• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1212096
審判番号 不服2007-10938  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-16 
確定日 2010-02-15 
事件の表示 特願2002- 30398「購入取引に関するディジタル領収書及び関連アプリケーションの提供システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月22日出願公開、特開2002-334295〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年2月7日の出願(パリ条約による優先権主張2001年2月12日、アメリカ合衆国)であって、平成18年12月26日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成19年4月16日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同年5月15日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年5月15日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「電子ネットワークに接続された小売り端末装置と、
前記小売り端末装置に接続され、前記電子ネットワークにおけるネットワーク・アドレスを機械読取可能な形態にて印刷可能なプリンタと、
前記電子ネットワークに接続されてアドレス可能な1又は複数の記憶媒体と、を備え、
前記記憶媒体は、前記電子ネットワークにおける特定のネットワーク・アドレスにおいて、前記購入取引のディジタル領収書と、当該購入取引に関連する1又は複数のプログラムであって当該購入取引者が操作可能なアプリケーションと、を格納し、
前記小売り端末装置は、
(1)前記購入取引に対応するディジタル領収書を作成し、
(2)前記記憶媒体の一つにアクセスして前記ディジタル領収書の前記記憶媒体における記憶箇所に対応するネットワーク・アドレスを獲得し、
(3)前記ディジタル領収書を前記憶媒体における前記獲得したネットワーク・アドレスに記憶させ、
(4)前記ネットワーク・アドレスを前記プリンタに提供して、前記プリンタが前記獲得したネットワーク・アドレスをバーコードの形態にて印刷させるように動作し、
前記プリンタは、前記購入取引に対応するペーパ領収書上に前記バーコードを印刷して発行し、
以って、購入取引のペーパ領収書を発行すると共に電子ネットワークを介して購入取引に関するディジタル領収書及び購入取引に関連するアプリケーションを提供するシステム。」

3.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された「特開2000-30154号公報」(以下「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 取引きごとのレシートデータをレシート用紙に印刷したレシートを発行可能な商品販売データ処理システムにおいて、
前記レシートデータごとの識別情報を発行可能かつパスワードを発行可能に形成するとともに各レシートデータを発行された当該各識別情報およびパスワードと対応させて格納可能に形成し、格納されたレシートデータの中から外部で指定された識別情報およびパスワードに対応するレシートデータを当該外部で呼出しできるようにインターネットのホームページを介して開示可能に形成されている商品販売データ処理システム。
【請求項2】 前記レシート用紙に前記識別情報およびパスワードが印刷可能に形成されている請求項1記載の商品販売データ処理システム。
【請求項3】 会員番号を利用した取引きの場合には前記パスワードが当該会員番号として発行されかつ前記レシート用紙には当該パスワードが伏字で印刷されるものとされている請求項2記載の商品販売データ処理システム。
【請求項4】 前記レシート用紙に前記識別情報およびパスワードとともに当該レシートデータが印刷可能に形成されている請求項1または請求項2記載の商品販売データ処理システム。
【請求項5】 前記レシート用紙には当該アクセス先が印刷可能に形成されれている請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載された商品販売データ処理システム。」

(イ)「【0017】さらにまた、請求項5の発明は、前記レシート用紙には当該アクセス先が印刷可能に形成されている商品販売データ処理システムである。
【0018】かかる発明では、レシート用紙(例えば、アクセス情報券)には、当該店舗つまりアクセス先(URL)が印刷される。」

(ウ)「【0020】図1において、各端末を形成する電子キャッシュレジスタ10は、CPU11,ROM12,RAM13,HDD(ハードディスク装置)14,スキャナ(SCN)15,キーボード(KB)16,表示器(IND)17,プリンタ(PNT)18,データ通信回線(LAN)1用のインターフェイス(I/F)19,自動開放装置付きのドロワ(DRW)29および店舗会員カードやクレジットカードのリーダーライタ(R/W)20を含み、商品登録機能,会計処理機能等を有する。」

(エ)「【0025】次に、ストアコントローラ30は、図1に示す如く、CPU31,ROM32,RAM33(アクセス情報ファイル33DF),HDD34,キーボード36,表示器37,データ通信回線(LAN)1用のインターフェイス(I/F)38およびデータ通信回線(ISDN)2用のインターフェイス(I/F)39を含み、各端末(10)の一括管理機能等を有する。
【0026】また、ストアコントローラ30は、Webサーバ50を介してインターネット3に接続されている。外部(クライアント側)たるパソコン40は、データ通信回線(例えば、ISDN)2およびプロバイダサーバ60を介してインターネット3に接続されている。」

(オ)電子キャッシュレジスタ10とストアコントローラ30とがデータ通信回線1で接続され、該ストアコントローラ30とWebサーバ50とがデータ通信回線2で接続され、該Webサーバ50がインターネット3に接続されている構成図(図1)。

これらの記載事項によれば、引用例1には以下の発明(以下「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。
「データ通信回線1に接続された電子キャッシュレジスタ10と、
前記電子キャッシュレジスタ10に含まれ、店舗へのアクセス先(URL)とレシートデータごとの識別情報を印刷可能なプリンタ(PNT)18と、
インターネット3に接続されたWebサーバ50と、を備え、
前記Webサーバ50は、取引きごとのレシートデータを前記識別情報に対応させて格納し、
前記電子キャッシュレジスタ10は、前記店舗へのアクセス先のURLと前記識別情報とを前記プリンタ(PNT)18に提供して、前記プリンタ(PNT)18が前記店舗へのアクセス先のURLと前記識別情報とを印刷させるように動作し、
以って、取引きごとのレシートデータをレシート用紙に印刷したレシートを発行すると共にインターネットのホームページを介して取引きに関するレシートデータを提供するシステム。」

4.対比
本願発明と引用例1発明を対比すると、以下の対応関係が認められる。
(1)引用例1発明の「データ通信回線1、2、及びインターネット3」は本願発明の「電子ネットワーク」に相当するものである。
(2)引用例1発明の「電子キャッシュレジスタ10」と「プリンタ(PNT)18」はそれぞれ本願発明の「小売り端末装置」と「プリンタ」に対応するものである。
(3)引用例1発明の「インターネット3に接続されたWebサーバ50」は本願発明の「電子ネットワークに接続されてアドレス可能な1又は複数の記憶媒体」に相当するものである。
(4)引用例1発明の「取引きごとのレシートデータ」は本願発明の「購入取引のディジタル領収書」に相当するものである。
(5)引用例1発明の「取引きごとのレシートデータをレシート用紙に印刷したレシート」は本願発明の「購入取引のペーパ領収書」に相当するものである。
(6)引用例1発明の「店舗へのアクセス先(URL)とレシートデータごとの識別情報」はWebサーバ(記憶媒体)に格納されているレシートデータ(ディジタル領収書)の記憶箇所を特定するための情報であるという意味において、本願発明の「ディジタル領収書の記憶媒体における記憶箇所に対応するネットワーク・アドレス」と共通する。

したがって、本願発明と引用例1発明の間には、以下の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「電子ネットワークに接続された小売り端末装置と、
プリンタと、
前記電子ネットワークに接続されてアドレス可能な1又は複数の記憶媒体と、を備え、
前記記憶媒体は、購入取引のディジタル領収書を格納し、
前記小売り端末装置は、前記記憶媒体に格納されているディジタル領収書の記憶箇所を特定するための情報を前記プリンタに提供して、前記プリンタが前記情報を印刷させるように動作し、
以って、購入取引のペーパ領収書を発行すると共に電子ネットワークを介して購入取引に関するディジタル領収書を提供するシステム。」である点。
(相違点1)
本願発明においては、「プリンタ」と「小売り端末装置」とが別体とされ、前者が後者に接続されているのに対し、引用例1発明においては、「プリンタ(PNT)18」が「キャッシュレジスタ10」に含まれている点。
(相違点2)
本願発明は記憶媒体に格納されているディジタル領収書の記憶箇所を特定するための情報として、「ディジタル領収書の記憶媒体における記憶箇所に対応するネットワーク・アドレス」を用いているのに対し、引用例1発明は記憶媒体(Webサーバ)に格納されているディジタル領収書(レシートデータ)の記憶箇所を特定するための情報として「ディジタル領収書の記憶媒体における記憶箇所に対応するネットワーク・アドレス」ではなく、「店舗へのアクセス先(URL)とレシートデータごとの識別情報」を用いている点。
(相違点3)
本願発明では、小売り端末装置が、ディジタル領収書を作成し、記憶媒体の一つにアクセスして、該記憶媒体に格納するディジタル領収書の記憶箇所を特定するための情報を獲得して、該ディジタル領収書を該記憶媒体に記憶させているのに対し、引用例1発明ではそのような構成が特定されていない点。
(相違点4)
本願発明では、プリンタが記憶媒体に格納されているディジタル領収書の記憶箇所を特定するための情報を「バーコードの形態にて」印刷しているのに対し、引用例1発明では記憶媒体に格納されているディジタル領収書の記憶箇所を特定するための情報をバーコードの形態では印刷していない点。
(相違点5)
本願発明の記憶媒体は購入取引に関連する1又は複数のプログラムであって購入取引者が操作可能なアプリケーションをも特定のネットワーク・アドレスにおいて格納するものであり、本願発明のシステムは該アプリケーションをも提供するものであるのに対し、引用例1発明の記憶媒体は、そのようなアプリケーションを格納するものではなく、引用例1発明のシステムは該アプリケーションを提供するものではない点。

5.判断
(相違点1)について
プリンタと小売り端末装置とを同一筐体で構成するか、別体で構成するかは当業者が適宜選択する設計的事項に過ぎないから、引用例1発明において、プリンタ(PNT)18とキャッシュレジスタ10(小売り端末装置)とを別体で構成して、前者を後者に接続する構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2)について
引用例1発明において、Webサーバに格納されているレシートデータは、レシートデータごとの識別情報によって一意に定められたどこかの記憶箇所に格納されていることは自明であり、一般にURLがインターネット上のWebサーバの位置を一意に特定するだけでなく、該Webサーバに格納されているファイルなどの情報の記憶箇所をも一意に特定するために広く用いられていることも併せて考慮すると、引用例1発明のWebサーバに格納されているレシートデータの記憶箇所を特定するための情報として、店舗へのアクセス先(URL)とレシートデータごとの識別情報とをつなぎ合わせた一つのURLとすること、すなわちレシートデータ(ディジタル領収書)のWebサーバ(記憶媒体)における記憶箇所に対応するネットワーク・アドレスを用いる構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点3)について
引用例1には、取引きごとのレシートデータと、該レシートデータを特定するための情報である該レシートデータごとの識別情報(レシート番号)とをどの装置が生成するのかについて明記はされていないが、取引きごとのレシートデータは商品の取引きの情報が実際に入力される電子キャッシュレジスタで作成するのが最も簡便であることは自明である。また、Webサーバにレシートデータを格納する際には、レシートデータごとの識別情報がWebサーバにおいて一意に定められる必要があることは自明であるし、そのようにするには該識別情報をWebサーバが生成するようにすることが最も簡便であることも自明であるから、上記識別情報をWebサーバが生成し、電子キャッシュレジスタが該Webサーバにアクセスして、該識別情報を該Webサーバに格納されているレシートデータの記憶位置を特定するための情報として獲得するように構成することは当業者が容易になし得たことである。

(相違点4)について
インターネット上のWebサーバに格納されたファイルなどの情報の記憶位置を特定するための情報であるアクセス情報(URL)をバーコードにエンコードし、バーコードスキャナで読取れるようにすることは周知技術である。例えば、原査定の拒絶の理由に引用された「特開平10-124517号公報」には以下の事項が記載されている。
(カ)「【0025】このように、本実施の形態によれば、UPL二次元データコード43をスキャナ16でスキャニングするだけのワンタッチ操作で、インターネット上のサーバに蓄積されたデータファイルをアクセスするためのアクセス情報を入力でき、このアクセス情報を1文字ずつキー入力する手間を省略できるので、サーバに蓄積された所望する商品の性能,形態等の商品情報を参照するまでの所要時間を大幅に短縮できる。また、使用する通信プロトコルの種類やアクセス対象のWWWサーバの名前及びデータファイルの名前を知らなくてもよい上、キーボードを操作して1文字ずつ入力する必要もないので、コンピュータの取扱いに不慣れなオペレータでも容易に所望する商品の情報を参照することができる。」

(キ)「【0027】なお、本発明は前記一実施の形態に限定されるものではない。例えば、前記実施の形態ではアクセス情報を二次元データコードにエンコードしたが、バーコードにエンコードし、バーコードスキャナで読取るようにしてもよい。また、前記実施の形態ではA社サーバ3a及びB社サーバ3bからインターネット2を介して取得した商品情報の画像データをオペレータ用表示器12と客用表示器13とに表示させたが、いずれか一方の表示器に表示させるようにしてもよい。」

してみると、引用例1発明において、プリンタがアクセス先(URL)とレシートデータの識別情報をレシート用紙に印刷する際に、上記情報をバーコードの形態にて印刷させる構成とすることは、上記周知技術を用いて当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点5)について
サーバにアプリケーションデータと共に、該アプリケーションデータに関連するアプリケーションを格納して、クライアントに提供することは周知技術である。例えば、「特開平11-203080号公報」には以下の事項が従来の技術として記載されている。
(ク)「【0017】また、近年においては、アプリケーションプログラムの機能・性能の向上により様々な電子ドキュメントに対する機能が提供されるようになってきた。マイクロソフト社のオフィス・アプリケーションソフトウエアでは、アプリケーションプログラムを持っていないコンピュータからWeb環境を介してサーバー上に存在するアプリケーションデータをアクセスした際に、サーバーからアプリケーションデータの読み込み表示機能だけを提供可能なViewerプログラムをダウンロードし、アプリケーションデータを表示させる機能等が実現されている。」

してみると、引用例1発明において、Webサーバがレシートデータに関連する1又は複数のアプリケーションをも格納し、当該レシートデータと共に提供する構成とすることは、上記周知技術を用いて当業者が容易に想到し得たことである。また、その際に、当該アプリケーションも特定のネットワーク・アドレスにおいて格納するようにすることも当業者が当然に考慮することである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-07 
結審通知日 2009-09-10 
審決日 2009-09-25 
出願番号 特願2002-30398(P2002-30398)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 長島 孝志
池田 聡史
発明の名称 購入取引に関するディジタル領収書及び関連アプリケーションの提供システム  
代理人 西山 善章  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ