって、引用例1記載の発明における「検索キーに対応する文字列(単語)とこの文字列に関する情報が対応付けられて登録された電子辞書」は、本願発明における「所定数の情報がそれぞれ文字列をキーとして検索できるようにして格納された辞書ファイル」に相当する。 (ウ)引用例1記載の発明において「かな漢字変換の対象とする文書作成のための読み文字列」を入力することは、本願発明における「文字列の入力」に相当する。 また、引用例1記載の発明における「表示画面中におけるポインティングの指示、ファンクションの実行指示等」には、「入力文字列を別の文字列に変換する操作」が含まれるものと解される。 よって、引用例1記載の発明における「かな漢字変換の対象とする文書作成のための読み文字列、表示画面中におけるポインティングの指示、ファンクションの実行指示等を入力するかな漢字変換入力部」は、本願発明における「文字列の入力およびその入力文字列を別の文字列に変換する操作のための入力部」に相当する。 (エ)引用例1記載の発明における「文書作成装置」は、本願発明における「演算処理装置」に相当する。 (オ)引用例1記載の発明における「かな漢字変換入力部から入力された文字列に対する変換候補の文字列が表示部に表示されている状態下で、変換候補の選択を切り換える操作」は、本願発明における「第1のステップ」中で行われる「入力部から入力された文字列に対する変換候補の文字列が表示部に表示されている状態下で、変換候補の選択を切り換える操作」に対応するものである。 よって、本願発明と引用例1記載の発明とは、「入力部から入力された文字列に対する変換候補の文字列が表示部に表示されている状態下で、変換候補の選択を切り換える操作を行う第1のステップ」を実行する点において共通する。 (カ)本願発明においては、「第1のステップ」で、「入力部から入力された文字列に対する変換候補の文字列が表示部に表示されている状態下」での「変換候補の選択を切り換える操作」に応じて、「文字入力システムからオペレーティングシステムに、複数の変換候補の文字列と識別表示すべき選択中の候補を知らせるパラメータとを含むメッセージ」が送出され、その「メッセージ」を読み取ることを行い、その動作を受けて、「第2のステップ」で、「読み取られたメッセージ」に基づき「選択中の候補の文字列」を特定するようにしている。 すなわち、「第2のステップ」で特定される「選択中の候補の文字列」は、「第1のステップ」での「変換候補の選択を切り換える操作」に応じた「識別表示すべき選択中の候補」を知らせるパラメータを含む「メッセージ」に基づくものなのであるから、「第1のステップ」で切り換えられた「選択中の候補の文字列」であるということができる。 よって、本願発明と引用例1記載の発明とは、「第1のステップで切り換えられた選択中の候補の文字列を特定する第2のステップ」を実行する点において共通する。 (キ)引用例1記載の発明における「第2のステップで特定された文字列を検索文字列として電子辞書を検索する第3のステップ」は、本願発明における「第2のステップで特定された文字列をキーワードとして辞書ファイルを検索する第3のステップ」に相当する。 (ク)本願発明における「第4のステップ」中で行われる「第3のステップの検索で抽出された情報」の「内容」を知らせる「メッセージ」をオペレーションシステムに送出する動作は、上記「第3のステップの検索で抽出された情報」を表示部に表示するための動作である。 一方、引用例1記載の発明においても、「第3のステップの検索で抽出された情報を表示部に表示する」ための何らかの処理動作を行うものと解される。 よって、本願発明と引用例1記載の発明とは、「第3のステップの検索で抽出された情報を表示部に表示するための動作を行う第4のステップ」を実行する点において共通する。 (ケ)引用例1記載の発明における「情報表示方法」は、電子辞書を検索し、その結果得た情報を表示する方法に係るものであり、どのようなきっかけで電子辞書を検索するかという点に特徴があるものであるから、「辞書検索方法」とも呼び得るものである。 上記(ア)?(ケ)の事項を踏まえると、本願発明と引用例1記載の発明とは、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。 (一致点) 本願発明と引用例1記載の発明とは、ともに、 「アプリケーション用のプログラムと、前記アプリケーションに文字を入力するための文字入力システムと、所定数の情報がそれぞれ文字列をキーとして検索できるようにして格納された辞書ファイルとがメモリに組み込まれ、文字列の入力およびその入力文字列を別の文字列に変換する操作のための入力部と、前記アプリケーションの画面を表示するための表示部とが接続されている演算処理装置において、前記文字入力システムによるアプリケーションへの文字入力処理に連動して前記辞書ファイルを検索する方法であって、 前記入力部から入力された文字列に対する変換候補の文字列が前記表示部に表示されている状態下で、変換候補の選択を切り換える操作を行う第1のステップ、 前記第1のステップで切り換えられた選択中の候補の文字列を特定する第2のステップ、 前記第2のステップで特定された文字列をキーワードとして前記辞書ファイルを検索する第3のステップ、 前記第3のステップの検索で抽出された情報を表示部に表示するための動作を行う第4のステップ、 の各ステップを、実行する辞書検索方法。」 である点。 (相違点) 相違点1:本願発明は、「オペレーションシステム」をメモリに組み込むようにし、「アプリケーション用のプログラム」が「オペレーションシステムの管理下で作動する」ものであるとされているのに対し、引用例1には、「オペレーションシステム」に関する記載がなく、引用例1記載の発明における「かな漢字変換のアプリケーションソフトウェア」が「オペレーションシステムの管理下で作動する」ものであるのかどうか明らかでない点。 相違点2:本願発明においては、「第1のステップ」で「変換候補の選択を切り換える操作に応じて、文字入力システムからオペレーティングシステムに、複数の変換候補の文字列と識別表示すべき選択中の候補を知らせるパラメータとを含むメッセージが送出されたとき、このメッセージを読み取る」動作を行い、「第2のステップ」で「第1のステップで読み取られたメッセージに基づき選択中の候補の文字列を特定する」動作を行い、「第4のステップ」で「第3のステップの検索で抽出された情報を表示部に表示するために、その情報の内容を知らせるメッセージをオペレーションシステムに送出する」動作を行うものであるのに対し、引用例1記載の発明における各ステップは、そのようなものであるとはされていない点。 (4)判断 そこで、上記相違点1,2について検討する。 (相違点1について) 一般に、情報処理装置において、「オペレーションシステム」をメモリに組み込み、「アプリケーション用のプログラム」を「オペレーションシステムの管理下で作動」させるようにすることは、ごく普通に行われていることにすぎない。 よって、引用例1記載の発明において、「オペレーションシステム」をメモリに組み込み、「かな漢字変換のアプリケーションソフトウェア」を「オペレーションシステムの管理下で作動」させるようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 (相違点2について) 上記引用例2には、“Windows”というオペレーションシステムが提供するフック関数を利用して、IME(文字入力システム)に関連したメッセージを取得し、他のプログラムに送る技術が記載されている。 してみれば、引用例1記載の発明において、上記引用例2記載の技術に見られるようなメッセージフックの技術を利用して、変換候補の文字列や、識別表示すべき選択中の候補等を取得するようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 よって、引用例1記載の発明において、上記引用例2記載の技術を参酌し、「第1のステップ」で「変換候補の選択を切り換える操作に応じて、文字入力システムからオペレーティングシステムに、複数の変換候補の文字列と識別表示すべき選択中の候補を知らせるパラメータとを含むメッセージが送出されたとき、このメッセージを読み取る」動作を行い、「第2のステップ」で「第1のステップで読み取られたメッセージに基づき選択中の候補の文字列を特定する」動作を行い、「第4のステップ」で「第3のステップの検索で抽出された情報を表示部に表示するために、その情報の内容を知らせるメッセージをオペレーションシステムに送出する」動作を行うようにすることは、当業者が適宜に設計できる事項である。 (本願発明の作用効果について) そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1記載の発明、及び引用例2記載の技術から当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 (5)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明、及び引用例2記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-12-11 |
結審通知日 | 2009-12-15 |
審決日 | 2010-01-04 |
出願番号 | 特願平11-138761 |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 上嶋 裕樹 |
特許庁審判長 |
長島 孝志 |
特許庁審判官 |
池田 聡史 小曳 満昭 |
発明の名称 | 辞書検索方法、およびその検索方法を実施するためのプログラムが記録された記録媒体ならびに演算処理装置 |
代理人 | 鈴木 由充 |