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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1213654
審判番号 不服2007-909  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-11 
確定日 2010-03-18 
事件の表示 平成 9年特許願第262666号「印刷システム及び印刷方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月23日出願公開、特開平11- 78178〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年9月10日の出願であって、平成18年1月23日付けで通知した拒絶理由に対し、同年4月3日付けで手続補正がなされたが、同年10月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年1月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月13日付けで手続補正書が提出され、その後、当審から送付した、審査官により作成された前置報告書の内容についての平成21年3月17日付けの審尋に対して、同年5月26日付けで回答書が提出されたものである。
その後、平成21年10月9日付けで、平成19年2月13日付けの手続補正が却下されるとともに、同日付けで当審からの拒絶理由が通知され、これに対して、平成21年12月11日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1?16に係る発明は、平成21年12月11日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】 印刷データを供給する上位装置と複数のプリンタとがネットワークを介して相互に接続されている印刷システムにおいて、
前記上位装置は、
前記複数のプリンタの各プリンタ名を印刷要求または印刷不要求を示す情報と対応付けて表示する表示部と、
前記印刷要求及び印刷不要求を示す情報を入力可能な操作部と、
前記印刷データに含まれる改ページコード及び改行コードのカウント値のいずれかに基づいて各印刷すべき媒体に前記印刷データを対応させる区切り情報を生成する区切り検出部と、
前記各プリンタ毎に高解像度と低解像度に対する印刷可否を示す印刷特性情報が格納されている印刷特性記憶部と、
前記操作部で前記印刷要求を設定した複数のプリンタで、前記印刷特性情報に基づいて、前記媒体に対応する印刷データの印刷すべき解像度と一致する印刷可能な前記高解像度を有するプリンタ及び前記解像度と一致する印刷可能な前記低解像度を有するプリンタを判定し、該判定した各プリンタに対し前記区切り情報を参照して前記各印刷データを割当てる印刷データ割当て部と、
前記割り当てた前記各印刷データを該当するプリンタに分配する印刷データ配付部とを備えたことを特徴とする印刷システム。」

3.引用刊行物
3-1.引用刊行物1
当審からの拒絶の理由において引用された、本願の出願日前に頒布された特開平5-73232号公報(原査定の拒絶理由における引用文献1、以下、「引用刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与)。

(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ネットワークに接続されたデータ処理装置がネットワークに接続されているプリンタに印刷データを送出し印刷を行う印刷制御方法において、ネットワークに接続されているプリンタのうち印刷に使用するプリンタの台数を決め、印刷データをページ単位に前記プリンタ台数分に分割し、分割した印刷データを各プリンタに送出して各プリンタにて並列に印刷を行わせることを特徴とするマルチ印刷制御方法。」

(1b)「【0002】
【従来の技術】ネットワークに接続されたデータ処理装置が印刷用データをサーバ配下の共有プリンタで印刷する場合、サーバのハードディスクに印刷データを送出し、サーバの制御のもとで共有プリンタを使用し印刷している。」

(1c)「【0008】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を参照して説明する。図1は、マルチ印刷制御を示すフローチャートである。本発明によるマルチ印刷制御方法を採用したコンピュータシステムにおいて、マルチ印刷要求が出された場合、ステップ1で通信ソフトがインストールされているか否かを判定する。インストールされていなければマルチ印刷制御を終了するが、インストールされていればステップ2の使用可能プリンタチェック処理を実行する。これは使用可能なプリンタの台数を調べテーブルに格納する処理である。次にステップ3で使用可能プリンタの台数をチェックし、1台も無い場合はマルチ印刷制御を終了する。次にステップ4でページ数計算処理を実行する。これは印刷対象の文書データのページ数を算出する処理である。次にステップ5でページ単位文書量計算処理を実行する。これは各ページ毎の文書量を算出し、文書情報格納テーブルに格納する処理である。次にステップ6で使用プリンタ選択処理を実行する。この処理はユーザより指定されたリモートプリンタとの間に仮想回線をはる処理であり、ユーザとのインタフェースになっている。次にステップ7でグループ分け処理を実行する。これはページ順にグループ分けを行うか、または各グループの文書量が均等になるようにグループ分けを行うかをユーザに選択させ、それに対応するグループ分け処理を実行する処理である。次にステップ8で文書データ転送処理を行う。これは各グループの文書データをそのグループに対応したプリンタへ転送する処理である。」

(1d)「【0012】図5は、使用プリンタ選択処理を示すフローチャートである。まず、ステップ61でプリンタ情報テーブルの内容を表示し、使用可能なプリンタをユーザに知らせる。次にステップ62でステップ61により表示されたプリンタの中から、使用するプリンタをユーザに選択させる。次にステップ63でステップ62により選択されたプリンタ(サーバ)との間に仮想回線を生成し、使用プリンタ選択処理を終了する。
【0013】図6は、グループ分け処理を示すフローチャートである。まず、ステップ71でページ順にグループ分けを行うか、各グループの文書量が均等になるようにグループ分けを行うのかをユーザに選択させる。次にステップ72でユーザの選択結果を判定する。ユーザの選択がページ順にグループ分けを行うものであった場合ステップ73へ分岐し、各グループの文書量が均等になるようにグループ分けを行うものであった場合ステップ74へ分岐する。ユーザの選択がどちらでもなかった場合ステップ71へ分岐し、再度選択を促す。次にステップ73のページ順グループ分け処理、またはステップ74の文書量均等グループ分け処理を実行することによってグループ分けを行い、グループ分け処理を終了する。
【0014】図7は、ページ順グループ分け処理を示すフローチャートである。まず、ステップ731でページ数を使用プリンタ数で割ったものを1グループ当たりのページ数として、先頭ページからグループ番号を文書情報格納テーブルにセットしグループ分けを行う。次にステップ732でワークエリア2を初期化(最大値をセット)する。次にステップ733で各グループに含まれるページの文書量を合計し、グループ毎の文書量を算出する。次にステップ734でグループ毎の文書量の最大値と最小値の差を、ワークエリア2と比較する。次にステップ735でステップ734による比較結果を判定する。その結果、ワークエリア2の方が大きい場合ステップ736へ分岐し、ワークエリア2の方が小さい場合グループ間の文書量の差が最小になるためステップ738へ分岐する。次にステップ736で現在のグループ毎の文書量の最大値と最小値の差をワークエリア2にセットする。次にステップ737でグループ間の境界をすべて1ページ後ろにずらすことによりグループ編成を変更し、ステップ733へ分岐する。最後にステップ738でグループ間の境界を1ページ前に戻して、ページ順グループ分け処理を終了する。」

(1e)「【0016】図9は、文書データ転送処理を示すフローチャートである。まず、ステップ81でグループ番号を示すワークエリア3の内容を初期化(0をセット)する。次にステップ82でワークエリア3の内容をインクリメントし、ステップ83でワークエリア3の内容がグループがグループ番号の最大値を越えたか否かを判定する。ここでワークエリア3の内容がグループ番号の最大値を越えた場合、ステップ81へ分岐しワークエリア3の内容を再び初期化する。次にステップ84でワークエリア3が示すグループ番号に属する印刷待ち文書データの中から、ページNoの最小のものを該当プリンタへ転送する。次にステップ85で全文書印刷終了か否かを判定し、終了でなければステップ82へ分岐して次のグループのデータ転送処理を行い、終了であれば文書データ転送処理を終了する。」

これらの記載を総合すると、引用刊行物1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ネットワークに接続されたデータ処理装置が、ネットワークを介して複数のプリンタと接続されているコンピュータシステムにおいて、
前記データ処理装置は、
プリンタ情報テーブルの内容を表示し、使用可能なプリンタをユーザーに知らせ、表示されたプリンタの中から使用するプリンタをユーザーに選択させ、
印刷対象の文書データのページ数を算出し、
使用する複数のプリンタに、文書データのページ数に基づいて各文書データを割り当て、
前記割り当てた前記各文書データを該当するプリンタに転送する処理を行うコンピュータシステム。」

3-2.引用刊行物2
同じく当審からの拒絶の理由において引用された、本願の出願日前に頒布された特開平7-64744号公報(原査定の拒絶理由における引用文献3、以下、「引用刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与)。

(2a)「【0016】先ず、通信部101では、プリント処理を依頼するアプリケーションのあるコンピュータ201からのプリントデータを受け取る。次に、構造解析部102で、そのプリントデータの文書のページの構造を解析する。その結果、文書のページ数やカラーのページ、ビットマップの多いページ等の情報がわかるデータ分割処理部103で、プリントの依頼時に指定した台数またはデフォルトで登録してある台数のプリンタに並列出力できるように、プリントデータを複数の部分に分割する。このとき、実際に接続されているプリンタの動作状況により、他のプリントジョブを実行しているプリンタへの割り当てを避けたり、カラーページは、カラープリンタで、白黒ページは白黒プリンタへ割り振る等のスケジューリングを、プリンタ情報テーブル104を参照しながら行う。このようにして、複数のプリンタ用に分割されたプリントデータは、再び通信部101を通して、それぞれのプリンタへ送られて、プリントがなされる。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「データ処理装置」、「印刷対象」、「文書データ」、「コンピュータシステム」が、それぞれ、本願発明の「上位装置」、「媒体」、「印刷データ」、「印刷システム」に相当する。
また、引用発明の「文書データを該当するプリンタに転送する」ことは、本願発明の「印刷データを該当するプリンタに分配する」ことに相当する。
さらに、引用発明において、「プリンタ情報テーブルの内容を表示し、使用可能なプリンタをユーザーに知らせ」、その後、「表示されたプリンタの中から使用するプリンタをユーザーに選択させ」ていることから、引用刊行物1に直接明記はされていないものの、引用発明においても、何らかの表示部によって、プリンタが表示され、表示されているプリンタの中から使用するプリンタをユーザーに選択させていることが明らかであり、プリンタが表示される際には、印刷要求または印刷不要求を示す情報とを対応付けて表示し、かつ、ユーザーによって、印刷要求及び印刷不要求を示す情報を入力可能であるものと認められる。
また、引用発明において、「ページ数を算出し」、「各文書データを割り当て」ることは、いずれもコンピュータシステムにおいて行っているが、該コンピュータシステムが、本願発明の「印刷データ割当て部」、「印刷データ配布部」と同様の機能を有していることも明らかである。

してみると、両者は、
「印刷データを供給する上位装置と複数のプリンタとがネットワークを介して相互に接続されている印刷システムにおいて、
前記上位装置は、
前記複数のプリンタの各プリンタ名を印刷要求または印刷不要求を示す情報と対応付けて表示する表示部と、
前記印刷要求及び印刷不要求を示す情報を入力可能な操作部と、
前記操作部で前記印刷要求を設定した複数のプリンタに前記各印刷データを割り当てる印刷データ割当て部と、
前記割り当てた前記各印刷データを該当するプリンタに分配する印刷データ配付部とを備えたことを特徴とする印刷システム。」
である点で一致し、

以下の点で相違している。

・相違点1
本願発明では、媒体に対応させた印刷データの区切り情報を判断する区切り検出部を有し、各印刷データを割り当てる際には、前記区切り情報を参照して割り当てを行っているのに対し、引用発明では、印刷対象の文書データのページ数を算出して、前記ページ数に基づいて、文書データの割り当てを行っている点。

・相違点2
本願発明では、各プリンタ毎に高解像度と低解像度に対する印刷可否を示す印刷特性情報が格納されている印刷特性記憶部を有し、操作部で印刷要求を設定した複数のプリンタで、前記印刷特性情報に基づいて、媒体に対応する印刷データの印刷すべき解像度と一致する印刷可能な前記高解像度を有するプリンタ及び前記解像度と一致する印刷可能な前記低解像度を有するプリンタを判定し、該判定したプリンタに対して区切り情報を参照して各印刷データを割り当てているのに対し、引用発明では各プリンタに解像度による区別がなく、印刷データを割り当てる際にも、解像度を考慮していない点。

5.判断
上記相違点について検討する。

・相違点1について
引用発明1における、印刷対象の文書データのページ数の算出の具体的手段については明記されていないが、その手段としては、文書データに、全体のページ数を表す情報を付加する、文書データにそのデータが印刷されるページ番号を表す情報を付加する、ページの区切りにページが切り替わることを示すデータを挿入して、その区切りの情報の数によって、全体のページ数を算出するといった、文書の内容を表すデータに、なんらかのページを算出するためのデータを付加する必要があることは明らかである。それらの想定される付加データの中で、印刷データのページごとの区切りを表す情報を用いて、かかる情報を検出することによって、ページの区切りを検出し、かかる検出された区切り情報を参照して、印刷データの割り当てを行うことは、当業者が適宜容易に選択し得ることである。

・相違点2について
引用刊行物2には、ネットワークを介して相互に接続されたコンピュータと複数のプリンタを有し、プリントデータのページごとに、カラーページはカラープリンタへ、白黒ページは白黒プリンタへ割り振って出力する印刷システムが記載されている。すなわち、引用刊行物2には、プリントデータに含まれている印刷内容を表すデータ以外の属性データに応じて、かかる属性データに適合するプリンタを選択して、プリントデータの割り振りを行うことが示されているといえる。
ここで、プリンタを制御する制御装置に入力されるプリントデータに含まれる印刷内容を表すデータ以外の属性データとして解像度を表すデータを含むこと、また、プリンタがその特性として解像度を有すること、さらに、プリントデータに含まれる解像度を表すデータと、プリンタが有する解像度との対応を取り、プリントデータに含まれる解像度に適合したプリンタを選択して、プリントデータの割り振りを行うことは、以下の周知文献1及び2にみられるように、いずれも周知の技術事項である。
例えば、周知文献1の特許請求の範囲、段落【0017】?【0032】を参照すると、複数のプリンタはそれぞれ基本的特性を示す情報として、性能を示す解像度情報を有し、かかる解像度情報が、入力されるデータの解像度と等しいか大きいかによって、プリンタへのデータの割り振りを行うことが記載されているといえる。
また、周知文献2の段落【0027】,【0042】?【0044】にも、入力されるデータの解像度と出力装置のプリンタの解像度が一致又はより高い解像度のプリンタとなるように、データの割り振りを行うことが記載されているといえる。
これらの事項を踏まえると、引用発明、引用刊行物2に記載の事項、及び上記周知技術は、いずれも入力された印刷データを複数のプリンタに割り振るという点で共通しているから、引用発明において印刷データを割り振るにあたり、引用刊行物2に記載のように印刷内容を表すデータ以外の属性データに応じて、かかる属性データに適合するプリンタを選択して、プリントデータの割り振りを行い、その際に上記周知技術を参酌して、印刷内容を表すデータ以外の属性データとして、解像度を考慮し、各プリンタ毎に高解像度と低解像度に対する印刷可否を示す印刷特性情報を格納させ、印刷データの印刷すべき解像度と一致するようなプリンタに、印刷データを割り振るようにすることは、当業者が適宜容易になし得ることである。
なお、補足すると、周知文献1及び2には、印刷データの解像度と一致するプリンタのみならず、さらに高解像度のプリンタを選択することも記載されているが、周知文献2の段落【0027】には、『本実施例では、「カラー/モノクロ」、「エンジン」、「用紙サイズ」、「解像度」の順位、両属性の合致点についての優先度が設定されることになる。』との記載もあり、解像度が合致することが示唆されていることから、プリンタへの印刷データに割り振りにあたって、印刷データの解像度よりも高い解像度を有するプリンタをその選択肢に入れるか、解像度が完全に一致するプリンタのみを選択するようにするかは、当業者が適宜決定しうることにすぎない。

周知文献
1.特開平9-190314号公報
2.特開平6-223025号公報

また、本願発明が奏する効果の点についても、引用発明、引用刊行物2に記載の事項、及び周知技術から、当業者が予測しうる程度のものにすぎない。

したがって、本願発明は、引用発明、引用刊行物2に記載の事項、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用刊行物1に記載された発明、引用刊行物2に記載の事項、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-15 
結審通知日 2010-01-19 
審決日 2010-02-01 
出願番号 特願平9-262666
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 康司名取 乾治清水 督史  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 伏見 隆夫
一宮 誠
発明の名称 印刷システム及び印刷方法  
代理人 佐藤 幸男  

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