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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 B41M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41M
管理番号 1213517
審判番号 不服2008-9337  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-14 
確定日 2010-03-08 
事件の表示 平成10年特許願第531299号「インキジェット記録用シート」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 7月16日国際公開、WO98/30392、平成13年 7月 3日国内公表、特表2001-508713〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年1年6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理平成9年1月7日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成18年7月26日付けの拒絶理由の通知に対し、平成19年2月8日付けで手続補正がなされたが、同年12月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年4月14日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月14日付けで手続補正がなされたものである。
さらに、当審による審尋に対し、平成21年5月11日付けで回答書が提出されている。

2.平成20年5月14日付けの手続補正の却下について
平成20年5月14日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)において、「平成19年2月8日付け手続補正書により加えた記載(すなわち、いわゆる除くクレームとした記載)を削除して、上記手続補正書の提出前の請求項1の記載に戻す」補正を行っている。
この本件補正について、請求人は、「既に行った審査を有効に活用できる範囲内のもの」であるから、当該補正は、特許法第17条の2第4項の立法趣旨から、補正却下されるべきものではない」と主張する。
しかしながら、法律の背景あるいは立法趣旨はともかく、法律の規定そのものは明白であり、本件補正は、特許法第17条の2第4項に掲げる事項のいずれをも目的としないのは明らかである。
したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
上記2.のとおり、平成20年5月14日付けの手続補正は却下されたので、本願発明は、平成19年2月8日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲1?22に記載されたものと認められ、そのうち、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は下記の通りである。

「インキ受容層を担持している支持体を含んでいるインキジェット記録用シートであって、インキ受容層が、非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)と、非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)の中に存在するヒドロキシル基の少なくとも幾つかがエーテル又はエステル基によって置換された誘導体化ポリ(ビニルアルコール)とを含んでおり、非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)‐対‐誘導体化ポリ(ビニルアルコール)の重量比が2:1から1:2までの範囲にあり、下記式(I)

(ただし、式中、nは5?10000、X^(-)は塩化物イオン、臭化物イオン、沃化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、酢酸イオン、安息香酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオンを表し、Y、ZはそれぞれH又はC_(1)?C_(2)のアルキル基を表す。)
を有するポリアリル-ジアリルアミン誘導体を含まないことを特徴とする、前記インキジェット記録用シート。」

4.引用刊行物
(1)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用文献13として引用された特開昭64-40371号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審にて付与した。)

1a.「2.特許請求の範囲
支持体又は該支持体上の塗工層に、次式:

(ただし、式中、nは5?10000、X^(-)は塩化物イオン、臭化物イオン、沃化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、酢酸イオン、安息香酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオンを表し、Y、ZはそれぞれH又はC_(1)?C_(2)のアルキル基を表す。)
を有するポリアリル-ジアリルアミン誘導体を含有せしめたことを特徴とするインクジェット記録シート。」

1b.「(発明の目的)
従って、本発明は上記の問題点を解消し、耐水性と耐光性とのバランスに優れ、かつ茶変がなく、記録画像の色調が鮮明で、低解像度のマルチカラーから高解像度のマルチカラー記録に適したインクジェット記録シートを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題点を解決するため、塗工用組成物に使用する染料定着剤について種々検討した結果、染料定着剤として、特開昭61-58788号、同61-61877号公報等に記載されるようなポリアリルアミン誘導体に使用されているアリルアミンモノマーと、特開昭61-74880号公報等に記載されているようなポリジアリルアミンに使用されているジアリルアミンモノマーとをコモノマーとして使用した共重合体を使用することにより、上記の問題点が解決されることを見出し、本発明に到ったものである。即ち、上記のポリアリルアミン又はポリジアリルアミンのようなポリマーを染料定着剤として使用すると、耐水性と耐光性とのバランスが劣り、特にマゼンタに対する耐光性が劣り、更に、ブラックインクの茶変がやはり生じるなどの欠点があるにも係わらず、モノマーとしてアリルアミンとジアリルアミンとを使用した共重合体を使用した場合には、これらの欠点が解消し、上記両ポリマーを併用した場合以上の相乗効果が得られたのである。本発明はこのような知見に基づいて成されたものである。」(第2頁左上欄第2行?右上欄第10行)

1c.「(実施例)
以下、本発明を実施例により更に詳述するが、本発明の範囲はこれらの例により限定されるものではない。尚、実施例、比較例で示す部及び%は重量部及び重量%を意味する。更に、実施例等における測定は、以下のように行った。
1.耐光性:
・・・(中略)・・・
2.耐水性:
供試記録シートについてIBM 3852インクジェツトプリンターでBk 、Y、M、Cの各インクで印字した画像部について、20℃の流水中に 5分間浸漬し、浸漬前後の濃度をマクベスデンシトメーター RD-918 で 測定し、浸漬後濃度を浸漬前濃度で除した値を百分率換算し、残存率と して示した。
3.茶 変:
・・・(中略)・・・
4.塗膜の湿潤摩擦抵抗:
供試記録シートについて20℃の流水中に5分間浸漬後、その表面を 指でなぞり、塗膜の脱離を観察する。塗膜が容易にとれる場合を×、と れないものを○とする。
実施例1
・・・(中略)・・・
比較例1
・・・(中略)・・・
実施例2
市販の上質紙(米坪量64g/m^(2)、ステキヒトサイズ度15秒)に顔料として合成ケイ酸アルミニウムをペイントシェーカー分散機でコールタ-カウンターTA-II型粘度分布測定機による平均粒子径が7μmになるように分散し、次に固形分35%のスラリーを100部、凝結助剤として炭酸マグネシウムの固形分20%スラリーを3.5部、ポリビニルアルコール(ポバール117:(株)クラレ製)の10%水溶液70部、アセトアセチル化ポリビニルアルコール(重合度1100、アセトアセチル基含量6モル%)(ゴーセファイマーZ-200:日本合成化学(株)製)の10%水溶液10部、ポリアリル-ジアリルアミン誘導体(平均分子量30,000、一般式(I)中X=Cl、Y=Z=H)(PAD-10:昭和電工(株)製)15部からなる液(固型分18重量%)に、更に水を加えて20%とした塗工液をマイヤーバーで固形分12g/m^(2)となるように塗工した。次いで乾燥し、記録シートを得た。該シートをIBM 3852-2インクジェットプリンターを用いてブラック(Bk)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色をベタ印字した後、印字面について評価し、下記第1表の結果を得た。

実施例3
実施例2の上質紙に顔料として合成シリカ(ファインシルX-60:徳山曹達(株)製)を50部、ポリビニルアルコール(ポバール117:(株)クラレ製)の10%水溶液を250部、アセトアセチル化ポリビニルアルコール(重合度1100、アセトアセチル基含量6モル%)(ゴーセファイマーZ-200:日本合成化学(株)製)の10%水溶液30部、ポリアリル-ジアリルアミン誘導体(平均分子量30,000、一般式(I)中のX=Cl、Y=Z=H)(PAD-10:昭和電工(株)製)15部からなる液(固型分18重量%)に更に水を加えて12%とした塗工液をメイヤーバーで固形分10g/m^(2)となるよう塗工した。次いで実施例2と同様の方法で記録シートを得た。その結果を第1表に示す。
比較例2
実施例2のポリアリル-ジアリルアミン誘導体に代えてジシアンジアミドホルマリン縮合物(粘度10cps/10℃、pH4(1%水溶液)、比重1.145)(ネオフィックスFY:日華化学(株)製)の相当量を使った以外は実施例2と同様の方法によって記録シートを得た。この記録シートの評価結果を下記第1表に示す。
比較例3
実施例3のポリアリル-ジアリルアミン誘導体の代わりにポリアリルアミン塩酸塩(PAA-HCl-3L:日東紡績(株)製)を相当量使った以外は実施例3と同様にして記録シートを得た。この記録シートの評価結果を下記第1表に示す。
比較例4
比較例3のポリアリルアミン塩酸塩を2倍量加えた以外は実施例3と同様にして記録シートを得た。この記録シートの評価結果を下記第1表に示す。
比較例5
実施例3のポリアリル-ジアリルアミン誘導体をポリジアリルアミン塩(平均分子量120,000)(PAS-H-10L:日東紡績(株)製)とし、相当量を使った以外は実施例3と同様の方法によって記録シートを得た。この記録シートの評価結果を下記第1表に示す。

(発明の効果)
本発明によれば、ポリアリル-ジアリルアミン誘導体の使用により記録シートの耐水性と耐光性とが高度にバランスされ、マゼンタに対する耐光性も改善され、また茶変も生じず、インクジェット記録シートとして好適なものが得られる。」(第3頁右下欄第14行?第6頁左上欄第6行)

上記の事項から、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。(以下、「刊行物1発明」という。)
なお、上記摘記事項1a.の式(I)構造式(およびそのただし書き)は以後省略し、「式(I)を有するポリアリル-ジアリルアミン誘導体」のように記載する。本願発明1における同等の記載も同様にする。
また、上記摘記事項1c.の実施例2,3の記載より、ポリビニルアルコール(ポバール117:(株)クラレ製)、アセトアセチル化ポリビニルアルコール(重合度1100、アセトアセチル基含量6モル%)(ゴーセファイマーZ-200:日本合成化学(株)製)とを含有し、その含有量は、重量比で、70:10あるいは250:30であることがわかる。

「支持体上の塗工層に、式(I)を有するポリアリル-ジアリルアミン誘導体を含有せしめたインクジェット記録シートにおいて、該塗工層に含まれる、ポリビニルアルコール(ポバール117:(株)クラレ製)とアセトアセチル化ポリビニルアルコール(重合度1100、アセトアセチル基含量6モル%)(ゴーセファイマーZ-200:日本合成化学(株)製)との重量比が70:10あるいは250:30である、インクジェット記録シート。」

5.対比・判断
本願発明1と刊行物1発明とを比較すると、次のとおりである。
刊行物1発明の「塗工層」、「ポリビニルアルコール(ポバール117:(株)クラレ製)」、「アセトアセチル化ポリビニルアルコール(重合度1100、アセトアセチル基含量6モル%)(ゴーセファイマーZ-200:日本合成化学(株)製)」は、それぞれ、本願発明1の、「インキ受容層」、「非誘導体化ポリビニルアルコール」、「非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)の中に存在するヒドロキシル基の少なくとも幾つかがエーテル又はエステル基によって置換された誘導体化ポリビニルアルコール」に相当する。

よって、本願発明1と刊行物1発明とは、
「インキ受容層を担持している支持体を含んでいるインキジェット記録用シートであって、インキ受容層が、非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)と、非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)の中に存在するヒドロキシル基の少なくとも幾つかがエーテル又はエステル基によって置換された誘導体化ポリ(ビニルアルコール)とを含んでいる、インキジェット記録用シート。」
である点で一致し、次の相違点1、2にて相違する。

[相違点1]
「式(I)を有するポリアリル-ジアリルアミン誘導体」について、
本願発明1が当該物質を含まないとの特定をしているのに対し、
刊行物1発明では、当該物質を含むことを必須としている点。

[相違点2]
「非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)‐対‐誘導体化ポリ(ビニルアルコール)」の重量比について、
本願発明1は、2:1?1:2までの範囲に限定しているのに対し、
刊行物1発明では、70:10あるいは250:30であり、明らかに、非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)の比率が多い点。

(相違点1について)
まず、相違点1について検討する。
刊行物1発明において、「式(I)を有するポリアリル-ジアリルアミン誘導体」は、上記摘記事項にもあるように、「染料定着剤」として包含されているものである。「染料定着剤」は、本願明細書では、「媒染剤」と呼称されている。
そして、インクジェット記録シートにおいて、「染料定着剤」を用いることは一般技術水準であり、種々のものが知られている。
例えば、刊行物1において、上記摘記事項1c.の比較例2ないし5は、「式(I)を有するポリアリル-ジアリルアミン誘導体」を有さないが、それを有する実施例2、3に比べて、比較例2、4及び5は、耐水性、湿潤摩擦抵抗において、遜色のない結果となっている。
刊行物1発明において、他の「染料定着剤」に置換し、「式(I)を有するポリアリル-ジアリルアミン誘導体」を含まないものとすることは当業者が適宜なしうることである。
本願発明1においては、刊行物1発明との差別化を図るため、「式(I)を有するポリアリル-ジアリルアミン誘導体」を含まないとする限定が付加されただけであって、その限定によって格別顕著な作用効果を奏するものではない。

(相違点2について)
次に相違点2について検討する。
インクジェット記録シートに用いられる高分子化合物は、その他の添加成分との相溶性、インクの受容性、定着性等を勘案して適宜調整されるものであり、刊行物1発明において、ポリビニルアルコールと、アセトアセチル化ポリビニルアルコールを含有比を調整して、重量比を、2:1?1:2までの範囲とすることは、当業者の通常行う設計の範囲内と認められる。

本願明細書(平成18年4月17日付け手続補正書により補正された明細書;同補正書第6頁第13?21行)においても、その数値範囲については、「最適混合(それは当業者が日常的実験によって決定できる」と記載している。そして、「重量比は約2:1から約1:2までの範囲にあることが好ましい;場合によっては2つの重合体をほぼ等しい重量で使用することが最良の結果を与える。」との記載があるように、「2:1?1:2までの範囲」とすることに関する、格別な技術的意義は示されていない。
また、本願明細書の実施例1,9で、それぞれ、ポリビニルアルコールとアセトアセチル化ポリビニルアルコールを重量比で33.0:32.8、20.0:39.0、すなわち、だいたい、1:1、1:2の重量比で使用するものが記載されており、実施例2、3として、1:0、0:1の重量比のものが記載されているものの、併用してないものと比較したのみであり、「2:1?1:2までの範囲」の臨界的意義は特に示されていない。

そして、「式(I)を有するポリアリル-ジアリルアミン誘導体」を含まない場合においても、「最適混合」比を決定することも当業者の通常行う設計の範囲内であって、本願発明1の構成とすることは適宜なしうることである。

(請求人の主張について)
(1)平成20年5月14日付けの手続補正に関して
請求の理由にて、「平成19年2月8日付け手続補正書により加えた記載(すなわち、いわゆる除くクレームとした記載)を削除して、上記手続補正書の提出前の請求項1の記載に戻すものであって、既に行った審査を有効に活用できる範囲内のものです。よって、当該補正は、特許法第17条の2第4項の立法趣旨から、補正却下されるべきものではない」と述べている。
この点についての判断は、上に述べた通りである。
しかしながら、仮に立法趣旨を踏まえて補正を受け容れたとしても、補正された請求項1に係る発明は、本願発明1より広範な請求の範囲となっており、刊行物1発明と比較して、相違点1がなくなり、相違点2となるのみである。
よって、上記と同じ主旨で、刊行物1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと判断される。
(2)「重量比を2:1から1:2の範囲にすること」による効果について
請求人は、回答書にあるように、その範囲にすることにより優れた効果が得られること、引用文献2(上記刊行物1)には、「ポリビニルアルコールとアセトアセチル化ポリビニルアルコールの重量比を2:1から1:2の範囲とすることを導き出す動機づけもなく、よって、引用文献2に記載の発明に基づいて、当業者が本願発明1を容易に想到できたことの論理づけができないので、本願発明1は特許法第29条第2項の規定により拒絶されるべきものではない」、「重量比で2:1から1:2の範囲で併用して使用することによって、非誘導体化または誘導体化のどちらか一方のポリビニルアルコールを単独で使用することに比べて、速やかにインクがシートに吸収することから、インクのこすれ汚れを防止することができるという、優れた効果を得ることができます(出願当初明細書の第6頁第21?29行、実施例1?6)。」と主張する。
しかしながら、その主張通り、非誘導体化または誘導体化のどちらか一方のポリビニルアルコールを単独で使用することに比べて、速やかにインクがシートに吸収することから、インクのこすれ汚れを防止することができるという効果が、実施例1?3により、示されているとは認められるが、2つの重合体の併用については刊行物1に開示されていることであり、2:1から1:2の範囲とすることの関する臨界的作用効果は示されていないから、上記(相違点2について)にて検討した通りである。
さらに、本願実施例1、9は、非誘導体化ポリビニルアルコールとして、それぞれ、エアボル205、350、誘導体化ポリビニルアルコールとして、ともに、ゴーセファイマーZ200である、特定のケン化度、重合度、誘導体化はアセトアセチル基置換である特定のポリビニルアルコール系重合体の組合せにおいて、「最適混合」された値であって、組成物のその他の成分も限定され、「ポリビニルピロリドン」や「高分子媒染剤」等を相当量包含する系でのものにすぎない。
ポリビニルアルコール系重合体のケン化度、重合度、置換基の種類、そして、他の成分特に高分子成分により、「最適混合」が影響されることは当業者であれば十分認識していることである。
実施例1?9からは、非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)‐対‐誘導体化ポリ(ビニルアルコール)の重量比が2:1から1:2までの範囲にあることの作用効果を示しているとはいえない。
さらに、請求人の主張する、引用文献2(上記刊行物1)には、「茶変、耐光性、耐水性、湿潤摩擦抵抗を向上することについて記載されているものの、記録シートのインク吸収性を向上し、シートに印刷したカラー画像のインクのこすれ汚れを防止するという、本願発明1の課題を解決するための方策について、何らの示唆」もないという点については、記録シートのインク吸収性を向上し、シートに印刷したカラー画像のインクのこすれ汚れを防止する点については、インクジェット記録シートであれば、当然考慮されるべき課題といえるから、進歩性の判断に特段の影響を与えることではない。

よって、請求人の主張を勘案しても、刊行物1に基づいて容易に発明することができたものでないとすることはできない。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、本願優先日前に頒布された刊行物である刊行物1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

《予備的な検討》
なお、上記の通りであるが、さらに、下記の検討も付記する。
「誘導体化ポリ(ビニルアルコール)」は、ある程度は意味は把握できるが、引用文献との差違を論じるに当たり、十分明確ではないともいえる。
まず、本願明細書には、実質的に「アセトアセチル化ポリビニルアルコール」のみが記載されているので、そのようなものと認識して、刊行物1を引用例としたが、本願請求項1に係る発明の記載では、例えば、特開平8-39925号公報段落【0057】に実施例3として、インク受容層に、ポリビニルアルコールとして、クラレ社製ポバールPVA217(ケン化度88モル%、重合度1700)と日本合成社製ゴーセファイマーK-210(ケン化度87%、カチオン付加変性ポリビニルアルコール)を1:1に混合した具体例が記載されている。ここに記載された発明は、本願発明1との構成上の差違を有さないといえる。
また、前審で引用文献1として引用された、特開昭62-288076号公報に記載された発明において、第3頁右下欄第12行?第18行の記載にあるように、「アクリル酸とメタクリル酸メチルの共重合部分が主体となるコア部分と、その囲りにPVA部分を主体とするシェル部分とからなる粒子として存在し、コア部分に対し保護コロイドとして作用しているものと考えられる」ものであり、通常コアシェル型粒子を作成するときのように、ポリビニルアルコールの存在下で、メタクリル酸メチルとアクリル酸とを重合したものということができる。請求人が主張するような「ポリビニルアルコールはメタクリル酸メチルおよびアクリル酸と重合反応」(回答書[3])するのが主たる反応ではなく、「生成物中にポリビニルアルコールが単独で存在」しないものと、いうことはできない。複合粒子として存在し、主として単離して存在してはいないものではあるが、シェル部において、ポリビニルアルコール重合体として存在しているといえる。一方、本願発明1の、ポリビニルアルコールの存在下に、4-ビニルピリジンを重合させる態様においても、ある程度、4-ビニルピリジンと、ポリビニルアルコールが複合化しているものと考えられる。このようなことから、引用文献1のポリビニルアルコールとの存在の仕方の差違が曖昧であり、回答書等で主張する差違の根拠が十分でない。
 
審理終結日 2009-10-09 
結審通知日 2009-10-13 
審決日 2009-10-26 
出願番号 特願平10-531299
審決分類 P 1 8・ 57- Z (B41M)
P 1 8・ 121- Z (B41M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神尾 寧清水 靖記野田 定文  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 伊藤 裕美
伏見 隆夫
発明の名称 インキジェット記録用シート  
代理人 奥山 尚一  
代理人 河村 英文  
代理人 有原 幸一  
代理人 松島 鉄男  
代理人 吉田 尚美  
代理人 森本 聡二  
代理人 中村 綾子  
代理人 岡本 正之  
代理人 深川 英里  
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