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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1212828
審判番号 不服2008-25227  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-02 
確定日 2010-03-04 
事件の表示 特願2002-212346「パチンコ機における球発射装置のハンマー」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 2月19日出願公開、特開2004- 49609〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第一、手続きの経緯
本願は、平成14年7月22日の出願であって、平成20年6月12日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年7月3日付けで手続補正がなされ、同年8月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月2日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに、同年同日付け手続補正書によって明細書の一部が補正されたものである。
なお、当審において、平成21年7月9日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、同年8月28日に回答書が提出されている。

第二、平成20年10月2日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年10月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正前・後の本願発明
本件補正は、補正前(平成20年7月3日付け手続補正により補正された特許請求の範囲)の請求項1乃至5のうち、請求項1に記載された、
「 駆動源の出力軸に備えられたハンマー本体の先端側取付部位に帽子状のハンマーヘッドを嵌合して取付けて成るパチンコ機における球発射装置のハンマーにおいて、ハンマーヘッドは、緩衝機能を有する材料により、内周径が先端側取付部位の外周径より小さく形成され、先端側取付部位へのハンマーヘッドの取付けに際してハンマーヘッドの開放端面が先端側取付部位の後端面を超えるとこのハンマーヘッドの開放端側が材料の弾性により先端側取付部位の後端面に係止することによってハンマーヘッドの先端側内面が先端側取付部位の先端面に密着した状態に維持され、かつ、先端側取付部位の先端面あるいはこの先端面と対面するハンマーヘッドの先端側内面と外部とを繋ぐ空気逃がし手段を備えたことを特徴とするパチンコ機における球発射装置のハンマー。」を、
「 ロータリー電磁ソレノイドの出力軸に一緒に回転するように備えられたハンマー本体の先端側取付部位に帽子状のハンマーヘッドを嵌合して取付けて成るパチンコ機における球発射装置のハンマーにおいて、ハンマーヘッドは、緩衝機能を有する材料により、内周径が先端側取付部位の外周径より小さく形成され、先端側取付部位へのハンマーヘッドの取付けに際してハンマーヘッドの開放端面が先端側取付部位の後端面を超えるとこのハンマーヘッドの開放端側の内周面が材料の弾性により先端側取付部位の後端面に係止することによってハンマーヘッドの先端側内面が先端側取付部位の先端面に密着した状態に維持され、かつ、先端側取付部位の先端面あるいはこの先端面と対面するハンマーヘッドの先端側内面と外部とを繋ぐ空気逃がし手段を備えたことを特徴とするパチンコ機における球発射装置のハンマー。」と補正し、
また、請求項3に記載された、
「 空気逃がし手段は、ハンマーヘッドの先端側内面から開放端面に延長する溝あるいは突起により形成されたことを特徴とする請求項1に記載のパチンコ機における球発射装置のハンマー。」を、
「 空気逃がし手段は、ハンマーヘッドの先端側内面から開放端面に延長する溝により形成されたことを特徴とする請求項1に記載のパチンコ機における球発射装置のハンマー。」と補正するものである(下線部は補正部分)。

上記補正は、
イ)補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ハンマー本体」の修飾語句について「駆動源の出力軸に備えられた」を「ロータリー電磁ソレノイドの出力軸に一緒に回転するように備えられた」と補正し、
ロ)同「材料の弾性により先端側取付部位の後端面に係止する」ものについて、「ハンマーヘッドの開放端側が」を「ハンマーヘッドの開放端側の内周面が」と補正し、
ハ)補正前の特許請求の範囲の請求項3に記載された発明を特定するために必要な事項である「空気逃がし手段」を形成するものについて「溝あるいは突起」を「溝」と補正するものである。
ここで、上記イ)及びロ)の補正は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、当該補正は特許請求の範囲を減縮するものであり、
上記ハ)の補正は、択一的要素の削除であって特許請求の範囲の限定的減縮に相当するから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか(上記改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(あ)刊行物に記載された発明
刊行物1;実願昭56-48696号(実開昭57-160783号)の
マイクロフィルム
刊行物ア;特開平8-272524号公報
刊行物イ;特開2002-31117号公報(平成14年1月31日公開)

原査定の拒絶理由に引用された、実願昭56-48696号(実開昭57-160783号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物1」という。)において、
(1-1)明細書第1頁第4行乃至第18行には、「2.実用新案登録請求の範囲
(1) 金属製の打球槌本体と合成樹脂製の打球ヘッドとより成り、打球槌本体は先端に角柱状の取付部を横方向へ突設すると共に、該取付部の根元に係止溝を凹設し、打球ヘッドは先端側に打球部を突設し、基部側に袋状の凹孔を設けると共に、その凹孔の開口内縁に係止突条を突設し、打球へッドの凹孔を打球槌本体の取付部に押し込んで嵌着すると共に、係止突条を係止溝に係止して取付け固定することを特徴とするパチンコ機の打球槌。
(2) 打球ヘッドの凹孔に段部を設けて取付部の先端部分に空間を形成したことを特徴とする実用新案登録請求の範囲第(1)項記載のパチンコ機の打球槌。」と、
(1-2)明細書第2頁第15行乃至第4頁第14行には、「 本考案は、上述の従来欠点を解消し、打球槌の取付部に合成樹脂製の打球へッドを容易かつ確実に取付けることができると共に、摩耗等により交換の必要が生じた時には全く手間を要さず至極簡単にできるようにしたものである。
以下、本考案の一実施例を図画について説明すると、1は打抜き加工又はダイカスト成形により所要形状に形成された金属製の打球槌本体で、下方部には四角形状の軸孔2が形成され、先端部には横向きに角柱状の取付部3が形成されており、さらにこの取付部3の根元の上下位置には係止溝4,4が凹設されている。
5は合成樹脂製の打球ヘッドで、円柱状の打球部5aと角柱状の取付基部5bとからなる。打球部5aの先端は平らな打球面6に形成し、また胴部外周には弾力性を増すための所要深さの凹溝7,7が周設されている。前記取付基部5bには後側に向かって開口する袋状の凹孔8が形成されており、この凹孔8の開口入口部の上下縁には爪状の係止突条9,9が突設されている。前記凹孔8は打球槌本体1の取付部3に合致する形状であり、またこの実施例では段部10を介して奥部に空間11が形成されるように深くしている。
しかして、打球へッド5の凹孔8を打球槌本体1の取付部3に当てがって押し込み、係止突条9,9を係止溝4,4に係止させることにより、打球へッド5を打球槌本体1の取付部3に嵌合固定するものである。この際に取付部3の先端は段部10に当接して位置決めされ、凹孔8の形状に正しく合致して打球へッドの回動を阻止し、さらに係止溝4,4と係止突条9,9の係合により抜けるのを防止してしっかりと固定される。・・・また取付部3の先部に形成される空間10(審決注:明細書全体の記載から「空間11」の誤記と認める。)は、打球ヘッド5の弾力性を増して球飛びをよくするためのものであり、従って打球へッドの材質によっては必ずしも必要とされるものではない。」と、それぞれ記載されている。

したがって、これらの記載をまとめると、引用刊行物1には、
「 金属製の打球槌本体1と合成樹脂製の打球ヘッド5とより成り、
打球槌本体1は先端に角柱状の取付部3を横方向へ突設すると共に、該取付部3の根元の上下位置には係止溝4,4を凹設し、
打球ヘッド5は、円柱状の打球部5aと角柱状の取付基部5bとからなり、前記取付基部5bには後側に向かって開口する袋状の凹孔8を打球槌本体1の取付部3に合致する形状で設けると共に、その凹孔8の開口入口部の上下内縁には爪状の係止突条9,9を突設し、
打球槌の取付部3に打球へッド5を確実に取付けることができる、パチンコ機の打球槌において、
打球へッド5の凹孔8を打球槌本体1の取付部3に当てがって押し込み、係止突条9,9を係止溝4,4に係止させることにより、打球へッド5を打球槌本体1の取付部3に嵌合固定するものであり、この際に取付部3の先端は凹孔8に設けられた段部10に当接して位置決めされ、
取付部3の先端部分に形成される空間11は、打球ヘッド5の弾力性を増して球飛びをよくするためのものであり、打球へッドの材質によっては必ずしも必要とされるものではない、
パチンコ機の打球槌。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

原査定の拒絶理由に周知技術として引用された、特開平8-272524号公報(以下、「引用刊行物ア」という。)には、以下の記載がある。
(ア-1)「【0040】・・・
スティック50は、図1,2,4に示すように、円板部50_(-1)と、円板部50_(-1)より直立して上方に突き出している円柱状のスティック部50_(-2)とを有する。
【0041】スティック部50_(-2)は、周面に、複数の溝50_(-3)を有する。この溝50_(-3)が請求項16中の溝を構成する。溝50_(-3)は、スティック部50_(-2)の軸線方向に、スティック部50_(-2)の頂部50_(-4)から高さ位置H_(1)まで延在している。高さ位置H_(1)は、取付けられたキャップ51の下端の高さ位置H_(2)より若干下側である。
【0042】この溝50_(-3)は、キャップ取り付け時に、空気を逃がす作用及びキャップ51が溝50_(-3)内に一部食い込んでキャップ51の抜去に対する抗力を高めてキャップ51が強く固定されるように作用をする。・・・」、
(ア-2)「【0046】指先が滑らないように、キャップ51はゴム製であり、且つ頂面51_(-3)はシボ51_(-4)を有する。キャップ51は、図5に示すように、力Fでスティック部50_(-2)に押し込むことによって取り付けられる。
【0047】このとき、キャップ51内の空気は、矢印Aで示すように溝50_(-3)を通って逃がされ、キャップ51は、最終位置まで押し込まれ、正常に取り付けられる。
・・・」。

原査定の拒絶理由に周知技術として引用された、特開2002-31117号公報(以下、「引用刊行物イ」という。)には、以下の記載がある。
(イ-1)「【0002】
【従来の技術】樹脂部品にボルト、ピン、クリップ等のインサート部材を装着する方法の一つとして、図8に示すように、樹脂部品1にインサート部材2の頭部3を嵌挿するためのボス4を設け、このボス4にインサート部材頭部3を圧入して取り付けていたが、このような方法でインサート部材頭部3を圧入すると、空気がボス4内部に封じ込まれて高圧になり意匠面が膨らむ、インサート部材2の圧入が不完全になり、その固定が強固なものでなくなる等の問題が生ずることがあった。
【0003】このような問題の発生を防止するための従来の方法の一つとして、図9に示すように、インサート部材2の軸芯に貫通穴5を圧造またはドリル加工により設けていたが、貫通穴5は細長いものであるので、加工に時間を要する、加工がしにくくコストの上昇を招くという問題があった。
【0004】また、図10に示すような、ボス4の側面に空気抜き穴6を設ける方法においても、空気抜き穴6を設けるための工程を必要とし、加工に時間がかかるという問題があった。・・・」、
(イ-2)「【0011】・・・ダイス16の衝打により、図5に示すように、インサート部材頭部3の側面に空気抜き溝12が形成されるとともに、それにL字形に連通する空気抜き溝12をフランジ部10上面に形成することができる。」、
(イ-3)「【0015】以上のようにして製造したインサート部材2を、空気抜き穴6を形成していないボス4に嵌挿した場合には、図7に示すように、ボス4内面とインサート部材頭部3とが完全に密着することなく、空気抜き溝12によりボス4内面に非密着な僅かな空隙を確保することができて、この空隙から空気を逃がすことができる。・・・」。

(い)本願補正発明1と引用発明1との比較・検討
(い-1)引用発明1の「打球槌本体1」は、本願補正発明1の「ハンマー本体」に相当し、
以下同様に、「取付部3」は「先端側取付部位」に、
「打球へッド5」は「打球槌本体1の取付部3に嵌合固定」されるものであるから「帽子状のハンマーヘッド」及び「ハンマーヘッド」に、
「嵌合固定」は「嵌合して取付け」に、
「パチンコ機」は「パチンコ機」に、
「打球槌」は「打球槌本体1と打球ヘッド5とより成り、打球ヘッド5は、円柱状の打球部5aからな」るものであるから「球発射装置のハンマー」に、
それぞれ相当する。
(い-2)引用発明1の「打球ヘッド5」及び「打球へッド5を打球槌本体1の取付部3に嵌合固定する」構成について検討する。
a)引用発明1の「打球ヘッド5」は「合成樹脂製」であり、また「打球へッドの材質によっては必ずしも必要とされるものではない、空間11」は「打球ヘッド5の弾力性を増して球飛びをよくするため」に形成されるものであるから、打球ヘッド5の構成材料は本来「弾力性」を有していると認められる。そうすると、引用発明1が、本願補正発明1の「ハンマーヘッドは、緩衝機能を有する材料により形成され、」に相当する事項を備えているといえる。
b)引用発明1の「打球へッド5の凹孔8を打球槌本体1の取付部3に当てがって押し込み、係止突条9,9を係止溝4,4に係止させることにより、打球へッド5を打球槌本体1の取付部3に嵌合固定するものであり、この際に取付部3の先端は凹孔8に設けられた段部10に当接して位置決めされ」る技術事項について検討すると、「取付部3の根元の上下位置には係止溝4,4が凹設」され、「凹孔8は打球槌本体1の取付部3に合致する形状で設け」られ、「凹孔8の開口入口部の上下内縁には爪状の係止突条9,9が突設」され、そして、上記「a)」に記載したように「打球ヘッド5の構成材料は弾力性を有している」ものであるから、これらの事項を併せて考えると、引用発明1では、「打球へッド5の凹孔8を打球槌本体1の取付部3に当てがって押し込むと、凹孔8の開口入口部の上下内縁に取付部3の形状の内側位置まで突設された爪状の係止突条9,9の先端が取付部3の形状に合致するまで上下に離れるよう打球へッド5は弾性変形し、当該係止突条9,9が取付部3の根元まで押し込まれると、変形していた打球へッド5は弾性により復帰して係止突条9,9の先端が取付部3の形状の内側位置まで突設して係止溝4,4に係止し、この際に取付部3の先端は取付部3に合致する形状の凹孔8に設けられた段部10に当接して位置決めされ」るものであることは明らかである。
c)そうすると、引用発明1は本願補正発明1の「ハンマーヘッドは、緩衝機能を有する材料により、内周径が先端側取付部位の外周径より小さく形成され、先端側取付部位へのハンマーヘッドの取付けに際してハンマーヘッドの開放端面が先端側取付部位の後端面を超えるとこのハンマーヘッドの開放端側の内周面が材料の弾性により先端側取付部位の後端面に係止することによってハンマーヘッドの先端側内面が先端側取付部位の先端面に密着した状態に維持され、」の技術事項と比較して、「ハンマーヘッドは、緩衝機能を有する材料により形成され、先端側取付部位へのハンマーヘッドの取付けに際してハンマーヘッドの開放端面が先端側取付部位の後端面を超えるとこのハンマーヘッドの開放端側の内周部分が材料の弾性により先端側取付部位の後端部分に係止することによってハンマーヘッドの先端側内面が先端側取付部位の先端面に密着した状態に維持され、」において一致している。

したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
一致点
ハンマー本体の先端側取付部位に帽子状のハンマーヘッドを嵌合して取付けて成るパチンコ機における球発射装置のハンマーにおいて、ハンマーヘッドは、緩衝機能を有する材料により形成され、先端側取付部位へのハンマーヘッドの取付けに際してハンマーヘッドの開放端面が先端側取付部位の後端面を超えるとこのハンマーヘッドの開放端側の内周部分が材料の弾性により先端側取付部位の後端部分に係止することによってハンマーヘッドの先端側内面が先端側取付部位の先端面に密着した状態に維持されるパチンコ機における球発射装置のハンマー。

相違点1
ハンマー本体が、本願補正発明1ではロータリー電磁ソレノイドの出力軸に一緒に回転するように備えられたのに対し、引用発明1ではそのような構成を有するかどうか記載されていない点。
相違点2
本願補正発明1では、ハンマーヘッドの内周径が先端側取付部位の外周径より小さく形成され、ハンマーヘッドの開放端側の内周面が先端側取付部位の後端面に係止するのに対し、引用発明1では「ハンマーヘッドの内周(凹孔8)が先端側取付部位(取付部3)に合致する形状で設けられると共に、その内周入口部が先端側取付部位の外周より小さく(爪状の係止突条9,9を突設)形成され、ハンマーヘッドの開放端側の内周部分(係止突条9,9)が先端側取付部位の後端部分(係止溝4,4)に係止する点。
相違点3
本願補正発明1では、先端側取付部位の先端面あるいはこの先端面と対面するハンマーヘッドの先端側内面と外部とを繋ぐ空気逃がし手段を備えたのに対し、引用発明1ではそのような構成を有するかどうか記載されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
相違点1について
ロータリー電磁ソレノイドの出力軸に一緒に回転するように備えられたハンマー本体は、例えば特開平7-112057号公報に示された「ロータリーソレノイド52の軸53に基部を固定された槌54」(【0002】、及び【図9】参照)、特開平9-294843号公報に示された「ロータリーソレノイド81の回動軸81aに固着される発射杵83」(【0002】、及び【図7】参照)のように周知・慣用の技術であるから、引用発明1に上記周知・慣用の技術を適用して、当該相違点1に係る本願補正発明1を特定する事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。
相違点2について
(2a)ハンマーヘッドの内周径と先端側取付部位の外周径との関連寸法をどのようなものとするかは構成部材の材質、施工時の作業性、使用時の耐久性などを考慮して、当業者が適宜選択できる設計上の事項であり、また、穴を有する部材に軸部材を嵌合させる場合において、穴の内周径が軸部材の外周径より小さく形成されるものは、はめあい技術における「締りばめ」のように一般的な技術であり、さらにパチンコ機のハンマーにおいて、ハンマーヘッドの内周、及びハンマーヘッド取付部の外周が円筒形状であるものは、例を挙げるまでもなく、周知・慣用の技術であることを併せて考慮すれば、引用発明1における、ハンマーヘッドの内周が先端側取付部位に合致する形状で設けられると共に、その内周入口部が先端側取付部位の外周より小さく形成された技術に基づいて、ハンマーヘッドの内周径を先端側取付部位の外周径より小さく形成することは、当業者が容易になし得ることである。
(2b)部材間の係止構造において、どのような係止態様とするかは施工時の作業性、使用時の耐久性などを考慮して、当業者が適宜選択できる設計上の事項であり、また、面相互を係止させる構造は一般的な技術であるから、引用発明1における、ハンマーヘッドの開放端側の内周部分(係止突条9,9)が先端側取付部位の後端部分(係止溝4,4)に係止する技術に基づいて、ハンマーヘッドの開放端側の内周面を先端側取付部位の後端面に係止させることは、当業者が容易になし得ることである。
したがって、引用発明1に基づいて、当該相違点2に係る本願補正発明1を特定する事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。
相違点3について
棒状先端部にキャップ状部材を嵌合させる技術において、取付部位の先端面あるいはこの先端面と対面する部材の先端側内面と外部とを繋ぐ空気逃がし手段を備える技術は、例えば引用刊行物ア(特開平8-272524号公報)に示された「スティック部50_(-2)の軸線方向に、スティック部50_(-2)の頂部50_(-4)から、取付けられたキャップ51の下端の高さ位置H_(2)より若干下側である高さ位置H_(1)まで延在している、溝50_(-3)」、及び引用刊行物イ(特開2002-31117号公報)に示された「インサート部材2の軸芯に設けられた貫通穴5」、「ボス4の側面に設けられた空気抜き穴6」、「空気抜き溝12」(【図9】、【図10】、【図5、7】参照)のように周知・慣用の技術であるから、引用発明1の「ハンマーヘッド(打球へッド5)を先端側取付部位(打球槌本体1の取付部3)に嵌合固定する」技術に上記周知・慣用の技術を適用して、当該相違点3に係る本願補正発明1を特定する事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。

また、引用発明1は、「打球槌の取付部3に打球へッド5を確実に取付けることができる」ものであるから、本願補正発明1が格別の効果を奏するものとは認められない。

したがって、本願補正発明1は、引用発明1及び周知・慣用の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(う)補正却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第三、本願発明について
平成20年10月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1乃至5に係る発明は、上記平成20年7月3日付けで補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明1」という。)は、前記「第二、[理由](1)補正前・後の本願発明」に補正前として記載したとおりである。

(ア)刊行物に記載された発明
原査定の拒絶理由に引用された引用刊行物1(実願昭56-48696号(実開昭57-160783号)のマイクロフィルム)及び引用刊行物ア(特開平8-272524号公報)並びに引用刊行物イ(特開2002-31117号公報)に記載された事項は前記「第二、[理由](2)(あ)刊行物に記載された発明」に記載された事項と同様であるから、援用する。

(イ)本願発明1と引用発明1との対比・判断
本願補正発明1は、前記「第二、[理由](1)」で検討したように、本願発明1を特定するために必要な事項である「ハンマー本体」の修飾語句について「駆動源の出力軸に備えられた」を「ロータリー電磁ソレノイドの出力軸に一緒に回転するように備えられた」と補正し、同「材料の弾性により先端側取付部位の後端面に係止する」ものについて、「ハンマーヘッドの開放端側が」を「ハンマーヘッドの開放端側の内周面が」と補正したものである。
そうすると、本願補正発明1は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当するものであって、その本願補正発明1が、前記「第二、[理由](2)(い)」に記載したとおり、引用発明1及び周知・慣用の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用発明1及び周知・慣用の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(ウ)むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用発明1及び周知・慣用の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-11 
結審通知日 2009-12-15 
審決日 2010-01-20 
出願番号 特願2002-212346(P2002-212346)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西田 光宏一宮 誠門田 かづよ  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 深田 高義
川島 陵司
発明の名称 パチンコ機における球発射装置のハンマー  
代理人 宮園 純一  

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