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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200520859 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1213354
審判番号 不服2006-3087  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-20 
確定日 2010-03-10 
事件の表示 特願2000-619397「蛍光増白剤を含む化粧品組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月30日国際公開、WO00/71085、平成15年 1月 7日国内公表、特表2003-500344〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年5月23日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 1999年5月26日,米国)を国際出願日とする出願であって、最初の拒絶理由通知に応答して平成15年10月1日付けで手続補正がなされたが、平成17年11月17日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年2月20日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、平成18年3月22日付で手続補正がなされたものであり、その後、前置報告書を用いた審尋に応答して、平成21年4月23日付けで回答書が提出された。

2.平成18年3月22日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年3月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正の概略
本件補正により、特許請求の範囲は、
補正前(平成15年10月1日付け手続補正書参照)の
「【請求項1】 皮膚の暗い陰影またはすじの出現を減らすこと、皮膚に色艶を与えること、加齢または光により老化した皮膚の外観を改善すること、皮膚の酒さの症状の出現を減らすことから選ばれる使用のための、化粧上許容可能なビヒクルとともに蛍光を発するのに有効量の少なくとも1種の蛍光増白剤を含んでなる、皮膚に塗布するための皮膚の色調または無色の化粧品組成物であって、前記蛍光増白剤が、スチルベンおよび4,4’-ジアミノスチルベンの誘導体;ベンゼンおよびビフェニルの誘導体;ピラゾリン類、ビス(ベンゾオキサゾール-2-イル)の誘導体、クマリン類、カルボスチリル類、ナフタルイミド類、s-トリアジン類、並びにピリドトリアゾール類からなる群から選ばれる有機化合物である前記組成物。
【請求項2】 皮膚の暗い陰影またはすじの出現を減らすこと、皮膚に色艶を与えること、加齢または光により老化した皮膚の外観を改善すること、皮膚の酒さの症状の出現を減らすことから選ばれる使用のための、化粧上許容可能なビヒクルとともに蛍光を発するのに有効量の少なくとも1種の蛍光増白剤を含んでなる、皮膚に塗布するための皮膚の色調または無色の化粧品組成物であって、前記蛍光増白剤が無機蛍光ガラスである前記組成物。
【請求項3】 前記蛍光増白剤が緑色または青色の蛍光を示す請求項1に記載の組成物。
【請求項4】 無色化粧品である請求項1に記載の組成物。
【請求項5】 着色化粧品である請求項1に記載の組成物。
【請求項6】 ファンデーション、ブラッシュまたはフェイシャルパウダーである請求項5に記載の組成物。
【請求項7】 皮膚の暗い陰影またはすじの出現を減らすこと、皮膚に色艶を与えること、加齢または光により老化した皮膚の外観を改善すること、皮膚の酒さの症状の出現を減らすことから選ばれる使用のための、皮膚の色調の着色化粧品組成物であって、化粧上許容可能なビヒクルと、無機顔料、天然着色剤、合成有機モノマー着色剤、合成有機ポリマー着色剤、人工日焼け剤およびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の着色剤とともに、蛍光を発するのに有効量の少なくとも1種の蛍光増白剤を含んでなり、前記蛍光増白剤が、スチルベンおよび4,4’-ジアミノスチルベンの誘導体;ベンゼンおよびビフェニルの誘導体;ピラゾリン類、ビス(ベンゾオキサゾール-2-イル)の誘導体、クマリン類、カルボスチリル類、ナフタルイミド類、s-トリアジン類、並びにピリドトリアゾール類からなる群から選ばれる有機化合物である、前記組成物。
【請求項8】 酸化鉄(黄色、赤色、茶色または黒色)、フェロシアン化鉄アンモニウム(青色)、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー、酸化クロム(緑色)、タルク、レシチン変性タルク、ゼオライト、カオリン、レシチン変性カオリン、二酸化チタン(白色)およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の無機顔料を含んでなる請求項7に記載の組成物。
【請求項9】 酸化鉄、二酸化チタンまたはこれらの組合せの少なくとも1つを含んでなる請求項8に記載の組成物。
【請求項10】 ファンデーション、ブラッシュ、コンシーラーまたはフェイシャルパウダーである請求項7に記載の組成物。
【請求項11】 デヒドロキシアセトンである人工日焼け剤を含む請求項7に記載の組成物。
【請求項12】 請求項1に記載の組成物を皮膚に塗布することを含んでなる、皮膚に色艶を与えるための、前記組成物の使用。
【請求項13】 請求項4に記載の組成物を皮膚に塗布することを含んでなる、皮膚に色艶を与えるための、前記組成物の使用。
【請求項14】 請求項7に記載の組成物を皮膚に塗布することを含んでなる、皮膚に色艶を与えるための、前記組成物の使用。
【請求項15】 請求項1に記載の組成物を皮膚に塗布することを含んでなる、皮膚の暗い陰影またはすじの出現を減らすための、前記組成物の使用。
【請求項16】 請求項4に記載の組成物を皮膚に塗布することを含んでなる、皮膚の暗い陰影またはすじの出現を減らすための、前記組成物の使用。
【請求項17】 請求項7に記載の組成物を皮膚に塗布することを含んでなる、皮膚の暗い陰影またはすじの出現を減らすための、前記組成物の使用。
【請求項18】 請求項1に記載の組成物を皮膚に塗布することを含んでなる、加齢または光により老化した皮膚の外観を改善するための、前記組成物の使用。
【請求項19】 請求項4に記載の組成物を皮膚に塗布することを含んでなる、加齢または光により老化した皮膚の外観を改善するための、前記組成物の使用。
【請求項20】 請求項7に記載の組成物を皮膚に塗布することを含んでなる、加齢または光により老化した皮膚の外観を改善するための、前記組成物の使用。
【請求項21】 請求項1に記載の組成物を皮膚に塗布することを含んでなる、皮膚の酒さの症状の出現を減らすための、前記組成物の使用。
【請求項22】 請求項4に記載の組成物を皮膚に塗布することを含んでなる、皮膚の酒さの症状の出現を減らすための、前記組成物の使用。
【請求項23】 請求項7に記載の組成物を皮膚に塗布することを含んでなる、皮膚の酒さの症状の出現を減らすための、前記組成物の使用。」から、
補正後の
「【請求項1】 皮膚に塗布するための皮膚の色調または無色の化粧品組成物に、皮膚の暗い陰影またはすじの出現を減らすこと、皮膚に色艶を与えること、加齢または光により老化した皮膚の外観を改善すること、皮膚の酒さの症状の出現を減らすことから選ばれる効果を、化粧品組成物に付与するための蛍光増白剤の使用であって、
前記化粧料組成物は、化粧上許容可能なビヒクルとともに蛍光を発するのに有効量の少なくとも1種の蛍光増白剤を含んでなる、皮膚に塗布するための皮膚の色調または無色の化粧品組成物であって、前記蛍光増白剤が、スチルベンおよび4,4’-ジアミノスチルベンの誘導体;ベンゼンおよびビフェニルの誘導体;ピラゾリン類、ビス(ベンゾオキサゾール-2-イル)の誘導体、クマリン類、カルボスチリル類、ナフタルイミド類、s-トリアジン類、並びにピリドトリアゾール類からなる群から選ばれる有機化合物であることを特徴とする前記使用。
【請求項2】 前記蛍光増白剤が無機蛍光ガラスである請求項1に記載の使用。
【請求項3】 前記蛍光増白剤が緑色または青色の蛍光を示す請求項1に記載の使用。
【請求項4】 前記化粧品組成物が無色化粧品である請求項1に記載の使用。
【請求項5】 前記化粧品組成物が着色化粧品である請求項1に記載の使用。
【請求項6】 前記化粧品組成物がファンデーション、ブラッシュまたはフェイシャルパウダーである請求項5に記載の使用。
【請求項7】 前記化粧品組成物が、無機顔料、天然着色剤、合成有機モノマー着色剤、合成有機ポリマー着色剤、人工日焼け剤およびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の着色剤を含むものである、請求項1に記載の使用。
【請求項8】 前記化粧品組成物が、酸化鉄(黄色、赤色、茶色または黒色)、フェロシアン化鉄アンモニウム(青色)、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー、酸化クロム(緑色)、タルク、レシチン変性タルク、ゼオライト、カオリン、レシチン変性カオリン、二酸化チタン(白色)およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の無機顔料を含むものである、請求項7に記載の使用。
【請求項9】 前記化粧品組成物が、酸化鉄、二酸化チタンまたはこれらの組合せの少なくとも1つを含むものである、請求項8に記載の使用。
【請求項10】 前記化粧品組成物が、ファンデーション、ブラッシュ、コンシーラーまたはフェイシャルパウダーである、請求項7に記載の使用。
【請求項11】 前記化粧品組成物が、デヒドロキシアセトンである人工日焼け剤を含むものである、請求項7に記載の使用。」
と補正された。

上記補正前後の発明特定事項を対比すると、上記補正は、補正前の請求項1?11に係る「組成物」の発明を、カテゴリーを変更し補正後の請求項1?11の「・・の効果を、化粧品組成物に付与するための蛍光増白剤の使用」の発明に補正し、補正前の請求項12?23の「組成物の使用」の発明を削除するものである。

ところで、本件補正は、特許法第121条第1項の審判[拒絶査定不服審判]を請求する場合において、その審判の請求の日から30日以内にされたものであって、同法第17条の2第1項第4号の補正に該当する。
そして、そのような補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下、単に「平成18年改正前」ともいう。)の特許法第17条の2第4項各号に規定する事項を目的にするものに限られているところ、補正前の請求項12?23を削除する補正は平成18年改正前特許法第17条の2第4項の請求項の削除(1号)に該当するが、本件補正の請求項1?11に係る補正は、カテゴリーの変更を伴うものであり、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号の規定である請求項の削除(1号)、特許請求の範囲の減縮(2号)、誤記の訂正(3号)、明りょうでない記載の釈明(4号)のいずれにも該当しない。

これに対し、請求人は、審判請求理由(平成18年4月28日付け補正書(方式)参照)において「補正前の特許請求の範囲に記載された範囲において、クレームのカテゴリーを補正したものであって、新たな調査や審査負担を要することなく特許可能な請求項を導くものであり、17条の2第4項の立法趣旨に適うことをご理解願います。」と主張しているが、このような主張が採用出来ないことは、上記のとおり明らかである。

したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号の規定を満たしていないため同条第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成18年3月22日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?23にかかる発明は、平成15年10月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?23に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】 皮膚の暗い陰影またはすじの出現を減らすこと、皮膚に色艶を与えること、加齢または光により老化した皮膚の外観を改善すること、皮膚の酒さの症状の出現を減らすことから選ばれる使用のための、化粧上許容可能なビヒクルとともに蛍光を発するのに有効量の少なくとも1種の蛍光増白剤を含んでなる、皮膚に塗布するための皮膚の色調または無色の化粧品組成物であって、前記蛍光増白剤が、スチルベンおよび4,4’-ジアミノスチルベンの誘導体;ベンゼンおよびビフェニルの誘導体;ピラゾリン類、ビス(ベンゾオキサゾール-2-イル)の誘導体、クマリン類、カルボスチリル類、ナフタルイミド類、s-トリアジン類、並びにピリドトリアゾール類からなる群から選ばれる有機化合物である前記組成物。」

(1)引用例
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願の優先権主張日前の出願であって、その出願後に出願公開された特願平11-133196号(特開2000-1417号公報参照,平成12年1月7日公開、平成11年5月13日出願;なお、優先権主張はあるが検討を要しない。)の願書に最初に添付した明細書(以下「先願明細書」という。)には、次のことが記載されている。なお、下線は、当審で付与した。

(i)「【請求項1】 組成物中での、または組成物の調製における、幻視光沢剤(optical brightner)群に属する少なくとも一の化合物の使用であって、この組成物が皮膚の明色化を目的とすることを特徴とする使用。
【請求項2】 組成物が皮膚の即時明色化を目的とすることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】 組成物中での、または組成物の調製における、幻視光沢剤群に属する少なくとも一の化合物の使用であって、この組成物が、一様さ、同質性、透明性、雪花石膏のように滑らかな外観より選択される少なくとも一の特質を顔色に与えることを目的とすることを特徴とする使用。
【請求項4】 アジア人の皮膚の手入れを目的とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】 組成物中での、または組成物の調製における、幻視光沢剤群に属する少なくとも一の化合物の使用であって、この組成物が、コンシーラー組成物であることを特徴とする使用。
【請求項6】 白人の皮膚の手入れを目的とすることを特徴とする請求項5に記載の使用。
【請求項7】 幻視光沢剤が、UVA領域の300から390nmにて吸光し、400から525nmにて発光する化合物より選択されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】 幻視光沢剤が、スティルベン誘導体、クマリン誘導体、オキサゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体及びイミダゾール誘導体より選択されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】?【請求項15】 ・・・中略・・・
【請求項16】 幻視光沢剤群に属する少なくとも一の化合物及び剥落剤より選択される少なくとも一の化合物を含むことを特徴とする組成物。
【請求項17】 皮膚の明色化を目的とすることを特徴とする請求項13から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】 幻視光沢剤群に属する少なくとも一の化合物及び少なくとも一の保湿剤を含むことを特徴とする組成物。
【請求項19】 幻視光沢剤群に属する少なくとも一の化合物及び少なくとも一の皺防止剤を含むことを特徴とする組成物。
【請求項20】 目の下の影の予防及び/または処理を目的とすることを特徴とする請求項18または19に記載の組成物。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】?【請求項20】参照)
(ii)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、局所適用のための化粧品組成物中、または皮膚科用組成物の調製のための幻視光沢剤(optical brightner)群の化合物の使用に関し、この組成物は、優れた一様さ、優れた同質性、優れた透明性、雪花石膏のように滑らかな外観及び優れた白さを顔色に与える特性を有する。この組成物はまた、シャドウコンシーリング特性を有する。」(段落【0001】参照)
(iii)「【0009】顔色を一様にすること及び即時に白い外観を与えることの可能な化粧品組成物を使用することは既知の習慣であるが、これらの組成物は結合剤中に分散したパウダーからなる。これらのパウダーは、一般的に、所望の効果によって白色または有色の含量を含有し、ラメラ型の充填剤あるいはまた小板形態のシリカを含有する。顔色を一様にする作用は、主としてラメラ型の充填剤によって供されるカバーパウダーによって得られる。
【0010】こうした組成物の欠点は、皮膚欠陥のむらを隠すことが、概組成物のカバー力によって供される点である。この方法においてメイクアップした皮膚は、これらの組成物の透明性の欠如によって自然な外観を失う。
【0011】これらの組成物の透明性を増大させる手段として、ラメラ充填剤を使用することも検討される(米国特許4,899,163号参照)、これらは光を反射し、皮膚に不自然な光沢のある外観を与えるという欠点を有する。」(段落【0009】?【0011】参照)
(iv)「【0014】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】本発明の主題は、皮膚の明色化、特に皮膚の即時明色化を目的とする組成物中、または概組成物の調製のための、幻視光沢剤群に属する少なくとも一の化合物の使用である。こうした組成物は、顔色に優れた一様さ、優れた同質性、優れた透明性及び雪花石膏のように滑らかな外観を与える。このような使用は、特にアジア人の皮膚に有効である。
【0015】特に、この組成物は、化粧品組成物である。皮膚科用としての使用もまた想定される。本発明の組成物は、メイクアップ組成物または髪への適用を意図した組成物よりも、スキンケア組成物であることが好ましい。」(段落【0014】?【0015】参照)
(v)「【0017】幻視光沢剤は、当業者には良く知られた化合物である。こうした化合物は“Fluorescent Whitening Agent, Encyclopedia of Chemical Technology, Kirk-Othmer”, Vol. 11, pp. 227-241, 4th Edition, 1994, Wileyに記載されている。これらは、特に、主としてUV領域の300から390nmにて吸光し、400から525nmにて発光する化合物と定義可能である。
【0018】幻視光沢剤の中で、特に重要なものは、スティルベン誘導体、クマリン誘導体、オキサゾール及びベンズオキサゾール誘導体及びイミダゾール誘導体である。こうした化合物は、容易に購入可能である。例えば、Chiba Geigy社製の“Tinopal SOPR”及び“Tinopal 0BR”を挙げることができる。
【0019】本発明により好ましく使用される幻視光沢剤は、ナトリウム=4,4’-ビス[(4,6-ジアニリノ-1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ]スティルベン-2,2’-ジスルホナート及び2,5-チオフェンジイルビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンズオキサゾール)である。」(段落【0017】?【0019】参照)
(vi)「【0020】本発明の主題はまた、皮膚明色化剤として、特に即時明色化剤として、及び/または、一様さ、同質性、透明性及び雪花石膏のように滑らかな外観より選択される少なくとも一の特性を皮膚に与えることを目的とする剤としての、組成物中または組成物の調製のための幻視光沢剤群の少なくとも一の化合物の使用である。本発明の主題はまた、コンシーラーとしての、組成物中または組成物の調製のための幻視光沢剤群の少なくとも一の化合物の使用である。
【0021】このように、目の周囲表面が暗色、さらには灰色または黒色に見えること及び/または目の下のたるみの存在及び/または目の輪郭の外観上の衰えによる目の周りの影は、本発明の組成物を適用することにより減少または喪失可能である。」(段落【0020】?【0021】参照)
(vii)「【0041】最後に、本発明の主題は、皮膚の即時明色化方法であり、この方法は、少なくとも一の幻視光沢剤を含む化粧品組成物を皮膚に適用することからなる。
【0042】本発明により使用される幻視光沢剤を含有する組成物には、通常局所適用に使用されるあらゆる製薬形態、例えば、溶液、ゲル、ローションまたは漿液の形態の分散物、液体または乳剤タイプの準液体の堅さをもち、水相中に脂肪相を分散させること(O/W)またはその逆(W/O)によって得られるエマルション、またはクリームまたはゲルタイプのソフトで準固体または固体の堅さをもつ懸濁液またはエマルション、あるいはまた、ミクロエマルション、ミクロカプセルミクロ粒子またはイオン性及び/または非イオン性タイプの小胞分散物等の形態が可能である。これらの組成物は通常の方法で調製される。
【0043】既知の通り、本発明の組成物、特に化粧品組成物は、化粧品の分野で一般的な補助剤、例えば、乳化剤、親水性または親油性のゲル化剤、親水性または親油性の活性剤、保存料、抗酸化剤、香料、充填剤及び染料等を含有可能である。これらの様々な補助剤の量は、化粧品の分野で従来使用されている通りであり、例えば組成物全重量の0.01から20%である。その性質により、これらの補助剤は脂肪相、水相及び/または脂質小胞に導入可能である。
」(段落【0041】?【0043】参照)
(viii)「【0050】これらの組成物は特に、顔、手または全身のための処理または手入れ用クリーム、スキンケアまたは皮膚処理用の保護または手入れ用ボディミルクまたはローション、ゲルまたはムースを構成する。」(段落【0050】参照)
(ix)「【0051】以下の実施例は、本発明を詳説する。これらの実施例中、示した割合は重量%である。
【0052】
【実施例】
(実施例1:O/W流動クリーム)
・2-エチルヘキシルパーミタート 8%
・流動ワセリン 8%
・グリセリル=モノ/ジイソステアラート 2%
・グリセリル=モノ/ジイソステアラート、ステアリン酸及び
グリセリンの混合物(40/50/5/5) 2%
・ナトリウム=4,4’-ビス[(4,6-ジアニリノ
-1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ]スティルベン
-2,2’-ジスルホナート* 1%
・トリエタノールアミン 0.9%
・プロピレングリコール 2%
・ステアリン酸 2%
・ステアリン酸マグネシウム 2%
・保存料 適量
・水 100gまでの残量
* Chiba Geigy社製“Tinopal SOPR”
【0053】(実施例2:O/W流動クリーム)スティルベン誘導体を、Chiba Geigy社より“Uvitex 0BR”の名で市販の2,5-チオフェンジイルビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンズオキサゾール)1%と置き換えた以外は、実施例1と同様の成分を用いてクリームを調製した。これら二つのクリームをアジア人の女性に試用したところ、その即時明色化効果及びその透明性について、非常に高く評価された。これら二つのクリームは、皮膚に雪花石膏のように滑らかな外観を与えた。
【0054】
(実施例3:目の周囲のためのコンシーラークリーム)
・ヒアルロン酸ナトリウム 0.1%
・ナトリウム=4,4’-ビス[(4,6-ジアニリノ
-1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ]スティルベン
-2,2’-ジスルホナート* 7%
・アンモニア水で部分的に中性化された架橋アクリルアミド
メチルプロパンスルホン酸 1.5%
・グリセリン 5%
・エチルアルコール 5%
・オキシエチレン化メチルグルコースジオレアート(120 EO)0.5%
・オキシエチレン化ソルビタンモノラウラート(20 EO) 0.5%
・保存料 適量
・水 100gまでの残量
* Chiba Geigy社製“Tinopal SOP”
【0055】(実施例4:目の周囲のためのコンシーラークリーム)“Tinopal SOP”を1%のみ用いて実施例3を繰り返した。実施例3及び4の二つのコンシーラー組成物を白人女性の皮膚に試用した。いずれにも、即時の、自然で明らかなシャドウコンシーリング効果が得られた。顔の皮膚が均一に着色され、シミが薄くなって見え、目の周りの衰えが目立たなくなった。」(段落【0051】?【0055】参照)

(2)対比、判断
引用例1には、前記「(2)」の摘示記載(例えば、摘示(i),(iv),(v),(vii)参照)からみて、次の発明(以下、「先願発明」という。)が開示されていると認められる。
「スティルベン誘導体、クマリン誘導体、オキサゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体及びイミダゾール誘導体より選択される幻視光沢剤に属する少なくとも一つの化合物を配合した、皮膚に塗布する化粧品組成物。」

そこで、本願発明と先願発明を対比する。
(a)先願発明の「幻視光沢剤」は、UV領域にて吸光し400から525nmにて発光する化合物である(摘示(v)参照)から、本願発明の「蛍光増白剤」に相当する。
(b)先願発明の幻視光沢剤の「スティルベン誘導体、クマリン誘導体、オキサゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体及びイミダゾール誘導体」は、スティルベン誘導体として4,4’-ビスアミノスチルベン誘導体が例示され実施例で使用されていること(摘示(v),(ix)参照)も勘案すると、本願発明の蛍光増白剤の「スチルベンおよび4,4’-ジアミノスチルベンの誘導体;ベンゼンおよびビフェニルの誘導体;ピラゾリン類、ビス(ベンゾオキサゾール-2-イル)の誘導体、クマリン類、カルボスチリル類、ナフタルイミド類、s-トリアジン類、並びにピリドトリアゾール類からなる群から選ばれる有機化合物」のうち少なくとも「4,4’-ジアミノスチルベンの誘導体」と「クマリン類」に相当し、それらが有機化合物であることも明白である。
(c)本願発明の「化粧上許容可能なビヒクル」とはどのようなものか本願明細書には明示的記載はないが、「蛍光増白剤は、フェイシャル化粧品組成物に通常使用されるいかなる種類のビヒクルにも配合できる。例えば、蛍光増白剤を、溶液、コロイド分散液、エマルション(水中油滴型または油中水滴型)、懸濁液、パウダー、クリーム、ローション、ジェル、フォーム、ムース、スプレーなどに加えることができる。」(本願明細書段落【0011】参照)との説明が見られる。これに対し、先願明細書には、「本発明により使用される幻視光沢剤を含有する組成物には、通常局所適用に使用されるあらゆる製薬形態、例えば、溶液、ゲル、ローションまたは漿液の形態の分散物、液体または乳剤タイプの準液体の堅さをもち、水相中に脂肪相を分散させること(O/W)またはその逆(W/O)によって得られるエマルション、またはクリームまたはゲルタイプのソフトで準固体または固体の堅さをもつ懸濁液またはエマルション、あるいはまた、ミクロエマルション、ミクロカプセルミクロ粒子またはイオン性及び/または非イオン性タイプの小胞分散物等の形態が可能で」(摘示(vii)の【0042】参照)とされているから、先願明細書に「化粧上許容可能なビヒクル」との表現はなくとも、実質的に先願発明に「化粧上許容可能なビヒクル」は適宜使用されるものというべきであり、その点で両発明に実質的な差異は無いといえる。
(d)先願発明は、剥落剤や保湿剤、皺防止剤、その他の各種補助剤が配合され得る(摘示(i),(vii)など参照)が、本願発明もまた顔料や色素、日焼け止め剤、しわ防止剤など各種追加の剤が配合され得るものであり(本願明細書段落【0012】,【0015】など参照)、本願発明の実施例Iでも各種酸化鉄やシリカ、タルクなど各種剤が配合されている(同書段落【0018】の表を参照)から、その点に関し両発明に実質的な相違はない。

してみると、両発明は、少なくとも、
「化粧上許容可能なビヒクルとともに少なくとも1種の蛍光増白剤を含んでなる、皮膚に塗布するための化粧品組成物であって、前記蛍光増白剤が、4,4’-ジアミノスチルベンの誘導体、クマリン類からなる群から選ばれる有機化合物である前記組成物。」
で一致する。
しかし、本願発明は、更に次の(A)?(C)の発明特定事項を有している。
(A)「皮膚の暗い陰影またはすじの出現を減らすこと、皮膚に色艶を与えること、加齢または光により老化した皮膚の外観を改善すること、皮膚の酒さの症状の出現を減らすことから選ばれる使用のための」
(B)該化粧品組成物が、「皮膚の色調または無色」であること
(C)該蛍光増白剤が、「蛍光を発するのに有効量」であること

そこで、以下、これらの発明特定事項が先願明細書に開示されているか検討する。

(A)の発明特定事項について
本願発明は、「ファンデーション、ブラッシュまたはフェイシャルパウダー」(本願明細書の請求項10など)、「人工日焼け組成物」(同書の段落【0014】)、「スキントリートメント製品」(同書の段落【0015】)、「目の下の隈など特に気にかかる部分に塗布して」(同書段落【0016】)などに使用することが記載されている。
このような使用は、先願発明の「スキンケア組成物」(摘示(iv))、「コンシーラーとして」(摘示(vi))、「目の下のたるみの存在及び/または目の輪郭の外観上の衰えによる目の周りの影は、本発明の組成物を適用することにより減少または喪失可能である」(摘示(vi))、「目の下の影の予防及び/または処理を目的とする」(摘示(i)の【請求項20】)との使用と実質的に重複するものと認められる。
してみると、両発明の組成物は用途として区別することができないものであり、本願発明が新たな用途を提示するものとは言えないから、(A)の発明特定事項の有無によって実質的な相違があるということはできない。

しかも、先願明細書には、(A)の発明特定事項の表現そのままの記載はないものの、「目の下の影の予防及び/または処理を目的とする」(摘示(i)の【請求項20】)、「目の周囲表面が暗色、さらには灰色または黒色に見えること及び/または目の下のたるみの存在及び/または目の輪郭の外観上の衰えによる目の周りの影は、本発明の組成物を適用することにより減少または喪失可能である。」(摘示(vi)の段落【0021】)、皮膚に先願発明の組成物を適用した実施例において「即時明色化効果及びその透明性について、非常に高く評価された。これら二つのクリームは、皮膚に雪花石膏のように滑らかな外観を与えた」(摘示(ix)の実施例2)、「即時の、自然で明らかなシャドウコンシーリング効果が得られた。顔の皮膚が均一に着色され、シミが薄くなって見え、目の周りの衰えが目立たなくなった。」(摘示(ix)の実施例4)と記載されている。
これらの記載は、本願発明で特定する「「皮膚の暗い陰影またはすじの出現を減らすこと」、「皮膚に色艶を与えること」、「加齢または光により老化した皮膚の外観を改善すること」と表現が異なるものの、実質的に重複するものと解するべきである。
なお、「皮膚の暗い陰影またはすじの出現を減らすこと、皮膚に色艶を与えること、加齢または光により老化した皮膚の外観を改善すること、皮膚の酒さの症状の出現を減らすことから選ばれる使用のための」との特定は、「選ばれる」とされていること、また、本願請求項15に「皮膚の暗い陰影またはすじの出現を減らすための」、同請求項12に「皮膚に色艶を与えるための」、同請求項18に「加齢または光により老化した皮膚の外観を改善するための」、同請求項21に「皮膚の酒さの症状の出現を減らすための」、組成物の使用がそれぞれ独立して請求されていることに鑑みると、それらの作用のいずれか一つあれば足りるものと解される。

よって、(A)の発明特定事項は、先願明細書に実質的な開示があるというべきである。

なお、審尋に対する回答書(平成21年4月23日付け)において、請求人は、先願明細書の段落【0001】に「優れた白さを顔に与える特性を有すること」が記載されていて、先願明細書に記載される化粧品組成物が「皮膚に美白効果をもたらすものである」ことや、「漂白効果」が目的とされることから、本願発明の目的と異なる旨を主張する。
しかし、先願発明は、例えば「即時明色化効果」(摘示(i),(iv),(ix))と記載されているように即時の効果であって、「美白効果」や「漂白効果」を目的とするものではないから、前記請求人の主張は失当であり採用できない。

(B)の発明特定事項について
先願明細書では、「本発明の組成物は、メイクアップ組成物または髪への適用を意図した組成物よりも、スキンケア組成物であることが好ましい。」(摘示(iv)の段落【0015】)とされ、「組成物は特に、顔、手または全身のための処理または手入れ用クリーム、スキンケアまたは皮膚処理用の保護または手入れ用ボディミルクまたはローション、ゲルまたはムースを構成する」(摘示(viii))、コンシーラーとして用いる(摘示(vi))とされていて、格別に着色を意図するものではないこと、および、実施例1?4の化粧品組成には着色剤が配合されておらず無色相当と認められること、実施例2において「透明性について、非常に高く評価された」と記載されていることを勘案すると、先願発明の化粧品組成物として、無色またはそれに類する色とすることは実質的な開示があるといえる。
よって、(B)の発明特定事項は、先願明細書に実質的な開示があるというべきである。

(C)の発明特定事項について
幻視光沢剤、即ち蛍光増白剤として用いるのであり、UV領域にて吸光し400から525nmにて発光するのであるから、「蛍光を発するのに有効量」で用いることは当然のことである。
よって、(C)の発明特定事項は、先願明細書に実質的な開示があるというべきである。

以上のとおりであるから、先願発明は、本願発明の発明特定事項を実質的にすべて開示しているといえる。

(3)むすび
したがって、本願発明は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願出願の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記特許出願の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
それ故、本願は、他の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-06 
結審通知日 2009-10-13 
審決日 2009-10-26 
出願番号 特願2000-619397(P2000-619397)
審決分類 P 1 8・ 574- Z (A61K)
P 1 8・ 161- Z (A61K)
P 1 8・ 571- Z (A61K)
P 1 8・ 573- Z (A61K)
P 1 8・ 572- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上條 のぶよ  
特許庁審判長 川上 美秀
特許庁審判官 内田 淳子
弘實 謙二
発明の名称 蛍光増白剤を含む化粧品組成物  
代理人 石井 貞次  
代理人 平木 祐輔  
代理人 松任谷 優子  
代理人 藤田 節  

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