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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1213443
審判番号 不服2007-22244  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-10 
確定日 2010-03-08 
事件の表示 特願2003-508878「光学的距離測定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月 9日国際公開、WO03/02939、平成16年 7月15日国内公表、特表2004-521355〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯
本願は、2002年4月27日の国際出願(パリ条約による優先権主張 2001年6月26日 ドイツ)であって、平成19年5月11日付け(送達:同年5月16日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月10日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで明細書又は図面についての手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

2. 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を、補正前の
「【請求項1】 変調された光学的ビーム(13,20,22)を目標対象物(15)に向かって送出するための送信ユニット(12)と、
該送信ユニット(12)の光軸に対して間隔おいて配置され、かつ目標対象物(15)から戻る光学的ビーム(16,49,50)を受信するための少なくとも1つの検知器(54)を備えた受信ユニット(14)と、
目標対象物(15)までの距離(48)を検出するための制御評価ユニット(36)とを有する光学的距離測定装置において、
受信ユニット(14)の検知器(54)のアクティブ光検知面(66,67,68,69)は、目標対象物距離(48)が次第に小さくなる場合に対して、戻りビーム(16)の平行軸により生じるビームシフト方向(61)で先細に延在している、
ことを特徴とする光学的距離測定装置。
【請求項2】 省略
【請求項3】 省略
【請求項4】 省略
【請求項5】 検知器(54)のアクティブ光検知面(66,67,68,69)は、比較的に大きな光学的検知器面(78)を部分的に覆うことにより形成される、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】 省略
【請求項7】 省略」
から、補正後の
「【請求項1】 変調された光学的ビーム(13,20,22)を目標対象物(15)に向かって送出するための送信ユニット(12)と、
該送信ユニット(12)の光軸に対して間隔おいて配置され、かつ目標対象物(15)から戻る光学的ビーム(16,49,50)を受信するための少なくとも1つの検知器(54)を備えた受信ユニット(14)と、
目標対象物(15)までの距離(48)を検出するための制御評価ユニット(36)とを有する光学的距離測定装置において、
前記受信ユニット(14)の検知器(54)のアクティブ光検知面(66,67,68,69)は、目標対象物距離(48)が次第に小さくなる場合に対して、戻りビーム(16)の平行軸により生じるビームシフト方向(61)で先細に延在しており、
前記検知器(54)のアクティブ光検知面(66,67,68,69)は、非透光性層(80)によって元々は比較的に大きな検知器の光学的検知面(78)を部分的に被覆することより形成される、
ことを特徴とする光学的距離測定装置。
【請求項2】 省略
【請求項3】 省略
【請求項4】 省略
【請求項5】 省略
【請求項6】 省略」
に補正するものである。(補正のない請求項についてはその記載を省略した。また、下線は補正箇所を明示するために請求人が付した。)

この補正は、補正前の請求項1を引用する同請求項5に記載した発明を特定するために必要な事項である「アクティブ光検知面(66,67,68,69)」について、「比較的に大きな検知器の光学的検知面(78)を部分的に覆うことにより形成される」とあるのを、さらに「非透光性層(80)によって元々は」との限定を付加して新たな請求項1とするものであって、特許法第17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか、すなわち、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか否かについて、以下に検討する。

(2)本願補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明について検討する。
本件補正後の請求項1には「前記受信ユニット(14)の検知器(54)のアクティブ光検知面(66,67,68,69)は、目標対象物距離(48)が次第に小さくなる場合に対して、・・・先細に延在しており」との記載があるところ、この記載が、目標対象物距離が次第に小さくなる場合に対して、一義的に「連続的に」先細に延在することを意味するとはいえないが、平成21年8月24日付け回答書によれば、本件補正後の請求項1に係る発明は目標対象物距離が小さくなるにつれ、連続的に先細に延在する構成であることは図6からも自明の事項である旨主張している。(下線は回答書において請求人が付した。)
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明を一応以下のとおりのものと認定し、その上で該発明の進歩性の有無について検討することとする。

「変調された光学的ビーム(13,20,22)を目標対象物(15)に向かって送出するための送信ユニット(12)と、
該送信ユニット(12)の光軸に対して間隔おいて配置され、かつ目標対象物(15)から戻る光学的ビーム(16,49,50)を受信するための少なくとも1つの検知器(54)を備えた受信ユニット(14)と、
目標対象物(15)までの距離(48)を検出するための制御評価ユニット(36)とを有する光学的距離測定装置において、
前記受信ユニット(14)の検知器(54)のアクティブ光検知面(66,67,68,69)は、目標対象物距離(48)が次第に小さくなる場合に対して、戻りビーム(16)の平行軸により生じるビームシフト方向(61)で連続的に先細に延在しており、
前記検知器(54)のアクティブ光検知面(66,67,68,69)は、非透光性層(80)によって元々は比較的に大きな検知器の光学的検知面(78)を部分的に被覆することより形成される、
ことを特徴とする光学的距離測定装置。」(下線は、変更箇所を明示するために当審が付した。以下、「本願補正発明」という。)

(3)引用例記載の事項・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である実願平3-58097号(実開平5-11082号)のCD-ROM(以下「引用例1」という。)には、次の事項(1-a)?(1-h)が図面とともに記載されている。

(1-a)「レーザ発振器1から出るレーザ光は、送信光学系2に入り、送信ビーム広がり角を調整後、外部の目標に向けて送信される。・・・」(段落【0011】)
(1-b)「・・・目標からの反射光は、受信光学系3で集光され、遮光板4を開口Hを通過後、受光素子5にはいる。」(段落【0011】)
(1-c)「【産業上の利用分野】
この考案は、レーザ測距装置において、受信視野を限定してレーザ光を受光するためのレーザ光送受信光学系に関するものである。」(段落【0001】)
(1-d)「送信光学系2と、受信光学系3を平行に配置することにより、受信視野中心と送信ビーム覆域の中心を一致させることができ、受信視野角を送信ビーム広がり角と同程度にすることにより、送信したレーザ光の目標による反射光以外の外光を除去することができる。」(段落【0005】)
(1-e)「【考案が解決しようとする課題】
従来の送受信光学系は以上のように構成されているので、目標が遠距離にあるときは受信視野と送信ビームの覆域を同心円上に重ねることができ、目標からの反射光以外の外光を除去し、目標からの反射光を効率よく受光できるが、目標までの距離が近くなると送信光学系と受信光学系のパララックスの効果により、送信ビームの覆域が受信視野の中心から送信光学系の配置されている方向と逆方向にずれていき、ついには受信視野から外れてしまう。したがって、近距離では、目標があっても目標からの反射光を受信することができないという問題があった。この様子を図6に示す。」(段落【0006】)
(1-f)「【課題を解決するための手段】
この考案に係るレーザ光送受信光学系では、受信光学系の焦点位置に、光軸を中心とする円形開口と、円形開口の送信光学系側と反対側の縁から、送信光学系側と反対方向に、スリット状の開口を設けた遮光板を配置するようにした。」(段落【0008】)
(1-g)「図1はこの考案のレーザ送受信光学系の構成及びを示す図、図2は遮光板の開口形状を示す図、図6は受信視野と送信ビームの覆域の関係を示す図である。図1において、1はレーザ発振器、2は送信光学系、3は受信光学系、4は開口を設けた遮光板、5は受光素子である。図2において、Hは遮光板の開口であり、光軸を中心とする円形開口h1と、この開口h1の送信光学系側と反対側の縁から送信光学系側と反対方向にスリット状の開口h2を有する。図3において、6は受信視野、7は送信ビームの覆域であり、7aは目標が遠方にあるときの覆域、7bは目標が中程度の距離にあるときの覆域、7cは目標が近距離にあるときの覆域を示す。」(段落【0010】)
(1-h)「図3に示すように、目標が遠方にあるときは、送信ビームの覆域7aは円形開口と同心円上に重なり、スリット部分の開口面積が円形部分の開口面積より狭いため、従来のレーザ光送受信光学系のピンホールと同様に目標からの反射光を通し周辺部の外光を遮光する効果がある。目標が中距離にある場合、送信ビームの覆域7bは円形開口の中心からずれるが、目標が遠距離にある場合と同様の動作となる。目標が近距離にある場合は、送信ビームの覆域7cは円形開口の外側に出て、スリット部分に重なり、目標からの反射光は、一部分スリットを通過する。目標が近距離にあるため、一部分の反射光が通過するだけでも、受光素子が作動するのに必要なエネルギーが得られる。」(段落【0012】)

・レーザ測距装置に用いられるレーザ光は、例えば振幅変調されたものであることは、当業者における周知の技術事項であるところ、上記記載(1-a)から、
(イ)「変調されたレーザ光を目標に向かって送出するためのレーザ発振器1及び送信光学系2」との技術事項が読み取れる。
・レーザ光送受信光学系を示す図である図1から、レーザ測距装置の受信光学系は、送信光学系の光軸に対して間隔をおいて配置されていると解される。
したがって、上記記載(1-b)から、
(ロ)「該レーザ発振器1及び送信光学系の光軸に対して間隔をおいて配置され、かつ目標からの反射光を受信するための受光素子5を備えた受信光学系3」との技術事項が読み取れる。
・レーザ測距装置は、レーザ光により目標までの距離を検出する装置であるところ、目標までの距離を検出するための演算ユニットを有することは明らかである。
したがって、上記記載(1-c)から、
(ハ)「目標までの距離を検出するための演算ユニットを有するレーザ測距装置」との技術事項が読み取れる。
・上記記載(1-c)?(1-f)及び、従来の受信視野と送信ビームの覆域の関係を示す図である図6から、送信光学系2と受信光学系3を平行に配置したレーザ測距装置には、目標までの距離が近くなると送信光学系と受光光学系のパララックスの効果により送信ビームの覆域が受信視野の中心から送信光学系の配置されている方向と逆方向にずれていき、近距離では目標からの反射光を受信することができないという問題点があり、この問題点を解決するため、光軸を中心とする円形開口h1と、この開口h1の送信光学系側と反対側の縁から送信光学系側と反対方向にスリット状の開口h2とを有する遮光板を採用する点が読み取れる。
そして、上記記載(1-g)?(1-h)、一実施例による開口を設けた遮光板を示す図である図2、及び一実施例による受信視野と送信ビームの覆域の関係を示す図である図3から、目標が遠方にあるときは、送信ビームの覆域7aは円形開口h1と同心円上に重なり、目標からの反射光をそのまま通過させて受光素子で検出するとともに、目標が近距離にある場合は、送信ビームの覆域7cは円形開口h1の外側に出て、円形部分の開口面積より狭いスリット部分h2に重なり、目標からの反射光の一部分がスリットを通過し、受光素子が作動する点が読み取れる。
したがって、受光素子5の目標からの反射光を受光する部分は、目標までの距離が遠距離から近距離へと小さくなる場合に対して、送信光学系側と反対方向に、円形からスリット状になるように先細に延在していると解される。
したがって、上記記載(1-c)?(1-h)、図2、図3及び図6から、
(ニ)「前記受信光学系3の受光素子5の目標からの反射光を受光する部分は、目標までの距離が遠距離から近距離へと小さくなる場合に対して、レーザ発振器1及び送信光学系側と反対方向に、円形からスリット状になるように先細に延在しており、
前記受信光学系3の受光素子5の目標からの反射光を受光する部分は、円形開口とスリット状の開口を有する遮光板により形成される」との技術事項が読み取れる。

以上、技術事項(イ)?(ニ)を総合勘案すると、引用例1には次の発明が記載されているものと認められる。
「変調されたレーザ光を目標に向かって送出するためのレーザ発振器1及び送信光学系2と、
該レーザ発振器1及び送信光学系の光軸に対して間隔をおいて配置され、かつ目標からの反射光を受信するための受光素子5を備えた受信光学系3と、
目標までの距離を検出するための演算ユニットを有するレーザ測距装置において、
前記受信光学系3の受光素子5の目標からの反射光を受光する部分は、目標までの距離が遠距離から近距離へと小さくなる場合に対して、レーザ発振器1及び送信光学系側と反対方向に、円形からスリット状になるように先細に延在しており、
前記受信光学系3の受光素子5の目標からの反射光を受光する部分は、円形開口とスリット状の開口を有する遮光板により形成されるレーザ測距装置。」(以下、「引用発明1」という。)

また、本願優先日前に頒布された刊行物である特開平8-255536号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項(2-a)?(2-e)が図面とともに記載されている。
(2-a)「【産業上の利用分野】 本発明は、物体に光を照射してその反射光を受光することにより、該物体の色、反射率、表面状態等を検出する反射型光電センサに関するものである。」(段落【0001】)
(2-b)「【発明が解決しようとする課題】・・・本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、被検出物体までの距離の変化に伴い受光素子での受光スポットの大きさと位置が変化することを利用して、被検出物体の距離の変動による受光量の変動を低減することができ、被検出物体の距離変動に影響を受けずに、安定して被検出物体の有無や表面状態を検出することが可能な反射型光電センサを提供することを目的とする。」(段落【0003】)
(2-c)「・・・図2は第1実施例による反射型光電センサの構成図である。・・・この受光素子5と受光レンズ6の間で、受光素子5の前面に開口絞り7を設けている。この開口絞り7は、近距離の被検出物体4からの反射光を遠距離の被検出物体4からの反射光よりも多く遮光するような構成としている。また、投光素子2による投光光軸と受光素子5による受光光軸とは所定の角度αで交叉しており、受光素子5は被検出物体4からの正反射光を受光し得る位置に配置されている。受光素子5の受光面は、開口絞り7よりも大きい形状を持っている。」(段落【0006】参照)
(2-d)「この実施例においては、図3に示される通り、被検出物体4の距離が近くになるに従って、受光スポット(円形)は大きくなり、位置も投光素子と反対側(図の上側が投光素子側)にずれていく。開口絞り7の形状は、被検出物体4の距離の2乗に反比例して遮光量が変化するような形状とされ、この例では、投光素子側から遠ざかる方向に幅が狭まる台形状とされている。このような開口絞り7を設けておくことで、近距離の被検出物体4からの反射光は多く遮光され、遠距離の被検出物体4からの反射光はほとんど遮光されない。」(段落【0008】)
(2-e)「図6は、第3実施例による反射型光電センサの受光素子の構成図である。この例では、開口絞り7を設ける代わりに、受光素子5のチップ5a自体の受光面5bの形状を工夫し、適切な位置に受光素子を配置している。すなわち、受光面5bに、開口絞りと同等な機能を持たすようにアルミニウムマスク5cを形成している。このような構成によっても、上記と同等の作用が得られる。」(段落【0011】)

以上、上記記載(2-a)?(2-e)、図2、図3及び図6を総合勘案すると、引用例2には次の発明が記載されているものと認められる。
「物体に光を照射してその反射光を受光することにより物体を検出する反射型光電センサにおいて、近距離の被検出物体4からの反射光を遠距離の被検出物体4からの反射光よりも多く遮光するように、被検出物体4の距離の2乗に反比例して遮光量が変化するような形状であって、投光素子側から遠ざかる方向に幅が狭まる台形状の開口絞り7と同等な機能を持つように、受光素子5のチップ5aにアルミニウムマスク5cを形成することで、元々は比較的大きな受光素子5のチップ5a自体の受光面5bの形状を工夫すること。」(以下、「引用発明2」という。)

(4)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1における「レーザ光」、「目標」、「レーザ発振器1及び送信光学系2」、「目標からの反射光」、「受光素子5」、「受信光学系3」「目標までの距離を検出するための演算ユニット」、「受光素子5の目標からの反射光を受光する部分」、「レーザ発振器1及び送信光学系側と反対方向」、「円形からスリット状になるように先細に延在」及び「レーザ測距装置」は、
本願補正発明における「光学的ビーム(13,20,22)」、「目標対象物(15)」、「送信ユニット(12)」、「目標対象物(15)から戻る光学的ビーム(16,49,50)」、「少なくとも1つの検知器(54)」、「受信ユニット(14)」、「目標対象物(15)までの距離(48)を検出するための制御評価ユニット(36)」、「検知器(54)のアクティブ光検知面(66,67,68,69)」、「戻りビーム(16)の平行軸により生じるビームシフト方向(61)」、「先細に延在」及び「光学的距離測定装置」にそれぞれ相当する。
また、引用発明1における「目標までの距離が遠距離から近距離へと小さくなる場合」と、本願補正発明の「目標対象物距離(48)が次第に小さくなる場合」とは、共に、「目標対象物距離(48)が小さくなる場合」である点で共通する。
してみると、両者は
(一致点)
「変調された光学的ビーム(13,20,22)を目標対象物(15)に向かって送出するための送信ユニット(12)と、
該送信ユニット(12)の光軸に対して間隔おいて配置され、かつ目標対象物(15)から戻る光学的ビーム(16,49,50)を受信するための少なくとも1つの検知器(54)を備えた受信ユニット(14)と、
目標対象物(15)までの距離(48)を検出するための制御評価ユニット(36)とを有する光学的距離測定装置において、
前記受信ユニット(14)の検知器(54)のアクティブ光検知面は、目標対象物距離(48)が小さくなる場合に対して、戻りビーム(16)の平行軸により生じるビームシフト方向(61)で先細に延在している光学的距離測定装置。」で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
・相違点1:「アクティブ光検知面」の形状に関して、
本願補正発明では、目標対象物距離が「次第に」小さくなる場合に対して、「連続的に」先細に延在するとしているのに対し、
引用発明1では、目標対象物距離が遠距離から近距離へと小さくなる場合に対して、先細に延在するとしているにとどまる点。
・相違点2:「アクティブ光検知面」の形成に関して、
本願補正発明では、「非透光性層(80)によって元々は比較的に大きな検知器の光学的検知面(78)を部分的に被覆することより」形成されるのに対し、
引用発明1では、円形開口とスリット状の開口を有する遮光板により形成される点。

(5)当審の判断
上記相違点について検討する。
A.相違点1について
引用例1の上記記載(1-h)及び図3によれば、目標が近距離の場合、目標からの反射光は円形開口の外側に出てスリット部分に重なり、一部分スリットを通過するが、目標が近距離にあるため、一部分の反射光が通過するだけでも、受光素子が作動するのに必要なエネルギーが得られることが記載されている。
そこで、上記「一部分の反射光が通過するだけでも、受光素子が作動するのに必要なエネルギーが得られる」との記載について、その技術的意義について検討すると、近距離にある目標からの反射光は、遠距離にある目標からの反射光と比較して、その強度が大きくなることは技術常識であるから、上記記載が、目標までの距離が小さくなるにつれて、より小さな面積で上記目標からの反射光を受光するだけで受光素子が作動するのに必要なエネルギーが得られることを意味することは、当業者ならば明らかである。
そして、上記目標からの反射光の強度は目標までの距離が小さくなるに従って連続的に大きくなることも技術常識であるから、引用発明1において、より小さな面積で目標からの反射光を受光するようにするため、反射光が通過するスリットを連続的に先細にすることにより、相違点1のように、目標からの距離が小さくなるに従って目標からの反射光を受光する部分(本願補正発明の「アクティブ光検知面」に相当。)を連続的に先細になるように形成することは、当業者ならば容易に想到し得たことである。
したがって、引用発明1において、相違点1のように、目標対象物距離が「次第に」小さくなる場合に対して、「連続的に」先細に延在するように形成することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

また、相違点1のように、目標対象物距離が「次第に」小さくなる場合に対して先細に延在するように形成することや、「連続的に」先細に延在するように形成することは、当業者における周知技術である(例えば、本願優先日前に頒布された刊行物である引用例2の、受光素子5の受光面5bの形状を、被検出物体の距離の2乗に反比例して遮光量が変化するように、投光素子側から遠ざかる方向に幅が狭まる台形状に形成する旨の記載(段落【0008】、【0011】及び図6を特に参照)や、原審で引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開2000-227477号公報の、レーザ測距装置において、受信視野形状が、遠距離照射パターン・中距離照射パターン・近距離照射パターンとなるように、検出器113の受光面形状を成形する旨の記載(段落【0023】及び図2を特に参照)に留意のこと。)。
したがって、目標対象物距離が「次第に」小さくなる場合に対して、「連続的に」先細に延在するように形成することは、引用発明1に上記周知技術を適用することで、当業者であれば容易に想到し得たことともいえる。

B.相違点2について
「物体に光を照射してその反射光を受光することにより物体を検出する反射型光電センサにおいて、近距離の被検出物体4からの反射光を遠距離の被検出物体4からの反射光よりも多く遮光するように、被検出物体4の距離の2乗に反比例して遮光量が変化するような形状であって、投光素子側から遠ざかる方向に幅が狭まる台形状の開口絞り7と同等な機能を持つように、受光素子5のチップ5aにアルミニウムマスク5cを形成することで、元々は比較的大きな受光素子5のチップ5a自体の受光面5bの形状を工夫すること」が、本願優先日前に引用発明2として公知であることは、先に説示したとおりである。
そして、引用発明1も引用発明2も、共に、物体に光を照射してその反射光を受光する物体検知装置である点で共通しており、また、物体の距離変動による影響を受けずに物体を検出できるようにするという共通の技術課題を有している。
したがって、引用発明1において、アクティブ光検知面を形成する際、引用発明2を採用し、相違点2の如く構成することは、当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明1、2及び上記周知技術から当業者が予測可能なものであって格別なものではない。
したがって、本願補正発明は、引用発明1、2及び上記技術常識又は上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3. 本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、願書に最初に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1の記載は次のとおりである。
「変調された光学的ビーム(13,20,22)を目標対象物(15)に向かって送出するための送信ユニット(12)と、
該送信ユニット(12)の光軸に対して間隔おいて配置され、かつ目標対象物(15)から戻る光学的ビーム(16,49,50)を受信するための少なくとも1つの検知器(54)を備えた受信ユニット(14)と、
目標対象物(15)までの距離(48)を検出するための制御評価ユニット(36)とを有する光学的距離測定装置において、
受信ユニット(14)の検知器(54)のアクティブ光検知面(66,67,68,69)は、目標対象物距離(48)が次第に小さくなる場合に対して、戻りビーム(16)の平行軸により生じるビームシフト方向(61)で先細に延在している、
ことを特徴とする光学的距離測定装置。」
そして、上記請求項1に係る発明については、前記「2.(2)本願補正発明」において説示したのと同様、一応以下のとおりのものと認定し、その上で該発明の進歩性の有無について検討することとする。

「変調された光学的ビーム(13,20,22)を目標対象物(15)に向かって送出するための送信ユニット(12)と、
該送信ユニット(12)の光軸に対して間隔おいて配置され、かつ目標対象物(15)から戻る光学的ビーム(16,49,50)を受信するための少なくとも1つの検知器(54)を備えた受信ユニット(14)と、
目標対象物(15)までの距離(48)を検出するための制御評価ユニット(36)とを有する光学的距離測定装置において、
受信ユニット(14)の検知器(54)のアクティブ光検知面(66,67,68,69)は、目標対象物距離(48)が次第に小さくなる場合に対して、戻りビーム(16)の平行軸により生じるビームシフト方向(61)で連続的に先細に延在している、
ことを特徴とする光学的距離測定装置。」(下線は、変更箇所を明示するために当審が付した。以下、「本願発明」という。)

(1)引用例記載の事項・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、引用例に記載された事項及び引用発明は、前記「2.(3)引用例記載の事項・引用発明」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明と引用発明1とを対比する。
本願発明は、本件補正発明から「前記検知器(54)のアクティブ光検知面(66,67,68,69)は、非透光性層(80)によって元々は比較的に大きな検知器の光学的検知面(78)を部分的に被覆することより形成される」との発明特定事項を省いたものであるから、両者は、前記「2.(4)対比」に記載した相違点1で相違し、その他の点で一致する。
そうすると、本願発明も、前記「2.(5)当審の判断」の「A.相違点1について」に説示したと同様に、引用発明1及び上記技術常識又は上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び上記技術常識又は上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-05 
結審通知日 2009-10-09 
審決日 2009-10-23 
出願番号 特願2003-508878(P2003-508878)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01C)
P 1 8・ 121- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大和田 有軌  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 下中 義之
松下 公一
発明の名称 光学的距離測定装置  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 杉本 博司  
代理人 二宮 浩康  

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