• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1213336
審判番号 不服2008-11828  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-08 
確定日 2010-03-11 
事件の表示 特願2000-228174「ディスペンサー付き容器」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月 6日出願公開、特開2002- 37297〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年7月28日の出願であって、平成20年4月4日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年5月8日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年6月5日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成20年6月5日付け手続補正についての補正却下の決定
【補正却下の決定の結論】
平成20年6月5日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

【理由】
2-1.本件補正
本件補正は、補正前の請求項1に、
「容器本体の口部に装着されその内部に収容した内容物を定量注出するディスペンサーを備えた容器であって、
前記ディスペンサーは、定量注出に係わる内容物を収容する貯溜タンクと、この貯溜タンクに保持され容器本体の口部を通して容器本体内から内容物を定量注出する計量栓と、この計量栓に合わさり定量注出に係わる内容物を貯溜タンクに送給する前に一たん保持する定量注出空間を形成するケーシングからなり、
計量栓は、定量注出空間と貯溜タンクをつなぎ定量注出に係る内容物を貯溜タンクへ供給する貫通孔と、貯溜タンク内の内容物をケーシングを経て外界へ排出する排出口を有し、
前記貯留タンクを、容器本体の口部の周りに配設してなることを特徴とするディスペンサー付き容器。」
とあるのを、
「容器本体の口部に装着されその内部に収容した内容物を定量注出するディスペンサーを備えた容器であって、
前記ディスペンサーは、定量注出に係わる内容物を収容する貯溜タンクと、この貯溜タンクの内部に保持され容器本体の口部を通して容器本体内から内容物を定量注出する計量栓と、この計量栓に合わさり定量注出に係わる内容物を貯溜タンクに送給する前に一たん保持する定量注出空間を形成するケーシングからなり、
計量栓は、定量注出空間と貯溜タンクをつなぎ定量注出に係る内容物を貯溜タンクへ供給する貫通孔と、貯溜タンク内の内容物をケーシングを経て外界へ排出する排出口を有し、
前記貯溜タンクを、容器本体の口部の周りに配設してなることを特徴とするディスペンサー付き容器。」
とする補正を含むものである。

補正後の請求項1は、補正前の請求項1の記載において、計量栓の貯溜タンクへの保持を貯溜タンクの「内部」で行う限定を付加するものである。また、この補正により、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでもない。
よって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された事項によって特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

2-2.本願補正発明
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、本件補正後の明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「2-1.本件補正」の補正後の請求項1参照)により特定されたとおりのものと認める。

2-3.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭63-72573号(実開平1-177154号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、以下の事項及び引用発明が記載されている。

(1)「本体5の基部に、容器1の口筒部2に嵌着される嵌着部7を設けると共に、基部には底部8と隔壁21で仕切られた計量室12を設け、隔壁21の上部には液溜室29を設け、計量室12の底部8からは流出管9を上方に向けて立設し、流出管9先端部の流出口10を液溜室29内に開口させると共に、流出管9基部の流入口11を容器1内に連通するようにして設け、隔壁21からは流通管23を下方に向けて垂下して設け、流通管23先端の流通出口24を計量室12内に開口させると共に、流通管23基部の流通入口25は液溜室29内に連通させ、さらに、隔壁21から排出管26を上方に向けて立設し、排出管26先端部の排出口27を容器1外に開口させ、排出管入口28は計量室12内に連通させた定量注出具。」(【実用新案登録請求の範囲】参照)

(2)「本考案は、液体容器の口筒部に装着し、容器の倒立及び正立を繰り返して一定量の内溶液を注出するようにした定量注出具に関する。」(明細書第2頁1?3行参照)

(3)「第1図は本考案の一実施例の定量注出具を示すものであり、嵌着部7によって容器1の口筒部2に螺合して嵌着される本体5は、下部筒6の上部に隔壁筒20が外嵌して嵌着され、隔壁筒20の上部に帽体35が外嵌して嵌着されて形成されている。
本体5の基部である下部筒6には、底部8が設けてあり、本体5の中央部にある隔壁筒20には、隔壁21が設けてあり、この底部8と隔壁21で仕切られた計量室12が設けてあり、隔壁21の上部には帽体35で囲まれた液溜室29が設けてある。」(明細書第5頁17行?第6頁6行参照)

以上の記載によると、引用例には、
「液体容器1の口筒部2に装着し、一定量の内溶液を注出するようにした定量注出具を備えた容器であって、
本体5は、下部筒6の上部に隔壁筒20が外嵌して嵌着され、隔壁筒20の上部に帽体35が外嵌して嵌着されて形成され、
本体5の基部である下部筒6には、底部8が設けてあり、本体5の中央部にある隔壁筒20には、隔壁21が設けてあり、この底部8と隔壁21で仕切られた計量室12が設けてあり、隔壁21の上部には帽体35で囲まれた液溜室29が設けてあり、
隔壁21からは流通管23を下方に向けて垂下して設け、流通管23先端の流通出口24を計量室12内に開口させると共に、流通管23基部の流通入口25は液溜室29内に連通させ、さらに、隔壁21から排出管26を上方に向けて立設した定量注出具付き容器。」の発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認められる。

2-4.対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、
引用発明の「液体容器1」、「口筒部2」、「内溶液」、「定量注出具」、「下部筒6」、「嵌着」、「隔壁筒20」、「液溜室29」、「帽体35」、「流通管23」及び「排出管26」は、それぞれ本願補正発明の「容器本体」、「口部」、「定量注出に係わる内容物」、「定量注出するディスペンサー」、「貯溜タンク」、「保持」、「計量栓」、「定量注出空間」、「ケーシング」、「貫通孔」及び「排出口」に相当することから、両者は、
「容器本体の口部に装着されその内部に収容した内容物を定量注出するディスペンサーを備えた容器であって、
前記ディスペンサーは、定量注出に係わる内容物を収容する貯溜タンクと、この貯溜タンクに保持され容器本体の口部を通して容器本体内から内容物を定量注出する計量栓と、この計量栓に合わさり定量注出に係わる内容物を貯溜タンクに送給する前に一たん保持する定量注出空間を形成するケーシングからなり、
計量栓は、定量注出空間と貯溜タンクをつなぎ定量注出に係る内容物を貯溜タンクへ供給する貫通孔と、貯溜タンク内の内容物をケーシングを経て外界へ排出する排出口を有しているディスペンサー付き容器。」である点で一致し、以下の各点で相違する。

相違点1;本願補正発明では、計量栓の貯溜タンクへの保持を、貯溜タンクの内部で行うのに対し、引用発明では、隔壁筒20の下部筒6への嵌着を、下部筒6の上部に外嵌して行う点。

相違点2;本願補正発明では、貯溜タンクを、容器本体の口部の周りに配設しているのに対し、引用発明では、下部筒6を、そのように配設していない点。

2-5.判断
そこで、上記各相違点を検討すると、
・相違点1について
一般的に、筒状の2部材同士を嵌着するのに、どちらの部材を内側とするかは、当業者が設計上適宜に選択しうる事項と認められ、また、引用発明において、隔壁筒20の下部筒6への嵌着を、下部筒6の上部に外嵌して行うことに換えて、内嵌して行うようになすことに格別な困難性は認められないことから、
引用発明において、隔壁筒20の下部筒6への嵌着を、下部筒6の上部に内嵌して行うようになすこと、すなわち、計量栓の保持を、貯溜タンクの内部で行うようになすことは、当業者が容易に想到し得たものである。

なお、請求人は平成21年11月19日付けで提出された回答書の中で、「本願発明のように、計量栓を貯溜タンクの内部に保持する構成を採用すれば、定量注出空間を区画するに当たっては貯溜タンク3aとケーシング3cとの二部材をそれぞれ上端、下端で合致させるだけでよいのでその相互間に不可避的に形成される連結部位は一箇所ですむことから、計量に係わる内容物を注出する場合において該連結部位からの液漏れの抑制効果を高めることができる」旨の主張をしているが、そのように連結部位が一箇所ですむような「貯溜タンク」と「ケーシング」との連結構造は、請求項1には記載されておらず、特許請求の範囲の記載事項に基づかない上記主張は採用できない。また、たとえ上記のように連結部位が一箇所ですむような連結構造が特定されたとしても、そのような連結構造自体についても当業者が容易に想到しうる範囲内のものである。

・相違点2について
定量注出用キャップにおいて、計量された内容液の貯蔵室を、容器本体の口部の周りに配設することは、本願出願前周知の技術(例えば、実願昭58-116954号(実開昭60-24756号)のマイクロフィルムや、実願昭57-48640号(実開昭58-151550号)のマイクロフィルム参照)であるので、
引用発明において、上記周知の技術を採用し、下部筒6を、液体容器1の口筒部2の周りに配設するようになすこと、すなわち、貯溜タンクを、容器本体の口部の周りに配設するようになすことは、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び上記周知の技術から当業者が予測できる範囲内のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-6.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するもので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
平成20年6月5日付け手続補正は、上記のとおり却下され、また、平成19年3月9日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1の記載において、「前記貯留タンク」は「前記貯溜タンク」の誤記と認められるので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下の事項により特定されるとおりのものと認める。
「容器本体の口部に装着されその内部に収容した内容物を定量注出するディスペンサーを備えた容器であって、
前記ディスペンサーは、定量注出に係わる内容物を収容する貯溜タンクと、この貯溜タンクに保持され容器本体の口部を通して容器本体内から内容物を定量注出する計量栓と、この計量栓に合わさり定量注出に係わる内容物を貯溜タンクに送給する前に一たん保持する定量注出空間を形成するケーシングからなり、
計量栓は、定量注出空間と貯溜タンクをつなぎ定量注出に係る内容物を貯溜タンクへ供給する貫通孔と、貯溜タンク内の内容物をケーシングを経て外界へ排出する排出口を有し、
前記貯溜タンクを、容器本体の口部の周りに配設してなることを特徴とするディスペンサー付き容器。」

4.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、その記載事項及び引用発明は、前記「2-3.引用発明」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、前記「2-2.本願補正発明」で検討した本願補正発明から、計量栓の保持を貯溜タンクの貯溜タンクへの「内部」で行う限定を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明とを比較すると、「2-4.対比」での「相違点2」で相違し、その他の点では一致している。
そこで、上記「相違点2」について検討すると、「2-5.判断」に記載したとおり、当業者が容易に想到し得たものであるので、
本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-06 
結審通知日 2010-01-12 
審決日 2010-01-25 
出願番号 特願2000-228174(P2000-228174)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B65D)
P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関谷 一夫柳田 利夫  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 村上 聡
栗林 敏彦
発明の名称 ディスペンサー付き容器  
代理人 澤田 達也  
代理人 杉村 憲司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ