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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1212540
審判番号 不服2007-11712  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-23 
確定日 2010-02-24 
事件の表示 特願2002-170151「医院内の医療情報表示システム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月15日出願公開、特開2004- 13807〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年6月11日の出願であって、平成18年11月2日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年12月27日付けで手続補正がなされたが、平成19年3月9日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年4月23日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成19年4月23日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年4月23日付けの手続補正を却下する。

[理由]
平成19年4月23日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「医院内には、各種の情報を表示する表示装置と、該表示装置を制御するハード取扱事業者が設置した院内設置パソコンと、該院内設置パソコンの入力装置とがあり、前記院内設置パソコンには、受付用ソフトと、患者待ち受け用ソフトと、これらの受付用ソフト及び患者待ち受け用ソフトを管理する管理ソフトとがインストールされており、前記受付用ソフトは前記院内設置パソコンの入力装置や携帯端末、個人のパソコン等からの信号によって医院の受付を行う手段を有すると共に受付に関する情報や待合に関する情報等を携帯端末又は個人のパソコン等へ出力する手段を有し、前記患者待ち受け用ソフトは待合時間及び待合順番等の待合に関する情報を表示する手段と、医院の受付に関する情報及び薬剤メーカーからの薬剤についての情報並びに地方自治体の行政に関する情報等のその他の情報をwebサーバーに接続されたデータベースから読み出して表示する手段とを有しており、前記院内設置パソコンの入力装置からの医院の受付は、電子診察券をカードリーダに通して電子診察券の情報を読み込ませることで行い、前記携帯端末や個人のパソコン等からの医院の受付は、webサーバーから院内設置パソコンへアクセスして必要事項を入力することで行い、前記受付に関する情報や待合に関する情報等を携帯端末又は個人のパソコン等へ出力する手段は、院内設置パソコンからwebサーバーを通じて個人の携帯電話やパソコンへ予約番号及び予約状況等を送信するものであることを特徴とする医院内の医療情報表示システム。」

から、
「医院内には、各種の情報を表示する表示装置と、該表示装置を制御するハード取扱事業者が設置した院内設置パソコンと、該院内設置パソコンの入力装置とがLANなどでオンライン接続され、前記院内設置パソコンに対してwebサーバーと、該webサーバーに接続されたデータベースと、複数のweb作成業者のパソコン端末と、携帯端末又は個人のパソコン等とがインターネットを介して通信できるように接続された医院内の医療情報表示システムであって、
前記院内設置パソコンには、受付用ソフトと、患者待ち受け用ソフトと、これらの受付用ソフト及び患者待ち受け用ソフトを管理する管理ソフトとがインストールされており、
前記院内設置パソコンは、前記受付用ソフトが動作することによって、前記院内設置パソコンの入力装置を介してカードリーダが読み込んだ初診患者と再診患者の電子診察券の情報並びに携帯端末、個人のパソコン等からインターネット及びwebサーバーを通じて受信した受付に関する情報を処理して予約状況、受付状況を作成する情報処理部と、該処理した情報を保存する記憶部とを有しており、
前記院内設置パソコンは、前記患者待ち受け用ソフトが動作することによって、待合時間及び待合順番等の待合に関する情報を当該院内設置パソコンの記憶部から読み出して前記表示装置へ送信して表示させる手段と、医院の受付に関する情報及び薬剤メーカーからの薬剤についての情報並びに地方自治体の行政に関する情報等のその他の情報を院内設置パソコンの記憶部又はインターネットを通じてwebサーバーに接続されたデータベースから読み出して前記表示装置へ送信して表示させる手段とを有しており、
また前記院内設置パソコンは、複数のwebコンテンツ作成業者が作成し、当該作成業者のパソコン端末からインターネットを通じてwebサーバーへ接続されたデータベースに保存された広告情報を読み取る手段を有しており、
更に前記院内設置パソコンは、受付に関する情報や待合に関する情報等を当該院内設置パソコンの記憶部から読み出して携帯端末又は個人のパソコン等へ送信する手段を有しており、
前記受付に関する情報や待合に関する情報等を携帯端末又は個人のパソコン等へ出力する手段は、携帯端末又は個人のパソコン等からインターネット及びwebサーバーを通じて院内設置パソコンへアクセスして受付に関する情報や待合に関する情報等の送信を要求し、これに応じて院内設置パソコンの記憶部から前記受付に関する情報や待合に関する情報等を読み出し、院内設置パソコンの送信手段からwebサーバー及びインターネットを通じて個人の携帯電話やパソコンへ予約番号及び予約状況等を送信するものであることを特徴とする医院内の医療情報表示システム。」

に補正された。
上記補正は、院内設置パソコンに「複数のwebコンテンツ作成業者が作成し、当該作成業者のパソコン端末からインターネットを通じてwebサーバーへ接続されたデータベースに保存された広告情報を読み取る手段」(以下、「広告情報読取手段」という。)を追加する補正を含むものである。
補正前の請求項には、院内設置パソコンが「医院の受付に関する情報及び薬剤メーカーからの薬剤についての情報並びに地方自治体の行政に関する情報等のその他の情報をwebサーバーに接続されたデータベースから読み出して表示する手段」(以下、「表示手段」という。)を有することは記載されているが、上記広告情報読取手段は広告を行う業者から広告料金を徴収するために広告情報を読み取るという、明らかに上記表示手段には含まれていない、異なる作用をもたらす手段である。したがって、上記広告情報読取手段は上記表示手段を下位概念化したものとは認められない。また、上記広告情報読み取り手段は、上記表示手段以外の、補正前のいずれの発明特定事項をも下位概念化したものではない。
よって、院内設置パソコンに「複数のwebコンテンツ作成業者が作成し、当該作成業者のパソコン端末からインターネットを通じてwebサーバーへ接続されたデータベースに保存された広告情報を読み取る手段」を追加しようとする本件補正は、補正前の請求項に記載された発明の発明特定事項のいずれかを下位概念化したものではなく、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものでないことは明らかである。
したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定されている特許請求の範囲の減縮を目的としているものとは認められない。
また、本件補正が平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の同法第17条の2第4項第1号、第3号、第4号のいずれをも目的とするものでないことは明らかである。

以上のとおり、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成19年4月23日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年 12月27日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「医院内には、各種の情報を表示する表示装置と、該表示装置を制御するハード取扱事業者が設置した院内設置パソコンと、該院内設置パソコンの入力装置とがあり、前記院内設置パソコンには、受付用ソフトと、患者待ち受け用ソフトと、これらの受付用ソフト及び患者待ち受け用ソフトを管理する管理ソフトとがインストールされており、前記受付用ソフトは前記院内設置パソコンの入力装置や携帯端末、個人のパソコン等からの信号によって医院の受付を行う手段を有すると共に受付に関する情報や待合に関する情報等を携帯端末又は個人のパソコン等へ出力する手段を有し、前記患者待ち受け用ソフトは待合時間及び待合順番等の待合に関する情報を表示する手段と、医院の受付に関する情報及び薬剤メーカーからの薬剤についての情報並びに地方自治体の行政に関する情報等のその他の情報をwebサーバーに接続されたデータベースから読み出して表示する手段とを有しており、前記院内設置パソコンの入力装置からの医院の受付は、電子診察券をカードリーダに通して電子診察券の情報を読み込ませることで行い、前記携帯端末や個人のパソコン等からの医院の受付は、webサーバーから院内設置パソコンへアクセスして必要事項を入力することで行い、前記受付に関する情報や待合に関する情報等を携帯端末又は個人のパソコン等へ出力する手段は、院内設置パソコンからwebサーバーを通じて個人の携帯電話やパソコンへ予約番号及び予約状況等を送信するものであることを特徴とする医院内の医療情報表示システム。」

(1)引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-308344号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。
A.「【0030】以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
実施の形態1.図1は本発明に係る順番待ち情報配信条件設定装置および順番待ち情報配信方式の概要図であり、詳しくは、待ち情報配信基地の一例として病院を考えた場合のシステム構成の一例を示したものである。図において、1は自宅、2は一般電話、3は携帯電話、4は公衆回線、5は待ち情報配信基地で本実施の形態1では病院、6は情報管理サーバである。
【0031】図2は実施の形態1の情報管理サーバ6のブロック構成図である。図において、11はカルテ情報等の病院管理情報の入力端子、12は病院管理情報の出力端子、13は患者により入力される診察予約(初診登録を含む)、診察順番待ち状態の確認、呼出し変更等の利用者要求、および個人情報の入力端子、14は待ち情報の出力端子、15は現在の待ち番号の入力端子、17は入力端子13より入力される利用者要求を受け付ける要求受付部、16は入力端子11より入力されるカルテ情報等の病院管理情報を受け付け、また医師等の要求に応じて病院管理情報を出力端子12に出力する情報入出力部である。また、情報入出力部16では、初診の患者の場合に要求受付部17より処理が移され、患者の氏名、年齢、住所、電話番号を含む個人情報の入力を行なう。18は情報処理部19で得られた待ち情報を出力端子14に出力する情報送出部、19は入力端子15より入力される現在の待ち番号、要求受付部17より入力される利用者要求にもとづき、診察予約や、呼出し条件の設定、情報送出部18への待ち情報の出力を行なう情報処理部、20は患者の氏名、年齢、住所、電話番号などの個人情報と、患者のカルテ情報などの病院管理情報からなるデータベースである。」

B.「【0033】以下、図1から図3を用いて、本実施の形態1の動作を説明する。患者は自宅1あるいは外出先から、一般電話2あるいは携帯電話3の通信手段を用いて、公衆回線4経由で病院5に設置された情報管理サーバ6に対して、診察の予約を行なう。予約の際、患者は順番待ち情報の配信条件を入力する。情報管理サーバ6は、配信条件が満足された場合に公衆回線4を通じて順番待ち情報を患者に対して配信する。また、患者は情報管理サーバ6に対して、現在の順番待ち情報の確認、ならびに配信条件の変更を行なうことができる。詳細はフローチャートを使って後述する。」

C.「【0074】また、実施の形態1および実施の形態2では、順番待ちの登録、状況確認、呼出し変更を行なう端末として電話を用いたがこれに限るものではなく、携帯情報端末、PDA、パソコンなど、順番待ち情報を配信するサーバと通信し、上記順番待ちの登録、状況確認、呼出し変更等の要求ができるものであればその形態を問わず、同様の効果を奏することは言うまでもない。また、電話の場合にも一般電話、公衆電話、携帯電話、PHS等電話の種類を問わないことは言うまでもない。」

D.「【0086】実施の形態1および実施の形態2では、待ち登録、状況確認、呼出し変更を電話等の通信手段を用いて行なったがこれに限るものではない。例えば、磁気カード等の媒体を情報管理サーバと物理的、電子的に接続された専用端末に差し込むことにより、上記待ち登録や、状況確認、呼出し変更などが行なえるように構成しても同様の効果を奏することはいうまでもない。
【0087】また、あらかじめ個人情報を記憶した磁気カード等の媒体を差し込むような専用端末を用いて情報管理サーバと情報の送受を行なうように構成することにより、ID番号等の入力による個人認証を自動的に行なうように構成してもよい。」

これらの記載事項によれば、引用例1には以下の発明(以下「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。
「病院内には、情報管理サーバがあり、前記情報管理サーバは、前記情報管理サーバと物理的、電気的に接続された専用端末や携帯情報端末、パソコン等からの信号によって診察予約を行う情報処理部を有すると共に、順番待ち情報を前記携帯情報端末又は前記パソコンへ出力する手段を有し、前記専用端末は順番待ち登録や状況確認が行えるような構成を有しており、前記専用端末からの順番待ち登録は、あらかじめ個人情報を記憶した磁気カード等の媒体を前記専用端末に差し込むことで行い、前記携帯情報端末又は前記パソコン等からの順番待ち登録は、前記情報管理サーバと通信して順番待ちの登録を要求することで行い、前記順番待ち情報を前記携帯情報端末又は前記パソコンへ出力する手段は、前記情報管理サーバから前記携帯情報端末又は前記パソコンへ順番待ち情報を配信する順番待ち情報配信条件設定装置。」

(2)対比
本願発明と引用例1発明を対比すると、以下の対応関係が認められる。
(ア)引用例1発明の「病院」は本願発明の「医院」に相当するものである。
(イ)引用例1発明の「情報管理サーバ」と本願発明の「院内設置パソコン」とは、院内に設置されたコンピュータであるという点で共通する。
(ウ)引用例1発明の「情報管理サーバと物理的、電気的に接続された専用端末」は順番待ち登録や状況確認が行えるような構成を有していることから各種の情報を表示していることは明らかであり、本願発明の「各種の情報を表示する表示装置」の機能を有するものであるといえる。また、引用例1発明の上記「専用端末」は情報管理サーバ(院内に設置されたコンピュータ)と物理的、電気的に接続され、あらかじめ個人情報を記憶した磁気カード等の媒体を前記専用端末に差し込むことで順番待ち登録ができることから、入力手段の機能を有するものであるともいえ、引用例1発明の「専用端末」と本願発明の「院内設置パソコンの入力装置」とは、院内に設置されたコンピュータに接続された入力手段であるという点で共通する。
(エ)引用例1発明の「携帯情報端末又はパソコン」は本願発明の「携帯端末や個人のパソコン等」又は「個人の携帯電話やパソコン」に相当する。
(オ)引用例1発明の「診察予約」は本願発明の「医院の受付」に相当し、引用例1発明の「診察予約を行う情報処理部」は本願発明の「医院の受付を行う手段」に相当するものである。
(カ)引用例1発明の「順番待ち情報」は本願発明の「受付に関する情報や待合に関する情報等」に相当し、引用例1発明の「順番待ち情報を前記携帯情報端末又は前記パソコンへ出力する手段」は、本願発明の「受付に関する情報や待合に関する情報等を携帯端末又は個人のパソコン等へ出力する手段」に相当するものである。
(キ)引用例1発明の「順番待ち情報」は本願発明の「待合時間及び待合順番等の待合に関する情報」に相当し、引用例1発明の「専用端末」は上記(ウ)に記載したように各種の情報を表示する表示装置の機能を有するものであるといえるから、引用例1発明の「順番待ち登録や状況確認が行えるような構成を有する専用端末」は本願発明の「待合時間及び待合順番等の待合に関する情報を表示する手段」に相当するものである。
(ク)引用例1発明の「前記専用端末からの順番待ち登録は、あらかじめ個人情報を記憶した磁気カード等の媒体を前記専用端末に差し込むことで行うこと」と本願発明の「前記院内設置パソコンの入力装置からの医院の受付は、電子診察券をカードリーダに通して電子診察券の情報を読み込ませることで行うこと」とは、院内に設置されたコンピュータに接続された入力手段からの医院の受付を、媒体に記憶されている個人情報を読み込ませることによって行うという点で共通する。
(ケ)引用例1発明の「順番待ち情報配信条件設定装置」は、医院内の医療情報を個人に対して表示しているものであるから、医院内の医療情報表示システムと呼びうるものである。

したがって、本願発明と引用例1発明の間には、以下の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「医院内には、各種の情報を表示する表示装置と、院内に設置されたコンピュータと、前記院内に設置されたコンピュータに接続された入力手段とがあり、前記院内に設置されたコンピュータは、前記入力手段や携帯端末、個人のパソコン等からの信号によって医院の受付を行う手段、医院の受付に関する情報を前記携帯端末、個人のパソコン等へ出力する手段、医院の受付に関する情報を前記表示装置に表示させる手段を有し、前記入力手段からの医院の受付は、媒体に記憶されている個人情報を読み込ませることによって行う、医院内の医療情報表示システム。」
である点。
(相違点1)
本願発明の「院内に設置されたコンピュータ」は、表示装置を制御するハード取扱事業者が設置したパソコンであって、受付用ソフトと、患者待ち受け用ソフトと、これらの受付用ソフト及び患者待ち受け用ソフトを管理する管理ソフトとがインストールされているのに対し、引用例1発明ではそのような特定がされていない点。
(相違点2)
本願発明の「院内に設置されたコンピュータに接続された入力手段」は院内設置パソコンの入力装置であるのに対し、引用例1発明では情報管理サーバと物理的、電気的に接続された専用端末であって、院内設置パソコンの入力装置ではない点。
(相違点3)
本願発明は「医院の受付に関する情報及び薬剤メーカーからの薬剤についての情報並びに地方自治体の行政に関する情報等のその他の情報をwebサーバーに接続されたデータベースから読み出して表示する手段」を有するのに対し、引用例1発明はそのような手段を有していない点。
(相違点4)
本願発明の「入力手段からの医院の受付」は、「電子診察券をカードリーダに通して電子診察券の情報を読み込ませることで行う」のに対し、引用例1発明は「あらかじめ個人情報を記憶した磁気カード等の媒体を前記専用端末に差し込むことで行う」ものであって、本願発明のように電子診察券をカードリーダに通して電子診察券の情報を読み込ませるものではない点。
(相違点5)
本願発明の「携帯端末、個人のパソコン等からの信号によって医院の受付を行う手段」は、「webサーバーから院内設置パソコンへアクセスして必要事項を入力することで行う」ものであり、本願発明の「医院の受付に関する情報を前記携帯端末、個人のパソコン等へ出力する手段」は、「院内設置パソコンからwebサーバーを通じて個人の携帯電話やパソコンへ予約番号及び予約状況等を送信する」ものであるのに対し、引用例1発明ではそのような特定がされていない点。

(3)判断
(相違点1)について
病院に設置されるサーバやパソコンなどのコンピュータ機器は、病院の職員自らが設置することもあるが、病院職員の多くはコンピュータ機器の設置についての専門的な知識を有していないので、病院が専門的な知識を有するハード取扱事業者に委託して、ハード取扱事業者がコンピュータ機器を設置することも一般的に行われていることである。また、引用例1発明のように専用端末(表示装置)を物理的、電気的に情報管理サーバに接続する場合、該情報管理サーバが該専用端末を制御するような構成はごく一般的なものである。
そして、パソコンをサーバとして動作させるためのソフトウェアをインストールして、サーバとして利用することは周知技術であり、該ソフトウェアをどのような単位とするかは当業者が適宜決定し得る設計事項に過ぎないから、引用例1発明の情報管理サーバとして、ハード取扱事業者が設置したパソコンに、受付用ソフトと、患者待ち受け用ソフトと、これらの受付用ソフト及び患者待ち受け用ソフトを管理する管理ソフトとをインストールして用いることは当業者が容易に想到し得た事項であるといえる。

(相違点2)について
引用例1発明の専用端末(入力手段)は、物理的、電気的に情報管理サーバに接続されているので、情報管理サーバからみると該専用端末は情報管理サーバの入力手段として動作しているのであるから、該専用端末を情報管理サーバの付属部品とすること、すなわち情報管理サーバ(院内設置パソコン)の入力装置とすることは当業者が容易に想到し得た事項であるといえる。

(相違点3)について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-180102号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。
E.「【特許請求の範囲】
【請求項1】 病院等に設置され診察患者に付与された診察順位を表す番号を入力する入力部と、入力部よりの番号を記憶するメモリ部と、1診察番号当たりの待ち時間を記憶する待ち時間記憶部と、前記メモリ部より読出した番号に所要番号数を加算する加算器と、前記所要番号数に前記待ち時間記憶部より読出したデータを乗算する乗算器と、前記メモリ部より読出したデータ、加算器よりのデータおよび乗算器よりのデータに基づいて所要の表示信号を生成する表示信号生成部と、表示信号生成部よりの信号に基づいて診察中の番号、診察待ち番号に対応する待ち時間等を表示する表示部と、前記入力部、メモリ部、待ち時間記憶部、加算器、乗算器、表示信号生成部および表示部を制御する制御部とから構成した病院案内表示システム。
【請求項2】 前記入力部に情報表示ボタンを設け、担当医の案内、病院内の手続き案内、あるいは投薬に関する案内等の情報を記憶する情報登録部を設け、前記情報表示ボタンの操作にて情報登録部より案内情報を読出し、読出されたデータを前記表示信号生成部に入力するように切換え、前記表示部に案内情報を表示するようにした請求項1記載の病院案内表示システム。」

F.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は病院案内表示システムに係り、病院の待合室等に表示装置を設置して現在の診察番号および待ち時間等を表示し、急患あるいは災害発生等の緊急情報を表示し、合間に各種の案内あるいはTV映像等を表示するものに関する。」

引用例2の上記記載によれば、医院の受付に関する情報と、薬剤に関する情報等の各種の案内情報とを病院に設置された表示装置に表示することは周知技術であると認められる。上記各種の案内情報として「薬剤メーカーからの薬剤についての情報」と「地方自治体の行政に関する情報等のその他の情報」を選択することは当業者が適宜なし得る事項に過ぎない。そして、情報をwebサーバーに接続されたデータベースから読み出して表示することも周知技術であるから、引用例1発明の専用端末(表示装置)に対して、医院の受付に関する情報及び薬剤メーカーからの薬剤についての情報並びに地方自治体の行政に関する情報等のその他の情報をwebサーバーに接続されたデータベースから読み出して表示させる構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点4)について
引用例1発明は「専用端末からの順番待ち登録は、あらかじめ個人情報を記憶した磁気カード等の媒体を前記専用端末に差し込むことで行う」ものである。
上記のように磁気カード等の媒体に記憶されている情報を専用端末で読み取るためには、該専用端末にカードリーダなどを接続して、このカードリーダに磁気カード等の媒体を差し込むようにする構成が最も一般的であって、該磁気カード等の媒体を「電子診察券」と称することは当業者が適宜なし得る事項に過ぎない。

(相違点5)について
特開2002-74121号公報には、以下の事項が記載されている。
G.「【要約】
【課題】 病院等で診療予約をしたときに、予約時間と実際の診療時間とのずれを正確に把握する。
【解決手段】 病院等で予約管理サーバ1、WWWサーバ4、受付用情報端末5、診療科用情報端末6、アクセスポイント用情報端末7を病院内LAN2で接続し、予約者が所持する携帯型情報端末8からアクセスポイント用情報端末7が構成する小規模無線ネットワークに参加して予約管理サーバ1にアクセスするか、インターネット3を経由してWWWサーバ4にアクセスすることにより、現在の予約消化状況一覧表情報を取得して、予約時に取得した予約IDコードと予約消化状況一覧表とを比較することにより、診療等の進行状況を正確に把握する。」

特開2001-306909号公報には、以下の事項が記載されている。
H.「【要約】
【課題】施設の対応者に負担をかけずに、利用者が施設に出向くことなく、施設利用の予約を行えるようにすること。
【解決手段】施設利用者側の端末装置101a?101nから施設利用の予約を行うと、通信路を介してネットワーク102上に設けられたメインサイト106を介して利用する施設のホームページ109?111にアクセスし、利用の予約を行う。また、施設側端末装置103?105から通信路を介して、ホームページ109?111にアクセスし、登録された施設利用者の予約データの削除等の更新を行う。」

I.「【0001】
【産業上の技術分野】本発明は、病院等の各種施設を利用する際に使用する施設利用の予約方法及び施設利用の待ち状況確認方法に関する。」

特開2001-222627号公報には、以下の事項が記載されている。
J.「【要約】
【課題】インターネットと移動体通信網を利用して、時間と場所の制限を受けず医療機関の検索と予約ができ、且つ診療進行状況を確認できるシステムを提供する。
【解決手段】インターネットに接続される医療機関の情報管理サーバ、このような複数医療機関の情報管理サーバからインターネットを通じて提供されるサービス情報を集中管理する中央情報管理サーバ等で医療情報網を構築し、中央情報管理サーバが各医療機関からリアルタイムで収集したサービス内容情報、予約管理情報、診療進行状況情報を集中管理し、且つインターネット又は移動体通信網に配信することによって、利用者がインターネット端末又は移動体通信端末から医療機関情報が検索でき、診療予約ができ、且つ診療進行状況が確認できる他に、中央情報管理サーバが予約者に診療進行状況を通知することができる。」

上記GからJの記載を参照すると、病院内に設置されたコンピュータと患者が所有する携帯情報端末やパソコンとの通信をwebサーバーを経由して行うことは周知技術であると認められる。そして、引用例1発明において患者が携帯情報端末やパソコンを用いて病院の診察予約を行う際に、患者が必要事項を入力することは当然のことであるし、病院が患者の携帯情報端末やパソコンに当該患者が行った診察予約に関する情報を送信する際に、予約番号及び予約状況等を送信することもまた当然のことであるから、引用例1発明の携帯情報端末、パソコン等からの信号によって医院の受付を行う手段を、webサーバーから情報管理サーバへアクセスして必要事項を入力することで行うように構成すること、及び引用例1発明の医院の受付に関する情報を携帯情報端末、パソコン等へ出力する手段を、情報管理サーバからwebサーバーを通じて携帯情報端末、パソコンへ予約番号及び予約状況等を送信する構成とすることは、いずれも上記周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-15 
結審通知日 2009-12-22 
審決日 2010-01-05 
出願番号 特願2002-170151(P2002-170151)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 伸次須田 勝巳  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 小曳 満昭
池田 聡史
発明の名称 医院内の医療情報表示システム  

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