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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B32B |
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管理番号 | 1213279 |
審判番号 | 不服2007-6080 |
総通号数 | 125 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-05-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-02-28 |
確定日 | 2010-03-11 |
事件の表示 | 特願2002-245502「ストレッチ包装用積層フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月18日出願公開、特開2004- 82469〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この出願(以下、「本願」という。)は、平成14年8月26日の出願であって、平成18年11月13日付けで拒絶理由が通知された後、同年12月28日付けで意見書が提出されたが、平成19年1月25日付けで拒絶査定され、これに対し、同年2月28日付けで審判請求がされるとともに同年5月25日付けで審判請求書の手続補正書(方式)が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1は、願書に添付した明細書(以下、「本願明細書」という。)からみて、本願明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。 「少なくとも3層から構成される積層フィルムであって、両表面層がエチレン系重合体である(A)成分を主成分とし、中間層の少なくとも1層が下記に示した(B)成分30?75重量%、(C)成分20?60重量%及び(D)成分5?30重量%を含有する樹脂組成物を主成分とする混合樹脂層からなることを特徴とするストレッチ包装用積層フィルム。 (B)成分:下記▲1▼及び▲2▼の条件を満足する立体規則性が制御されたポリプロピレン系樹脂 ▲1▼^(13)C-NMRスペクトルから求められるメソペンタッド分率(mmmm)が0.2?0.7 ▲2▼ラセミペンタッド分率(rrrr)と(1-mmmm)が下記の関係を満たす [rrrr/(1-mmmm)]≦0.1 (C)成分:結晶融解ピーク温度が120℃以上である結晶性ポリプロピレン系樹脂 (D)成分:石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、ロジン系樹脂、及びそれらの水素添加誘導体の中から選ばれる少なくとも一種の樹脂」(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。) 第3 原査定の理由 原査定における拒絶理由の概要は、本願発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものであり、具体的には、「引用文献3、4には、包装用フイルムを構成するポリプロピレン樹脂として、請求項1に係る発明における(B)の規定を満足するものを採用することで、柔軟性や透明性等が向上することの具体的記載があるから、引用文献1、2に記載された発明において、このポリプロピレンを採用することは、当業者が容易になし得ることである。 また、その効果について検討しても(明細書の0014等を参照のこと。)、既に引用文献3、4において、具体的に開示されているといえ、特有の格別な効果を見出すことはできない。」というものである。 記 引用文献1 特開2000-44696号公報 引用文献2 特開2000-44695号公報 引用文献3 特開2002-47383号公報 引用文献4 特開2000-281723号公報 第4 当審の判断 1 刊行物及び刊行物の記載事項 刊行物1:特開2000-44696号公報 (原査定における引用文献1) 刊行物2:特開2002-47383号公報 (原査定における引用文献3) 本願出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1及び刊行物2には、以下の事項が記載されている。 (1)刊行物1 ・摘示事項1-a:「【請求項1】 下記(A)、(B)および(C)3成分を主成分とする混合樹脂層を少なくとも一層有し、動的粘弾性測定により周波数10Hz、温度20℃で測定した貯蔵弾性率(E′)が5.0×10^(8) dyn/cm^(2) ?5.0×10^(9) dyn/cm^(2) 、損失正接(tanδ)が0.2?0.8の範囲にあることを特徴とする食品包装用ストレッチフィルム。 (A)下記(1)?(3)の条件を満足し、^(13)C-NMRスペクトルから求められるメソペンタッド分率とラセモペンタッド分率の和(mmmm+rrrr)が30?70%の範囲にあり、分子鎖中に結晶性のブロックと非晶性のブロック部分が混在している立体規則性を制御された軟質ポリプロピレン系樹脂 (1)示差走査熱量計を用いて加熱速度10℃/分で昇温した時に測定されるガラス転移温度が-15℃以上 (2)示差走査熱量計を用いて加熱速度10℃/分で結晶融解後、200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温した時に測定される結晶化熱量が10?60J/g (3)メルトフローレート(MFR)(JISK7210、230℃、2.16kg荷重)が0.4?40g/10分 (B)石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、ロジン系樹脂、またはそれらの水素添加誘導体 (C)(A)成分以外のポリプロピレン系樹脂 ・・・(略)・・・ 【請求項4】 (A)、(B)および(C)3成分を主成分とする混合樹脂層の両面に、酢酸ビニル含有量が5?25重量%で、メルトフローレート(JISK7210、190℃、2.16kg荷重)が0.2?5g/10分のエチレン-酢酸ビニル共重合体を主成分とする層を積層したフィルムからなることを特徴とする請求項1乃至3記載のポリオレフィン系ストレッチ包装用フィルム。」(【特許請求の範囲】) ・摘示事項1-b:「【発明の属する技術分野】本発明は、食品包装用に好適に用いられるストレッチフィルム、特に塩素を含まない材料からなるストレッチ包装用フィルムに関する。」(【0001】) ・摘示事項1-c:「【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意検討の結果、特定の軟質ポリプロピレン系樹脂組成物を主成分として用い、また粘弾性特性を制御することにより包装作業性、包装仕上がり、弾性回復力、底シール性といった特性に加え、さらにフィルムの経時的な安定性および経済性にも優れた非塩ビ系ストレッチフィルムを得ることに成功したものであり、その要旨は、下記(A)、(B)および(C)3成分を主成分とする混合樹脂層を少なくとも一層有し、動的粘弾性測定により周波数10Hz、温度20℃で測定した貯蔵弾性率(E′)が5.0×10^(8) dyn/cm^(2) ?5.0×10^(9) dyn/cm^(2) 、損失正接(tanδ)が0.2?0.8の範囲にあることを特徴とするポリオレフィン系ストレッチ包装用フィルム(以下、ストレッチフィルム、あるいは単にフィルムと略することがある)にある。 (A)下記(1)?(3)の条件を満足し、メソペンタッド分率とラセモペンタッド分率の和(mmmm+rrrr)が30?70%の範囲にあり、分子鎖中に結晶性のブロックと非晶性のブロック部分が混在している立体規則性を制御された軟質ポリプロピレン系樹脂 (1)示差走査熱量計を用いて加熱速度10℃/分で昇温した時に測定されるガラス転移温度が-15℃以上 (2)示差走査熱量計を用いて加熱速度10℃/分で結晶融解後、200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温した時に測定される結晶化熱量が10?60J/g (3)メルトフローレート(MFR)(JISK7210、230℃、2.16kg荷重)が0.4?40g/10分 (B)石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、ロジン系樹脂、またはそれらの水素添加誘導体 (C)(A)成分以外のポリプロピレン系樹脂」(段落【0006】【0007】) ・摘示事項1-d:「【発明の実施の形態】以下、本発明を詳しく説明する。本発明ストレッチフィルムは、下記(A)、(B)および(C)3成分を主成分とする混合樹脂層を少なくとも一層有し、フィルム全体として特定の粘弾性特性を有している。 (A)下記(1)?(3)の条件を満足し、メソペンタッド分率とラセモペンタッド分率の和(mmmm+rrrr)が30?70%の範囲にあり、分子鎖中に結晶性のブロックと非晶性のブロック部分が混在している立体規則性を制御された軟質ポリプロピレン系樹脂 (1)示差走査熱量計を用いて加熱速度10℃/分で昇温した時に測定されるガラス転移温度が-15℃以上 (2)示差走査熱量計を用いて加熱速度10℃/分で結晶融解後、200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温した時に測定される結晶化熱量が10?60J/g (3)メルトフローレート(MFR)(JISK7210、230℃、2.16kg荷重)が0.4?40g/10分 (B)石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、ロジン系樹脂、またはそれらの水素添加誘導体 (C)(A)成分以外のポリプロピレン系樹脂」(【0008】) ・摘示事項1-e:「ここで、(A)成分である分子鎖中に結晶性のブロックと非晶性のブロック部分が混在している軟質ポリプロピレン系樹脂は、一般にゴム弾性を有し柔軟で破れにくく、透明性も良好であるという特性を有しており、また分子鎖中に存在する剛直性を示すイソタクチック構造とシンジオタクチック構造の結晶性のブロック部分と、エラストマー性を示すアタクチック構造の非晶性のブロック部分との割合をバランスさせることにより、本発明の目的を達成するのに適している。ここで、分子鎖中に結晶性のブロックと非晶性のブロック部分が混在しているとは、結晶性のブロックと非晶性のブロック部分がランダム的及び/またはブロック的に存在していることを意味しており、また各ブロック部分の連鎖長は任意でかまわないが、本発明においてはその分布がランダム的である方が、透明性、外観等の点から好ましい。また、本発明における主成分とは(A)、(B)および(C)の3成分を含有する層において、その層を構成する樹脂組成物中に占める3成分の合計重量比が少なくとも60重量%以上、好適には70重量%以上であることを表している。」(段落【0009】) ・摘示事項1-f:「また、プロピレンに基づく単量体単位が90モル%未満では、耐熱性が低下したり、立体規則性による結晶性の制御範囲が狭くなったり、α-オレフィンを共重合した場合にはガラス転移温度がポリプロピレン本来のガラス転移温度(-10℃前後)よりもかなり低下することにより常温での損失正接(tanδ)が極めて小さくなり好ましくなく、また経済性の観点からも好ましくない。立体規則性については結晶性のブロック部分の割合を示す1つの指標としてメソペンタッド分率とラセモペンタッド分率の和(mmmm+rrrr)が30?70%の範囲、好ましくはメソペンタッド分率(mmmm)が25?60%、特には25?50%かつ、メソペンタッド分率とラセモペンタッド分率の和(mmmm+rrrr)が40?65%の範囲に制御されたものが好ましい。ここで(mmmm+rrrr)が30%未満では、結晶性が低すぎて製膜性が極めて悪い他、常温ではフィルムが柔らかすぎたり強度が不足して実用上問題がある。また原料自体がブロッキングしやすくなり、ハンドリング性の面でも好ましくない。一方、(mmmm+rrrr)が70%を越えると、本発明の目的である常温における損失正接(tanδ)が所望の範囲内に入り難くなり好ましくない。またフィルム伸展時に大きな力を要し、また不均一な伸びしか示さず、ストレッチフィルムに適しない。 本発明に用いられるメソペンタッド分率(mmmm)やラセモペンタッド分率(rrrr)の値は、^(13)C-NMR(核磁気共鳴)スペクトルの測定結果に基づき算出する。すなわち、^(13)C-NMRスペクトルを測定し、メチル基の立体規則性によるケミカルシフトの違いにより、22.5ppm?19.5ppm領域に現れる各分裂ピーク(mmmm?mrrm)のシグナル強度比から求めた。上記mmmm(メソペンタッド分率)とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素-炭素結合による主鎖に対して、側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造あるいはその割合を意味し、rrrr(ラセモペンタッド分率)とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素-炭素結合による主鎖に対して、側鎖である5つのメチル基が交互に反対方向に位置する立体構造あるいはその割合を意味する。なお、メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et al(Macromolecules 8, 687, (1975))によった。 なお、(A)成分は、本発明の目的に適合するものであれば2種類以上を混合して用いることもできる。また、このような軟質ポリプロピレン系樹脂の製造方法としては、安価なプロピレンモノマーを主成分とし、各種のメタロセン系触媒(シングルサイト触媒)や固体状チタン系触媒などを用い、成形加工性の良好な立体規則性を制御した軟質ポリプロピレン系樹脂を効率的、かつ低コストで重合する方法が提案されており、使用する樹脂としては本発明の主旨を満足するものであれば特に限定されないが、具体的な商品としては、Huntsman Polymer Corporationの商品名「REXflex」が例示できる。」(段落【0014】?【0016】) ・摘示事項1-g:「本発明のフィルムの粘弾性特性を所望の範囲内とするには、前記(A)成分として適切なものを選ぶ必要があるが、(A)成分単独では常温における貯蔵弾性率(E′)が低く柔らかすぎたり、またガラス転移温度が高いため低温における伸びなどの低温特性が悪くなり、材料の選択範囲が極めて限られるため実用上不利になることが多い。そこで本発明においては、実用上所望の粘弾性特性を容易に得られるように、前記の(B)成分と(C)成分を混合する。(B)成分の石油樹脂などはガラス転移温度が高いため、混合物のガラス転移温度を高めることができる。このことにより常温においてストレッチフィルムとして好適な伸展性を示す貯蔵弾性率(E′)と適度の応力緩和性を示す損失正接(tanδ)との両立を達成可能とするものであり、(C)成分の(A)成分以外のポリプロピレン系樹脂は(A)、(B)成分と混合した場合に透明性を大きく損なうことなく混合物の強度を高めたり、低温特性を改良するとともに粘弾性特性を調整するものである。」(段落【0017】) ・摘示事項1-h:「そこで、本発明においては、(C)成分として(A)成分以外のポリプロピレン系樹脂を上記(A)+(B)成分に混合する。(C)成分としてのポリプロピレン系樹脂とは、(A)成分以外の軟質ポリプロピレン系樹脂であり、プロピレンを65モル%以上含有するプロピレンとエチレンまたは炭素数4?12程度のα-オレフィンとの共重合体、またはプロピレン単独重合体とこれらの混合物を例示することができる。プロピレン含量が65モル%未満であると結晶性が低すぎて、フィルム全体としての粘弾性特性や強度向上を達し得ない。また(A)成分との相溶性が低下し透明性が低下したり、製膜時の安定性にも欠ける。前述したように軟質ポリプロピレン系樹脂は、一般に高結晶性で強度も高く、ポリオレフィン系樹脂の中では比較的高融点で耐熱性も良好であるが、高結晶性のため伸展時には大きな力を要し、また不均一な伸びしか示さず、これらの特性は混合物になっても残存する。そのため本発明においては、伸びの良いフィルムを得るために、(C)成分としてのポリプロピレン系樹脂の少なくとも一部に比較的低結晶性のポリプロピレン系樹脂を使用するのが好ましい。また、比較的高結晶性のポリプロピレン系樹脂を用いる場合には、フィルム全体として所望の粘弾性特性の範囲になるようにその添加量をできるだけ少量にすることが好ましい。特にエチレンを10?30モル%程度含有する低結晶性のポリプロピレン系樹脂を適量混合させることは、フィルム全体としての低温特性と常温での粘弾性特性とのバランス調整が容易なことから好ましい。」(段落【0020】) ・摘示事項1-i:「さらにストレッチフィルムは低温時に使用されることもあり、低温特性(特に伸び)が優れていることが望ましいが、そのためには動的粘弾性測定により周波数10Hz、温度0℃で測定した貯蔵弾性率(E′)が1.5×10^(10)dyn/cm^(2) 以下の範囲にあることが好ましい。本発明に適合する主に立体規則性を制御した軟質ポリプロピレン系樹脂は、他の低結晶性ポリプロピレン系樹脂よりもガラス転移温度が高いので、低温伸びなどの柔軟性を確保するために上記特性を満たすよう配慮するのが好ましい。そのためには、メソペンタッド分率(mmmm)やラセモペンタッド分率(rrrr)などの結晶性ブロック部分の割合やプロピレンと共重合する成分の種類とその割合、あるいは(A)、(B)、(C)各成分の混合比率などを調整すればよい。本発明フィルムのE′とtanδを上記範囲内とするには、(A)、(B)、(C)3成分の混合比率を調整するのが最も効果的である。(A)成分に(B)成分を適量混合したものは、一般に常温付近で0.4?1.0の範囲のtanδを有している。また(C)成分の軟質ポリプロピレン系樹脂は一般に0.01?0.10の範囲のtanδを有しているから混合物として0.2?0.8の範囲のtanδを有するようにするには、(A)、(B)、(C)各成分の混合比率を、 (A)成分 20?80重量% (B)成分 5?25重量% (C)成分 10?60重量% とすればよい。ただし、(A)、(B)および(C)の3成分を含有する層において、その層を構成する樹脂組成物中に占める3成分の合計重量比は少なくとも60重量%以上、好適には70重量%以上である。」(段落【0024】) ・摘示事項1-j:「【実施例】以下、本発明を実施例でさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、本明細書中に表示されるフィルムについての種々の測定値および評価は次のようにして行った。ここで、フイルムの押出機からの引取り方向(流れ方向)を縦方向、その直交方向を横方向とよぶ。 ・・・(略)・・・ (8)経時変化 得られたフィルムの巻き物を温度50℃、相対湿度60%の条件の恒温室に10日間保管し、その後の表面状態と巻き返し性を評価した。 ◎…表面への添加物のブリードやフィルム同士のブロッキングが全くない。 ○…表面への添加物のブリードはほとんどないがフィルム同士のブロッキングが少しある。 △…表面への添加物のブリードが少しあり、フィルム同士のブロッキングにより剥離もやや重い。 ×…表面への添加物のブリードが多く、フィルム同士のブロッキングもひどく実用上使用不可 (実施例1) (A)成分 立体規則性を制御された軟質ポリプロピレン系樹脂(I)(プロピレン含量:100モル%、mmmm=35.3%、rrrr=15.4%、MFR=16g/10分、Tm=155℃、Huntsman Polymer Corporation製、「REXflex W101」):70重量% (B)成分 シクロペンタジエン系石油樹脂の水素添加誘導体(軟化温度125℃、ガラス転移温度81℃):20重量% (C)成分 低結晶性プロピレン-エチレン-プロピレン共重合体エラストマー(プロピレン含量:88モル%、230℃、2.16kg荷重におけるMFR=1.5g/10分、Tm=156℃、(株)トクヤマ製、P.E.R.T310J):10重量% 以上3成分からなる混合樹脂組成物を中間層として厚さ11μm、その両面にEVA(酢酸ビニル含量15重量%、190℃、2.16kg荷重におけるMFR=2.0g/10分)100重量部に防曇剤としてジグリセリンモノオレート3.0重量部を溶融混練した組成物の層を各々2μmとなるように、環状三層ダイ温度190℃、ブローアップ比5.5で共押出インフレーション成形して、総厚み15μm(2μm/11μm/2μm)のフィルムを得た。 なお、この軟質ポリプロピレン系樹脂(I)単体からなるフィルムを測定した特性は、以下の通りであった。 0℃における貯蔵弾性率(E′) 5.4×10^(9) dyn/cm^(2 )20℃における貯蔵弾性率(E′) 4.8×10^(8) dyn/cm^(2) 20℃における損失正接(tanδ) 0.34 ガラス転移温度(Tg) -6℃ 結晶化熱量 25J/g 結晶化温度(Tc) 99℃ (A)成分と(B)成分の混合物のみで測定した特性は、 0℃における貯蔵弾性率(E′) 1.9×10^(10)dyn/cm^(2 )20℃における貯蔵弾性率(E′) 1.7×10^(9) dyn/cm^(2) 20℃における損失正接(tanδ) 0.65 ガラス転移温度(Tg) 5℃ であった。 (C)成分単体で測定した特性は、 0℃における貯蔵弾性率(E′) 3.6×10^(9) dyn/cm^(2 )20℃における貯蔵弾性率(E′) 2.1×10^(9) dyn/cm^(2 )20℃における損失正接(tanδ) 0.07 ガラス転移温度(Tg) -25℃ 結晶化熱量 31J/g 結晶化温度(Tc) 101℃ であった。 (実施例2)実施例1において中間層と表裏層の積層厚み比を次のように変更した以外は実施例1と同様にして総厚み15μm(4μm/7μm/4μm)のフィルムを得た。 (実施例3)実施例1で使用した3種の樹脂の混合比率を (A)成分 50重量% (B)成分 20重量% (C)成分 30重量% に変更した以外は実施例1と同様にして総厚み15μm(2μm/11μm/2μm)のフィルムを得た。 (実施例4)実施例1で使用した3種の樹脂の混合比率を (A)成分 20重量% (B)成分 20重量% (C)成分 60重量% に変更した以外は実施例1と同様にして総厚み15μm(2μm/11μm/2μm)のフィルムを得た。 (実施例5)実施例1の(C)成分として使用した低結晶性プロピレン-エチレン-プロピレン共重合体エラストマーのかわりにプロピレン-エチレンランダム共重合体(エチレン含量4モル%、MFR=1.1g/10分、Tm=147℃)を用い、3種の樹脂の混合比率を (A)成分 70重量% (B)成分 10重量% (C)成分 20重量% に変更した以外は実施例1と同様にして総厚み15μm(2μm/11μm/2μm)のフィルムを得た。 なお、(C)成分単体で測定した特性は、 0℃における貯蔵弾性率(E′) 1.7×10^(10)dyn/cm^(2) 20℃における貯蔵弾性率(E′) 9.1×10^(9) dyn/cm^(2) 20℃における損失正接(tanδ) 0.06 ガラス転移温度(Tg) -5℃ 結晶化熱量 79J/g 結晶化温度(Tc) 104℃ であった。 (比較例1)実施例1で使用した3種の樹脂の混合比率を (A)成分 0重量% (B)成分 20重量% (C)成分 80重量% に変更した以外は実施例1と同様にして総厚み15μm(2μm/11μm/2μm)のフィルムを得た。 (比較例2)実施例1で使用した3種の樹脂の混合比率を (A)成分 0重量% (B)成分 30重量% (C)成分 70重量% に変更した以外は実施例1と同様にして総厚み15μm(2μm/11μm/2μm)のフィルムを得た。 (比較例3)実施例1の(A)成分として使用した軟質ポリプロピレン系樹脂(I)の代えて軟質ポリプロピレン系樹脂(II)(プロピレン含量:100モル%、mmmm=63.0%、rrrr=8.0%、MFR=2g/10分、Tm=158℃、Huntsman Polymer Corporation製、「REXflex W105」)を用いた以外は実施例1と同様にして総厚み15μm(2μm/11μm/2μm)のフィルムを得た。 なお、この軟質ポリプロピレン系樹脂(II)単体からなるフィルムを測定した特性は、以下の通りであった。 0℃における貯蔵弾性率(E′) 1.6×10^(10)dyn/cm^(2) 20℃における貯蔵弾性率(E′) 3.7×10^(9) dyn/cm^(2) 20℃における損失正接(tanδ) 0.14 ガラス転移温度(Tg) -6℃ 結晶化熱量 54J/g 結晶化温度(Tc) 108℃ であった。 (比較例4)実施例5で使用した3種の樹脂の混合比率を (A)成分 30重量% (B)成分 0重量% (C)成分 70重量% に変更した以外は実施例1と同様にして総厚み15μm(2μm/11μm/2μm)のフィルムを得た。 (比較例5)実施例5で使用した3種の樹脂の混合比率を (A)成分 70重量% (B)成分 0重量% (C)成分 30重量% に変更した以外は実施例1と同様にして総厚み15μm(2μm/11μm/2μm)のフィルムを得た。 (比較例6)市販のポリ塩化ビニルストレッチフィルム(厚さ15μm)について評価を行った。上記実施例1乃至5及び比較例1乃至6について、各積層フィルム(比較例6は単層)の粘弾性特性の測定値等を表1に、ストレッチ包装適正等の評価を表2に示した。 【表1】 【表2】 【表3】 表1乃至3より、本発明で規定する3成分を有し、粘弾性特性が本発明で規定する範囲にある実施例1乃至5のフィルムは、いずれもストレッチフィルムとしての諸特性に総合的に優れていることが分かる。これに対して、成分が異なるか、粘弾性特性が本発明で規定する範囲外の比較例1乃至5のフィルムは、ストレッチフィルムとしての総合的な特性に劣ることが分かる。」(段落【0030】?【0056】) ・摘示事項1-k:「【発明の効果】本発明ストレッチフィルムによれば、自動包装機などに使用した場合にフィルムのカット・搬送やラッピングを問題なく行うことができ、底シール性が良好で、またフィルムの張りが良い包装体を得ることができ、非塩素系ストレッチフィルムとして従来にない特徴を有している。さらに経時的な安定性や経済性にも優れている。」(段落【0057】) (2)刊行物2 ・摘示事項2-a:「【請求項1】 下記の(1)及び(2)を満たすプロピレン重合体〔I〕1?99質量%、 (1)メソペンタッド分率(mmmm)が0.2?0.6である (2)ラセミペンタッド分率(rrrr)と(1-mmmm)が下記の関係を満たす [rrrr/(1-mmmm)]≦0.1 及びオレフィン系重合体〔II〕99?1質量%からなる樹脂組成物から形成されてなるラップフィルム。」(【特許請求の範囲】) ・摘示事項2-b:「【発明の属する技術分野】本発明は、業務用あるいは家庭用ラップフィルムに関し、特に塩素を含まず、環境にやさしく、安全性に優れると共に、ラッピング性、透明性、変形復元性などラップフィルムとしての要求特性を満足することができるラップフィルムに関するものである。 【従来の技術】従来、青果、精肉、魚類あるいはこれらの加工食品、惣菜などの調理済食品などは、軽量発泡樹脂製トレーに載せてフィルムでラッピングして百貨店、スーパー、食料品店などで販売されている。また、家庭においても、食料品の冷凍、冷蔵などでの保存、電子レンジでの加熱時などの際に、容器などに入れラッピングすることが行われている。」(段落【0001】【0002】) ・摘示事項2-c:「プロピレン重合体〔I〕の、(1)メソペンタッド分率(mmmm)が0.6を超える場合、及び(2)ラセミペンタッド分率(rrrr)と(1-mmmm)の関係が満たされない場合は、組成物を製膜して得られたフィルムがラップフィルムとして要求される特性であるラッピング性、柔軟性、透明性、変形復元性、耐突き刺し性などを確保することができにくくなる。また、(1)メソペンタッド分率(mmmm)が0.2未満の場合は製膜安定性、添加剤のブリードによるトラブル発生、強度の低下などからラップフィルムとして適当でなくなる。 本発明で用いるプロピレン重合体〔I〕を特定する、メソペンタッド分率(mmmm)とは、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,6,925(1973)」で提案された方法に準拠し、^(13)C-NMRスペクトルのメチル基のシグナルにより測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのメソ分率である。これが大きくなると、立体規則性が高くなることを意味する。前記プロピレン重合体のメソペンタッド分率(mmmm)が0.2未満では、フィルムのべたつき性により製膜が困難となる場合がある。また、0.6を超えると柔軟性や粘着性の低下によりラッピング性が十分とならない場合がある。 同じくラセミペンタッド分率(rrrr)とは、ポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのラセミ分率である。[rrrr/(1-mmmm)]は、上記のペンタッド単位の分率から求められ、プロピレン重合体の立体規則性分布の均一さを表す指標である。この値が大きくなると立体規則性分布が広がり、既存触媒系を用いて製造される従来のポリプロピレンのように高立体規則性ポリプロピレン(PP)と非晶性ポリプロピレン(APP)の混合物となり、べたつきが増し製膜性が悪化すると共に透明性が低下することを意味する。前記プロピレン重合体〔I〕の[rrrr/(1-mmmm)]が0.1を超えるとべたつきの原因となる。」(段落【0014】?【0016】) ・摘示事項2-d:「次に、本発明のラップフィルムとしての樹脂組成物の他の成分について説明する。他の成分である、オレフィン系重合体〔II〕としては、ポリプロピレン、プロピレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-エチレン-ジエン共重合体、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、密度が850?940kg/m^(3) のエチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、水素添加スチレン系エラストマー等が挙げられる。中でもポリプロピレン、プロピレン-α-オレフィン共重合体、密度が850?940kg/m^(3 )のエチレン-α-オレフィン共重合体が好ましく、これらのオレフィン系重合体は複数用いることもできる。オレフィン系集合体〔II〕としては、特にプロピレン系重合体が好ましい。」(段落【0033】) ・摘示事項2-e:「【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。 プロピレン重合体〔I〕の製造 (イ)錯体の合成 (1,2' -ジメチルシリレン)(2,1' -ジメチルシリレン)-ビス(3-トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドの合成シュレンク瓶に(1,2' -ジメチルシリレン)(2,1' -ジメチルシリレン)-ビス(インデン)のリチウム塩の3.0g(6.97mmol)をTHF50mLに溶解し-78℃に冷却する。ヨードメチルトリメチルシラン2.1mL(14.2mmol)をゆっくりと滴下し室温で12時間攪拌する。溶媒を留去しエーテル50mLを加えて飽和塩化アンモニウム溶液で洗浄する。分液後、有機相を乾燥し溶媒を除去して(1,2' -ジメチルシリレン)(2,1' -ジメチルシリレン)-ビス(3-トリメチルシリルメチルインデン)を3.04g(5.88mmol)を得た。(収率84%) 次に、窒素気流下においてシュレンク瓶に前記で得られた(1,2' -ジメチルシリレン)(2,1' -ジメチルシリレン)-ビス(3-トリメチルシリルメチルインデン)を3.04g(5.88mmol)とエーテル50mLを入れる。-78℃に冷却しn-BuLi(ヘキサン溶液1.54M)を7.6mL(11.7mmol)加えた後、室温で12時間攪拌する。溶媒を留去し、得られた固体をヘキサン40mLで洗浄することによりリチウム塩をエーテル付加体として3.06g(5.07mmol)を得た。(収率73%)^(1)H-NMR(90MHz,THF-d_(8) )による測定の結果は、: δ 0.04(s,18H,トリメチルシリル),0.48(s,12H,ジメチルシリレン),1.10(t,6H,メチル),2.59(s,4H,メチレン),3.38(q,4H,メチレン),6.2-7.7(m,8H,Ar-H)であった。 窒素気流下で前記で得られたリチウム塩をトルエン50mLに溶解する。-78℃に冷却し、ここへ予め-78℃に冷却した四塩化ジルコニウム1.2g(5.1mmol)のトルエン(20mL)懸濁液を滴下する。滴下後、室温で6時間攪拌する。その反応溶液の溶媒を留去する。得られた残渣をジクロロメタンより再結晶化することにより(1,2' -ジメチルシリレン)(2,1' -ジメチルシリレン)-ビス(3-トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを0.9g(1.33mmol)を得た。(収率26%)^(1)H-NMR(90MHz,CDCl_(3) )による測定の結果は、: δ 0.0(s,18H,トリメチルシリル),1.02,1.12(s,12H,ジメチルシリレン),2.51(dd,4H,メチレン),7.1-7.6(m,8H,Ar-H)であった。 (ロ)プロピレンの重合 攪拌機付き、内容積10リットルのステンレス製オートクレーブにn-ヘプタン4リットル、トリイソブチルアルミニウム2ミリモル、さらに、メチルアルミノキサン(アルベマール社製)2ミリモルと、前記で得た(1,2' -ジメチルシリレン)(2,1' -ジメチルシリレン)-ビス(3-トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド2マイクロモルを、順次投入した。次いで、水素を0.06MPa(gauge)まで導入し、60℃まで温度を上昇させながら、全圧で0.8MPa(gauge)になるまでプロピレンガスを導入し、重合を開始した。重合中、全圧が0.8MPa(gauge)になるように調圧器によりプロピレンガスを連続的に供給した。温度60℃で、30分間重合を行なった後、内容物を取り出し、減圧下、乾燥することにより、プロピレン重合体〔I〕を得た。」(段落【0054】?【0058】) 2 刊行物に記載された発明 刊行物1には、「本発明は、食品包装用に好適に用いられるストレッチフィルム、特に塩素を含まない材料からなるストレッチ包装用フィルムに関する。」(摘示事項1-b)ものについて、「【請求項1】下記(A)、(B)および(C)3成分を主成分とする混合樹脂層を少なくとも一層有し、動的粘弾性測定により周波数10Hz、温度20℃で測定した貯蔵弾性率(E′)が5.0×10^(8) dyn/cm^(2) ?5.0×10^(9) dyn/cm^(2) 、損失正接(tanδ)が0.2?0.8の範囲にあることを特徴とする食品包装用ストレッチフィルム。 (A)下記(1)?(3)の条件を満足し、^(13)C-NMRスペクトルから求められるメソペンタッド分率とラセモペンタッド分率の和(mmmm+rrrr)が30?70%の範囲にあり、分子鎖中に結晶性のブロックと非晶性のブロック部分が混在している立体規則性を制御された軟質ポリプロピレン系樹脂 (1)示差走査熱量計を用いて加熱速度10℃/分で昇温した時に測定されるガラス転移温度が-15℃以上 (2)示差走査熱量計を用いて加熱速度10℃/分で結晶融解後、200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温した時に測定される結晶化熱量が10?60J/g (3)メルトフローレート(MFR)(JISK7210、230℃、2.16kg荷重)が0.4?40g/10分 (B)石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、ロジン系樹脂、またはそれらの水素添加誘導体 (C)(A)成分以外のポリプロピレン系樹脂 ・・・(略)・・・ 【請求項4】 (A)、(B)および(C)3成分を主成分とする混合樹脂層の両面に、酢酸ビニル含有量が5?25重量%で、メルトフローレート(JISK7210、190℃、2.16kg荷重)が0.2?5g/10分のエチレン-酢酸ビニル共重合体を主成分とする層を積層したフィルムからなることを特徴とする請求項1乃至3記載のポリオレフィン系ストレッチ包装用フィルム。」(摘示事項1-a)と記載されており、(A)、(B)、(C)各成分の混合比率について、「・・・本発明フィルムのE′とtanδを上記範囲内とするには、(A)、(B)、(C)3成分の混合比率を調整するのが最も効果的である。(A)成分に(B)成分を適量混合したものは、一般に常温付近で0.4?1.0の範囲のtanδを有している。また(C)成分の軟質ポリプロピレン系樹脂は一般に0.01?0.10の範囲のtanδを有しているから混合物として0.2?0.8の範囲のtanδを有するようにするには、(A)、(B)、(C)各成分の混合比率を、 (A)成分 20?80重量% (B)成分 5?25重量% (C)成分 10?60重量% とすればよい。・・・」(摘示事項1-i)と記載されている。さらに(C)成分に関し、「・・・伸びの良いフィルムを得るために、(C)成分としてのポリプロピレン系樹脂の少なくとも一部に比較的低結晶性のポリプロピレン系樹脂を使用するのが好ましい。また、比較的高結晶性のポリプロピレン系樹脂を用いる場合には、フィルム全体として所望の粘弾性特性の範囲になるようにその添加量をできるだけ少量にすることが好ましい。特にエチレンを10?30モル%程度含有する低結晶性のポリプロピレン系樹脂を適量混合させることは、フィルム全体としての低温特性と常温での粘弾性特性とのバランス調整が容易なことから好ましい。」(摘示事項1-h)と記載され、また具体的に、「低結晶性プロピレン-エチレン-プロピレン共重合体エラストマー(プロピレン含量:88モル%、230℃、2.16kg荷重におけるMFR=1.5g/10分、Tm=156℃、(株)トクヤマ製、P.E.R.T310J)」(摘示事項1-j)が示されていることから、 刊行物1には、 「下記(A)、(B)および(C)3成分を主成分とし、各成分の混合比率が、(A)成分20?80重量%、(B)成分5?25重量%、(C)成分10?60重量%である混合樹脂層の両面に、酢酸ビニル含有量が5?25重量%で、メルトフローレート(JISK7210、190℃、2.16kg荷重)が0.2?5g/10分のエチレン-酢酸ビニル共重合体を主成分とする層を積層した動的粘弾性測定により周波数10Hz、温度20℃で測定した貯蔵弾性率(E′)が5.0×10^(8) dyn/cm^(2) ?5.0×10^(9 )dyn/cm^(2) 、損失正接(tanδ)が0.2?0.8の範囲にあるポリオレフィン系ストレッチ包装用フィルム。 (A)下記(1)?(3)の条件を満足し、^(13)C-NMRスペクトルから求められるメソペンタッド分率とラセモペンタッド分率の和(mmmm+rrrr)が30?70%の範囲にあり、分子鎖中に結晶性のブロックと非晶性のブロック部分が混在している立体規則性を制御された軟質ポリプロピレン系樹脂 (1)示差走査熱量計を用いて加熱速度10℃/分で昇温した時に測定されるガラス転移温度が-15℃以上 (2)示差走査熱量計を用いて加熱速度10℃/分で結晶融解後、200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温した時に測定される結晶化熱量が10?60J/g (3)メルトフローレート(MFR)(JISK7210、230℃、2.16kg荷重)が0.4?40g/10分 (B)石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、ロジン系樹脂、またはそれらの水素添加誘導体 (C)低結晶性プロピレン-エチレン-プロピレン共重合体エラストマー(プロピレン含量:88モル%、230℃、2.16kg荷重におけるMFR=1.5g/10分、Tm=156℃、(株)トクヤマ製、P.E.R.T310J)」 の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 3 対比・判断 (1)対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「酢酸ビニル含有量が5?25重量%で、メルトフローレート(JISK7210、190℃、2.16kg荷重)が0.2?5g/10分のエチレン-酢酸ビニル共重合体」は、エチレン系重合体の一種であるから、本願発明の「エチレン系重合体である(A)成分」に相当する。 また、引用発明の「(A)成分」は、立体規則性を制御されたポリプロピレン系樹脂であるから、本願発明の立体規則性を制御されたポリプロピレン系樹脂である「(B)成分」に相当する。さらに、引用発明の「(B)成分」は、「石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、ロジン系樹脂、またはそれらの水素添加誘導体」であるから、本願発明の「(D)成分:石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、ロジン系樹脂、及びそれらの水素添加誘導体の中から選ばれる少なくとも一種の樹脂」に相当する。 そして、本願発明の「(C)成分:結晶融解ピーク温度が120℃以上である結晶性ポリプロピレン系樹脂」に関して、本願明細書の発明の詳細な説明には、「ここで結晶融解ピーク温度が120℃以上である結晶性ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体あるいはプロピレンと共重合可能な他の単量体とのランダム共重合体又はブロック共重合体を挙げることができる。・・・本発明においては、これらのうちエチレンであることが好ましい。ここでランダム共重合体としては、プロピレン-エチレンランダム共重合体やプロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体などが挙げられ、ブロック共重合体としては、プロピレン-エチレンブロック共重合体やリアクタータイプのポリプロピレン系エラストマーなどが挙げられ、具体的な商品としては、・・・(株)トクヤマの商品名「P.E.R.」・・・等が挙げられる。」(【0018】)と記載されている。ところで、DSCによって測定される結晶融解ピーク温度をもって高分子の融点Tmとするものであるから、引用発明の「(C)低結晶性プロピレン-エチレン-プロピレン共重合体エラストマー(プロピレン含量:88モル%、230℃、2.16kg荷重におけるMFR=1.5g/10分、Tm=156℃、(株)トクヤマ製、P.E.R.T310J)」は、本願発明の「(C)成分:結晶融解ピーク温度が120℃以上である結晶性ポリプロピレン系樹脂」に相当する。 そうすると、両者は、「少なくとも3層から構成される積層フィルムであって、両表面層がエチレン系重合体である(A)成分を主成分とし、中間層の少なくとも1層が下記に示した(B)成分30?75重量%、(C)成分20?60重量%及び(D)成分5?25重量%を含有する樹脂組成物を主成分とする混合樹脂層からなるストレッチ包装用積層フィルム。 (B)成分:立体規則性が制御されたポリプロピレン系樹脂 (C)成分:結晶融解ピーク温度が120℃以上である結晶性ポリプロピレン系樹脂 (D)成分:石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、ロジン系樹脂、及びそれらの水素添加誘導体の中から選ばれる少なくとも一種の樹脂」である点で一致し、以下の点で相違する。 i)(B)成分である立体規則性が制御されたポリプロピレン系樹脂の立体規則性に関する要件について、本願発明は、「▲1▼^(13)C-NMRスペクトルから求められるメソペンタッド分率(mmmm)が0.2?0.7 ▲2▼ラセミペンタッド分率(rrrr)と(1-mmmm)が下記の関係を満たす [rrrr/(1-mmmm)]≦0.1」と規定されているのに対し、引用発明は、「^(13)C-NMRスペクトルから求められるメソペンタッド分率とラセモペンタッド分率の和(mmmm+rrrr)が30?70%の範囲」にあるものと規定されている点 (以下、「相違点i)」という。) (2)相違点i)の検討 刊行物2には、「下記の(1)及び(2)を満たすプロピレン重合体〔I〕1?99質量%、 (1)メソペンタッド分率(mmmm)が0.2?0.6である (2)ラセミペンタッド分率(rrrr)と(1-mmmm)が下記の関係を満たす [rrrr/(1-mmmm)]≦0.1 及びオレフィン系重合体〔II〕99?1質量%からなる樹脂組成物から形成されてなるラップフィルム。」(摘示事項2-a)について記載されている。その「ラップフィルム」は、摘示事項2-bに記載されている用途や要求特性から見て、引用発明と同じく「ストレッチ包装用フィルム」を意味するものである。 さらに、刊行物2について見てみると、「プロピレン重合体〔I〕の、(1)メソペンタッド分率(mmmm)が0.6を超える場合、及び(2)ラセミペンタッド分率(rrrr)と(1-mmmm)の関係が満たされない場合は、組成物を製膜して得られたフィルムがラップフィルムとして要求される特性であるラッピング性、柔軟性、透明性、変形復元性、耐突き刺し性などを確保することができにくくなる。また、(1)メソペンタッド分率(mmmm)が0.2未満の場合は製膜安定性、添加剤のブリードによるトラブル発生、強度の低下などからラップフィルムとして適当でなくなる。 本発明で用いるプロピレン重合体〔I〕を特定する、メソペンタッド分率(mmmm)とは、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,6,925(1973)」で提案された方法に準拠し、^(13)C-NMRスペクトルのメチル基のシグナルにより測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのメソ分率である。これが大きくなると、立体規則性が高くなることを意味する。前記プロピレン重合体のメソペンタッド分率(mmmm)が0.2未満では、フィルムのべたつき性により製膜が困難となる場合がある。また、0.6を超えると柔軟性や粘着性の低下によりラッピング性が十分とならない場合がある。 同じくラセミペンタッド分率(rrrr)とは、ポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのラセミ分率である。[rrrr/(1-mmmm)]は、上記のペンタッド単位の分率から求められ、プロピレン重合体の立体規則性分布の均一さを表す指標である。この値が大きくなると立体規則性分布が広がり、既存触媒系を用いて製造される従来のポリプロピレンのように高立体規則性ポリプロピレン(PP)と非晶性ポリプロピレン(APP)の混合物となり、べたつきが増し製膜性が悪化すると共に透明性が低下することを意味する。前記プロピレン重合体〔I〕の[rrrr/(1-mmmm)]が0.1を超えるとべたつきの原因となる。」(摘示事項2-c)と、立体規則性が制御されたポリプロピレン系樹脂についての技術情報が記載されている。すなわち、刊行物2には、立体規則性が制御されたポリプロピレン系樹脂自体についての技術について記載され、具体的には、要件(1)である「メソペンタッド分率(mmmm)が0.2?0.6」について、「これが大きくなると、立体規則性が高くなることを意味する。前記プロピレン重合体のメソペンタッド分率(mmmm)が0.2未満では、フィルムのべたつき性により製膜が困難となる場合がある。」こと、また要件(2)である「ラセミペンタッド分率(rrrr)と(1-mmmm)が下記の関係を満たす [rrrr/(1-mmmm)]≦0.1 」については、「・・・プロピレン重合体の立体規則性分布の均一さを表す指標である。この値が大きくなると立体規則性分布が広がり、既存触媒系を用いて製造される従来のポリプロピレンのように高立体規則性ポリプロピレン(PP)と非晶性ポリプロピレン(APP)の混合物となり、べたつきが増し製膜性が悪化すると共に透明性が低下することを意味する。前記プロピレン重合体〔I〕の[rrrr/(1-mmmm)]が0.1を超えるとべたつきの原因となる。」ことの技術が記載されていると認められる。 そして、刊行物2に記載されるポリプロピレン系樹脂の立体規則性に関する(1)及び(2)の要件は、引用発明の要件である「^(13)C-NMRスペクトルから求められるメソペンタッド分率とラセモペンタッド分率の和(mmmm+rrrr)が30?70%の範囲」よりも範囲が狭いものである。 そうすると、引用発明と同じ「オレフィン系ストレッチ包装用フィルム」に関する文献である刊行物2に、立体規則性が制御されたポリプロピレン系樹脂の立体規則性の要件について、より狭い範囲のものが、有利な作用効果が得られることについて記載されているのであるから、引用発明における立体規則性が制御されたポリプロピレン系樹脂について、^(13)C-NMRスペクトルから求められるメソペンタッド分率とラセモペンタッド分率の和(mmmm+rrrr)が30?70%の範囲にあるものの中から、刊行物2に記載される立体規則性に関する技術を参酌して、さらに「下記▲1▼及び▲2▼の条件を満足する立体規則性が制御されたポリプロピレン系樹脂 ▲1▼^(13)C-NMRスペクトルから求められるメソペンタッド分率(mmmm)が0.2?0.6 ▲2▼ラセミペンタッド分率(rrrr)と(1-mmmm)が下記の関係を満たす [rrrr/(1-mmmm)]≦0.1の要件を満足する」ものを選択することは当業者にとって容易なことである。 よって、引用発明において、(B)成分である立体規則性が制御されたポリプロピレン系樹脂の立体規則性に関する要件について、「▲1▼^(13)C-NMRスペクトルから求められるメソペンタッド分率(mmmm)が0.2?0.7 ▲2▼ラセミペンタッド分率(rrrr)と(1-mmmm)が下記の関係を満たす [rrrr/(1-mmmm)]≦0.1」との規定に代えて、「^(13)C-NMRスペクトルから求められるメソペンタッド分率とラセモペンタッド分率の和(mmmm+rrrr)が30?70%の範囲」と規定することは当業者が容易になし得ることである。 (3)効果について 本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0044】等からみて、本願発明の効果は、原料ペレットの保管安定性、包装作業性、包装仕上がり、弾性回復性、底シール性、透明性などが良く、さらに経時的安定性および経済性にも優れた非塩素系ストレッチフィルムが提供できる、というものである。 これに対し、引用発明が記載されている刊行物1には、「【発明の効果】本発明ストレッチフィルムによれば、自動包装機などに使用した場合にフィルムのカット・搬送やラッピングを問題なく行うことができ、底シール性が良好で、またフィルムの張りが良い包装体を得ることができ、非塩素系ストレッチフィルムとして従来にない特徴を有している。さらに経時的な安定性や経済性にも優れている。」(摘示事項1-k)と記載されていることから、引用発明は、本願発明で言うところの包装作業性、包装仕上がり、弾性回復性、底シール性が良く、さらに経時的安定性および経済性にも優れた非塩素系ストレッチフィルムを提供できる効果を一応有するものと認められる。 以下、本願発明の効果について、さらに詳細に検討する。 本願発明の効果に対する評価は、本願明細書の実施例において、「原料ペレット保管性」、「カット性」、「包装シワ」、「底シール性」、「耐破れ性」、「弾性回復性(最大押し込み深さ)」、「透明性」、「高温保管安定性」の項目を検討することにより行っている。そのうち、「カット性」、「包装シワ」、「底シール性(ヒートシール性)」、「耐破れ性」、「弾性回復性(最大押し込み深さ)」、「高温保管安定性」は、引用発明が記載されている刊行物1の実施例における「カット搬送性(自動機)」、「シワ(手包装)」、「底シール性」、「耐破れ」、「復元性」、「経時変化」に対応するものと認められる。これらの評価は、「弾性回復性」が、本願明細書の実施例においては、最大押し込み深さによる評価であるのに対し、刊行物1の実施例では、◎、○、△、×の4段階方式による評価である点で相違し、また、「高温保管安定性」の評価の条件が、本願明細書の実施例では恒温室に「20日間保管」するのに対し、刊行物1の実施例では恒温室に「10日間保管」する以外は、「カット性」、「包装シワ」、「底シール性(ヒートシール性)」、「耐破れ性」について、両者ともにほぼ同様の評価手法であると認められる。 そして、刊行物1の実施例では、「カット搬送性(自動機)」、「シワ(手包装)」、「底シール性」、「耐破れ」の評価が◎か○となっており、引用発明において、刊行物2に記載される技術を適用した場合、刊行物2に記載されるポリプロピレン系樹脂は、引用発明と同じく立体規則性が制御されたものであるから、「カット性」、「包装シワ」、「底シール性(ヒートシール性)」、「耐破れ性」の評価も◎か○となるものと予測される。 ついで、「高温保管安定性」についてみてみると、刊行物2に記載される立体規則性が制御されたポリプロピレン系樹脂は、べたつきが少ないことが記載されている(摘示事項2-c)のであるから、引用発明において、刊行物2に記載される技術を適用した場合、恒温室で「20日間保管」した条件においても、べたつきがより少なくなることにより、本願発明と同等の結果が得られることが予測される。また、「弾性回復性」についてみてみると、刊行物2に記載される立体規則性が制御されたポリプロピレン系樹脂は、変形復元性を確保できることが記載されている(摘示事項2-c)から、引用発明において、刊行物2に記載される技術を適用した場合には、弾性回復性がより向上し、最大押し込み深さが22mm程度になることも当業者の予測の範囲のことと認められる。 一方、本願発明の実施例の評価項目である「原料ペレット保管性」、「透明性」、「底シール性(底折り込み安定性)」については、引用発明の実施例では評価を行っていない。しかしながら、「原料ペレット保管性」については、刊行物2に記載される立体規則性が制御されたポリプロピレン系樹脂は、べたつきが少ないことが記載されている(摘示事項2-c)のであるから、引用発明に刊行物2に記載される技術を適用した場合、当然ペレット自体のべたつきが少なくなって、「原料ペレット保管性」が良くなることも当然に予測されることである。さらに、「透明性」についても、刊行物2に記載される立体規則性が制御されたポリプロピレン系樹脂は、透明性が良いことが記載されている(摘示事項2-c)のであるから、引用発明に刊行物2に記載される技術を適用した場合、透明性が良くなることも当業者の予測の範囲のことと認められる。 最後に、「底シール性(底折り込み安定性)」についてみてみると、引用発明は、「食品包装用ストレッチフィルムの動的粘弾性測定により周波数10Hz、温度20℃で測定した貯蔵弾性率(E′)が5.0×10^(8) dyn/cm^(2 )?5.0×10^(9) dyn/cm^(2) 、損失正接(tanδ)が0.2?0.8の範囲」であることが規定されており、その規定について、刊行物1には、「本発明のフィルムの粘弾性特性を所望の範囲内とするには、前記(A)成分として適切なものを選ぶ必要があるが、(A)成分単独では常温における貯蔵弾性率(E′)が低く柔らかすぎたり、またガラス転移温度が高いため低温における伸びなどの低温特性が悪くなり、材料の選択範囲が極めて限られるため実用上不利になることが多い。そこで本発明においては、実用上所望の粘弾性特性を容易に得られるように、前記の(B)成分と(C)成分を混合する。(B)成分の石油樹脂などはガラス転移温度が高いため、混合物のガラス転移温度を高めることができる。このことにより常温においてストレッチフィルムとして好適な伸展性を示す貯蔵弾性率(E′)と適度の応力緩和性を示す損失正接(tanδ)との両立を達成可能とするものであり・・・」(摘示事項1-g)と記載されている。そこで述べられている、応力緩和性が高いということは、すなわち、フィルムの伸びに対する復元挙動が抑えられることを意味するのであるから、引用発明の「底シール性(底折り込み安定性)」は当然良いものと認められる。そして、貯蔵弾性率(E′)と適度の応力緩和性を示す損失正接(tanδ)を両立できるものとして引用発明における混合樹脂層の樹脂組成物では、石油樹脂等を一成分として配合しているのであるから、引用発明において、刊行物2に記載される技術を適用した場合にあっても、「底折り込み安定性(底シール性)」は当然維持されるものと認められる。 したがって、本願発明の効果は、引用発明及び刊行物2に記載される技術から当業者が容易に予測し得る範囲のものであって、格別顕著なものとは認められない。 (4)まとめ したがって、本願発明は、本願出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできない。 4 請求人の主張に対して 請求人は、審判請求書の手続補正書の「【本願発明が特許されるべき理由】(3)本願発明と引用文献の対比」において、「・・・引用文献1、2と、本願発明の(B)、(C)及び(D)成分の特定量を含有する樹脂組成物を主成分とする混合樹脂層を中間層に用いることについて、特に(D)成分の特定量を配合した混合樹脂層を中間層に用いることについて、なんら記載も示唆もない引用文献3、4との記載から、本願発明はなんら教示、動機付けを受けるものではなく、本願請求項1?3、5、6に係わる発明は引用文献1,2及び引用文献3、4との組み合わせから容易にできた発明でないことは明らかである。」と主張している。 しかしながら、「第3 原査定の理由」及び「3(2)相違点i)」の検討」において、本願発明に対する容易想到性を論じているのは、刊行物1(引用文献1)に記載される発明において、その混合樹脂層の樹脂組成物に代えて、刊行物2(引用文献3)に記載される樹脂組成物を採用することを論じているのではなく、あくまでも、刊行物1に記載される発明において、その混合樹脂層の樹脂組成物の一成分である立体規則性が制御されたポリプロピレン系樹脂の中から、刊行物2に記載される技術を適用することで、さらに最適なものを選択することを論じているのである。 一般的に、技術文献には様々な技術情報が記載されているところ、刊行物2の特許請求の範囲に「下記の(1)及び(2)を満たすプロピレン重合体〔I〕1?99質量%、 (1)メソペンタッド分率(mmmm)が0.2?0.6である (2)ラセミペンタッド分率(rrrr)と(1-mmmm)が下記の関係を満たす [rrrr/(1-mmmm)]≦0.1 及びオレフィン系重合体〔II〕99?1質量%からなる樹脂組成物から形成されてなるラップフィルム。」と記載されているからといって、その「ラップフィルム」の技術だけが刊行物2に記載されているというわけではない。すなわち、上記「3(2)相違点i)の検討」で示したように、刊行物2には、立体規則性が制御されたポリプロピレン系樹脂自体の技術について記載されているのである。 そして、引用発明と同一の「オレフィン系ストレッチ包装用フィルム」に関する文献である刊行物2に、立体規則性が制御されたポリプロピレン系樹脂の立体規則性の要件について、より狭い範囲のものが、有利な作用効果が得られることについて記載されているのであるから、引用発明において、刊行物2に記載される技術を適用する動機付けは十分に有すると認められる。 したがって、請求人の主張は採用できない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができないものであるから、本願は、その余を検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-01-07 |
結審通知日 | 2010-01-12 |
審決日 | 2010-01-26 |
出願番号 | 特願2002-245502(P2002-245502) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B32B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 平井 裕彰 |
特許庁審判長 |
西川 和子 |
特許庁審判官 |
細井 龍史 原 健司 |
発明の名称 | ストレッチ包装用積層フィルム |
代理人 | 大谷 保 |
代理人 | 大谷 保 |