• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G08G
管理番号 1212806
審判番号 不服2008-5863  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-07 
確定日 2010-03-04 
事件の表示 特願2006- 58112「位置情報管理方法、および、装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月24日出願公開、特開2006-221661〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴い平成10年2月4日(優先日:平成9年2月6日、出願番号:特願平9-24106号)に出願した特願平10-22996号の一部を平成16年4月8日に新たな特許出願として出願した特願2004-114174号の一部を、さらに平成18年3月3日に新たな特許出願としたものであって、平成20年2月5日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月7日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに手続補正がされた。そして、平成21年9月25日付けで当審による拒絶理由が通知され、同年11月20日付けで手続補正がされたものである。

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年11月20日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「端末の位置情報を収集する収集装置から、第一の端末の位置情報を受信した第二の端末が第一の端末を監視する位置情報管理方法であって、
前記第二の端末が、
前記収集装置から送信されてきた前記第一の端末の位置情報を記憶した履歴情報を参照する参照ステップと、
前記履歴情報に基づき、第一の端末が所定時間移動せず止まっているか否か、および、第一の端末が所定の監視区域内に位置するか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップの結果、第一の端末が監視区域内で所定時間止まっていると判断した場合は、警告を出力する出力ステップと、
を備えたことを特徴とする位置情報管理方法。」

上記補正後の請求項1に記載された事項のうち、「端末の位置情報を収集する収集装置」は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に明示的には記載されていない。
しかし、当初明細書の【0068】には「図8は、携帯端末側で第3者を監視する処理を示すフローチャートである。」と記載され、【0072】には「監視対象である第3者の現在位置を取得する」と記載されていることから、携帯端末側において第3者の「端末の位置情報を収集する収集装置」を備えていることは自明といえるから、上記補正は、実質的に願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであると認められる。

2.引用例
(1)これに対して、当審における、平成21年9月25日付けで通知した拒絶の理由に引用した特開平6-291716号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「【請求項1】 所定の人間により携帯される携帯型発信装置から当該携帯型発信装置固有の識別符号を無線により間欠的に受信してその受信場所及び受信時刻を特定し情報として収集し、
特定かつ収集された受信場所及び受信時刻に基づき携帯型発信装置の携帯者の移動状況を判定し、
判定結果に応じて所定の通報先に所定の情報を通報することを特徴とする移動状況情報通報方法。」

・「【0036】一方、通報装置30は、複数個のアンテナ38、アンテナ切替器40、受信機22、処理部42及びNCU26から構成されている。この通報装置30の特徴は、各アンテナ38をそれぞれ異なる箇所(部屋)に配置しておき、アンテナ切替器40によりアンテナダイバシティ受信(切替間隔数m秒?数秒程度)を行っていること、処理部42が受信時刻及び受信場所に基づき各種判定を実行し、必要な通報先に必要な内容の通報を行っていることである。
【0037】図2には、この実施例における処理部42の動作の流れが示されている。この図に示されるように、処理部42はまずID照合を実行する(200)。すなわち、受信機22により受信復調されたIDが、いずれかのカード28に付与されているID(ID1又はID2)であるか否か、及びID1かそれともID2かを判定する。照合が成立しなければ、処理部42は待ち状態をとる。ID2と判定された場合には、ただちに病院等に通報する(202)。
【0038】ID1と判定された場合には、まず場所・時間条件が成立しているか否かを判定する(204)。場所・時間条件とは、例えば表1に示されるような条件である。
【0039】
【表1】
この表において○で示されるのは、“通報必要”である。例えば部屋(2)に配置されたアンテン38で3時間以上連続してID1が受信されている場合、家族に通報される(206)。この場合の通報は、緊急時、例えばID2受信時とは異なる内容とすることができる。また、部屋(1)の欄に示されるように、昼、夜等、時間帯に応じて異なる通報先にすることもできる。通報内容も、時間帯に応じて異なる通報内容にすることもできる。なお、連続して受信している時間は、処理部42に内蔵されているメモリ(後述)上の情報を用いて得ることができる。受信場所は、受信したアンテナ38の場所により知ることができる。
【0040】場所・時間条件が成立していない場合、処理部42は履歴条件の成立に関する判定を実行する(208)。履歴条件とは、携帯者の通常の生活パタンである。例えば、“この携帯者は部屋(1)での時間場所条件をある頻度で成立させる”といった条件である。この条件が成立した場合にはステップ206と同様の通報が実行され(210)、成立しない場合には処理部42に内蔵されているメモリに受信時刻、受信場所、場所・時間条件の成立状況等に関する情報が書き込まれる(212)。
【0041】処理部42は、次に、設定更新条件が成立しているか否かを判定する(214)。すなわち、ステップ204等における判定条件を更新すべき時期であるか否か(例えば前回の更新から1週間が経過したか否か)が判定される。この判定が成立していなければ、動作はステップ200に戻り、成立している場合には、メモリ上の情報に基づき新たに判定条件を設定する。
【0042】従って、本実施例によれば、カード28の携帯者の移動により“元気度”を識別し、通報を行うようにしたため、カード28が非常時・緊急時のみならず日常的に携帯者の移動状況に関する情報を得るための装置としても役立ち、携帯すべき老人等が心理的圧迫を感じにくい。また、家族、親族等も独居老人等が元気で生活していることを適当な頻度で知ることができ、病院、公共機関等も予防医学的な情報収集が可能になる。その際のマンパワーは少ない。さらに、携帯者が押釦スイッチを押す余力を有していない場合でも対処できる。
【0043】また、通報する情報や通報先は場所・時間条件に応じて異なる情報又は通報先にすることができる。さらに、受信場所の特定は、アンテナ38及びアンテナ切替器40によるダイバシティにより簡単な構成で実現できる。電話回線等を用いているため、インフラストラクチャの整備等のコストも発生しにくい。」

・【0039】の【表1】には、各部屋に対応した時間に関する条件、”通報必要”の有無、通報先等からなる場所・時間条件が示されている。

・図2には、場所・時間条件ステップ204において、場所・条件が成立していると判定された場合は、通報ステップ206が実行される、処理部の動作の流れが示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「携帯型発信装置から無線発信された固有のIDの受信場所を特定する受信手段から、携帯型発信装置の固有IDの受信場所を得た通報装置が携帯型発信装置の移動状況を判定する移動状況情報通報方法であって、
前記通報装置が、
前記受信手段から得た前記携帯型発信装置の固有IDの受信場所を書き込んだメモリ上の情報に基づき、
”通報必要”とされている部屋で、その部屋に対応した時間以上連続して前記固有のIDが受信されているか否かに関する場所・時間条件を判定する場所・時間条件ステップ204と、
前記場所・時間条件ステップ204において、前記場所・時間条件が成立していると判定された場合は、通報先へ通報する通報ステップ206と
を備えた移動状況情報通報方法。」

3.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
後者における「携帯型発信装置から無線発信された固有のIDの受信場所を特定する」態様が前者における「端末の位置情報を収集する」態様に相当し、以下同様に、
「受信手段」が「収集装置」に、
「携帯型発信装置」が「第一の端末」に、
「固有IDの受信場所を得た」態様が「位置情報を受信した」態様に、
「通報装置」が「第二の端末」に、
「携帯型発信装置の移動状況を判定する」態様が「第一の端末を監視する」態様に、
「移動状況情報通報方法」が「位置情報管理方法」に、それぞれ相当する。
また、後者の「メモリ上の情報」が前者の「履歴情報」に相当し、以下同様に、
「その部屋に対応した時間以上連続して固有のIDが受信されているか否か・・・を判定する」態様が「第一の端末が所定時間移動せず止まっているか否か・・・を判定する」態様に、
「”通報必要”とされている部屋で・・・固有のIDが受信されているか否か・・・を判定する」態様が「第一の端末が所定の監視区域内に位置するか否かを判定する」態様に、それぞれ相当するから、
後者の「受信手段から得た携帯型発信装置の固有IDの受信場所を書き込んだメモリ上の情報に基づき、”通報必要”とされている部屋で、その部屋に対応した時間以上連続して前記固有のIDが受信されているか否かに関する場所・時間条件を判定する場所・時間条件ステップ204」が前者の「収集装置から送信されてきた第一の端末の位置情報を記憶した履歴情報を参照する参照ステップと、前記履歴情報に基づき、第一の端末が所定時間移動せず止まっているか否か、および、第一の端末が所定の監視区域内に位置するか否かを判定する判定ステップ」に、相当する。
さらに、後者の「場所・時間条件ステップ204において、場所・時間条件が成立していると判定された場合」が前者の「判定ステップの結果、第一の端末が監視区域内で所定時間止まっていると判断した場合」に、
後者の「通報先へ通報する通報ステップ206」が前者の「警告を出力する出力ステップ」に、それぞれ相当する。

そうすると,本願発明と引用発明との間に構成上の差異はない。

よって,本願発明は,引用例に記載された発明というべきである。

4.むすび

以上のとおり、本願発明は、本件出願前に頒布された刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-04 
結審通知日 2010-01-05 
審決日 2010-01-18 
出願番号 特願2006-58112(P2006-58112)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (G08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 片岡 弘之  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 小川 恭司
槙原 進
発明の名称 位置情報管理方法、および、装置  
代理人 大菅 義之  
代理人 ▲徳▼永 民雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ