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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1212212
審判番号 不服2007-7990  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-19 
確定日 2010-02-17 
事件の表示 平成 7年特許願第291225号「カード式パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 5月20日出願公開、特開平 9-131452〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯等
本願は、平成7年11月9日の出願であって、平成18年10月12日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成18年12月15日付けで手続補正がされ、平成19年2月5日付けで拒絶査定がされ、これに対し平成19年3月19日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成19年4月5日付けで手続補正がされたものである。当審において、平成21年3月30日付けで、平成19年4月5日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶の理由が通知され、これに対し平成21年5月26日付けで手続補正がされ、平成21年8月21日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成21年10月22日付けで意見書のみが提出された。

第2.本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年5月26日付の手続補正において特許請求の範囲の請求項1として記載された次のとおりのものである。
「カードに記憶されている価額データの残り額を表示する残り額表示手段と、
カードに記憶されている価額データの残り額が所定の残り額に減少したときに残り額が所定の残り額に減少した旨の情報を遊技者に報知して警告する報知手段とを設け、
前記報知手段は、ゲーム中、前記カードによる遊技球の貸し出しが可能な段階で作動制御される、
ことを特徴とするカード式パチンコ機。」

第3.当審の判断

1.当審拒絶理由について

当審において平成21年8月21日付で通知した拒絶の理由の概要は、請求項1に係る発明は、登録実用新案第3012632号公報(以下「引用文献1」という。)に記載された発明及び周知技術(特開昭53-17205号公報、実願昭56-96361号(実開昭58-3661号)のマイクロフィルム、特開平6-333137号公報)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

2.引用文献について

(1)引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、以下の事項が図面とともに記載されている。

・記載事項1
「上記のカード装置本体2は、プリペイドカード1に記録されている情報を読み出すカードリーダ4と、カード1の残額を表示する残額表示器5と、それらの制御を行うCPU(中央処置装置)7とにより構成されており、プリペイドカード1がカード挿入・返却口8から挿入されたとき、プリペイドカード1を内部に保留し、玉放出器3が使用可能となる。そこで、不図示の玉放出ボタンを押すと、所定数のパチンコ玉が玉放出器3から放出される。この場合、使用料金が計算され、残額は残額表示器5に表示されるとともに、プリペイドカード1に記録される。9は残額が所定額以下になったとき警報を発する残額警報ランプである。」(段落【0008】)

・記載事項2
「以下、CPU7の制御動作を説明する。
まず、プリペイドカード1がカード挿入・返却口8に挿入されると、カードリーダ4が検知してCPU7にカード検出信号を出力するとともに、プリペイドカード1をカード装置本体2の内部に保留する。そして、その信号を受けたCPU7はカードリーダ4にプリペイドカード1の残額を読み取らせて残額表示器5に表示させる。また、CPU7は玉放出器3を使用可能とし、所定のボタンを押すことによりパチンコ玉が放出される。」(段落【0009】)

・記載事項3
「上記のカードリーダ4がプリペイドカード1の残額を読み取った結果、残額が0の場合、CPU7は残額警告ランプ9を点灯させるとともに、玉放出器3を使用不能にさせ、またプリペイドカード1を返却口8より返却する。そこで、新たなカードをカード挿入・返却口8より挿入することにより、上記の最初の動作を繰り返すものである。」(段落【0010】)

・記載事項4
「以上説明したように、本考案に係るパチンコにおける玉貸機は、代金前払い式のカードが挿入されたとき、そのカードを検知して使用可能信号を出力するカード装置部と、その使用可能信号を受けて作動し、パチンコ玉を放出する作動部とを具備したから、プリペイドカードによる使用ができて極めて便利である。」(段落【0011】)

以上を含む全記載及び図示によれば、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。

「プリペイドカード1に記録されている情報を読み出すカードリーダ4と、カード1の残額を表示する残額表示器5と、残額が所定額以下になったとき警報を発する残額警報ランプ9と、カードリーダ4が内部に保留されているプリペイドカード1の残額を読み取った結果、残額表示器5に残額を表示させ、所定のボタンが押されるとパチンコ玉が放出されるとともに、残額が0の場合、残額警告ランプ9を点灯させるパチンコにおける玉貸機。」(以下、「引用発明」という。)

3.対比
本願発明と引用発明を対比すると、
引用発明の「プリペイドカード1」は本願発明の「カード」に相当し、以下同様に「残額」は「価額データの残り額」に、「残額表示器」は「残り額表示手段」に、「残額警告ランプ9」は「報知手段」にそれぞれ相当する。

引用発明について、以下のことが言える。
(1)「プリペイドカード1に記録されている情報を読み出すカードリーダ4と、カード1の残額を表示する残額表示器5と」について
カードリーダ4が読み出す「プリペイドカード1に記録されている情報」は、「カード1の残額」を含むことは明らかであるから、引用発明は本願発明の「カードに記憶されている価額データの残り額を表示する残り額表示手段」に相当する構成を実質的に具備するものである。

(2)「残額が所定額以下になったとき警報を発する残額警報ランプ9と」について
プリペイドカード1の残額は「パチンコ玉の放出」に伴って「減少」するものであり、「警報」は「残額」が「所定の残額」に減少した旨の情報を遊技者に報知して警告するものということができるから、引用発明は本願発明の「カードに記憶されている価額データの残り額が所定の残り額に減少したときに残り額が所定の残り額に減少した旨の情報を遊技者に報知して警告する報知手段」に相当する構成を実質的に具備するものである。

(3)「カードリーダ4が内部に保留されているプリペイドカード1の残額を読み取った結果、残額表示器5に残額を表示させ、所定のボタンが押されるとパチンコ玉が放出されるとともに、残額が0の場合、残額警告ランプ9を点灯させるパチンコ機における玉貸機」について
一般的に、カードを使用してパチンコ機で遊技(ゲーム)を行う場合、まずカードを玉貸機又はCR機にカードを挿入し、遊技を行いつつ必要に応じて貸し出しボタンを押してパチンコ玉の貸し出しを行うのが通常であって、残額が0になった場合でも最後に貸し出された玉が無くなるまで遊技が行われるものである。そうすると上記のように「残額表示器5に残額を表示させ、所定のボタンが押されるとパチンコ玉が放出されるとともに、残額が0の場合、残額警告ランプを点灯させる」のは「ゲーム中」ということができる。
また引用発明は「パチンコにおける玉貸機」であり、本願発明は「パチンコ機」であるが、両者はカードを用いて玉を貸し出すものであるから「カード式玉貸出装置」という点では共通している。
以上により、引用発明と本願発明は、「前記報知手段は、ゲーム中、作動制御される、カード式玉貸出装置」で共通している。

そうすると、両者は、
「カードに記憶されている価額データの残り額を表示する残り額表示手段と、
カードに記憶されている価額データの残り額が所定の残り額に減少したときに残り額が所定の残り額に減少した旨の情報を遊技者に報知して警告する報知手段とを設ける、前記報知手段は、ゲーム中、作動制御される、カード式玉貸出装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
(1)
報知手段が作動制御されるのが、本願発明では「カードによる遊技球の貸し出しが可能な段階で」であるのに対し、引用発明では「残額が0の場合」である点。
(2)
カード式貸出装置が、本願発明では「パチンコ機」の一部の構成であるのに対し、引用発明では「パチンコにおける玉貸機」である点。

4.判断
(相違点1)
平成21年8月21日付け拒絶理由通知で提示した周知技術である特開昭53-17205号公報、実願昭56-96361号(実開昭58-3661号)のマイクロフィルム、特開平6-333137号公報等において、カードに残度数があり利用が可能な段階で報知を行うことは周知の技術であり、引用発明の残り額が0で報知することに代えて利用が可能な段階で報知することは当業者であれば容易になしうることにすぎない。

なお、出願人は平成21年10月22日付けの意見書において、本願発明はゲームを続けるのか終了するのかを判断できるようにしたものであり、周知文献1乃至3はサービスの継続を希望するだろうとの前提にして、カードの取り替えのための時間を確保するものであり、本願発明とは全く異なる時間を確保するものである点主張している。しかし特開昭53-17205号公報の第4頁右上欄に「この場合、利用者が残り分全部の通話をしたい場合には手動によりメモリースイッチ7を作動させることにより回数カードの有効回数をすべて消去し、その残数を記憶部11に記憶させると共に、回数カードを利用者に返却する。・・・・さらに、通話を継続したい場合には、前回数カードの通話分が終了しないうちに新しい回数カードを挿入すれば、記憶部11の記憶されている回数に新しいカードの回数を加算し、記憶部11に記憶すると共に、表示器6に表示され、通話は継続される。」との記載があり、これは通話を終了させるか、継続させるかを判断させるものである。そしてその他の周知技術においても残額が0となる前に報知する時点で、終了するか継続するかという判断を行うことが可能であることは自明である。

(相違点2)
カード式パチンコ機は本願出願当時CR機として既に周知であり、引用発明のような玉貸機の機能をCR機の玉貸機能に適用することに格別の困難性は認められない。

そして、本願発明の効果は、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第4.むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶を免れない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-21 
結審通知日 2009-12-22 
審決日 2010-01-06 
出願番号 特願平7-291225
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 篠崎 正  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 川島 陵司
深田 高義
発明の名称 カード式パチンコ機  
代理人 前田 健一  
代理人 蟹田 昌之  

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