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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1213274
審判番号 不服2007-4530  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-14 
確定日 2010-03-11 
事件の表示 平成10年特許願第236705号「ペプチド含有食品」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 2月29日出願公開、特開2000- 60489〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成10年8月24日の出願であって、平成18年10月19日付けの拒絶理由通知に対して、平成18年12月14日に意見書及び手続補正書が提出され、その後、平成19年1月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年2月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成19年3月15日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成19年3月15日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成19年3月15日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1である、
「かつお節をサーモリシンで加水分解して得られ、Leu-Lys-Pro-Asn-Metを0.1?0.3重量%含むオリゴペプチドと、茶とを含有することを特徴とするペプチド含有食品。」を、
「かつお節をサーモリシンで加水分解率1?50%となるように加水分解して得られ、Leu-Lys-Pro-Asn-Metを0.1?0.3重量%含むオリゴペプチドと、茶とを含有することを特徴とするペプチド含有食品。」に補正することを含むものである。

2 補正の適否
上記補正は、「加水分解」を「加水分解率1?50%となるように加水分解」とするものであって、該補正は、願書に最初に添付した明細書の記載からみて新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものであり、また、発明を特定する事項である「加水分解」を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3 独立特許要件の検討
(1)本願補正発明
「かつお節をサーモリシンで加水分解率1?50%となるように加水分解して得られ、Leu-Lys-Pro-Asn-Metを0.1?0.3重量%含むオリゴペプチドと、茶とを含有することを特徴とするペプチド含有食品。」

(2)引用例に記載された事項
原査定において、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとして引用された引用文献2である「特開平3-168046号公報」(以下、「引用例1」という。)及び引用文献7である「特開平4-144696号公報」(以下、「引用例2」という。)には、以下の記載がある。

(2-1)引用例1に記載された事項
(1-a)「(1)茶抽出物、サイクロデキストリン及び/又はペプチドからなる、茶抽出物含有組成物
(2)茶抽出物、サイクロデキストリン及び/又はペプチドからなる組成物を含有する食品」(特許請求の範囲の項)
(1-b)「そこで、本発明者は、種々検討した結果、サイクロデキストリン及びペプチドをそれぞれ単独で茶の抽出液に添加すると、その苦味が抑えられ、又、併用すると相乗効果を発揮し、食品素材として利用しうるようになることも見いだした。」(1頁右下欄19行?2頁左上欄3行)
(1-c)「本発明において茶としては生の茶葉や緑茶、紅茶、ウーロン茶などの加工茶など特に制限ない。
その抽出は水による抽出が好ましく、又、熱水、冷水いずれの抽出法でも良いが、効率良く抽出するためには、熱水抽出が好ましい。又、抽出物は、水抽出液そのものでもよく又それを乾燥したものでもよい。」(2頁左上欄9?15行)
(1-d)「ペプチドは蛋白質の自己消化分解により得られる分子量1000-5000程度のものが好ましく、特にイワシの筋肉由来のものが好ましい。」(2頁左上欄19行?右上欄1行)
(1-e)「本発明における食品としては、特に制限ないが、例えばドリンク剤、ジュース、スポーツドリンク、ビスケット、クッキー、ゼリー、キャンデーなどがあげられる。」(2頁左下欄7?10行)
(1-f)「この結果から明らかなように、茶抽出物水溶液にサイクロデキストリン、ペプチドを単独、もしくは併用で添加すると茶抽出物水溶液の苦味が和らぐことが示された。
また、単独添加よりも併用した方がその効果が高いことが判明した。
このように本発明の茶抽出物はその苦味を軽減、もしくは全く感しさせないもので、極めて食べ易いので、食品素材として利用しうるものである。
そしてこの茶抽出物を添加した食品に茶成分の抗ガン作用、血中コレステロール調製作用、血圧上昇抑制作用、その他種々の作用が期待できる。」(3頁右上欄1?11行)

(2-2)引用例2に記載された事項
(2-a)「1.蛋白質をサーモライシンで加水分解することを特徴とするアンギオテンシン交換酵素阻害剤含有組成物の製造方法
2.蛋白質としてカツオ又はカツオ由来物質を使用する請求項1記載の製造方法」(特許請求の範囲の項)
(2-b)「本発明の活性をもつ組成物は上記のサーモライシンを用いる場合に特に効果的に得られ、他の公知のプロテアーゼであるペプシン、トリプシン、キモトリプシン等で蛋白を分解しても本発明の如き強力な作用をもつ組成物は得られない。・・・
蛋白質をサーモライシンで加水分解するには、蛋白質の性状により処法は異なるが、難溶性の場合には熱水に蛋白質を混合し強力な撹拌でホモジナイズした後、サーモライシンを蛋白質溶解液に対して0.05?5重量%添加し、温度10?60℃、PH4?8、反応時間10分?10時間、好ましくは1?6時間の反応条件下て疎水性アミノ酸のペプチド結合が分解率5%以上になるまて静置又は撹拌下、反応を続けて目的物を得る。」(2頁右上欄6行?左下欄2行)
(2-c)「これらの製剤は、本発明のペプチド類を0.01%以上、好ましくは0.5?70%の割合で含有することかできる。これらの製剤はまた、治療上価値ある他の成分を含有していてもよい。」(3頁左上欄3?6行)
(2-d)「実施例1、比較例1?4
カツオ節5gに水40mlを加え充分ホモジナイズし、第1表に示すプロテアーゼを作用させた後、100℃で10分間煮沸後放置して得た上澄液のアンギオテンシン変換酵素阻害活性を測定した。
(プロテアーゼの作用条件)
サーモライシン、トリプシン、キモトリプシンを作用させる場合は反応液を水酸化ナトリウムでPH7.0とし、又ペプシンを作用させる場合は塩酸でPH1.6として、反応温度37℃で5時間静置反応を行った。
酵素量はカツオ節液に対して全て1/100重量部添加した。」(3頁左上欄13行?右上欄4行)
(2-e)「阻害率は阻害剤なしで反応したときのOD_(228)を100%とし、反応時間0分のときのOD_(228)を0%として求め阻害率50%の時の阻害剤(本発明のペプチド)の濃度IC_(50)(mg/ml)で活性を表示した。結果を第1表に示す。」(3頁左下欄5?9行)の記載とともに、「第1表」に「プロテアーゼ」が「サーモライシン」の場合、阻害剤の濃度「IC_(50)(mg/ml)」は「0.01」と記載されている。
(2-f)「本発明は、天然物から調製でき、殊に血圧降下剤又は血圧降下食品として有用であるアンギオテンシン変換酵素阻害剤含有組成物か製造できる。」(4頁左下欄下から4?2行)

(3)引用例に記載された発明
(3-1)引用例1に記載された発明
引用例1の摘示(1-a)の「(2)」は、「茶抽出物、サイクロデキストリン及び/又はペプチドからなる組成物を含有する食品」であるから、引用例1には、
「茶抽出物及びペプチドからなる組成物を含有する食品」(以下、「引用発明1」という。)という発明が記載されているといえる。

(3-2)引用例2に記載された発明
引用例2の摘示(2-a)には、「1.蛋白質をサーモライシンで加水分解することを特徴とするアンギオテンシン交換酵素阻害剤含有組成物の製造方法
2.蛋白質としてカツオ又はカツオ由来物質を使用する請求項1記載の製造方法」と記載され、「カツオ由来物質」として、実施例1では「カツオ節」が用いられている。そして、摘示(2-b)には「疎水性アミノ酸のペプチド結合が分解率5%以上になるまて静置又は撹拌下、反応を続けて目的物を得る。」と記載され、また、摘示(2-c)には、「これらの製剤は、本発明のペプチド類を0.01%以上、好ましくは0.5?70%の割合で含有することかできる。」との記載があり、これらの記載を総合して本願補正発明になぞると、引用例2には、
「カツオ節をサーモリシンで加水分解率5%以上となるように加水分解して得られ、このペプチドを0.01%以上含むペプチド含有製剤」(以下、「引用発明2」という。)という発明が記載されているといえる。

(4)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1は、ペプチドを含むものであるから、「ペプチド含有食品」である。また、本願補正発明の「茶」は、本願明細書の「該茶の形態としては、上記で述べた茶の茶葉を粉砕して粉末状、顆粒状にしたもの、あるいは上記の茶の(熱)水、各種アルコール、有機溶媒抽出液、あるいは該抽出液を後述する方法により粉末状、顆粒状にしたものが用いられる。」(段落【0005】)との記載に徴し、「抽出物」も含まれるから、両者は、
「ペプチドと、茶(抽出物)とを含有することを特徴とするペプチド含有食品」
で一致し、
(ア)「ペプチド」が、本願補正発明では、「かつお節をサーモリシンで加水分解率1?50%となるように加水分解して得られ、Leu-Lys-Pro-Asn-Metを0.1?0.3重量%含むオリゴペプチド」であるのに対し、引用発明1では、そうでない点、
で相違する。(以下、「相違点(ア)」という。)

(5)判断
(5-1)相違点(ア)について
本願補正発明の出願前において、かつお節をサーモライシンで加水分解すると、強力なACE阻害活性を有するオリゴペプチドが得られ、このオリゴペプチドのアミノ酸配列は、Leu-Lys-Pro-Asn-Metであることが当業者に周知であった。
(例えば、「薬理と治療」(1997)25巻8号2161頁には、
「われわれは、伝統的な日本食であるかつお節をサーモライシンで加水分解することで強力なACE阻害活性の得られることを見出し、このかつお節オリゴペプチドの示すACE阻害活性および血圧降下作用について検討を行ってきた。その結果、Leu-Lys-Pro-Asn-Met(LKPNM)が血圧降下作用に関与する主要な成分であることを明らかにした。」との記載がある。)
ところで、引用発明2は、
「カツオ節をサーモリシンで加水分解率5%以上となるように加水分解して得られ、このペプチドを0.01%以上含むペプチド製剤」であるところ、上記知見に接した当業者であれば、引用発明2に係る「ペプチド」は、使用基質及び使用酵素が同じであるから、「Leu-Lys-Pro-Asn-Met」というアミノ酸配列を有するオリゴペプチドであると理解する。
しかるに、引用発明1に係る「ペプチド含有食品」は、
「そしてこの茶抽出物を添加した食品に茶成分の抗ガン作用、血中コレステロール調製作用、血圧上昇抑制作用、その他種々の作用が期待できる。」(摘示(1-f))と記載されているように、「血圧上昇抑制作用」を目途とするものであるから、配合するペプチドとして、強力な血圧上昇抑制作用を有することが知られている引用発明2に係る「ペプチド製剤」、すなわち、「カツオ節をサーモリシンで加水分解率5%以上となるように加水分解して得られ、得られたLeu-Lys-Pro-Asn-Metというアミノ酸配列を有するオリゴペプチドを0.01%以上含むペプチド製剤」を用いることは、当業者にとって容易に想到し得ることである。
そうしてみると、引用発明1において、「ペプチド」として、「カツオ節をサーモリシンで加水分解率5%以上となるように加水分解して得られ、得られたLeu-Lys-Pro-Asn-Metというアミノ酸配列を有するオリゴペプチドを0.01%以上含むペプチド製剤」を包含するところの、「かつお節をサーモリシンで加水分解率1?50%となるように加水分解して得られ、Leu-Lys-Pro-Asn-Metを0.1?0.3重量%含むオリゴペプチド」とすることは、当業者が容易になし得るところといえる。

(5-2)本願補正発明の効果について
本願補正発明の効果は、本願明細書によると、
「本発明のペプチド含有食品、特に茶は、ペプチド由来の苦みもなく、血圧降下作用、色、風味が長期に亘り安定である。」(段落【0026】)である。
しかし、引用例1には、「この結果から明らかなように、茶抽出物水溶液にサイクロデキストリン、ペプチドを単独、もしくは併用で添加すると茶抽出物水溶液の苦味が和らぐことが示された。」(摘示(1-f))との記載があり、この記載によると、ペプチドを含有する茶抽出物水溶液自体の苦味が和らぐと解されるから(すなわち、ペプチドに苦みがあるとしてもその苦みは呈さないと解される。)、本発明のペプチド含有食品も苦みを呈さないことは、当業者であれば容易に予測し得ることである。
そして、「色」「風味」に関し、実施例1?3において、それらを評価しているが、本願明細書によると、その評価は、
「ペプチド含有茶100部得た。該茶3.1gをアルミ袋に小分けして、20℃で、1ヶ月、1年保存後、血圧降下作用、苦み、色、風味を以下の基準で評価した。」であるところ、食品をアルミ袋に小分けし、20℃という温度で保存すると、1ヶ月や1年が経過しても、その食品の色や風味は変わらない、すなわち保存安定性は良好であることは当技術分野では常識であるから、実施例1?3に係る評価からは、本願補正発明の効果が格別なものであるとはいえない。

(5-3)請求人の主張に対して
請求人は、審判請求書において「試験例」を示し、これを根拠に、
「しかも、上記試験は、本発明の「Leu-Lys-Pro-Asn-Met」と茶の奏する血圧降下作用が、単にそれぞれの作用が相加されたものではなく、互いに相乗され、持続的な効果を示すものであることを開示している(上記試験例1と比較例2及び3の比較)。一方、上記試験例の比較例3?8として示す他の引例記載のペプチドは、このような相乗を一切示していない。したがって、「Leu-Lys-Pro-Asn-Met」が血圧降下作用を有することや、ペプチドを茶に配合することが公知であったとしても、「Leu-Lys-Pro-Asn-Met」を茶に適用し、容易に本発明の構成を得ることができたとは認められない。」(審判請求書の手続補正書14頁)と主張している。
しかし、上記「試験例」の<試料調製>は、
「試験例1
出願時の本願明細書における「実施例1」に従い、次の方法にてオリゴペプチドを得た。
カツオ節500部に、サーモライシン2部と水4000部に加えて、60℃で15時間、加水分解を行い、オリゴペプチド含有溶液を得た。該ペプチド溶液中にはLeu-Lys-Pro-Asn-Metが0.1重量%含まれ、その分解率は24%であった。
該溶液を濃縮し、スプレードライにより脱水し、粉末状オリゴペプチド100部を得た。
該オリゴペプチド57部と茶(麦茶エキス末16部、ほうじ茶エキス末10部、ウーロン茶エキス末10部)36部、パインファイバー5部、プルラン1部、リン酸カルシウム1部を混合して、試料100部を得た。
比較例1
上記試験例1の粉末状オリゴペプチド57部のみを試料とした。
比較例2
茶(麦茶エキス末16部、ほうじ茶エキス末10部、ウーロン茶エキス末10部)36部、パインファイバー5部、プルラン1部、リン酸カルシウム1部を混合して試料とした。」であって、血圧降下作用の有効成分として、「試験例1」では、「粉末状オリゴペプチド」57部と「茶(麦茶エキス末16部、ほうじ茶エキス末10部、ウーロン茶エキス末10部)」36部とを併用しているのに対し、「比較例1」では、「粉末状オリゴペプチド」を試験例1と同じ「57部」のみ、「比較例2」では、「茶(麦茶エキス末16部、ほうじ茶エキス末10部、ウーロン茶エキス末10部)」を試験例1と同じ「36部」のみである。そうすると、血圧降下作用の有効成分として「粉末状オリゴペプチド」或いは「茶(麦茶エキス末16部、ほうじ茶エキス末10部、ウーロン茶エキス末10部)」を単独で用いた場合よりも、「粉末状オリゴペプチド」と「茶(麦茶エキス末16部、ほうじ茶エキス末10部、ウーロン茶エキス末10部)」とを併用した有効成分が多い場合の方が、血圧降下作用が高く評価されるのは当然のことである。したがって、上記請求人の主張は採用できない。

(5-4)まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものではない。
以上のとおり、上記補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、この補正を含む本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成19年3月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成18年12月14日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、下記のとおりである。

「かつお節をサーモリシンで加水分解して得られ、Leu-Lys-Pro-Asn-Metを0.1?0.3重量%含むオリゴペプチドと、茶とを含有することを特徴とするペプチド含有食品。」

第4 原査定の理由
拒絶査定の理由の概要は、本願発明は、その出願前に頒布された引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができるものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

第5 引用刊行物の記載事項
原査定で引用された引用文献2である「特開平3-168046号公報」の記載事項及び記載された発明は上記の「第2[理由]3 (2-1)及び(3-1)」に記載したとおりである。
同引用文献7である「特開平4-144696号公報」の記載事項及び記載された発明は上記の「第2[理由]3 (2-2)及び(3-2)」に記載したとおりである。

第6 対比・判断
本願発明は、本願補正発明において「加水分解率1?50%となるように」という事項がないものに実質的に相当するから、本願発明と引用発明1は、
「ペプチドと、茶(抽出物)とを含有することを特徴とするペプチド含有食品」
で一致し、
(イ)「ペプチド」が、本願発明では、「かつお節をサーモリシンで加水分解して得られ、Leu-Lys-Pro-Asn-Metを0.1?0.3重量%含むオリゴペプチド」であるのに対し、引用発明1では、そうでない点、
で相違する。(以下、「相違点(イ)」という。)

これを検討するに、上記「第2[理由]3 (5-1)」で示したように、引用発明1において、「ペプチド」として、「かつお節をサーモリシンで加水分解率1?50%となるように加水分解して得られ、Leu-Lys-Pro-Asn-Metを0.1?0.3重量%含むオリゴペプチド」とすることは、当業者が容易になし得るところといえるのであるから、「ペプチド」として、これを包含するところの「かつお節をサーモリシンで加水分解して得られ、Leu-Lys-Pro-Asn-Metを0.1?0.3重量%含むオリゴペプチド」とすることは、引用発明1において、当業者が容易になし得るところといえる。

また、本願発明の効果も、上記「第2[理由]3 (5-2)」に示したとおり、格別なものであるとはいえない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された刊行物である引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできないので、本願は、その余の請求項に係る発明を検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-05 
結審通知日 2010-01-12 
審決日 2010-01-25 
出願番号 特願平10-236705
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23L)
P 1 8・ 575- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼ 美葉子  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 井上 千弥子
橋本 栄和
発明の名称 ペプチド含有食品  
代理人 岩橋 祐司  

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