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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1212779
審判番号 不服2007-18708  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-05 
確定日 2010-03-04 
事件の表示 特願2002-369636「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月15日出願公開、特開2004-195901〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年12月20日の出願であって、平成18年5月30日付けで通知した拒絶理由に対して、同年8月2日付けで手続補正書が提出され、平成19年1月22日付けで再度通知した最後の拒絶理由に対して、同年3月27日付けで手続補正書が提出されたが、同年5月28日付けで、同年3月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされたものである。
これに対して、同年7月5日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月30日付けで手続補正書が提出され、その後平成21年6月10日付けでなされた審尋に対し、同年8月10日付けで回答書が提出されたものである。

2.平成19年7月30日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成19年7月30日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正事項
平成19年7月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正前の平成18年8月2日付け手続補正書により補正された、

「【請求項1】 原稿を読み取って当該原稿に対応する画像データを作成する読み取り手段を備え、所定の情報処理装置に接続可能に構成された画像形成装置において、所定の操作指示を受け付けるための操作手段と、所定のプログラムを実行することにより前記画像形成装置全体の動作を制御する制御手段と、少なくともデバイスドライバプログラムと前記デバイスドライバプログラムを前記情報処理装置へインストールするための第1の設定情報を記入する第1のフォームの画像データとを記憶する記憶手段と、前記操作手段からの指示情報に基づいて前記第1のフォームの画像を形成する画像形成手段と、前記情報処理装置にデータ情報を送信する通信手段とを備え、前記制御手段は、前記通信手段を介して、前記デバイスドライバプログラムと、前記読み取り手段によって読み込まれた前記第1のフォームの画像データから抽出された前記第1の設定情報に基づいて、前記デバイスドライバプログラムを前記情報処理装置にインストールさせるインストール情報とを送信可能とされていることを特徴とする画像形成装置。」

から、

「【請求項1】 原稿を読み取って当該原稿に対応する画像データを作成する読み取り手段を備え、所定の情報処理装置に接続可能に構成された画像形成装置において、所定の操作指示を受け付けるための操作手段と、所定のプログラムを実行することにより前記画像形成装置全体の動作を制御する制御手段と、少なくともデバイスドライバプログラムと前記デバイスドライバプログラムを前記情報処理装置へインストールするための第1の設定情報を記入する第1のフォームの画像データと前記デバイスドライバプログラムを前記情報処理装置へインストールするためのインストールプログラムとを記憶する記憶手段と、前記操作手段からの指示情報に基づいて前記第1のフォームの画像を形成する画像形成手段と、前記情報処理装置にデータ情報を送信する通信手段とを備え、前記制御手段は、前記通信手段を介して、前記デバイスドライバプログラムと、前記読み取り手段によって読み込まれた前記第1のフォームの画像データから抽出された前記第1の設定情報に基づいて、前記デバイスドライバプログラムを前記インストールプログラムによって前記情報処理装置にインストールさせるインストール情報とを送信可能とされていることを特徴とする画像形成装置。」

に補正された。

なお、平成19年3月27日付けの手続補正書は、平成19年5月28日付けで、決定をもって却下されている。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するための事項である「記憶手段」に記憶する内容として、「第1のフォームの画像データ」に加えて、「前記デバイスドライバプログラムを前記情報処理装置へインストールするためのインストールプログラム」も記憶するという限定を付加し(補正事項a)、「デバイスドライバプログラム」を「情報処理装置にインストールさせるインストール情報」を送信する手段が、「インストールプログラム」であるという限定を付加(補正事項b)したものであるから、これらの補正事項a,bは、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)引用刊行物

(2-1)引用刊行物1
原査定の拒絶の理由において引用された特開2002-149363号公報(平成19年1月22日付け拒絶理由通知書における引用文献1、以下、「引用刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付与)。

(1-a)「【0010】図1は本発明の実施形態に係る情報処理システムの概略構成図である。図1において、画像処理装置1は、例えば、プリンタ、スキャナー或いはプリンタ機能とスキャナー機能を兼ね備えた複合機などによって構成されるものである。情報処理装置2は、パソコンやワークステーション等によって構成されるものである。本実施形態においては、画像処理装置1がプリンタで構成され、情報処理装置2がパソコンで構成された場合を例に挙げて説明する。
【0011】通信媒体3は、LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)等の通信網によって構成されるものである。通信媒体3には、一つの画像処理装置1と2つの情報処理装置2とが接続され、この通信媒体3を介して画像処理装置1と各情報処理装置2との間で双方向通信が可能となっている。また、一つの画像処理装置1を2つの情報処理装置2で共有して使用できる構成となっている。
【0012】図2は本実施形態における画像処理装置1の構成を示す機能ブロック図である。図2において、入力手段11は、ユーザが入力操作するためのUI(ユーザインタフェース)であり、例えば、表示パネル、各種のキー、スイッチ類によって構成されるものである。記憶手段12は、ハードディスク等によって構成されるものである。この記憶手段12には、各種の情報、データ、プログラムなどがファイルとして記憶され、そのなかの一つに、構成情報13とドライバプログラム14がある。」

(1-b)「【0022】上述のように記憶手段12に構成情報13とドライバプログラム14が記憶された状態で、トレイ構成が1段から4段に増設され、かつ両面プリントモジュールと増設メモリがそれぞれ装着されると、トレイの増設と両面プリントモジュールの装着が検知手段15によって自動的に検知される。ただし、増設メモリの装着については自動検知できないため、増設メモリが装着されたことを表す情報をユーザが入力手段11を介して入力する。
【0023】こうして検知手段15により自動検知された構成の変更内容及び入力手段11を介して入力された構成の変更内容は、更新手段16に与えられる。これにより更新手段16は、記憶手段12に記憶された構成情報13を、検知手段15及び入力手段11から与えられた構成の変更内容に応じて更新する。
【0024】即ち、記憶手段12に記憶された構成情報13に含まれる構成内容のうち、両面プリント機能の有無を「無し」から「有り」に書き換えるとともに、トレイの構成を「1段」から「4段」に書き換える。また、増設メモリの有無を「無し」から「有り」に書き換えるとともに、その増設メモリのバイト数を加算するかたちでメモリの総バイト数を書き換える。ちなみに、増設メモリを標準のメモリと差し替えた場合は、メモリの総バイト数を増設メモリのバイト数に書き換える。これにより、画像処理装置1においては、記憶手段12に記憶された構成情報13が、オプション装着等による装置構成の変更に応じて更新されることになる。
【0025】その後、画像処理装置1に対して、いずれかの情報処理装置2からドライバプログラムの送信要求(ダウンロード要求)が出されると、その送信要求を通信手段18で受信した後、受付手段19で受け付ける。そうすると、受付手段19から設定手段17に対して構成情報の設定指示がなされ、この設定指示を受けて設定手段17が構成情報13をドライバプログラム14に設定する。ちなみに、ドライバプログラム14への構成情報13の設定は、ドライバプログラム14を情報処理装置2に送信する前であれば、いずれの段階で行っても構わない。また、所定の処理(例えば、印刷処理)を実行している最中に、情報処理装置2からの送信要求を受け付けた場合は、その要求を拒否するメッセージを拒否の理由と合わせて返信(通知)する、或いは処理待ちの状態で待機させるなど、種々の対応をとることができる。
【0026】ドライバプログラム14には、前述したように画像処理装置1の構成情報を保持するためのファイルが存在し、ドライバプログラム14が記憶手段12に最初に記憶された段階では、上記ファイルの中身がデフォルトの設定になっている。そこで、上記設定手段17においては、先ほど更新した構成情報13をドライバプログラム14内のファイルに書き込む又はコピー(上書き)することにより、ドライバプログラム14に更新情報13を設定する。これにより、先ほど更新した構成情報13がドライバプログラム14に反映される。
【0027】こうして構成情報13が設定(反映)されたドライバプログラム14は、通信手段18によって要求元の情報処理装置2に送信(ダウンロード)される。これにより、ドライバプログラム14を受信した情報処理装置2では、当該ドライバプログラム14を自装置に組み込む(インストールする)ことにより、そのドライバプログラムを使用して画像処理装置1の動作を制御することが可能になる。また、画像処理装置1から送信されるドライバプログラム14には、画像処理装置1の構成の変更内容に応じて更新された構成情報13が既に設定されているため、情報処理装置2側ではドライバプログラムをインストールした後に当該ドライバプログラムの構成情報を設定し直す必要がなくなる。
【0028】その結果、情報処理装置2におけるドライバプログラムの構成情報の設定工数を削減することができるとともに、設定ミスの発生を確実に防止することができる。特に、共通の通信媒体3に接続された一つの画像処理装置1を複数(本形態では2つ)の情報処理装置2で共用するような情報処理システムにおいては、情報処理装置2ごとにドライバプログラムの構成情報を設定し直す作業が不要となるため、工数の削減効果が非常に大きなものとなる。
【0029】なお、上記実施形態においては、情報処理装置2が画像処理装置1にアクセスして所望のドライバプログラム14を取得する、いわゆるプル型のデータ取得方式を例示したが、これ以外にも、例えばユーザが入力手段11を介してドライバプログラムの送信先を指定する情報(ネットワークアドレス等)を入力し、その入力情報で指定される情報処理装置2に対して通信手段18がドライバプログラム14を送信する、いわゆるプッシュ型のデータ取得方式を採用又は併用することも可能である。」

これらの記載から、引用刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「プリンタ機能とスキャナー機能を兼ね備えた複合機で構成され、パソコンやワークステーション等によって構成される情報処理装置と接続された画像処理装置において、ユーザが入力操作をするための入力手段と、ドライバプログラムを記憶する記憶手段と、画像処理装置から情報処理装置に構成情報を送信する通信媒体とを備え、画像処理装置の装置構成の変更に応じて、前記通信媒体を介して、前記ドライバプログラムを送信可能とされている画像処理装置。」

(2-2)引用刊行物2
原査定の拒絶の理由において引用された特開平11-192763号公報(平成19年1月22日付け拒絶理由通知書における引用文献2、以下、「引用刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付与)。

(2-a)「【0036】
【発明の実施の形態】以下に詳述する実施の形態では、用紙読み取り用交換可能なスキャナヘッドを備えたインクジェットプリンタを挙げ、そのスキャナヘッドから基本設定項目,エミュレーション項目,印字制御項目などの設定・変更内容を読み取らせて、内蔵RAMの設定・変更を行うものである。
【0037】また、上記スキャナヘッドで読み込ませる用紙(以下、コントローラセッティングシートという)として、マークシート形式,バーコード形式,ドット配列形式,カラーパッチ配列形式の記録済み用紙を用いる。なお、このコントローラセッティングシートは当該インクジェットプリンタからプリント出力させたものだけではなく、予め印刷されたものを用いることも可能である。」

(2-b)「【0043】つぎに、図1,図2,図7を参照しながら、本インクジェットプリンタの動作を説明する。
【0044】まず、記録ヘッド7を図示しないキャリッジに搭載しておき、電源スイッチ2を1回押下すると、通常のプリンタとして動作する状態になる(ステップS1、ステップS2、ステップS3)。つぎに、この電源スイッチ2を続けてN回(例えば3回:N=2,3,4…)押すと、出力用読出し専用メモリ5に記憶されている内容にしたがって、自動的にコントローラセッティングシート30を印字出力する(ステップS1、ステップS2、ステップS4)。
【0045】このコントローラセッティングシート30には、図3に示すように、インクジェットプリンタの制御部6に内蔵されているRAM 6Aに設定すべきコントローラ設定一覧がマークシート形式でプリントされる。ここで設定を行う項目は、たとえば従来はディップスイッチで設定していたプリンタの基本設定項目や、プリンタがサポートしているエミュレーション項目がある。
【0046】ユーザは、鉛筆などを用いて、図3に示したコントロールセッティングシート30の該当箇所をマーク(塗りつぶし)していく。
【0047】つぎに、本インクジェットプリンタから記録ヘッド7を取り外し、用紙読み取り用のスキャナヘッド8を搭載する。この状態において、上記コントローラセッティングシート30をインクジェットプリンタに給紙し、スキャナヘッド8により読み込ませる(ステップS7)。これにより、内蔵RAM 6Aの各種設定項目を書き換える(ステップS8)。
【0048】なお、コントローラセッティングシート30に記載されている各設定項目のうち、設定変更を行いたい箇所のみをマークすることにより、上記RAM内の部分修正を行うことも可能である。すなわち、図3に記載されている各項目のうち必要とされる丸印を鉛筆等で塗りつぶしてから、スキャナヘッド8により読み込ませればよい。」

(3)対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の
「スキャナー機能」、
「パソコンやワークステーション等によって構成される情報処理装置」、
「ユーザが入力操作をするための入力手段」、
「ドライバプログラム」、
「通信媒体」、
(複合機で構成された)「画像処理装置」

は、それぞれ、本願補正発明の
「原稿を読み取って当該原稿に対応する画像データを作成する読み取り手段」、
「所定の情報処理装置」、
「所定の操作指示を受け付けるための操作手段」、
「デバイスドライバプログラム」、
「通信手段」、
「画像形成装置」

に相当する。

また、引用刊行物1に明記はされていないが、画像処理装置において、所定のプログラムを実行することによって、その画像処理装置全体の動作を制御するなんらかの制御手段を有していることは当然のことである。さらに、引用発明の「構成情報」は、ドライバプログラムを更新するために用いる情報であるから、「データ情報」の一種であることは明らかである。

してみると、両者は、
「原稿を読み取って当該原稿に対応する画像データを作成する読み取り手段を備え、所定の情報処理装置に接続可能に構成された画像形成装置において、所定の操作指示を受け付けるための操作手段と、所定のプログラムを実行することにより前記画像形成装置全体の動作を制御する制御手段と、デバイスドライバプログラムを記憶する記憶手段と、画像形成装置から情報処理装置にデータ情報を送信する通信手段とを備え、前記通信手段を介して、前記デバイスドライバプログラムを送信可能とされている画像形成装置。」
の点で一致し、

以下の点で相違する。

・相違点1
本願補正発明では、デバイスドライバプログラムを情報処理装置にインストールするにあたり、インストールするための第1の設定情報を記入する第1のフォームを用い、記憶手段に第1のフォームの画像データを記憶しておき、操作手段からの指示情報に基づいて前記第1のフォームの画像を形成する画像形成手段を有し、読み取り手段によって読み込まれた前記第1のフォームの画像データから抽出された前記第1の設定情報に基づいて、デバイスドライバプログラムをインストールしているのに対し、引用発明では、第1の設定情報を記入する第1のフォームを有しておらず、画像処理装置の構成の変更を検知して、その変更内容に応じて、ドライバプログラムをインストールする点。

・相違点2
デバイスドライバプログラムを情報処理装置へインストールするにあたり、本願補正発明では、画像形成装置に有する記憶手段にインストールプログラムとインストール情報を記憶させておき、デバイスドライバプログラムを情報処理装置へ送信する際に、前記インストールプログラムを用いて、デバイスドライバプログラムと、情報処理装置へインストールさせるインストール情報を送信可能としているのに対し、引用発明では、インストールプログラム及びインストール情報についての特段の記載がない点。

上記相違点について検討する。

・相違点1について
引用刊行物2には、画像形成装置であるインクジェットプリンタにおいて、内蔵RAMの設定・変更を行うために、内部の記憶手段にコントローラセッティングシートを記憶させて、電源スイッチの操作によって、前記コントローラセッティングシートを印字出力し、前記コントローラセッティングシートへの記載をスキャナヘッドによって読み取ることによって、内蔵RAMの設定・変更を行うことが記載されている(以下、「引用刊行物2に記載の事項」という。)。
引用発明の画像処理装置の構成の変更と、それに伴うドライバプログラムのインストールは、画像処理装置におけるドライバプログラムの設定及び変更であるといえる。してみると、引用発明と引用刊行物2に記載の事項は、いずれも画像形成装置における何らかの設定・変更を行う点で共通するから、引用発明1におけるドライバプログラムをインストールするにあたり、画像処理装置の構成の変更を検知して行うことに代えて、引用刊行物2に記載の事項のように、第1のフォームに相当するコントローラセッティングシートへ、構成の変更を設定情報として記載するようにして、かかる記載後のコントローラセッティングシートを、読み取り手段によって読み込ませて、読み込まれた設定情報に基づいて、それに応じたドライバプログラムのインストールを行うようにすることは、当業者が適宜容易になし得ることである。

・相違点2について
本願補正発明の「インストール情報」がどのようなものであるかが明りょうでないため、本願の発明の詳細な説明を参酌すると、段落【0020】に「このフォームは、ドライバのPCに対するインストールの際に必要な各種設定情報(以降、インストール情報と称す)」と記載されており、ドライバをPCにインストールする際に必要な設定情報は、すべて「インストール情報」に含まれるものとして、以下の検討を行うこととする。
ネットワークを介して複数の装置が接続されて、一の装置から他の装置へソフトウェアをインストールするにあたり、インストールする装置側に、インストールするソフトウェアとともに、インストールプログラムを記憶しておき、該インストールプログラムを用いて、インストールする装置からインストールされる装置へのソフトウェアのインストールを行うことは周知である。
例えば、周知例として提示した下記の文献1には、インストール元計算機から、インストール先計算機にソフトウェアをインストールするにあたり、インストール元計算機に記憶されているソフトウェア・インストール・プログラムを用いて、ソフトウェアのインストールを行うことが記載されており、同じく周知例として提示した下記の文献2にも、OSが未インストールの計算機をネットワークシステムに追加したときに、第1の計算機に記憶されているインストールプログラムを用いて、OSのインストールを行うことが記載されている。
また、ソフトウェアのインストールにあたって、インストールに必要な設定情報を有し、かかるインストール情報に基づいてインストールを行うことも周知である。
例えば、周知例として提示した下記の文献3及び4には、ソフトウェアのインストールの際に、インストールする際の設定情報として、標準インストールかカスタムインストールかがユーザーによって設定され、その設定に応じて、ソフトウェアをすべてインストールするか、ユーザーが選択したソフトウェアのみをインストールするかを決定することが記載されている。
してみると、引用発明においてデバイスドライバプログラムをインストールするにあたり、上記周知技術を適用して、インストール元である画像形成装置の記憶手段にインストールプログラムを記憶しておき、かかるインストールプログラムを用いて、情報処理装置へのインストールを行い、さらに、インストールの際にインストール情報を用いてインストールを行って、本願補正発明のような構成とすることは、当業者が適宜容易になし得ることである。

周知例
1.特開平6-12348号公報
2.特開2002-278769号公報
3.特開2001-356855号公報
4.特開2000-122854号公報

効果の点についても、引用発明1、引用刊行物2に記載の事項及び上記周知技術から予測し得る程度のものにすぎない。

なお、審判請求人は当審からの審尋に対する回答書において、以下のような主張をしている。

「なお、インターネット等を介したアップデート技術や、OSの自動インストール技術が知られているとしても、このような技術と、画像形成装置とパーソナルコンピュータとからなるネットワークにおけるプリンタドライバのインストール技術とは性質や目的が異なり、同列に論じることはできません。」

上記審判請求人の主張について検討する。

OS及びプリンタドライバはいずれも、何らかのプログラムを有するソフトウェアであることは明らかである。してみると、計算機どうしのソフトウェアのアップデートやOSのインストールと、画像形成装置とパーソナルコンピュータとの間のプリンタドライバのインストールは、いずれも一の装置から他の装置に対してのソフトウェアのインストールの点で共通しており、適用に困難性は認められない。
よって上記出願人の主張は採用することはできない。

したがって、本願補正発明は、引用刊行物1に記載された発明、引用刊行物2に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)補正の却下の決定についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について

(1)本願発明
平成19年7月30日付けの手続補正は上述のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本件補正前の平成18年8月2日付け手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】 原稿を読み取って当該原稿に対応する画像データを作成する読み取り手段を備え、所定の情報処理装置に接続可能に構成された画像形成装置において、所定の操作指示を受け付けるための操作手段と、所定のプログラムを実行することにより前記画像形成装置全体の動作を制御する制御手段と、少なくともデバイスドライバプログラムと前記デバイスドライバプログラムを前記情報処理装置へインストールするための第1の設定情報を記入する第1のフォームの画像データとを記憶する記憶手段と、前記操作手段からの指示情報に基づいて前記第1のフォームの画像を形成する画像形成手段と、前記情報処理装置にデータ情報を送信する通信手段とを備え、前記制御手段は、前記通信手段を介して、前記デバイスドライバプログラムと、前記読み取り手段によって読み込まれた前記第1のフォームの画像データから抽出された前記第1の設定情報に基づいて、前記デバイスドライバプログラムを前記情報処理装置にインストールさせるインストール情報とを送信可能とされていることを特徴とする画像形成装置。」

(2)引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-149363号公報及び特開平11-192763号公報の記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、「記憶手段」に記憶する内容として、「前記デバイスドライバプログラムを前記情報処理装置へインストールするためのインストールプログラム」も記憶するという限定を省き、「デバイスドライバプログラム」を「情報処理装置にインストールさせるインストール情報」を送信する手段が、「インストールプログラム」であるという限定を省いたものに相当する。
してみると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(3)に記載したとおり、引用刊行物1に記載された発明、引用刊行物2に記載された事項、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用刊行物1に記載された発明、引用刊行物2に記載された事項、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用刊行物1及び2に記載された発明、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-24 
結審通知日 2010-01-05 
審決日 2010-01-18 
出願番号 特願2002-369636(P2002-369636)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
P 1 8・ 575- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 立澤 正樹  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 一宮 誠
柏崎 康司
発明の名称 画像形成装置  
代理人 小谷 悦司  
代理人 平田 晴洋  
代理人 伊藤 孝夫  

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