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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23G
管理番号 1213752
審判番号 不服2006-21753  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-28 
確定日 2010-03-19 
事件の表示 平成11年特許願第332520号「振動成型離型用組合せ菓子及びそれを用いた成形菓子の製法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月 5日出願公開、特開2001-149015〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年11月24日の出願であって、平成18年4月13日付けの拒絶理由通知に対して、同年6月26日に意見書及び手続補正書が提出され、その後、同年8月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月30日付けで手続補正がなされ、平成20年6月30日付けで審尋がなされ、同年9月8日に回答書が提出された。そして、平成21年4月10日付けで当審により平成18年10月30日付けの手続補正は却下されるとともに、拒絶理由通知がなされ、平成21年6月22日に意見書と手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願に係る発明は、平成21年6月22日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?5に記載されるとおりのものであって、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりである。
「下記(B)のカップ片の少なくとも一つに、下記(A)と水性媒体とを重量比3:7?6:4の混合割合で収容した後、該カップ片と残りのカップ片とを結合一体化し、しかる後、振動して得られる成形菓子用の組合せ菓子であって、下記の(A)と(B)とが組合されていることを特徴とする振動成型用組合せ菓子。
(A)α化穀類粉末含有粉末
(B)複数に分割されたカップ片からなる成型食品容器であって、該カップ片の開口周縁部にカップ片同士を結合一体化するための結合構造を有する成型食品容器」

第3 当審の拒絶理由
当審の拒絶理由1の概要は、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物1?3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


刊行物1:特開昭64-10946号公報
(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2)
刊行物2:実公平5-29037号公報
刊行物3:特開平6-237696号公報
(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4)

第4 引用刊行物の記載事項及び記載された発明
(1)刊行物1に記載された事項
「特開昭64-10946号公報」(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1-a)「(1)下記の粉末チユーインガム成分(A)と液体成分(B)とを備えたことを特徴とする組合せチユーインガム。
(A)ガムベースと無水結晶麦芽糖と保湿成分とガム質成分とを含有したチユーインガムを含水化工程を経由させて粉末化してなる粉末チユーインガム成分。
(B)粉末チユーインガム成分(A)と接触しその接触部に水分を供給して上記接触部を固め塊状チユーインガム化させるための液体成分。
・・・
(6)ガムベースと無水結晶麦芽糖と保湿成分とガム質成分とを含有するチユーインガムを準備する工程と、上記チユーインガムを所定形状に成形する成形工程と、上記成形チユーインガム中の無水結晶麦芽糖を含水結晶麦芽糖に変化させるチユーインガム含水化工程と、上記含水化チユーインガムを粉末化する粉末化工程と、所定の組成の液体を調製したのち所定の容器に密封充填する液体成分製造工程とを備えることを特徴とする組合せチユーインガムの製法。」(特許請求の範囲)、
(1-b)「本発明は、粉末チユーインガムに加水して何らかの外力を加えることにより、容易に塊状チユーインガムをつくることのできる組合せチユーインガムおよびその製法に関するものである。」(2頁左上欄16?19行)、
(1-c)「そこで、例えば、喫食者自身が、粉末チユーインガムに対して加水して振る等の簡単な操作を加えることにより、上記粉末チユーインガムを容易に塊状にすることができるようにすれば、喫食者に工作的な楽しさを与えることができ、かつ得られた塊状チユーインガムの味も同時に楽しめるようになる。」(2頁右上欄10?16行)、
(1-d)「本発明の組合せチユーインガムは、上記のように、粉末チユーインガム成分(A)と液体成分(B)とを組み合わせたものであり、例えばつぎのようにしてチユーインガムの塊をつくつて楽しんだのち喫食することができる。すなわち、第1図に示すように、まず粉末チユーインガム成分1を任意の容器3に振り入れたのち、スポイト状容器等に密封した液体成分2を開封して、粉末チユーインガム成分lの表面上に適当な間隔をあけて滴下する。この状態を、上から見下ろした第2図に示す。4は滴下によつて液体成分2と粉末チユーインガム成分lとが接触した接触部分である。ついで上記容器3に、第3図に示すように蓋3aをし、図示のように手で持ち上げて数回振る。そして上記蓋3aをとると、第4図に示すように、液体成分2が粉末チユーインガム成分lに接触した部分4のみが固まり塊状チユーインガム化し複数個の略球状のチユーインガムとなつて、塊状チユーインガム化していない粉末チユーインガム成分lに混じつて存在している。そこで、喫食者は上記略球状のチユーインガムを取り出して、通常のチユーインガムのように口中でそのチューイング性を楽しみながら喫食することができる。
なお、上記チユーインガム化の方法としては、上記のように蓋3aをして振らなくても、棒状のもので軽く掻き混ぜるようにしてもよいし、容器として、本体、蓋が一体化したときに球状となるようなものを用い、キヤツチボールの要領で遊びながらチユーインガム化させてもよい。また、ヨーヨーを模した容器に入れて振り混ぜるようにしてもよい。」(4頁左上欄末行?左下欄末行)、
(1-e)「また、粉末チユーインガム成分(A)に対する加水を、上記のように部分的に行うのではなく、粉末チユーインガム全体に加水して全体を塊状にするようにしても何ら差し支えはない。」(4頁右下欄1?4行)、
(1-f)「[発明の効果]
以上のように、本発明の組合せチユーインガムは、含水結晶麦芽糖の存在により吸水性が高くなつている特殊な粉末チユーインガム成分(A)と、粉末チユーインガム成分(A)を塊状チユーインガム化させるための液体成分(B)とを組み合わせているため、両者を接触させて振り混ぜたりする等の遊び的な動作を加えるだけで簡単に塊状チユーインガムが得られる。したがって、喫食者が、単にこの塊状チユーインガムのチューイング性を楽しめるだけではなく喫食前に一連のチユーインガム作製過程を楽しむことができるという極めて斬新なものである。」(5頁右上欄1?12行)、
(1-g)「第3図」に、蓋3aをした容器3を手で持ち上げて振っているところが図示されている(6頁、第3図)。

(2)刊行物2に記載された事項
「実公平5-29037号公報」(以下、「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(2-a)「(1)下記の(A)成分を主体とする容器詰めの粉末成分と、上記粉末成分を水と接触させ凹部に沿わせて餅様菓子化させるための成形用凹部が設けられた成形用モールドと、上記餅様菓子を成形用凹部から取り出すための可食成形体とを備えたことを特徴とする組合せ菓子。
(A)アミロペクチンを主体とする穀類粉末のα化物であつて、水-アルコール混合溶液を加えて乾燥されているα化穀類粉末。」(「実用新案登録請求の範囲」の項)、
(2-b)「上記粉末成分は容器に詰めることが行われ、その容器としては、通常、ポリエチレン製袋等の密封容器が使用される。
上記粉末成分を水と接触させて餅様菓子化するための成形用モールドは、成形用凹部を備えているものであればどのようなものでもよい。そして、その材質も特に制限するものではない。しかし、通常は離型性に優れた塩化ビニル等が用いられる。」(3頁6欄3?11行)、
(2-c)「上記組合せ菓子の喫食は、例えばつぎのようにして行う。すなわち、まず、粉末成分2入り容器を開封し、第2図(第1図のA-A’断面図)に示すように、成形用モールド1の成形用凹部1aに粉末成分2を振り入れる。そこへ、第3図に示すように、水を所定量滴下して、上記粉末成分2の粉末層に水を浸透させて粉末層を餅様菓子4化させる。そして、第4図に示すように、この餅様菓子4の表面にコーンカツプ3を押しつけ、コーンカツプ3先端に餅様菓子4を付着させて取り出すと、あたかもアイスクリームのような外観を有した餅様菓子4が得られる(第5図)。そこで、喫食者は、この餅様菓子4を、コーンカツプ3ごと喫食することができる。」(3頁6欄31?44行)、
(2-d)「[考案の効果]
以上のように、この考案の組合せ菓子は、特殊な粉末成分を用い、モールドの型に沿つた形状の餅様菓子を瞬時に、ダマをつくることなく得ることができるようになつており、しかも得られた餅様菓子をコーンカツプに付着させてアイスクリームのような感覚で喫食することができる。したがつて、この組合せ菓子は、単に餅様菓子の風味を楽しめるだけでなく、餅様菓子をつくる製造の楽しみとその形状の視覚的面白さをも同時に味わうことができるのである。」(4頁7欄34?末行)

(3)刊行物3に記載された事項
「特開平6-237696号公報」(以下、「刊行物3」という。)には、以下の事項が記載されている。
(3-a)「α化穀類粉末と粉末状酸味料と炭酸水素ナトリウム粉末とを含有してなる粉末組成物であって、粉末組成物全体重量中、α化穀類粉末が50重量%以上、粉末状酸味料と炭酸水素ナトリウム粉末とがそれぞれ6.0重量%以下に設定されており、かつ、粉末状酸味料及び炭酸水素ナトリウム粉末の粒度がそれぞれ40メッシュパス以下に設定されていることを特徴とする粉末組成物。」(特許請求の範囲)、
(3-b)「この発明は、喫食時に水等の液体成分を添加するだけで、発泡膨張した餅様菓子が形成され、視覚的変化を楽しむことができる粉末組成物に係り、更に詳しくは、発泡成分である酸味料と炭酸水素ナトリウムとの双方が同一粉末組成物内に混合されているにも拘わらず、液体成分を添加したときに、瞬時に均一に発泡膨張する粉末組成物に関する。」(段落【0001】)、
(3-c)「上述のような構成からなる本発明の粉末組成物は、液体成分を添加するだけで発泡膨張しながら餅様菓子に変化する。このとき、 液体成分は、単なる水でも、糖液やジュース、牛乳等の水性媒体でも、水溶性の粉末原料を溶解した水溶液でもよい。なお、液体成分中の糖度は、5%以下にすることが望ましい。糖度が5%を超えると、粉末組成物への液体成分の浸透性が低下したり、得られる餅様菓子の発泡膨張度合いや粘弾性、強度が小さくなる傾向にある。
なお、粉末組成物と液体成分との比率は、任意に設定できるが、通常、粉末組成物1に対して1.5?3.0が好適である。液体成分がこの範囲よりも少ないと、餅様化せずに粉末のまま残りやすい。逆に、液体成分がこの範囲よりも多いと、水分が多くなって、保形性が低下したり、容器から取り出しにくくなる。」(段落【0018】?【0019】)

(4)刊行物1に記載された発明
上記摘示(1-d)には、
「本発明の組合せチユーインガムは、上記のように、粉末チユーインガム成分(A)と液体成分(B)とを組み合わせたものであり、例えばつぎのようにしてチユーインガムの塊をつくつて楽しんだのち喫食することができる。すなわち、第1図に示すように、まず粉末チユーインガム成分1を任意の容器3に振り入れたのち、スポイト状容器等に密封した液体成分2を開封して、粉末チユーインガム成分1の表面上に適当な間隔をあけて滴下する。この状態を、上から見下ろした第2図に示す。4は滴下によつて液体成分2と粉末チユーインガム成分1とが接触した接触部分である。ついで上記容器3に、第3図に示すように蓋3aをし、図示のように手で持ち上げて数回振る。そして上記蓋3aをとると、第4図に示すように、液体成分2が粉末チユーインガム成分lに接触した部分4のみが固まり塊状チユーインガム化し複数個の略球状のチユーインガムとなつて、塊状チユーインガム化していない粉末チユーインガム成分lに混じうて存在している。」との記載があるところ、上記「ついで上記容器3に、第3図に示すように蓋3aをし、図示のように手で持ち上げて数回振る。」との記載によると、「容器3」は、「振る」、すなわち、「振動」することにより、塊状チューインガムを調製するものである。この「塊状」とは、一種の成型状態であるから、容器3は、成型容器であるといえる。そして、容器3は、蓋3aを具備するから、刊行物1には、
「下記の(A)及び(B)とが組合されていることを特徴とする振動成型用組合せチューインガム
(A)粉末チューインガム成分
(B)容器と蓋とからなる成型チューインガム容器」(以下、「引用発明1」という。)という発明が記載されているといえる。

第5 対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1に係る「チューインガム」は、「菓子」の一種であるから、両者は、
「下記の(A)と(B)とが組合されていることを特徴とする振動成型用組合せ菓子。
(A)成分粉末
(B)成型食品容器」で一致し、下記の(ア)?(ウ)の点で相違する。

(ア)本願発明1は「下記(B)のカップ片の少なくとも一つに、下記(A)と水性媒体とを重量比3:7?6:4の混合割合で収容した後、該カップ片と残りのカップ片とを結合一体化し、しかる後、振動して得られる成形菓子用の組合せ菓子であって」というものであるのに対し、引用発明1は、特に「(A)と水性媒体とを重量比3:7?6:4の混合割合」で収容することについては明らかでない点
(イ)成分粉末が、本願発明1では、「α化穀類粉末含有粉末」であるのに対し、引用発明1では「粉末チューインガム成分」である点
(ウ)成型食品容器が、本願発明1では、「複数に分割されたカップ片からなる成型食品容器であって、該カップ片の開口周縁部にカップ片同士を結合一体化するための結合構造を有する」のに対し、引用発明1では、「容器と蓋とからなる成型容器」である点

第6 判断
(1)相違点(ア)について
刊行物1には、塊状チューインガムの調製法に関し、
「まず粉末チユーインガム成分1を任意の容器3に振り入れたのち、スポイト状容器等に密封した液体成分2を開封して、粉末チユーインガム成分lの表面上に適当な間隔をあけて滴下する。・・(略)・・4は滴下によつて液体成分2と粉末チユーインガム成分lとが接触した接触部分である。ついで上記容器3に、・・(略)・・蓋3aをし、図示のように手で持ち上げて数回振る。そして上記蓋3aをとると、・・(略)・・液体成分2が粉末チユーインガム成分lに接触した部分4のみが固まり塊状チユーインガム化し複数個の略球状のチユーインガムとなつて、塊状チユーインガム化していない粉末チユーインガム成分lに混じつて存在している。」(摘示(1-d))が記載されている。また、「粉末チユーインガム成分(A)に対する加水を、上記のように部分的に行うのではなく、粉末チユーインガム全体に加水して全体を塊状にするようにしても何ら差し支えはない。」(摘示(1-e))との記載があり、この記載によると、上記調製法では「粉末チユーインガム全体に加水して全体を塊状にする」場合があるといえる。してみれば、刊行物1には、
「容器に水性媒体と粉末チューインガム成分とを入れた後、蓋をし、数回振ることにより得られる塊状チューインガム」という発明が記載されているといえる。
そうすると、 本願発明1のように、「下記(B)のカップ片の少なくとも一つに、下記(A)と水性媒体とを収容した後、該カップ片と残りのカップ片とを結合一体化し、しかる後、振動して得られる成形菓子用の組合せ菓子」は、刊行物1に記載された上記の発明から当業者が容易に想到し得ることである。
加えて、刊行物3には、α化穀類粉末と粉末状酸味料と炭酸水素ナトリウム粉末とを含有してなる粉末組成物に関し、
「なお、粉末組成物と液体成分との比率は、任意に設定できるが、通常、粉末組成物1に対して1.5?3.0が好適である。」(摘示(3-c))との記載があり、ここに記載の粉末組成物と液体成分との比率は、本願発明1に係る(A)のα化穀類粉末含有粉末と水性媒体との重量比と重複している。そして、刊行物3に係る粉末組成物と液体成分との比率は、「液体成分がこの範囲よりも少ないと、餅様化せずに粉末のまま残りやすい。逆に、液体成分がこの範囲よりも多いと、水分が多くなって、保形性が低下したり、容器から取り出しにくくなる。」(摘示(3-c))という理由に基づいて特定したものであるから、本願発明1に係る、(A)であるα化穀類粉末含有粉末と水性媒体との重量比を「3:7?6:4」とすることは、刊行物3の摘示(3-c)の理由を踏まえれば、当業者が必要に応じ最適化のために適宜決定し得ることであって格別の困難性は見出せない。
また、平成21年6月23日付け実験成績証明書をみても、上記混合割合の数値限定に、臨界的意義があるとはいえない。
したがって、相違点(ア)は、格別なものではない。

(2)相違点(イ)について
引用発明1に係る「粉末チューインガム成分」は、液体成分(水)と容器内で接触させることにより塊状の成型食品にされるものである(摘示(1-b)?(1-g))。しかるに、刊行物2には、
「(1)下記の(A)成分を主体とする容器詰めの粉末成分と、上記粉末成分を水と接触させ凹部に沿わせて餅様菓子化させるための成形用凹部が設けられた成形用モールドと、上記餅様菓子を成形用凹部から取り出すための可食成形体とを備えたことを特徴とする組合せ菓子。
(A)アミロペクチンを主体とする穀類粉末のα化物であつて、水-アルコール混合溶液を加えて乾燥されているα化穀類粉末。」(摘示(2-a))との記載があり、この記載によると、α化穀類粉末は、水と成型用モールド内で接触させることにより、餅様の成型食品にされるものである。餅様の成型食品は、塊状の成型食品といえるから、両者とも、粉末状の成分と水とを容器(成型用モールド)内で接触させることにより、塊状の成型食品を調製するものであるといえる。そうすると、塊状の成型食品を調製するために、「粉末チューインガム成分」に代えて「α化穀類粉末含有粉末」を用い、引用発明1に係る振動成型容器により調製することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。

(3)相違点(ウ)について
引用発明1に係る「成型容器」は、容器と蓋という、2つに分割されるカップ片からなっている(「蓋」もある程度の深さを有するから、「カップ」と称することが可能である。)。 そして、刊行物1には、「結合構造」について明示されてはいないが、刊行物1の「第3図」をみると、容器と蓋とからなる成型容器は、上下左右に振られており、この図示されたところから、振動により容器と蓋とが分離しないように、容器と蓋同士を結合一体化するための結合構造を当然に有していると技術常識上理解することができるし、そうでなくても、引用発明1において、成型容器は、上下左右に振られるものであって、容器と蓋とが分離するおそれがあるから、容器と蓋とに何らかの結合構造を設けて分離しないようにすることは、当業者が適宜なし得ることである。加えて、結合構造は、開口周縁部に設けるのが普通であるから、結局、本願発明1のように、「複数に分割されたカップ片からなる成型食品容器であって、該カップ片の開口周縁部にカップ片同士を結合一体化するための結合構造を有する」という構成を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。

(4)本願発明1の効果について
本願発明1の効果は、
「以上のように、本発明の振動成型用組合せ菓子は、α化穀類粉末含有粉末と複数に分割された成型食品容器とからなり、家庭で喫食者が簡便に調理操作を行える組合せ菓子となっている。そして、これらに水性媒体等を用いて簡単な操作を行うだけで、ゼリー状成形菓子や餅様状成形菓子等の成形菓子を成型することができるものである。すなわち、単に、成形菓子の風味、食感を楽しむだけでなく、喫食者自身が成型食品容器を用い、粉末と水性媒体とを収容した容器を振るという操作をするだけで、スプーン等の混練治具を用いずに立体的な所望形状の成形菓子を作ることができるものである。従って、粉末と水性媒体とを振る操作だけで、所定の立体形状になるという視覚的変化と意外性に富んだ、きれいな形の成形菓子を得ることができるものである。特に、従来手作りでは難しかった真球状に近い成形菓子も簡単に作ることができる。」(段落【0039】)というものである。
しかし、上記「家庭で喫食者が簡便に調理操作を行える組合せ菓子となっている。そして、これらに水性媒体等を用いて簡単な操作を行うだけで、ゼリー状成形菓子や餅様状成形菓子等の成形菓子を成型することができるものである。」、「喫食者自身が成型食品容器を用い、粉末と水性媒体とを収容した容器を振るという操作をするだけで、スプーン等の混練治具を用いずに立体的な所望形状の成形菓子を作ることができるものである。」及び「粉末と水性媒体とを振る操作だけで、所定の立体形状になるという視覚的変化と意外性に富んだ、きれいな形の成形菓子を得ることができるものである」という効果は、刊行物1の摘示(1-c)?(1-e)及び刊行物2の摘示(2-d)に記載あるいは示唆されている。
なお、「従来手作りでは難しかった真球状に近い成形菓子も簡単に作ることができる。」という効果は、成型食品容器として、「球形」のものを用いた場合にだけ奏すると解されるところ、本願発明1には、成型食品容器が「球形」であると特定されているわけではないから、請求項1の記載に基づかない効果である。
したがって、本願発明1の効果は、刊行物1及び2に記載された事項から予測されるところを超えて優れているとはいえない。

第6 請求人の主張に対して
なお、請求人は、平成21年6月22日付け意見書において、
「また、引用発明3の【0019】には「粉末組成物1に対して液体成分1.5?3.0が好適である」との旨記載がありますが、当該発明は静置した状態で餅状菓子を形成するものであり、振動成型させる本願発明とは作用条件が全く異なるため、当該記載条件は参考になり得ません。」と主張している。
しかし、刊行物3には、上述のように、
「液体成分がこの範囲よりも少ないと、餅様化せずに粉末のまま残りやすい。逆に、液体成分がこの範囲よりも多いと、水分が多くなって、保形性が低下したり、容器から取り出しにくくなる。」(摘示(3-c))と記載され、この記載からは、粉末組成物と液体成分との混合割合は、「餅様化せずに粉末のまま残りやすい」か、又は「水分が多くなって、保形性が低下」しないかという、技術常識上当然の観点から考慮すべきであって、静置成型又は振動成型の成型の違いによって考慮すべきであるとは解されない。
したがって、刊行物3に記載された発明を参酌することは何ら問題はないというべきであるから、上記請求人の主張は採用できない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1は、刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本出願に係る他の請求項について検討するまでもなく、本出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する
 
審理終結日 2010-01-04 
結審通知日 2010-01-12 
審決日 2010-01-26 
出願番号 特願平11-332520
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A23G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松田 芳子  
特許庁審判長 原 健司
特許庁審判官 坂崎 恵美子
橋本 栄和
発明の名称 振動成型離型用組合せ菓子及びそれを用いた成形菓子の製法  

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