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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C02F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C02F
管理番号 1213265
審判番号 不服2007-964  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-11 
確定日 2010-03-11 
事件の表示 特願2002- 72225「紫外線併用オゾン促進酸化水処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月24日出願公開、特開2003-266088〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成14年3月15日に出願した特許出願であって、平成18年10月31日付け(平成18年12月12日発送)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年1月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年2月9日付けで手続補正がなされたものであり、その後、平成21年1月15日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋が通知され、これに対する回答書が平成21年3月17日に提出された。

II.平成19年2月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年2月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正により、本願の願書に添付した本願明細書の【特許請求の範囲】の【請求項1】が次のように補正された。

【請求項1】
被処理水を取り込む水処理槽と、
この水処理槽内の底面から上部に向かう軸方向に配置され、かつ外周側に紫外線放射面を備え、この紫外線放射面に沿って流れる前記被処理水に紫外線を照射する紫外線ランプと、
水とオゾン化ガスとを混合させて水/オゾン化ガス混合流体を生成する水/オゾン化ガス混合流体生成装置と、
噴射口が前記紫外線ランプの紫外線放射面近傍に配置され、前記水/オゾン化ガス混合流体生成装置より吐出される水/オゾン化ガス混合流体を前記噴射口から前記紫外線ランプの紫外線放射面に沿って流れる前記被処理水に吹き付ける噴射ノズルと、
を備えたことを特徴とする紫外線併用オゾン促進酸化水処理システム。

2.上記本件補正については、本願の願書に最初に添付した本願明細書の【特許請求の範囲】の【請求項1】に記載された発明特定事項の「水処理槽」を「被処理水を取り込む水処理槽」に限定し、「紫外線ランプ」について「この水処理槽内の底面から上部に向かう軸方向に配置され、かつ外周側に紫外線放射面を備え」ることを限定し、紫外線を照射する「被処理水」に「紫外線放射面に沿って流れる」ことを限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。

3.独立特許要件について
3-1.引用文献の記載事項
(1)特開2000-51873号公報(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1;以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 処理槽と、
前記処理槽の内部に配設された管と、
前記管の内部に隙間を有するように配設され、紫外線を照射する紫外線照射ランプと、
難分解性物質を含む原水を前記管に送給する原水送給手段と、
前記原水に酸化剤を供給する酸化剤供給手段とを備えてなることを特徴とする有害物質処理装置。
【請求項2】 請求項1において、前記酸化剤がオゾンまたは過酸化水素であることを特徴とする有害物質処理装置。
【請求項3】 請求項1において、前記難分解性物質がダイオキシン類、ポリ塩化ビフェニル類、クロルベンゼン類、クロロフェノールおよびクロロトルエンから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする有害物質処理装置。
【請求項4】 請求項1において、前記管が紫外線透過性を有することを特徴とする有害物質処理装置。
【請求項5】 請求項1において、前記原水送給手段が前記原水の一部を前記管に送給する第一送給手段と、
前記原水の残りを前記処理槽内に直接送給する第二送給手段とを備えてなることを特徴とする有害物質処理装置。
【請求項6】 請求項5において、前記酸化剤供給手段が前記原水送給手段の前記第一送給手段に連結されていることを特徴とする有害物質処理装置。」(【特許請求の範囲】)
(イ)「【発明が解決しようとする課題】ところが、このようにして原水中の有害物質を長期(約3?6ヵ月)にわたって分解処理していると、紫外線照射ランプのまわりに各種の有機物や無機物などが次第に付着してしまい、紫外線の照射量が減少し、ヒドロキシラジカルの発生量が減少して、有害物質の分解処理効率が大幅に低下してしまう。このため、このような有害物質処理装置では、所定期間ごとに紫外線照射ランプの洗浄等を行わなければならず、保守点検等に非常に手間がかかってしまう。
このようなことから、本発明は、保守点検等を容易に行うことができる有害物質処理装置を提供することを目的とする。」(段落【0003】?【0004】)
(ウ)「すなわち、原水槽11内の原水1は、送給ポンプ13の作動により、その一部が送給管14を流通してオゾン発生器16からのオゾンガス2と混合されてオゾン水3となり、ガラス管18の内部に上方から送給されてUVランプ19の周面に沿って上方から下方に向かう水流を生じさせる一方、その残りが送給管15を流通して処理槽17内に直接送給されるのである。」(段落【0016】)
(エ)「このような有害物質処理装置の作用を図1を用いて次に説明する。送給ポンプ13を作動して原水槽11内の原水1を送出すると、当該送給ポンプ13で送出された原水1の一部が送給管14を流通してオゾン発生器16からのオゾンガス2と混合されてオゾン水3となってガラス管18の内部に上方から送給される一方、送給ポンプ13で送出された原水1の残りが送給管15を流通して処理槽17内に下方から流入する。このようにして処理槽17内に流入した原水1およびオゾンガス2(オゾン水3)は、UVランプ19からのUVによりヒドロキシラジカル(OHラジカル)を生じ、当該OHラジカルにより有害物質が分解処理され、処理水4として送出される。
ここで、ガラス管18の上部側から送給されたオゾン水3がUVランプ19の周面に沿って上方から下方へ向かって水流を生じさせていることから、上述したようにして原水1中の有害物質の分解処理を長期にわたって行っていても、UVランプ19の周囲へ付着する各種の有機物や無機物などをオゾン水3の水流により洗浄(特に無機物)することができると共に、オゾン水3中のオゾンの作用により分解(特に有機物)することができるので、UVの照射量の減少を大幅に抑えることができ、OHラジカルの発生量の減少を抑制して、有害物質の分解処理効率の低下を防止することができる。
したがって、UVランプの洗浄等を頻繁に行う必要がなくなるので、保守点検等を容易化することができる。
また、オゾン水3をUVランプ19の近傍に先に流通させるようにしたので、OHラジカルを効率よく生成させることができ、有害物質の分解効率をさらに向上させることができる。」(段落【0021】?【0024】)
(オ)「なお、本実施の形態では、UVランプ19の周囲に上方から下方へ向かう水流を生じさせるようにしたが、例えば、下方から上方へ向かう水流を生じさせることも可能であり、UVランプの向きや大きさなどに応じて、付着物を最も効率よく除去できる向きに水流を生じさせるように設定すればよい。」(段落【0027】)
(カ)「また、送給管14を流通してオゾン発生器16からオゾンガス2を送給された原水1を加圧すれば、オゾン溶解度の高いオゾン水3を供給することができるようになるので、OHラジカルの発生効率をさらに向上させることができる。」(段落【0028】)
(キ)【図1】(第5頁)には、上記(エ)の技術事項とともに、「処理槽17内にUVランプが垂直に配置され、オゾン水がUVランプの上部から送給される」ことが図示されている。

(2)特開2001-129572号公報(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2;以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 水にオゾンガスを溶解させたオゾン溶解水を原水中に供給すると共に、紫外線の照射または過酸化水素の添加のうちの少なくとも一方を行うことにより、ヒドロキシラジカルを発生させて当該原水に含まれている難分解性物質を分解処理することを特徴とする有害物質処理方法。
【請求項2】 請求項1において、
前記オゾン溶解水が、前記原水を処理した処理水の少なくとも一部にオゾンガスを溶解させたものであることを特徴とする有害物質処理方法。
【請求項3】 請求項1または2において、
前記原水に未溶解のオゾンガスを回収して前記オゾン溶解水の原料に再び利用することを特徴とする有害物質処理方法。」(【特許請求の範囲】)
(イ)「しかしながら、図3に示すように、加圧溶解槽16は、配管17を介して原水槽18の底部に連結すると共に、配管28を介して処理槽24の底部に連結しており、このような点で前述した第二番目の実施の形態と異なっている。
すなわち、前述した第二番目の実施の形態では、オゾン溶解水4を原水槽18にだけ送給するようにしたが、本実施の形態では、オゾン溶解水4を原水槽18だけでなく処理槽24にも送給するようにしたのである。」(段落【0052】?【0053】)
(ウ)「しかしながら、図4に示すように、原水1に溶解しなかった未溶解オゾンガス3aを給水管11等を流通する処理水6に再び供給するオゾンガス再利用手段である吸引ポンプ30、混合槽32等を設けており、このような点で前述した第二番目の実施の形態と異なっている。」(段落【0058】)
(エ)【図3】及び【図4】(第8頁)には、共に「処理水6にオゾン発生器12からのオゾンガス3が混合されて加圧溶解槽16を経由してオゾン溶解水4が原水槽18に導入される」ことが窺える(符号は【符号の説明】を参照)。

3-2.対比・判断
引用例1には、記載事項(ア)によれば「処理槽と、前記処理槽の内部に配設された管と、前記管の内部に隙間を有するように配設され、紫外線を照射する紫外線照射ランプと、難分解性物質を含む原水を前記管に送給する原水送給手段の第一送給手段と前記原水の残りを前記処理槽内に直接送給する第二送給手段とを備え、前記第一送給手段に連結され、前記原水にオゾンを供給するオゾン供給手段とを備えてなる有害物質処理装置」が記載されている。この記載中の「オゾン供給手段」に関し、記載事項(ウ)及び(エ)によると「原水槽内の原水は、送給ポンプの作動により、その一部が送給管を流通してオゾン発生器からのオゾンガスと混合されてオゾン水となり、ガラス管の内部に上方から送給されてUVランプの周面に沿って上方から下方に向かう水流を生じさせる」ことが記載されている。なお、「紫外線照射ランプ」と「UVランプ」は同義である。
これらの記載を本願補正発明の記載振りに則して整理すると、引用例1には、「処理槽と、前記処理槽の内部に配設された管と、前記管の内部に隙間を有するように配設され、紫外線を照射する紫外線照射ランプと、難分解性物質を含む原水を前記管に送給する原水送給手段の第一送給手段と前記原水の残りを前記処理槽内に直接送給する第二送給手段とを備え、前記第一送給手段に連結され、前記原水にオゾンを供給するオゾン供給手段とを備え、原水の一部がオゾン発生器からのオゾンガスと混合されてオゾン水となり、ガラス管の内部に上方から送給されて紫外線照射ランプの周面に沿って上方から下方に向かう水流を生じさせる有害物質処理装置」の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているといえる。

そして、本願補正発明と引用例1発明を対比すると、引用例1発明の「処理槽」、「紫外線照射ランプ」及び「有害物質処理装置」は、それぞれ機能及び構成からみて、本願補正発明の「水処理槽」、「紫外線ランプ」及び「紫外線併用オゾン促進酸化水処理システム」に相当し、引用例1発明の「処理槽」には被処理水が取り込まれることは明らかである。また、引用例1発明の「紫外線照射ランプ」は、記載事項(キ)によれば「処理槽内に垂直配置され」、周囲に紫外線放射面を有することは自明であるから、このことは、本願補正発明の「紫外線ランプ」が「水処理槽内の底面から上部に向かう軸方向に配置され」、「外周側に紫外線放射面を備え」ることに相当する。そして、引用例1発明の「原水の一部がオゾン発生器からのオゾンガスと混合されてオゾン水となり、ガラス管の内部に上方から送給されて紫外線照射ランプの周面に沿って上方から下方に向かう水流を生じさせる」ことは、本願補正発明の「前記水/オゾン化ガス混合流体生成装置より吐出される水/オゾン化ガス混合流体を前記噴射口から前記紫外線ランプの紫外線放射面に沿って流れる前記被処理水に吹き付ける」ことと、「水/オゾンの混合流体が生成され、該流体が紫外線照射ランプの上方から送給され、紫外線照射ランプの周面に沿って上方から下方に向かって流れる」点で共通している。
してみると、両者は、「被処理水を取り込む水処理槽と、この水処理槽内の底面から上部に向かう軸方向に配置され、かつ外周側に紫外線放射面を備え、被処理水に紫外線を照射する紫外線ランプを備え、水/オゾンの混合流体が生成され、該流体が紫外線照射ランプの上方から送給され、紫外線照射ランプの周面に沿って上方から下方に向かって流れる紫外線併用オゾン促進酸化水処理システム」で一致し、次の点で相違する。

相違点a:本件補正発明が「水とオゾン化ガスとを混合させて水/オゾン化ガス混合流体を生成する水/オゾン化ガス混合流体生成装置」を備えているのに対し、引用例1発明は「原水の一部がオゾン発生器からのオゾンガスと混合されてオゾン水とな」る点
相違点b:本件補正発明が「噴射口が前記紫外線ランプの紫外線放射面近傍に配置され、水/オゾン化ガス混合流体を前記噴射口から前記紫外線ランプの紫外線放射面に沿って流れる前記被処理水に吹き付ける噴射ノズル」を備えるのに対し、引用例1発明は「オゾン水」が「ガラス管の内部に上方から送給されて紫外線照射ランプの周面に沿って上方から下方に向かう水流を生じさせ」ている点

そこで、相違点について検討する。
(A)相違点aについて
引用例2には、 記載事項(ア)に「水にオゾンガスを溶解させたオゾン溶解水を原水中に供給すると共に、紫外線の照射または過酸化水素の添加のうちの少なくとも一方を行うことにより、ヒドロキシラジカルを発生させて当該原水に含まれている難分解性物質を分解処理する」こと、及び「原水に未溶解のオゾンガスを回収して前記オゾン溶解水の原料に再び利用すること」が記載されている。また、記載事項(イ)及び(ウ)によれば「加圧溶解槽は、配管を介して原水槽の底部に連結」された実施の形態において「原水に溶解しなかった未溶解オゾンガス」が含まれていることが分かる。また、記載事項(エ)によれば「処理水6にオゾン発生器12からのオゾンガス3が混合されて加圧溶解槽16を経由してオゾン溶解水4が原水槽18に導入される」ことが開示されている。
これらの記載から、引用例2には、オゾンによる難分解性物質を分解処理する装置において、オゾン発生器からのオゾンガスが混入され、加圧溶解槽を経たオゾン溶解水には、未溶解オゾンガスが含まれ、この未溶解ガスが回収されることが記載されているといえる。オゾンガスは一般的に水に溶解され難いものであり、排オゾンの発生は周知(例えば、特開2001-96284号公報の【図1】参照)であり、引用例2のように加圧溶解槽を用いてもなお未溶解ガスが包含されていることを勘案すると、引用例1発明のオゾン水は、引用例2に記載のオゾン溶解水に他ならず、該オゾン水には未溶解ガスが含まれていることが推認できる。このことは、引用例1発明が、記載事項(カ)に「また、送給管14を流通してオゾン発生器16からオゾンガス2を送給された原水1を加圧」することが付加的に記載されていることからみても、引用例2に記載されるような加圧溶解槽を用いるものでないことから、より未溶解ガスが混在しているものとみることができる。
してみると、引用例1発明のオゾン水は、実質的に未溶解のオゾンガスを含むことから、本願補正発明の「水/オゾン化ガス混合流体」と差異はなく、相違点aは実質的に相違点とはいえない。
仮に、両者に文言上の違いがあるにせよ、引用例1発明の「オゾン水」を「相違点aに係る本願補正発明の「水/オゾン化ガス」と表現することに格別困難性はない。
(B)相違点bについて
引用例1発明には、オゾン水の具体的な送給手段の記載はないが、「オゾン水」が「ガラス管の内部に上方から送給されて紫外線照射ランプの周面に沿って上方から下方に向かう水流を生じさせ」ており、これは、記載事項(エ)に記載されるとおり、「UVランプ19の周囲へ付着する各種の有機物や無機物などをオゾン水3の水流により洗浄(特に無機物)することができる」ことを意図したものであることは明らかである。また、オゾンを水槽へ供給する際に、ディフューザーやエジェクターを用いることは周知(例えば、特開2001-96284号公報の段落【0028】、特開2001-149964号公報の段落【0044】、特開2001-259666号公報の段落【0035】参照)である。
これらのことに照らせば、引用例1発明のオゾン水供給手段として、水流による洗浄をより向上させるために噴射させようとすることは、当業者であれば容易に想到し得ることであり、そのことに伴って噴射ノズルを設けるなど相違点bに係る本願補正発明の構成を構築することは設計的な事項であるといえる。
そして、本願補正発明の上記相違点を採ることによる効果も引用例1、引用例2及び周知技術から予測し得ることといえ、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用例1発明、上記引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3-3.むすび
以上のとおりであるから、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明
平成19年2月9日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1?14に記載された発明は、平成18年7月10日付けで手続補正された明細書および図面の記載からみて、その明細書の特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりである。

【請求項1】
水処理槽内に配置され、この水処理槽内に満たされた被処理水に紫外線を照射する紫外線ランプと、
水とオゾン化ガスとを混合させて水/オゾン化ガス混合流体を生成する水/オゾン化ガス混合流体生成装置と、
噴射口が前記紫外線ランプの紫外線放射面近傍に配置され、前記水/オゾン化ガス混合流体生成装置より吐出される水/オゾン化ガス混合流体を前記噴射口から前記紫外線ランプの紫外線放射面に吹き付ける噴射ノズルと、
を備えたことを特徴とする紫外線併用オゾン促進酸化水処理システム。

IV.原査定の拒絶理由
原査定の拒絶理由は、「この出願は、平成18年4月24日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶すべきものである。」であり、平成18年4月24日付け拒絶理由通知書に記載の理由は「この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物である引用文献1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。引用文献1:特開2000-51873号公報、引用文献2:特開2001-129572号公報」というものである。

V.引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及び引用文献2は、上記引用例1及び引用例2であり、それらの記載事項は、上記「II.3-1」に記載したとおりである。そして、引用例1発明は、上記「II.3-2」に記載したとおり、「処理槽と、前記処理槽の内部に配設された管と、前記管の内部に隙間を有するように配設され、紫外線を照射する紫外線照射ランプと、難分解性物質を含む原水を前記管に送給する原水送給手段の第一送給手段と前記原水の残りを前記処理槽内に直接送給する第二送給手段とを備え、前記第一送給手段に連結され、前記原水にオゾンを供給するオゾン供給手段とを備え、原水の一部がオゾン発生器からのオゾンガスと混合されてオゾン水となり、ガラス管の内部に上方から送給されて紫外線照射ランプの周面に沿って上方から下方に向かう水流を生じさせる有害物質処理装置」というものである。

VI.対比・判断
本願発明1は、上記「II.3.」で検討した本願補正発明1において、「被処理水を取り込む水処理槽と、この水処理槽内の底面から上部に向かう軸方向に配置され、かつ外周側に紫外線放射面を備え、この紫外線放射面に沿って流れる前記被処理水」が特定されていなく、「水/オゾン化ガス混合流体を前記噴射口から前記紫外線ランプの紫外線放射面に沿って流れる前記被処理水に吹き付ける噴射ノズル」が「水/オゾン化ガス混合流体を前記噴射口から前記紫外線ランプの紫外線放射面に吹き付ける噴射ノズル」である点に違いがあるが、他の構成は、本願補正発明1と同じである。
そこで、上記違いの点の噴射口が「前記紫外線ランプの紫外線放射面に沿って流れる前記被処理水に吹き付ける」ものであること(本願補正発明)と「前記紫外線ランプの紫外線放射面に吹き付ける」ものであること(本願発明1)について検討すると、吹き付ける対象が紫外線照射面か、該面に沿って流れる被処理水かの違いがあるが、いずれにしても作用の観点からみると被処理水を介して紫外線照射面に吹き付けていることでは実質的に違いがある訳ではない。仮に、そうでないとしても、引用例1の記載事項(オ)に「付着物を最も効率よく除去できる向きに水流を生じさせるように設定する」ことが記載されており、この記載に照らせば、付着物を除去効率を考えて、紫外線照射面に吹き付けることを特定することに格別の困難性はない。
してみると、本願発明1は、本願補正発明の特定事項を実質的に全て含むものであるから、本願補正発明と同様に、前記「II.3-2」でみた理由により、引用例1、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は、回答書において、補正案を提示しているので検討しておくと、補正案は(i)「筒状のランプであって、ランプ外周面を紫外線照射面」とする点、(ii)「紫外線照射面に向けて吹き付ける」点を限定するものであるが、(i)の点は、引用例1に開示があり、(ii)の点については、本願発明1の「紫外線放射面に吹き付ける」ことと実質的な違いはなく、引用例1発明の「紫外線照射ランプの周面に沿って上方から下方に向かう水流を生じさせ」ることは、作用効果の観点からみればオゾン水の送給方向は紫外線照射面に向かっていることといえる。また、そうでないとしても格別の困難性はない。してみると、補正案をみても、上記結論を覆すまでには至らない。

VII.むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、本願の出願日前に頒布された引用文献1、引用文献2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。しかるに、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-06 
結審通知日 2010-01-12 
審決日 2010-01-25 
出願番号 特願2002-72225(P2002-72225)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C02F)
P 1 8・ 575- Z (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小久保 勝伊  
特許庁審判長 大黒 浩之
特許庁審判官 斉藤 信人
小川 慶子
発明の名称 紫外線併用オゾン促進酸化水処理システム  
代理人 三好 秀和  

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