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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1213415
審判番号 不服2007-25329  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-14 
確定日 2010-03-12 
事件の表示 平成 8年特許願第293880号「印字装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月26日出願公開、特開平10-138576〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成8年11月6日の出願であって、平成19年8月7日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年9月14日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
本願の発明は、平成18年7月28日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、下記のとおりものと認める。(以下「本願発明」という。)

「第1の文字種に指定可能な第1の文字修飾群及び第2の文字種に指定可能な第2の文字修飾群の中から指定される文字修飾に基づいて前記第1の文字種及び前記第2の文字種の文字を含むデータに文字修飾を施して印字する印字装置であって、
前記第1の文字種及び前記第2の文字種の文字を含むデータを入力する入力手段と、
前記第1の文字修飾群に属する文字修飾と前記第2の文字修飾群に属する文字修飾とを対応付けした文字修飾情報を予め複数種類記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記複数種類の文字修飾情報の中から1つの文字修飾情報を選択する選択手段と、
前記入力手段から入力されるデータの文字修飾範囲を指定する指定手段と、
前記選択手段により選択された文字修飾情報を、前記指定手段により指定された範囲で前記入力手段から入力されたデータに対応して設定する設定手段と、
前記入力手段から入力されたデータの各文字の文字種を判断する判断手段と、
前記判断手段の判断及び前記設定手段により設定された文字修飾情報に基づいて前記入力手段から入力される前記第1の文字種及び前記第2の文字種の文字を含むデータに文字修飾を施して印字する印字手段と、
を備えることを特徴とする印字装置。」

2.引用された刊行物記載の発明
(刊行物1について)
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-187332号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は、当審にて付与した。)

(1-a)「【請求項1】 複数種のフォントを扱える文書編集装置において、文字コードに対応する複数種のフォントデータを管理するフォント管理方式であって、
複数の文字種の文字コードに対応するフォントデータをフォントファミリとして格納する記憶手段と、
使用者の指定により編集中の文書において文字種とフォントデータのフォントファミリとを対応付ける仮想フォントファミリテーブルと、
前記仮想フォントファミリテーブルの内容により編集中の文書におけるフォントデータの選択制御を行う制御手段とを備えたことを特徴とするフォント管理方式。」

(1-b)「【0002】
【従来の技術】従来、文書編集装置に関しては、例えば、特開平4-123164号公報に記載されている「文書処理システム」のように、複数種のフォントが使用できるように構成されているものが知られている。このような文書処理システムにおいては、出力装置に搭載された複数のサイズ,複数の書体といったマルチフォントから所望のフォントを利用して、表示装置上で文書の編集を行うことが可能となっている。
【0003】この種の複数種のフォントを扱える文書編集装置においては、フォント管理部が備えられ、各々のフォントデータは、文字コードに対応して、その文字形状の書体,文字サイズなどのデータが、文字パターンデータと共に蓄積され、文字種(漢字,数字,英字,特殊記号など),サイズ(ポイント数),書体(明朝体,ゴジック体,イタリック体)などに応じて、同じ種類のものがフォントファミリとして管理されている。したがって、文字種に対応して、フォントファミリを指定することにより、文字形状のパターンが指定できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】複数種のフォントを扱える文書編集装置により作成する電子文書において、異なるフォントを使用する場合、各文字あるいは文字の集まりごとにフォントファミリを指定するか、予じめ設定されたフォントファミリの指定により、入力された文書の入力文字が設定されたフォントファミリを使用するものとして文書を作成している。このため、文書中の或る文章において、文字種によって異なる種類のフォントファミリを使用したい場合、各々の文章の各文字について個別にフォントファミリを指定するか、あるいは文書編集装置において予じめ複数種のフォントデータを所望の形態のもののみをマージして、改めてフォントデータセットを作成し直す必要ある。これにより、文書編集装置でセットされたフォントデータが利用できる。
【0005】したがって、異なるフォントを、あるルールで混在させるような態様で文書作成を行う場合には、使用者に文書作成中に異なるフォントを各文字あるいは文字列ごとに指定させることを強いるか、そのルールに従った複数種のフォントデータからなる新しいフォントファミリのフォントデータセットを提供しなければならない。このため、使用者あるいはフォント提供者に無駄な労力を強いているという問題点がある。
【0006】本発明は上記のような問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、複数種のフォントを扱える文書編集装置において、文字コードに対応する複数種のフォントデータを適切に管理して、電子的に作成する文書における各々の文字種のフォントデータを任意に選択可能とするフォント管理方式を提供することにある。」

(1-c)「【0009】このようにして、フォントデータの管理を行うので、文書作成において異なるフォントを所定のルールで混在させる場合、このルールを仮想フォントファミリテーブルにおいて、文字種に対応させて所望する文字書体,大きさなどのフォントファミリを指定して仮想フォント(仮想フォントデータ)を構成し、これを登録する。これにより、仮想フォントファミリテーブルを用いて、任意に文字種に対応してフォントデータが選択できるので、異なるフォントが混在する高度な文書編集を効率的に行うことができる。」

(1-d)「【0010】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を用いて具体的に説明する。図1は本発明の一実施例にかかる文書編集装置におけるフォント管理方式の要部の構成を示すブロック図である。図1において、11は入力文字、12はフォントファミリ指定データである。13はフォント管理装置、14はフォントデータ格納部、15は文書作成装置、16は電子文書をそれぞれ示している。また、17は仮想フォントファミリテーブルを示している。
【0011】文書作成の処理において、フォント管理装置13は入力される入力文字11とフォントファミリ指定データ12から、フォント管理装置13が備えているフォントファミリテーブル(図示せず)または仮想フォントファミリテーブル17から、フォントデータの格納位置を得て、フォントデータ格納部14に格納されている指定の入力文字のフォントデータを取り込み、当該フォントデータを文書作成装置部15に送出し、電子文書16を作成して出力する。
【0012】フォント管理装置13は、文字種に対応して、そのフォントファミリを指定する仮想フォントファミリテーブル17を有しており、文書作成装置15に、フォント管理装置13に入力された入力文字11の文字コードと、フォントデータ格納部14に格納されたフォントデータのフォントファミリ指定データとが供給される。これにより、文書作成装置では、作成中の文書における文字のフォントデータを特定する。
【0013】図2は仮想フォントファミリテーブルの構成を説明する図である。仮想フォントファミリテーブル17には、図2に示すように、1つの仮想フォントファミリを形成する仮想フォントとして、使用者あるいは装置の供給者によって定義されるその仮想フォント名21と、仮想フォント名21に対応づけて、各文字種22とその文字種で使用するファントファミリ23のフォント名とが対応づけて登録する文字種-フォントファミリ対応表が構成される。これらの仮想フォントを定義する文字種-フォンファミリ対応表の複数個を設定して、仮想フォントファミリテーブル17を形成する。
【0014】図2に例示する仮想フォントファミリテーブル17においては、仮想フォント名「A Font」の仮想フォントと、仮想フォント名「Z Font」の仮想フォントとの具体的データ例を示している。仮想フォント名「A Font」の仮想フォントでは、英文字の小文字(a,b,…,z)および大文字(A,B,…,Z)の文字種については“A社の明朝体B”の使用が指定され、ひらがな文字およびカタカナ文字の文字種については“C社のゴジック体D”の使用が指定されることが示されている。同じく、この仮想フォントファミリに属する仮想フォントとして、仮想フォント名「Z Font」の仮想フォントでは、数字の文字種についてはフォント名“Triumvirate”のフォントの使用が指定され、記号「%,!,#,$,…」の文字種については“ヘルベチカ”のフォントの使用が指定されている。」

(1-e)図1(図1は本発明の一実施例にかかる文書編集装置におけるフォント管理方式の要部の構成を示すブロック図)として、





(1-f)図2(図2は仮想フォントファミリテーブルの構成を説明する図)として、






したがって、上記の事項を総合すると、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。(以下、「刊行物1発明」という。)

「フォント管理装置及び文書作成装置を備え、複数種のフォント(文字書体)を扱える文書編集装置であって、
前記フォント管理装置は、
文字コードに対応する複数種のフォントデータを管理するものであり、
複数の文字種の文字コードに対応するフォントデータをフォントファミリとして格納する記憶手段と、
使用者の指定により編集中の文書において文字種とフォントデータのフォントファミリとを対応付ける仮想フォントファミリテーブルと、
前記仮想フォントファミリテーブルの内容により編集中の文書におけるフォントデータの選択制御を行う制御手段とを備え、
前記仮想フォントファミリテーブルには、
例えば、仮想フォント名「A Font」の仮想フォントでは、
英文字の小文字(a,b,…,z)および大文字(A,B,…,Z)の文字種については"A社の明朝体B"の使用が指定され、
ひらがな文字およびカタカナ文字の文字種については"C社のゴジック体D"の使用が指定されており、
文書作成の処理において、
各文字種について、入力文字のフォントデータを取り込み、当該フォントデータを前記文書作成装置に送出し、電子文書を作成して出力する、
文書編集装置。」

(刊行物2について)
また、原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-255154号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は、当審にて付与した。)

(2-a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、文書を編集する文書編集装置に関し、特に文書中の任意の文字列の文字修飾、文字色、文字サイズ、書体等の文字属性を変更する装置に関する。」

(2-b)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記文書編集装置では、文書中の任意の文字を対象にして複数の文字属性を組合せて設定する場合、既に文書中の他の文字の文字属性がその文字属性の組合せで設定されているときであっても、一旦設定操作が終了した後では、再度、属性の種類と詳細属性の選択と対象文字の指定という操作を繰り返さなければならず、操作が非常に煩雑となる。例えば、文字修飾属性を太字、白抜き、影付き、網掛けの詳細属性とし、文字色属性を赤の詳細属性とし、書体属性をゴシックの詳細属性とし、サイズ属性を横倍角の詳細属性に設定するためには、選択部1405から詳細属性の数である7回の操作をしなければならない。
【0006】本発明は、上記課題に鑑み、複雑な文字属性の設定を容易にすることのできる文字属性変更装置を提供することを目的とする。」

(2-c)「【0016】文字属性記憶部104は、図2に示すような文字属性(詳細属性)とこの詳細属性に対応する数字コードとを記憶している。ここで文字属性は、文字修飾属性、文字色属性、書体属性、文字サイズ属性等の属性の種類からなる。文字修飾属性は、太字、斜体、立体、回転、白抜き、影付き、下線、網掛け等の詳細属性を含む。文字色属性は、黒、赤、青等の詳細属性を含む。書体属性は、明朝体、ゴシック体、毛筆体等の詳細属性を含む。文字サイズ属性は、全角、半角、横倍角、ポイント数の詳細属性を含む。
【0017】選択部105は、利用者からの文字属性設定の指示を受けると、制御部110に該指示を通知する。また、表示部106上の文字属性の種類又は詳細属性をマウスのクリックによって選択され、表示部106上の文書の文字属性を設定すべき文字列範囲をマウスのドローによって指定される。これらの選択又は指定内容を制御部110に通知する。
【0018】表示部106は、制御部110の表示制御によって、文書記憶部103に記憶されている内容を表示し、ウィンドウを設けて文字属性の種類とその詳細属性とを表示し、また図3に示すような、文字属性パターンデータベース108に登録されている文字属性パターンの内容を表示する。図3において、文字属性パターンに従って表示された文字301と、その文字属性パターン即ち詳細属性の組合せ内容302と、その文字属性パターンを選択するための四角記号(□)303とが一列に表示されている。利用者は、この文字301を見て、文書中の文字をこの文字301のような文字属性パターンに変更すべきか否かを判断することができる。
【0019】例えば文字301の「記」は、文字属性の詳細属性「太字」、「斜体」、「青」、「明朝体」、「全角」の組合せであることを示している。文字属性登録部107は、利用者から文字属性パターンの登録を受け付ける。ここで、文字属性パターンとは、文字属性(詳細属性)の組合せをいう。文字属性登録部107は、表示部106上の文書中の文字属性パターンを登録する文字をマウスのクリックによって指定されると、制御部110にその旨通知する。」

(2-d)図1(本発明に係る文字属性変更装置の第1実施例の構成図である。)として、





(2-e)図2(本実施例の文字属性記憶部に記憶されている文字属性の一例を示す図である。)として、





(2-f)図3(本実施例における文字属性パターンの表示部での表示例を示す図である。)として、





したがって、上記の事項を総合すると、刊行物2には、以下の事項が開示されていると認められる。(以下、「刊行物2記載事項」という。)

「文書を編集する文書編集装置において、
文書中の任意の文字列に対して、
文字修飾、文字色、文字サイズ、書体等の文字属性を変更するものであり、
明朝体、ゴシック体、毛筆体等の書体属性、
全角、半角、横倍角、ポイント数の文字サイズ属性、
太字、斜体、立体、回転、白抜き、影付き、下線、網掛け等の文字修飾属性等の文字属性を組み合わせて、変更すること。」


3.対比
本願発明と刊行物1発明とを比較する。
まず、刊行物1発明における「英文字の小文字(a,b,…,z)および大文字(A,B,…,Z)の文字種」、「ひらがな文字およびカタカナ文字の文字種」は、それぞれ、
本願発明における「第1の文字種」、「第2の文字種」に相当し、
刊行物1発明の「フォント管理装置及び文書作成装置を備え、複数種のフォント(文字書体)を扱える文書編集装置であって、・・・電子文書を作成して出力する、文書編集装置」における「出力する」は「印字する印字手段」を前提とするものであって、
「フォント(書体)」と「文字修飾」とは、ともに「文字属性」である点で共通するから、
刊行物1発明の「フォント管理装置及び文書作成装置を備え、複数種のフォント(文字書体)を扱える文書編集装置であって、前記フォント管理装置は、文字コードに対応する複数種のフォントデータを管理するものであり、・・・各文字種について、入力文字のフォントデータを取り込み、当該フォントデータを前記文書作成装置に送出し、電子文書を作成して出力する、文書編集装置。」と、
本願発明の「第1の文字種に指定可能な第1の文字修飾群及び第2の文字種に指定可能な第2の文字修飾群の中から指定される文字修飾に基づいて前記第1の文字種及び前記第2の文字種の文字を含むデータに文字修飾を施して印字する印字装置」とは、
「第1の文字種に指定可能な第1の文字属性群及び第2の文字種に指定可能な第2の文字属性群の中から指定される文字属性に基づいて前記第1の文字種及び前記第2の文字種の文字を含むデータに文字属性変更を施して印字する印字装置」で共通する。
また、刊行物1発明の「使用者の指定により編集中の文書において文字種とフォントデータのフォントファミリとを対応付ける仮想フォントファミリテーブル」と、
本願発明の「前記第1の文字修飾群に属する文字修飾と前記第2の文字修飾群に属する文字修飾とを対応付けした文字修飾情報」とは、
「第1の文字属性群に属する文字属性と第2の文字属性群に属する文字属性とを対応付けした文字属性情報」で共通するから、
刊行物1発明の「複数の文字種の文字コードに対応するフォントデータをフォントファミリとして格納する記憶手段」と、
本願発明の「前記第1の文字修飾群に属する文字修飾と前記第2の文字修飾群に属する文字修飾とを対応付けした文字修飾情報を予め複数種類記憶する記憶手段」とは、
「第1の文字属性群に属する文字属性と第2の文字属性群に属する文字属性とを対応付けした文字属性情報を予め複数種類記憶する記憶手段」で共通する。
同様に、刊行物1発明の「前記仮想フォントファミリテーブルの内容により編集中の文書におけるフォントデータの選択制御を行う制御手段」と、
本願発明の「前記判断手段の判断及び前記設定手段により設定された文字修飾情報に基づいて前記入力手段から入力される前記第1の文字種及び前記第2の文字種の文字を含むデータに文字修飾を施」す構成とは、
「判断手段の判断及び設定手段により設定された文字属性情報に基づいて入力手段から入力される第1の文字種及び第2の文字種の文字を含むデータに文字属性変更を施」す構成で共通する。
そして、文書編集装置において、文字を入力し、文字属性を変更する場合に、変更する範囲を指定するとともに、文字属性情報を選択し、指定された範囲で入力されたデータに対応して変更情報を設定することは、周知の構成であるから、刊行物1発明においても、「前記第1の文字種及び前記第2の文字種の文字を含むデータを入力する入力手段」、「記憶手段に記憶された前記複数種類の文字修飾情報の中から1つの文字修飾情報を選択する選択手段」、「前記入力手段から入力されるデータの文字修飾範囲を指定する指定手段」、「前記選択手段により選択された文字修飾情報を、前記指定手段により指定された範囲で前記入力手段から入力されたデータに対応して設定する設定手段」、「前記入力手段から入力されたデータの各文字の文字種を判断する判断手段」などを備えていることは、明らかである。

そうすると、両者は、
「第1の文字種に指定可能な第1の文字属性群及び第2の文字種に指定可能な第2の文字属性群の中から指定される文字属性に基づいて前記第1の文字種及び前記第2の文字種の文字を含むデータに文字属性変更を施して印字する印字装置であって、
前記第1の文字種及び前記第2の文字種の文字を含むデータを入力する入力手段と、
前記第1の文字属性群に属する文字属性と前記第2の文字属性群に属する文字属性とを対応付けした文字属性情報を予め複数種類記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記複数種類の文字属性情報の中から1つの文字属性情報を選択する選択手段と、
前記入力手段から入力されるデータの文字属性変更範囲を指定する指定手段と、
前記選択手段により選択された変更情報を、前記指定手段により指定された範囲で前記入力手段から入力されたデータに対応して設定する設定手段と、
前記入力手段から入力されたデータの各文字の文字種を判断する判断手段と、
前記判断手段の判断及び前記設定手段により設定された文字属性情報に基づいて前記入力手段から入力される前記第1の文字種及び前記第2の文字種の文字を含むデータに文字属性変更を施して印字する印字手段と、
を備える、印字装置。」
の点で一致し、下記の点で相違する。

相違点:「文字属性(文字属性変更)」に関して、
本願発明は、「文字修飾」であるのに対して、
刊行物1発明は、「文字書体(書体変更)」である点。

4.当審の判断
上記相違点について、検討する。
(相違点について)
刊行物2には、上記のとおり、
「文書を編集する文書編集装置において、
文書中の任意の文字列に対して、
文字修飾、文字色、文字サイズ、書体等の文字属性を変更するものであり、
明朝体、ゴシック体、毛筆体等の書体属性、
全角、半角、横倍角、ポイント数の文字サイズ属性、
太字、斜体、立体、回転、白抜き、影付き、下線、網掛け等の文字修飾属性等の文字属性を組み合わせて、変更すること。」が記載されているように、
文書編集装置において、明朝体、ゴシック体、毛筆体等の書体や、文字サイズとともに、太字、斜体、立体、回転、白抜き、影付き、下線、網掛け等の文字修飾を行うことは、従来周知の事項であり、かつ、刊行物2記載事項は、すなわち、「書体属性、文字サイズ属性、文字修飾属性等の文字属性をまとめて変更する」というものである。
また、刊行物1の記載において、「文字種に対応させて所望する文字書体,大きさなどのフォントファミリを指定して仮想フォント(仮想フォントデータ)を構成し、これを登録する。」(上記摘記事項(1-c)参照)とあるとおり、刊行物1発明の「文字種とフォントデータのフォントファミリとを対応付ける仮想フォントファミリテーブル」の「フォントファミリ」には、「書体(文字書体)」に加え、「文字サイズ」も含まれるものである。
そうすると、刊行物1発明において、「フォントファミリ」としての「文字書体」や「文字サイズ」に、「文字修飾」も加えて、「文字種と文字修飾とを対応付けること」、すなわち、「文字属性(文字属性変更)」としての「文字書体(書体変更)」に代えて「文字修飾」とすることは、当業者が容易に為し得たことである。

(本願発明が奏する効果について)
そして、相違点によって本願発明が奏する、「文字種に応じて複数の文字修飾を設定する場合に、その設定操作を簡単に行なうことが可能になる。」といった効果も刊行物1?2に記載された事項から予測し得るものであって、格別のものとはいえない。

(まとめ)
したがって、上記相違点に係る構成の変更は、当業者が容易に為し得たことである。


5.むすび
以上のとおり、本願発明は刊行物1?2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-27 
結審通知日 2009-12-22 
審決日 2010-01-12 
出願番号 特願平8-293880
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石原 徹弥  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 大森 伸一
柏崎 康司
発明の名称 印字装置  

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