• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1212139
審判番号 不服2007-26915  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-02 
確定日 2010-02-19 
事件の表示 平成 8年特許願第359132号「画像処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 7月31日出願公開、特開平10-198338〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成8年12月28日の出願であって、平成19年8月31日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年10月2日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
そして、本願の発明は、平成19年4月13日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、下記のとおりものと認める。(以下「本願発明」という。)

「 1フレーム分の原画像データを格納した場合のフレームメモリのメモリライン数より少ない2^(n)(n=1,2,3,・・・)のメモリライン数を有するワークメモリを用いて原画像データの画像処理を行う画像処理装置であって、
原画像データを2次元平面として扱って画像処理する際に用いる前記ワークメモリ上における各画素の座標を連続する座標値で表すとともに、前記原画像データをフレームメモリに格納した場合の座標値の下位nビットを用いて前記ワークメモリ上のアドレス計算を行いつつ、2^(n)のメモリライン数の1/2ライン数ずつの2つのエリアに分けられた前記ワークメモリの前記各エリアに対して、交互に2^(n)のメモリライン数の1/2ライン数ずつ前記原画像データを順次展開して画像処理を行うCPUを備え、
前記CPUは、前記画像処理として前記原画像データのサイズ変換のための補間計算を、予め定めた条件式により補間計算が可能か否かを判断しながら行うものであって、
前記フレームメモリ上の原画像データの任意のドットを表すために設定する座標軸による系を実座標と呼び、補間によって求めるべき所望ドットの位置を座標系上の1点として表すための座標系を仮想座標と呼び、前記仮想座標は、前記実座標での座標値のr倍の値に設定し、前記ワークメモリにそのメモリライン数の1/2ライン数分ずつ前記原画像データを展開して処理する回数を0から数えてi回目とした場合において、
前記仮想座標上における前記所望ドットの位置を示す座標値である仮想座標値Yが前記条件式としての第1式である「Y<(2^(n-1)×(i+1)-1)×r」を満たすか、又は前記実座標上における前記所望ドットの左上の原画像データのドットの位置を示す座標値である実座標値yが前記条件式としての第2式である「y<(i×2^(n-1)+2^(n-1)-1)」を満たすときに補間計算が可能であると判断して補間計算を行う一方、前記所望ドットの前記仮想座標値Yが前記第1式を満たさないか、又は前記所望ドットの前記実座標値yが前記第2式を満たさないときに補間計算が不可能であると判断して更に次の原画像データを前記ワークメモリにそのメモリライン数の1/2ライン数分だけ展開して前記第1式又は前記第2式により補間計算が可能か否かの判断を行うことを特徴とする画像処理装置。」

2.引用された刊行物記載の発明
(刊行物1について)
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-27903号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は、当審にて付与した。)

(1-a)「【請求項1】 外部装置からの印刷データに基づいて記録媒体への記録を実行する印刷装置において、
外部装置からイメージ描画命令を受信する受信手段と、
前記受信したイメージ描画命令のパラメータを識別し、イメージデータのデータ形式及び倍率を検知する検知手段と、
前記検知手段で検知されたデータ形式及び倍率に応じて、拡大後の画素に対する入力イメージデータの最近傍、左右近傍、上下近傍からの遠傍比濃度、及び最近傍からの近傍比濃度を使用して拡大後の画素の濃度を計算する計算手段と、を具備することを特徴とする印刷装置。」

(1-b)「【0002】
【従来の技術】画像データには文字データや図形データなどの様々なデータがあるが、これらのうち、画像の色情報や濃淡をビットに対応させたデータはイメージデータまたは単にイメージと呼ばれている。また、イメージを形成している画素の単位、即ち最小単位をピクセルといい、カラーや濃淡のあるイメージのように1ピクセルを2ビット以上で表現するイメージを多値イメージ、逆に白黒イメージのように1ピクセルを1ビットで表現するイメージを二値イメージと呼ぶ。通常、これらのイメージデータはホストコンピュータで作られた解像度で印刷装置に送られるが、一般的にホストコンピュータ側で処理される解像度よりも印刷装置の解像度の方が高い(すなわちドットが細かい)ため、転送されたイメージデータを印刷装置内で拡大している。」

(1-c)「【0012】図2は、本実施例の印刷装置の構成を示すブロック図である。図2において2000は印刷装置1000に接続されたホストコンピュータであり、プリントデータ及び制御コードから成る印刷情報を印刷装置1000に出力するものである。印刷装置1000は、大きく分けてフォーマッタ制御部1100、インターフェース1200、出力制御部1300、プリンタエンジン部1400より構成されている。」

(1-d)「【0015】図3は印刷装置1000の動作の開始から終了までのメイン処理を示している。まずステップS301でホストコンピュータ2000から送られてくる印刷データの受け取りを行い、受信バッファ1101にストックする次にステップS302で受信バッファにストックされた印刷データを読み出し、ステップS303でコマンド判別部1102において印刷制御コマンドがイメージ描画命令か否かを判別する。イメージ描画命令であれば、更にステップS304でスムージング指定がされているか否かを判定する。スムージングの指定方法は、イメージ描画コマンドのパラメータとして与えられても良いし、別コマンドや操作パネルからの指定で予め指定されていても良い。スムージング指定がされていれば、ステップS305のスムージング処理に進み、ドットの補間処理を行った後、ステップS306で描画処理を行う。一方、ステップS303でイメージ描画命令以外の印刷制御コマンドであった場合、またはステップS304でスムージング指定がされていない場合には、直接ステップS306に進み、描画処理を行った後、ステップS307で印刷終了命令を受けとったか否か、または印刷データが終了したか否かを判断し、印刷終了であれば印刷動作を終了する。印刷終了でなければステップS301からの処理を繰り返す。」

(1-e)「【0017】図5は図3のスムージング処理の詳細を示したフローチャートを示している。この処理はドットを補間しながら拡大処理を行う処理である。まずステップS501において、イメージ描画コマンドのパラメータから、データ形式・拡大率(x方向の拡大率をZx、y方向の拡大率をZyとする)を検知する。ここでいうデータ形式とは、1ピクセルを構成するビット数、色形式などの情報である。次に検知したデータ形式・拡大率からスムージング可能か否かを判断する(ステップS502)。本実施例では、1ピクセル1ビットの白黒データで、かつ拡大の場合のみスムージング可能とする。スムージング可能であればステップS503に進み、バイナリデータをメモリに読み込む。そしてステップS504では、拡大後のイメージのドット配列を座標に見立て、任意のドットを(xs,ys)=(0,0)、つまり拡大後のイメージの左上角を初期値として設定する。その後、ステップS505に進み、(xs,ys)にあたる拡大後のドットの濃度を計算する。この処理をxsを1づつ加算しながらxs≧拡大後の幅ドットとなるまで繰り返す(ステップS506、ステップS507)と、1ライン分の拡大されたスムージングイメージが作成される。ステップS505の濃度計算処理をysに1づつ加算しながらys=≧拡大後の高さドットになるまで、すなわち高さ分だけ繰り返す(ステップS508、ステップS509)と全てのドットに対してスムージングイメージが作成される。ただし、幅ドット分xsを進めたら、次のラインの頭から処理を行うためxs=0に戻す必要がある(ステップS508)。こうして、拡大後の全てのドットに対して濃度計算処理を行った後、処理を終了する。一方、ステップS502でスムージング不可能であると判断された場合、すなわちデータ形式がスムージング処理に適さない場合には全てのステップをスキップして終了する。
【0018】図6は図5の濃度計算処理の詳細を示したフローチャートを示している。この処理は拡大後の任意のドットに対して濃度を算出する処理であり、ここでは白黒二値(1bit/pixel)の場合を例にして説明する。まずステップS601で逆1次変換によって、拡大後の座標(xs,ys)が拡大前のどの座標(x,y)に当たるかを算出するために、xs,ysをそれぞれ倍率Zx,Zyで除する。次にステップS601で求めた(x,y)について、(x,y)の周囲12点から3種類の濃度を算出する。ここで、濃度算出方法を図7を用いて説明する。図7は図6の濃度計算処理のアルコリズムを図に表したものである。図7において、7aは最近傍からの遠傍比濃度(図6のステップS602におけるd1)、7bは左右近傍からの遠傍比濃度(図6のステップS602におけるd2)、7cは上下近傍からの遠傍比濃度(図6のステップS602におけるd3)を求める理論図である。各図において、1つの格子が1ドットにあたり、中心付近の「x」は、ステップS601によって求められた座標(小数値)であり、「●」は濃度を参照するドットの座標である。7a、7b、7cともに遠傍比濃度を使用しているが、ここで遠傍比濃度とは、7aのx,yそれぞれの座標軸において4つの●からの距離ではなく、図の碁盤目の右端と左端、または上端と下端からの距離(最近傍4画素を囲む矩形からの距離)と●の濃度より求めた濃度である。図のように(x,y)ドット中における「x」の位置のx,y座標軸での比率をそれぞれp:(1-p)、q(1-q)とすると、各遠傍比濃度d1,d2,d3は以下のようになる。」

(1-f)図2として、





(1-g)図7として、





上記摘記事項において、「拡大後の画素に対する入力イメージデータの最近傍、左右近傍、上下近傍からの遠傍比濃度、及び最近傍からの近傍比濃度を使用して拡大後の画素の濃度を計算」する「スムージング処理」とは、すなわち、サイズ拡大のための「ドットの補間処理」であるから、「拡大後の画素に対する入力イメージデータの最近傍、左右近傍、上下近傍からの遠傍比濃度、及び最近傍からの近傍比濃度を使用して拡大後の画素の濃度を計算する計算手段」は、「補間処理を行う計算手段」であるといえる。

したがって、上記の事項を総合すると、刊行物には、以下の発明が開示されていると認められる。(以下、「刊行物1発明」という。)

「外部装置からの印刷データに基づいて記録媒体への記録を実行する印刷装置において、
外部装置からイメージ描画命令を受信する受信手段と、
前記受信したイメージ描画命令のパラメータを識別し、イメージデータのデータ形式及び倍率を検知する検知手段と、
前記検知手段で検知されたデータ形式及び倍率に応じて、補間処理を行う計算手段と、を具備する、印刷装置。」

(刊行物2について)
また、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-158622号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。

(2-a)「2.特許請求の範囲
1.処理装置がアクセス可とされたメモリ上のあるエリアを巡回バッファとして使用する場合での該バッファへのアクセス方法であって、巡回バッファの大きさを2^(n)(n;正の整数)アドレス分、該バッファの先頭アドレスを2^(n)×m(m;0を含む正の整数)として、メモリ上の特定アドレスに設定され、且つ上記巡回バッファへのアクセスの度に歩進されるカウンタにおける下位nビットカウント値と、メモリ上の特定アドレスに格納された上記先頭アドレスの値とを演算し、演算結果をポインタとして上記巡回バッファをアクセスすることを特徴とする巡回メモリバッファ高速アクセス方法。」

(2-b)図として、





したがって、上記の事項から、刊行物には、以下の発明が開示されていると認められる。(以下、「刊行物2発明」という。)

「ライン数が2^(n)(n:正の整数)であるメモリにアクセスするためのアドレスを、カウンタのカウンタ値の下位nビットに基づいて連続的に更新する点」

3.対比
本願発明と刊行物1発明と対比すると、
まず、刊行物1発明における「外部装置からの印刷データ」、「倍率に応じて、補間処理を行う」は、それぞれ、本願発明の「原画像データ」、「前記画像処理として原画像データのサイズ変換のための補間計算」に相当する。
そして、刊行物1発明における「(前記受信したイメージ描画命令のパラメータを識別し、イメージデータのデータ形式及び倍率を検知する)前記検知手段で検知されたデータ形式及び倍率に応じて、補間処理を行う計算手段」と、
本願発明における「原画像データを2次元平面として扱って画像処理する際に用いる前記ワークメモリ上における各画素の座標を連続する座標値で表すとともに、前記原画像データをフレームメモリに格納した場合の座標値の下位nビットを用いて前記ワークメモリ上のアドレス計算を行いつつ、2^(n)のメモリライン数の1/2ライン数ずつの2つのエリアに分けられた前記ワークメモリの前記各エリアに対して、交互に2^(n)のメモリライン数の1/2ライン数ずつ前記原画像データを順次展開して画像処理を行うCPU」とは、
「原画像データを展開して画像処理を行うCPU」で共通する。
また、刊行物1発明における「外部装置からの印刷データに基づいて記録媒体への記録を実行する印刷装置」と、
本願発明における「1フレーム分の原画像データを格納した場合のフレームメモリのメモリライン数より少ない2^(n)(n=1,2,3,・・・)のメモリライン数を有するワークメモリを用いて原画像データの画像処理を行う画像処理装置」とは、
「原画像データの画像処理を行う画像処理装置」で共通する。
さらに、刊行物1発明において、「イメージデータのデータ形式」に応じて、「原画像データを展開して画像処理」を行っていることは、自明の事項であり、本願発明において、「外部装置からイメージ描画命令を受信する受信手段」、及び、「前記受信したイメージ描画命令のパラメータを識別し、イメージデータのデータ形式及び倍率を検知する検知手段」と同様の構成を有することも、明らかな事項である。

したがって、両者は、
「 原画像データの画像処理を行う画像処理装置であって、
原画像データを展開して画像処理を行うCPUを備え、
前記画像処理として原画像データのサイズ変換のための補間計算を行う、
画像処理装置。」
の点で一致し、下記の点で相違する。

相違点1:「CPU」が行う「画像処理」に関して、
本願発明は、「1フレーム分の原画像データを格納した場合のフレームメモリのメモリライン数より少ない2^(n)(n=1,2,3,・・・)のメモリライン数を有するワークメモリを用いて原画像データの画像処理を行う」ものであって、「原画像データを2次元平面として扱って画像処理する際に用いる前記ワークメモリ上における各画素の座標を連続する座標値で表すとともに、前記原画像データをフレームメモリに格納した場合の座標値の下位nビットを用いて前記ワークメモリ上のアドレス計算を行いつつ、2^(n)のメモリライン数の1/2ライン数ずつの2つのエリアに分けられた前記ワークメモリの前記各エリアに対して、交互に2^(n)のメモリライン数の1/2ライン数ずつ前記原画像データを順次展開して画像処理を行う」のに対して、
刊行物1発明には、そのような特定がない点。

相違点2:「サイズ変換のための補間計算」に関して、
本願発明は、「前記CPUは、前記画像処理として前記原画像データのサイズ変換のための補間計算を、予め定めた条件式により補間計算が可能か否かを判断しながら行うものであって、
前記フレームメモリ上の原画像データの任意のドットを表すために設定する座標軸による系を実座標と呼び、補間によって求めるべき所望ドットの位置を座標系上の1点として表すための座標系を仮想座標と呼び、前記仮想座標は、前記実座標での座標値のr倍の値に設定し、前記ワークメモリにそのメモリライン数の1/2ライン数分ずつ前記原画像データを展開して処理する回数を0から数えてi回目とした場合において、
前記仮想座標上における前記所望ドットの位置を示す座標値である仮想座標値Yが前記条件式としての第1式である「Y<(2^(n-1)×(i+1)-1)×r」を満たすか、又は前記実座標上における前記所望ドットの左上の原画像データのドットの位置を示す座標値である実座標値yが前記条件式としての第2式である「y<(i×2^(n-1)+2^(n-1)-1)」を満たすときに補間計算が可能であると判断して補間計算を行う一方、前記所望ドットの前記仮想座標値Yが前記第1式を満たさないか、又は前記所望ドットの前記実座標値yが前記第2式を満たさないときに補間計算が不可能であると判断して更に次の原画像データを前記ワークメモリにそのメモリライン数の1/2ライン数分だけ展開して前記第1式又は前記第2式により補間計算が可能か否かの判断を行う」のに対して、
刊行物1発明には、そのような特定がない点。

4.当審の判断
上記相違点について、検討する。
(相違点1について)
まず、JPEG画像は通常、8×8画素(又は16×16画素)のブロック単位で圧縮されている(必要ならば、原審の拒絶理由に引用された、特開平5-227442号公報参照。)のであるから、メモリのライン数を例えば2^(4)=16ラインとして、入力画像データを展開していく構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
したがって、「1フレーム分の原画像データを格納した場合のフレームメモリのメモリライン数より少ない2^(n)(n=1,2,3,・・・)のメモリライン数を有するワークメモリを用いて原画像データの画像処理を行う」とした点は、当業者が適宜為し得る設計的事項である。
また、刊行物2には、「ライン数が2^(n)(n:正の整数)であるメモリにアクセスするためのアドレスを、カウンタのカウンタ値の下位nビットに基づいて連続的に更新する」構成が開示されているように、このような公知の情報処理技術を、刊行物1発明の画像処理装置に適用して、「前記原画像データをフレームメモリに格納した場合の座標値の下位nビットを用いて前記ワークメモリ上のアドレス計算を行」う程度のことは、当業者が適宜なし得たことである。
そして、原審の拒絶査定において提示された特開平5-212913号公報などにも示されるように、画像データを展開するためのメモリ領域を2つのエリアに等分割し、当該等分割された各エリアに対して、交互に画像データを展開していくことは、ダブルバッファ方式として周知慣用の技術である。
したがって、「原画像データを2次元平面として扱って画像処理する際に用いる前記ワークメモリ上における各画素の座標を連続する座標値で表すとともに、前記原画像データをフレームメモリに格納した場合の座標値の下位nビットを用いて前記ワークメモリ上のアドレス計算を行いつつ、2^(n)のメモリライン数の1/2ライン数ずつの2つのエリアに分けられた前記ワークメモリの前記各エリアに対して、交互に2^(n)のメモリライン数の1/2ライン数ずつ前記原画像データを順次展開して画像処理を行う」ことは、当業者が適宜為し得たことである。

(相違点2について)
相違点2に関して、まず、補間処理のための計算を行う際に、例えば最近傍の4画素値を参照して線形補間を行う場合は、8ライン読み込んだときの最後のライン以降のアドレスに位置する画素に関して、参照すべき画素が未だ入力されていないために補間演算を行えないことは、当業者が当然把握すべき事項であるから、当該最終ライン以降の画素について補間演算ができないと判断することは、自明の事項といえる。
してみると、「前記CPUは、前記画像処理として前記原画像データのサイズ変換のための補間計算を、・・・補間計算が可能か否かを判断しながら行う」構成は、当業者が適宜採用できる設計的事項である。
そして、条件式について検討すると、n=4、r=4とすれば、
「Y<(2^(n-1)×(i+1)-1)×r」、「y<(i×2^(n-1)+2^(n-1)-1)」は、「Y<28」、「y<7」(i=0)、「Y<60」、「y<15」(i=1)、「Y<92」、「y<23」(i=2)、・・・となるから、これはすなわち、参照すべき画素がメモリに展開されているかどうかを単に判断しているに過ぎない。
したがって、「前記仮想座標上における前記所望ドットの位置を示す座標値である仮想座標値Yが前記条件式としての第1式である「Y<(2^(n-1)×(i+1)-1)×r」を満たすか、又は前記実座標上における前記所望ドットの左上の原画像データのドットの位置を示す座標値である実座標値yが前記条件式としての第2式である「y<(i×2^(n-1)+2^(n-1)-1)」を満たすときに補間計算が可能であると判断して補間計算を行う一方、前記所望ドットの前記仮想座標値Yが前記第1式を満たさないか、又は前記所望ドットの前記実座標値yが前記第2式を満たさないときに補間計算が不可能であると判断して更に次の原画像データを前記ワークメモリにそのメモリライン数の1/2ライン数分だけ展開して前記第1式又は前記第2式により補間計算が可能か否かの判断を行う」との構成は、「補間計算が可能か否かを判断」する条件式を提示しただけであって、このような条件式自体には、何ら技術的困難性は伴わないものである。
してみると、上記相違点2も、当業者が適宜為し得たことである。

(本願発明が奏する効果について)
そして、上記相違点によって、本願発明が奏する「少ないメモリ容量で画像データのデータ変換を行う画像処理装置を提供する」といった効果も、刊行物1?2に記載された事項及び周知技術から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

(まとめ)
以上のとおり、上記相違点に係る構成の変更は、刊行物1?2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に為し得たことである。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1?2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-20 
結審通知日 2009-12-01 
審決日 2009-12-14 
出願番号 特願平8-359132
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 康司清水 督史  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 大森 伸一
木村 史郎
発明の名称 画像処理装置  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ