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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 F02D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02D
管理番号 1212100
審判番号 不服2007-23143  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-23 
確定日 2010-02-15 
事件の表示 平成 9年特許願第 88003号「内燃機関の制御方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 2月 3日出願公開、特開平10- 30469〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本件出願は、平成9年4月7日(パリ条約による優先権主張1996年5月8日、ドイツ国)の出願であって、平成18年11月8日付けの拒絶理由通知に対して、平成19年2月8日付けで意見書とともに手続補正書が提出されたが、平成19年5月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年8月23日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに平成19年9月25日付けの手続補正書によって特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、その後、平成21年3月24日付けの当審の書面による審尋に対し平成21年6月3日付けで回答書が提出されたものである。


[2]平成19年9月25日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成19年9月25日付けの手続補正を却下する。

〔理由〕
1.本件補正の内容
平成19年9月25日付けの手続補正書による手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成19年2月8日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の下記の(a)に示す請求項1ないし11の記載を、下記の(b)に示す特許請求の範囲の請求項1ないし9と補正するものである。

(a)本件補正前の請求項
「【請求項1】 内燃機関の回転モーメント又は出力に対する目標値が少なくともドライバの希望に基づいて設定され、前記ドライバの希望が空気供給量を調節する設定装置に対する目標設定値に変換される、内燃機関の制御方法において、
前記変換の際に、補正係数が考慮され、前記補正係数は、
前記設定装置により影響されない追加の質量流量の影響に対する補正係数、又は吸気管内の圧力関係を表す補正係数、あるいはこれら双方であることを特徴とする内燃機関の制御方法。
【請求項2】 シリンダに流入する空気質量流量に対する目標質量流量値が回転モーメント目標値ないし出力目標値から導かれることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】 回転モーメント目標値ないし出力目標値からシリンダ充填量に対する目標値が形成され、このシリンダ充填量に対する目標値から、シリンダに流入する空気質量流量に対する空気質量流量目標値が導かれることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】 空気質量流量制御器又は充填量制御器が設けられ、前記空気質量流量制御器又は充填量制御器が、目標質量流量又は目標充填値から、対応する実際値に基づいて補正値を形成し、前記補正値が前記目標値に演算され、これにより吸気管入口における目標質量流量が形成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】 前記設定装置における目標空気質量流量を形成するために、吸気管入口における目標空気質量流量が、漏れ空気質量流量又はタンク通気弁の空気質量流量あるいはこれら双方のような追加の空気質量流量により補正されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】 前記設定装置における目標空気質量流量が、絞り弁の前後の圧力比、絞り弁手前の圧力及び絞り弁手前の空気温度のうちの1つあるいはこれらのいずれかの組合せを考慮して目標容積流量に変換されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】 目標容積流量から、所定の特性曲線により、前記設定装置に対する目標角度が導かれることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】 絞り弁の後における吸気管内の圧力が、シリンダへの空気質量流量に対する目標値から、前記シリンダに戻される排気ガス質量流量を考慮して形成されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】 前記設定装置が内燃機関への空気供給量を調節する絞り弁であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】 エンジン回転速度の関数として前記内燃機関の絞り弁が絞られていない運転即ち全負荷運転に対する絞り弁角度が設定され、前記内燃機関の制御のために、目標絞り弁角度が絞られていない運転に対する絞り弁角度より大きいときに、絞られていない運転の存在に関する情報が導かれることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一項に記載方法。
【請求項11】 内燃機関の回転モーメント又は出力に対する目標値を少なくともドライバの希望に基づいて形成し、前記ドライバの希望を空気供給量を調節する設定装置の調節により実現させる制御ユニットであって、内燃機関の回転モーメント又は出力に対する前記目標値を、前記設定装置に対する目標設定値に変換する手段を有する制御ユニットを備える、内燃機関の制御装置において、
前記変換手段は、補正係数を考慮し、前記補正係数は、
前記設定装置により影響されない追加の質量流量の影響に対する補正係数、又は吸気管内の圧力関係を表す補正係数、あるいはこれら双方であることを特徴とする内燃機関の制御装置。」

(b)本件補正後の請求項(下線は、補正箇所を明示するためのもの)
「【請求項1】 内燃機関の回転モーメント又は出力に対する目標値が少なくともドライバの希望に基づいて設定され、前記ドライバの希望が空気供給量を調節する設定装置に対する目標設定値に変換される、内燃機関の制御方法において、
前記設定装置における目標空気質量流量を形成するために、吸気管入口における目標空気質量流量が、漏れ空気質量流量又はタンク通気弁の空気質量流量により補正され、又は前記設定装置における目標空気質量流量が、絞り弁の前後の圧力比、絞り弁手前の圧力を考慮して目標容積流量に変換されることを特徴とする内燃機関の制御方法。
【請求項2】 シリンダに流入する空気質量流量に対する目標質量流量値が回転モーメント目標値ないし出力目標値から導かれることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】 回転モーメント目標値ないし出力目標値からシリンダ充填量に対する目標値が形成され、このシリンダ充填量に対する目標値から、シリンダに流入する空気質量流量に対する空気質量流量目標値が導かれることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】 空気質量流量制御器又は充填量制御器が設けられ、前記空気質量流量制御器又は充填量制御器が、目標質量流量又は目標充填値から、対応する実際値に基づいて補正値を形成し、前記補正値が前記目標値に演算され、これにより吸気管入口における目標質量流量が形成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】 目標容積流量から、所定の特性曲線により、前記設定装置に対する目標角度が導かれることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】 絞り弁の後における吸気管内の圧力が、シリンダへの空気質量流量に対する目標値から、前記シリンダに戻される排気ガス質量流量を考慮して形成されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】 前記設定装置が内燃機関への空気供給量を調節する絞り弁であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】 エンジン回転速度の関数として前記内燃機関の絞り弁が絞られていない運転即ち全負荷運転に対する絞り弁角度が設定され、前記内燃機関の制御のために、目標絞り弁角度が絞られていない運転に対する絞り弁角度より大きいときに、絞られていない運転の存在に関する情報が導かれることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載方法。
【請求項9】 内燃機関の回転モーメント又は出力に対する目標値を少なくともドライバの希望に基づいて形成し、前記ドライバの希望を空気供給量を調節する設定装置の調節により実現させる制御ユニットであって、内燃機関の回転モーメント又は出力に対する前記目標値を、前記設定装置に対する目標設定値に変換する手段を有する制御ユニットを備える、内燃機関の制御装置において、
前記設定装置における目標空気質量流量を形成するために、吸気管入口における目標空気質量流量が、漏れ空気質量流量又はタンク通気弁の空気質量流量により補正され、又は前記設定装置における目標空気質量流量が、絞り弁の前後の圧力比、絞り弁手前の圧力を考慮して目標容積流量に変換されることを特徴とする内燃機関の制御装置。」

2.本件補正の適否
(1)本件補正は、本件補正前の請求項5及び請求項6を削除して、本件補正前の請求項7ないし11をそれぞれ本件補正後の請求項5ないし9とするとともに、本件補正後の請求項1に関しては、対応する本件補正前の請求項1における「前記変換の際に、補正係数が考慮され、前記補正係数は、前記設定装置により影響されない追加の質量流量の影響に対する補正係数、又は吸気管内の圧力関係を表す補正係数、あるいはこれら双方である」の記載を、「前記設定装置における目標空気質量流量を形成するために、吸気管入口における目標空気質量流量が、漏れ空気質量流量又はタンク通気弁の空気質量流量により補正され、又は前記設定装置における目標空気質量流量が、絞り弁の前後の圧力比、絞り弁手前の圧力を考慮して目標容積流量に変換される」と補正するものであり、また、本件補正後の請求項9に関しては、対応する本件補正前の請求項11における「前記変換手段は、補正係数を考慮し、前記補正係数は、前記設定装置により影響されない追加の質量流量の影響に対する補正係数、又は吸気管内の圧力関係を表す補正係数、あるいはこれら双方である」の記載を、「前記設定装置における目標空気質量流量を形成するために、吸気管入口における目標空気質量流量が、漏れ空気質量流量又はタンク通気弁の空気質量流量により補正され、又は前記設定装置における目標空気質量流量が、絞り弁の前後の圧力比、絞り弁手前の圧力を考慮して目標容積流量に変換される」と補正するものである。
そこで、先ず、本件補正後の請求項1についてみるに、本件補正後の請求項1においては、本件補正前の請求項1における「(設定装置に対する目標設定値に変換される際に考慮される)補正係数」に関する記載が削除されており、本件補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項の一部を削除するものとなっている。してみると、本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の請求項1に係る発明との関係において、発明の範囲を拡張又は変更し、その技術内容を異にするものであって、本件補正前の請求項1に係る発明とは別異の発明を構成するものとなっている。
さらに、本件補正後の請求項9についてみるに、本件補正後の請求項9においても、対応する本件補正前の請求項11における「(設定装置に対する目標設定値に変換する変換手段が考慮するとされる)補正係数」に関する記載が削除されており、本件補正前の請求項11に係る発明の発明特定事項の一部を削除するものとなっている。してみると、本件補正後の請求項9に係る発明は、本件補正前の請求項11に係る発明との関係において、発明の範囲を拡張又は変更し、その技術内容を異にするものであって、本件補正前の請求項11に係る発明とは別異の発明を構成するものとなっている。
したがって、請求項1及び請求項9に関する本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものとは認められず、さらに、請求項の削除、誤記の訂正あるいは明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもないから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項にも該当するものではない。

(なお、本件補正後の請求項1に関して、本件補正前の請求項5あるいは本件補正前の請求項6を対応する請求項として、本件補正前の請求項5(特に、本件補正前の請求項1を引用する請求項5)あるいは本件補正前の請求項6(特に、本件補正前の請求項1を引用する請求項6、または、本件補正前の請求項5を引用する請求項6)に記載された発明特定事項に新たな構成を付加して本件補正後の請求項1とするものと解することができるが、そのように解したとしても、本件補正前の請求項5及び本件補正前の請求項6は、ともに、本件補正前の請求項1を直接的にあるいは間接的に引用するものであり、本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1の発明特定事項である「(設定装置に対する目標設定値に変換される際に考慮される)補正係数」に関する記載が削除されており、(本件補正前の請求項1を直接的にあるいは間接的に引用する)本件補正前の請求項5や本件補正前の請求項6に記載された発明の発明特定事項の一部を削除するものとなっている。よって、本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の請求項5及び本件補正前の請求項6に係る発明との関係において、発明の範囲を変更し、その技術内容を異にするものであって、本件補正前の請求項5及び本件補正前の請求項6に係る発明とは別異の発明を構成するものとなっている。
したがって、本件補正後の請求項1が、本件補正前の請求項5あるいは本件補正前の請求項6に対応するものであると解したとしても、請求項1に関する本件補正は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的としたものとは認められず、さらに、請求項の削除、誤記の訂正あるいは明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもなく、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項にも該当するものではない。)

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、請求項1及び請求項9に関して、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、本件補正は、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。


[3]本願発明について
1.手続の経緯及び本願発明
平成19年9月25日付けの手続補正は前述したとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし11に係る発明は、平成19年2月8日付けの手続補正書により補正された明細書及び願書に最初に添付された図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、前記[2]の〔理由〕1.の(a)に記載したとおりのものである。

2.原査定の拒絶理由に引用された特開平7-158491号公報(以下、単に「引用文献」という。)
引用文献には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 内燃機関の制御方法において、内燃機関の空気供給のための出力調整部材が電気的手法で所定の調整操作値に従い制御されるようにし、更に、上記出力調整操作部材の調整操作状態及び内燃機関の負荷を表す量が求められ、更に、監視目的のために上記出力調整操作部材の調整操作値及び負荷を表す量が相互に比較され、上記出力調整操作部材の最大調整操作値が限定されるようにし、当該の限定に際して高い負荷の領域が達せられないようにしたことを特徴とする内燃機関の制御方法。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)
(イ)「【請求項6】 上記出力調整操作部材に対する調整操作値は当該海抜ないし吸込空気温度に関して補正され、少なくとも機関回転数を考慮して負荷を表す量(負荷表示量)に変換されるようにした請求項1又は5までのうちいずれか1項記載の方法。」(【特許請求の範囲】の【請求項6】)
(ウ)「【請求項10】 上記の出力調整操作部材に対する求められた調整操作値は運転者により操作される操作部材の位置に基づいて形成された当該出力調整操作部材に対する調整操作-目標値及び/又は当該-出力調整操作部材の位置を表す値であるようにした請求項1又は9までのうちいずれか1項記載の方法。」(【特許請求の範囲】の【請求項10】)
(エ)「【0015】 ‥‥ 制御ユニット10は ‥‥‥ 第3の入力線路20を介しては運転者により操作可能な操作部材の位置を求めるための測定装置22に接続され、第4の入力線路24を介しては出力調整操作部材28、殊に絞り弁の位置を求めるための測定装置26に接続されている。 ‥‥‥ 」(段落【0015】)
(オ)「【0016】更に有利な実施例では入力線路38が設けられており、この入力線路によっては制御装置10は吸込空気温度を求めるための測定装置40に接続される。他の実施例においては付加的に又は吸込空気温度測定装置の代わりに空気圧(海抜)を求めるための測定装置42が設けられ得、測定装置42は入力線路44を介して制御装置10と接続されている。 ‥‥‥ 目標値形成ユニット60は出力調整操作部材28に対する調整操作目標値の形成のための制御ユニット10の部分である。上記ユニット60には入力線路20が導かれ、一方、それの出力線路62は制限素子64に達しており、それの出力線路66は同じく制御器ユニット68に導かれる。それの出力線路50は出力調整操作部材28に達してる。更に制御器68には線路24が導かれている。線路56からは線路70が制限ユニット64、さらには補正素子72に達し該素子72(審決注:「該素子72には」の誤記)補正値形成ユニット76からの線路74が導かれる。上記ユニット76には実施例中同じく入力線路44が導かれている。素子72の出力線路78はさらなる補正素子80に達し、この素子80には補正値形成ユニット84からの線路82が導かれている。ユニット84には入力線路38が導かれている。補正素子80の接力線路86(審決注:「出力線路86」又は「線路86」の誤記)は換算ユニット88に達しており、このユニット88には線路16が導かれている。一方、ユニット88の出力線路90は比較素子92に達し、この素子92には入力線路24が導かれている。素子92の出力線路94は限界値64に達しており、有利な実施例では噴射パルス形成ユニット58に達する。更に、有利な実施例では入力線路16は制限ユニット64及び/又は設定値形成ユニット60に導かれている。目標値形成ユニット60には更なる作動量、例えば投入変速段、走行速度等についての情報が供給され得る。」(段落【0016】)
(カ)「【0017】 ‥‥ 制御装置10は出力調整操作部材28、絞り弁の電気的調整操作のための手段を備えている(従来技術の基礎事項として明らかなように)。目標値形成ユニット60においては所定の特性カーブ(これは要求に応じて又回転数-走行速度-及び/または変速段に依存し得る)に従って運転者により操作可能な操作部材の位置に対する測定値から絞り弁調整操作度に対する目標値が求められ、線路62を介して送出される。その際目標値形成ユニット60における特性カーブは種々の変速段に対する回転数に関する内燃機関のトルク特性に相応して与えられていて、その結果最適の走行快適性、それの燃料等が生ぜしめられる。絞り弁目標値は制限ユニット64、線路66を介して制御器ユニット68に送出され、ここにおいて、目標値は測定装置26により求められた絞り弁実際値Dkistと比較され、所定の制御法例えばPID制御法に従って絞り弁の電気的サーボモータに対する制御信号へ変換され、上記制御信号は線路50を介して出力調整操作部材28に供給される。」(段落【0017】)
(キ)「【0023】前述の手法においては負荷信号は絞り弁(位置)実際値信号に対する基準(参照)値に変換され、誤り識別のため当該の絞り弁(位置)実際値信号と比較される。他の有利な実施例では絞り弁(位置)実際値信号の代わりに絞り弁調整目標値信号も、監視のために用いられ得、ここにおいて、換算(変換)された負荷信号が絞り弁調整目標値信号と比較される。それにより誤り状態が測定装置22の領域においても識別され得る。
【0024】有利な実施例に対して示された絞り弁基準(位置)信号への負荷信号の変換のほかに(と併合して)、他の有利な実施例では本発明の手法の適用下で、絞り弁基準(位置)信号は負荷信号に換算され得る。このために空気量測定装置の使用下で、求められた絞り弁(位置)実際値信号ないし絞り弁調整目標値信号が海抜の高さ及び空気温度の逆方向補正により特性領域部に供給され、この特性領域部においては負荷信号及び機関回転数に基づきユニット54に相似的に負荷信号が生成され、この負荷信号は線路56上の被測定信号に対する基準(参照)値とに用いられ、許容されない偏差の存否について当該の被測定信号と比較される。」(段落【0023】及び【0024】)
(ク)上記(エ)及び(オ)並びに図1を総合してみると、引用文献に記載されたものにおいて、まず、「運転者により操作可能な操作部材の位置を求めるための測定装置22」の出力は「目標値形成ユニット60」を介して「制限素子64」に入力され、一方、「負荷信号形成のために回路(ユニット)54」の出力は「補正素子72」に入力され、また、「空気圧(海抜)を求めるための測定装置42」の出力は「補正値形成ユニット76」を介して「補正素子72」に入力され、さらに、「補正素子72」の出力は「補正素子80」に入力され、「吸込空気温度を求めるための測定装置40」の出力は「補正値形成ユニット84」を介して「補正素子80」に入力され、「補正素子80」の出力は「換算ユニット88」及び「比較素子92」を介して「制御素子64」に入力され、「制限素子64」の出力は「制御器ユニット68」を介して「出力調整操作部材28」すなわち絞り弁に入力されていることがわかる。
次に、上記(カ)及び図1を総合してみると、「空気供給量を調節する出力調整操作部材28、すなわち絞り弁に対する出力調整目標値、すなわち絞り弁調整目標値」は、実質的に「制御器ユニット68」において変換されていることがわかる。
(ケ)したがって、上記の各記載事項(ア)ないし(ク)及び図面の記載を総合すると、引用文献には、次のような発明(以下、単に「引用発明」ともいう。)が記載されているものと認められる。
「内燃機関の出力に対する目標値が少なくとも運転者の操作により設定され、前記運転者の操作が空気供給量を調節する出力調整操作部材28、すなわち絞り弁に対する出力調整目標値、すなわち絞り弁調整目標値に制御器ユニット68において変換される内燃機関の制御方法において、前記変換の際に、補正が考慮され、前記補正は、
前記空気供給量を調節する出力調整操作部材28、すなわち絞り弁により影響されない吸込空気温度又は空気圧(海抜)を考慮するものである内燃機関の制御方法。」

3.当審の判断
(1)本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比するに、引用発明における「内燃機関の出力」、「運転者」、「(空気供給量を調節する)出力調整操作部材28、すなわち絞り弁」及び「出力調整目標値、すなわち絞り弁調整目標値」は、それらの形状、構造及び機能からみて、それぞれ本願発明における「内燃機関の回転モーメント又は出力」、「ドライバ」、「(空気供給量を調節する)設定装置」及び「目標設定値」に相当する。
また、引用発明における「運転者の操作」及び「(内燃機関の出力に対する目標値が)運転者の操作により設定され」は、それらの意図する技術内容からみて、本願発明における「ドライバの希望」及び「(内燃機関の回転モーメント又は出力に対する目標値が)ドライバの希望に基づいて設定され」と同趣旨の内容を意味するものと認められる。
そして、引用発明における「(出力調整操作部材28、すなわち絞り弁に対する目標設定値への)変換の際に、補正が考慮され、前記補正は、前記空気供給量を調節する出力調整操作部材28、すなわち絞り弁により影響されない吸込空気温度又は空気圧(海抜)を考慮する」と本願発明おける「(設定装置に対する目標設定値への)変換の際に、補正係数が考慮され、前記補正係数は、前記設定装置により影響されない追加の質量流量の影響に対する補正係数、又は吸気管内の圧力関係を表す補正係数、あるいはこれら双方である」とは、「前記変換の際に、補正が考慮され、前記補正は、前記設定装置により影響されない情報を考慮する」という限りにおいて一致する。
よって、本願発明と引用発明は、
「内燃機関の出力に対する目標値が少なくともドライバの希望に基づいて設定され、前記ドライバの希望が空気供給量を調節する設定装置に対する目標設定値に変換される内燃機関の制御方法において、前記変換の際に、補正が考慮され、前記補正は、
前記設定装置により影響されない情報を考慮するものである内燃機関の制御方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点〉本願発明においては、「(設定装置に対する目標設定値への)変換の際に、補正係数が考慮され、該補正係数は、設定装置により影響されない追加の質量流量の影響に対する補正係数、又は吸気管内の圧力関係を表す補正係数、あるいはこれら双方である」のに対し、引用発明においては、「(出力調整操作部材28、すなわち絞り弁に対する目標設定値への)変換の際に、補正が考慮され、前記補正は、前記空気供給量を調節する出力調整操作部材28、すなわち絞り弁により影響されない吸込空気温度又は空気圧(海抜)を考慮するもの」であり、その変換に際しての補正係数についてのものであるか否か明らかではない点(以下、単に「相違点」という。)。

(2)相違点についての検討
絞り弁の前後の圧力比や絞り弁手前の圧力、吸気管内の圧力関係等を考慮して絞り弁開度を補正することは、本願出願前に周知の技術事項である(必要ならば、例えば、(a)特開平2-188643号公報(特に、「吸入空気量は絞弁の開度とその前後の圧力差、つまり吸入負圧に依存する ‥‥ 」(第2頁上左欄2及び3行)、「本発明は、アクセルペダルの操作量や回転数に応じて絞弁開度を決め、これを吸入負圧に基づいて補正することにより ‥‥‥‥‥ 」(第2頁上右欄1ないし3行)、「 ‥‥ 本発明は、第1図にも示すように、アクセル操作量の検出手段50と ‥‥‥ 吸入負圧の検出手段52と ‥‥‥‥ 検出されたアクセル操作量とエンジン回転数に基づいて吸入空気量を演算する手段54と、吸入空気量とエンジン回転数に対応して目標基本絞弁開度を演算する手段55と、吸入空気量とエンジン回転数に対応して目標吸入負圧を演算する手段56と、吸入空気量とエンジン回転数とから求めた目標基本絞弁開度に絞弁を駆動する手段57と、このときの吸入負圧が目標吸入負圧と一致するように前記絞弁開度を補正する手段58とを備える。」(第2頁上右欄6ないし19行)及び「このようにして、吸入負圧が目標値と一致するように絞弁7の開度を補正するのであり、これにより絞弁開度とその前後の圧力差である吸入負圧とに対応したものとなる吸入空気量を、精度よく制御することができるのである。」(第3頁下左欄6ないし10行)等の記載参照)、(b)特公昭63-24138号公報(特に、「 ‥‥ 例えば最初に選定される空気量をオペレータによりほぼステツプ状に変化させると燃料の密度が空気より大きいのでステツプ応答に遅れが生じ、また加速状態のときには、スロットルバルブ前後圧がステツプ変化の時間まで大きな値となつてバルブのステツプ変化の初期では多量の空気が流入する。このような場合に燃焼室中の混合気を可燃範囲に維持するためには補正を行わなければならない。そこで本発明者等は先に、アクセルペダル踏込量を検出する燃料コマンドポテンシヨメータ、インテークボア内のエアフローセンシングデバイス、スロットルバルブアクチュエータに結合されたポテンシヨメータ等の制御要素からの出力と、エンジン冷却水温度、大気温度、燃料供給ライン圧力等の補正エレメントからの電気信号とをコントロールユニットに入力させ、上記制御要素および補正エレメントのパラメータ間の関数関係から予めプログラムされているメモリーと比較され、燃料のフローインプットから算出された必要空気量に基づきスロツトルバルブを作動して空気量の最適値を決めるようにした燃料優先式空気供給量制御(EAC)による燃料供給システムについて発明した。」(第2頁第3欄9ないし32行)及び「オペレータの動かすアクセルペダル5の動きは、リンケージ6を介して燃料コマンドポテンシヨメータ7で検出され、踏込量による出力電圧がコントロールユニツト10に出力されるようになつている。
エアクリーナ8より下流のボア内に吸入空気温度センサ11を設け、スロツトルバルブ2の上流および下流側にエアフローセンシングデバイスを構成する圧力センサ12,13を設ける。補正エレメントとして上記吸入温度センサ11のほかに、燃料供給圧センサ14、エンジン冷却水温度センサ15、エンジン回転数センサ16等が配置されている。なお、コントロールユニツト10は燃料コマンドポテンシヨメータ7、エアフローセンサ12,13、スロツトルバルブアクチユエータ9に結合されたポテンシヨメータ又はエンコーダ等からの出力と各種補正エレメントからの電気信号が入力され、予めプログラムされているメモリーと比較演算され、燃料のフローインプツトから算出された必要空気量に基づき、DCモータ、ステツピングモータのごときアクチユエータ9を駆動しスロツトルバルブ2を操作して空気量の最適値をきめるものである。」(第2頁第4欄39行ないし第3頁第5欄17行)等の記載参照)、並びに(c)特公平2-48730号公報(特に、「 ‥‥ 例えば最初に選定される空気量をオペレータによりほぼステツプ状に変化させると燃料の密度が空気より大きいのでステツプ応答に遅れが生じ、また加速状態のときには、スロツトルバルブ前後の差圧が急激に大きな値となつて、瞬間的に多量の空気が流入する。このような場合に燃焼室中の混合気を可燃範囲に維持するためには補正を行わなければならない。そこで本発明者等は先に、アクセルペダル踏込量を検出する燃料コマンドポテンシヨメータ、インテークボア内のエアフローセンシングデバイス、スロツトルバルブアクチユエータに結合されたポテンシヨメータ等の制御要素からの出力と、エンジン冷却水温度、シリンダヘツド温度、大気圧、燃料供給ライン圧力等を検出する補正エレメントからの電気信号とをコントロールユニツトに入力させ、上記制御要素および補正エレメントのパラメータ間の関数関係から予めプログラムされているメモリーと比較され、燃料のフローインプツトから算出された必要空気量に基づきスロツトルバルブを作動して空気量の最適値を決めるようにした燃料優先式空気供給量制御(EAC)による燃料供給システムについて発明した。」(第2頁第3欄16ないし38行)及び「オペレータの動かすアクセルペダル6の動きはリンケージ7を介して燃料コマンドポテンシヨメータ8に入力され、踏込量による出力電圧が主コントロールユニツト10および補助コントロールユニツト11に出力されるようになつている。また、リンケージ7よりロツド19を導出してスロツトルバルブ3のシヤフトに連結し、該ロツド19の途中には補助コントロールユニツト11からの信号により接続してアクセルペダル6の踏込量を直接スロツトルバルブ3の回動操作とするクラツチ20を設けている。
エアクリーナ9より下流のボア内に吸入空気温度センサ12を設け、スロツトルバルブ2の上流および下流側にエアフローセンシングデバイスを構成する圧力センサ13,14を設ける。図示例以外に電気出力、周波数等の変化を利用して検出するものであつてもよい。補助エレレメントとして上記吸入空気温度センサ12のほかに、燃料供給圧センサ15、エンジン冷却水温度センサ16、エンジン回転数センサ17等が配置されている。なお主コントロールユニツト10は燃料コマンドポテンシヨメータ8、エアフローセンサ13,14、スロツトルバルブアクチユエータに結合されたポテンシヨメータ又はエンコーダ等からの出力と各種補正エレメントからの電気信号が入力され、予め、プログラムされているメモリーと比較演算され、燃料のフローインプツトから算出された必要空気量に基づきDCサーボモータ、ステツピングモータのごときアクチユエータ18を駆動しスロツトルバルブ2を操作して空気量の最適値をきめるものである。」(第3頁第5欄39行ないし同頁第6欄25行)等の記載参照)等参照のこと)。
してみれば、引用文献に記載された出力調整操作部材28、すなわち絞り弁の目標設定値(絞り弁開度)の設定に際し、前述した周知の技術事項に鑑み、絞り弁の前後の圧力比や絞り弁手前の圧力等を考慮して目標設定値を補正するように構成することは、当業者が、格別な創意工夫を要することなく容易に想到しうる程度のものであり、上記補正に際して、前記相違点に係る本願発明のように、(設定装置に対する目標設定値への)変換の際に吸気管内の圧力関係を表す補正係数を考慮するような構成とすることは、当業者が格別困難なく容易に想到し設定しうる程度のものと認められる。

(3)以上のように、本願発明は、引用発明及び前述した周知の技術事項に基いて、当業者が格別な困難性を伴うことなく容易に想到することができたものと認められ、しかも、本願発明は、全体構成でみても、引用発明及び前述した周知の技術事項から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び前述した周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-18 
結審通知日 2009-09-24 
審決日 2009-10-06 
出願番号 特願平9-88003
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F02D)
P 1 8・ 572- Z (F02D)
P 1 8・ 121- Z (F02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 芳枝小原 一郎  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 森藤 淳志
加藤 友也
発明の名称 内燃機関の制御方法及び装置  
代理人 社本 一夫  
代理人 富田 博行  
代理人 小林 泰  
代理人 増井 忠弐  
代理人 千葉 昭男  
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