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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1212696 |
審判番号 | 不服2008-23572 |
総通号数 | 124 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-04-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-09-16 |
確定日 | 2010-03-03 |
事件の表示 | 特願2001-320632「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月22日出願公開、特開2003-117148〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯等 本願は、平成13年10月18日の出願であって、平成19年12月28日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成20年3月14日付けで手続補正がされ、平成20年8月12日付けで拒絶査定がされ、これに対し平成20年9月16日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がされたものである。 第2.平成20年9月16日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年9月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「遊技者にとって有利な第1状態と、遊技者にとって不利な第2状態とに変動可能な変動入賞装置と、 左、中及び右からなる3桁の識別情報及び適宜のキャラクタを変動表示可能な表示装置と、 前記表示装置に表示された左、中及び右の桁の識別情報がそれぞれ同一である場合、前記変動入賞装置を第1状態に変動させる制御手段と、 前記表示装置に一旦停止して表示された前記左の桁の識別情報と前記右の桁の識別情報とが相異し、かつ前記左の桁または前記右の桁のいずれか一方の桁の識別情報と一旦停止した前記中の桁の識別情報とが同一である場合、前記表示装置に表示された前記適宜のキャラクタの動作に関連して、前記いずれか一方の桁の識別情報と同一の識別情報を、増殖して表示させるとともに、前記左または前記右のいずれか他方の桁に表示された識別情報を消去し、前記いずれか他方の桁に、前記増殖して表示された前記識別情報を表示させることによって、前記3桁の識別情報をそれぞれ同一とする表示態様を表示させる制御を実行する表示制御手段と、を備えることを特徴とする遊技機。」(以下、「本願補正発明」という。)と補正された。 上記補正は、(1)補正前の請求項1の「複数桁の識別情報」との記載を「左、中及び右からなる3桁の識別情報」と限定するものであり、(2)同「表示可能な表示装置」を「変動表示可能な表示装置」と限定するものであり、(3)同「前記複数桁の識別情報が予め定められた特定の表示態様である場合」を「前記表示装置に表示された左、中及び右の桁の識別情報がそれぞれ同一である場合」と限定するものであり、(4)表示制御手段が増殖表示させる条件として「前記表示装置に一旦停止して表示された前記左の桁の識別情報と前記右の桁の識別情報とが相異し、かつ前記左の桁または前記右の桁のいずれか一方の桁の識別情報と一旦停止した前記中の桁の識別情報とが同一である場合、」と限定を付すものであり、(5)同「前記所定の桁とは異なる他の桁に表示された識別情報を消去し、」を「前記左または前記右のいずれか他方の桁に表示された識別情報を消去し、」と限定するものであり、(6)同「かつ前記他の桁に、前記増殖表示された前記識別情報を表示させる」を「前記いずれか他方の桁に、前記増殖して表示された前記識別情報を表示させることによって、前記3桁の識別情報をそれぞれ同一とする表示態様を表示させる」と限定するものである。また、(7)補正前の請求項1の「前記複数の桁のうち所定の桁の前記識別情報を、前記所定の桁に表示された識別情報と同一の識別情報に増殖表示させる」を「前記いずれか一方の桁の識別情報と同一の識別情報を、増殖して表示させる」との補正は、限定するものでも、明りょうでない記載を正すものでもないが、補正された他の記載との整合を図るためのものであり、発明を実質的に変更するものでもないので不問とする。 そうすると、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(上記改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.引用文献について 原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-161953号公報(公開日:平成13年6月19日)(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。 ・記載事項1 「【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は遊技盤10の模式的な説明図である。遊技盤10の略中央部には、独立して数字やキャラクタによる図柄で構成される識別情報を横一列(または縦一列等)の配列パターンで停止表示および変動表示可能である表示エリアを備える特別図柄表示装置100が配設されており、」(段落【0009】) ・記載事項2 「そして、特別図柄始動口104に遊技玉が入賞されて乱数抽選が行われ、この抽選された乱数が大当り値である時には、表示エリアにおいて少なくとも1つの識別情報の変動表示が開始されその後、所定パターン(例えば「7、7、7」)の表示が特別図柄表示装置100によって行われ、大入賞口106が所定パターンで開閉制御されて遊技者にとって有利な大当り遊技状態となる。」(段落【0011】) ・記載事項3 「また、主制御部200には、出力ポート215を介して、特別図柄やキャラクタを表示する表示エリアを備え、夫々を独立して可変表示可能でLCD等で実現される特別図柄表示装置100、・・・大入賞口106の幅広な開閉部材を開閉制御するための大入賞口作動ソレノイド302が接続され、主制御部200は各装置を制御するための制御信号を送信可能となっている。そして、主制御部200は、特に特別図柄表示装置100に対しては所定数個の表示制御用のコマンドを所定のタイミングで送信可能となっていて、特別図柄表示装置100は受け取ったコマンドに基いて、主制御部200に頼らずに自身内のCPUが細かな表示制御を行うようになっている。」(段落【0015】) ・記載事項4「図3は、特別図柄表示装置100のブロック構成図である。特別図柄表示装置100は、主制御部200からのストローブ信号やコマンドを受信するためのデータ受信回路1140(データレベルを変換する電圧変換回路を含む)と、・・・受信したコマンドに基づいて表示制御を行うために必要な制御データを生成して画像処理用LSI(VDP)1060に出力するCPU1020(表示制御手段)と、CPU1020の動作手順を記述したプログラムを内蔵するプログラムROM1040・・とを有している。」(段落【0019】) ・記載事項5 「次に、まず、主制御部200や特別図柄表示装置100のCPU1020が行う通常の制御動作を図10(遊技制御のゼネラルフローチャート)や図11を参照して説明し、その後、タイミングチャートや模式的説明図を参照して本発明の特徴的な表示制御について説明して本発明の理解の容易化に努める。なお、図10に示す一連の処理は主制御部200が実行するが、リセット回路213から所定時間(例えば4msec)毎に供給されるリセット信号をトリガとして先頭のステップから実行する。」(段落【0023】) ・記載事項6 「そして、ステップS180において、・・・特別図柄表示装置100の表示制御に必要なコマンド(先に図6乃至図9にて説明したコマンドを含む)をRAM203の所定領域に格納して、前記各種のタイマのタイマ値を減じる(ステップS190)。」(段落【0028】) ・記載事項7 「次に、ステップS195において、大入賞口106と特別図柄始動口104の開閉部材120とを所定パターンで開閉制御するために、始動口作動ソレノイド300と大入賞口作動ソレノイド302とを駆動制御し、」(段落【0029】) ・記載事項8 「次に、ステップS260では、各処理でRAM203に格納したデータを出力ポート215を介して対応する装置に出力し(ポート出力処理)、これを受け取った装置側はこれに基づいた制御動作を行う。そして、特別図柄表示装置100に対して、まず、ストローブ信号を出力し、ステップS180にてRAM203に格納されたモード、イベントのデータを先に図5に示したようにして送信する。これによって、特別図柄表示装置100には、例えば図6乃至図9にて示したコマンドや図示しないキャラクタを指定するコマンドが、主制御部200から送信され、受信することになる。」(段落【0030】) ・記載事項9 「(第4の実施の形態)この実施の形態では、図柄とキャラクタとを対応付けたものを表示しておき、例えばリーチ時に、この図柄とキャラクラとを対応付けたもの同士が所定のアクションをするように表示制御する点に特徴がある。CPU1020は、図20(a)に示すように、左図柄、中図柄、右図柄(図20(a)の例では「7、8、5」)の各図柄と人間の形のキャラクタ4000とを対応付けたもの、より具体的には、キャラクタの頭部を図柄としたものを表示する。次に、リーチ状態となったとする。この場合には、左図柄、右図柄が共に「7」となって中図柄が変動している。この時、CPU1020は、頭部を中図柄とするキャラクタを2つ登場させて、互いに出目となることを邪魔し合うようなアクションを表示させる(図20(b))。この例では、出目が「777」になると大当りとなるので、中図柄「8」を頭部に持つキャラクタ4001を突然登場させて、中図柄「7」を頭部に持つキャラクタ4002を邪魔するようなアクション表示をさせる。次に、CPU1020は、キャラクタ4001に邪魔されて一旦表示エリアから消滅させられていたキャラクタ2002が、今度はキャラクタ2001を攻撃するようにアクション表示をさせる(図20(c))。そして、CPU1020は、最終的に出目で停止表示をさせる。」(段落【0050】) 以上を含む全記載及び図示によれば、「第4の実施の形態」を採用して整理すると、引用文献には次の発明が記載されていると認められる。 「特別図柄表示装置100に表示された図柄が「777」になると、所定パターンで開閉制御されて遊技者にとって有利な大当り遊技状態となる大入賞口106と、 左図柄、中図柄、右図柄を変動表示可能かつ、キャラクタを表示可能な特別図柄表示装置100と、 大入賞口106を所定パターンで開閉制御するために大入賞口作動ソレノイド302を駆動制御する主制御部200と、 左図柄、右図柄が共に「7」となって中図柄が変動している時、中図柄「8」を頭部に持つキャラクタ4001を突然登場させて、中図柄「7」を頭部に持つキャラクタ4002が出目となることを邪魔するようなアクション表示をさせ、キャラクタ4001に邪魔されて一旦表示エリアから消滅させられていたキャラクタ4002が、今度はキャラクタ4001を攻撃するようにアクション表示をさせ、最終的に出目(「777」)で停止表示をさせるように、表示制御させるCPU1020(表示制御手段)と、を備える遊技機。」(以下、「引用発明」という。) なお、上記記載事項9において、「キャラクタ2001」及び「キャラクタ2002」との記載は明らかな誤記で、正しくは「キャラクタ4001」及び「キャラクタ4002」であることは明らかであるため、上記「引用発明」の認定においては修正した上で記載した。 3.対比 本願補正発明と引用発明を対比する。 引用発明の「大入賞口106」は本願補正発明の「変動入賞装置」に相当し、以下同様に、「左図柄、中図柄、右図柄」は「左、中及び右からなる3桁の識別情報」及び「左、中及び右の桁の識別情報」に、「特別図柄表示装置100」は「表示装置」に、「主制御部200」は「制御手段」に、「CPU1020(表示制御手段)」は「表示制御手段」にそれぞれ相当する。 そして、引用発明について次のことがいえる。 (1)「所定パターンで開閉制御されて遊技者にとって有利な大当り遊技状態」は本願補正発明の「遊技者にとって有利な第1状態」に相当することは明らかである。また、遊技機において「大当り遊技状態」以外の状態すなわち通常状態が存在することは常識であって、引用発明にも「大当り状態」でない時には通常状態となることは当然のことであり、この通常状態は「遊技者にとって不利な第2状態」に相当する。 そうすると、引用発明は、本願補正発明の「遊技者にとって有利な第1状態と、遊技者にとって不利な第2状態とに変動可能な変動入賞装置」に相当する構成を実質的に具備するものである。 (2)特別図柄表示装置100に可変表示されるキャラクタは演出効果を考慮しつつ「適宜」なものを用いればよいものであり、本願補正発明のようにキャラクタを動作させることを「変動表示」という以上、上記相当関係を踏まえると、引用発明は、本願補正発明の「左、中及び右からなる3桁の識別情報及び適宜のキャラクタを変動表示可能な表示装置」に相当する構成を実質的に具備するものである。 (3)引用発明においては、大入賞口106が所定パターンで開閉制御されるのは「777」が表示された場合、すなわち「前記表示装置に表示された左、中及び右の桁の識別情報」が「7」の場合であって、これ以外の図柄が揃った場合に同様に制御されるか不明である。これに対し、本願補正発明は、「前記変動入賞装置を第1状態に変動」するのは「前記表示装置に表示された左、中及び右の桁の識別情報がそれぞれ同一である場合」である。そうすると、具体的な「特定の表示パターン」は別なものであるとしても、引用発明と本願補正発明は、「表示装置に表示された左、中及び右の桁の識別情報が特定の表示パターンである場合、変動入賞装置を第1状態に変動させる」を有するという点で共通している。 また、引用発明において、主制御部200は「大入賞口106を所定パターンで開閉制御するために大入賞口作動ソレノイド302を駆動制御する」ものであるから、「変動入賞装置を第1状態に変動させる」のは主制御部200である。 (4)「左図柄、右図柄が共に「7」となって中図柄が変動している時、中図柄「8」を頭部に持つキャラクタ4001を突然登場させて、中図柄「7」を頭部に持つキャラクタ4002を邪魔するようなアクション表示をさせ、キャラクタ4001に邪魔されて一旦表示エリアから消滅させられていたキャラクタ4002が、今度はキャラクタ4001を攻撃するようにアクション表示をさせ、最終的に出目(「777」)で停止表示をさせる」を整理すると、次のような演出が行われていることが明らかである。 (A)左図柄、右図柄が共に「7」で停止し、中図柄が変動。 (B)中列に中図柄「7」を頭部に持つキャラクタ4002が表示。 (C)中図柄「8」を頭部に持つキャラクタ4001を突然登場させて、中図柄「7」を頭部に持つキャラクタ4002を邪魔する表示。 (D)中図柄「7」を頭部に持つキャラクタ4002が中図柄「8」を頭部に持つキャラクタ4001に邪魔されて一旦表示エリアから消滅。 (E)一旦表示エリアから消滅させられていた中図柄「7」を頭部に持つキャラクタ4002が表示エリアに登場し、今度は中図柄「8」を頭部に持つキャラクタ4001を攻撃するようにアクション表示。 (F)最終的に出目(「777」)で停止表示(中図柄「8」を頭部に持つキャラクタ4001が消去される)。 ここで、(D)の段階では、中図柄「7」を頭部に持つキャラクタ4002は一旦表示エリアから消滅させられるから、特別図柄表示装置100には図柄として「787」の表示が行われており、「特別図柄表示装置100に表示された左図柄と中図柄が相違し、かつ左図柄と右図柄とが同一の場合」を表示しているということができる。 次の(E)の段階では、一旦表示エリアから消滅させられていた中図柄「7」を頭部に持つキャラクタ4002が表示エリアに登場するから、左右の図柄と同一の図柄である図柄「7」が「増殖」するということができる。このような増殖は「攻撃するようにアクション表示」とともに行われるから、「適宜のキャラクタ動作に関連して」行われるということができる。なお、「増殖」という語句は当該技術分野における技術用語として必ずしも明確ということができないため、広辞苑(第6版)を参照すると「ふえて多くなること。ふやして多くすること。」とされているから、上記のように表示エリアに中図柄「7」を頭部に持つキャラクタ4002が登場して「7」がふえて多くなることを「増殖」ということができる。そうすると、(E)の段階では「特別表示装置100に表示された適宜のキャラクタの動作に関連して、左右の図柄と同一の図柄を、増殖して表示させる」ことが行われているということができる。 更に、(F)の段階では、中図柄「8」を頭部に持つキャラクタ4001が消去されるから、中図柄「8」を消去し、増殖して表示された「7」を中図柄として表示させることによって、「777」を表示させる、すなわち左中右図柄をそれぞれ同一とする表示が行われているということができる。 上記表示は表示制御手段であるCPU1020が制御していることを踏まえ、以上を総合すると、引用発明は「特別図柄表示装置100に表示された左図柄と中図柄が相違し、かつ左図柄と右図柄とが同一の場合、特別表示装置100に表示された適宜のキャラクタの動作に関連して、左右の図柄と同一の図柄を、増殖して表示させるとともに、中図柄を消去し、増殖して表示された図柄を中図柄として表示させることによって、左中右図柄をそれぞれ同一とする表示態様を表示させる制御を実行する表示制御手段」を実質的に具備するということができる。 そうすると、引用発明の図柄が表示される領域は本願補正発明の「桁」に相当するから、引用発明と本願補正発明は、「表示装置に表示された、3つの桁のうち2つの桁の識別情報が同一であり、残りの1つの桁の識別記号が前記2つの桁の識別情報と相異している場合、表示装置に表示された適宜のキャラクタの動作に関連して、前記2つの桁の識別情報と同一の識別情報を、増殖して表示させると共に、前記1つの桁に表示された識別情報を消去し、その桁に、増殖して表示された識別情報を表示させることにより、3桁の識別情報をそれぞれ同一とする表示態様を表示させる制御を実行する表示制御手段を備える」という点で共通している。 そうすると、両者は、 「遊技者にとって有利な第1状態と、遊技者にとって不利な第2状態とに変動可能な変動入賞装置と、 左、中及び右からなる3桁の識別情報及び適宜のキャラクタを変動表示可能な表示装置と、 表示装置に表示された左、中及び右の桁の識別情報が特定の表示パターンである場合、変動入賞装置を第1状態に変動させる制御手段と、 表示装置に表示された、3つの桁のうち2つの桁の識別情報が同一であり、残りの1つの桁の識別記号が前記2つの桁の識別情報と相異している場合、表示装置に表示された適宜のキャラクタの動作に関連して、前記2つの桁の識別情報と同一の識別情報を、増殖して表示させると共に、前記1つの桁に表示された識別情報を消去し、その桁に、増殖して表示された識別情報を表示させることにより、3桁の識別情報をそれぞれ同一とする表示態様を表示させる制御を実行する表示制御手段を備える遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 変動入賞装置を第1状態に変動させる契機となる特定の表示パターンが、本願補正発明では左、中及び右の桁の識別情報が同一であるのに対し、引用発明では「777」である点。 <相違点2> 「3つの桁のうち2つの桁の識別情報が同一であり、残りの1つの桁の識別記号が前記2つの桁の識別情報と相異している場合」における各「識別情報」が、本願補正発明では、「一旦停止し」たものであるのに対し、引用発明では不明である点。 <相違点3> 「3つの桁のうち2つの桁」が、本願補正発明では「左の桁または右の桁のいずれか一方の桁」及び「中の桁」であるのに対し、引用発明では「左図柄」が表示される領域及び「右図柄」が表示される領域であり、「1つの桁」が、本願補正発明では「左または右のいずれか他方の桁」であるのに対し、引用発明では「中図柄」が表示される領域である点。 <相違点4> 増殖して表示させる識別情報が、本願補正発明では、「いずれか一方の桁の識別情報と同一」のものであるのに対し、引用発明では左右の図柄と同一のものである点。 4.判断 上記各相違点について検討する。 <相違点1>について 引用発明では「777」以外の表示パターンで大当りとなるか不明である。 しかし、遊技機において、特定の識別情報に限ることなく、図柄列中にある識別情報が左、中及び右の桁において同一であれば大当りとすることは慣用手段である。 そうすると、相違点1に係る構成は引用発明も当然具備しているか、あるいは引用発明においてこの構成を採用することは単なる設計事項に過ぎない。 <相違点2>について 遊技機において、演出が変化する段階で識別記号を可変表示中に一旦停止させることは、「仮停止」とも呼ばれるように、従来周知の技術手段であり、必要に応じて適宜採用されていることである。 そうすると、引用発明において、増殖する演出を行うに当たって、図柄を一旦停止させ、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者にとって想到容易である。 <相違点3、4>について 相違点3及び相違点4についてはあわせて検討する。 本願補正発明と引用発明が「3つの桁のうち2つの桁の識別情報が同一であり、残りの1つの桁の識別記号が前記2つの桁の識別情報と相異している場合、前記2つの桁の識別情報と同一の識別情報を、増殖して表示させると共に、前記1つの桁に表示された識別情報を消去し、その桁に、増殖して表示された識別情報を表示させる」点で共通していることは前述の通りであるが、相違点3は、結局のところ、「2つの桁」及び「1つの桁」を左中右のどの桁にするかによって生じたものである。 考え得るその組み合わせは次のとおりである。 (A)「2つの桁」が「左の桁」と「右の桁」、「1つの桁」が「中の桁」 例えば、「787」から変動して「777」になるもので、引用発明が該当。 (B)「2つの桁」が「左の桁」と「中の桁」、「1つの桁」が「右の桁」 例えば、「778」から変動して「777」になるもので、本願補正発明(実施例も)が該当。 (C)「2つの桁」が「右の桁」と「中の桁」、「1つの桁」が「左の桁」 例えば、「877」から変動して「777」になるもので、本願補正発明が該当。 ここで、いずれであっても、「2つの桁」の識別情報は同一のものとなることでリーチを形成するものであり、「1つの桁」の識別情報は最後に確定されて上記「2つの桁」の識別情報と同一のものとなることで大当りを表示するものであるが、「1つの桁」は左中右のどの桁になったとしても、最後に確定して大当りの表示を行うという作用に差異はない。 また、従来、遊技機において、「中の桁」を最後に確定すること(引用文献参照)、「右の桁」を最後に確定すること(特開2001-120760号公報参照)、「左の桁」を最後に確定すること(特開2000-14886号公報(段落0085)参照)は、いずれも周知技術であって、どれを遊技機に採用するかは適宜決定されていることにすぎない。 そうすると、どの桁を最後に確定するものとするかは適宜決定すればいい事項であるから、引用発明において、「左図柄」が表示される領域及び「右図柄」が表示される領域を「左図柄が表示される領域または右図柄が表示される領域のいずれか一方の領域」及び「中図柄が表示される領域」に代え、「中図柄」が表示される領域を「左図柄が表示される領域または右図柄が表示される領域のいずれか他方の領域」に代えることにより、相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者にとって想到容易である。 そして、上記のように、「左図柄」が表示される領域及び「右図柄」が表示される領域を「左図柄が表示される領域または右図柄が表示される領域のいずれか一方の領域」及び「中図柄が表示される領域」に代えた場合、増殖して表示させる識別情報は「いずれか一方の領域の識別情報と同一」となることは明らかであるから、相違点4に係る本願補正発明の構成とすることも、当業者にとって想到容易である。 そして、本願補正発明の効果は、引用発明、上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明、上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、上記改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項で準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明の認定 平成20年9月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年3月14日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「遊技者にとって有利な第1状態と、遊技者にとって不利な第2状態とに変動可能な変動入賞装置と、 複数桁の識別情報及び適宜のキャラクタを表示可能な表示装置と、 前記複数桁の識別情報が予め定められた特定の表示態様の場合、前記変動入賞装置を第1状態に変動させる制御手段と、 前記表示装置に表示された前記適宜のキャラクタの動作に関連して、前記複数桁のうち所定の桁の前記識別情報を、前記所定の桁に表示された識別情報と同一の識別情報に増殖表示させるとともに、前記所定の桁とは異なる他の桁に表示された識別情報を消去し、かつ前記他の桁に、前記増殖表示された前記識別情報を表示させる制御を実行する表示制御手段と、を備えることを特徴とする遊技機。」 2.本願発明の進歩性の判断 (1)引用文献 拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2の2.に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から、前記「第2.」「1.補正後の本願発明」で記載した各限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.」「4.判断」に記載したとおり、引用発明、上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-12-14 |
結審通知日 | 2009-12-22 |
審決日 | 2010-01-07 |
出願番号 | 特願2001-320632(P2001-320632) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 渡辺 剛史 |
特許庁審判長 |
伊藤 陽 |
特許庁審判官 |
池谷 香次郎 吉村 尚 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 竹沢 荘一 |
代理人 | 中馬 典嗣 |