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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1212283
審判番号 不服2009-332  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-01-05 
確定日 2010-02-18 
事件の表示 特願2004-182054「電子写真装置用ベルトおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月 5日出願公開、特開2006- 3764〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1 手続の経緯
本願は、平成16年6月21日の出願であって、平成20年9月22日付の拒絶理由通知に対して、同年11月12日付で明細書に係る手続補正がなされたが、同年12月1日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年1月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で明細書に係る手続補正がなされたものである。
さらに、平成21年2月19日付で審査官により作成された前置報告書について、同年8月13日付で審尋がなされたところ、審判請求人から同年9月14日付で回答書が提出されたものである。

2 平成21年1月5日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年1月5日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)本件補正前及び補正後の本願発明
審判請求時の本件補正は、

「【請求項1】
ポリアミドイミドの単層構造体にシリコーン成分からなる離型剤を内添していることを特徴とする電子写真装置用ベルト。
【請求項2】
前記シリコーン成分が、前記単層構造体の0.01?10質量%添加されていることを特徴とする請求項1に記載の電子写真装置用ベルト。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子写真装置用ベルトの製造方法であって、
成形直後の前記単層構造体の表面に、該単層構造体の内部より2?5倍の高い濃度で前記シリコーン成分が存在するようにしたことを特徴とする電子写真装置用ベルトの製造方法。」
から、

「【請求項1】
ポリアミドイミドの単層構造体にシリコーン成分からなる離型剤を内添している電子写真装置用ベルトであって、
前記離型剤は、前記単層構造体の表面の濃度が前記単層構造体の内部の濃度より2?5倍高いことを特徴とする電子写真装置用ベルト。
【請求項2】
前記シリコーン成分が、前記単層構造体の0.01?10質量%添加されていることを特徴とする請求項1に記載の電子写真装置用ベルト。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子写真装置用ベルトの製造方法であって、
成形直後の前記単層構造体の表面に、該単層構造体の内部より2?5倍の高い濃度で前記シリコーン成分が存在するようにしたことを特徴とする電子写真装置用ベルトの製造方法。」
に補正するものである。

そうすると、本件補正は、本願の請求項1において、発明を特定するために必要な事項であるポリアミドイミドの単層構造体に内添される「離型剤」の分布について、「前記離型剤は、前記単層構造体の表面の濃度が前記単層構造体の内部の濃度より2?5倍高い」という限定を付すものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本願補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)先願明細書
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願2003-378688号(特開2005-139351号公報参照)の願書に最初に添付した明細書および図面(以下「先願明細書」という。)には、以下の事項が記載されている。

(a-1)「【0089】
なお、本発明におけるシームレスベルトは、上述したような中間転写ベルト501または922を装備した中間転写ベルト方式の画像形成装置に好適に適用できる他、該中間転写ベルト501または922の代りに転写搬送ベルトを装備した転写搬送ベルト方式の画像形成装置にも適用できる。さらに、転写搬送ベルト方式の画像形成装置の場合においても、前記1感光体ドラム方式あるいは4感光体ドラム方式の何れにも適用可能である。
【実施例】
【0090】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、これら実施例によって制限されるものではない。・・・・・(略)・・・・・」、

(a-2)「【0105】
実施例10 [塗工液の調製]
まず、トリメリット酸無水物と4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとの等モルをN-メチルピロリドン溶媒中で150℃にて重合反応させ、ポリアミドイミド溶液を得た。この溶液に、ビーズミルによってN-メチルピロリドン中に微粉砕分散したカーボンブラック(キャボット製BP-L)分散液を混合し調製した。得られたカーボンブラック分散ポリアミドイミド溶液は、ポリアミドイミド固形分15wt%、カーボンブラック7wt%、N-メチルピロリドン78wt%であった。
さらに、25℃における動粘度が5cStであるポリジメチルシロキサン(トーレダウコーニングシリコーン製SH200)を、上記カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液に0.01wt%添加し、よく攪拌混合して塗工液を調製した。
[シームレスベルトの作製]
次に、実施例1と同様に内径100mm、長さ300mmの内面を鏡面仕上げした金属製円筒を型として用い、この円筒型を50rpm(回/分)で回転させながら、上記塗工液を円筒内面に均一に流延するように流して塗布した。所定の全量を流し終えて塗膜がまんべんなく広がった時点で、回転数を500rpmに上げ、熱風循環乾燥機に投入して、120℃まで徐々に昇温して30分加熱した。その後回転を停止し、高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に投入し、250℃まで昇温して30分加熱処理(焼成)した。
所定時間処理して加熱を停止した後、常温まで徐冷してから型を取り出し、形成された塗膜を円筒内面から剥離し、膜厚85μmのシームレスベルトを得た。
[シームレスベルトの内面性状評価]
実施例1同様に、製作したシームレスベルトの内面の表面状態をマイクロスコープ(キーエンス製VH-8000)により観察した。結果を下記表1に示す。併せて、塗工液に添加したシロキサン化合物の種類、粘度(25℃における動粘度)、添加量を記載する。」、

(a-3)「【0110】
前記で製作したシームレスベルトのうち、実施例1、10、比較例1、2、4、7のシームレスベルトを用いて、前記図2に示した電子写真装置に装備されるベルト構成部の中間転写ベルトとして配備し、連続1万枚のコピー出力を実施した。」

(a-4)「【0111】
その結果、実施例1、10の各転写シームレスベルトは機能上の問題もなく、また出力画像も終始良好であった。・・・・・(略)・・・・・」

上記の記載によれば、先願明細書には、以下の発明(「先願発明」という。)が記載されていると認められる。

「トリメリット酸無水物と4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの等モルを溶媒中で重合反応させて得られるポリアミドイミド溶液にカーボンブラックを混合した後、ポリジメチルシロキサンを、カーボンブラックを含むポリアミドイミド溶液に0.01wt%添加し、よく混合撹拌した後、型に流して塗膜とし、加熱乾燥しさらに250℃で加熱処理(焼成)し冷却して、型から取り出すことによって得られる電子写真装置用のシームレスベルト。」

(3)対比
そこで、「本願補正発明」と「先願発明」を比較すると、
(イ)「先願発明」の「ポリジメチルシロキサン」がシリコーン成分であり離型剤であることは自明であるから、「ポリジメチルシロキサン」は「本願補正発明」の「シリコーン成分からなる離型剤」に相当すること、

(ロ)「先願発明」において、トリメリット酸無水物と4、4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを重合反応させて得られる反応物はポリアミドイミド樹脂であること、また、ポリアミドイミド樹脂は原料をよく混合撹拌して反応させ、型に入れて成形したものであるから単層構造体であるといえること、

(ハ)「先願発明」において、ポリジメチルシロキサンは、ポリアミドイミド製造時に原料に対して添加されるから、ポリジメチルシロキサンの添加は「本願補正発明」の「内添」に相当すること、
から、両者は、
「ポリアミドイミドの単層構造体にシリコーン成分からなる離型剤を内添している電子写真装置用ベルト」で一致し、下記の点で一応相違する。

[相違点]
離型剤の分布に関して、
「本願補正発明」は、「前記離型剤は、前記単層構造体の表面の濃度が前記単層構造体の内部の濃度より2?5倍高い」のに対して、
「先願発明」はそのような特定がない点。

(4)当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
本願明細書において、本願発明を具体化した「実施例2」には、カーボンフィラーを含むポリアミドイミド溶液に「無変性シリコーンオイル(信越化学工業(株)製、KF-96-1000)」を加え混合後、型に入れて作製した無端ベルトは、「シリコーン成分の存在比」(ベルト表面の濃度/内部の濃度)がシリコーン成分の添加量0.005?20.0質量%の範囲において添加量を変えても「5/1」の比であったことが記載されており(段落【0025】、【0033】の表1、段落【0020】?【0024】)、ここで、信越化学工業(株)製の「無変性シリコーンオイル(KF-96-1000)」に関し、KF-96シリーズは、同社の製品情報等を通じて一般に、ジメチルシリコーンオイルを用いた製品として知られているから、前記「無変性シリコーンオイル(KF-96-1000)」はジメチルシリコーンオイル(即ち、ポリジメチルシロキサン)であると認められる。
また、本願明細書には、シリコーン成分(離型剤)の種類の違いがベルト表面と内部の濃度比を決める旨の記載があり(段落【0017】、【0018】参照)、該記載からは、同じシリコーン成分を用いるならば、原料混合や型成形の手段、条件などを特別なものとしなくても、ベルト表面と内部の濃度比は同様なものになることが伺える。
さらに、本願明細書の「実施例1?3」は、シリコーン成分のベルト表面と内部の濃度比(前記表1記載の「Si存在比(表面/内部)」に相当する。)がシリコーン成分の種類によって、添加量(質量%)には影響されずに決まることを示している(段落【0033】の表1、段落【0019】?【0026】参照)。

そうすると、「先願発明」の電子写真装置用ベルトは、カーボンブラックを含むポリアミドイミド溶液(ベルトの原料溶液)に上記本願の「実施例2」と同じシリコーン成分(ポリジメチルシロキサン)を0.01wt%添加し、上記本願の「実施例2」と同じように混合後、型に入れて作製しているのであるから、先願明細書にはシリコーン成分のベルト表面と内部の濃度比範囲の規定はないが、本願明細書における上記段落【0018】及び【0033】の記載も併せ考慮すると、「先願発明」のベルトにおける「シリコーン成分の存在比」(ベルト表面の濃度/内部の濃度)は上記本願の「実施例2」の「5/1」と同じようになっている蓋然性が高い。
別な言い方をすれば、「先願発明」のベルトは、ポリアミドイミドの単層構造体の表面の濃度が該単層構造体の内部の濃度より5倍高くなっている蓋然性が高い。

したがって、先願明細書に記載はないが、「先願発明」のベルトも、シリコーン成分のベルト表面と内部の濃度比が、「本願補正発明」で規定するベルト表面と内部の濃度比範囲に入っているので、上記した相違点はベルト表面と内部の濃度比を明記したかしないかの表現上の差異に過ぎず、両者に実質的な差異があるとすることはできない。

よって、「本願補正発明」は、「先願明細書」に記載された発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記先願の出願の出願人と同一であるとも認められないので、「本願補正発明」は、特許法第29条の2第1項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


3 本願発明について
平成21年1月5日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成20年11月12日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる。
請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明1」という。)は、「2[理由](1)」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

(1)先願明細書
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願平2003-378688号(特開2005-139351号公報参照)の願書に最初に添付した明細書および図面(以下「先願明細書」という。)の記載事項は、前記2の[理由](2)に記載したとおりである。
これらの記載からみて、「先願明細書」には、2[理由](2)に記載した電子写真装置用のシームレスベルトの発明が記載されていると認められる。

(2)対比・判断
「本願発明1」は、上記「2[理由]」で検討した「本願補正発明」から、電子写真装置用ベルトにおける離型剤の分布に関する「前記離型剤は、前記単層構造体の表面の濃度が前記単層構造体の内部の濃度より2?5倍高い」という限定、及び該限定の直前の「電子写真装置用ベルトであって、」という記載を削除したものに相当する。

そこで、上記2[理由](3)に記載した(イ)?(ハ)の認定を踏まえて、「本願発明1」と「先願発明」を比較すると、両者はどちらも、ポリアミドイミドの単層構造体にシリコーン成分からなる離型剤を内添している電子写真装置用ベルトであるから発明に差異がない。
したがって、「本願発明1」は、先願明細書に記載された発明と同一である。

(3)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記先願の出願人と同一であるとも認められないので、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-14 
結審通知日 2009-12-15 
審決日 2010-01-05 
出願番号 特願2004-182054(P2004-182054)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G03G)
P 1 8・ 161- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中澤 俊彦  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 黒瀬 雅一
一宮 誠
発明の名称 電子写真装置用ベルトおよびその製造方法  
代理人 佐野 弘  

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