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審決分類 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する C05G
管理番号 1213127
審判番号 訂正2009-390157  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2009-12-28 
確定日 2010-02-16 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3087944号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3087944号に係る明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 
理由 1.請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、特許第3087944号発明(平成7年10月13日出願、平成12年7月14日設定登録)の願書に添付した明細書、特許請求の範囲を審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、すなわち、下記のとおり訂正することを求めるものである。
「【請求項1】 微粉砕したカキ殻に、燐酸肥料、腐植肥料および苦土肥料の中から選んだ少なくとも1種以上の肥料を適当量づつ混合し、これに、リグニン化合物およびアルコール発酵廃液の中から選んだ少なくとも1種の水溶性バインダーを添加・混練して造粒せしめたことを特徴とする水中および土中崩壊性の良好なカキ殻の一粒混合肥料。」

「【請求項1】 微粉砕したカキ殻に、燐酸肥料、腐植肥料および苦土肥料の中から選んだ少なくとも1種以上の肥料を全重量中少なくとも5%混合し、これに、リグニン化合物およびアルコール発酵廃液の中から選んだ少なくとも1種の水溶性バインダーを添加・混練して造粒せしめたことを特徴とする水中および土中崩壊性の良好なカキ殻の一粒混合肥料。」
と訂正する。

2.当審の判断
そこで、上記訂正について検討すると、上記訂正は、「燐酸肥料、腐植肥料および苦土肥料の中から選んだ少なくとも1種以上の肥料」の配合量を、訂正前は「適当量」であったのを「全重量中少なくとも5%」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、上記訂正は、訂正前の願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでないとはいえない。

3.むすび
したがって、本件審判の請求は、特許法第126条第1項第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項ないし第5項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
カキ殻の一粒混合肥料
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、カキ殻と、燐酸肥料、腐植肥料および苦土肥料の中から選んだ少なくとも1種以上の肥料からなる水中および土中崩壊性の良好な一粒混合肥料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】肥料はずっと以前においては粉末状で使用されていたが、施肥時に肥料が飛散しやすい欠点があるに加え、施肥後には肥料が雨水で流失したり、肥料が地表を被覆して、地面の通水性、通気性を阻害する等の問題点があった。その後これらの問題点を改善するために肥料を適当な大きさの粒子に造粒する方法が提案され、現在実際に行われてもいる。従来提案されている粒状石灰質肥料では、石灰質肥料に潮解性ナリトウム塩、ステフェン廃水濃縮液、アルコール醗酵廃液濃縮液、リグニンスルホン酸塩溶液、植物性葉状粉末等を添加して造粒する方法が提案されている(特開昭52-30663、特開昭58-99189、特開昭59-152219、特開昭60-141694、特開昭60-221383)。また、可溶性石灰に可溶性珪酸、塩基性物質及び燐酸等を添加し、反応させて造粒する方法も提案されている(特開昭54-123469)。
【0003】
一方、燐酸肥料の造粒についても今までにかなり多数、提案され、実行されている。粒状燐酸肥料は熔成燐肥を造粒したものがほとんどで、熔成燐肥の水砕物あるいは粉末に珪酸カリウム、アルコール醗酵廃液(廃糖蜜発酵廃液)、ポリビニルアルコール、リグニン酸、可溶性デンプン、サルファイトパルプ副生物(パルプ廃液)、カルボキシメチルセルローズ等の水溶性バインダー(特開昭53-58371、特開昭57-149885、特開昭58-20790)や、硫酸マグネシウム(特開昭60-65785)を添加したり、廃糖蜜発酵廃液またはパルプ廃液とアルカリ土金属水和物を併用したりして(特開昭58-185490)、造粒している。さらに熔成燐肥に緩効性窒素肥料と過燐酸石灰または重過燐酸石灰を添加するか(特開昭52-6650、特開昭52-6651)、あるいは燐酸を反応させて(特開昭60-122788)、造粒する方法も提案されている。また、腐植肥料の造粒についての提案は非常に少なく、金属マグネシウム精錬時に副生するスラグと腐植酸および燐酸を混合し、造粒するものがある(特開平03-237082)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記のように肥料の造粒化は以前の粉末肥料が持っていた問題点、つまり、施肥時の肥料の飛散や施肥後の雨水による肥料の流失、地表を肥料が被覆することによる地面の通水性、通気性の阻害等を改善するために開発された技術である。肥料の造粒化で大事なことは、まず肥料の製造中はもちろんのこと、それ以降の流通から施肥までの取り扱い中に粒子が破壊しない堅さとなり、かつ、取り扱いやすい粒子の大きさとなることである。また、粒子状の肥料は雨や土中等の水分で適度な速度で崩壊し、土中に分散することが必要である。これらの粒子状肥料の条件を満たすために、今までに肥料の種類や作物の種類に応じて、種々の造粒方法が提案されてきた。
【0005】
前記のように石灰質肥料を造粒する方法としては前記の熔性燐肥の場合と同じように石灰質肥料に水溶性バインダーを添加する方法や可溶性石灰に可溶性珪酸、塩基性物質および燐酸等を添加し、反応させて造粒する方法等がある。カキ殻は石灰質肥料の1種であるが、今まで提案されている上記のような方法では造粒が満足にできないか、あるいはある程度造粒はよくできても施肥した時に崩壊しにくいという問題があった。一方、熔成燐肥の造粒は熔成燐肥に水溶性バインダーや硫酸マグネシウムの添加、廃糖蜜発酵廃液またはパルプ廃液とアルカリ土金属水和物の併用、緩効性窒素肥料と過燐酸石灰または重過燐酸石灰の添加等により達成されており、また熔成燐肥に燐酸を反応させて造粒する方法もある。さらに腐植肥料の造粒については、今までに腐植肥料単独で造粒化する方法をを提案されたものはなく、前記のようにスラグに燐酸と腐植酸を添加し、造粒する方法が唯一提案されている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、カキ殻に、燐酸肥料、腐植肥料および苦土肥料の中から選んだ少なくとも1種以上の肥料を混合して、品質の良好な一粒混合肥料を得るために鋭意研究の結果、達成されたものである。つまり、本発明は、微粉砕したカキ殻に、燐酸肥料、腐植肥料および苦土肥料の中から選んだ少なくとも1種以上の肥料を混合し、これに、リグニン化合物およびアルコール発酵廃液の中から選んだ少なくとも1種の水溶性バインダーを添加・混練して造粒せしめたことを特徴とする水中および土中崩壊性の良好なカキ殻の一粒混合肥料である。本発明の燐酸肥料としては、熔成燐肥、苦土重焼燐等の加工燐酸肥料が速効性成分と遅効性成分がバランス良く含まれていて、肥料としての効果が長期的持続するし、造粒品の品質も優れているので好ましい。また腐植肥料としてはとくに限定はなく、日本重化学工業(株)製の商品名アズミン、日本肥糧(株)製の登録商標名ハイフミン等が使用できる。苦土肥料としては、水酸化苦土肥料、硫酸苦土肥料、酢酸苦土肥料、腐植酸苦土肥料、加工苦土肥料、リグニン苦土肥料、副産苦土肥料、混合苦土肥料等が使用できるが、この中でも特に水酸化苦土肥料と硫酸苦土肥料が作物の生育に大きな効果を有しており、望ましい。
【0007】造粒できる水溶性バインダーとしては、リグニン酸、リグニンスルホン酸ソーダ、リグニン酸ソーダなどのリグニン化合物、およびアルコール発酵廃液(廃糖蜜発酵廃液)の中から選んだ少なくとも1種があげられるが、本発明の目的にはリグニン化合物が、造粒のしやすさと水中および土中崩壊性の点で最良である。水溶性バインダーは、カキ殻と肥料の合計量に対して4?8重量%の範囲で添加するのが好ましい。さらに造粒品の形状は直径が1?4mmの球形が機械散布がスムースにできて、施肥後の崩壊性も適度に行われるので好ましい。カキ殻と、その他、つまり燐酸肥料、腐植肥料および/または苦土肥料の配合割合は任意に選ぶことができるが、カキ殻以外の肥料を全重量中5%以上含む方が良い。今までは、粒子化が難しいとされてきたカキ殻の造粒を前記のような本発明により達成できたことは農業の発展に大いに貢献できる。
【0008】
【作用】
以上述べたように本発明は、カキ殻に、燐酸肥料、腐植肥料および苦土肥料を適当量づつ混合し、これにリグニン化合物およびアルコール発酵廃液の中から選んだ少なくとも1種の水溶性バインダーを添加・混練して、造粒したカキ殻の一粒混合肥料で、この方法では用意に造粒化ができて、粒子の大きさの均斉度も良かった。本発明でカキ殻の造粒化が成功したことにより、機械散布が可能となって、3Kと言われているきびしい作業の省力化ができ、農業の労働が大きく軽減された。またこの肥料は成分が均一であるために、今までの燐酸肥料と石灰質肥料を別々に造粒化し、これらを適当な比率で混合して(バルクブレンド)施肥する方法に比して、成分的なムラが生じない。さらにこのものは施肥後、粒子が容易に崩壊し、土中への分散が良好であるので作物の生育に非常に効果が大きいという特長を持っている。
【0009】
【実施例1】
まず、カキ殻を粉砕機で小さく粉砕し、篩にかけて大きいものを取り除いた。次いで、この小さい粒子のカキ殻と小さく粉砕した熔成燐肥を重量比率で8:2の割合でブレンダーに仕込んでよく混合し、これにカキ殻と熔成燐肥の合計量に対して、リグニンスルホン酸ソーダを5重量%添加して、よく混練した。さらにこのものを造粒機に仕込んで、水を少量づつ噴霧しながら造粒した結果、直径1?4mmのほぼ真円形をしたきれいな粒子が得られた。このものを作物に施肥したところ、施肥しやすく、また崩壊性が良かったので、作物の生育が良好であった。
【0010】
【実施例2】
まず、カキ殻を粉砕機で小さく粉砕し、篩にかけて大きいものを取り除いた。次いでこのカキ殻粉末と小さい粒子状の水酸化苦土肥料肥料をそれぞれ重量比率で60:40の割合でブレンダーに仕込んでよく混合し、これにカキ殻と水酸化苦土肥料の合計量に対してリグニンスルホン酸ソーダを4重量%添加してよく混練した。さらにこのものを造粒機に仕込んで、水を少量づつ噴霧しながら造粒した結果、直径1?4mmのほぼ真円形をしたきれいな粒子が得られた。このものを作物に施肥したところ、施肥しやすく、また崩壊性が良かったので、作物の生育が良好であった。
【0011】
【実施例3】
まず、カキ殻を粉砕機で小さく粉砕し、篩にかけて大きいものを取り除いた。次いでこのカキ殻粉末と小さい粒子状の苦土重焼燐と腐植肥料をそれぞれ重量比率で70:20:10の割合でブレンダーに仕込んでよく混合し、これにカキ殻と苦土重焼燐と腐植肥料の合計量に対してリグニン酸ソーダを8重量%添加してよく混練した。さらにこのものを造粒機に仕込んで、水を少量づつ噴霧しながら造粒した結果、直径1?4mmのほぼ真円形をしたきれいな粒子が得られた。このものを作物に施肥したところ、施肥しやすく、また崩壊性が良かったので、作物の生育が良好であった。
【0012】
【発明の効果】
以上述べたように本発明は、カキ殻に、燐酸肥料、腐植肥料および苦土肥料の中から選んだ1種以上の肥料を適当量づつ混合し、これに、リグニン化合物およびアルコール発酵廃液の中から選んだ少なくとも1種の水溶性バインダーを添加・混練して造粒したカキ殻の一粒混合肥料で、この方法で使用する主要原料をはじめ、造粒剤も安価で、また使用設備も特別なものは必要とせず、一般的な設備で十分製造できるので、低コストの一粒混合肥料が得られるようになった。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉砕したカキ殻に、燐酸肥料、腐植肥料および苦土肥料の中から選んだ少なくとも1種以上の肥料を全重量中少なくとも5%混合し、これに、リグニン化合物およびアルコール発酵廃液の中から選んだ少なくとも1種の水溶性バインダーを添加・混練して造粒せしめたことを特徴とする水中および土中崩壊性の良好なカキ殻の一粒混合肥料。
【請求項2】
燐酸肥料が熔成燐肥、苦土重焼燐等の加工燐酸肥料である請求項1に記載の水中および土中崩壊性の良好なカキ殻の一粒混合肥料。
【請求項3】
苦土肥料が水酸化苦土肥料または硫酸苦土肥料である請求項1に記載の水中および土中崩壊性の良好なカキ殻の一粒混合肥料。
【請求項4】
カキ殻と肥料の合計量に対して、水溶性バインダーを4?8重量%の範囲で添加する請求項1に記載の水中および土中崩壊性の良好なカキ殻の一粒混合肥料。
【請求項5】
造粒を直径1?4mmの球形にする請求項1に記載の水中および土中崩壊性の良好なカキ殻の一粒混合肥料。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2010-02-03 
出願番号 特願平7-291886
審決分類 P 1 41・ 851- Y (C05G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柳 和子  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 原 健司
井上 千弥子
登録日 2000-07-14 
登録番号 特許第3087944号(P3087944)
発明の名称 カキ殻の一粒混合肥料  
代理人 SK特許業務法人  
代理人 SK特許業務法人  

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