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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1212790
審判番号 不服2007-29703  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-01 
確定日 2010-03-04 
事件の表示 特願2002-107831「流体槽」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月21日出願公開、特開2003-299759〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年(2002年)4月10日の出願(特願2002-107831号)であって、平成19年6月6日付けで手続補正がなされ、平成19年9月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成19年11月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年12月3日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成19年12月3日付けの手続補正についての補正の却下の決定について

[補正の却下の決定の結論]
平成19年12月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成19年6月6日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載の、

「固体粒子と、前記固体粒子が多量に貯溜された槽と、前記槽の底部から空気を上方へ吹き出すことで前記槽に貯溜された前記固体粒子を流動させると共に前記空気の空塔速度を前記固体粒子に応じた最小流動化速度に調整する流動化手段と、を有することを特徴とする流体槽。」が

「固体粒子と、目標とする浮力と圧力の条件に対応するかさ比重となるように前記固体粒子が多量に貯溜された槽と、前記槽の底部から空気を上方へ吹き出すことで前記槽に貯溜された前記固体粒子を流動させると共に前記空気の空塔速度を前記固体粒子に応じた最小流動化速度に調整する流動化手段と、を有することを特徴とする流体槽。」と補正された。

そして、この補正は、固体粒子の貯溜について「目標とする浮力と圧力の条件に対応するかさ比重となるように」貯留すると具体化して特定するものであるから、特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮を目的とする補正であるといえる。
すなわち、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものを含む。

2 独立特許要件違反についての検討
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反しないか)について検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、平成19年12月3日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定されるものである。(上記「1 本件補正について」の記載参照。)

(2)引用例
ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平4-96774号公報(以下、「引用例」という。)には、図面の記載とともに以下の事項が記載されている。

「[実施例]
本発明の実施例を図面に基づいて以下に説明する。第1図は本発明に係る遊戯用模擬プールの説明図である。図は、プールを地面1に穴を堀り、側壁2を形成して設置した例である。プールは、上層3、下層5および下層5の下に設けられた風箱7から構成されている。上層3は両端部近傍が深さが浅く、中央部が深さが深くなるように作られており、中にプラスチック、ポリエチレン等の合成樹脂製の球体4が満たされている。球体4の大きさは、直径が5?20mmの大きさのものが使用される。下層5には、人が乗ると容易に圧縮変形するゴム等の弾性のある球体6(中空のものでもよい)が敷き詰められている。球体の大きさは、直径が200?300mmの大きさのものが使用される。なお、球体4および球体6の代わりに、楕円体、角に丸みを形成した立方体を使用することもできる。風箱7の上面には多孔板8が、側面には圧縮空気の導入管9が設けられている。上層3と下層5の境界面にゴム製の網等の伸縮可能な弾性網10が張設されている。
圧縮空気源(図示しない)から圧縮空気が導入管9を通して風箱7に供給される。圧縮空気の圧力は、上層3の球体4が僅かに流動状態になる風量と圧力に調節される。圧縮空気は、多孔板8の多数の孔から上方に噴出し、下層5の間隙を通って上層3に噴出し、上層3の間隙を通って大気中に放出される。これにより、上層3の球体4の周りに空気膜が形成され、上層3の球体4は流動状態に保たれる(このときの上層の深さは、中央部で人の腹の上位にする)。
人11がプールの一側から上層3に足を踏み入れると、足は徐々に沈んでゆき深さの浅い底面に達する。球体4を掻き分けながら中央に向かって進むと、深さが深くなり身体が腹の上あたりまで沈み、足が弾性網10に達する。球体6が圧縮され、身体が胸の下あたりまで更に沈む。人は弾性網10に足を着き、球体4を掻き分けながらプールの他側に向かって進み、側壁に突き当たったところで深さの浅い底面に上がり、移動してプールの他側に脱出する。なお、中央の深場を歩き回るとよい体力トレーニングになる。」(明細書第2ページ左上欄第16行?左下欄第17行)

イ 引用例に記載された発明の認定
上記記載事項から、引用例には、遊技用模擬プールに関し、
「上層3、下層5および下層5の下に設けられた風箱7から構成されているプールであって、
上層3は両端部近傍が深さが浅く、中央部が深さが深くなるように作られており、中にプラスチック、ポリエチレン等の合成樹脂製の球体4が満たされ、球体4の大きさは、直径が5?20mmの大きさのものが使用され、
風箱7の上面には多孔板8が、側面には圧縮空気の導入管9が設けられ、
圧縮空気源から圧縮空気が導入管9を通して風箱7に供給され、圧縮空気の圧力は、上層3の球体4が僅かに流動状態になる風量と圧力に調節され、圧縮空気は、多孔板8の多数の孔から上方に噴出し、下層5の間隙を通って上層3に噴出し、上層3の間隙を通って大気中に放出され、これにより、上層3の球体4の周りに空気膜が形成され、上層3の球体4は流動状態に保たれる遊技用模擬プール。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(3)本願補正発明と引用発明との対比
ア 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「プラスチック、ポリエチレン等の合成樹脂製の球体4」が、本願補正発明の「固体粒子」に相当する。

引用発明の「上層3、下層5および下層5の下に設けられた風箱7から構成されているプールであって、上層3は両端部近傍が深さが浅く、中央部が深さが深くなるように作られており、中にプラスチック、ポリエチレン等の合成樹脂製の球体4が満たされ、球体4の大きさは、直径が5?20mmの大きさのものが使用され」るプールと、本願補正発明の「目標とする浮力と圧力の条件に対応するかさ比重となるように前記固体粒子が多量に貯溜された槽」とは、「固体粒子が多量に貯溜された槽」である点で一致する。

引用発明の「圧縮空気は、多孔板8の多数の孔から上方に噴出し、下層5の間隙を通って上層3に噴出し、上層3の間隙を通って大気中に放出され、これにより、上層3の球体4の周りに空気膜が形成され、上層3の球体4は流動状態に保たれる」ことが、本願補正発明の「前記槽の底部から空気を上方へ吹き出すことで前記槽に貯溜された前記固体粒子を流動させる」ことに相当する。
そして、本願明細書の発明の詳細な説明の発明の【0040】及び【0042】段落の記載を参酌すると、静止していた固体粒子が流動化し始める空塔速度が最小流動化速度であるといえるから、引用発明の「上層3の球体4が僅かに流動状態になる風量と圧力に調節」することが、本願補正発明の「前記空気の空塔速度を前記固体粒子に応じた最小流動化速度に調整する」ことに相当するといえる。
よって、引用発明の「上層3の球体4」を「流動状態に」保つための手段であって、「圧縮空気源から圧縮空気が導入管9を通して風箱7に供給され、圧縮空気の圧力は、上層3の球体4が僅かに流動状態になる風量と圧力に調節され、圧縮空気は、多孔板8の多数の孔から上方に噴出し、下層5の間隙を通って上層3に噴出し、上層3の間隙を通って大気中に放出され、これにより、上層3の球体4の周りに空気膜が形成され、上層3の球体4は流動状態に保たれる」手段が、本願補正発明の「前記槽の底部から空気を上方へ吹き出すことで前記槽に貯溜された前記固体粒子を流動させると共に前記空気の空塔速度を前記固体粒子に応じた最小流動化速度に調整する流動化手段」に相当する。

引用発明の「遊技用模擬プール」が、本願補正発明の「流体槽」に相当する。

イ 一致点
よって、本願補正発明と引用発明は、
「固体粒子と、前記固体粒子が多量に貯溜された槽と、前記槽の底部から空気を上方へ吹き出すことで前記槽に貯溜された前記固体粒子を流動させると共に前記空気の空塔速度を前記固体粒子に応じた最小流動化速度に調整する流動化手段と、を有する流体槽。」の発明である点で一致し、次の点で相違する。

ウ 相違点
固体粒子の貯溜について、本願補正発明においては、「目標とする浮力と圧力の条件に対応するかさ比重となるように」貯留するものであるのに対し、引用発明においては、そのような限定がなされていない点。

(4)当審の判断
ア 上記各相違点について検討する。
本願補正発明の「固体粒子」に相当する引用発明の「球体4」は「プラスチック、ポリエチレン等の合成樹脂製」であって、大きさが「直径が5?20mmの大きさのもの」であるから、複数種類の素材及び寸法のものが想定されている。そして、複数種類の素材及び寸法からなる球体から、どのような球体を選択するかは、目標とする浮力や圧力に応じて当業者が適宜容易に選択し得ることであるといえるから、引用発明においても、固体粒子(球体4)の貯留について「目標とする浮力と圧力の条件に対応するかさ比重となるように」貯留するとして、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 本願補正発明の奏する作用効果
そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 むすび
したがって、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるということができないから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成19年12月3日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年6月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 平成19年12月3日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」の記載参照。)

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項及び引用発明については、上記「第2 平成19年12月3日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(2)引用例」に記載したとおりである。

3 対比・判断
ア 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「プラスチック、ポリエチレン等の合成樹脂製の球体4」が、本願発明の「固体粒子」に相当する。

引用発明の「上層3、下層5および下層5の下に設けられた風箱7から構成されているプールであって、上層3は両端部近傍が深さが浅く、中央部が深さが深くなるように作られており、中にプラスチック、ポリエチレン等の合成樹脂製の球体4が満たされ、球体4の大きさは、直径が5?20mmの大きさのものが使用され」るプールが、本願発明の「固体粒子が多量に貯溜された槽」に相当する。

引用発明の「圧縮空気は、多孔板8の多数の孔から上方に噴出し、下層5の間隙を通って上層3に噴出し、上層3の間隙を通って大気中に放出され、これにより、上層3の球体4の周りに空気膜が形成され、上層3の球体4は流動状態に保たれる」ことが、本願発明の「前記槽の底部から空気を上方へ吹き出すことで前記槽に貯溜された前記固体粒子を流動させる」ことに相当する。
そして、本願明細書の発明の詳細な説明の発明の【0040】及び【0042】段落の記載を参酌すると、静止していた固体粒子が流動化し始める空塔速度が最小流動化速度であるといえるから、引用発明の「上層3の球体4が僅かに流動状態になる風量と圧力に調節」することが、本願発明の「前記空気の空塔速度を前記固体粒子に応じた最小流動化速度に調整する」ことに相当するといえる。
よって、引用発明の「上層3の球体4」を「流動状態に」保つための手段であって、「圧縮空気源から圧縮空気が導入管9を通して風箱7に供給され、圧縮空気の圧力は、上層3の球体4が僅かに流動状態になる風量と圧力に調節され、圧縮空気は、多孔板8の多数の孔から上方に噴出し、下層5の間隙を通って上層3に噴出し、上層3の間隙を通って大気中に放出され、これにより、上層3の球体4の周りに空気膜が形成され、上層3の球体4は流動状態に保たれる」手段が、本願発明の「前記槽の底部から空気を上方へ吹き出すことで前記槽に貯溜された前記固体粒子を流動させると共に前記空気の空塔速度を前記固体粒子に応じた最小流動化速度に調整する流動化手段」に相当する。

引用発明の「遊技用模擬プール」が、本願発明の「流体槽」に相当する。

イ 一致点
よって、本願発明と引用発明は、
「固体粒子と、前記固体粒子が多量に貯溜された槽と、前記槽の底部から空気を上方へ吹き出すことで前記槽に貯溜された前記固体粒子を流動させると共に前記空気の空塔速度を前記固体粒子に応じた最小流動化速度に調整する流動化手段と、を有する流体槽。」の発明である点で一致し、両者に異なるところがない。

ウ まとめ
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明である。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であり、特許法第29条第1項3号に該当するから、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-24 
結審通知日 2010-01-05 
審決日 2010-01-18 
出願番号 特願2002-107831(P2002-107831)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A63B)
P 1 8・ 121- Z (A63B)
P 1 8・ 575- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 陽高橋 三成  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 森林 克郎
岡田 吉美
発明の名称 流体槽  
代理人 福田 浩志  
代理人 中島 淳  
代理人 西元 勝一  
代理人 加藤 和詳  

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