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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1212034
審判番号 不服2007-17442  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-21 
確定日 2010-02-18 
事件の表示 特願2001-334111「液体排出用ポンプ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月14日出願公開、特開2003-137329〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年10月31日を出願日とする出願であって、当審において平成21年6月24日付けで最初の拒絶理由通知がされ、これに対し、平成21年8月20日付けで手続補正がなされ、平成21年9月9日付けで最後の拒絶理由通知がされ、これに対し平成21年10月9日付けで手続補正がなされたものである。

2.当審の拒絶理由
当審において平成21年9月9日付けで通知した拒絶の理由の概要は、
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
1.貫通路と弁体との間に形成する「隙間」を特定するための「粘度の低い液体であってもほとんど通過することができず」の記載は、「粘度の低い」が相対的な表現であるため、当該「隙間」を特定することができず、明確でない。(「粘度の低い」の意図する粘度が例えば数値で具体的に明細書中に記載されているわけではないので、「粘度の低い」の粘度を客観的に特定することができない。)
2.「液体の吐出圧による弁体の強制的な移動により該貫通路を開放する幅広がり部を設けた」の意図する構成が明確でない。(弁体7は弁座3bに着座して貫通路3aを閉鎖し、弁体7が浮遊しているときは貫通路3aは開放されているものと認められる。幅広がり部が弁体の強制的な移動により該貫通路を開放するための構成が不明である。)
というものである。

3.平成21年10月9日付けの手続補正(以下「本件補正」という)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年10月9日付けの手続補正を却下する。
[理由]
本件補正は、平成21年8月20日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の【請求項1】に記載された
「【請求項1】容器の口部に係合して該容器を密閉状態に保持するベースキャップと、このベースキャップに固定保持され容器の口部内に挿通されるシリンダと、容器内の液体を通過させる貫通路を有しシリンダ内にて往復移動可能なスライダーと、このスライダーの後端につながりその押圧動作の繰り返しによりシリンダ内の開閉弁を作動させて容器内の液体を吸引、加圧して貫通路を通して液体を排出する押圧ヘッドとを備えるポンプであって、
前記スライダーの貫通路に、液体の吸引時に該貫通路を閉塞する一方、加圧時には液体中に浮遊して該貫通路を開放する弁体を配設し、
前記貫通路と弁体との相互間に、粘度の低い液体であってもほとんど通過することができず弁体が液体の吐出圧により強制的に該貫通路上部に移動可能であり、かつ、該貫通路を閉塞するまでの弁体の動作を遅延させて該弁体からノズルに至るまでに残存する液体を貫通路及び/又はシリンダ内に呼び込むことを可能とする、弁体の作動を阻害しない範囲の極僅かな隙間を形成し、
前記貫通路の上部に、液体の吐出圧による弁体の強制的な移動により該貫通路を開放する幅広がり部を設けた、ことを特徴とする液体排出用ポンプ。」を、
「【請求項1】容器の口部に係合して該容器を密閉状態に保持するベースキャップと、このベースキャップに固定保持され容器の口部内に挿通されるシリンダと、容器内の液体を通過させる貫通路を有しシリンダ内にて往復移動可能なスライダーと、このスライダーの後端につながりその押圧動作の繰り返しによりシリンダ内の開閉弁を作動させて容器内の液体を吸引、加圧して貫通路を通して液体を排出する押圧ヘッドとを備えるポンプであって、
前記スライダーの貫通路に、液体の吸引時に該貫通路を閉塞する一方、加圧時には液体中に浮遊して該貫通路を開放する弁体を配設し、
前記貫通路と弁体との相互間に、液体がほとんど通過することができず弁体が液体の吐出圧により強制的に該貫通路上部に移動可能であり、かつ、該貫通路を閉塞するまでの弁体の動作を遅延させて該弁体からノズルに至るまでに残存する液体を貫通路及び/又はシリンダ内に呼び込むことを可能とする、弁体の作動を阻害しない範囲の極僅かな隙間を形成し、
前記貫通路の上部に、液体の吐出圧によって強制的に移動させられた弁体が該液体中に浮遊して該貫通路を開放する幅広がり部を設けた、ことを特徴とする液体排出用ポンプ。」
とする補正を含んでいる。
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「隙間」に関して「粘度の低い液体であってもほとんど通過することができず」とあったものを「液体がほとんど通過することができず」とし、また、同じく「幅広がり部」に関して「液体の吐出圧による弁体の強制的な移動により該貫通路を開放する」とあったものを「液体の吐出圧によって強制的に移動させられた弁体が該液体中に浮遊して該貫通路を開放する」とするものであり、前者は、隙間が一定であっても液体の粘度によって通過する量は変わるので、補正後の記載においてどのような液体がどのような量通過するのか特定することができず、また、後者は、日本語として不明確であり、例えば、補正後の記載において弁体が「浮遊」することと「開放」することの関係が不明確で、「浮遊」すること自体が「開放」なのか、「浮遊」して更に特定の動作によって開放するのか特定できない。
したがって、上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認めることはできない。
さらに、この補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明りようでない記載の釈明のいずれに該当するとも認められないので、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前の特許法」とする)第17条の2第4項の規定に違反する。
以上より、本件補正は、改正前の特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

4.特許請求の範囲について
4-1.本願特許請求の範囲
平成21年10月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲は、平成21年8月20日付で補正された明細書の特許請求の範囲のとおりのものである(上記3.の本件補正前の特許請求の範囲の請求項1参照、以下「本願発明」という)。

4-2.当審の判断
本願特許請求の範囲の貫通路と弁体との間に形成する「隙間」を特定するための「粘度の低い液体であってもほとんど通過することができず」の記載は、「粘度の低い」が相対的な表現であるため、当該「隙間」を特定することができず、明確でない。
明細書の【発明の詳細な説明】の欄を参照しても、「粘度の低い」の意図する粘度が例えば数値で具体的に記載されておらず、「粘度の低い」の粘度を客観的に特定することができない。
また、「液体の吐出圧による弁体の強制的な移動により該貫通路を開放する幅広がり部を設けた」の記載は、何が「開放」するのかその主体が不明確であり、「開放」される理由も特定できず、明確でない。
明細書の【発明の詳細な説明】の欄を参照しても、段落【0010】の記載から弁体7は弁座3bに着座して貫通路3aを閉鎖する点は明らかであるが、「幅広がり部」や「開放」については明確な説明がなく、「液体の吐出圧による弁体の強制的な移動により該貫通路を開放する幅広がり部」の構成を特定できない。
したがって、本願は、特許を受けようとする発明が特許請求の範囲の記載から明確ではなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
なお、平成21年6月24日付けの拒絶理由通知で本願発明の先行発明(特開平7-96956号公報)を既に示してあり、出願人は本願明細書の記載に基づく特許請求の範囲の補正によって特許を受けようとする発明を明確なものとし、先行発明との構成上の差異を明らかにすると共に、それによる本願発明の格別な効果を主張する必要があるところ、補正によって、進歩性新規性の判断を行える程度に、特許を受けようとする発明が明確にされたとは言えない。

4-3.むすび
以上のとおり、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、同項の規定に違反するので、当審で通知した上記拒絶の理由によって拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-10 
結審通知日 2009-12-15 
審決日 2010-01-05 
出願番号 特願2001-334111(P2001-334111)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (B65D)
P 1 8・ 57- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳田 利夫山口 直  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 熊倉 強
豊島 ひろみ
発明の名称 液体排出用ポンプ  
代理人 杉村 憲司  
代理人 澤田 達也  
代理人 来間 清志  
代理人 杉村 興作  

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