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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H
管理番号 1213710
審判番号 不服2008-13433  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-27 
確定日 2010-03-18 
事件の表示 特願2003- 86971「用紙搬送装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月21日出願公開、特開2004-292107〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年3月27日の出願であって、平成20年5月2日付けでなされた拒絶査定に対し、これを不服として、平成20年5月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同日に明細書を対象とする手続補正書が提出されたものである。

第2 平成20年5月27日になされた手続補正についての補正却下の決定
【補正却下の決定の結論】
平成20年5月27日になされた明細書を対象とする手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
【理由】
1.本件補正
本件補正は、平成20年2月15日に補正された明細書を更に補正するものであり、補正前の請求項1に、
「駆動ローラに用紙の上から加圧ローラをばね力により圧接し、前記駆動ローラの回転によって前記用紙を所定方向に搬送する用紙搬送装置において、ばねの一方が連結する支点部材を揺動自在に支承し、該支点部材にカムを当接し、該カムの回転により前記支点部材を変位させて該支点部材のばね支点が変位するように成し、前記ばねの他方を先端に加圧ローラを有するローラホルダに連結し、該ローラホルダをその加圧ローラが駆動ローラに圧接する方向にばね力により付勢し、前記ローラホルダに前記カムを当接し、前記カムに、前記ばねの支点と前記ローラホルダとの間のばねの長さを前記駆動ローラと加圧ローラ間の印字媒体の厚さに関係なく常に一定とする前記支点部材に作用するカム面を設け、前記加圧ローラの前記駆動ローラに対するばねによる付勢力を印字媒体の厚さに関係なく一定とするとともに、前記カムに、前記ばねの支点と前記ローラホルダとの間のばねの長さを通常の値より更に変化させる前記支点部材に作用する特別のカム面を設けたことを特徴とする用紙搬送装置。」
とあるのを、
「駆動ローラに用紙の上から加圧ローラをばね力により圧接し、前記駆動ローラの回転によって前記用紙を所定方向に搬送する用紙搬送装置において、ばねの一方が連結する支点部材を揺動自在に支承し、該支点部材にカムを当接し、該カムの回転により前記支点部材を変位させて該支点部材のばね支点が変位するように成し、前記ばねの他方を先端に加圧ローラを有するローラホルダに連結し、該ローラホルダをその加圧ローラが駆動ローラに圧接する方向にばね力により付勢し、前記ローラホルダに前記カムを当接し、前記カムに、前記ばねの支点と前記ローラホルダとの間のばねの長さを前記駆動ローラと加圧ローラ間の印字媒体の厚さに関係なく常に一定とする前記支点部材に作用する複数のカム面を設け、該複数のカム面によって、前記加圧ローラの前記駆動ローラに対するばねによる付勢力を印字媒体の厚さに関係なく一定とすることができるようにするとともに、印字媒体の厚さに対応して前記ばねの長さを一定とする前記複数のカム面の他に、前記ばねの支点と前記ローラホルダとの間のばねの長さを通常の値より更に変化させる前記支点部材に作用する特別のカム面を設けたことを特徴とする用紙搬送装置。」
とする補正を含むものである。
この補正は、補正前に「前記支点部材に作用するカム面を設け、前記加圧ローラの前記駆動ローラに対するばねによる付勢力を印字媒体の厚さに関係なく一定とするとともに、前記カムに」とあるのを、「前記支点部材に作用する複数のカム面を設け、該複数のカム面によって、前記加圧ローラの前記駆動ローラに対するばねによる付勢力を印字媒体の厚さに関係なく一定とすることができるようにするとともに、印字媒体の厚さに対応して前記ばねの長さを一定とする前記複数のカム面の他に」と、カム面が「複数」あること、及び、当該カム面が、「印字媒体の厚さに対応して前記ばねの長さを一定とする」ものであることを限定するものである。また、この補正が、産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでもないことは明らかである。
よって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかについて、次に検討する。

2.本願補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、本件補正後の明細書及び図面の記載からみて、明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記、「1.本件補正」を参照。)により特定されたとおりのものと認める。

3.引用発明
原査定の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、実願昭62-22669号(実開昭63-130294号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。以下、同様。)、特開平8-87078号公報(引用文献2)には、それぞれ、以下の事項が図面とともに記載されている。

<引用文献1>
(a)「本考案は、駆動ローラとピンチローラで用紙を挟持して一方向に移動させ、筆記具を用紙の送り方向と直角な方向に移動させて作図を行なう自動製図機に関するものである。
・・・
このような自動製図機における用紙1の送り機構は、第5図のような構成になつている。」(第2ページ第3行ないし第12行)

(b)「14はレバーで、一端がプレート6に立設されたピン15に回動可能に支持されている。このレバー14の他端部はカム軸11に接している。ばね13は、レバー14とアーム8の間に掛渡されている。
このような構成で、第2図に二点鎖線で示すように、カム軸11でアーム8の一端を押下げ、ピンチローラ10を駆動ローラ12から離間させ、その間に用紙1を挿入したのち、カム軸11を回動させる。すると、アーム8が回動して、駆動ローラ12とピンチローラ10の間で用紙1を挟持する。
このとき、ピンチローラ10の押付力は、ばね13の抗張力の大きさに比例にする。そして、ばね13の抗張力は、ばね13の伸長量に比例するから、用紙1が薄手の軟い紙の場合、第2図に示すように、レバー14の一端を下げ、ばね13の伸張量を小さくする。また、用紙1が厚手の硬い紙の場合には、第1図に示すように、レバー14の一端を上げ、ばね13の伸張量を大きくする。
このようにして、用紙1の紙質に合せて、ばね13の伸長量を変えることにより、ピンチローラ10の押付力を調整し、適正な力で用紙を押え移送することができる。」(第6ページ第2行ないし第7ページ第5行)

ここで、上記(b)及び図面の第1、2図の記載から、引用文献1には、カム軸11の回転によりレバー14を変位させてレバー14のばね支点が変位させること、また、カム軸11のカム面が楕円形であることが記載されていると認められる。
また、図面の第1、2図に、アーム8の先端にピンチローラ10を設けることが記載されている。
そして、上記(b)に、カム軸11でアーム8の一端を押下げることが記載されているから、引用文献1のものも、アーム8にカム軸11を当接させるものである。
さらに、カム軸11のカム面は楕円形のものであり、ばね13の長さを様々に変更し得るものである。
してみれば、上記の記載及び図面の記載を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(引用発明)
「駆動ローラ12に用紙1の上からピンチローラ10をばね力により圧接し、前記駆動ローラ12の回転によって前記用紙1を所定方向に搬送する用紙1の送り機構において、ばね13の一方が連結するレバー14を揺動自在に支承し、該レバー14にカム軸11を当接し、該カム軸11の回転により前記レバー14を変位させて該レバー14のばね支点が変位するように成し、前記ばね13の他方を先端にピンチローラ10を有するアーム8に連結し、該アーム8をそのピンチローラ10が駆動ローラ12に圧接する方向にばね力により付勢し、前記アーム8に前記カム軸11を当接し、前記カム軸11に、前記ばね13の支点と前記アーム8との間のばね13の長さを前記駆動ローラ12とピンチローラ10間の印字媒体の厚さに応じて変更する前記レバー14に作用する楕円形のカム面を設け、該楕円形のカム面によって、前記ピンチローラ10の前記駆動ローラ12に対するばね13による付勢力を印字媒体の厚さに応じて適正とすることができるようにするとともに、印字媒体の厚さに対応して前記ばね13の長さを変更する前記楕円形のカム面により、前記ばね13の支点と前記アーム8との間のばね13の長さを様々な値に変化させることを特徴とする用紙1の送り機構。」

<引用文献2>
(a)「【0041】図6及び図7に示される如く、従動ローラ142、144、146、148(図6では従動ローラ142のみを図示)は、その回転軸142Aが略コ字型のブラケット208により吊り下げられている。ブラケット208の水平部208Aの上面には、圧縮コイルばね210の一端が当接されており、他端は固定されたベース31の天井面に当接されている。これにより、ブラケット208を介して従動ローラ142、144、146、148は、下方、すなわち駆動ローラ132、134、136、138方向に付勢される。
【0042】ブラケット208の水平部208Aには、カム板212が対応されている。カム板212は、水平部208Aとの対向面である一端部に斜面部212Aが形成され、他端部が軸214を介してスライド部材216に形成された一対の舌片216Aに支えられている。このカム板216は図示しないガイドにガイドされ、水平部208Aの接離方向に移動可能となっている。
【0043】スライド部材216は、図示しないガイドにガイドされ、長手方向にスライド可能とされている。このスライド部材216の長手方向一方、かつ幅方向一端部には歯部216Bが形成され、コントローラ182に接続されたモータ218に取付けられたピニオンギヤ220と噛み合っている。ここで、モータ218の駆動力でピニオンギヤ220が回転すると、スライド部材216が長手方向に移動され、これにより、カム板212の斜面部212Aを介してブラケット208を上下動させることができる。
【0044】このブラケット208の上下動によって、従動ローラ142、144、146、148と駆動ローラ132、134、136、138との圧縮コイルばね210によるニップ力が調整できることになる。このため、後述するネガフィルムNの肉厚寸法に応じてカム板212の水平部208Aへの挿入量を調整することにより、ネガフィルムNに常に一定のニップ圧を付与することが可能となる。」

(b)「【0060】次に、モータ218及び206の駆動による動作を説明する。まず、モータ218が駆動すると、ピニオンギヤ220が回転して、スライド部材216がスライドする。このスライドによってカム板212がブラケット208の水平部208Aの下部へ入り込む量が変化し、ブラケット208を上下動させることができる。例えば、通常適用されるネガフィルムNよりも肉厚寸法の厚いネガフィルムNを搬送する場合には、ブラケット208を上方へ移動させる(図7(B)参照)。これにより、圧縮コイルばね210の付勢力が弱まることになるが、肉厚寸法の厚い分ネガフィルムNに加わるニップ圧は通常適用されるネガフィルムNへ加わるニップ圧とほぼ同一となる。一方、通常適用されるネガフィルムNよりも肉厚寸法の薄いネガフィルムNを搬送する場合には、ブラケット208を下方へ移動させる(図7(A)参照)。これにより、圧縮コイルばね210の付勢力が強まることになるが、肉厚寸法の薄い分ネガフィルムNに加わるニップ圧は通常適用されるネガフィルムNへ加わるニップ圧とほぼ同一となる。
【0061】従って、肉厚寸法に拘らずニップ圧をほぼ一定とすることができ、駆動ローラ132、134、136、138と従動ローラ142、144、146、148とによる挟持により、確実にネガフィルムNに搬送力を付与することができる。また、通常適用されるネガフィルムNに対して肉厚寸法の厚いネガフィルムNが通過する際に、ニップ圧過度によるネガフィルム通過部30Aとの摺動抵抗を増加させることがない。」

4.対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ピンチローラ」、「用紙の送り機構」、「レバー」、「カム軸」、「アーム」が、それぞれ本願補正発明の「加圧ローラ」、「用紙搬送装置」、「支点部材」、「カム」、「ローラホルダ」に相当する。
すると、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
【一致点】
「駆動ローラに用紙の上から加圧ローラをばね力により圧接し、前記駆動ローラの回転によって前記用紙を所定方向に搬送する用紙搬送装置において、ばねの一方が連結する支点部材を揺動自在に支承し、該支点部材にカムを当接し、該カムの回転により前記支点部材を変位させて該支点部材のばね支点が変位するように成し、前記ばねの他方を先端に加圧ローラを有するローラホルダに連結し、該ローラホルダをその加圧ローラが駆動ローラに圧接する方向にばね力により付勢し、前記ローラホルダに前記カムを当接させることを特徴とする用紙搬送装置。」
【相違点1】
本願補正発明では、カムが、「複数のカム面」を設けられたものであり、また、当該複数のカム面が、「ばねの支点とローラホルダとの間のばねの長さを駆動ローラと加圧ローラ間の印字媒体の厚さに関係なく一定とする」ように支点部材に作用し、「加圧ローラの駆動ローラに対するばねによる付勢力を印字媒体の厚さに関係なく一定」とするものであるのに対し、引用発明では、カム軸が、「楕円形のカム面」を設けられたものであり、また、当該楕円形のカム面が、「ばね13の支点とアーム8との間のばね13の長さを駆動ローラ12とピンチローラ10間の印字媒体の厚さに応じて変更する」ようにレバー14に作用し、「ピンチローラ10の駆動ローラ12に対するばね13による付勢力を印字媒体の厚さに応じて適正」とするものである点。
【相違点2】
本願補正発明では、複数のカム面の他の特別のカム面により、ばねの支点とローラホルダとの間のばねの長さを「通常の値より更に変化」させるのに対し、引用発明では、楕円形のカム面により、ばね13の支点とアーム8との間のばね13の長さを「様々に変化」させる点。

5.判断
そこで、上記相違点1及び2について検討する。
(1)相違点1について
まず、本願補正発明のカムが「複数のカム面」を有するのに対し、引用発明のカム軸11が「楕円形のカム面」である点について検討するに、引用発明のカム軸11のカム面を、様々な用紙に対応し得るようにする目的で無段階のものとするか、特定の用紙に対応し得るようにする目的で多段階のものとするかは、当業者の適宜なし得る選択的事項である。また、カム軸11のカム面を、特定の用紙に対応し得るようにする目的で多段階のものとする際に、カム軸11のカム面を、複数のカム面とすることに何ら技術的困難性はないとともに、用紙搬送装置の技術分野において、ピンチローラの押付力を調整するために、複数のカム面を有するカムを用いることは周知技術である(例えば、特開平6-247582号公報(第2のカム52)、特開平9-40209号公報(偏心カム6)を参照。)。してみれば、引用発明のカム軸11のカム面を複数のカム面とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
また、本願補正発明が、カムが、「(支点部材の)前記ばねの支点と前記ローラホルダとの間のばねの長さを前記駆動ローラと加圧ローラ間の印字媒体の厚さに関係なく常に一定とする」ように支点部材に作用し、「加圧ローラの駆動ローラに対するばねによる付勢力を印字媒体の厚さに関係なく一定」とするものであるのに対し、引用発明は、カム軸11が、「ばね13の支点とアーム8との間のばね13の長さを駆動ローラ12とピンチローラ10間の印字媒体の厚さに応じて変更する」ようにレバー14に作用し、「ピンチローラ10の駆動ローラ12に対するばね13による付勢力を印字媒体の厚さに応じて適正」とするものである点について検討するに、引用文献2には、従動ローラ142と駆動ローラ132とのニップ圧をネガフィルムNの厚さによらず一定とする技術が記載されている。そして、このようなニップ圧を搬送媒体の厚さによらず一定とするような調整が、種々の搬送装置においても同様に採用し得るものであることは明らかであるから、引用発明のカム軸11を、上述のように複数のカム面を有する構成とした際にも、当該カム面による押圧力の調整手段として、上記引用文献2に記載された調整手段を適用し、「ピンチローラ10の駆動ローラ12に対するばね13による付勢力を印字媒体の厚さに関係なく一定」とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。また、引用発明において付勢力を一定とするためには、「ばね13の支点とアーム8との間のばね13の長さを駆動ローラ12とピンチローラ10間の印字媒体の厚さに関係なく常に一定」とすべきことは、当業者にとって自明であり、当業者であれば容易になし得たことである。
したがって、引用発明に、上記周知技術を考慮するとともに引用文献2に記載された技術を適用し、上記相違点1で挙げた本願補正発明の構成とすることが当業者であれば容易になし得たことである。

(2)相違点2について
用紙搬送装置の技術分野において、通常の紙厚や紙質の用紙のみならず、当該通常の用紙以外の様々な紙厚や紙質の用紙が搬送されることは技術常識であり、このような様々な用紙に対応させて、ピンチローラの押付力を、通常の用紙を搬送する際の押付力と異なる大きな押付力や小さな押付力とすることは、当業者であれば適宜なし得ることである。そして、引用発明のものは、楕円形のカム面の回転位置を選択し、ばね13の支点とアーム8との間のばね13の長さを様々に変化させることにより、紙厚や紙質に応じて、ピンチローラの押付力を調整し得るものであるから、引用発明の楕円形のカム面によっても、通常の押付力と異なる大きな押付力や小さな押付力を生じさせ得ることは明らかである。してみれば、上記技術常識を参酌し、引用発明の楕円形のカム面に、通常の押付力と異なる押付力を生じさせ得る、つまり、ばね13の支点とアーム8との間のばね13の長さを通常の値より更に変化さ得るような特別のカム面を設けることは、当業者であれば容易になし得たことである。

また、本願補正発明の効果も当業者が予想し得る程度のものにすぎない。

6.補正却下の決定のむすび
したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年2月15日にした手続補正により補正された明細書の記載からみて、その請求項1により特定される、以下のとおりのものである。
「駆動ローラに用紙の上から加圧ローラをばね力により圧接し、前記駆動ローラの回転によって前記用紙を所定方向に搬送する用紙搬送装置において、ばねの一方が連結する支点部材を揺動自在に支承し、該支点部材にカムを当接し、該カムの回転により前記支点部材を変位させて該支点部材のばね支点が変位するように成し、前記ばねの他方を先端に加圧ローラを有するローラホルダに連結し、該ローラホルダをその加圧ローラが駆動ローラに圧接する方向にばね力により付勢し、前記ローラホルダに前記カムを当接し、前記カムに、前記ばねの支点と前記ローラホルダとの間のばねの長さを前記駆動ローラと加圧ローラ間の印字媒体の厚さに関係なく常に一定とする前記支点部材に作用するカム面を設け、前記加圧ローラの前記駆動ローラに対するばねによる付勢力を印字媒体の厚さに関係なく一定とするとともに、前記カムに、前記ばねの支点と前記ローラホルダとの間のばねの長さを通常の値より更に変化させる前記支点部材に作用する特別のカム面を設けたことを特徴とする用紙搬送装置。」

第4 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1、2に記載された事項及び引用文献1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)は、上記第2、【理由】、「第3 引用文献」に記載したとおりのものである。

第5 対比・判断
本願発明は、上記第2、【理由】、「1.本件補正」に記載したように、本願補正発明から一部の特定事項を省いたものであり、その他の構成については、本願補正発明と差違がない。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに、他の構成要素を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2、【理由】、「4.対比」、及び、「5.判断」で検討したように、引用発明及び引用文献2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び引用文献2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-20 
結審通知日 2010-01-21 
審決日 2010-02-03 
出願番号 特願2003-86971(P2003-86971)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B65H)
P 1 8・ 121- Z (B65H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 島田 信一木村 立人渡邊 豊英  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 佐野 健治
村上 聡
発明の名称 用紙搬送装置  
代理人 西島 綾雄  

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