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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21S
管理番号 1212695
審判番号 不服2008-23143  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-09 
確定日 2010-03-02 
事件の表示 特願2005-314692号「発光ダイオードバックライト装置及びこれを備えた液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年5月18日出願公開、特開2006-128125号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成17年10月28日(パリ条約による優先権主張2004年10月30日、韓国)の出願であって、平成20年 6月 6日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成20年 9月 9日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年10月 9日付けで手続補正(前置補正)がなされたものである。

第2 平成20年10月 9日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年10月 9日付けの手続補正を却下する。

[理 由]
1. 補正後の請求項1に記載された発明
平成20年10月 9日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
プリント基板と、
前記プリント基板上に実装される複数の発光ダイオードと、
同じ前記プリント基板上に実装されて前記各発光ダイオードを駆動させる複数の駆動素子と、
前記プリント基板に電気的に接続されて前記各駆動素子を制御する制御部を含み、
前記制御部は、前記各発光ダイオードを制御するためのパルス幅変調(PWM)信号を前記駆動素子に伝送して、これにより前記各発光ダイオードの電流をデュ-ティ制御し、
前記制御部は、異なる信号及び個別的に制御された電流を前記各発光ダイオードに供給して、これによりそれぞれ明度を制御する
ことを特徴とする発光ダイオードバックライト装置。」と補正された。

上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「発光ダイオード」及び「駆動素子」に対して、「同じプリント基板上」に実装するという限定を加えるものであって、この限定した事項は、出願当初の明細書又は図面に記載されているから、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2. 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-191490号公報(以下「刊行物1」という。)、特開平7-191311号公報(以下「刊行物2」という。)には、それぞれ図面と共に次の技術的事項が記載されている。

(1) 刊行物1の記載内容
(ア) 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は液晶表示装置に係り、液晶表示パネルの背面にバックライトユニットを備える液晶表示装置に関する。」
(イ) 「【0002】
【従来の技術】
液晶表示パネルは、液晶を介して対向配置される透明基板を外囲器とし該液晶の広がり方向に多数の画素が形成されて構成されている。
そして、各画素には電界を発生される一対の電極が備えられ、該電界によって液晶の光透過率が制御されるようになっている。
【0003】
このため、液晶表示パネルの背面には光源となるバックライトユニットが備えられているのが通常である。
このバックライトユニットとしては、種々のものが知られているが、近年では省力化のため、赤、青、緑の各色をそれぞれ発光する各発光ダイオード(LED)をそれらが近接配置されるように散在させて配置させたものが知られるに至っている(特許文献1、2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平7-191311号公報」
(ウ) 「【0016】
実施例1.
図2は、本発明による液晶表示装置の一実施例を示す概略構成図である。同図において、観察者側から液晶表示パネルPNL、混色手段MCM、バックライトユニットBLUが配置されている。」
(エ) 「【0020】
バックライトユニットBLUは、液晶表示パネルPNLとほぼ同大の基板の該液晶表示パネルPNL側の面に多数の発光ダイオードLEDをマトリクス状に並設させた構成からなっている。
【0021】
これら発光ダイオードLEDはたとえば前記基板のy方向に同色の色を発光する発光ダイオードが配列され、x方向に赤(R)、緑(G)、青(B)、赤(R)、……の順番を繰り返しながら配列されている。
【0022】
この場合、各発光ダイオードLEDは液晶表示パネルPNLの各画素に対応して配置されている必要はなく、たとえば液晶表示パネルPNLの隣接した複数の画素につき一個の発光ダイオードが対向するというように配列されていてもよい。」
(オ) 「【0024】
ここで、前記バックライトユニットBLUの各発光ダイオードLEDは、図1に示すように、互いに隣接するもの同士の発光ダイオードから構成されるサブユニットA、B、……を単位として複数に分割され、各サブユニットA、B、……毎にそれらの発光ダイオードLEDによる輝度が調整されるようになっている。
【0025】
ここで、バックライトユニットBLUは、たとえばこの実施例の場合そのx方向およびy方向に複数に分割するようにしているものであるが、x方向のみにあるいはy方向のみに複数に分割するようにしても事情は同じである。また、分割数は任意でよいが、その数を多くする方が好ましいことはいうまでもない。」
(カ) 「【0029】
このようにして各画素ブロックA、B、……毎の各最高輝度を算出した後は、これらその最高輝度に対応する各信号が、それぞれ当該画素ブロックA、B、……に対応するバックライトユニットBLUの各サブユニットA、B、……の輝度を調整するサブユニット輝度調整手段A、B、……に入力されるようになる。」
(キ) 「【0030】
各サブユニット輝度調整手段A、B、……はその入力信号に基づいて対応するサブユニットA、B、……の各発光ダイオードLEDを前記最高輝度に応じて発光させるようになっている。すなわち、画素ブロックA、B、……における最高輝度が低い場合には対応するサブユニットA、B、……の輝度を低く設定し、画素ブロックA、B、……における最高
輝度が高い場合には対応するサブユニットA、B、……の輝度を高く設定するようになっている。」
(ク) 「【0033】
表示階調解析手段SAMによって入力データを解析し、サブユニットAの位置に相当する画素ブロックAの各画素の輝度情報Aとしてたとえば10を得、サブユニットBの位置に相当する画素ブロックの各画素の輝度情報Bとしてたとえば2を得る。
【0034】
そして、輝度情報Aはサブユニット輝度調整手段Aに入力され、該サブユニット輝度調整手段Aは輝度情報Aに基づいてサブユニットAの各発光ダイオードLEDに流す電流値を調整し、該発光ダイオードLEDを発光させる。この場合の発光ダイオードLEDは輝度情報10に対応した輝度で発光し、その輝度は高くなっている。
【0035】
また、輝度情報Bはサブユニット輝度調整手段Bに入力され、該サブユニット輝度調整手段Bは輝度情報Bに基づいてサブユニットBの各発光ダイオードLEDに流す電流値を調整し、該発光ダイオードLEDを発光させる。この場合の発光ダイオードLEDは輝度情報2に対応した輝度で発光し、その輝度は比較的低くなっている。」

ここで、上記記載事項(ア)?(ク)及び図1?図6の記載内容から次のことが明らかである。

・記載事項(エ)の段落【0020】から、刊行物1には、「基板」及び「基板上に並設される多数の発光ダイオードLED」が記載されているということができる。

・記載事項(オ)における、「バックライトユニットBLUの各発光ダイオードLEDは、 ・・・ 互いに隣接するもの同士の発光ダイオードから構成されるサブユニットA、B、……を単位として複数に分割され」ているという構成、及び、記載事項(カ)における、「バックライトユニットBLUの各サブユニットA、B、……の輝度を調整するサブユニット輝度調整手段A、B、……に入力される」という構成から、刊行物1には、各発光ダイオードLEDを駆動させる複数のサブユニット輝度調整手段A,Bが記載されているということができる。

・図1における図示内容、記載事項(カ)における「これらその最高輝度に対応する各信号が、それぞれ当該画素ブロックA、B、……に対応するバックライトユニットBLUの各サブユニットA、B、……の輝度を調整するサブユニット輝度調整手段A、B、……に入力される」という構成、及び記載事項(ク)における「表示階調解析手段SAMによって入力データを解析し、サブユニットAの位置に相当する画素ブロックAの各画素の輝度情報Aとしてたとえば10を得、 ・・・ そして、輝度情報Aはサブユニット輝度調整手段Aに入力され、該サブユニット輝度調整手段Aは輝度情報Aに基づいてサブユニットAの各発光ダイオードLEDに流す電流値を調整し、該発光ダイオードLEDを発光させる。」という構成から、刊行物1には、バックライトユニットBLUにサブユニット輝度調整手段A,Bを介して接続されてサブユニット輝度調整手段A,Bを調整可能とする表示階調解析手段SAMが記載されているということができる。

・記載事項(ク)における「表示階調解析手段SAMによって入力データを解析し、サブユニットAの位置に相当する画素ブロックAの各画素の輝度情報Aとしてたとえば10を得、 ・・・ そして、輝度情報Aはサブユニット輝度調整手段Aに入力され、該サブユニット輝度調整手段Aは輝度情報Aに基づいてサブユニットAの各発光ダイオードLEDに流す電流値を調整し、該発光ダイオードLEDを発光させる。 ・・・ また、輝度情報Bはサブユニット輝度調整手段Bに入力され、該サブユニット輝度調整手段Bは輝度情報Bに基づいてサブユニットBの各発光ダイオードLEDに流す電流値を調整し、該発光ダイオードLEDを発光させる。」という構成から、刊行物1には、表示階調解析手段SAMが、各発光ダイオードLEDを制御可能な輝度情報A,Bをサブユニット輝度調整手段A,Bに入力して、これにより各発光ダイオードの電流を調整するという構成が記載されているということができる。

・記載事項(ク)における「表示階調解析手段SAMによって入力データを解析し、サブユニットAの位置に相当する画素ブロックAの各画素の輝度情報Aとしてたとえば10を得、 ・・・ そして、輝度情報Aはサブユニット輝度調整手段Aに入力され、該サブユニット輝度調整手段Aは輝度情報Aに基づいてサブユニットAの各発光ダイオードLEDに流す電流値を調整し、該発光ダイオードLEDを発光させる。 ・・・ また、輝度情報Bはサブユニット輝度調整手段Bに入力され、該サブユニット輝度調整手段Bは輝度情報Bに基づいてサブユニットBの各発光ダイオードLEDに流す電流値を調整し、該発光ダイオードLEDを発光させる。」という構成から、刊行物1には、表示階調解析手段SAMが、異なる輝度情報A,Bをサブユニット輝度調整手段A,Bに入力してサブユニット輝度調整手段A,Bからサブユニット毎に個別的に調整された電流を各発光ダイオードLEDへ供給してそれぞれ輝度を調整可能とする構成が記載されているということができる。

よって、図面とともに上記記載内容及び検討事項を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。
「基板と、
基板上に並設される多数の発光ダイオードLEDと、
各発光ダイオードLEDを駆動させる複数のサブユニット輝度調整手段A,Bと、
バックライトユニットBLUにサブユニット輝度調整手段A,Bを介して接続されてサブユニット輝度調整手段A,Bを調整可能とする表示階調解析手段SAMを含み、
表示階調解析手段SAMは、各発光ダイオードLEDを制御可能な輝度情報A,Bをサブユニット輝度調整手段A,Bに入力して、これにより各発光ダイオードの電流を調整し、
表示階調解析手段SAMが、異なる輝度情報A,Bをサブユニット輝度調整手段A,Bに入力してサブユニット輝度調整手段A,Bからサブユニット毎に個別的に調整された電流を各発光ダイオードLEDへ供給してそれぞれ輝度を調整可能な、発光ダイオードLEDを用いたバックライトユニット装置。」

(2) 刊行物2の記載内容
(ア) 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は液晶ユニット用のバックライト装置の構造と輝度品質の改善に係り、特に構造の薄型化とチラツキをなくす改善技術に関する。」
(イ) 「【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明では、例えば図1に示すように、光源としての発光ダイオード素子3を内蔵しチップ化したチップLED2をプリント基板1上に2次元配置に実装した構造体を、例えば図3に示すように、液晶パネル10の背面に設けたバックライト構造体31と、該バックライト構造体31のチップLEDを、例えば図4に示すように、並列接続した回路構成に給電する直流電源を備えることとする。」
(ウ) 「【0009】これらの何れの場合においても、例えば図6に示すように、発光ダイオードを実装する基板上に、明るさを調整する調光用回路を併せて実装し、あるいはさらに、同一基板に液晶パネルの駆動回路を実装すれば、全体を一層小形化、薄型化でき好ましい。」
(エ)「【0013】
【実施例】図1は、液晶パネルの背面のバックライト構造体の薄型化の1実施例を示すもので、特にチップLEDを実装した実施例である。図1(1)に実装構造体の斜視図を示し、図1(2)に、実装するチップLEDの断面図を示す。プリント基板1の配線パタン上に2次元配置にチップLED2を実装する。チップLEDの一方の電極は、チップ基板の1つの電極に接続し、チップLEDの他方の電極は、チップ基板のもう1つの電極にワイヤボンディングし、その上から樹脂で固める。チップの厚さは2?3mmである。これにより従来より薄型化することができる。またLEDを用いることにより冷陰極管より長寿命化が図れる(冷陰極管の寿命は25℃で10000時間、LEDは25℃で30000時間)。」
(オ) 「【0018】図6はチップLEDを用いたバックライト構造体に調光用回路を実装させた実施例を示す。従来は冷陰極管と駆動回路とは別であったが、LED実装基板に調光用回路を実装し一体化した例である。これにより薄型化、小形化できる利点がある。さらに液晶パネルの駆動回路を併せて実装すれば一層効果的になる。」

3. 本願補正発明と引用発明との対比
(1) 両発明の対応関係
・引用発明における「多数の発光ダイオードLED」は、本願補正発明における「複数の発光ダイオード」に相当するものである。以下同様に、「表示階調解析手段SAM」は「制御部」に、「輝度」は「明度」、「入力」は「伝送」、「発光ダイオードLEDを用いたバックライトユニット装置」は「発光ダイオードバックライト装置」にそれぞれ相当するものである。

・引用発明における「並設」は、本願補正発明における「実装」に相当する構成である。

・引用発明の「基板と、基板上に並設される多数の発光ダイオードLEDと、」と、本願補正発明の「プリント基板と、前記プリント基板上に実装される複数の発光ダイオードと、」とは、「基板と、基板上に実装される複数の発光ダイオード」である点で共通している。

・引用発明の「各発光ダイオードLEDを駆動させる複数のサブユニット輝度調整手段A,Bと、」と、本願補正発明の「同じプリント基板上に実装されて各発光ダイオードを駆動させる複数の駆動素子と、」とは、引用発明の「サブユニット調整手段A,B」と本願補正発明の「駆動素子」が共に「駆動手段」を構成しているから、両者は「各発光ダイオードを駆動させる複数の駆動手段」である点で共通している。

・引用発明の「バックライトユニットBLUにサブユニット輝度調整手段A,Bを介して接続されてサブユニット輝度調整手段A,Bを調整可能とする表示階調解析手段SAMを含み、」と、本願補正発明の「プリント基板に電気的に接続されて各駆動素子を制御する制御部」とは、「各駆動手段を制御する制御部」である点で共通している。

・引用発明の「表示階調解析手段SAMは、各発光ダイオードLEDを制御可能な輝度情報A,Bをサブユニット輝度調整手段A,Bに入力して、これにより各発光ダイオードの電流を調整し、」と、本願補正発明の「制御部は、各発光ダイオードを制御するためのパルス幅変調(PWM)信号を駆動素子に伝送して、これにより各発光ダイオードの電流をデュ-ティ制御し、」とは、引用発明の「輝度情報A,B」と本願補正発明の「パルス幅変調(PWM)信号」とが、共に電気回路における「信号」の一形態であるといえるものであるので、両者は「制御部は、各発光ダイオードを制御するための信号を駆動手段に伝送して、これにより各発光ダイオードの電流を制御する」構成である点で共通している。

・引用発明の「表示階調解析手段SAMが、異なる輝度情報A,Bをサブユニット輝度調整手段A,Bに入力してサブユニット輝度調整手段A,Bからサブユニット毎に個別的に調整された電流を各発光ダイオードLEDへ供給してそれぞれ輝度を調整可能な、」構成と、本願補正発明の「制御部は、異なる信号及び個別的に制御された電流を各発光ダイオードに供給して、これによりそれぞれ明度を制御する」構成とは、「制御部は、異なる信号及び個別的に制御された電流を各発光ダイオードに供給して、これによりそれぞれ明度を制御する」という構成である点で共通している。

(2) 両発明の一致点
「基板と、
基板上に実装される複数の発光ダイオードと、
各発光ダイオードを駆動させる複数の駆動手段と、
各駆動手段を制御する制御部と、
制御部は、各発光ダイオードを制御するための信号を駆動手段に伝送して、これにより各発光ダイオードの電流を制御し、
制御部は、異なる信号及び個別的に制御された電流を各発光ダイオードに供給して、これによりそれぞれ明度を制御する、
発光ダイオードバックライト装置。」

(3) 両発明の相違点
(ア) 「基板」の構成について、本願補正発明の「基板」は、「プリント基板」であるのに対し、引用発明の「基板」は、「プリント基板」と特定されていない点(以下「相違点(ア)」という。)。

(イ) 「駆動手段」の構成について、本願補正発明の「駆動手段」は、「プリント基板上に実装」された「素子」であるのに対し、引用発明の「サブユニット輝度調整手段A,B」は、「素子」であるか不明であり、かつ、「プリント基板」上に実装されているか不明である点(以下「相違点(イ)」という。)。

(ウ) 「制御部」の構成について、本願補正発明の「制御部」は、プリント基板に電気的に接続された構成であるが、引用発明の「表示階調解析手段SAM」は、そのような構成であるか不明である点(以下「相違点(ウ)」という)。

(エ) 「信号」の構成について、本願補正発明の「信号」は「パルス幅変調(PWM)信号」であるのに対し、引用発明の「信号」は、「輝度情報A,B」であって、信号の形態を「パルス幅変調(PWM)信号」と特定したものではない点(以下「相違点(エ)」という。)。

4. 容易推考性の検討
(1) 上記相違点(ア)について
上記刊行物2の記載事項(イ)における「光源としての発光ダイオード素子3を内蔵しチップ化したチップLED2をプリント基板1上に2次元配置に実装した構造体を、」という構成、及び記載事項(エ)における「プリント基板1の配線パタン上に2次元配置にチップLED2を実装する。」という構成から、刊行物2には、発光ダイオード3を内蔵したチップLED2を実装する基板としてプリント基板1を用いた構成が記載されているということができる。
上記引用発明において、前記刊行物2に記載の構成に基づき、基板をプリント基板とし、本願補正発明における上記相違点(ア)に係る構成とすることは当業者が適宜設定し得た設計的事項である。

(2) 上記相違点(イ)について
上記刊行物2の記載事項(ウ)に記載の構成、及び第5、6図面の図示内容から、発光ダイオードを実装するプリント基板上に、調光用回路としてのトランジスタ及びICを実装した構成が記載されているということができる。
なお、前記「トランジスタ」及び「IC」は、「素子」の一形態であると言える。

上記引用発明における「サブユニット輝度調整手段A,B」と、前記刊行物2に記載の「調光用回路」は、共に発光ダイオードの明るさを調整する手段であるから、上記引用発明における「サブユニット輝度調整手段A,B」を具体化する上で、前記刊行物2に記載されているような、プリント基板上に実装したトランジスタ、IC等の「素子」で構成し、本願補正発明における上記相違点(イ)に係る構成とすることは当業者が容易になし得た具体化手段であるということができる。

(3) 上記相違点(ウ)について
刊行物1に記載のバックライトユニット装置において、表示階調解析手段SAMからサブユニット輝度調整手段に対して輝度情報A,Bを伝える手段を、電気的な信号回路として構成することは当業者であれば適宜なし得た慣用手段であると認めらられる。
また、上記(2)に記載のごとく、引用発明における「サブユニット輝度調整手段A,B」と刊行物2の「調光用回路」は、共に発光ダイオード明るさを調整する点で共通するものであり、刊行物2のトランジスタ、IC等の「素子」が「調光用回路」の構成要素であることを考慮すると、上記(2)において検討した刊行物2に記載の、プリント基板上に調光用回路としてのトランジスタ及びICなどの駆動素子を配置した構成を採用するに際して、引用発明において、サブユニット輝度調整手段A,Bに接続される表示階調解析手段SAM(すなわち制御部)を、プリント基板に電気的に接続する構成とすることは当業者が容易になし得たことと認められる。
よって、本願補正発明における上記相違点(ウ)に係る構成は当業者が容易になし得た構成であるということができる。

(4) 上記相違点(エ)について
発光ダイオードの出力、明るさ、輝度等を制御する電気的な信号として、パルス幅変調信号又はPWM信号は従来より周知な信号であるといえる(必要であれば、特開2004-6253号公報;段落【0021】、【0022】等参照、特開2001-57294号公報;段落【0024】、【0028】等参照)。
上記引用発明において、「輝度情報A,B」を具体化する上で、上記従来周知のパルス幅変調信号又はPWM信号によって構成し、本願補正発明における上記相違点(エ)に係る発明とすることは当業者が適宜設定し得た具体化手段であるということができる。

(5) まとめ
本願補正発明の作用効果は、引用発明、刊行物2に記載の技術事項、及び上記周知技術から、当業者であれば予測できた範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明、刊行物2に記載の技術事項、及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5. むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものというべきであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。よって、上記「補正却下の決定の結論」の通り決定する。

第3 本願発明について
1. 本願発明
平成20年10月 9日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の各請求項に係る発明は、平成20年 5月19日付けで手続補正された明細書における特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項によって特定されるものと認められるが、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
プリント基板と、
前記プリント基板に実装される複数の発光ダイオードと、
前記プリント基板に実装されて前記各発光ダイオードを駆動させる複数の駆動素子と、
前記プリント基板に電気的に接続されて前記各駆動素子を制御する制御部を含み、
前記制御部は、前記各発光ダイオードを制御するためのパルス幅変調(PWM)信号を前記駆動素子に伝送して、これにより前記各発光ダイオードの電流をデュ-ティ制御し、
前記制御部は、異なる信号及び個別的に制御された電流を前記各発光ダイオードに供給して、これによりそれぞれ明度を制御する
ことを特徴とする発光ダイオードバックライト装置。」

2. 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1、2とその記載事項は、前記の「第2 2.」に記載したとおりである。

3. 対比・判断
本願発明の構成を全て含むとともに、当該発明の構成に更に限定を付加した本願補正発明が、前記「第2 3.」以下に記載したとおり、引用発明、刊行物2に記載の技術事項及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明の上位概念発明である本願発明も、本願補正発明と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

4. むすび
以上のとおりであるから、本願発明(請求項1に係る発明)については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-30 
結審通知日 2009-10-05 
審決日 2009-10-19 
出願番号 特願2005-314692(P2005-314692)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F21S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鳥居 稔  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 中川 真一
渡邉 洋
発明の名称 発光ダイオードバックライト装置及びこれを備えた液晶表示装置  
代理人 越智 隆夫  
代理人 朝日 伸光  
代理人 加藤 伸晃  
代理人 岡部 讓  
代理人 岡部 正夫  
代理人 臼井 伸一  

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